特許第6452677号(P6452677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452677
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】複合材用ガラス充填剤
(51)【国際特許分類】
   C03C 12/00 20060101AFI20190107BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 6/027 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   C03C12/00
   C03C3/085
   A61K6/027
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-513336(P2016-513336)
(86)(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公表番号】特表2016-520509(P2016-520509A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】EP2014059789
(87)【国際公開番号】WO2014184203
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2016年6月14日
(31)【優先権主張番号】13167781.7
(32)【優先日】2013年5月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】399011900
【氏名又は名称】クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kulzer GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ウェンリン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ヘンチャン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ウテロト
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−173410(JP,A)
【文献】 特開2008−024639(JP,A)
【文献】 特表2007−520523(JP,A)
【文献】 特開2000−210583(JP,A)
【文献】 特開平11−268929(JP,A)
【文献】 特開2009−286785(JP,A)
【文献】 特開平04−247006(JP,A)
【文献】 米国特許第05707440(US,A)
【文献】 米国特許第06353039(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0176843(US,A1)
【文献】 Schott GM27884 Dental Glass,MatWeb,米国,MatWeb, LLC,2018年10月31日,URL,http://www.matweb.com/search/datasheet_print.aspx?matguid=93af165437bf4f339cca157947dd1a8b
【文献】 Schott GM31685 Dental Glass,MatWeb,米国,MatWeb, LLC,2018年10月31日,URL,http://www.matweb.com/search/datasheet_print.aspx?matguid=c2d8549b332e4bd1821f9e89296d26ba
【文献】 Schott G018-093 Dental Glass,MatWeb,米国,MatWeb, LLC,2018年10月31日,URL,http://www.matweb.com/search/datasheet_print.aspx?matguid=3f98ba8ae0934ea1ba22dd8ef7b5e2cb
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00 − 6/033
C03C 12/00
C03C 3/076 − 3/093
INTERGLAD
MatWeb
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤であって、前記ガラス粒子が、マクロガラス粒子の外表面上に位置するミクロガラス粒子との結合を有する中心に位置するマクロガラス粒子を含有し、結合が前記粒子の材料からなり、且つガラス粒子の屈折率nが、n=1.50〜1.60の範囲であり、
前記マクロガラス粒子のサイズが、200〜600nmの範囲であり、前記マクロガラス粒子が、650℃よりも低い転移温度を有する歯科用ガラスから選択され、前記マクロガラス粒子が、n=1.50〜1.58の範囲の屈折率nを有し、かつ、
前記ミクロガラス粒子のサイズが100〜300nmの範囲であり、前記ミクロガラス粒子が、700℃よりも高い転移温度を有する歯科用ガラスセラミックスから選択され、前記ミクロガラス粒子が、n=1.52〜1.59の範囲の屈折率を有する、前記粒状ガラス充填剤。
【請求項2】
結合が前記マクロガラス粒子の材料からなる、請求項1に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項3】
前記マクロガラス粒子が、バリウム及び/又はストロンチウムを含む歯科ガラスから選択される、請求項1又は2に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項4】
前記マクロガラス粒子が、ケイ酸バリウムアルミニウムガラス及び/又はケイ酸ストロンチウムアルミニウムガラスを含む歯科用ガラスから選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項5】
前記ミクロガラス粒子が、750℃よりも高い転移温度を有する歯科用ガラスセラミックスから選択される、請求項1又は2に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項6】
前記ミクロガラス粒子が、800℃よりも高い転移温度を有する歯科用ガラスセラミックスから選択される、請求項1又は2に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項7】
