【実施例1】
【0021】
図1は、本発明による画素構成の平面図であり、
図2は、画素部分の断面図である。まず、
図2の断面構造から説明する。
図2において、ガラスで形成されたTFT基板100の上にゲート電極101が形成され、これを覆ってゲート絶縁膜102が形成されている。ゲート電極101の上方でゲート絶縁膜102の上に半導体層103が形成されている。
【0022】
半導体層103はa−Siで形成されている。半導体層103には、n+a−Siも形成されており、ドレイン電極104とソース電極105とに電気的に接続している。半導体層103、ドレイン電極104、ソース電極105を覆って無機パッシベーション膜106が形成され、その上に平坦化膜を兼ねた有機パッシベーション膜107が形成されている。有機パッシベーション膜107は1乃至3μmと厚く形成される。
【0023】
有機パッシベーション膜107の上には、平面状にITOによってコモン電極108が形成されている。コモン電極108を覆って層間絶縁膜109が形成され、その上にスリット1101を有する画素電極110が形成されている。画素電極110はスルーホール130を介してソース電極105と接続している。尚、ソース電極105とドレイン電極104については、その呼称が逆転してもよい。画素電極110を覆って液晶を初期配向させる配向膜111が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、コモン電極108との間に図に示すような電気力線が発生し、電気力線の横成分によって液晶分子301が回転し、バックライトからの光を制御する。
【0024】
TFT基板100と液晶層300を挟んで対向基板200が配置している。対向基板200の内側で、画素電極110に対応する部分にはカラーフィルタ201が形成され、カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にブラックマトリクス202が形成されている。カラーフィルタ201とブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成され、オーバーコート膜203の上に配向膜113が形成されている。対向基板200側にはコモン電極が形成されていないので、外部からのノイズをシールドするために対向基板200の外側に外部導電膜210がITOによって形成されている。
【0025】
図2はいわゆるボトムゲートタイプのTFTの場合であるが、半導体層103の上にゲート電極102が形成されたトップゲート型の場合もある。また、半導体層103はa−Siに限らず、poly−Siによって形成される場合もある。また、カラーフィルタをTFT基板側に形成する構成であってもよい。
【0026】
液晶には、ネガ型液晶とポジ型液晶が存在する。ネガ型液晶は液晶分子の短軸側に極性基を有しており、ポジ型液晶は液晶分子の長軸側に極性基を有している。ネガ型液晶は液晶分子の短軸側に極性基を配置するために、ポジ型液晶に比べて分子構造的に、誘電率異方性Δεが小さく、ポジ型液晶の場合に比べて電圧印加による液晶分子の回転が生じにくい。一方、ネガ型液晶は、液晶分子が基板の垂直方向に対して立ち上がりにくいので、押しドメインの発生等に対しては、ポジ型液晶の場合に比べてより耐性を有している。以下の説明では、ネガ型液晶の場合を用いて説明するが、本発明は、ポジ型液晶の場合にも適用することが出来る。
【0027】
図1は、本発明の画素構造を示す平面図である。
図1において、走査線10が横方向に延在し、所定のピッチで縦方向に配列している。映像信号線20が縦方向に延在し、所定のピッチで横方向に配列している。画素内にはTFTと画素電極110、コモン電極108が存在している。
【0028】
図1において、ゲート電極を兼ねた走査線10上にゲート絶縁膜を介して半導体層103が形成されている。半導体層103の上には映像信号線から分岐したドレイン電極104と、ドレイン電極104と対向してソース電極105が形成されている。ドレイン電極104とソース電極105の間がTFTチャンネル部となっている。ソース電極105はスルーホール130を介して画素電極110と導通し、画素電極110に映像信号を供給する。
【0029】
画素電極110の下には、
