(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452709
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】エアロゾル形成基体を加熱するための誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20190107BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20190107BHJP
A24F 47/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
H05B6/10 371
H05B6/36 E
A24F47/00
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-552513(P2016-552513)
(86)(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公表番号】特表2017-516256(P2017-516256A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015061200
(87)【国際公開番号】WO2015177255
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】14169191.5
(32)【優先日】2014年5月21日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特表平08−511175(JP,A)
【文献】
特開2003−323970(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0277362(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101390659(CN,A)
【文献】
国際公開第2013/060743(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
A24F 47/00
H05B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サセプタ(21)を備えたエアロゾル形成基体(20)を加熱するための誘導加熱装置(1)であって、前記誘導加熱装置(1)が、
−装置ハウジング(10)と
−DC供給電圧(VCC)を有するDC電源(11)と、
−高周波で動作するように構成された電源回路(13)であって、前記電源回路(13)が前記DC電源(11)に接続されたDC/ACインバータ(132)を備え、前記DC/ACインバータが、トランジスタスイッチ(1320)、トランジスタスイッチ駆動回路(1322)、および低オーム負荷(1324)で動作するように構成されたLC負荷ネットワーク(1323)を含むクラスE電力増幅器を含み、また前記LC負荷ネットワーク(1323)が分路コンデンサー(C1)および直列接続のコンデンサー(C2)およびオーム抵抗(RCoil)を持つインダクタ(L2)を含むものと、
−前記装置ハウジング(10)内に配置されたくぼみ(14)であって、前記くぼみ(14)が前記エアロゾル形成基体(20)の少なくとも一部分を収容するような形状を持つ内部表面を持ち、前記くぼみ(14)が、前記エアロゾル形成基体(20)の前記少なくとも一部分が前記くぼみ内に収容されると、前記LC負荷ネットワーク(1323)の前記インダクタ(L2)が動作時に前記エアロゾル形成基体(20)の前記サセプタ(21)が誘導結合されるように配置されるものとを含む、誘導加熱装置。
【請求項2】
装置が喫煙物品(2)のエアロゾル形成基体(20)を加熱するために構成されている、請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記装置が喫煙物品(2)のたばこを豊富に含む固体エアロゾル形成基体(20)を加熱するために構成されている、請求項2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記DC電源(11)の前記DC供給電圧(VCC)が前記約2.5ボルト〜約4.5ボルトの範囲内であり、また前記DC電源(11)のDC供給アンペア数が前記約2.5アンペア〜約5アンペアの範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記電源回路(13)の総体積が2cm3以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
LC負荷ネットワーク(1323)のインダクタ(L2)が、長楕円形の形状を持つらせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイル(r、l)を備え、約0.15cm3〜約1.10cm3の範囲の内部体積を画定し、また前記らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルが前記くぼみ(14)の内部表面上かまたはそれに隣接して位置する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項7】
前記装置ハウジング(10)が実質的に円筒形の形状を持ち、前記くぼみ(14)が前記装置ハウジング(10)の近位端に配置され、かつ前記DC電源(11)が前記装置ハウジング(10)の遠位端に配置され、また前記電源回路(13)が前記DC電源(11)および前記くぼみ(14)の間に配置される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項8】
前記DC電源(11)が再充電可能DC電池を備えた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項9】
前記電源回路(13)がさらに、動作時に前記エアロゾル形成基体(20)の前記サセプタ(21)の温度が前記サセプタ(21)のキュリー温度を超えた時に前記DC/ACインバータによるAC電力の生成を中断するようにプログラムされ、また前記サセプタ(21)の温度がこのキュリー温度よりも低く再び冷めた時にAC電力の生成を再開するようにプログラムされた、マイクロコントローラ(131)を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項10】