前記ミクロガラス粒子のサイズが200nm+/−50nmの範囲である、請求項に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項8】
前記ミクロガラス粒子のサイズが180nm+/−50nmの範囲である、請求項に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項9】
前記ガラス粒子の平均粒径が、0.2〜1.0μmの範囲である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項10】
前記ガラス粒子の平均粒径が、0.3〜0.6μmの範囲である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項11】
ガラス充填剤が非晶質である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の粒状ガラス充填剤。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の屈折率n=1.50〜1.60を有するガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤の製造方法であって、以下の工程:
I.マクロ及びミクロガラス粒子を好適な溶媒を用いて分散する工程、その際、
前記マクロガラス粒子のサイズが、200〜600nmの範囲であり、前記マクロガラス粒子が、650℃よりも低い転移温度を有する歯科用ガラスから選択され、前記マクロガラス粒子が、n=1.50〜1.58の範囲の屈折率nを有し、かつ、
前記ミクロガラス粒子のサイズが100〜300nmの範囲であり、前記ミクロガラス粒子が、700℃よりも高い転移温度を有する歯科用ガラスセラミックスから選択され、前記ミクロガラス粒子が、n=1.52〜1.59の範囲の屈折率を有し、
II.600℃〜800℃で分散したマクロ及びミクロガラス粒子を焼結し且つ溶接する工程
III.焼結した、ミクロガラス粒子との結合を有するマクロガラス粒子を含有するガラス充填剤を室温に冷却する工程
IV.溶接した充填剤を好適な溶媒に分散する工程
V.前記ガラス充填剤を乾燥させる工程
を含み、
その際、ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤が得られる、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、粒状ガラス充填剤、その製造方法、及びそれを歯科用複合材に用いる使用に関する。本発明は、0.2〜1μmの平均粒径のガラス粒子が他の粒子と結合し、この結合が、ガラス材料自体によって行われている、粒状ガラス充填剤に関する。より正確には、粒状ガラス充填剤はガラス粒子を含み、その際、該粒子は、中心に位置するマクロガラス粒子及び外表面に位置するミクロガラス粒子を含有し、その際、マクロガラス粒子及びミクロガラス粒子は前記粒子の材料によって結合されている。更に、本発明は、ガラス粒子及び前記ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤の製造方法に関する。また、上記粒状ガラス充填剤を含む複合材又は歯科用材料にも関する。
【0002】
背景
重合により硬化される歯充填材料の分野では、Rafael L. BowenがビスフェノールA及びその誘導体とグリシジルメタクリレートとの長鎖モノマージメタクリレート反応生成物、特にいわゆるビス−GMA;及びその後まで使用されるメチルメタクリレートの代わりのプラスチックマトリックスを強化するための微細な石英ガラス粉末を導入したときに、これは大きな前進であると考えられた(米国特許第3,066,112号)。
【0003】
有機モノマーの他に、微細に分割された無機充填剤を含有する歯科用材料の更なる例は、米国特許第3539533号に記載されている。この場合、重合性結合剤は、約65〜75質量%の無機充填剤、例えば、二酸化ケイ素、ガラス、酸化アルミニウム又は石英と一緒に使用される、ビス−GMA、ビスフェノールAジメタクリレート、希釈モノマー、特にトリエチレングリコールジメタクリレート及び、必要な場合、少量のメタクリル酸の混合物である。無機充填剤は、約2〜85マイクロメートルの粒径であってよく、充填剤及び樹脂/充填剤との間の結合を改善するために、シラン、例えば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで前処理されている。
【0004】
良好な機械的特性を有する、歯、キャップ、人工歯及び類似物用の充填剤は、充填剤と樹脂との間の密着性を向上させるために、シラン材料で処理された、主にガラス、セラミックス材料又はガラスセラミックス材料の最も多様な化学組成の無機充填剤を含有する歯科用材料(複合材)から製造することができる。0.01〜0.4マイクロメートルの間の平均粒径を有する極微小の無機充填剤の使用は、また、審美的感覚の改善された歯科用プラスチック製品をもたらした。これらの製品は、高光沢に研磨されて、天然歯(DE2403211C3号)のものと同様の透明性を有し得る。
【0005】
いわゆるハイブリッド材料は、ミクロファイン充填剤だけでなく、従来の充填剤(マクロフィラー)も含有する樹脂系歯科用材料の開発における更なる工程を表す。かかる歯科用材料は、例えば、DE2405578C3号から知られている。これは、0.07マイクロメートルの最大粒径の微細に分割されたガラス、好ましくは、5マイクロメートルまでの粒径のケイ酸ホウ素ガラス、酸化バリウム又は酸化ランタンを含有するガラス又はリチウムアルミニウムシリケートガラスの火炎加水分解によって製造された30〜80質量%の非晶質ケイ酸の混合物(熱分解性二酸化ケイ素)を含有する。
【0006】
DE3403040C2号に記載された歯科用充填剤は、0.5〜40マイクロメートルの間の粒径分布を有するX線に対して不透明な5〜20質量%の充填剤、0.2〜15マイクロメートルの間の粒径分布を有するX線に対して不透明な20〜35質量%の充填剤及び5〜150ナノメートルの間の粒径分布を有する45〜75質量%の二酸化ケイ素ミクロ充填剤の60〜90質量%の充填剤混合物を含有する。
【0007】
