(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料電池システムでは、発電時に発生した熱を回収するために、オフガスの熱を熱交換器を用いて温水として回収して密閉式の冷媒タンクに貯留し、必要に応じて貯留する温水を給湯や暖房等に利用することが行われている。そして、冷媒タンクが水で満タン状態の場合にタンク内の水が加熱されると、水が膨張し、冷媒タンクの内圧が上昇する。
【0005】
冷媒タンクの内圧の上昇を抑えるには、冷媒タンクの上部に接続される配管に圧力逃がし弁を配置し、冷媒タンクの内圧が上昇したときに、タンク内の圧力を圧力逃がし弁からシステム外へ逃がす必要がある。タンク内の水を排出して圧力を逃がす場合は、圧力逃がし弁からシステム外へ水を排出するための排水経路と、その排水経路を下水の排水配管に繋ぐ現場工事が必要であり、排水の削減、及びシステムのコンパクト化に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、冷媒タンクからの排水の削減、及びシステムのコンパクト化が可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の燃料電池システムは、燃料ガスと改質水とを供給して発電を行う燃料電池と、
内部と外部とを連通可能な連通部を上部に備え、冷媒を貯留する冷媒タンクと、
前記冷媒タンクと第1の循環経路を介して接続され、前記冷媒タンクとの間を循環する前記冷媒と前記燃料電池の排気との熱交換を行なう排気熱交換器と、前記冷媒タンクと第2の循環経路を介して接続され、前記冷媒タンクから供給される
前記冷媒と外部より供給された上水との間で熱交換を行い、加熱された前記上水を排出する上水熱交換器と、上部の少なくとも一部が開放されたシスターンタンクと、前記シスターンタンクと前記連通部とを接続
し、前記冷媒タンクに貯留された前記冷媒を前記シスターンタンクへ排出可能な配管と、を有する。
【0008】
請求項1に記載の燃料電池システムでは、燃料ガスと改質水とを燃料電池に供給することで、燃料電池は発電を行うと共に、高温の排ガスを排出する。
排気熱交換器では、高温の排ガス
と冷媒との間で熱交換が行われる。冷媒は、
第1の循環経路を介して冷媒タンクと排気熱交換器との間を循環し、加熱された冷媒は、冷媒タンクに貯留される。
【0009】
また、
上水熱交換機では、暖められた冷媒タンクの冷媒と、外部より供給された上水との間で熱交換が行われ、上水は加熱されて暖められる。
【0010】
請求項1に記載の燃料電池システムでは、冷媒タンクの冷媒を給湯に用いておらず、冷媒と、給湯に用いる上水とを分離しているため、従来の燃料電池システムの様に湯の使用によってタンク内の冷媒の量が変化することは無く、冷媒タンク内の冷媒の量を制御する必要が無い。
【0011】
冷媒タンクは、内部と外部とを連通可能な連通部が上部に備えられているため、冷媒の膨張分を見込んで、冷媒タンク内の冷媒の液面を、連通部よりも低い位置に設定しておけば、冷媒タンク内の冷媒が温度上昇に伴って膨張しても、冷媒の上の空気は連通部から外部へ排出されるので、冷媒タンク内の圧力上昇を抑制することができる。
【0012】
請求項1に記載の燃料電池システムでは、冷媒タンク内の圧力上昇を抑制するために、冷媒タンク内の冷媒をシステムの外部へ排出しないので、冷媒タンクの冷媒を外へ排水するための配管や圧力逃がし弁等からなる排出経路を必要とせず、コンパクト化を図ることができる。また、その排出経路を排水配管(下水)に繋ぐ現場工事も必要無くなる。
【0013】
また、請求項1に記載の燃料電池システムに
おいては、上部の少なくとも一部が開放されたシスターンタンクと、前記シスターンタンクと前記連通部とを接続する配管と、を有する。
【0014】
請求項1に記載の燃料電池システムでは、例えば、冷媒タンク内の冷媒が膨張して冷媒の体積が冷媒タンクの容積よりも大になった場合、膨張した冷媒を配管を介してシスターンタンクに排出することができ、冷媒タンク内の冷媒がシステム外に漏れ出ることを抑制することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、 前記上水熱交換器から排出された上水を加熱して排出する加熱装置を第1の筐体の内部に収容したバックアップ熱源機ユニットと、前記燃料電池、及び前記上水熱交換器を第2の筐体の内部に収容した冷媒タンク付き燃料電池ユニットと、を有する。