前記クラスE電力増幅器が、出力インピーダンスを持ち、また前記電源回路(13)がさらに前記クラスE電力増幅器の前記出力インピーダンスを低オーム負荷(1324)に整合するための整合ネットワーク(133)を備えた、請求項1〜9のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の誘導加熱装置(1)およびサセプタ(21)を備えるエアロゾル形成基体(20)を備えた誘導加熱システムであって、前記エアロゾル形成基体(20)の少なくとも一部が、前記誘導加熱装置(1)の前記DC/ACインバータ(132)の前記LC負荷ネットワーク(1323)の前記インダクタ(L2)が動作時に前記エアロゾル形成基体(20)の前記サセプタ(21)に誘導結合されるように前記誘導加熱装置(1)の前記くぼみ(14)内に収容される、誘導加熱システム。
【請求項12】
前記エアロゾル形成基体(20)が喫煙物品(2)のエアロゾル形成基体である、請求項11に記載の誘導加熱システム。
【請求項13】
前記喫煙物品(2)の前記エアロゾル形成基体(20)が、たばこを豊富に含む固体エアロゾル形成基体である、請求項12に記載の誘導加熱システム。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の誘導加熱装置(1)およびサセプタ(21)を備えるエアロゾル形成基体(20)を備えたキットであって、前記誘導加熱装置(1)および前記エアロゾル形成基体(20)が、動作時に、前記エアロゾル形成基体(20)の少なくとも一部が、前記誘導加熱装置(1)の前記DC/ACインバータ(132)の前記LC負荷ネットワーク(1323)の前記インダクタ(L2)が前記エアロゾル形成基体(20)の前記サセプタ(21)に誘導結合されるように前記誘導加熱装置(1)の前記くぼみ(14)内に収容される、キット。
【請求項15】
前記エアロゾル形成基体(20)が喫煙物品(2)のエアロゾル形成基体である、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記喫煙物品(2)の前記エアロゾル形成基体(20)が、たばこを豊富に含む固体エアロゾル形成基体である、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
誘導加熱システムの動作方法であって、前記方法が、
−DC供給電圧(VCC)を有するDC電源(11)を提供する工程と、
−高周波で動作するように構成された電源回路(13)を提供する工程であって、前記電源回路(13)が前記DC電源(10)に接続されたDC/ACインバータ(132)を備え、前記DC/ACインバータ(132)が、トランジスタスイッチ(1321)、トランジスタスイッチ駆動回路(1322)、および低オーム負荷(R)で動作するように構成されたLC負荷ネットワーク(1323)を含むクラスE電力増幅器を含み、ここで前記LC負荷ネットワーク(1323)が分路コンデンサー(C1)および直列接続のコンデンサー(C2)およびオーム抵抗(RCoil)を持つインダクタ(L2)を含むものと、
−エアロゾル形成基体(20)の少なくとも一部分を収容する能力のあるくぼみ(14)を提供する工程であって、前記くぼみ(14)が前記エアロゾル形成基体(20)の前記少なくとも一部分が前記くぼみ内に収容されると、前記LC負荷ネットワーク(1323)の前記インダクタ(L2)が前記エアロゾル形成基体(20)のサセプタ(21)に誘導結合されるように配置されているものを提供する工程と、
−サセプタ(21)を備え、かつ前記LC負荷ネットワーク(1323)の前記インダクタ(L2)が前記エアロゾル形成基体(20)の前記サセプタ(21)に誘導結合されるように、前記エアロゾル形成基体(20)の少なくとも一部分を前記くぼみ(14)に挿入するエアロゾル形成基体(20)を提供する工程とを含む、方法。
【請求項18】
前記DC電源(11)が再充電可能電池であり、かつ前記方法がさらに、前記エアロゾル形成基体(20)の前記少なくとも一部分を前記くぼみ(14)に挿入する前に、前記再充電可能電池を充電する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル形成基体を加熱するための誘導加熱装置に関連し、喫煙物品のエアロゾル形成基体を加熱するための誘導加熱装置に特に関連する。
【背景技術】
【0002】
既知のさらに従来的な喫煙物品、例えば紙巻たばこは、燃焼過程の結果として風味および芳香をユーザーに送達する。可燃性材料(主にたばこ)の塊は燃焼し、材料の隣接した部分はそれを通して引き込まれた適用された熱の結果として熱分解するが、典型的な燃焼温度は喫煙中に800℃を超える。この加熱中、可燃性材料の非能率的な酸化が発生し、様々な蒸留および熱分解の産物が産出される。これらの産物が喫煙物品の本体を通してユーザーの口に向けて引き込まれるにつれて、それらは冷却され凝縮して、喫煙に関連付けられた風味および芳香を消費者に与えるエアロゾルまたは蒸気を形成する。
【0003】
さらに従来的な喫煙物品に対する過去の代替品には、可燃性材料それ自体は喫煙者が吸い込むエアロゾルに風味剤を直接提供しない物品が含まれる。これらの喫煙物品では、一般に炭素質の可燃性発熱体は、発熱体から、また風味付けされたエアロゾルを放出する加熱により活性化される要素を含むゾーンを通して引き込まれる際に、燃焼して空気を加熱する。
【0004】
さらに従来的な喫煙物品のなお別の代替品は、エアロゾルを形成するたばこを豊富に含む基体に熱的に近接して配置された、磁気透過性がありかつ導電性のサセプタを備えたエアロゾルを形成するたばこを豊富に含む固体基体を含む。たばこを豊富に含む基体のサセプタは、交番磁界がサセプタ内で誘導されるように、誘導源によって生成された交番磁界に晒される。
【0005】
この誘導された交番磁界はサセプタ内に熱を発生し、また少なくともサセプタ内に生成された熱の一部は、サセプタからサセプタに熱的に近接して配置されたエアロゾル形成基体に伝達されてエアロゾルを生成し、望ましい風味を出す。
【0006】