ハイブリッド材料の更なる例は、重合可能なアクリレート又はメタクリレート及び光重合のための触媒(光活性化因子)の他に、0.1〜10マイクロメートルの間の平均粒径を有する5〜80質量%のシラン化ガラス又はシラン化ガラスセラミックス及び2〜10質量%の表面処理したミクロ充填剤を含有するEP382033A2号に記載された歯科用材料である。樹脂系歯科用材料を強化するために使用される無機充填剤は、主に、有機成分(DE3403040C2号)との適合性を改善し、充填剤とプラスチックマトリックスとの間の化学的付着を引き起こす、シラン、例えば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されている。充填剤/プラスチック結合の更なる改善は、物理的付着の可能性が化学的付着の他に存在する時に達成することができる。米国特許第4215033号での提案によれば、例えば、物理的付着は、二相ガラスをエッチングすることにより得られた半多孔質充填剤の使用によって提供することができる。
【0008】
米国特許第5707440A号は、異なる材料の小さな粒子で覆われている、より大きな充填剤粒子を記載している。より大きな粒子は、小さい粒子よりも低い融点を有し、典型的にはガラス粒子である。従って、融解範囲内での軟化時に、より大きな粒子は、より高い融点の、より小さな粒子で覆われている。冷却後、粒子を一緒に付着し続けると、米国特許第5707440A号の図1に例示されるような特別な種類の充填剤粒子を形成する。
【0009】
しかしながら、2種類の屈折率の異なる無機充填剤からのその構造のために、その欠点は、審美的な修復に適していない得られた複合材の限られた半透明性である。SiO表面装飾された歯科用ガラス充填剤の大きさは、中央のガラス粒子によって決定される。この種のより大きな粒子は、従来のサブミクロハイブリッド複合材と比較して改善された光沢安定性を提供することができない。
【0010】
ミクロ複合材は、産業重合及び研削によりヒュームドシリカ(例えば、アエロジル等)及び好適な(メタ)アクリレート架橋剤(例えばDCDMA、DDMA等)から作られた特別な予備重合充填剤粒子に基づいて、優れた美的特性を実行するために開発された。かかるミクロ充填剤複合材は、それらの永続的な光沢安定性のために高く評価されている。一般に最も成功したサブミクロハイブリッド複合材とナノハイブリッド複合材は、この利点を提供することができない。ミクロ複合材の問題は、クラスIII(及び制限付きクラスIV)の前方復元だけを可能にする100MPaよりも低い限定された曲げ強度である。更には、ミクロ充填剤複合材は、ヒュームドシリカのみの充填剤負荷による放射線不透過性を全く提供していない。
【0011】
新規な充填剤技術は、おそらく熱的手順により調製した凝集ナノ粒子を用いる3M−ESPEによってFILTEKで導入された。得られた凝集充填剤粒子は、同程度のサイズの小型の歯科用ガラス充填剤よりも柔らかい。FILTEK充填剤は、ヒュームドシリカの構造を模倣しており、これもシリカナノ凝集体で構築されているが、FILTEK充填剤はSiO(及び放射線不透過性を提供するためのZrO)からより強く構成され、且つ複合材の機械的性能を向上させている。高含有量のジルコニアは、放射線不透過性の水準を高める必要があるが、一方で同時に、透光性を減少させるという欠点をもたらす。
【0012】
発明の課題
従って、本発明の課題は、延長研磨作用が生じて、無機充填剤粒子を充填したプラスチックマトリックスの表面を摩耗した後でも、プラスチックマトリックスの表面に保持されている微細に分割した無機充填剤を提供することである。充填剤粒子は、都合良く、放射線不透過性でなければならない。
【0013】
更なる課題は、重合可能な歯科用材料での使用及びプラスチック材料の補強を意図した無機充填剤の製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の課題は、高い反射特性と良好な機械的特性を有する複合材を装備したガラス充填剤を提供することである。更なる課題は、異なる屈折率の材料から構築された技術水準の凝集体の欠点を回避する、粒状ガラス充填剤を提供することである。更に、歯科用ハイブリッド材料、特に、十分な光沢安定性と有利な取り扱い性を同時に有する複合材であるガラス充填剤を提供することも課題である。
【0015】
別の課題は、多量の充填剤で複合材を装填する可能性のあるガラス充填剤を提供することである。特に、十分な光沢安定性、有利な取り扱い性及び改善された審美的特性を有する複合材又は歯科用材料を提供することである。別の課題は、それらに多量のバリウム含有ガラス充填剤を充填した結果、良好なX線不透過性を有する複合材を提供することである。
【0016】
発明の概要
本発明は、概して、熱焼結によって一緒に熱的に溶接した、同一の屈折率を有する均一な充填剤粒子に関する。より正確には、本発明は、ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤であって、前記ガラス充填剤が、中心に位置するマクロガラス粒子を含有し、マクロ粒子の外表面にミクロガラス粒子が位置し、その際、マクロガラス粒子とミクロガラス粒子との間の結合が、前記粒子の材料のものであり、その際、前記粒状ガラス充填剤の屈折率nがn=1.50〜1.60の範囲である、前記粒状ガラス充填剤に関する。本発明は更に、記載されたガラス粒子の製造方法、前記ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤並びに上記粒状ガラス充填剤を含む複合材又は歯科用材料に関する。
【0017】
本発明によるガラス粒子は、マクロ粒子とミクロ粒子の凝集体であり、その際、ミクロ粒子は実質的にマクロ粒子の外表面上に配置されている。従って、本発明のガラス充填剤は、凝集した充填剤に属している。
【0018】
特許請求された粒状ガラス充填剤は、医学的組成物用途の、特に、歯科用組成物用途、例えば、複合材及び類似物用途の充填剤として定義されている。特に、歯科用充填剤が強く求められている。それらは、耐摩耗性及び耐汚染性であり且つ歯の色や外観上の高い基準の審美的要求を満さなければならない。これらの要件は、本発明の粒状ガラス充填剤によって満たされている。
【0019】
非晶質ガラス充填剤粒子を作る特別な技術によって分散され、乾燥される、ガラス充填剤材料は、一定の距離を維持し、特別な温度曲線下の焼結によって部分的に溶接一体化され、且つ保持機能を有する特別な微細構造表面を形成する。充填剤本体は、非晶質の多孔質構造である。歯科用材料、特にこの充填剤を有する樹脂複合材は、特殊な特扱い性と高光沢安定性によって区別されている。約0.2〜0.6μmの特に非常に小さなガラス粒子は、優れた光沢安定性を有する非常に有利な充填剤凝集体を構築するために使用することができる。本発明による変更を行わずに、高い充填剤負荷は、この粒径では達成できない。かかる充填剤凝集体は、良好な水準の放射線不透過性を提供する。本願明細書で使用される「凝集体」とは、特に、本発明による方法によって記載されるように、焼結することによって溶接一体化された複数の粒子の結果である。
