特許第6452744号(P6452744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452744
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20190107BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20190107BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20190107BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/24
   H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-46687(P2017-46687)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-152207(P2018-152207A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年7月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 達哉
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−300140(JP,A)
【文献】 特開2005−203254(JP,A)
【文献】 特開2003−163017(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/008227(WO,A1)
【文献】 特開2007−250287(JP,A)
【文献】 特開2007−311335(JP,A)
【文献】 特開2004−303621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気との化学反応によって発電するスタックモジュールを少なくとも1つ含む多段の燃料電池スタック群と、
筐体の内部の雰囲気が予め定めた温度に維持され、当該筐体に前記多段の燃料電池スタック群を収容するホットボックスと、
前記ホットボックスの前記筐体の内外を貫通し、前記多段の燃料電池スタック群に対応して接続される少なくとも一対の端子とを有し、
前記スタックモジュール及び前記燃料電池スタック群の汎用性と、前記ホットボックス内の温度維持性との関係によって定まるタイプ毎に、前記ホットボックスの内外を貫通する前記一対の端子のセット数を特定したことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池スタック群が、電気的に独立した複数のスタックモジュールを含む場合は、前記一対の端子が前記複数のスタックモジュール毎に接続され、
前記燃料電池スタック群が、電気的に相互に接続された複数のスタックモジュールを含む場合は、前記一対の端子が前記燃料電池スタック群の各々に接続され、
前記多段の燃料電池スタック群が、電気的に相互に接続されている場合は、前記一対の端子が初段の燃料電池スタック群の一方の極に接続されると共に最終段の燃料電池スタック群の他方の極に接続される、
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
端子間を開成又は閉成するスイッチをさらに有し、
前記スイッチの開成及び閉成により、前記燃料電池スタック群を一括又は個別に接続することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
端子間を開成又は閉成するスイッチと、
前記スタックモジュールを、前記スイッチの開成及び閉成により、電気的に切り離す切り離し制御手段と、
をさらに有する請求項1又は請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項5】
端子間を開成又は閉成するスイッチと、
前記多段の燃料電池スタック群の各々を、前記スイッチの開成及び閉成により、電気的に切り離す切り離し制御手段と、
をさらに有する請求項1又は請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記ホットボックスには、内外を貫通する端子群が集約して埋め込まれ、着脱可能なコネクタ端子ユニットが設けられ、前記コネクタ端子ユニットの端子群が前記一対の端子として利用されることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムにおいて、エネルギー利用効率を向上させるための構成として、燃料電池スタックを複数設け、前段の燃料電池スタックから排出された使用済みの燃料ガス中の未反応の燃料ガスを、後段の燃料電池スタックで再生燃料ガスとして再利用する多段式が知られている。多段式の燃料電池システムは、使用済みの燃料ガスに含まれる水蒸気や二酸化炭素(CO2)を除去できれば、反応に寄与する水素及び一酸化炭素の濃度が増加することで、再生燃料ガスが供給される燃料電池スタックの性能向上が見込める。
【0003】
ここで、多段式の燃料電池システムではないが、複数の中空型セルを並列接続したモジュールを2個以上直列接続した燃料電池において、各中空型セルから効率良く電流を取り出し、発電効率を高める燃料電池が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献2には、燃料電池容器と、セル集合体と、陽極側電気取り出し部及び陰極側電気取り出し部とを備えた燃料電池が開示されている。
【0005】
特許文献2では、燃料電池容器の各電極取り出し部が、セル集合体で発電した電気を燃料電池容器外部に取り出すようになっている。
【0006】
さらに、特許文献3には、燃料電池セルと、燃料電池セルを収容するためのセル室を形成する容器部を構成するカバー部材及びベース部材と、を備え、燃料電池セルから電気を取り出すための電極棒をつなぐ電気接続部材を周辺部材と離間配置させている構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−66723号公報
【特許文献2】特開2007−66723号公報