エアロゾル形成基体、より具体的にはサセプタを含む固体エアロゾル形成基体、例えば喫煙物品の固体エアロゾル形成基体のための誘導加熱装置の必要性がある。誘導加熱装置は、外部電源に接続する必要なしに動作可能であるべきである。さらに、装置はユーザーにとって魅力的であるように全体的なサイズが小さく、かつ使用しやすいべきである。装置は、サセプタ内で要求される熱を急速に発生できるものであるべきで、この熱はその後エアロゾルを発生させて、ユーザーが要求に応じてエアロゾルを吸い出すことができるようにするためにエアロゾル形成基体に伝達される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様によれば、サセプタを備えたエアロゾル形成基体を加熱するための、特に喫煙物品の固体エアロゾル形成基体を加熱するための誘導加熱装置が提案されている。本発明による誘導加熱装置は、
−装置ハウジングと、
−DC供給電圧を持つDC電源と、
−高周波で動作するように構成された電源回路であって、電源回路がDC電源に接続されたDC/ACインバータを備え、DC/ACインバータがトランジスタスイッチおよび低オーム負荷で動作するよう構成されたLC負荷ネットワークを含むクラスE電力増幅器を含み、ここでLC負荷ネットワークは、分路コンデンサーおよび直列接続のコンデンサーおよびあるオーム抵抗を持つインダクタを含むものと、
−装置ハウジング内に配列されたくぼみであって、くぼみがエアロゾル形成基体の少なくとも一部を収容する形状の内部表面を持ち、エアロゾル形成基体の一部がくぼみ内に収容された際に、動作時にLC負荷ネットワークのインダクタがエアロゾル形成基体のサセプタに誘導的に結合されるようにくぼみが配列されているものとを備える。
【0008】
エアロゾル形成基体は、エアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出する能力を持つ基体であることが好ましい。揮発性化合物はエアロゾル形成基体の加熱により放出される。エアロゾル形成基体は固体でも液体でもよく、固体および液体の両方の成分を含んでもよい。好ましい1つの実施形態で、エアロゾル形成基体は固体である。
【0009】
エアロゾル形成基体はニコチンを含む場合がある。ニコチンを含有するエアロゾル形成基体はニコチン塩マトリクスとしうる。エアロゾル形成基体は植物由来材料を含みうる。エアロゾル形成基体はたばこを含みうるが、たばこ含有材料は揮発性のたばこ風味化合物を含むことが好ましく、これが加熱に伴いエアロゾル形成基体から放出される。
【0010】
エアロゾル形成基体は均質化したたばこ材料を含みうる。均質化したたばこ材料は、粒子状たばこを凝集することによって形成されうる。存在する場合、均質化したたばこ材料のエアロゾル形成体含有量は、乾燥重量で5%以上であり、乾燥重量で5〜30重量パーセント以上であることが好ましい。
【0011】
別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ含有材料を含みうる。エアロゾル形成基体は均質な植物由来材料を含みうる。
【0012】
エアロゾル形成基体は少なくとも1つのエアロゾル形成体を含んでもよい。エアロゾル形成体は、使用時に、密度が高く安定したエアロゾルの形成を促進し、エアロゾル発生装置の使用温度で実質的に熱劣化耐性のある任意の適切な公知の化合物または化合物の混合物としうる。適切なエアロゾル形成体は当業界で周知であり、多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオールおよびグリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチルおよびテトラデカン二酸ジメチルなど)を含むが、これに限定されない。特に好ましいエアロゾル形成体は多価アルコールまたはその混合物(トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオールおよびグリセリン(最も好ましい)など)である。エアロゾル形成基体は、その他の添加物および成分(風味剤など)を含みうる。エアロゾル形成基体はニコチンおよび少なくとも一つのエアロゾル形成体を含むことが好ましい。特に好ましい実施形態で、エアロゾル形成体はグリセリンである。
【0013】
DC電源は一般的に、特に本線に接続される電源供給ユニット、一つ以上の使い捨て電池、再充電可能電池、または要求されるDC電源電圧および要求されるDC電源アンペア数を供給する能力を有するその他の任意の適切なDC電源を含む、適切な任意のDC電源を備えうる。一つの実施形態で、DC電源のDC電源電圧は約2.5ボルト〜約4.5ボルトの範囲であり、DC電源アンペア数は約2.5〜約5アンペアの範囲(DC電源電力約6.25ワット〜約22.5ワットの範囲に相当)である。DC電源は再充電可能電池を備えることが好ましい。こうした電池は一般的に入手可能であり、およそ1.2〜3.5立方センチメートルの許容可能な全体体積を持つ。こうした電池は、実質的に円筒形または長方形の固体形状を持ちうる。また、DC電源はDCフィードチョークを含みうる。
【0014】
原則として、特定の値に関連して「約」という用語が本明細書全体を通して使用される時はいつでも、「約」という用語に続く値は、技術的な考慮事項のため、厳密に正確なその特定の値を持つ必要はないと理解される。ただし、特定の値に関連して使用される「約」という用語は常に、用語「約」に続く特定の値を含み、かつ明示的に開示するものと理解される。
【0015】
電源回路は高周波で動作するよう構成される。本明細書の目的では、「高周波」という用語は、約1メガヘルツ(MHz)〜約30メガヘルツ(MHz)(1 MHz〜30 MHzの範囲を含む)、特に約1メガヘルツ(MHz)〜約10 MHz(1 MHz〜10 MHzの範囲を含む)、およびさらには約5メガヘルツ(MHz)〜約7メガヘルツ(MHz)(5 MHz〜7 MHzの範囲を含む)の範囲の周波数を意味するものと理解される。
【0016】
電源回路は、DC電源に接続されたDC/ACインバータを備える。DC/ACインバータは、トランジスタスイッチ、トランジスタスイッチ駆動回路、およびLC負荷ネットワークを含む、クラスE電力増幅器を含む。クラスE電力増幅器は一般的に公知であり、例えば、論文「Class−E RF Power Amplifiers(クラスEのRF電力増幅器)」(Nathan O. Sokal著、隔月雑誌QEX、2001年1月/2月号、9−20ページ、American Radio Relay League(ARRL)(米国コネチカット州ニューイントン)で公表)で詳細に説明されている。クラスE電力増幅器は、高周波数での動作に関して有利であり、それと同時に最小数の構成要素を備えた単純な回路構造を持つ(例えば、1個のトランジスタスイッチのみを必要とするが、これは、2個のトランジスタの一方がオンになっている時に2個のトランジスタのもう一方が確実にオフになるようにする方法で高周波数で制御されなければならない2個のトランジスタスイッチを備えた、クラスD電力増幅器に比べて有利である)。さらに、クラスE電力増幅器については、スイッチング移行中のスイッチングトランジスタでの電力損失が最小であることが公知である。クラスE電力増幅器は、単一のトランジスタスイッチのみを持つシングルエンドの一次クラスE電力増幅器であることが好ましい。
