(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような複数の樹脂層を含む燃料系部品において、2つの樹脂層同士の溶着部と、これら2つの樹脂層のうちの一方の樹脂層が露出した露出部とが連続する部位(以下、「境界部」と呼ぶ)が存在する場合がある。燃料系部品を作成する際に、一方の樹脂層を形成した後に他方の樹脂層を射出成形する際に、予定された位置をはみ出して他方の樹脂層が形成されたために、上述の境界部において本来露出部となるべき領域まで溶着部となるおそれがある。従来においては、完成後の燃料系部品において溶着部と露出部との境界を目視することにより、樹脂のはみ出しの有無を確認していた。ここで、2つの樹脂層が互いに異なる色の樹脂層であれば、目視により樹脂のはみ出しの有無を比較的容易に確認できる。しかしながら、2つの樹脂層が同系色の樹脂層の場合、例えば、耐燃料透過性の向上のために内側の層にカーボンブラックを含有させ、更なる耐燃料透過性を向上させるべく外側の層にもカーボンブラックを含有させたために、両方の層がいずれも黒色となった場合などには、樹脂のはみ出しの有無を確認することは困難であった。そこで、同色系の2種類の樹脂層を含む燃料系部品において、2種類の樹脂層の境界を容易に確認できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
[形態1]本発明の一形態によれば、燃料タンクへの燃料の供給または前記燃料タンクからの燃料の排出に用いられる燃料系部品が提供される。この燃料系部品は、第1樹脂層と;前記第1樹脂層と溶着している溶着部と、前記第1樹脂層と接触しない露出部と、を有し、前記第1樹脂層と同系色の第2樹脂層と;を備え;前記露出部における前記第1樹脂層側の表面には、前記溶着部と前記露出部との境界と平行に、凹部と凸部が断続的に延びる帯状部が形成されている。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、燃料タンクへの燃料の供給または前記燃料タンクからの燃料の排出に用いられる燃料系部品が提供される。この燃料系部品は、第1樹脂層と;前記第1樹脂層と溶着している溶着部と、前記第1樹脂層と接触しない露出部と、を有し、前記第1樹脂層と同系色の第2樹脂層と;を備え;前記露出部における前記第1樹脂層側の表面には、前記溶着部と前記露出部との境界と平行に、凹部および凸部の少なくとも一方が断続的又は連続的に延びる帯状部が形成されている。
【0007】
この形態の燃料系部品によれば、第2樹脂層が有する露出部において、溶着部と露出部との境界と平行に、凹部および凸部の少なくとも一方が断続的又は連続的に延びる帯状部が形成されているので、第1樹脂層が形成される際に帯状部まで第1樹脂層がはみ出して形成された場合に、帯状部における凹部および凸部の少なくとも一方が断続的又は連続的に延びる形状が第1樹脂層により覆われて現れなくなるので、互いに同色系の第1樹脂層と第2樹脂層との境界を容易に確認できる。
【0008】
(2)上記形態の燃料系部品において、前記帯状部は、前記表面において、前記境界から離れて形成されていてもよい。この形態の燃料系部品によれば、帯状部は露出部における第1樹脂層側の表面において境界から離れて形成されているので、第1樹脂層を射出成形する構成においては、露出部における第1樹脂層側の表面と第2樹脂層形成用の金型の端部との境界位置から、第1樹脂層用の樹脂材料が第1樹脂層側の表面と金型との接触界面に沿って侵入することが抑制される。このため、第1樹脂層が予定されている位置からはみ出して形成されることを抑制できる。
【0009】
(3)上記形態の燃料系部品において、前記第2樹脂層は、前記燃料タンクに溶着されて用いられてもよい。この形態の燃料系部品によれば、第2樹脂層がタンクに溶着される際に予定されている位置からはみ出して形成された第1樹脂層により第2樹脂層が損傷するおそれのある燃料系部品を、容易に弁別できる。このため、第2樹脂層の損傷に起因して燃料タンク内の燃料が外部に漏れ出ることを抑制できる。
【0010】
(4)上記形態の燃料系部品は、前記燃料タンクからの燃料の排出を抑制するための逆止弁と、前記燃料タンクに燃料を供給する給油パイプとを接続するための燃料タンク用管接続装置として用いられてもよい。この形態の燃料系部品によれば、燃料タンク用管接続装置として燃料漏れが生じるおそれがある装置が用いられることを抑制できる。
【0011】