【0016】
請求項2に記載の燃料電池システムでは、バックアップ熱源機ユニットを備えているので、上水熱交換器で暖められた湯を更に加熱することができ、燃料電池等の不具合が生じた場合においても、上水をバックアップ熱源機ユニットで加熱して湯を得ることができる。
【0017】
また、
請求項2に記載の燃料電池システムは、第1の筐体に加熱装置を収容したバックアップ熱源機ユニットと、燃料電池、及び上水熱交換器を第2の筐体に収容した冷媒タンク付き燃料電池ユニットの2つのユニットを備えている。このため、加熱装置、燃料電池、及び上水熱交換器を一つの筐体に収容したユニットに比較して、各ユニットを小型化、及び軽量化することができ、運搬性を向上することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、前記上水熱交換器から排出された上水を加熱して排出する加熱装置を第1の筐体の内部に収容したバックアップ熱源機ユニットと、前記燃料電池を第3の筐体の内部に収容した燃料電池ユニットと、前記冷媒タンク、及び前記上水熱交換器を第4の筐体の内部に収容したタンクユニットと、を有する。
【0019】
請求項3に記載の燃料電池システムは、第1の筐体に加熱装置を収容したバックアップ熱源機ユニットと、燃料電池を、第3の筐体の内部に収容した燃料電池ユニットと、冷媒タンク、及び上水熱交換器を、第4の筐体の内部に収容したタンクユニットとの3つのユニットで構成されている。このため、加熱装置、燃料電池、冷媒タンク、及び上水熱交換器を一つの筐体に収容したユニットに比較して、各ユニットを小型化、及び軽量化することができ、運搬性を向上することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜
請求項3の何れか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記冷媒は、不凍液である。
【0021】
請求項4に記載の燃料電池システムでは、冷媒を不凍液としたので、冷媒の凍結を抑制することができる。本発明の燃料電池システムでは、冷媒と上水とを上水熱交換器を用いて熱交換しており、冷媒と上水とを分離しているため、冷媒を不凍液とした
請求項4の燃料電池システムを実現できた。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の燃料電池システムによれば、冷媒タンクからの排水の削減、及びシステムのコンパクト化が可能となる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システム10を
図1、及び
図2にしたがって説明する。本実施形態の燃料電池システム10は、一例として住宅に適用されるものである。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム10は、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12、及び冷媒タンク付き燃料電池ユニット12とは別体とれたバックアップ熱源機ユニット14の2ユニットで構成されている。冷媒タンク付き燃料電池ユニット12、及びバックアップ熱源機ユニット14は、一例として、屋外のコンクリート等で形成された基礎の上、ベランダ等に設置することができる。
【0026】
(冷媒タンク付き燃料電池ユニットの構成)
冷媒タンク付き燃料電池ユニット12は、筐体16の内部に、発電を行うと共に排ガスを排出する発電部17、排ガスによって冷媒W2を加熱する冷媒加熱部19、及び冷媒W2によって上水を加熱する上水加熱部21が設けられている。
【0027】
冷媒タンク付き燃料電池ユニット12は、第2の筐体としての筐体16の内部に、都市ガス、空気(酸素)、及び改質水W1が供給されて発電を行う燃料電池モジュール18、都市ガスを燃料電池モジュール18に供給する燃料ガス管20、燃料ガス管20の中間部に設けられ都市ガス中に含まれる硫黄化合物を除去する脱硫器22、燃料電池モジュール18に供給する改質水W1を貯留する改質水タンク24、改質水タンク24の改質水W1の液面レベルを測定する液面レベルセンサ24A、改質水タンク24と燃料電池モジュール18とを連結する改質水供給管26、改質水タンク24の改質水W1を燃料電池モジュール18に供給するための改質水ポンプ28、空気ブロワ86が設けられた酸化ガス管88等が収容されており、発電部17は、これらの構成要素を含んで構成されている。