【0017】
クラスE電力増幅器のトランジスタスイッチは、任意のタイプのトランジスタとすることができ、バイポーラジャンクショントランジスタ(BJT)として埋め込んでもよい。ただし、トランジスタスイッチは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)などの、電界効果トランジスタ(FET)として埋め込まれることがより好ましい。
【0018】
本発明による誘導加熱装置のクラスE電力増幅器のLC負荷ネットワークは、低オーム負荷を動作するよう構成されている。「低オーム負荷」という用語は、約2オーム未満のオーム負荷を意味するものと理解される。LC負荷ネットワークは、分路コンデンサー、およびコンデンサーとあるオーム抵抗を持つインダクタとの直列接続を含む。インダクタのこのオーム抵抗は一般に十分の数オームである。作動時に、サセプタのオーム抵抗はインダクタのオーム抵抗に追加され、インダクタのオーム抵抗よりも高くなるべきだが、これは供給される電力が、電力増幅器の効率を増やすために、またエアロゾルを効果的に生成するためにサセプタからエアロゾル形成基体の残りの部分にできるだけたくさんの熱の伝達が許容されるように、サセプタ内でできるだけ広範囲に熱に変換されるべきためである。
【0019】
サセプタは誘導的に加熱されうる導体である。「熱的な近接さ」は、適切な量の熱がサセプタからエアロゾル形成基体の残りの部分に伝達されてエアロゾルを生成するように、サセプタがエアロゾル形成基体の残りの部分に対して位置していることを意味する。
【0020】
サセプタは、磁気透過性であるだけでなく、導電性である(導体である、上記参照)ため、渦電流として知られている電流がサセプタ内で生成され、オームの法則に従いサセプタ内を流れる。ジュール熱放散を増やすためにサセプタは低い電気抵抗ρを持つべきである。さらに、表皮効果の理由から、交流の渦電流の周波数が考慮されなければならない(98%を超える電流が、導体の外側表面から表皮の深さδの4倍の層内を流れる)。この点を考慮に入れると、サセプタのオーム抵抗R
Sは、次式で計算される。
【数1】
式中、
f は交流渦電流の周波数を示す。
μ
0 は自由空間の透磁率を示す。
μ
r はサセプタの材料の相対的透磁率を示す。
ρ は、サセプタの材料の電気抵抗を示す。
【0021】
渦電流により生成される電力損失P
eは次式で計算される。
P
e = I
2・R
S
式中、
Iは渦電流のアンペア数(rms)を示す。
R
Sはサセプタの電気抵抗を示す(上記参照)。
【0022】
このP
eの式およびR
Sの計算から、既知の相対透磁率μ
rおよび所定の電気抵抗ρを持つ材料について、渦電流により(熱への変換によって)発生する電力損失P
eは、周波数の増大およびアンペア数(rms)の増大に伴い増加することが明らかなことがわかる。一方、交流渦電流(また、それに対応してサセプタ内で渦電流を誘起する交番磁界)の周波数は、渦電流を発生させるには表皮の深さが小さすぎるため一定のカットオフ周波数より上ではサセプタ内で渦電流をそれ以上生成できなくなるように、渦電流(またはサセプタ内に渦電流を誘起する交番磁界)の周波数の増大に伴い表皮の深さδは減少するため、任意に増大させることはできない。アンペア数(rms)の増大には、高い磁束密度を持つ交番磁界を必要とし、従って多量の誘導源(インダクタ)を必要とする。
【0023】
さらに、ヒステリシスに関連付けられた加熱メカニズムによってサセプタ内で熱が発生する。ヒステリシスによって生成された電力損失は次式で計算される。
P
H = V ・ W
H ・ f
式中、
Vはサセプタの体積を示す。
W
Hは、B−H図中で閉ヒステリシスループに沿ってサセプタを磁化するために必要な仕事を示す。
fは交番磁界の周波数を示す。
【0024】
サセプタを閉ヒステリシスループに沿って磁化するために必要な仕事W
Hは、次式としても表現できる。
【数2】
【0025】
W
Hの最大可能な量は、サセプタの材料属性(飽和残留磁束密度B
R、抗磁性H
C)に依存し、W
Hの実際の量はサセプタ内で交番磁界によって誘起される実際の磁化B−Hループに依存し、またこの実際の磁化B−Hループは磁気励起の大きさに依存する。
【0026】
サセプタ内で熱(電力損失)を発生させる第三のメカニズムがある。この発熱は、サセプタが外部の交番磁界に晒される時に透磁性のあるサセプタ材料内の磁区の動的損失に起因し、これらの動的損失はまた一般的に交番磁界の周波数の増大に伴い増加する。
【0027】
上述のメカニズム(主に、渦電流損失およびヒステリシス損失による)に従い、サセプタ内で熱を発生できるようにするために、くぼみを装置ハウジング内に配列する。くぼみは、エアロゾル形成基体の少なくとも一部を収容する形をした内部表面を持つ。くぼみは、くぼみ内にエアロゾル形成基体の一部が収容されると、動作時にLC負荷ネットワークのインダクタがエアロゾル形成基体のサセプタに誘導結合されるように配列される。これは、クラスE電力増幅器のLC負荷ネットワークのインダクタが、磁気誘導によってサセプタを加熱するために使用されることを意味する。これにより、クラスE電力増幅器の出力インピーダンスを負荷に整合させるための整合ネットワークなどの追加的構成要素の必要性がなくなり、従って、電源回路のサイズのさらなる最小化が許容される。
【0028】
全体的に、本発明による誘導加熱装置は、基体の無接触加熱のために、小型で使いやすく、効率的、清潔および堅牢な加熱装置を提供する。サセプタは、上記で指定した通り低オーム負荷を形成し、その一方でLC負荷ネットワークのインダクタの抵抗よりも著しく高いオーム抵抗を持つため、従って、わずか5秒でまたはさらには5秒未満の時間間隔で摂氏300〜400度の範囲のサセプタ温度に達することが可能で、その一方で同時に(電力の大部分がサセプタ内で熱に変換されることにより)インダクタの温度は低い。
【0029】