(5)上記形態の燃料系部品において、前記第1樹脂層は、円筒状の第1円筒部を有し;前記第2樹脂層は、前記第1円筒部の外周面と溶着された円筒状の第2円筒部を有し;前記溶着部は、前記第2円筒部の内周面において、前記第1円筒部の外周面と溶着された部分を含み;前記露出部は、前記第2円筒部の内周面において、前記第1円筒部の外周面との溶着された部分の端部から、前記第2円筒部の径方向と垂直な方向に突出した部分を含んでもよい。この形態の燃料系部品によれば、露出部は、第2円筒部の内周面において、第1円筒部の外周面との溶着された部分の端部から、第2円筒部の径方向と垂直な方向に突出した部分を含んでいるので、かかる部分を利用して燃料タンクと燃料タンク用管接続装置とを接続することができる。
【0012】
(6)上記形態の燃料系部品において、前記帯状部は、前記露出部において、前記垂直な方向を幅として全周に亘って前記凹部と前記凸部が断続的に形成されて構成されていてもよい。この形態の燃料系部品によれば、帯状部は、露出部において、垂直な方向を幅として全周に亘って凹部と凸部が断続的に形成されて構成されているので、比較的広い範囲において、その表面を艶消しされた様相に構成できる。このため、第1樹脂層と第2樹脂層との境界を精度良く特定できると共に、第1樹脂層において予定された位置からはみ出した部分が比較的小さくても、そのはみ出し部分の有無を精度良く特定できる。
【0013】
本発明は、燃料系部品以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料系部品を構成する樹脂部品や、燃料タンク用溶着継手や、燃料逆止弁や、燃料タンク用溶着継手または燃料逆止弁が溶着された燃料タンクや、これらの各装置の製造方法等の形態で実現することができる。
【0014】
燃料系部品を構成する樹脂部品として実現する場合、以下の形態により実現してもよい。すなわち、同色系の他の樹脂部品と部分的に溶着されることにより、燃料タンクへの燃料の供給または前記燃料タンクからの燃料の排出に用いられる燃料系部品を構成する樹脂部品であって、
前記燃料系部品を構成した場合に、前記他の樹脂部品と溶着される予定の溶着予定部と、
前記燃料系部品を構成した場合に、前記他の樹脂部品と接触しない予定の露出予定部と、
を備え、
前記露出予定部において、前記燃料系部品を構成した場合に前記他の樹脂部品側となる表面には、前記燃料系部品を構成した場合に前記他の樹脂部品との境界となる予定の仮想線と平行に、凹部および凸部の少なくとも一方が断続的又は連続的に延びる帯状部が形成されている、
樹脂部品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第2樹脂層が有する露出部において、溶着部と露出部との境界と平行に、凹部および凸部の少なくとも一方が断続的又は連続的に延びる帯状部が形成されているので、第1樹脂層が形成される際に帯状部まで第1樹脂層がはみ出して形成された場合に、帯状部における凹部および凸部の少なくとも一方が断続的又は連続的に延びる形状が第1樹脂層により覆われて現れなくなるので、互いに同色系の第1樹脂層と第2樹脂層との境界を容易に確認できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A1.給油装置の概略構成:
図1は、本発明の燃料系部品の一実施形態としての燃料タンク用管接続装置10を適用した燃料給油装置FSを示す概略図である。この燃料給油装置FSは、燃料タンクFTに溶着され、図示しない給油ガンから供給される燃料を燃料タンクFTへと送る。本実施形態において、燃料タンクFTは、車両に搭載されている。なお、燃料タンクFTは、車両に搭載されずに用いられてもよい。
【0018】
燃料給油装置FSは、フィラーネックFNと、インレットパイプIPと、インレットホースHと、燃料タンク用管接続装置10と、逆止弁20とを備えている。
【0019】
フィラーネックFNは、燃料キャップFCにより開閉される注入口を有する。フィラーネックFNには、図示しないブリーザパイプにより燃料タンクFTと接続されている。インレットパイプIPは、フィラーネックFNの一端に接続され燃料を流通させる。本実施形態においてインレットパイプIPは金属製である。なお、金属製に代えて樹脂製であってもよい。インレットホースHは、インレットパイプIPと燃料タンク用管接続装置10とを連通させ、燃料を流通させる。インレットホースHの一端は、インレットパイプIPにおけるフィラーネックFNと接続された側とは反対の端部に接続されている。また、インレットホースHの他端には、燃料タンク用管接続装置10の端部が圧入されており、かかる圧入部分はクランプCPにより締結されている。本実施形態において、インレットホースHはゴム製である。
【0020】
燃料タンク用管接続装置10は、フィラーネックFN、インレットパイプIP、およびインレットホースHからなる燃料流路管と燃料タンクFTとを接続する。燃料タンク用管接続装置10においてインレットホースHの端部に圧入されている端とは反対側の端は、燃料タンクFTに溶着されるとともに、逆止弁20にも溶着されている。