【0020】
歯科用材料、特に、凝集した充填剤に基づく複合材(本発明による)は、恒久的な光沢安定性を提供し、有利な取り扱い性(モデリング挙動、形状安定性)を有する放射線不透過性複合材を構築する。
【0021】
図面の簡単な説明
図1aは、実施例1に記載されるような、焼結一体化した本発明の充填剤粒子のREM写真である。
図1bは、実施例1に記載されるような、焼結一体化した本発明の充填剤粒子のより詳細な模式画像である。
図1cは、焼結一体化した技術水準の充填剤粒子の詳細な模式画像である。
図2は、本発明外の複合材と比較した、本発明の複合材の曲げ強度を示す図である。
図3は、本発明外の複合材と比較した、本発明の複合材のヤング係数を示す図である。
図4は、本発明外の複合材と比較した、本発明の複合材の反射(歯ブラシ摩耗)を示す図である。
図5は、本発明外の複合材と比較した、本発明の複合材の平均粗さ(歯ブラシ摩耗)を示す図である。
図6は、本発明外のガラス充填剤と比較した、第2表に記載されるような異なる充填剤材料の平均深さ(ACTA法(ポピーシード))を示す図である。
図7は、本発明のガラス充填剤と比較した、第3表に記載されるような異なる充填剤材料の損失容量(ACTA法(ポピーシード))を示す図である。
【0022】
発明の詳細な説明
一般に、任意のガラス充填剤粒子が本発明に使用され得る。好ましいのは、例えば、ケイ酸ホウ素ガラス又はケイ酸アルミニウムガラス、例えば、ホウケイ酸バリウム又はケイ酸リチウムアルミニウム及びケイ酸バリウムアルミニウムで作られたガラスに基づいて作られた本発明の粒状ガラス充填剤に使用される従来の歯科用ガラス充填剤又は材料、特にケイ酸バリウム歯科用ガラス充填剤である。最も好ましい粒状ガラス充填剤は、ケイ酸バリウム及び/又はストロンチウムアルミニウム歯科用ガラスである。
【0023】
ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤において、ガラス粒子は、マクロ粒子の外表面に位置するミクロ粒子への結合を有する中心に位置するマクロ粒子を含有し、この結合は前記粒子の材料からなり、ガラス粒子の屈折率nはn=1.50〜1.60の範囲である。
【0024】
本発明によるマクロ粒子は、200nm〜1μm、特に400nm+/−200nmの範囲の粒径を有する粒子である。
【0025】
本発明によるミクロ粒子は、50nm〜390nmの範囲、特に200nm+/−100nmの範囲の粒径を有する粒子である。
【0026】
本発明による粒状ガラス充填剤は、0.2μm〜1.5μm、特に400nm+/−200nmの範囲の平均粒径を有するガラス粒子であり、ガラス粒子は、マクロ粒子の外表面に位置するミクロ粒子への結合を有する中心に位置するマクロ粒子を含有し、この結合は前記粒子の材料からなり、そしてガラス粒子の屈折率nは、n=1.50〜1.60の範囲である。
【0027】
好ましくは、上記の粒状ガラス充填剤は、マクロ粒子の材料からなる結合を含む。更に好ましくは、ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤は、バリウム及び/又はストロンチウムを含む歯科用ガラスから選択されるマクロ粒子を含む。最も好ましくは、本発明の粒状ガラス充填剤は、ケイ酸バリウムアルミニウム及び/又はケイ酸ストロンチウムアルミニウムを含む歯科用ガラスから選択されるマクロ粒子を含む。
【0028】
好ましいバリウム歯科用ガラス材料は、少なくとも25質量%のBaO、特に少なくとも30質量%のBaO、好ましくは少なくとも35質量%のBaOを含み、ケイ酸バリウムアルミニウム歯科用ガラス材料は、追加的にBaOの量に対して少なくとも5質量%のAl、特に少なくとも8質量%のAl、好ましくは少なくとも10質量%のAlを含む。
【0029】
好ましいストロンチウム歯科用ガラス材料は、少なくとも10質量%のSrO、特に少なくとも15質量%のSrO、好ましくは少なくとも25質量%のSrOを含み、ケイ酸ストロンチウムアルミニウム歯科用ガラス材料は、追加的にSrOの量に対して少なくとも5質量%のAl、特に少なくとも10質量%のAl、好ましくは少なくとも15質量%のAlを含む。
【0030】
特別な実施態様では、n=1.50〜1.60の範囲のガラス粒子の屈折率nを有する本発明のガラス充填剤は、バリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはケイ酸バリウムアルミニウム及び/又はケイ酸ストロンチウムアルミニウムを含む歯科用ガラスから作られたマクロ粒子を含む。
【0031】
実施態様では、本発明による粒状ガラス充填剤は、650℃よりも低い遷移温度を有する歯科用ガラスから選択されるマクロ粒子のガラス粒子を含む。650℃未満の遷移温度を有する、バリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはケイ酸バリウムアルミニウム及び/又はケイ酸ストロンチウムアルミニウムを含む歯科用ガラス材料が好ましい。n=1.50〜1.60の範囲の屈折率nを有する前記材料が最も好ましい。
【0032】
本発明の別の実施態様では、粒状ガラス充填剤は、n=1.50〜1.58の範囲の屈折率nを有するマクロ粒子のガラス粒子を含む。特に、これらのマクロ粒子は、好ましくは、650℃未満の遷移温度を有する、バリウム及び/又はストロンチウム及び追加的に、好ましくはケイ酸バリウムアルミニウム及び/又はケイ酸ストロンチウムアルミニウムを含む歯科用ガラス材料から作られている。
【0033】
好ましい実施態様では、本発明の粒状ガラス充填剤は、200〜600nm、特に400nm+/−100nm、更に好ましくは+/−50nmの範囲のサイズのマクロ粒子のガラス粒子を含む。特に、300〜500nmの範囲、好ましくは+/−50nm、好ましくは400nm+/−50nmの範囲である。
【0034】
本発明の粒状ガラス充填剤は、n=1.52〜1.59の範囲の屈折率nを有するミクロ粒子を含むガラス粒子を含む。特に前記ミクロ粒子は、n=1.50〜1.58の範囲の屈折率nを有する中心に位置するマクロ粒子に結合されている。好ましくは、ミクロ粒子とマクロ粒子とのこの組み合わせは、本発明の粒状ガラス充填剤のガラス粒子をもたらす。最も好ましくは、上記の組み合わせは、好ましくは、硬化性歯科用材料及び/又は複合材において本発明の粒状ガラス充填剤のガラス粒子として使用されている。屈折率は、歯科用材料の良好な透明度にとって重要な役割を果たす。
【0035】