【特許文献3】特開2007−66723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、多段式燃料電池システムにおいては、雰囲気が外気よりも高温となるように断熱材を主材料として構成されたホットボックスに収容されている。このホットボックスに収容されたスタックモジュールに取り付けられた電極(端子)の取り出し部は、ホットボックスを貫通して外部に電気的に接続されることになる。
【0009】
しかしながら、電極の貫通によって、ホットボックスの断熱性が損なわれるため、その断熱性の損失分に相当する熱を補うために、燃料を追加する必要があり、発電効率に悪影響を及ぼすことになる。従って、発電効率を維持するためのホットボックス内の温度維持性を優先する場合は、ホットボックスを貫通する電極数は少ない方がよい。必要最小限の電極数は、陽極(プラス)端子と陰極(マイナス)端子の2個の端子でよい。
【0010】
一方、複数段の燃料電池スタック群及び各段を構成する複数のスタックモジュールの接続状態の汎用性を優先する場合は、それぞれの燃料電池スタック群(及びスタックモジュール)の陽極端子及び陰極端子をホットボックスから貫通させる方がよい。最大でスタックモジュールのそれぞれの陽極端子及び陰極端子の数となる。
【0011】
なお、個別にパワーコンディショナー等に接続された燃料電池スタック群又はスタックモジュールは、当該パワーコンディショナー等によって電圧又は電流が制御される。以下において、個別にパワーコンディショナー等に接続することを、「個別接続」という。また、燃料電池スタック群又はスタックモジュールを内部で直列に接続してパワーコンディショナー等に接続することを、「一括接続」という。
【0012】
なお、燃料電池スタック群(又はスタックモジュール)を一括接続した場合、何れか1つが故障を起こすと、全ての発電機能が遮断されることになり、汎用性のない端子の取り出しでは、故障していない燃料電池スタック群(又はスタックモジュール)も停止し、無駄となる場合がある。
【0013】
すなわち、燃料電池スタック群を備えた燃料電池システムにおいて、ホットボックス内の温度維持性と、電力の接続形態の汎用性とは二律背反の関係にあり、優先度の設定により、端子の取り出し数を考慮する必要があるが、上記特許文献1〜特許文献3を含む従来技術では、優先度についての考慮はなされていない。
【0014】
本発明は上記事実を考慮し、発電効率向上のためにホットボックス内の温度維持を優先するか、出力される電源の仕様の汎用性を優先するかによる選択を一意的に特定することができる燃料電池システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、燃料ガスと空気との化学反応によって発電するスタックモジュールを少なくとも1つ含む多段の燃料電池スタック群と、筐体の内部の雰囲気が予め定めた温度に維持され、当該筐体に前記多段の燃料電池スタック群を収容するホットボックスと、前記ホットボックスの前記筐体の内外を貫通し、前記多段の燃料電池スタック群に対応して接続される少なくとも一対の端子とを有し、前記スタックモジュール及び前記燃料電池スタック群の汎用性と、前記ホットボックス内の温度維持性との関係によって定まるタイプ毎に、前記ホットボックスの内外を貫通する前記一対の端子のセット数を特定したことを特徴とする燃料電池システムである。
【0016】
本発明によれば、ホットボックスは、筐体の内部の雰囲気が予め定めた温度に維持され、当該筐体に多段の燃料電池スタック群を収容する。ホットボックスには、多段の燃料電池スタック群の電極と電気的接続された一対の端子が設けられることで、外部に配線を取り出すことができる。
【0017】
このとき、一対の端子は、ホットボックスの筐体の内外を貫通し、多段の燃料電池スタック群に対応して接続される。
【0018】
このように端子を接続することで、例えば、発電効率向上のためにホットボックス内の温度維持を優先するか、出力される電源の仕様の汎用性を優先するかによる選択を一意的に特定することができる。
【0019】
なお、本発明において端子とは、ホットボックスの内外で電気ケーブルを接続する導電性部材に限定されるものではなく、例えば、ホットボックスの内外で、単一の電気ケーブルを貫通させるような構造の場合は、ホットッボックスの内外を通過する電気ケーブルの領域を端子と定義してもよい。
【0020】
また、本発明の多段の燃料電池スタック群は、例えば、下流側の燃料電池スタック群が、上流側の燃料電池スタック群から再生燃料ガスを受けて発電するように、多段に接続される場合がある。この構成において、各段の燃料電池スタック群が複数のスタックモジュールを備える場合は、同一の条件で発電するスタックモジュールの集合体としてもよい。
【0021】
本発明において、前記燃料電池スタック群が、電気的に独立した複数のスタックモジュールを含む場合は、前記一対の端子が前記複数のスタックモジュール毎に接続され、前記燃料電池スタック群が、電気的に相互に接続された複数のスタックモジュールを含む場合は、前記一対の端子が前記燃料電池スタック群の各々に接続され、前記多段の燃料電池スタック群が、電気的に相互に接続されている場合は、前記一対の端子が初段の燃料電池スタック群の一方の極に接続されると共に最終段の燃料電池スタック群の他方の極に接続される、ことを特徴とする。
【0022】
それぞれの燃料電池スタック群の構成において、適正な端子を設けることができる。
【0023】
本発明において、端子間を開成又は閉成するスイッチをさらに有し、前記スイッチの開成及び閉成により、前記燃料電池スタック群を一括又は個別に接続することを特徴とする。
【0024】
スイッチの開成又は閉成により、燃料電池スタック群を一括又は個別に接続することができ、汎用性を高めることができる。
【0025】
本発明において、端子間を開成又は閉成するスイッチと、前記スタックモジュールを、前記スイッチの開成及び閉成により、電気的に切り離す切り離し制御手段と、をさらに有する。
【0026】
スタックモジュールを、スイッチの開成及び閉成操作によって、電気的に切り離すことで、スタックモジュールを選択して発電を継続することができる。
【0027】
本発明において、端子間を開成又は閉成するスイッチと、前記多段の燃料電池スタック群の各々を、前記スイッチの開成及び閉成により、電気的に切り離す切り離し制御手段と、をさらに有する。
【0028】
燃料電池スタック群の各々でバイパスすることで、燃料電池スタック群を選択して発電を継続することができる。
【0029】