【0028】
また、筐体16の内部には、冷媒W2を貯留する冷媒タンク30、燃料電池モジュール18から排出された排ガスと冷媒W2との間で熱交換を行う排気熱交換器31、燃料電池モジュール18と排気熱交換器31とを接続する第1排ガス管32、排気熱交換器31を通過した排ガスを筐体16の外部へ排出するための第2排ガス管34、排気熱交換器31の内部で生成された水分(排気熱交換器31の内部で凝集された排ガス中の水分)を改質水タンク24へ排出するための排水管35、冷媒タンク30の底部と排気熱交換器31とを連結し冷媒タンク30の冷媒W2を排気熱交換器31へ供給するための第1送出し側配管36、冷媒タンク30の天井壁30Aと排気熱交換器31とを連結し、排気熱交換器31を通過した冷媒W2を冷媒タンク30へ戻すための第1戻し側配管38、第1送出し側配管36に設けられて冷媒タンク30の冷媒W2を排気熱交換器31側へ送り出すための熱回収ポンプ40、第1送出し側配管36に設けられて冷媒W2の熱を外部に放出可能とするラジエータ42、ラジエータ42に送風を行うラジエータファン43が収容されており、冷媒加熱部19は、これらの構成要素を含んで構成されている。
【0029】
また、筐体16の内部には、冷媒タンク30の冷媒W2と外部から供給された上水との間で熱交換を行う上水熱交換器44、冷媒タンク30の上部に連結され冷媒タンク30と上水熱交換器44とを連結する第2送出し側配管46、上水熱交換器44を通過した冷媒W2を冷媒タンク30へ戻すための第2戻し側配管48、第2戻し側配管48に設けられて冷媒W2を冷媒タンク30へ戻すための予熱ポンプ50、外部(上水道)から供給された上水を上水熱交換器44に供給する上水供給配管52、上水供給配管52の中間部から分岐された上水分岐配管54、上水熱交換器44を通過した上水を排出する給湯配管56、給湯配管56の中間部から分岐され、上水熱交換器44を通過した上水を冷媒タンク30へ供給する給湯分岐配管58、給湯分岐配管58に設けられ冷媒タンク30へ供給する上水の量を調整する補水弁60、給湯配管56から供給された暖められた上水と上水分岐配管54から供給された上水(冷たい)とを混合する混合弁62、混合弁62から筐体16の外部へ上水を排出する上水排出配管64等が収容されており、上水加熱部21は、これらの構成要素を含んで構成されている。
【0030】
さらに、筐体16の内部には、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12に設けられた各種電装部品の制御を行う制御装置70が収容されている。
【0031】
ここで、筐体16の内部には、冷媒タンク30と排気熱交換器31との間で冷媒W2が循環する経路、即ち、第1送出し側配管36、及び第1戻し側配管38で第1の循環経路118が形成されている。筐体16の内部には、冷媒タンク30と上水熱交換器44との間で冷媒W2が循環する経路、即ち、第2送出し側配管46、及び第2戻し側配管48で第2の循環経路120が形成されている。また、筐体16の内部には、給湯配管56、及び上水排出配管64で給湯経路121が形成されている。
【0032】
なお、筐体16の外部には、制御装置70に接続されて、外気温を測定する温度センサ65が設けられている。
【0033】
本実施形態では、冷媒タンク30の冷媒W2として水(一例として水道水等)が用いられている。冷媒タンク30の天井壁30Aには、冷媒タンク30の内外を貫通し、空気の出入を可能とする連通部としての開口部33が形成されている。また、冷媒タンク30には、上部に空間が設けられるように冷媒W2が貯留されており、タンク内の冷媒W2が熱膨張して体積が増加した場合においても、開口部33から冷媒W2が溢れ出ないように、冷媒タンク30に注入する冷媒W2の体積が決められている。
【0034】
なお、本実施形態では、冷媒タンク30と排気熱交換器31との間で冷媒W2が循環する経路、即ち、第1送出し側配管36、及び第1戻し側配管38で第1の循環経路118が形成されている。冷媒タンク30と上水熱交換器44との間で冷媒W2する経路、即ち、第2送出し側配管46、及び第2戻し側配管48で第2の循環経路120が形成されている。また、給湯配管56、及び上水排出配管64で給湯経路121が形成されている。
【0035】
図2に示すように、燃料電池モジュール18は、筐体71の内部に、改質触媒72、バーナ74、及び燃料電池スタック76を主要な構成として備えている。