本発明の別の実施態様では、ミクロ粒子を有するガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤は、マクロ粒子歯科用ガラス材料の遷移温度よりも高い、特に700℃よりも高い、特に750℃よりも高い、800℃よりも高い遷移温度を有する歯科用ガラスセラミックスから選択される。本発明の粒状ガラス充填剤の好ましい実施態様は、マクロ粒子及びミクロ粒子を含み、その際、それらの遷移温度は、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも70℃、最も好ましくは少なくとも100℃だけ異なる。特に、ケイ酸バリウム及び/又はストロンチウム、好ましくは、ケイ酸バリウム及び/又はストロンチウムアルミニウム歯科用ガラス材料で作られたマクロ粒子は、上記のミクロ粒子の歯科用ガラスセラミックス材料よりも高い遷移温度を示す。
【0036】
好適なセラミックス材料は、元素ケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、リチウム、及び/又はランタンの窒化物、炭化物又は酸化物である。Al、SiO、TiO、La、ZrO、LiO、P及びMgOが好ましい。
【0037】
ガラスセラミックスは、ベースガラスの制御された結晶化により製造された多結晶材料である。ガラスセラミックス材料は、ガラスやセラミックスの両方で多くの特性を共有している。ガラスセラミックスは、非晶質相及び1つ以上の結晶相を有し、自発的な結晶化とは対照的に、いわゆる「制御された結晶化」によって製造され、これは通常、ガラスの製造において望ましくない。ガラスセラミックスは、ガラスの製造上の利点だけでなくセラミックスの特殊な特性をも有する。ガラスセラミックスは、通常、30%[m/m]〜90%[m/m]の間の結晶性を有し、且つゼロ気孔率、高強度、靭性、半透明又は不透明度、低い又は更に負の熱膨張のような興味深い性質を有する材料の配列をもたらす。
【0038】
別の実施態様では、本発明の粒状ガラス充填剤は、100〜300nmの範囲、特に200nm+/−50nm、更に好ましくは180nm、特に+/−50nmの範囲のミクロ粒子を含む。特に、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、210nm、220nm又は230nmである。
【0039】
好ましい実施態様では、好ましくは0.2μm〜0.7μmの平均粒径を有するガラス粒子を含む本発明の粒状ガラス充填剤において、ガラス粒子は、
− マクロ粒子であって
− バリウム、好ましくはケイ酸バリウムアルミニウムを含む歯科用ガラスの、
− 400nm+/−50nmの範囲の、
− n=1.50〜1.58、好ましくはn=1.55+/−0.01の範囲の屈折率を有し且つ
− 任意に、650℃よりも低い、好ましくは630℃よりも低い、最も好ましくは630℃〜580℃の範囲の遷移温度を有する、前記マクロ粒子
及び
− ミクロ粒子であって、
− セラミックスを含む歯科用ガラスの、
− 200nm+/−50nmの範囲の、
− n=1.50〜1.58、好ましくはn=1.57+/−0.01の範囲の屈折率を有し且つ
− 任意に、700℃よりも高い、特に750℃よりも高い、最も好ましくは800℃よりも高い遷移温度を有する、前記ミクロ粒子
を含有し、
その際、マクロ粒子は中心に位置し、前記ミクロ粒子はマクロ粒子の外表面に結合している。好ましくは、マクロ粒子とミクロ粒子との間の結合は、少なくともマクロ粒子の材料で作られている。
【0040】
特にこれらの粒子の焼結及び溶接によって得られる、マクロ粒子とミクロ粒子との間の結合は、歯科用ガラス材料自体によって行われる。より正確には、この結合は、歯科用ガラス材料のバリウムのみ、ケイ酸バリウムアルミニウムのみ、ストロンチウムのみ、ケイ酸ストロンチウムアルミニウムのみ、セラミックスのみ又は上記の材料の少なくとも2つの組み合わせで作られ得る。
【0041】
ストロンチウムガラス材料が使用される場合、特にケイ酸ストロンチウムアルミニウムが使用される場合、前記材料は、屈折率n=1.51+/−0.01を有する。
【0042】
本発明による粒状ガラス充填剤及び上記の実施態様は、0.2μm〜1μmの範囲、好ましくは0.3μm〜0.8μmの範囲、更に好ましくは0.2μm〜0.7μmの範囲、最も好ましくは0.3μm〜0.6μmの範囲の平均粒径のガラス粒子を含む。
【0043】
上記のガラス粒子を含む上記の本発明の粒状ガラス充填剤は、好ましくは、非晶質、特に多孔質ガラス充填剤である。
【0044】
市販の歯科用ガラス粒子の例は、これに限定するものでないが、ガラスセラミックスGM31684、GM31685、バリウムガラスGM27884、GM39923、G018−053、8235、G018−186及びストロンチウムガラスGM32087、G018−093及びG018−163を含むショット社製のものである。図1bは、上記の歯科用ガラス粒子を含む本発明のガラス充填剤の模式画像であり、特に、中心に位置するマクロ粒子としてのGM27884(屈折率n=1.52)とGM27884に結合したミクロ粒子としてのGM31685(屈折率n=1.53)の組み合わせを表す。図1cは、ミクロ粒子としてのシリカ粒子(屈折率1.45)を有する技術水準の粒子の模式画像である。
【0045】
本発明の別の課題は、上記のような、本発明によるガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤、特に以下の工程:
I.特にボールミル又は固体を混合するのに適した他のミキサー内で、好適な溶媒を用いて、屈折率n=1.50〜1.60を有するガラス充填剤、特に、屈折率n=1.5〜1.60を有し、好ましくは1:1〜4のマクロ粒子対ミクロ粒子の比を有する上記のマクロ及び/又はミクロガラス充填剤粒子を分散させる工程、
II.分散したガラス充填剤、特に分散したマクロ及び/又はミクロガラス充填剤粒子を、450℃〜800℃で、焼結及び溶接する工程、
III.焼結したガラス充填剤、特にそれに結合したミクロガラス充填剤粒子を有するマクロガラス充填剤粒子を室温に冷却する工程、
IV.好ましくはマクロガラス粒子及びミクロガラス粒子を含む溶接した充填剤を分散させる工程であって、ミクロ粒子が、好適な溶媒、好ましくは無水アルコール中で、特に超音波分散機内で中心に位置するマクロ粒子に結合される、前記分散させる工程、
V.好ましくは、真空冷却乾燥機内で行われ、その際、ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤が得られる、前記ガラス充填剤の乾燥工程