すでに言及した通り、本発明による誘導加熱装置の一つの態様によれば、装置は、喫煙物品のエアロゾル形成基体を加熱するために構成されている。これは特に、エアロゾル形成基体が摂氏200〜240度の間の平均温度に加熱されるように、その電力がエアロゾル形成基体内のサセプタに供給されることを含む。さらに、装置はたばこを豊富に含む固体喫煙物品のエアロゾル形成基体を加熱するために構成されることがより好ましい。
【0030】
本発明による誘導加熱装置のさらなる態様によれば、電源回路の合計体積は2cm
3以下である。これにより、便利で扱いやすい全体的に小型のサイズを持つ装置ハウジング内の電池、電源回路およびくぼみの配列が可能となる。
【0031】
本発明による誘導加熱装置のさらなる態様によれば、長楕円形の形状を有し、かつ約0.15cm
3〜約1.10cm
3の範囲の内部体積を画定する、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルを含む、LC負荷ネットワークのインダクタを備える。例えば、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルの内径は約5mm〜約10mmとしうるが、好ましくは約7mmとすることができ、またらせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルの長さは約8mm〜約14mmとしうる。コイルワイヤーの直径または厚さは、円形断面のコイルワイヤーまたは平坦な長方形の断面のコイルワイヤーのどちらが使用されるかに応じて約0.5mm〜約1mmとしうる。らせん状に巻かれたインダクタコイルはくぼみの内部表面上またはそれに隣接して配置される。くぼみの内部表面上またはそれに隣接して配置されたらせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルにより、装置のサイズがさらに最小化される。
【0032】
本発明による誘導加熱装置のなお別の態様によれば、装置ハウジングは、くぼみが装置ハウジングの近位端に配置され、DC電源が装置ハウジングの遠位端に配置されている、実質的に円筒形の形状を持つ。電源電子回路はDC電源とくぼみの間に配置される。これにより、小型で取り扱いやすい装置ハウジング内での誘導加熱装置のすべての構成要素のスペース節約および審美的に心地よい配置が可能となる。
【0033】
既に上述した通り、本発明による誘導加熱装置の別の態様によれば、DC電源は再充電可能なDC電池を備える。これにより、好ましくはAC/DCコンバータを備えた充電装置を介した本線への接続によって、電池の再充電が許容される。
【0034】
本発明による誘導加熱装置のさらに別の態様によれば、電源回路はさらに、動作中にエアロゾル形成基体のサセプタの温度がサセプタのキュリー温度を超えた時にDC/ACインバータによるAC電力の生成を妨害するようにプログラムされ、またサセプタの温度がこのキュリー温度よりも低く冷めた時にAC電力の生成を再開するようにプログラムされたマイクロコントローラを含む。この特徴は、マイクロコントローラの助けを借りるサセプタ温度の制御に使用できる。
【0035】
サセプタが単一の材料でできている場合、キュリー温度はサセプタが持つべき最高温度に対応すべきである(すなわち、キュリー温度はサセプタが加熱されるべき最高温度と等しいか、またはこの最高温度から約1〜3%だけ逸脱した温度である)。サセプタの温度がこの単一材料のキュリー温度を超えると、サセプタの強磁性属性はもはや存在せず、サセプタは常磁性のみとなる。
【0036】
サセプタが複数の材料でできている場合、サセプタの材料はさらなる態様に関して最適化できる。例えば材料は、サセプタの第一の材料がサセプタが加熱されるべき最高温度を超えるキュリー温度を持ちうるように選択できる。次にサセプタのこの第一の材料は(例えば、最大発熱に関して)最適化され、エアロゾル形成基体の残りの部分に伝達されて、一方においてはサセプタの効率的な加熱が提供されうるが、ここでサセプタは、追加的にサセプタが加熱されるべき最高温度に対応するキュリー温度を持つ第二の材料を備えることができ、サセプタがこのキュリー温度に達するとサセプタの磁気属性は全体として変化する。この変化は検出されてマイクロコントローラに通信されることができ、その後、温度が再びこのキュリー温度よりも低い温度に冷めるまでAC電力の発生が妨害され、冷めた後でAC電力の発生が再開される。
【0037】
本発明による誘導加熱装置の別の態様によれば、クラスE電力増幅器は出力インピーダンスを持ち、また電源回路はさらに、クラスE電力増幅器の出力インピーダンスを低オーム負荷に整合させるための整合ネットワークを備える。この手段は、低オーム負荷内での電力損失をさらに増大させて、低オーム負荷での熱の発生の増大につなげるのに有用でありうる。例えば、整合ネットワークは小型の整合変成器を含みうる。
【0038】
本発明のなおさらなる態様は、上述の任意の実施形態に従った誘導加熱装置およびサセプタを備えるエアロゾル形成基体を含む誘導加熱システムに関連する。エアロゾル形成基体の少なくとも一部は、誘導加熱装置のDC/ACコンバータのLC負荷ネットワークのインダクタが動作時にエアロゾル形成基体のサセプタに誘導結合されるように、誘導加熱装置のくぼみ内に収容される。
【0039】
本発明による誘導加熱システムの一態様によれば、エアロゾル形成基体は、喫煙物品のエアロゾル形成基体としうる。特に、エアロゾル形成基体は、喫煙物品(例えば、紙巻たばこなど)で使用されうる、たばこを豊富に含む固体エアロゾル形成基体としうる。
【0040】
本発明のなおさらなる態様は、上述の実施形態のいずれか一つによる誘導加熱装置と、サセプタを含むエアロゾル形成基体とを備えた、キットに関連する。誘導加熱装置およびエアロゾル形成基体は、誘導加熱装置のDC/ACインバータのLC負荷ネットワークのインダクタが動作時にエアロゾル形成基体のサセプタに誘導結合されるように、エアロゾル形成基体の少なくとも一部が誘導加熱装置のくぼみ内に収容されるように構成される。一般的に、エアロゾル形成基体および誘導加熱装置は別個に提供されうるが、部品のキットの形態でも提供されることができる。あるいは、別の方法として、スターターキットは、誘導加熱装置および複数のエアロゾル形成基体を備えうるが、一方ではさらに、消費者がスターターキットにある誘導加熱装置を獲得しそのスターターキットに含まれているエアロゾル形成基体を消費したら、消費者は追加的なエアロゾル形成基体のみが必要となるように、エアロゾル形成基体のみが提供される。また、本発明によるキットの一態様によれば、エアロゾル形成基体は喫煙物品のエアロゾル形成基体でもよく、また特に、喫煙物品のエアロゾル形成基体は、たばこを豊富に含む固体エアロゾル形成基体でもよい。