【0036】
改質触媒72は、燃料ガス管20と接続されている。この改質触媒72には、脱硫器22にて硫黄化合物が吸着除去された都市ガスが燃料ガス管20を通じて供給される。この改質触媒72は、供給された都市ガス(原料ガス)を、改質水供給管26を通じて供給された改質水(凝縮水)W1を利用して水蒸気改質する。
【0037】
バーナ74には、後述するスタック排ガス管80が接続されている。このバーナ74は、スタック排ガス管80を通じて供給されたバーナガス(未反応の水素ガスを含むスタック排ガス)を燃焼し、改質触媒72を加熱する。そして、この改質触媒72では、脱硫器22から供給された都市ガス(原料ガス)から、水素ガスを含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、燃料ガス管75を通じて後述する燃料電池スタック76の燃料極78に供給される。
【0038】
燃料電池スタック76は、固体酸化物形の燃料電池スタックであり、積層された複数の燃料電池セル81(
図2では1つのみ図示)を有している。各燃料電池セル81は、電解質層82と、この電解質層82の表裏面にそれぞれ積層された燃料極78及び空気極84とを有している。
【0039】
空気極84(カソード極)には、空気ブロワ86が設けられた酸化ガス管88を通じて酸化ガス(筐体16の外部の空気)が供給される。この空気極84では、下記式(1)で示されるように、酸化ガス中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。この酸素イオンは、電解質層82を通って燃料極78に到達する。
【0040】
(空気極反応)
1/2O
2+2e
− →O
2− ・・・(1)
【0041】
一方、燃料極78では、下記式(2)及び式(3)で示されるように、電解質層82を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と、電子が生成される。燃料極78で生成された電子は、外部回路を通って空気極84に到達する。そして、このようにして電子が燃料極78から空気極84に移動することにより、各燃料電池セル81において発電される。また、各燃料電池セル81は、発電時に上記反応に伴って発熱する。
【0042】
(燃料極反応)
H
2 +O
2− →H
2O+2e
− ・・・(2)
CO+O
2− →CO
2+2e
− ・・・(3)
【0043】
燃料電池スタック76に接続されたスタック排ガス管80の上流側は、燃料極排ガス管90及び空気極排ガス管92に分岐されており、この燃料極排ガス管90及び空気極排ガス管92は、燃料極78及び空気極84にそれぞれ接続されている。燃料極78から排出された燃料極排ガスと、空気極84から排出された空気極排ガスとは、燃料極排ガス管90及び空気極排ガス管92を通じて排出されると共に、スタック排ガス管80内にて混合されてスタック排ガスとされる。このスタック排ガスは、燃料極排ガスに含まれる未反応の水素ガスを含んでおり、上述の通り、バーナ74にバーナガスとして供給される。なお、このバーナ74に、バーナ排ガスを排気熱交換器31へ排出する第1排ガス管32が接続されている。
【0044】
なお、
図1に示す制御装置70は、インバーター68より電力が供給され、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12の電装部品、例えば、改質水ポンプ28、熱回収ポンプ40、ラジエータファン43、予熱ポンプ50、補水弁60、混合弁62等の制御を行うことができる。
【0045】
(バックアップ熱源機ユニットの構成)
本実施形態のバックアップ熱源機ユニット14は、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12から供給された湯を更に加熱して排出可能とした潜熱回収型の熱源機(一般的に潜熱回収型ガス給湯器とも呼ばれる)である。潜熱回収型の熱源機は、バーナ100の排気中の水蒸気を水(凝縮水)にすることにより、排気中の潜熱を回収して、熱効率を向上させたタイプの熱源機である。