を含む方法によって得られる上記のような粒状ガラス充填剤の製造方法である。特に、マクロ粒子の外表面に位置するミクロ粒子への結合を有する中心に位置したマクロ粒子を含有するガラス粒子が得られ、その際、これらの結合は前記粒子の材料からなり、ガラス粒子の屈折率nは、n=1.50〜1.60の範囲である。最も好ましくは、非晶質の粒状ガラス充填剤が得られる。
【0046】
工程Iで使用される溶媒は、好ましくは、水とアルコールの混合物、更に好ましくは、水と、混合物の合計に対して、0.01質量%〜1質量%のアルコール、最も好ましくは0.1質量%のアルコールである。分散工程は、好ましくは、30rpmで24時間行われる(以下の実施例1を参照のこと)。
【0047】
焼結前(工程II)に、分散した粒子を、好ましくは真空冷却乾燥機内で乾燥してもよい。工程Iは、一定間隔の非晶質のガラス充填剤粒子をもたらす。
【0048】
一般に、粒子は、個々の粒子が互いに距離を保つために、最初に分散処理が施されている。これは好ましくは好適な溶媒を用いて粉砕によって行われる。工程I後の溶媒の除去後、充填剤は有利には熱処理によって焼結一体化される(溶接工程II)。
【0049】
上記の方法の好ましい実施態様では、焼結(工程II)は、500℃〜770℃、更に好ましくは600℃〜750℃で行われる。焼結は、好ましくは1〜3時間行われる。本発明の方法の実施態様では、焼結及び溶接工程は、以下の温度曲線によって実施される:
− 室温から600℃(5℃/分)の後、700℃/710℃/720℃(2℃/分)まで加熱すること及び
− この温度を2時間維持すること;
− 700℃/710℃/720℃から300℃(2℃/分)まで冷却すること及び
− 室温まで自然に冷却すること(工程III)。
【0050】
上記の方法において、工程IVの処理は、好ましくは24時間、特に無水アルコール中で行われる。工程IV後に、保持機能を有する一定間隔のガラス粒子を含む非晶質の多孔質ガラス充填剤が得られる。
【0051】
任意に、粒状ガラス充填剤のシラン化、特に乾燥前の工程IV後にガラス充填剤の塩類化を実施することができる。シラン化は、好ましくは、回転蒸発器内で行われる。無水アルコールと溶接充填剤を有するスラリーを、回転フラスコに充填し、好適なシラン加水分解物を添加し、その後、アルコールを蒸発させる(シラン加水分解物の算出:0.00965×シラン化充填剤の質量×表面積)。最終的に、シラン化された本発明の粒状ガラス充填剤が、フラスコから除去され、特に特殊な圧延機により粉砕され、その後、好ましくは100メッシュの篩いを通して篩い分けされ、最終的な乾燥(工程V)前に約12時間これを維持する。このように、ガラス粒子を含むシラン化粒状ガラス充填剤において、ガラス粒子は、マクロ粒子の外表面に位置するミクロ粒子への結合を有する中心に位置するマクロ粒子を含有し、この結合は前記粒子の材料からなり、ガラス粒子の屈折率nは、n=1.50〜1.60の範囲である。
【0052】
別の実施態様では、本発明の方法は以下の工程:
− 上記の工程I〜V、
− 工程VIであって、
VI A 好適なシラン加水分解物によりスラリーを処理した後、アルコールを蒸発させること;
VI B 圧延機内で粉砕すること;
VI C 任意に100メッシュの篩いを通して、篩い分けすること;
VI D 任意に約12時間、生成物を保持すること;及び
VI E 最終的に乾燥させること
によって行われる、前記工程VI
を含む。
【0053】
本発明の方法の最も好ましい実施態様は、
− 工程I:3kgのガラス充填剤を、5mmのZrOボール12kgに加えて3200gの水及び0.1%のアルコールと一緒に、ミラー(10L)中に、30rpmで24時間分散させること、
− ガラス充填剤を真空乾燥機内で乾燥させること、
− 工程II〜III:ナーバザムN30/85HAを使用して上記の温度曲線を用いて焼結及び溶接すること、
− 工程IV:1750mlの無水アルコール中で、150gの溶接充填剤と一緒に特別な超音波分散機によって分散し、その際、分散を24時間行うこと、
− 好適なシラン加水分解物による上記のようなシラン化、及び
− 工程V:105℃で8時間の乾燥
を含む。
【0054】
本発明の別の課題は、ガラス粒子を含む粒状ガラス充填剤を歯科組成物材料に導入することによる、歯科組成物材料における耐摩耗性を維持しながら光沢安定性の改善法であって、ガラス粒子が、マクロ粒子の外表面に位置するミクロ粒子への結合を有する中心に位置するマクロ粒子を含有し、この結合が前記粒子の材料からなり、且つガラス粒子の屈折率nが、n=1.50〜1.60の範囲である、前記方法である。
【0055】
上記方法によって、特に、得られる歯科用材料の高光沢、改善された半透光性及び有利な放射線不透過性を提供する、前述のような粒状ガラス充填剤が得られる。
【0056】
焼結温度は、ガラス充填剤粒子の種類に依存し、一般に、450℃〜1000℃の間である。温度は、粒子が焼結の間に溶融し始めるように選択される。好ましくは、ミクロ粒子がマクロ粒子の溶融した表面に付着する時にミクロ粒子が保持されるように、マクロ粒子が溶融し始める。この時点で、マクロ粒子が溶融し始め、その一方、ミクロ粒子は、それらの高い遷移温度のために、固形を保つ。その結果、中心に位置するマクロ粒子と結合したミクロ粒子との間の結合は、好ましくは、上記のような前記マクロ粒子の歯科用ガラス材料で構築されている。
【0057】
原則的に、0.2〜0.6μmの粒径を有する任意の非晶質ガラス充填剤が適している。これはこのように商業的に入手してよく、又はより粗いガラス粒子を粉砕し且つ篩い分けすることによって製造してもよい。
【0058】
好適な溶媒がアルコールである場合、これは好ましくは低沸点アルコール、例えば、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールである。エタノールが好ましい。
【0059】
好適なシラン加水分解物が当業者に公知である。3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。本発明の溶接した充填剤、特に、上記のような本発明の方法によって得られる充填剤は、好適には、未硬化組成の60〜80質量%、好ましくは65〜75質量%の量で、歯科組成物において使用されてよい。
【0060】
図1aに示した透過型電子顕微鏡写真によって示されるような充填剤粒子のミクロ構造及びマトリックスでのそれらのアンカー及び図1cに示した技術水準の充填剤と比較した図1bにおける詳細な模式画像に関して記載されている。図1a中の明るい領域は充填剤粒子を表し、暗い領域はポリマーマトリックスを表す。充填剤粒子の形状が、マトリックス中に固定するために多くの可能性を与えることは明らかである。
【0061】