【0041】
本発明のなおさらなる形態は、誘導加熱システムを作動させる方法に関連する。本方法は、
−DC供給電圧を有するDC電源を提供する工程と、
−高周波で動作するように構成された電源回路を提供する工程であって、電源回路がDC電源に接続されたDC/ACインバータを備え、DC/ACインバータがトランジスタスイッチおよび低オーム負荷で動作するよう構成されたLC負荷ネットワークを含むクラスE電力増幅器を含み、ここでLC負荷ネットワークは、分路コンデンサーおよび直列接続のコンデンサーおよびオーム抵抗を持つインダクタを含むものと、
−エアロゾル形成基体の少なくとも一部を収容する能力を持つくぼみを提供する工程であって、そのくぼみが、くぼみ内にエアロゾル形成基体の部分が収容されると、LC負荷ネットワークのインダクタがエアロゾル形成基体のサセプタに誘導結合されるものと、
−サセプタを備え、かつLC負荷ネットワークのインダクタがエアロゾル形成基体のサセプタに誘導結合されるように、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分をくぼみに挿入するエアロゾル形成基体を提供する工程とを含む。
【0042】
本発明による方法の一態様によれば、DC電源は再充電可能電池であり、方法はさらに、エアロゾル形成基体の部分をくぼみに挿入する前に、再充電可能電池を充電する工程を含む。この態様は、再充電可能電池が使用される場合、装置は本線またはその他の外部電源への接続を必要とすることなく使用されうるため(電池の充電後)、特に有益である。電池の充電が低レベルになると、単回用交換用電池を携帯する必要がないように、再充電可能電池は簡単に再び充電できる。電池の充電が低い場合、再充電可能電池は簡単に再充電することができ、装置は再使用する準備が整う。さらに、再充電可能電池は、適切に廃棄されなければならない単回用電池を持たないため、環境にやさしい。
【0043】
本発明のさらなる有益な態様は、図面を用いて、実施形態の以下の記述から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、本発明の基礎を成す一般的な加熱の原理を示す。
【
図2】
図2は、本発明による誘導加熱装置およびシステムの実施形態のブロック図を示す。
【
図3】
図3は、基本的な構成要素が装置ハウジング内に配置された、誘導加熱装置の実施形態を示す。
【
図4】
図4は、本発明による誘導加熱装置の電力電子回路の基本的構成要素の実施形態を示す(整合ネットワークなし)。
【
図5】
図5は、長楕円形の形状を持つらせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルの形態のLC負荷ネットワークのインダクタの実施形態を示す。
【
図6】
図6は、コイルの誘導性およびオーム抵抗を含むLC負荷ネットワークの詳細を示し、またさらに負荷のオーム抵抗を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明の基礎となる一般的な加熱の原理を概略的に図示したものである。
図1に概略的に示されているのは、その中に喫煙物品2のエアロゾル形成基体20の一部またはすべてが配列されている内部体積を画定する長楕円形の形状を持ち、そのエアロゾル形成基体がサセプタ21を備える、らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルL2である。サセプタ21を備えたエアロゾル形成基体20を備える喫煙物品2は、
図1の右側に別個に示されている拡大断面詳細図に概略的に表現されている。すでに言及した通り、喫煙物品2のエアロゾル形成基体20は、たばこを豊富に含む固体基体としうるが、ただしそれには限定されない。
【0046】
さらに、
図1では、インダクタコイルL2の内部体積内の磁場は、ある特定の時点での多数の磁力線B
Lによって概略的に示されているが、これは、インダクタコイルL2内を流れる交流電流i
L2により発生する磁場は、交流電流i
L2の周波数でその極性が変動する交番磁界であるためであり、これは約1 MHz〜約30 MHzの範囲(1 MHz〜30 MHzの範囲を含む)とすることができ、具体的には約1 MHz〜約10 MHzの範囲(1 MHz〜10 MHzの範囲を含み、特に10 MHz未満としうる)とすることができ、また特に具体的には周波数は約5 MHz〜約7 MHzの範囲(5 MHz〜7 MHzの範囲を含み、例えば5 MHzとしうる)としうる。サセプタ21内での熱の発生を担う2つの主なメカニズムは、渦電流による電力損失P
e(閉じた円が渦電流を表示)およびヒステリシスによる電力損失P
h (閉ヒステリシス曲線がヒステリシスを表示)であり、これはまた
図1に概略的に示す。これらのメカニズムに関しては、これらのメカニズムのより詳細な考察は上記で言及されている。
【0047】
図3は、本発明による誘導加熱装置1の実施形態を示す。誘導加熱装置1は、プラスチック製としうる装置ハウジング10、および再充電可能電池110を備えるDC電源11(
図2を参照)を備える。誘導加熱装置1はさらに、誘導加熱装置を再充電可能電池110の再充電のための充電ステーションまたは充電装置にドッキングするためのピン120を備えたドッキングポート12を備える。なおさらに、誘導加熱装置1は望ましい周波数で、例えば上述した通り5 MHzの周波数で動作するように構成される電源回路13を備える。電源回路13は、適切な電気的接続130を通して再充電可能電池110に電気的に接続されている。また、電源回路13は、
図3では表示されていないが追加的な構成要素を含む一方、特にLC負荷ネットワーク(
図4を参照)を備え、これがまたインダクタL2を備えており、これは
図3では破線で表示されている。インダクタL2は装置ハウジング10の近位端で装置ハウジング10内に埋め込まれており、くぼみ14を囲んでいるが、これもまた装置ハウジング10の近位端に配列されている。インダクタL2は、
図5に示す通り、長楕円形の形状を持つらせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルを備えうる。らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルL2の半径rは約5mm〜約10mmの範囲としうるが、特に半径rは約7mmである。らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイルの長さlは、約8mm〜約14mmの範囲としうる。従って、内部体積は、約0.15cm