図1に示すように、バックアップ熱源機ユニット14の第1の筐体93の内部には、二次熱交換器91、一次熱交換器94、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12からの湯を二次熱交換器91、一次熱交換器94に供給する配管96、一次熱交換器94を加熱する加熱装置としてのバーナ100、バーナ100に燃料ガスを供給する燃料ガス管102、熱交換器94を通った湯を排出する配管98、配管96の途中に接続された分岐管104と配管98とに接続された混合弁106、混合弁106から湯を排出する配管108、排出される湯の温度を計測する温度センサ109、制御装置110等が設けられている。制御装置110は、混合弁106、バーナ100等を制御する。
【0046】
なお、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12の燃料ガス管20、及びバックアップ熱源機ユニット14の燃料ガス管102には、都市ガスのガス供給管112が接続されている。
また、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12の上水排出配管64とバックアップ熱源機ユニット14の配管96とは、接続配管114で接続されている。さらに、バックアップ熱源機ユニット14の配管108には、住宅の水機器に向けて湯を送る配管116が接続されている。
【0047】
(作用、効果)
次に、本実施形態の燃料電池システム10の動作について説明する。
第一実施形態に係る燃料電池システム10では、改質触媒72から燃料ガスが燃料電池スタック76の燃料極78に供給されると共に、空気ブロワ86が作動して酸化ガス管88から酸化ガスとしての空気が燃料電池スタック76の空気極84に供給されると、この燃料電池スタック76において燃料ガス及び酸化ガスが反応し発電する。
【0048】
この発電に伴い燃料電池スタック76からは、未反応の水素ガスを含むスタック排ガスが排出され、このスタック排ガスは、バーナガスとしてバーナ74にて燃焼され、このバーナ74からは、バーナ排ガスが排出される。このバーナ排ガスは、水蒸気を含んでおり、第1排ガス管32を通じて排気熱交換器31に供給される。
【0049】
この排気熱交換器31では、バーナ排ガスと冷媒タンク30から供給された冷媒W2との間で熱交換がなされ、冷媒W2が加熱されると共にバーナ排ガスに含まれる水蒸気が凝縮される。排気熱交換器31で生成された凝縮水(蒸留水)は、改質水W1として改質水タンク24に回収される。改質水タンク24に回収された改質水は、改質水供給管26を通じて改質触媒72に供給され、この改質触媒72にて水蒸気改質用の水蒸気として利用される。なお、水分の除去されたバーナ排ガスは、第2排ガス管34を介して外部に排出される。
【0050】
熱回収ポンプ40を作動させることで、第1の循環経路118は、冷媒タンク30と排気熱交換器31との間で冷媒W2を循環させるため、冷媒タンク30内の下側の冷媒W2は第1送出し側配管36を介して排気熱交換器31へ供給され、排気熱交換器31で加熱された後、冷媒タンク30の上側に戻り、これによって冷媒タンク内の冷媒W2の温度が上側から下側に向けて徐々に上昇する。
【0051】
ここで、本実施形態の燃料電池システム10では、発電に用いる改質水W1は、水蒸気を含んだバーナ排ガスから回収するため、バーナ排ガスを冷却する必要がある。その際、十分な量の水を回収するために、バーナ排ガスを一定温度(例えば、47°C)以下まで冷却する必要がある。バーナ排ガスの冷却には、熱回収水(冷媒W2)と熱交換する方法をとるが、例えば、発電を行っており、かつ湯の使用利用が少ない場合などで、冷媒タンク30が満蓄になる等の状況により熱回収水温が上昇してくると、バーナ排ガスを十分には冷却できなくなり、十分な量の改質水W1を確保できなくなる。そのため、熱回収水の温度は一定(例えば、44°C)以下に保つ必要があり、第1送出し側配管36に冷媒W2の熱を外部に放出可能とするラジエータ42、及びラジエータ42に送風を行うラジエータファン43を配置し、必要に応じて冷媒W2の冷却を行う。
【0052】
本実施形態の燃料電池システム10では、外気温を測定する温度センサ65からの温度測定データ、及び改質水タンク24の改質水W1の液面レベルを測定する液面レベルセンサ24A等からの測定データに基づいて、制御装置70は、外気温や、改質水W1の量に応じて熱回収ポンプ40、及びラジエータファン43を制御することができる。熱回収ポンプ40、及びラジエータファン43を作動させることで、排気熱交換器31に流入させる冷媒W2の温度を低下させることができ、これにより、排気熱交換器31で生成される改質水W1の量を増加させることができる。