図2で説明したように、平面状にコモン電極108が形成されている。画素電極110に信号電圧が印加されると、
図2に示したように、電気力線が液晶層300を通り、画素電極110のスリット1101および画素電極110の外側を介してコモン電極108に到達する。電気力線の横成分によって液晶が回転し、液晶層の透過率を制御する。
【0030】
図1において、液晶分子を初期配向させるための配向膜の配向軸50は、走査線10の延在方向と一致している。この場合、液晶分子の長軸の初期の配向方向は配向膜の配向軸と一致している。このような構成において、画素電極110に電圧が印加されると、液晶分子に対する電界Eの方向は、
図1に示すように、配向膜の配向軸とは所定の角度傾くことになる。
【0031】
ネガ型液晶は、電界が印加されると液晶分子の長軸が電界の向きと直角方向に回転する。したがって、
図1のような構成とすることによって、画素内での大部分の液晶は、同じ方向に回転することになり、異なったドメインの発生によるディスクリネーションの発生を抑制することが出来る。ただし、後で説明するように、画素電極の一部には、液晶分子が逆方向に回転する領域が発生するが、通常はこの領域は小さく、これによって発生するディスクリネーションの領域も小さい。
【0032】
図1に示す画素電極110の長軸は、配向膜の配向軸50と直角方向、すなわち、y軸方向に対して、所定の角度θ、例えば、5乃至15度傾いている。これは、以上で説明したとおり、画素電極110に電圧が印加された場合、画素内において大部分の液晶分子を同じ方向に回転させるためである。しかし、画素内において、液晶分子の回転方向が同じであるということは、画面を視る方向によって、視野角特性が異なる、いわゆる視野角特性の方位角依存性が生ずる。
【0033】
これを対策するために、
図1に示す画素の上下に配置される画素における画素電極は、
図1の画素とは配向軸と直角方向、すなわち、y軸方向に対して、
図1の画素とは逆方向に傾いている。したがって、画素電極に電圧が印加された場合に液晶分子の回転は
図1の画素の場合と逆方向になる。このように、画素電極が傾く方向が互いに逆である画素を
図1のy軸方向に対して互い違いに配置することによって、視野角特性の方位角依存性を緩和することが出来る。また、スペースファクターを向上させるために、
図1における映像信号線20は、y方向にジグザグの形状となっている。本明細書では、このような場合も映像信号線20はy方向に延在しているという語句を使用する。
【0034】
図1の画素電極110は概略平行四辺形であり、内側にスリット1101を有している。また、画素電極110は端部において外側への突起30を有している。この突起30が実施例1における特徴となっている。突起30の役割は後で説明する。
【0035】
図3は以上で説明した構成を示す画素配置の平面模式図である。
図3において、
図3(a)が上側の画素であり、
図3(b)が下側の画素である。
図3の、上側の画素における画素電極110と下側の画素の画素電極110はy軸方向に対して逆方向に傾いている。上側の画素も下側の画素もスルーホール130を介してTFTのソース電極と接続している。なお、
図3および
図4においては、スルーホールは長方形となっている。
【0036】
図3において、画素電極110には信号電圧が印加されている。しがって、液晶分子301は、初期はx方向であったものが、画素電極110付近の電界によって回転している。液晶分子301に対する電界の向きが上側の画素と下側の画素とでx軸をはさんで逆方向なので、液晶分子301の回転方向も上側の画素と下側の画素とで向きがx軸を挟んで逆となっている。
【0037】
図3の下側の画素において、画素電極110の内部に形成されたスリット1101のコーナー部で液晶分子301が他の部分とは逆方向に回転している。これをリバースドメインと呼んでいる。通常は、このリバースドメインの領域は小さい。ここで、下側の画素に対応する部分の対向基板を押した場合、この部分において、TFT基板と対向基板の間隔が小さくなり、矢印で示すように、液晶分子が上側の画素に移動する。上側の画素に移動した液晶分子301は、上側の液晶分子301の影響を受けて、上側の画素の液晶分子と同じ方向に配列される。
【0038】