なお、本発明において、前記ホットボックスは、前記端子群の数に依存して変動する前記ホットボックスの雰囲気の温度維持性、及び、前記温度維持性とは二律背反の関係であり、前記端子群の数に依存して変動する配線組み合わせの汎用性、の相互の優先度に基づいて、端子群の数が選択されるようにしてもよい。
【0030】
すなわち、端子群の数に依存して変動するホットボックスの雰囲気の温度維持性、及び、温度維持性とは二律背反の関係であり、端子群の数に依存して変動する配線組み合わせの汎用性、の相互の優先度に基づいて、端子群の数を選択することができる。
【0031】
本発明において、前記ホットボックスには、内外を貫通する端子群が集約して埋め込まれ、着脱可能なコネクタ端子ユニットが設けられ、前記コネクタ端子ユニットの端子群が前記一対の端子として利用されることを特徴とする。
【0032】
端子の取り出し位置を集約することができるので、温度維持特性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明した如く本発明では、発電効率向上のためにホットボックス内の温度維持を優先するか、出力される電源の仕様の汎用性を優先するかによる選択を一意的に特定することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施の形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図2】本実施の形態に係る燃料電池スタック群が収容されるホットボックスの構造を示す正面図であり、(A)はAタイプ、(B)はBタイプ、(C)はCタイプを示す。
図3】本実施の形態に係る燃料電池スタック群が収容されるホットボックスの構造を示す正面図であり、(A)はDタイプ、(B)はEタイプ、(C)はFタイプを示す。
図4】本実施の形態に係る燃料電池スタック群が収容されるホットボックスの構造を示す正面図であり、(A)はGタイプ、(B)はHタイプ、(C)はIタイプを示す。
図5】(A)本実施の形態に係るホットボックスの構造タイプにおける汎用性−温度維持性の形態を示す分布図、(B)はホットボックスの構造タイプの概略を示す図表である。
図6】本実施の形態の制御部で実行される故障診断制御ルーチンを示すフローチャートである。
図7】変形例に係る本実施の形態に係る燃料電池スタック群が収容されるホットボックスの構造(Jタイプ)を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に従い、本実施の形態に係る燃料電池システム10の構成を、各部の機能と共に説明する。なお、本実施の形態の燃料電池システム10は一例であり、各部において構造が適宜改造(増設、撤去を含む)される場合もあるが、発電する基本概念は変わることはない。
【0036】
燃料電池システム10は、主要な構成として、気化器12、改質器14、燃料電池スタック群としての第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18、空気供給部46、分離部20、第1熱交換部30、第2熱交換部32、第3熱交換部34、第4熱交換部36、燃焼器40、タンク42、及び制御部44を備えている。
【0037】
第1燃料電池スタック16は、固体酸化物形の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セルを有している。第1燃料電池スタック16は、燃料ガス及び空気を同等の条件で受ける複数のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn「nは正の整数」(図2参照)で構成してもよい。
【0038】
第2燃料電池スタック18は、固体酸化物形の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セルを有している。第2燃料電池スタック18は、燃料ガス及び空気を同等の条件で受ける複数のスタックモジュール18M1、M2・・・Mn「nは正の整数」(図2参照)で構成してもよい。
【0039】
すなわち、本実施の形態の燃料電池システム10は、燃料電池スタックが複数段(ここでは、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18の2段)とされた、多段式の燃料電池システム10を構成している。なお、段数は、2段に限定されず、3段以上であってもよい。なお、空気は、各段共に、同等の条件で受けるようにしてもよい。
【0040】
気化器12には、原料ガス管P1の一端が接続されており、原料ガス管P1の他端は図示しないガス源に接続されている。ガス源からは、ブロアBによりガス(一例として、メタン)が気化器12へ送出される。原料ガス管P1の中間部には、水を貯留するタンク42からの水供給管P2が接続されている。タンク42からは、ポンプPにより、水(液相)が気化器12へ送出される。
【0041】
気化器12では、水が気化される。気化には、後述する燃焼器40の熱が用いられる。なお、本実施形態では、原料ガスとしてメタンを用いるが、改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、バイオガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。
【0042】
気化器12では、供給されたメタン及び水が混合されると共に、燃焼排ガス管P10を流通する燃焼排ガスG6から熱を得て加熱され、水が気化され水蒸気となる。
【0043】
メタン及び水蒸気は、気化器12から配管P3を介して改質器14へ送出される。改質器14では、改質反応により、水素を含む600℃程度の燃料ガスG1が生成される。燃料ガスG1は、燃料ガス管P4を介して第1燃料電池スタック16のアノード16Aに供給される。
【0044】
第1燃料電池スタック16のカソード16Bには、分離部20の透過部26から排出された透過部排出ガス(空気Aと二酸化炭素及び水蒸気の混合気体)が、酸化ガスG5として酸化ガス管P5を経て供給される。これにより、第1燃料電池スタック16では、化学反応により発電が行われる。
【0045】
上記化学反応により第1燃料電池スタック16は発熱し、650℃程度の温度で発電が行われる。この発電に伴い燃料電池スタック16のアノード16Aからは、アノードオフガスG3が排出される。また、カソード16Bからは、カソードオフガスG2が排出され、カソードオフガスG2は、カソードオフガス管P6を通って第2燃料電池スタック18のカソード18Bへ供給される。
【0046】