【0053】
本実施形態の燃料電池システム10では、熱回収ポンプ40、及びラジエータファン43を制御することで、効率の良い熱回収を行うことができる。熱回収温度、即ち、排気熱交換器31から排出される冷媒W2の温度が高いほど、多くの熱を冷媒タンク30に蓄えることができるが、排気熱交換器31とバーナ排ガスとの温度差が小さくなるため、単位時間当たりの熱回収量は低下する。
【0054】
逆に、熱回収温度を低くすると、冷媒タンク30に蓄える熱は少なくなるが、排気熱交換器31においてバーナ排ガスと冷媒W2との温度差が大きくなるため、単位時間当たりに多くの熱を回収することができる。
【0055】
よって、冷媒タンク30の蓄熱量が少ないときには熱回収温度を低めに設定し、素早くバーナ排ガスの熱を回収し、冷媒タンク30が満蓄に近づいてきたら熱回収温度を上げて冷媒タンク30の蓄熱量を増やすことで、バーナ排ガスからの熱をより多く利用することが可能となる。
【0056】
なお、冷媒タンク30の天井壁30Aには、内部と外部とを連通する開口部33が設けられているため、冷媒タンク30内の冷媒W2が温度上昇に伴って膨張しても、冷媒W2の上の空気は開口部33から外部へ排出されるので、タンク内の圧力上昇を抑制することができる。
【0057】
したがって、冷媒タンク30内の圧力上昇を抑えるために、冷媒タンク30内の冷媒W2を外部へ排出する必要が無い。即ち、冷媒タンク30から外部への排水が無いため、冷媒W2を外部へ排水するための経路を必要とせず、燃料電池システム10のコンパクト化を図ることができる。また、冷媒W2を外部へ排水するための経路を排水配管(下水)に繋ぐ現場工事も必要としない。
【0058】
また、暖められた冷媒タンク30の冷媒W2は、上水熱交換器44で、外部より供給された上水との間で熱交換を行うことができる。予熱ポンプ50を作動させることで、第2の循環経路120は、冷媒タンク30と上水熱交換器44との間で冷媒W2を循環させるため、外部の上水道から供給された上水は、上水熱交換器44で加熱されて暖められる。
【0059】
混合弁62は、上水熱交換器44で加熱された上水に、外部の上水道から供給された冷たい上水を混合して排出することができ、また、上水熱交換器44で加熱された上水をそのまま排出することもできる。混合弁62は、制御装置70からの制御信号に基づいて、上水熱交換器44で加熱された上水と、外部の上水道から供給された冷たい上水との混合比を調整して排出することができる。
【0060】
なお、バックアップ熱源機ユニット14は、例えば、冷媒タンク30の冷媒W2の温度が低く、上水熱交換器44から排出される上水の温度が低い場合等に、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12から供給される上水を更に加熱することができる。また、バックアップ熱源機ユニット14は、図示しない住宅の風呂の追い炊きをする場合に使用することもできる。
【0061】
本実施形態の燃料電池システム10は、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12と、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12とは別体とれたバックアップ熱源機ユニット14の2ユニットで構成しているため、燃料電池ユニットとバックアップ熱源機ユニットとを一体化した1ユニット構成のものと比較して、冷媒タンク付き燃料電池ユニット12、及びバックアップ熱源機ユニット14の各々の重量、及びサイズが、燃料電池ユニットとバックアップ熱源機ユニットとを一体化したユニットと比較して小さくなる。即ち、各ユニットを小型化、及び軽量化することができ、運搬性を向上することができる。また、ユニット1個当たりの設置面積を小さくできるので、設置の自由度を向上することもできる。
【0062】
冷媒タンク付き燃料電池ユニット12においては、冷媒タンク30と上水熱交換器44とが、同じ筐体16の内部に配置されているので、冷媒タンク30と上水熱交換器44とを別体の筐体に配置した場合に比較して、上水熱交換器44を冷媒タンク30の近くに配置でき、上水熱交換器44を冷媒タンク30とを連結する第2送出し側配管46、及び第2戻し側配管48からの熱の放出、即ち、熱ロスを抑制することができる。
【0063】