上記の方法によって得られる、上記の本発明の粒状ガラス充填剤を、歯科用材料、特に複合材に用いる使用も、本発明の課題である。
【0062】
本発明の更なる課題は、ガラス粒子を含む上記の粒状ガラス充填剤を含む歯科用材料であって、ガラス粒子が、上記の特徴の中心に位置するマクロ粒子と上記の特徴のミクロ粒子を含有し、これらのミクロ粒子が、マクロ粒子の外表面に、又は上記の方法によって得られる少なくともガラス充填剤に結合され、歯科用材料は未硬化又は硬化材料である、前記歯科用材料である。
【0063】
好ましくは、前記本発明の歯科用材料は、硬化材料において、30より高い、特に35より高い、更に特に40より高い、45より高い光沢度を有する。
【0064】
好ましくは、前記本発明の歯科用材料は、硬化材料において、4%より高い、特に4.5%より高い、更に特に5.0%より高い、6.0%より高い屈折率を有する。
【0065】
好ましくは、前記本発明の歯科用材料は、硬化材料において、5%より高い、特に6.0%より高い屈折率と合わせて、40より高い、特に45より高い、光沢度を有する。例えば、中心のマクロ粒子として0.4μmの粒径を有するGM27884及び前記マクロ粒子の外表面上に位置するミクロ粒子として0.18μmの粒径を有するGM31684を有する上記のガラス充填剤を含む本発明の歯科用材料の実施態様は、45より高い光沢度と6.0より高い屈折率を示す(図1a、1b)。
【0066】
本発明による充填剤を含有する、硬化性又は硬化した、歯科用材料の利点は、
非スランピングコンシステンシー(non slumping consistency)及び有利な加工性;
高速研磨性;
曲げ強度及びヤング係数で表される高い機械的強度;
粗さの値で表される、低摩耗、
高反射によって表される、高光沢安定性、特に、恒久的な光沢安定性であり、且つ有利な取り扱い性、特にモデル挙動及び形状安定性を有する放射線不透過歯科用材料を構築することである。
【0067】
更に、本発明は、従来の充填剤と比較してより高い充填剤負荷を可能にするので、これは、より高い合計量のバリウム含有歯科用ガラス充填剤を使用することによってX線不透過性を高めるための方法を提供する。
【0068】
本発明を詳細に説明するために、本発明による粒状複合充填剤の製造及び光を用いる照射によって重合可能な歯科用材料として使用するための複合充填剤を含有する配合物の製造が、次の実施例に記載されている。本発明による充填剤を使用して及び使用せずに異なる硬化歯科用材料の曲げ強度を測定して比較する。ヤング係数、平均粗さ及び反射の値を提示する。特に断らない限り、全てのパーセンテージは質量基準である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、焼結一体化した本発明の充填剤粒子の模式画像である。
図2図2は、本発明の複合材の曲げ強度を示す図である。
図3図3は、本発明の複合材のヤング係数を示す図である。
図4図4は、本発明の複合材の反射を示す図である。
図5図5は、本発明の複合材の平均粗さを示す図である。
図6図6は、異なる充填剤材料の平均深さを示す図である。
図7図7は、異なる充填剤材料の損失容量を示す図である。
【0070】
実施例
方法
歯科用材料の光沢度の測定方法
BYKガードナーGmbH社(82538ゲーレッツリード、独国)製の光沢試験装置(角度60°)を使用した。平均値を、試料当たり5回の測定から得た。
【0071】
歯科用材料の反射レベルの測定方法
表面レーザースキャナーシステム(OPM GmbH社、76275エットリンゲン、独国)を使用して、表面構造と粗さを分析した。レーザー光の反射度を使用して表面反射レベルを評価した。解像度を100P/mmに設定した。
【0072】
歯ブラシ摩耗とACTA法(ポピーシード)を、ISO−TS14569−1/−2に記載されているように実施した。結果を以下の第2表及び第3表にまとめる。
【0073】
実施例1:充填剤の製造
工程1:微粉砕
装置:ボールミル機(ミル化タンクの組成物は、基本的にガラス充填剤と同じである)
方法:3kgのガラス充填剤を、ミラー(10L)内に5mmのZrOボール(12kg)と一緒に入れ、3200gの蒸留水と0.1%のアルコールを加え、30rpmで24時間回転させる。
【0074】
工程2:ガラス充填剤の乾燥:
工程1で得られた微粉砕したガラス充填剤を、従来の真空冷却乾燥機内で乾燥させる。
【0075】
工程3:焼結及び溶接プロセス:
装置:ナーバザムN30/85HA空気循環室炉
方法:工程2で得られた生成物を炉内に導入し、室温から600℃(5℃/分)に加熱し、その後、700℃/710℃/720℃(2℃/分)に加熱し、2時間この温度に保つ;その後、700℃/710℃/720°Cから300℃(2℃/分)に冷却し、室温まで自然に冷却する。
【0076】
工程4:溶接充填剤の分散
装置:特別な超音波分散機
方法:工程3で得られた150gの溶接充填剤を、1750mlの無水アルコール中に入れて、24時間分散させる。
【0077】
工程5:シラン化充填剤の製造
装置:回転蒸発器
【0078】
方法:無水アルコールを有するスラリーを、工程4で得られた溶接した充填剤と一緒に回転式フラスコ中に入れ、好適なシラン加水分解物を加えて、アルコールを蒸発させる(シラン加水分解物の計算:0.00965×シラン化充填剤の質量×表面積);充填剤をフラスコから取り出す、従来の圧延機により粉砕し、その後、篩い分けする(100メッシュ);約12時間維持し;105℃で8時間、乾燥棚に入れる。
【0079】
実施例2:複合歯科用材料BHB、GM#201103での試験
充填剤含有歯科用複合材ペーストにおいて、従来の充填剤を異なる充填剤と交換し、以下に示す充填剤の組み合わせを混合して、当該技術分野で知られる光開始剤の存在下で光により重合させる。歯科用材料の複合材を以下の第1表にまとめる。
【0080】
図2及び図3に示した試験結果の成分
ビス−GMA:ビスフェノール−A−(ジ)−メタクリレート
TEGDMAとしても知られるTEDMA:トリエチレングリコール−ジメタクリレート
NF180:非常に微細なガラス充填剤、粒径d50=180nm(ショット社製、独国)粒径分布:d50:180+/−30nm、d99>/=500nm
ガラス溶接充填剤(695℃、0.4μ):従来のケイ酸バリウムガラス充填剤粒子、中心粒子の平均粒径は0.4μmであり、実施例1と同様に695℃で溶接する。
プレポリマー(又はスプリント”):架橋メタクリレートの存在下で重合した、シラン化熱分解法シリカを含有する粉砕ポリマー粒子。
【0081】
【表1】
【0082】
ガラス充填剤を以下の方法によって調製した。