【0021】
逆止弁20は、燃料タンクFT内の燃料が燃料タンク用管接続装置10を介して上述の燃料流路管へと戻ることを抑制する。逆止弁20の一端は、燃料タンクFTの外表面に沿って配置され燃料タンク用管接続装置10と溶着されている。逆止弁20のうち、燃料タンク用管接続装置10と溶着されている端部を除く他の部分は、燃料タンクFT内部に配置されている。燃料タンク用管接続装置10および逆止弁20は、いずれも筒状の外観形状を有し、互いの軸線が一致するように配置されている。なお、
図1では、かかる軸線と平行にX軸が設定され、X軸と直交し且つ互いに直交するようにY軸およびZ軸が設定されている。
【0022】
上記構成を有する燃料給油装置FSでは、給油時に燃料キャップFCが外され、図示しない給油ガンから燃料がフィラーネックFNに注入されると、燃料は、インレットパイプIP、インレットホースH、燃料タンク用管接続装置10を流れて、さらに逆止弁20を開いて燃料タンクFT内に供給される。他方、給油ストップ時には、逆止弁20は、閉弁状態となり、上昇した燃料タンクFTの内圧により燃料が押し戻されて外部へ流出するのを防止する。
【0023】
A2.各部の構成:
A2−1.燃料タンクFTの構成:
燃料タンクFTは、耐燃料透過性に優れたエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)で形成されたバリア層と、ポリエチレン(PE)で形成された外層とを含む複数の樹脂層から形成されている。燃料タンクFTの側壁の上部には、タンク開口FTaが形成されており、このタンク開口FTaを囲むように燃料タンク用管接続装置10が溶着されている。
【0024】
A2−2.燃料タンク用管接続装置10の構成:
図2は、燃料タンク用管接続装置10および逆止弁20を拡大して示す断面図である。燃料タンク用管接続装置10は、第1樹脂層12と第2樹脂層14とを備え、燃料タンクFTおよび逆止弁20に溶着する側の端部がフランジ状に形成された円筒状の外観形状を有する。第1樹脂層12および第2樹脂層14は、2色成形による反応接着により一体に形成されている。第1樹脂層12は、第2樹脂層14の内側に位置し、インレットホースHに接続される通路を形成する通路部12aを備えている。通路部12aの一方の端部には、抜止拡張部12bが形成されている。抜止拡張部12bは、通路部12aの外周端から外径方向に拡張されることでインレットホースHが抜けて外れることを抑制する。通路部12aの他端には、幅が短い円筒状の第1円筒部12cが形成されている。第1円筒部12cの外周面(インレットホースH側の面)は、第2樹脂層14(後述する溶着部14b)の内周面に溶着されている。第1円筒部12cの他方の面(逆止弁20側の面)側には、逆止弁20の一端が溶着されている。第1樹脂層12は、耐燃料透過性に優れる樹脂材料、例えば、ナイロン−12などのポリアミド(PA)から形成されている。
【0025】
第2樹脂層14は、第1樹脂層12の外側に位置し、外筒部14aと、第2円筒部14mとを備えている。外筒部14aは、通路部12aの外周面に接して配置されている。第2円筒部14mは、外筒部14aにおける逆止弁20側の端部の外周から外径方向に延びるフランジ状の溶着部14bと、溶着部14bの端部においてに環状に突設された露出部14cを備えている。溶着部14bは、第1樹脂層12の第1円筒部12cの外周表面と溶着されている。これに対して、露出部14cは、第1円筒部12cの外周表面とは接しておらず、燃料タンクFTと溶着されている部分を除き露出している。露出部14cの逆止弁20側の端面(後述の端面14e)は、燃料タンクFTに溶着されている。第2樹脂層14は、燃料タンクFTに熱溶着可能である変性ポリエチレンから形成されている。変性ポリエチレンは、ポリエチレン(PE)に極性官能基、例えばマレイン酸変性された官能基を付加した樹脂材料であり、ポリアミド(PA)と射出成型時の熱により反応接着する材料である。ここで、本実施形態では、第1樹脂層12および第2樹脂層14の樹脂材料には、いずれも耐燃料透過性の向上を目的としてカーボンブラック(CB)が含有されて用いられている。このため、第1樹脂層12および第2樹脂層14は、互いに同系色、より詳細には互いに黒色を呈している。
【0026】
図3は、
図2に示す領域Ar1を拡大して示す断面図である。領域Ar1は、第2円筒部14mのうち、−Y方向の端部を中心とする領域である。
図3では、説明の便宜上、
図2に示す領域Ar1を左回りに90°回転させて表している。したがって、Y軸方向が径方向に該当する。より具体的には、+Y方向が内径方向に、−Y方向が外径方向に、それぞれ該当する。
【0027】