本実施形態の燃料電池システム10では、冷媒タンク30が、住宅に供給する上水と独立した系に設けられており、住宅への給湯の有無により冷媒W2の量が変わらない。即ち、冷媒タンク30の冷媒W2を住宅の水機器に供給しないので、タンク内の冷媒W2が空になる事は無く、また、上水熱交換器44で暖めた新鮮な上水を住宅の水機器に供給することが出来る。
【0064】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム10を
図3にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0065】
図3に示すように、本実施形態の燃料電池システム10は、各々別体とされた燃料電池ユニット122、タンクユニット124、及びバックアップ熱源機ユニット14の3ユニットで構成されている。
【0066】
(燃料電池ユニット)
本実施形態では、燃料電池モジュール18、脱硫器22、改質水タンク24、改質水ポンプ28、排気熱交換器31、熱回収ポンプ40、ラジエータ42、インバーター68、後述する排水ポンプ132、燃料電池ユニット122に設けられた各種電装部品の制御を行う制御装置123等が第3の筐体としての筐体125の内部に収納されて燃料電池ユニット122を構成している。
【0067】
(タンクユニット)
また、本実施形態では、冷媒タンク30、上水熱交換器44、予熱ポンプ50、補水弁60、混合弁62、各種電装部品の制御を行う制御装置127等が第4の筐体としての筐体126の内部に収納されてタンクユニット124を構成している。
【0068】
ここで、バックアップ熱源機ユニット14の下方には、排水(凝縮水)を集めて下水等へ排水するための排水設備としての排水受け128が設けられている。排水受け128に流入した排水は、下水等に排出することができる。
【0069】
本実施形態では、バックアップ熱源機ユニット14から排水(凝縮水)が排出される場合、該排水は排水管129を介して排水受け128に排出することができる。
【0070】
本実施形態の改質水タンク24には、液面レベルセンサ24Aが設けられており、改質水タンク24に貯留した改質水W1の液面が予め設定した上限値に達したことが液面レベルセンサ24Aで検出されると、制御装置123は、改質水タンク24に貯留した改質水W1の液面が予め設定した上限値に達したことが分かるようになっている。
【0071】
また、本実施形態の改質水タンク24には、中間部に排水ポンプ132を備えた排水管130が接続されており、排水ポンプ132が駆動されると、改質水タンク24の改質水W1が排水管130を通って排水受け128へ排出されるようになっている。一例として、制御装置123は、改質水W1の液面が予め設定した上限値に達したと判断すると、排水ポンプ132を駆動し、改質水タンク24に貯留した改質水W1の液面が予め設定した下限値になると排水ポンプ132を停止するように排水ポンプ132を制御するようになっている。これにより、余剰の改質水W1が排水受け128に排出され、発電に必要な量の改質水W1が残る。
【0072】
なお、制御装置123による排水ポンプ132の制御は、上記に記載した例に限らない。例えば、改質水タンク24に貯留した改質水W1の液面が予め設定した上限値に達したことが液面レベルセンサ24Aで検出された場合、制御装置123は、排水ポンプ132を一定時間駆動して、一定量の改質水W1を排水受け128に排出するようにしてもよい。この場合、液面レベルセンサ24Aの代わりに、改質水W1の液面が予め設定した上限値に達した場合にスイッチが入る上限検知用のフロートスイッチを用いることができる。また、改質水W1の上限値を検出する上限検知用のフロートスイッチと、改質水W1の下限値を検出する下限検知用のフロートスイッチとを用い、改質水W1の液面が上限値に達したことが上限検知用のフロートスイッチで検出された場合、制御装置123は、改質水W1の液面が下限値に達したことが下限検知用のフロートスイッチで検出されるまで排水ポンプ132を駆動して、一定量の改質水W1を排水受け128に排出するようにしてもよい。
【0073】
本実施形態の燃料電池システム10では、改質水タンク24からの排水と、バックアップ熱源機ユニット14からの排水を、一つの排水受け128に排水しているため、改質水タンク24からの排水用の排水設備と、バックアップ熱源機ユニット14からの排水用の排水設備の両方を設ける場合に比較して排水設備を簡素化することができ、排水設備に関わる現場工事も削減することができる。