3〜約1.10cm
3の範囲としうる。
【0048】
図3に戻るが、サセプタ21を備えるたばこを豊富に含む固体エアロゾル形成基体20は、動作中に、インダクタL2(らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイル)が、喫煙物品2のたばこを豊富に含む固体エアロゾル形成基体20のサセプタ21に誘導結合されるように、くぼみ14内に装置ハウジング10の近位端に収容される。喫煙物品2のフィルター部分22は、動作時に消費者がエアロゾルをフィルター部分22を通じて引き出しうるように、誘導加熱装置1のくぼみ14の外側に配列されうる。喫煙物品がくぼみ14から除去されると、それを通して喫煙物品2のエアロゾル形成基体20が挿入される開放された遠位端を除き、くぼみ14は完全に閉じ、かつくぼみ14を画定するプラスチック装置ハウジング10の内側壁によって取り囲まれるため、くぼみ14は簡単に洗浄できる。
【0049】
図2は、本発明による誘導加熱装置1の実施形態のブロック図を示すが、下記に考察する通り、一部の任意の態様または構成要素を伴っている。誘導加熱装置1は、サセプタ21を備えたエアロゾル形成基体20とともに、本発明による誘導加熱システムの実施形態を形成する。
図2に示すブロック図は、動作方式を考慮に入れて図示したものである。図に示す通り、誘導加熱装置1は、DC電源11(
図3では再充電可能電池110を含む)と、マイクロプロセッサ制御ユニット131と、DC/ACインバータ132と、負荷に適応するための整合ネットワーク133と、インダクタL2とを備える。マイクロプロセッサコントローラユニット131、DC/ACインバータ132および整合ネットワーク133、ならびにインダクタL2はすべて、電源回路13の部品である(
図1を参照)。インダクタL2を通して電圧および電流を示すフィードバック信号を提供するための2つのフィードバックチャネル134および135が提供され、さらなる動力供給の制御が可能である。例えば、サセプタの温度が望ましい温度を超えると対応する信号が生成されて、望ましい温度よりもサセプタの温度が再び低くなりそれによってさらなる動力供給が再開されるまで、さらなる動力供給が妨害されうる。対応して、サセプタへの最適な電力の伝達のためのスイッチング電圧の周波数を制御することが可能である。負荷に対する最適な適応のために整合ネットワーク133を提供しうるが、強制的なものではなく、下記により詳細に説明した実施形態には含まれていない。
【0050】
図4は、電源回路13の、より具体的にはDC/ACインバータ132の一部の基本的構成要素を示す。
図4から分かる通り、DC/ACインバータには電界効果トランジスタ(FET)1321(例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ電界効果トランジスタ(MOSFET))、切換信号(ゲート・ソース間電圧)をFET 1321に供給するための矢印1322で示したトランジスタスイッチ供給回路、および分路コンデンサーC1、およびコンデンサーC2とインダクタL2の直列接続を含むLC負荷ネットワーク1323を含む、トランジスタスイッチ1320を含む、クラスE電力増幅器が含まれる。さらに、DC供給電圧+V
CCを供給するためのチョークL1を含むDC電源11が表示されている。
図4には合計オーム負荷1324を表すオーム抵抗Rも示されており、これは
図6に図示されている通り、インダクタL2のオーム抵抗R
Coilと、サセプタ21のオーム抵抗R
Loadの和である。
【0051】
構成要素の数が非常に少ないため、電源回路13の体積を極端に小さく保つことができることが明らかである。例えば、電源回路の体積は2cm
3以下としうる。この極端に小さい体積の電源回路は、LC負荷ネットワーク1323のインダクタL2がエアロゾル形成基体20のサセプタ21との誘導結合のためのインダクタとして直接的に使用されているために可能であり、またこの体積が小さいことで誘導加熱装置1の全体寸法が小さく保たれる。サセプタ21との誘導結合のためにインダクタL2以外の別個のインダクタが使用される場合は、それにより電源回路の体積が自動的に増えることになり、この体積は整合ネットワーク133が電源回路に含まれている場合にも増える。
【0052】
クラスE電力増幅器の概略的な動作原理は公知であり、既に言及した記事「Class−E RF Power Amplifiers(クラスE RF電力増幅器)」(Nathan O. Sokal、American Radio Relay League(ARRL)(米国コネチカット州ニューイントン)の隔月誌QEX、2001年1月/2月号、9〜20ページに公表)に詳細に説明されており、いくつかの概略的原理を以下に説明する。
【0053】
トランジスタスイッチ供給回路1322は長方形のプロフィールを持つ切換電圧(FETのゲート・ソース間電圧)をFET 1321に対して供給すると仮定する。FET 1321が導通している限り(「オン」状態)、基本的に短絡(低抵抗)を構成し、電流全体がチョークL1およびFET 1321を通過して流れる。FET 1321が非導通の時(「オフ」状態)、FET 1321は基本的に開回路(高抵抗)を表すため、電流全体がLC負荷ネットワークに流れ込む。これら2つの状態間でのトランジスタの切換は供給されるDC電圧およびDC電流をAC電圧およびAC電流に転換させる。
【0054】
サセプタ21を効率的に加熱するために、供給されたDC電力のできるだけ多くがAC電力の形態でインダクタL2(らせん状に巻かれた円筒形のインダクタコイル)に転送され、その後でインダクタ2に誘導結合されたエアロゾル形成基体20のサセプタ21に転送される。上記でさらに詳しく説明した通り、サセプタ21(渦電流損失、ヒステリシス損失)内で分散される電力がサセプタ21内で熱を発生する。言い換えれば、FET 1321での電力損失が最小化され、サセプタ21での電力損失が最大化されなければならない。
【0055】