第1円筒部12cの端部には、径方向と垂直な方向(−X方向)に屈曲した側面部12dが形成されている。この側面部12dと、第1円筒部12cにおいて径方向に延びる部分との接続部分は湾曲してR形状に形成されている。溶着部14bは、第2円筒部14mのうち、内周面において第1円筒部12cと溶着された部分に相当する。また、露出部14cは、第2円筒部14mのうち、内周面において第1円筒部12cと接していない部分に相当する。したがって、溶着部14bと露出部14cとの境界Bdは、側面部12dの−X方向の端と、X軸方向の位置において一致する。
【0028】
露出部14cにおける内周側の表面、換言すると露出部14cにおける第1樹脂層12側の表面(以下、「露出面16」と呼ぶ)には、全周に亘って帯状部15が形成されている。帯状部15の+X方向の端は、境界Bdから距離d1だけ離れて配置されている。また、帯状部15の−X方向の端は、露出面16と端面14eとの境界から所定の距離だけ離れて配置されている。帯状部15は、細かな凹部および凸部が断続的に円周方向に延びる構造を有する。換言すると、帯状部15は、シボ加工された表面が全周に亘って帯状に連続する構造を有する。したがって、帯状部15の表面はザラついており、照射された光が様々な方向に拡散反射(乱反射)するために全体として艶消しされたマットな様相を呈している。これに対して、第1円筒部12cの表面、および露出部14cの露出面16における帯状部15を除く他の部分は、帯状部15に比べて平滑度が高く(表面粗さが小さく)、凹部および凸部がほとんど視認されない。このため、第1円筒部12cの表面、および露出部14cの露出面16における帯状部15を除く他の部分は、照射された光が正反射(鏡面反射)することが多く、全体として艶のある様相を呈している。
【0029】
図4は、燃料タンク用管接続装置10において逆止弁20との接続側の端部を示す斜視図である。
図4では、燃料タンク用管接続装置10が燃料タンクFTおよび逆止弁20と溶着されていない状態での燃料タンク用管接続装置10の端部を示す。また、
図4では、燃料タンク用管接続装置10の作製時(2色成形時)に、第1樹脂層12の樹脂材料が予定されている位置からはみ出なかった場合の燃料タンク用管接続装置10、すなわち、良品の燃料タンク用管接続装置10を示している。なお、図示の便宜上、第2円筒部14mのハッチングは省略されている。また、燃料タンク用管接続装置10のうち、+X方向の一部の部位、例えば、外筒部14aも、図示の便宜上省略されている。
【0030】
上述のように、帯状部15では、全周に亘って細かな凹部および凸部が断続的に続いており、艶消しされた様相を呈している。これに対して、第1円筒部12cは、表面の凹部および凸部が少なく艶のある様相を呈している。したがって、境界Bdの位置は、距離d1分の誤差はあるものの、容易に視認できる。
【0031】
図5は、燃料タンク用管接続装置10の作製時の様子を模式的に示す断面図である。
図5では、
図3に示す領域Ar1と同じ領域を拡大して示している。また、
図5では、第1樹脂層12が作製される際の様子を示している。
【0032】
燃料タンク用管接続装置10の作製では、まず、第2樹脂層14が成形される。具体的には、第2樹脂層14の形状のキャビティを有する所定形状の金型(以下、「第2樹脂層14用の金型」と呼ぶ)に第2樹脂層14用の樹脂材料が射出されて、第2樹脂層14が形成される。このとき用いられる第2樹脂層14用の金型には、帯状部15に相当する部分において、全周に亘って細かな凹部および凸部が断続的に延びる形状に形成されている。このため、第2樹脂層14用の樹脂材料が射出された際に、帯状部15が形成されることとなる。なお、第2樹脂層14用の金型において、全周に亘って細かな凹部および凸部が断続的に延びる形状を形成する方法としては、例えば、第2樹脂層14用の金型において帯状部15を除くその他の部分をマスクし、溶剤を用いて露出した部分の表面を溶解加工することによってかかる形状を形成することができる。なお、溶解加工に代えて、機械的な加工により形成してもよい。
【0033】
第2樹脂層14が形成された後、
図5に示すように、成形された第2樹脂層14に対して所定形状の金型200が接して配置される。これにより、第1樹脂層12(第1円筒部12c)と同じ形状のキャビティ210が形成され、かかるキャビティ210に第1樹脂層12用の樹脂が射出されて、第1樹脂層12が形成される。このとき、第1樹脂層12と第2樹脂層14とは熱により反応溶着することとなる。
【0034】
ここで、帯状部15の+X方向の端は、境界Bdから距離d1だけ離れて配置されている。このため、燃料タンク用管接続装置10の完成後において