アノード16Aから排出されたアノードオフガスG3は、アノードオフガス管P7に導かれ、第2熱交換部32、第1熱交換部30を経て、分離部20の流入部24へ流入される。第2熱交換部32では、アノードオフガスG3の温度は、約650℃からある程度温度が低下し(80℃〜140℃程度の低下)、第1熱交換部30では、アノードオフガスG3の温度は、適温T0に近い温度まで下げられる。
【0047】
一方、空気供給部46からは、制御部44による分離部20の温度Tのフィードバック制御により流量が制御された空気Aが、空気供給管P8により、第1熱交換部30を介して分離部20の透過部26へ送出される。第1熱交換部30では、空気Aの温度は、適温T0に近い温度、すなわち、第1熱交換部30で熱交換が行われた後のアノードオフガスG3と略同じ温度となる。
【0048】
アノードオフガスG3は、第2熱交換部32、第1熱交換部30での熱交換を経て分離部20の流入部24へ流入され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が、分離膜28を透過して透過部26側へ移動することにより分離される。
【0049】
流入部24からは再生燃料ガスG4が送出され、第4熱交換部36、第2熱交換部32を経て、600℃程度に昇温され、再生燃料ガス管P9により第2燃料電池スタック18のアノード18Aへ供給される。第2燃料電池スタック18では、化学反応により発電が行われる。
【0050】
上記化学反応により第2燃料電池スタック18は発熱し、650℃程度の温度で発電が行われる。アノード18A、カソード18Bでの使用済ガスは、配管P11、カソードオフ燃焼導入管P12により各々燃焼器40へ送出され、燃焼器40で焼却に供される。
【0051】
燃焼器40からの燃焼排ガスG6は、第3熱交換部34、第4熱交換部36、及び気化器12を経て、燃焼排ガス管P10によりタンク42へ送出される。燃焼排ガスG6に含まれる水蒸気は、気化器12からタンク42までの経路やタンク42内で冷却され、凝縮されてタンク42に貯留される。その他の燃焼排ガスは、タンク42から装置外に放出される。
【0052】
一方、透過部26へ流入したスイープガスとしての空気Aは、分離膜28を透過して流入した二酸化炭素、水蒸気、及び、その他分離膜28を透過したアノードオフガスG3中の気体と共に、透過部26から送出される。
【0053】
送出された透過部排出ガスG7は、第3熱交換部34を経て、酸化ガスG5として酸化ガス管P5によりカソード16Bへ供給される。
【0054】
(燃料電池スタックの断熱)
【0055】
図2図4に示される如く、ここで、本実施の形態の第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18を含むほとんどの機器(図1の場合、分離部24及びタンク42を除く)は、ホットボックス50に収容されている。
【0056】
ホットボックス50は、主として断熱材によって筐体50Aが形成されており、当該筐体50Aに収容された第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18は、外気とは分離された雰囲気50Bの環境下で、所定の温度(予め定めた許容範囲を含む)で維持される。
【0057】
ところで、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18は、それぞれ複数のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mn(nは正の整数)で構成されている。言い換えれば、16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mn毎に陽極(プラス極)及び陰極(マイナス極)を備え、適宜電気的に接続されることで、所定の電圧を出力することができる。
【0058】
出力される電圧は、制御部44(図1参照)の一部を構成するパワーコンディショナー等によって電圧もしくは電流の少なくとも一方が制御され、電源として出力される。
【0059】
しかしながら、本実施の形態の燃料電池システム10を含め、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18で発電した電力を、どのような電源としての仕様(電圧もしくは電流の少なくとも一方、容量等)とするかは、需要によって様々であり、一概に特定し得るものではない。従って、汎用性を持たせるためには、最も細く分類した単位(すなわち、スタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及びスタックモジュール18M1、M2・・・Mn)毎に、ホットボックス50から陽極とマイナス極とを取り出しておくことが好ましい。
【0060】
一方、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18は、ホットボックス50によって、ほぼ一定の雰囲気温度の下で維持されることが、発電能力を保持するために重要であり、取り出す端子数は少ないことが好ましい。すなわち、本実施の形態の燃料電池システム10(多段式〜では、燃焼器40で得られる温度が少ないため、ホットボックス50において、熱が逃げる要素(温度低下の要因となる端子数)を必要最小限まで減らすことが望ましい。
【0061】
すなわち、汎用性と、温度維持性とは、二律背反の関係にあり、優先度の設定によって、ホットボックス50から取り出す端子数が異なることになる。言い換えれば、汎用性を優先するか、或いは、温度維持性を優先するかによって、ホットボックス50内外における第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック(各16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mnを含む)の配線構造が異なるため、予め、優先度に応じた配線構造を準備しておくことが重要となる。
【0062】
そこで、本実施の形態では、図5に示される如く、汎用性と温度維持性との関係において、それぞれの優位性に従って、ホットボックス50から出力される端子数(構造的にはホットボックス50の貫通孔数)の構成を分類することで、設定する優先度に基づいて、一意的にホットボックス50から出力される端子数を特定することができるようにした。
【0063】