AC電圧/電流の一つの期間中のFET 1321での電力損失は、交流電圧/電流のその期間中の各時点でのトランジスタ電圧と電流の積をその期間全体について積分し、その期間全体について平均化したものである。その期間の一部ではFET 1321は高い電圧を持続しなければならず、またその期間の一部では高い電流を伝導しなければならないため、高い電圧と高い電流が同時に発生することは避けなければならない。これはFET 1321での著しい電力損失につながるためである。FET 1321の「オン」状態では、高い電流がFET 1321を通過して流れる時のトランジスタトランジスタ電圧はほぼゼロである。FET 1321の「オフ」状態では、トランジスタ電圧は高いが、FET 1321を通過する電流はほぼゼロである。
【0056】
また、不可避的な切換の移行は期間のいくらかの部分全体にわたる。それでもなお、FET 1321での高い電力損失を表す高い電圧・電流の積は、以下の追加的な手段によって回避できる。第一に、トランジスタを通過する電流がゼロに低下するまで、トランジスタ電圧の上昇を遅延する。第二に、トランジスタを通過する電流が増大し始める前に、トランジスタ電圧がゼロに戻る。これは分路コンデンサーC1およびコンデンサーC2とインダクタL2の直列接続を含む負荷ネットワーク1323によって達成されるが、この負荷ネットワークはFET 1321と負荷1324の間のネットワークである。第三に、ターンオン時のトランジスタ電圧は事実上ゼロである(バイポーラジャンクショントランジスタ「BJT」については、飽和オフセット電圧V
o)。ターンオントランジスタは充電された分流コンデンサーC1を放電せず、そのため分流コンデンサーの蓄積エネルギーの分散が回避される。第四に、ターンオン時のトランジスタ電圧の勾配はゼロである。次に、負荷ネットワークによってターンオントランジスタに注入される電流は制御された適度なレートでゼロから滑らかに増大し、その結果として電力損失が低くなり、その一方、トランジスタのコンダクタンスはターンオン移行時にゼロから高まる。その結果、トランジスタの電圧および電流が同時に高くなることは決してない。電圧および電流の切換の移行は相互に時間がずらされている。
【0057】
図4に示すDC/ACインバータ132の各種構成要素の寸法については、下記の等式が考慮されなければならないが、これは一般的に公知であり、また上述の記事「Class−E RF Power Amplifiers(クラスE RF電力増幅器)」(Nathan O. Sokal、American Radio Relay League(ARRL)(米国コネチカット州ニューイントン)の隔月誌QEX、2001年1月/2月号、9〜20ページに公表)に詳細に説明されている。
【0058】
Q
L(LC負荷回路の線質係数)をどんな場合でも1.7879よりも大きい値であるが、設計者によって選択できる値とし(上述の論文を参照)、さらにPを抵抗Rに供給される出力電力とし、fを周波数とすると、様々な成分は次の等式から数値的に計算される(V
oはFETではゼロ、およびBJTでは飽和オフセット電圧である、上記参照):
L2 = Q
L・R/2πf
R = ((V
CC - V
o)
2/P)・ 0.576801 ・(1.0000086 - 0.414395/Q
L - 0.557501/Q
L2 + 0.205967/Q
L3)
C1 = (1/(34.2219・f・R))・(0.99866 + 0.91424/Q
L - 1.03175/Q
L2) + 0.6/(2πf)
2 ・(L1)
C2 = (1/2πfR)・(1/Q
L - 0.104823)・(1.00121 + (1.01468/Q
L - 1.7879)) - (0.2/((2πf)
2・L1)))
【0059】
これにより、最大出力電圧2.8Vおよび最大出力電流3.4Aを持つDC電源を使用しておよそ3.4Aの電流が利用可能であり、周波数f=5 MHz(デューティ比=50%)、インダクタの誘導性L2がおよそ500nHおよびインダクタL2のオーム抵抗R
Coil=0.1Ω、誘導性L1が約1μH、ならびにキャパシタンスがコンデンサー C1では7nFおよびコンデンサーC2では2.2nFであると仮定すると、およそ7Wの電力を5〜6秒内に供給するオーム抵抗R=0.6Ωを有するサセプタの急速な加熱が許容される。実効抵抗R
CoilおよびR
Loadはおよそ0.6Ωである。約83.5%の効率(サセプタ21内で分散される電力/DC電源11の最大電力)を獲得しうるが、これは非常に効果的である。
【0060】
上述した通り、サセプタ21はサセプタ21が加熱されるべき望ましい温度に近いキュリー温度を持つ材料または材料の組み合わせで製造できる。サセプタ21の温度がこのキュリー温度を超えると、材料は強磁性から常磁性に変化する。従って、常磁性を持つ材料のヒステリシス損失は強磁性を持つ材料のそれよりもずっと低いため、サセプタ21内のエネルギー分散は著しく低減される。サセプタ21内でのこの電力損失の低減は検出可能であり、またそのため、例えば、DC/ACインバータによるAC電力の発生は、サセプタ21がキュリー温度を再び下回るまで冷却され、再び強磁性となるまで中断されうる。その後で、DC/ACインバータによるAC電力の発生が再開されうる。
【0061】
作動するには、サセプタ21を備えるエアロゾル形成基体20がインダクタ2(例えば、らせん状に巻かれた円筒形のコイル)に誘導結合されるように、喫煙物品2は誘導加熱装置1のくぼみ14(
図2参照)に挿入される。次にサセプタ21が上述の通り2、3秒間加熱され、その後、消費者はフィルター22(当然ながら、喫煙物品は必ずしもフィルター22を備える必要はない)を通してエアロゾルを吸い始めうる。
【0062】
誘導加熱装置および喫煙物品は、一般的に別個にまたは部品のキットとして流通されることができる。例えば、誘導加熱装置と複数の喫煙物品の両方を含む、いわゆる「スターターキット」を流通することが可能である。いったん消費者がこうしたスターターキットを購入すると、その後は消費者はスターターキットに含まれるこの誘導加熱装置とともに使用できる喫煙物品のみを購入しうる。誘導加熱装置は掃除がしやすく、またDC電源が再充電可能電池である場合、これらの再充電可能電池は、ピン120を備えたドッキングポート12に接続される適切な充電装置を使用して再充電が簡単である(または誘導加熱装置は、充電装置の対応するドッキングステーションにドッキングされる)。
【0063】
本発明の実施形態を図表の助けを借りて説明してきたが、本発明の基礎になる一般的な教示から逸脱することなく、多くの変更および改良が考えられることは明らかである。従って、保護の範囲は特定の実施形態に限定されることは意図されておらず、むしろ添付した請求の範囲により画定される。