図3に示す境界Bdに相当する位置、すなわち、露出面16における第2樹脂層14と金型200端部との境界位置から帯状部15が連続していないので、第1樹脂層12用の樹脂材料がキャビティ210に射出された際に、露出面16における第2樹脂層14と金型200端部との境界位置から、露出面16と金型200との接触面に沿って樹脂材料が侵入することが抑制される。これは以下の理由による。帯状部15には、多数の凹部および凸部が形成されているので、樹脂材料が射出された際に、金型200との間に樹脂材料の細かな流路が形成され易い。しかしながら、かかる帯状部15が境界Bdから距離d1だけ離れて配置されているので、上述の樹脂材料の細かな流路が形成されることを抑制できるため、樹脂材料の侵入を抑制できる。しかしながら、第2樹脂層14の製造誤差(公差)や、金型200との配置位置の誤差等に起因して、露出面16における第2樹脂層14と金型200端部との境界位置から、露出面16と金型200との接触面に沿って樹脂材料が侵入する場合が生じ得る。この場合、第1樹脂層12は、予定された位置からはみ出して形成されてしまう。
【0035】
図6は、樹脂材料のはみ出しが発生した場合の燃料タンク用管接続装置10の端部を示す斜視図である。
図6では、
図4と同様な位置から見た燃料タンク用管接続装置10を表している。したがって、
図4と同様に、燃料タンク用管接続装置10のうち、+X方向の一部の部位が省略されていると共に、第2円筒部14mのハッチングが省略されている。
【0036】
第1樹脂層12の成形時に第1樹脂層12用の樹脂材料が第2樹脂層14と金型200との間に侵入した場合、
図6に示すように、第1樹脂層12は、予定された位置からはみ出したはみ出し部12eを有することとなる。このはみ出し部12eの端部は、帯状部15にまで至っており、帯状部15の一部は、はみ出し部12eによって覆われている。はみ出し部12eは、表面の凹部および凸部が少なく艶のある様相を呈している。これに対して、帯状部15は、艶消しされたマットな様相を呈しているので、はみ出し部12eの有無、換言すると、溶着部14bと露出部14cとの境界Bdを容易に視認できる。はみ出し部12eは、ポリアミド(PA)からなるため、燃料タンク用管接続装置10を燃料タンクFTに溶着させるために加熱された際にも変形(溶解)は抑制される。これに対して、第2円筒部14m(露出部14c)は、加熱されて変形する。このため、変形しないはみ出し部12eが変形後の第2円筒部14mに突き刺さり、燃料タンクFTと外部とを結ぶ燃料の漏えい経路が生じるおそれがある。したがって、このようなはみ出し部12eが生じた燃料タンク用管接続装置10は、不良品として弁別されることが好ましい。本発明を適用した場合には、上述のように、はみ出し部12eの有無を精度よく視認できるので、良品と不良品との弁別を精度良く行うことができる。
【0037】
A2−3.逆止弁20の構成:
図2に示すように、逆止弁20は、通路形成部材22と、弁プレート30と、開度規制部材37とを備えている。通路形成部材22は、筒状の外観形状を有し、一方の端部25はフランジ状に形成され、第1樹脂層12の第1円筒部12cの根元部分に溶着されている。通路形成部材22は、第1樹脂層12と同様に、ポリアミド(PA)で形成されている。通路形成部材22の他方の端部は、流出口23aとして形成されている。通路形成部材22において流出口23aが形成されている側の端部の外周部には、取付部27が形成されている。取付部27は、弁プレート30を通路形成部材22に取り付ける。弁プレート30は、通路形成部材22の一端に装着され、流出口23aを開閉する。開度規制部材37は、弁プレート30と同様に通路形成部材22の一端に装着され、弁プレート30の開度が所定の開度以上とならないように規制する。
【0038】
図7は弁プレート30を通路形成部材22から外した状態を示す斜視図である。通路形成部材22の取付部27は、通路形成部材22の外周端から互いにほぼ平行に立設された一対の側壁部27aを備えている。各々の側壁部27aは、立壁27bと、立壁27bの上端から互いに向き合うように延設された押さえ部27cとを備え、立壁27bと押さえ部27cとにより断面L字形に形成されている。また、一対の側壁部27aのそれぞれの押さえ部27cにまたがってブリッジ部27dが形成されている。また、一対の側壁部27aの間には、後述する弁プレート30の被取付部34および規制部38の被取付部39を収納するための取付溝28が形成されている。取付溝28の底には、挿入口28aから奥側に向けて上方へ傾斜した傾斜面28bが形成され、2つの被取付部34,39の挿入作業性を高めている。また、傾斜面28bの一端から凹所に形成された係合部28cが形成されている。
【0039】
弁プレート30は、閉止部31と、一対のアーム部32と、連結部33と、被取付部34とを備えている。弁プレート30は、金属製の薄板をプレス切断して折曲することにより、一体的に板ばねとして形成されている。
【0040】