本実施の形態では、ホットボックス50と、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18、及び、それぞれ複数のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mnに設けられた電極(プラス極、マイナス極)の接続状態のバリエーションとして、9種類(図5(B)に示すAタイプ〜Iタイプ)の構造を設定し、図5(A)に示される如く、それぞれを、横軸が汎用性、縦軸が温度維持性としたチャートに分布した。
【0064】
図2図4は、各タイプ(Aタイプ〜Iタイプ)のホットボックス50の構造を示す概念図である。
【0065】
ホットボックス50には、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18が収容され、ホットボックス50内の雰囲気温度に維持されている。
【0066】
(Aタイプ)
【0067】
図2(A)に示される如く、Aタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mnのそれぞれのプラス極の端子50C及びマイナス極の端子50Cがホットボックス50に設けられた端子50Cを介して、外部に取り出されている。この状態では、それぞれが独立した個別接続である。取り出された端子50Cは、様々なバリエーションの接続状態(一括接続又は個別接続)とすることができる。また、最小単位で取捨選択が可能である。
【0068】
図2(A)に示される如く、Aタイプは、最小単位で端子50Cが取り出されているため汎用性が高く、端子50Cの数が最も多いため温度維持性が低い位置に分布される(図5(A)のA点参照)。
【0069】
(Bタイプ)
【0070】
図2(B)に示される如く、Bタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mnのそれぞれのプラス極の端子50C及びマイナス極の端子50Cがホットボックス50に設けられた端子50Cを介して、外部に取り出されている。
【0071】
外部に取り出された第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mnは、それぞれ一括に接続されている。
【0072】
また、外部に取り出された第2燃料電池スタック18の16M1、M2・・・Mnは、それぞれ一括に接続されている。
【0073】
すなわち、Bタイプは、第1燃料電池スタック16と第2燃料電池スタック18とが独立した形態(燃料電池スタック段数毎)で出力される。
【0074】
図2(B)に示される如く、Bタイプは、温度維持性はAタイプと同等であるが、基本的には第1燃料電池スタック16と第2燃料電池スタック18の単位で既に接続状態であるため、Aタイプよりも若干汎用性が低い位置に分布される(図5(A)のB点参照)。
【0075】
(Cタイプ)
【0076】
図2(C)に示される如く、Cタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mnのそれぞれのプラス極の端子50C及びマイナス極の端子50Cがホットボックス50に設けられた端子50Cを介して、外部に取り出されている。
【0077】
外部に取り出された第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mnと、第2燃料電池スタック18のスタックモジュール18M1、M2・・・Mnとが一括に接続されている。
【0078】
すなわち、Cタイプは、第1燃料電池スタック16と第2燃料電池スタック18とが一体化した形態(スタック全段一括接続)で出力される。
【0079】
図2(C)に示される如く、Cタイプは、温度維持性はAタイプ及びBタイプと同等であるが、基本的には全てのスタック(第1燃料電池スタック16と第2燃料電池スタック18)が既に一括接続状態であるため、Bタイプよりも若干汎用性が低い位置に分布される(図5(A)のC点参照)。
【0080】
なお、Aタイプ、Bタイプ、及びCタイプは、個別のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mnから独立して端子50Cが出力される構造において、1つのグループ(第1グループ)として分類可能であり、汎用性の差異は無視できる範囲であるため、図5(A)の分布位置を同一としてもよい。
【0081】
(Dタイプ)
【0082】
図3(A)に示される如く、Dタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール18M1、M2・・・Mnのそれぞれが、ホットボックス40内で一括接続されており、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18が、それぞれ独立して一対の電極(プラス極及びマイナス極)が端子50Cを介して、外部に取り出されている。
【0083】
このDタイプの場合、本実施の形態では、燃料電池スタックの数が、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18の2基であるので、端子50Cの数は、4となる(燃料電池スタック×2)。
【0084】
図3(A)に示される如く、Dタイプは、第1燃料電池スタック16、及び第2燃料電池スタック18が独立した個別接続状態であり、温度維持性及び汎用性共に、Aタイプ〜Fタイプの相対評価において平均的であり、原点位置に分布される(図5(A)のD点参照)。言い換えれば、温度維持性及び汎用性の評価は、このDタイプを基準として、Aタイプ〜Cタイプ、Eタイプ及びFタイプの評価が設定される。
【0085】
(Eタイプ)
【0086】
図3(B)に示される如く、Eタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール18M1、M2・・・Mnのそれぞれが、一括接続されており、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18が、それぞれ独立して一対の電極(プラス極及びマイナス極)が端子50Cを介して、外部に取り出されている。
【0087】
また、外部に取り出された第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18は、一括接続されている。
【0088】