【0074】
本実施形態の燃料電池システム10は、第2実施形態の冷媒タンク付き燃料電池ユニット12を、各々別体とされた燃料電池ユニット122と、タンクユニット124との2ユニットに分割したので、燃料電池ユニット122、及びタンクユニット124は、第2実施形態の冷媒タンク付き燃料電池ユニット12と比較して、各々の重量、及びサイズが小さくなる。即ち、燃料電池ユニット122、及びタンクユニット124は、小型化、及び軽量化され、運搬性を向上することができる。
【0075】
さらに、本実施形態の燃料電池システム10は、燃料電池ユニット122、及びタンクユニット124のユニット1個当たりの設置面積を小さくできるち共に、各々のユニットを離して設置することができるので、設置の自由度を更に向上することもできる。
【0076】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システム10を
図4にしたがって説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0077】
第1の実施形態、及び第2の実施形態の燃料電池システム10では、冷媒タンク30の上部に開口部33を設けることで、冷媒タンク30の内部の圧力を外部に逃がしていたが、
図4に示すように、本実施形態の燃料電池システム10では、冷媒タンク30の内部の圧力をシスターンタンク134を介して外部に逃がしている。
【0078】
本実施形態の冷媒タンク30は、開口部33が設けられていない、いわゆる密閉型のタンクである。冷媒タンク30の冷媒タンク30の天井壁30Aには、配管136の一端が接続され、配管136の他端がシスターンタンク134に接続されている。シスターンタンク134の天井壁134Aには、シスターンタンク134の内外を貫通し、シスターンタンク134の内部の空気を排出可能とする空気孔としての開口部138が形成されている。
【0079】
本実施形態の燃料電池システム10では、冷媒タンク30内の冷媒W2が温度上昇に伴って膨張し、冷媒W2の体積が冷媒タンク30の容積を上回った場合、一部の冷媒W2を配管136を介して開口部138の形成されたシスターンタンク134へ排出される。これによって、冷媒タンク30内の冷媒W2が膨張した際の冷媒タンク30内の圧力上昇を抑制することができる。これにより、冷媒タンク30内の冷媒W2がシステム外に漏れ出ることを抑制できる。
【0080】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池システム10を
図5にしたがって説明する。なお、本実施形態は、前述した第3の実施形態の変形例であり、第3の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0081】
前述した第3の実施形態では、冷媒タンク30の内部に貯留する冷媒W2が水であったが、第4の実施形態に係る燃料電池システム10では、冷媒W2が、例えば、エチレングリコール等の含まれた不凍液とされている。本実施形態では、シスターンタンク134に、冷媒タンク30の不凍液である冷媒W2が流入する。
【0082】
本実施形態の燃料電池システム10では、冷媒W2を不凍液としたので、例えば、寒冷地等において気温が低下した状態で、かつ燃料電池システム10を稼動していない場合等において、冷媒W2の凍結を抑制することができる。なお、不凍液とは、低温でも液体の状態を保つような凝固点(凝固する温度)の低い液体のことであり、不凍液としては燃料電池システム10の設置環境における最低気温よりも低い凝固点を有するものを使用することが好ましい。
【0083】
本実施形態では、冷媒W2と上水とを上水熱交換器44を用いて熱交換しており、冷媒W2と上水とを分離しているため、冷媒W2を不凍液とした燃料電池システム10を実現できた。
【0084】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0085】
第2の実施形態の燃料電池システム10に設けられていた排水受け128、排水管129、排水管130、排水ポンプ132等の排水設備は、第1の実施形態に設けられていてもよい。
【0086】
なお、上記実施形態では、燃料電池スタック76に供給する燃料ガスに都市ガスを用いた例を示したが、燃料ガスとしてプロパンガス等、都市ガス以外の可燃性ガスを用いることもできる。