閉止部31は、通路形成部材22の流出口23aを開閉する。閉止部31は、流出口23aを閉塞した場合に、通路形成部材22の端面に当接する。一対のアーム部32は、閉止部31の外周部のほぼ半円を囲むように形成されている。各アーム部32の一端部は、それぞれ連結部33を介して閉止部31に連結され、各アーム部32の他端部は、それぞれ被取付部34により連結されている。被取付部34は、通路形成部材22の取付部27に取り付けられることにより、閉止部31を開閉可能に支持する。被取付部34は、閉止部31に対して折曲されている。
【0041】
開度規制部材37は、2個所で屈曲した薄板状の部材であり、規制部38と、被取付部39とを備えている。規制部38は、閉止部31が開いて流出口23aの開度が大きくなっていき、或る開度になった際に閉止部31と接触して、それ以上の閉止部31の移動を規制する。被取付部39は、規制部38の一端と連なる。−Y方向に見たとき、被取付部39は、弁プレート30の被取付部34と同じ形状および同じ大きさを有している。これら2つの被取付部34,39は互いに溶着されている。被取付部39は、弾性片39aと、抜止部39bとを備えている。弾性片39aおよび抜止部39bは、被取付部39の本体(薄板部材)から約45゜でプレス成形などにより切り起こされることによって形成されている。被取付部34において、弾性片39aおよび抜止部39bと対応する位置には、厚さ方向に貫通孔が形成されている。このため、弁プレート30および開度規制部材37が取付部27に取り付けられた際に、上述の抜止部39bは、通路形成部材22の係合部28cに係合し、被取付部34,39が取付部27から抜けて外れることを抑制する。また、弾性片39aは、押さえ部27cと取付溝28との溝底とで圧縮されることにより径方向への弁プレート30のガタツキを抑制する。
【0042】
弁プレート30の被取付部34および開度規制部材37の被取付部39を通路形成部材22の取付部27に取り付ける場合、被取付部34,39が傾斜面28bに沿わせつつ挿入口28aへと挿入される。このとき、抜止部3
9bおよび弾性片3
9aは、ブリッジ部27dと取付溝28の溝底との間で圧縮される。抜止部39bが係合部28cに達して弾性力により係合部28cに挿入されることで被取付部34,39が取付部27に固定される。
【0043】
以上説明した第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10によれば、第2樹脂層14が有する露出部14cにおいて、溶着部14bと露出部14cとの境界Bdと平行に、凹部および凸部が断続的又は連続的に延びる帯状部15が形成されている。このため、第1樹脂層12が形成される際に帯状部15まで第1樹脂層12がはみ出して形成された場合に、帯状部15における凹部および凸部の少なくとも一方が断続的又は連続的に延びる形状が第1樹脂層
12により覆われて現れなくなり、互いに同色系の(黒色の)第1樹脂層12と第2樹脂層14との境界を容易に確認できる。
【0044】
また、帯状部15は、境界Bdから距離d1だけ離れて形成されているので、第1樹脂層12を成形する際に、第1樹脂層12用の樹脂材料が露出面16における第2樹脂層14と金型200端部との境界位置から、露出面16と金型200との接触界面に沿って侵入することが抑制される。このため、第1樹脂層12が予定されている位置からはみ出して形成されることを抑制できる。
【0045】
また、燃料タンク用管接続装置10は、燃料タンクFTに溶着されて用いられる部品であり、第1樹脂層12が予定されている位置からはみ出して形成されている個体を、不良品として精度良く弁別できる。したがって、第1樹脂層12が予定されている位置からはみ出して形成され、燃料タンク用管接続装置10が燃料タンクFTに溶着された場合に、燃料タンクFTから燃料が漏れ出るおそれのある燃料タンク用管接続装置10が、燃料タンクFTに溶着されて用いられることを抑制できる。
【0046】
また、燃料タンク用管接続装置10は、燃料タンクFTからの燃料の排出を抑制するための逆止弁20と、燃料タンクFTに燃料を供給するインレットホースH、インレットパイプIP、およびフィラーネックFNからなる燃料流路管(給油パイプ)とを接続するために用いられるので、燃料タンク用管接続装置10として燃料漏れが生じるおそれのある装置が用いられることを抑制できる。
【0047】
また、帯状部15は、露出部14cにおいて、第2円筒部14mの径方向と垂直な方向(X軸方向)を幅として全周に亘って凹部と凸部とが断続的に形成されて構成されているので、比較的広い範囲において、その表面を艶消しされた様相に構成できる。このため、第1樹脂層12のはみ出し部が比較的小さくても、そのはみ出し部の有無を精度良く特定できる。