このEタイプの場合、本実施の形態では、Dタイプと同様に燃料電池スタックの数が、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18の2基であるので、端子50Cの数は、4となる(燃料電池スタック×2)。
【0089】
図3(B)に示される如く、Eタイプは、第1燃料電池スタック16、及び第2燃料電池スタック18が一括接続状態であり、温度維持性は平均的であるが、Dタイプよりも若干汎用性が低くなる位置に分布される(図5(A)のD点参照)。
【0090】
なお、Dタイプ及びEタイプは、燃料電池スタック単位で、端子50Cが出力される構造において、1つのグループ(第2グループ)として分類可能であり、汎用性の差異は無視できる範囲であるため、図5(A)の分布位置を同一としてもよい。
【0091】
(Fタイプ)
【0092】
図3(C)に示される如く、Fタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール18M1、M2・・・Mnのそれぞれが、ホットボックス40内で一括接続され、かつ第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18がホットボックス40内で一括接続されている。
【0093】
すなわち、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18の一方の電極(例えば、マイナス極)と、第2燃料電池スタック18の一方の電極(例えば、プラス極)とがホットボックス50内で接続された一括接続状態であり、第1燃料電池スタック16の他方の電極(例えば、プラス極)と、第2燃料電池スタック18の他方の電極(例えば、マイナス極)とが、それぞれ端子50Cを介してホットボックス50の外部に取り出されている。すなわち、最小数である2個の端子50Cであり、温度維持性が最も高いが、汎用性は最も低い位置に分布される(図5(A)のF点参照)。
【0094】
以下に示すGタイプ、Hタイプ、Iタイプの3タイプは、上記Aタイプ〜Fタイプの6タイプとの分類とは異なり、Aタイプ〜Fタイプの追加機能という位置付けとなる。
【0095】
(Gタイプ)
【0096】
図4(A)に示される如く、Gタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール18M1、M2・・・Mnのそれぞれのプラス極の端子50C及びマイナス極の端子50Cがホットボックス50に設けられた単一のコネクタ端子50Cを介して、外部に取り出されている。但し、単一のコネックタ端子内で端子同士は絶縁されており、ショートしない構成となっている。
【0097】
図4(A)に示される如く、Gタイプは、最小単位でコネクタ端子50Cが取り出されているが、コネクタ端子50Cを用いる場合に、最小単位である必要はなく、全てのタイプ(Aタイプ〜Fタイプ)に適用可能である。例えば、Eタイプの場合は、4線が集約されることになる。また、コネクタ端子50Cは1箇所に限らず、複数の配線を束ねた複数のコネクタ端子50Cを設けてもよい。さらには、プラス極とマイナス極とを分けてもよい。
【0098】
(Hタイプ)
【0099】
図4(B)に示される如く、Hタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール18M1、M2・・・Mnのそれぞれのプラス極及びマイナス極がホットボックス50の内部で相互に接続され、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18のそれぞれ一対の電極(プラス極及びマイナス極)が端子50Cを介して、外部に取り出されている(ここまでは、Eタイプと同一構成の例を示した)。
【0100】
また、Hタイプは、第1燃料電池スタック16の一方の電極(例えば、マイナス極)と、第2燃料電池スタック18の一方の電極(例えば、プラス極)とが、ホットボックス50の外部において、スイッチ52を介して接続されている。
【0101】
すなわち、Hタイプは、ホットボックス50の外部で、各段の燃料電池スタック群の一括接続又は個別接続をスイッチ52の閉成又は開成制御によって選択可能である。このようなホットボックス50の外部に取り出した配線に、スイッチ切り替え機能を持たせる構成は、Aタイプ〜Eタイプに適用可能である。
【0102】
(Iタイプ)
【0103】
図4(C)に示される如く、Iタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール18M1、M2・・・Mnのそれぞれのプラス極の端子50C及びマイナス極の端子50Cがホットボックス50に設けられた端子50Cを介して、外部に取り出されている。この状態では、それぞれが独立した個別接続であるが、取り出された端子50Cは、様々なバリエーションの接続状態(一括接続又は個別接続)とすることができる。また、最小単位で取捨選択が可能である。
【0104】
ここで、Iタイプは、第1燃料電池スタック16のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び第2燃料電池スタック18のスタックモジュール18M1、M2・・・Mnの電極間を導通させる第1スイッチ54と、それぞれの電極の少なくとも一方に介在された第2スイッチ56と、を備える。
【0105】
これにより、図4(C)に示される如く、一部のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn及び18M1、M2・・・Mnの何れかが故障した場合、第1スイッチ52及び第2スイッチ54の開成及び閉成制御によって、当該故障したスタックモジュールを電気的に切り離すことができ(図4(C)の点線参照)、正常に稼働している他のスタックモジュールを有効利用するという特有の効果を得ることができる。
【0106】
Aタイプ〜Fタイプは、図5(A)に示される如く、温度維持性及び汎用性によって分類可能であるが、パワーコンディショナー等で電圧を昇圧するときの効率という観点で差別化することができる。効率は、パワーコンディションー等に投入される電圧が高い方が、つまりは出力端子数が少ない方が効率がよいため、Cタイプ、Eタイプ、及びFタイプが、最も高効率である。次にBタイプとEタイプが、Cタイプ、Dタイプ、及びFタイプの次に効率がよい。そして、Aタイプが効率の面では最も低効率となる。
【0107】