− 工程I:3kgのガラス充填剤を、5mmのZrOボール12kgと一緒に、3200gの水と0.1%のアルコールを加えて、ミル(10L)内で、30rpmで24時間分散させる。ボールミル機を使用し、その際、ミルタンクの成分は、基本的にガラス充填剤と同じである。
− ガラス充填剤を真空乾燥機内で乾燥させる。
− 工程II−III:焼結と溶接を、以下の温度曲線で、ナーバザムN30/85HAによって実施する:
− 室温から600℃(5℃/分)に加熱し、その後、700℃/710℃/720℃(2℃/分)に加熱し、この温度を2時間維持する;
− 700℃/710℃/720℃から300℃(2℃/分)に冷却し、且つ
− 室温まで自然に冷却する(工程III)。
− 工程IV:150gの溶接した充填剤を、特別な超音波分散機を用いて、1750mlの無水アルコール中に分散させ、その際、分散を24時間行い、
− 粒状ガラス充填剤のシラン化を回転蒸発器内で行った。無水アルコールと溶接した充填剤を有するスラリーを、回転式フラスコ中に充填し、好適なシラン加水分解物を加え、その後、アルコールを蒸発させる(シラン加水分解物の算出:0.00965×シラン化充填剤の質量×表面積)。最終的に、シラン化した本発明の粒状ガラス充填剤を、フラスコから取り出し、圧延機内で粉砕し、その後、100メッシュの篩いで篩い分けし、最終的な乾燥前に約12時間保持する(工程V)。
− 工程V:105℃で8時間の乾燥。
【0083】
以下の複合材ペーストを重合して機械的試験に供す:
次のものから混合したペースト:
− ビス−GMA/TEDMA液体+ガラス溶接充填剤(675℃、0.4μm)+追加的にNF180、シラン化
− ビス−GMA/TEDMA+72% NF180+2% プレポリマー充填剤
− ビス−GMA/TEDMA+72% ガラス溶接充填剤(675℃、0.4μm)+2% プレポリマー充填剤
− ビス−GMA/TEDMA+72% 従来のケイ酸バリウムガラス充填剤(0.85μm)+2% プレポリマー充填剤(参照)
【0084】
図4〜7に示した試験結果の成分
プレポリマーの%:上記の通り;
0.85μmの%:従来のケイ酸バリウムガラス充填剤、平均粒径0.85μm
0.4μmの%:本発明によって様々な温度で溶接した充填剤
0.85μmの%:上記のような本発明NF180の範囲外の様々な温度で溶接した充填剤
上記のようなビス−GMA/TEDMAモノマー組成物70:30
【0085】
更なる省略形:
GM及び6桁の数字:様々なバッチ
BHB ヘレウス系列会社の省略形
以下のペーストを重合し;反射と粗さを測定した。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
結果の考察:曲げ強度とヤング係数(図2図3):
本発明による0.4μmの充填剤を含む本発明の範囲内の組成物は、従来の充填剤材料と比較して優れた曲げ強度及びヤング係数の値を示す。本発明による溶接した充填剤とプレポリマー(スプリント)との充填剤−組み合わせは、両方の試験において最も強い組成物である。
【0090】
結果の考察:平均粗さと反射(図4図5
本発明の範囲の少し外にある組成物(1.8μm、図の最も右にある黒とチェックの棒
)は、高い粗さを犠牲にして良好な反射値を示すことが分かる。
【0091】
これとは対照的に、本発明による0.4μmの溶接充填剤を含有する組成物についての結果(図の右にある水平方向と垂直方向のストライプの棒
)は、驚くことに、良好な耐摩耗性(即ち、低い粗さ)と良好な反射の最適なバランスを提供する。図の左からの最初の6つの棒によって表される残りの組成物は、低反射値だが、良好な耐摩耗性を示す技術水準の組成物である。ガラス充填剤[BHB、GM、VP110516/1Ju(72%の0.18μm+2%のプレポリマー]と[BHB、GM、VP110329/2Ju(70%の0.18μm+5%のプレポリマー]の両方が、6.2/7.1%の良好な反射を示すが、1.08/1.05μmのそれらの平均粗さは満足のいくものではない(表2)。
【0092】
[BHB、GM、VP110511/1Ju(72%の0.4μm/675℃+2%のプレポリマー)]は、上記の充填剤と比較して5.3%の悪化した反射を示すが、0.64%のより低い平均粗さを示す。
【0093】
Durafill(参照)は、7.1%の良好な反射率を示すが、0.60μmのその平均粗さと36.5の光沢度は、本発明のガラス充填剤と比べて良好ではない。
【0094】
対照的に、本発明によるガラス充填剤[BHB、GM#201103(56% 0.4μm/695℃+18.5% 0.18μm]は、6.4%の良好な反射率を示し、同時に、前述の充填剤の高い平均粗さ値よりも低い、0.49μmの非常に低い平均粗さを示す。
【0095】
更に、本発明のガラス充填剤は、31.9/32.1/37.5の[BHB、GM、VP110516/1Ju(72% 0.18μm+2%プレポリマー]、[BHB、GM、VP110329/2Ju(70% 0.18μm+5%プレポリマー]又は[BHB、GM、VP110511/1Ju(72% 0.4μm/675℃+2%プレポリマー)]の光沢度よりも顕著に高い、47.4の光沢度を示す(表2参考)。
【0096】
このように、本発明の方法によって得られる、0.4μmのマクロガラス粒子と0.18μmのミクロ粒子を含む本発明のガラス充填剤は、驚くことに、上記の公知の充填剤と比較して、改善された耐摩耗性(即ち、低い粗さ)と良好な反射率との最適なバランス並びに高い光沢度を提供する。
【0097】
図の左から最初の6つの棒で表される残りの組成物は、低反射率(図4)及び大幅に悪化した光沢度(表2)であるが、本発明のガラス充填剤に匹敵する平均粗さ(図5)を示す技術水準の組成物である。
【0098】
結果の考察:平均深さと損失容量(表3、図6及び7)
本発明によるガラス充填剤[BHB、GM#201103(56% 0.4μm/695℃+18.5% 0.18μm]は、45.6/45.3μmの平均深さと0.4334/0.4271mmの容量の損失(第3表)を示す、マクロ粒子[BHB、GM、VP110516/1Ju(72% 0.18μm+2%プレポリマー]及び[BHB、GM、VP110329/2Ju(70% 0.18μm+5%プレポリマー]の外表面上のプレポリマーと合わせた技術水準のガラス充填剤と比較して、39.3μmの減少した深さと0.3871mmの減少した容量の損失を示す。
【0099】
試験結果のまとめ
要約すると、0.4μmの溶接ガラス粒子を有する組成物は、機械的強度と反射率(光沢安定性)との間の最適なバランスを示し且つ非常に良好な機械的強度を有する。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7