【0048】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態において、樹脂材料のはみ出しが発生した場合の燃料タンク用管接続装置の端部を示す斜視図である。第2実施形態の燃料タンク用管接続装置は、第2円筒部14mに代えて、第2円筒部14nを備えている点において、第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10と異なる。第2実施形態の燃料タンク用管接続装置におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第2実施形態の燃料タンク用管接続装置は、第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10と同様に、逆止弁20および燃料タンクFTに溶着されて用いられる。なお、
図8では、第1実施形態の
図4と同様な位置から見た第2実施形態の燃料タンク用管接続装置を表している。したがって、
図4と同様に、燃料タンク用管接続装置のうち、+X方向の一部の部位が省略されていると共に、第2円筒部14nのハッチングが省略されている。
【0049】
第2実施形態の第2円筒部14nは、帯状部15に代えて、帯状部15aを備えている点において、第1実施形態の第2円筒部14mと異なる。第2実施形態の第2円筒部14nにおけるその他の構成要素は、第1実施形態の第2円筒部14mと同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図8に示すように、第2実施形態の帯状部15aは、露出面16において、全周に亘って連続的に形成された凹部(溝)により形成されている。したがって、かかる溝においては、露出面16のその他の部分、および第1円筒部12cとは反射光の射出される方向が異なることとなる。このため、
図8に示すように、はみ出し部12eが生じ、かかるはみ出し部12eによって帯状部15aの一部が覆われた場合に、帯状部15aのかかる部分において反射光の方向が変化するので、はみ出し部12eが存在することを容易に確認できる。また、はみ出し部12eの端が帯状部15aに位置する場合には、少なくともはみ出し部12eにおける境界Bdを容易に確認できる。その他、第2実施形態の燃料タンク用管接続装置は、第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10と同様な効果を有する。
【0051】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態において、樹脂材料のはみ出しが発生した場合の燃料タンク用管接続装置の端部を示す斜視図である。第3実施形態の燃料タンク用管接続装置は、第2円筒部14mに代えて、第2円筒部14pを備えている点において、第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10と異なる。第3実施形態の燃料タンク用管接続装置におけるその他の構成は、第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第3実施形態の燃料タンク用管接続装置は、第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10と同様に、逆止弁20および燃料タンクFTに溶着されて用いられる。なお、
図9では、第1実施形態の
図4と同様な位置から見た第3実施形態の燃料タンク用管接続装置を表している。したがって、
図4と同様に、燃料タンク用管接続装置のうち、+X方向の一部の部位が省略されていると共に、第2円筒部14pのハッチングが省略されている。
【0052】
第2実施形態の第2円筒部14pは、帯状部15に代えて、帯状部15bを備えている点において、第1実施形態の第2円筒部14mと異なる。第3実施形態の第2円筒部14pにおけるその他の構成要素は、第1実施形態の第2円筒部14mと同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
図9に示すように、第3実施形態の帯状部15bは、露出面16において径方向に形成された多数の短い凹部(溝)が全周に亘って所定の間隔で並んだ構成を有する。したがって、各溝においては、露出面16のその他の部分および第1円筒部12cとは反射光の射出される方向が異なることとなる。このため、
図9に示すように、はみ出し部12eが生じ、かかるはみ出し部12eによって帯状部15bの一部が覆われた場合に、帯状部15bのかかる部分において反射光の方向が変化するので、はみ出し部12eが存在することを容易に確認できる。また、はみ出し部12eの端が帯状部15bに位置する場合には、少なくともはみ出し部12eにおける境界Bdを容易に確認できる。その他、第3実施形態の燃料タンク用管接続装置は、第1実施形態の燃料タンク用管接続装置10と同様な効果を有する。