ここで、下側の画素に対する押圧が解除されると、上側の画素に流れ込んだ液晶分子301が下側の画素に還流してくる。還流してきた状態の液晶分子301の配向の様子を示すものが
図4である。
図4(a)が上側の画素であり、
図4(b)が下側の画素である。
図4において、上側の画素における液晶分子の状態は変化無いが、液晶分子301が還流してきた下側の画素における液晶分子301の配向状態は、押圧が加わる前とは、大きく異なっている。
【0039】
図4の上側画素から下側画素に向かう点線の矢印は、液晶分子が上側画素から下側画素に還流している状態を表している。ところで、液晶分子が、電界によって回転した場合、安定方向は、電界と同じ方向に液晶分子の極性基が回転する状態と、電界と逆方向に液晶分子の極性基が回転する場合とがある。電界と同じ方向に回転した状態を安定方向と呼び、電界と逆方向に回転した場合を準安定状態と呼ぶ。
【0040】
上側の画素から還流して来た液晶分子301は、下側画素において再配向するが、このときの液晶分子301は、下側画素に流れ込むときは、上側の画素の影響を受けた配向方向となっている。この状態の液晶分子の配向方向は、下側画素において、安定状態よりも準安定状態のほうに角度が近い。そうすると、上側画素から還流してきた液晶分子301は、下側画素において、液晶分子301の向きが、当初の安定状態とは異なった配向を有することになる。この状態によって形成されたドメインをリバースドメインと呼んでいる。
【0041】
したがって、液晶分子301が上側画素から還流してきた後の下側画素におけるリバースドメインの領域は、当初の下側画素におけるリバースドメインの領域よりも格段に大きくなっている。したがって、発生するディスクリネーションの領域も大きくなっている。これが押しドメインの問題である。
【0042】
図5は、以上で説明した内容を配向膜の配向軸50、電界の方向E、電界による液晶分子の配向方向の関係等によって説明する図である。
図5(a)は、
図3あるいは
図4の上側画素における配向膜の配向軸50、つまり、初期配向方向、電界の向きE、電界による液晶分子の配向方向TS1の関係を示したものである。
図5(a)において、配向膜の配向軸50の方向はx軸の方向であり、電界の方向Eは、x軸からバイアス角θだけ傾いている。液晶分子301はネガ型液晶なので、液晶分子301は液晶分子の長軸が電界Eと直角方向に回転するので、TS1の方向に配向することになる。この場合の回転角度をツイスト角φで示している。
【0043】
図5(b)は、
図3または
図4の下側画素の配向膜の配向軸50、電界の方向E、電界による液晶分子の配向方向TS2に加え、準安定方向による液晶分子の配向方向TS3、液晶分子が上側画素から還流して来た直後の液晶分子の配向方向TS1等を示す図である。
図5において、配向膜の配向軸の方向50はx方向であることは
図5(a)と同じである。しかし、
図5(b)における電界の向きEは、
図5(a)における電界の向きEとは、x軸方向を挟んで逆側である。
【0044】
したがって、
図5(b)に押圧を加える前の液晶分子301の回転の方向は、
図5(a)の場合と比較して、x軸方向を挟んで逆向きとなっている。すなわち、
図5(b)における液晶分子301の向きは、
図3の下側画素における液晶分子の配向している方向となっている。
図3(a)と
図3(b)を比較すればわかるように、液晶分子301の配向の向きは、上側画素と下側画素とは、x軸方向を挟んで対称方向となっている。
【0045】
すなわち、ポジ液晶の場合は、配向膜の配向方向50と電界の方向Eの角度であるバイアス角θが小さいほうに液晶分子391は回転する。一方、ネガ液晶の場合は、液晶分子の長軸と直角方向が電界の方向に並ぼうとするので、バイアス角が大きい方に液晶分子391は回転する。しかし、液晶分子301は、
図5(b)における準安定方向TS3においてもエネルギーが小さくなる。したがって、何らかのきっかけがあれば、液晶分子301は、準安定方向TS3の方向に配向することも出来る。ここで、電界の方向Eと液晶分子の安定方向TS2のなす角φFと電界方向Eと液晶分子の準安定方向TS3のなす角φRとは、
図5(b)に示すように、向きは異なるが絶対値は同じである。
【0046】