また、追加機能としてのGタイプは、効果として温度維持性を向上することができる。追加機能としてのHタイプは、汎用性を向上することができる。さらに、Iタイプは、故障モジュールを切り離すことができ、燃料電池システムの損失を最小限に抑えることができる。
【0108】
以下に、本実施の形態の作用を説明する。
【0109】
(多段式燃料電池スタックの発電動作)
【0110】
本実施の形態の燃料電池システムでは、まず、初段である第1燃料電池スタックを対象として、気化器12には、ガス源からメタンが供給されると共に、水が供給される。供給されたメタンと水は、混合されると共に、燃焼排ガスから熱を得て加熱され、水が気化され水蒸気となる。
【0111】
メタン及び水蒸気は、気化器12から改質器14へ送出される。改質器14では、改質反応により、水素を含む600℃程度の燃料ガスG1が生成される。燃料ガスG1は、第1燃料電池スタック16のアノード16Aに供給される。第1燃料電池スタック16のカソード16Bには、酸化ガスG5が供給される。これにより、第1燃料電池スタック16では、化学反応により発電が行われる。
【0112】
この発電に伴い燃料電池スタック16のアノード16Aからは、アノードオフガスG3が排出される。また、カソード16Bからは、カソードオフガスG2が排出され、カソードオフガスG2は、第2燃料電池スタック18のカソード18Bへ供給される。
【0113】
アノード16Aから排出されたアノードオフガスG3は、分離部20の流入部24へ流入され、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が、分離膜28を透過して透過部26側へ移動することにより分離される。
【0114】
一方、空気供給部46からは、空気Aが分離部20の透過部26へ送出される。
【0115】
流入部24からは再生燃料ガスG4が送出され、第2燃料電池スタック18のアノード18Aへ供給される。第2燃料電池スタック18では、化学反応により発電が行われる。
【0116】
第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18は、ホットボックス50に収容され、外気とは分離された雰囲気温度(予め定めた許容範囲を含む)の下で維持される。この温度維持により、発電効率を最適な状態で安定させることができる。
【0117】
ここで、本実施の形態は、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18で発電した電力を、どのような電源としての仕様(電圧もしくは電流の少なくとも一方、容量等)とするかを、図5(A)に示される如く、汎用性と温度維持性とのそれぞれの優先度に基づいて、一意的にホットボックス50から出力される端子数を特定することができるようにした。
【0118】
本実施の形態の燃料電池システム10の設計者又は利用者は、運転時の仕様に基づき、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18の電極の配線構造にバリエーションを持たせるための汎用性、並びにホットボックス50の内部の雰囲気温度を維持し、発電効率を安定させるための温度維持性の何れを優先させるかを決定する。例えば、図5(A)に示される如く、それぞれの特性を、原点を中心に、プラス側(特性が優位側となる事象と、マイナス側となる事象とに分類することで、大きく分けて4事象を設定する。
【0119】
その中で、決定した優先度に対応するタイプを選択する。以下に、選択要件を列挙する。
【0120】
(選択要件1) 温度維持性は低くてもよいが、汎用性の高い方がよい場合は、タイプA又はタイプBを選択する。
【0121】
(選択要件2) 汎用性は低くてもよいが、温度維持性の高い方がよい場合は、タイプFが選択される。
【0122】
(選択要件3) 温度維持性及び汎用性が共に平均的でよい場合は、タイプD又はタイプEが選択される。
【0123】
(選択要件4) 選択したタイプに対して、Gタイプ又はHタイプの構成を追加機能として適用可能である。
【0124】
(故障診断)
【0125】
燃料電池システム10において、特に、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18は、それぞれ複数のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mnで構成されている。
【0126】
このとき、その一部のスタックモジュールが故障した場合、全ての発電機能を失うことになる。
【0127】
そこで、故障診断により故障と診断したスタックモジュールを電気的に切り離すことができるようにした。
【0128】
図6は、制御部44において実行される故障診断制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【0129】
ステップ60では、故障診断を実行する。例えば、スタックモジュール毎の電圧(起電力)を計測して、しきい値を逸脱しているか否かを判断する。電圧計測は、予め装置に電圧計を設置してもよいし、検査員が定期又は不定期に検査機を用いて計測した値を、手動又は自動で故障診断制御の入力部に入力するようにしてもよい。また、電圧計測は、装置の非稼働時であって稼働中であってもよい。
【0130】
次のステップ62では、ステップ60での故障診断の結果、故障しているスタックモジュールが有るか否かを判断する。
【0131】
ステップ62で否定判定された場合は、故障したスタックモジュールは存在しないと判断し、このルーチンは終了する。
【0132】
また、ステップ62で肯定判定された場合は、故障したスタックモジュールが存在していると判断し、ステップ64へ移行して、故障したスタックモジュールを特定し、ステップ66へ移行する。
【0133】
ステップ66では、特定したスタックモジュールを、その他のスタックモジュールに対して電気的接続状態を回避(電気的に切り離す)するための、第1スイッチ54と第2スイッチ56のスイッチング状態を設定し、ステップ68へ移行する。
【0134】
ステップ68では、ステップ66で設定したスイッチング状態に基づいて、第1スイッチ54及び第2スイッチ56のスイッチング処理を実行し、ステップ70へ移行する。
【0135】
これにより、図4(C)の点線で示される如く、電流を故障したスタックモジュールを回避して流すことができ、一部のスタックモジュールの故障が起きても、その他のスタックモジュールで起電力を得ることができる。
【0136】