【0054】
D.変形例:
D1.変形例1:
各実施形態において、帯状部15,15a,15bは、いずれも境界Bdから距離d1だけ離れて形成されていたが、境界Bdから連続して形成されてもよい。このような構成によれば、はみ出し部12eの有無に関わらず、境界Bdをより精度良く確認できる。同様に、帯状部15,15a,15bは、露出面16と端面14eとの境界から所定の距離だけ離れて配置されていたが、かかる境界から連続して形成されてもよい。
【0055】
D2.変形例2:
各実施形態において、第2樹脂層14は、燃料タンクFTに溶着されて用いられていたが、溶着されずに用いられてもよい。例えば、予め燃料タンクFTに螺合機構を設けておき、第2樹脂層14(露出部14c)にも螺合機構を設けて、燃料タンクFTの螺合機構と螺合させて用いてもよい。
【0056】
D3.変形例3:
各実施形態では、本発明の燃料タンク用管接続装置10への適用例を説明したが、本発明は、他の燃料系部品に適用してもよい。例えば、燃料タンクFTと燃料の蒸発ガス(燃料蒸気)の吸着および脱着を行なうキャニスタとを連通する連通管に取り付けられる燃料遮断弁に、本発明を適用してもよい。このような燃料遮断弁も、各実施形態の燃料タンク用管接続装置10と同様に2種類の樹脂材料の2色成形により形成される構成においては、一方の樹脂層に帯状部15,15a,15bを設けることにより、各実施形態と同様な効果を奏する。さらに、燃料タンクFTとフィラーネックFNとを連通するブリーザパイプに取り付けられ、燃料タンクFTに溶着される逆止弁に、本発明を適用してもよい。すなわち、一般には、燃料タンクFTへの燃料の供給または燃料タンクFTからの燃料(燃料蒸気)の排出に用いられる任意の種類の燃料系部品に、本発明を適用してもよい。
【0057】
D4.変形例4:
第2実施形態では、帯状部15aは、
図8に示すように1本の凹部(溝)により形成されていたが、1本に限らず複数本の凹部(溝)により形成されてもよい。同様に、第3実施形態において、径方向に形成された多数の短い凹部(溝)が全周に亘って所定の間隔で並んだ構成を1セットとし、このようなセットが径方向に同心円状に複数並んだ構成を採用してもよい。この場合、各セットの直
径を互いに異ならせる。同様に、第1実施形態において、帯状部15の径方向の幅を短くし、かかる帯状部が径方向に同心円状に複数並んだ構成を採用してもよい。この場合も、各帯状部の直径を互いに異ならせる。また、第2実施形態では、帯状部15aは、全周に亘って形成された凹部(溝)により形成されていたが、凹部(溝)に代えて、凸部(リブ)により形成されてもよい。同様に、第3実施形態では、帯状部15bは、露出面16において径方向に形成された多数の短い凹部(溝)が全周に亘って所定の間隔で並んだ構成を有していたが、凹部(溝)に代えて、凸部(リブ)が全周に亘って所定の間隔で並んだ構成を有してもよい。また、第2実施形態において、帯状部15aは、凹部が全周に亘って連続して形成されていたが、全周に亘って断続的に形成されてもよい。例えば、周方向に沿った所定の長さの凹部(溝)が、所定の間隔を空けて一列に並んだ構成であってもよい。すなわち、一般には、凹部および凸部の少なくとも一方が断続的又は連続的に延びる帯状部を、本発明の帯状部として用いてもよい。
【0058】
D5.変形例5:
各実施形態では、第1樹脂層12と第2樹脂層14とは、互いに黒色であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、一方の樹脂層を黒色とし、他方の樹脂層を濃い灰色としてもよい。また、黒色および灰色のような無彩色に代えて、有彩色であってもよい。例えば、第1樹脂層12と第2樹脂層14とをいずれも桃色としてもよい。またこのとき、一方の樹脂層を濃い桃色とし、他方を薄い桃色としてもよい。また、桃色に限らず任意の有彩色であってもよい。すなわち、一般には、第1樹脂層12と第2樹脂層14と、互いに同系色としてもよい。
【0059】
D6.変形例6:
各実施形態では、燃料タンク用管接続装置10は、2つの樹脂層を含んでいたが、3つ以上の樹脂層を含んでいてもよい。この場合も、隣接する2つの樹脂層において、溶着部と露出部とが連続して形成されている場合には、露出部に帯状部15,15a,15bを形成することにより、各実施形態と同様な効果を奏する。
【0060】
本発明は、上述の実施形態および変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する本実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。