図3に示すように、下側画素から流れ込んだ液晶分子301は、上側画素の液晶分子301の影響を受けて、上側画素の液晶分子301と同じ方向の配向となる。その後、液晶分子301が上側画素から下側画素に還流してくると、液晶分子301は当初は、上側画素における配向状態を維持している。この状態が
図5(b)におけるTS1である。
【0047】
その後、下側画素に流れ込んだ液晶分子301は、配向方向TS1から再配向する。このとき、還流した液晶分子301の配向方向TS1と準安定方向であるTS3とのなす角度φR1は、還流した液晶分子301の配向方向TS1と安定方向であるTS2とのなす角度φF1よりも小さい。したがって、還流した液晶分子301は準安定方向TS3に配向することになる。これに対してもともと下側画素に存在し、上側画素に流れ込まなかった液晶分子は、元の配向方向TS2のままである。
【0048】
したがって、下側画素には、押圧を解除して、液晶分子が下側画素に還流したことによって、液晶分子301の配向方向が異なる2つの領域が存在することになり、広い範囲にわたってディスクリネーションが発生する。従来はこれが大きな問題となっていた。なお、
図4(b)において、わかりやすくするために、液晶分子301は全て準安定方向(リバース配向)に配向しているように描いているが、実際はある領域の液晶分子301は、押圧前の配向方向を維持しているので、ドメインが2つ存在することになる。
【0049】
なお、液晶分子301の配向方向は、周囲の液晶分子301に対して伝播する。したがって、いずれかの液晶分子301が特定の方向に配向すると、それが伝播して、広い範囲に同じ配向を有する液晶分子301が分布することになり、ドメインとなる。
【0050】
以上のように、
図4における上側画素から還流した液晶分子301の配向の向きを上側画素の液晶分子301の配向の向きではなく、例えば、配向膜の配向軸方向50であるx方向に強制的に配向させることが出来れば、液晶分子301は安定方向にツイストすることになり、リバースドメインの領域が広く生ずる現象は回避できる。
【0051】
図1における突起30は液晶分子301を突起30において、配向膜の配光軸方向50に固定し、この部分の液晶分子301の影響によって、上側の画素から還流してきた液晶分子301の配向の向きを強制的に配向膜の配向軸の方向50に向けるものである。なお、
図1の画素電極110は上側の端部のみでなく、下側の端部にも突起30が形成されているが、液晶は
図1の下側画素から還流する場合もあるので、画素電極110の下側突起はこのような液晶分子に対して作用させるものである。
【0052】
図6は、
図1における突起30の作用を示す詳細平面図である。
図6において、画素電極110は下側のコモン電極108との間に電界Eが発生するが、この電界Eは平面で見ると、y方向となっている。液晶分子301の初期配向は配向膜の配向方向50であるx方向となっている。液晶分子301はネガ型液晶なので、液晶分子301は、電界が印加されても回転しない。すなわち、液晶分子301の長軸方向はx軸方向に強く固定されている。
【0053】
そうすると、上側画素から還流して来た液晶分子301は、突起30における液晶分子301の影響によって、x軸方向に配向するようになる。したがって、液晶分子301は、安定方向に配向するようになり、準安定方向に配向してリバースドメインを形成することを避けることが出来る。
図1の下側の突起30の作用についても同様である。なお、この作用を持たせるためには、突起30は、x軸方向と平行方向の辺を有することが必要である。
【0054】
このように、画素電極110の突起30の長さdは長いほうが作用を大きくすることが出来る。
図7は、突起30の長さを長くして、映像信号線20の上まで延在させた例である。このような構成としても、画素電極110と映像信号線20との間には、コモン電極108が存在しているので、映像信号線20からの不要信号が画素電極110に影響を与えることは無い。
図7のその他の構成は
図1と同じである。
【0055】
このように、本実施例によれば、画素電極110に突起を形成することにより、還流してきた液晶分子301が逆方向に配向してリバースドメインを形成し、ディスクリネーションを発生させる現象を抑制することが出来る。