ステップ70では、一部のスタックモジュールを電気的に切り離したことによる電圧の変化に基づき、パワーコンディショナー等による電圧もしくは電流の少なくとも一方の調整(コンバータの電圧もしくは電流の少なくとも一方の調整等)を実行し、このルーチンは終了する。
【0137】
以上説明した如く本発明では、多段式の燃料電池システム10において、それぞれの段の燃料電池スタック(ここでは、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18)をホットボックス50に収容することで、予め定めた雰囲気温度の環境下に維持することで、発電能力の安定化を図っている。
【0138】
一方、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18で発電した電力を、どのような電源としての仕様(電圧もしくは電流の少なくとも一方、容量等)とするかは、需要によって様々であり、一概に特定し得るものではない。そこで、本実施の形態では、電源としての仕様の汎用性と温度維持性との関係において、それぞれの優位性に従って、ホットボックス50から出力される端子数の構成を分類することで、設定する優先度に基づいて、一意的にホットボックス50から出力される端子数を特定することができるようにした。これにより、使用者が要求する汎用性及び温度維持性を維持した燃料電池システム10を構築することができる。
【0139】
なお、本実施の形態では、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18、及び、それぞれ複数のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn、及び18M1、M2・・・Mnに設けられた電極(プラス極、マイナス極)の接続状態、並びに端子数の組み合わせとして、Aタイプ〜Fタイプ、及びGタイプ〜Iタイプを例示したが、これらのタイプに限定されるものではなく、様々なタイプを図5(A)の事象に分布させて、選択対象としてもよい。
【0140】
また、本実施の形態では、分離部20を備えた燃料電池システム10(図1参照)を一例として挙げたが、図1に示す燃料電池システム10に限定されず、例えば、分離膜20の有無を含め、吸収材の有無、アノードガスの凝縮の有無、排ガスの凝縮の有無等、異なるシステム構成であってもよい。
【0141】
さらに、本実施の形態では、図5(A)に示される如く、評価項目として、汎用性と温度維持性を設定し、当該汎用性と温度維持性関係において、それぞれの優位性に従って、ホットボックス50の貫通孔数の構成を分類するようにしたが、評価項目として、部品点数をいれてもよい。例えば、端子数が増えれば増えるほど、例えば、それぞれに電圧を昇圧する部品が必要となり、コストアップにつながる。評価項目が3以上の場合、図5(A)の特性図に代えて、各タイプのレーダーチャートを生成することが好ましい。
【0142】
(変形例)
【0143】
前述したIタイプ(図4(C)参照)は、一部のスタックモジュール16M1、M2・・・Mn及び18M1、M2・・・Mnの何れかが故障した場合、第1スイッチ52及び第2スイッチ54の開成及び閉成制御によって、当該故障したスタックモジュールを電気的に切り離し、正常に稼働している他のスタックモジュールを有効利用する構成としたが、図7に示される如く、Iタイプの変形例として、切り離しを燃料電池スタック群単位で切り離すようにしてもよい(Jタイプという)。
【0144】
図7に示される如く、Jタイプの構成は、各端子50Cに接続された配線には、それぞれ第3スイッチ55A、55B、55C、55Dの第1接点aが接続されている。また、各燃料電池スタック群の電極間には、第3スイッチ55A、55B、55C、55Dの第2接点側bで第4スイッチ57A、57Bが介在されている。
【0145】
第1燃料電池スタック16の一方の極性の電極16Rと、第2の燃料電池スタック18の他方の極性の電極18Lは,図7の中央の2個の第3スイッチ55B、55Cがオンのとき、導通可能となっている。
【0146】
ここで、図7は、第1燃料電池スタック16を切り離して、第2燃料スタック18だけで運転する状態を図示している。なお、第3スイッチ55及び第4スイッチ57のそれぞれのオン・オフを切り替えることで、第2燃料電池スタック18を切り離して、第1燃料スタック16だけで運転する状態とすることができる。
【0147】
当然、第1燃料電池スタック16及び第2燃料電池スタック18に限らず、3以上の数の燃料電池スタックが存在する場合は、それぞれを個別に切り離すことができる。なお、故障診断制御は、図6のスタックモジュールを燃料電池スタックに読み替え、適宜第3スイッチ55及び第4スイッチ57の切り替えを制御すればよい。
【0148】
また、ここでは、スタックモジュールや燃料電池スタック群での故障時について述べたが、故障に限らず、それぞれのスタックモジュールや燃料電池スタック群に通電させたくない事情が生じた場合には、同様の手段で切り離すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0149】
A 空気
P ポンプ
P1 原料ガス管
P2 水供給管
P3 配管
P4 燃料ガス管
P5 酸化ガス管
P6 カソードオフガス管
P7 アノードオフガス管
P8 空気供給管
P9 再生燃料ガス管
P10 燃焼排ガス管
P11 配管
P12 カソードオフ燃焼導入管
G1 燃料ガス
G2 カソードオフガス
G3 アノードオフガス
G4 再生燃料ガス
G5 酸化ガス
G6 燃焼排ガス
G7 透過部排出ガス
10 燃料電池システム
12 気化器
14 改質器
16 第1燃料電池スタック
16A アノード
16B カソード
16M1、M2・・・Mn スタックモジュール
18 第2燃料電池スタック
18A アノード
18B カソード
18M1、M2・・・Mn スタックモジュール
20 分離部
24 流入部
26 透過部
28 分離膜
30 第1熱交換部
32 第2熱交換部
34 第3熱交換部
36 第4熱交換部
40 燃焼器
42 タンク
44 制御部
46 空気供給部
50 ホットボックス
50A 筐体
50B 雰囲気
50C 端子
52 スイッチ
54 第1スイッチ
56 第2スイッチ
55A、55B、55C、55D 第3スイッチ
57A、57B 第4スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7