特許第6452795号(P6452795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452795
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】ロックナット
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/12 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   F16B39/12 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-238448(P2017-238448)
(22)【出願日】2017年12月13日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3204727号
【原出願日】2016年4月1日
(65)【公開番号】特開2018-40495(P2018-40495A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】716002367
【氏名又は名称】澤田 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100129104
【弁理士】
【氏名又は名称】舩曵 崇章
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祐二
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−156956(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3187298(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/12−39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ナットと第二ナットとからなるロックナットであって、
前記第一ナットと前記第二ナットは、ボルトに螺合する中央ねじ孔をそれぞれ有しており、
前記第一ナットには、前記第二ナットとの対向面側に前記中央ねじ孔より大径の偏心円筒部が前記中央ねじ孔に対し軸直角方向に偏心されて突設されていると共に、前記偏心円筒部の内周には前記中央ねじ孔が連続形成され、前記偏心円筒部の外周には前記中央ねじ孔のピッチとは異なるピッチで前記中央ねじ孔とは逆ネジ方向の大径ねじ部が形成されている一方、
前記第二ナットには、前記第一ナットとの対向面側に、前記大径ねじ部と螺合する、前記中央ねじ孔のピッチとは異なるピッチで前記中央ねじ孔とは逆ネジ方向の大径ねじ孔が前記中央ねじ孔に対し軸直角方向に偏心されて形成されており、
前記第一ナットの前記大径ねじ部を前記第二ナットの前記大径ねじ孔に、相対向する対向面が接した状態で螺合させると、両者の中央ねじ孔の中心及びピッチが一致するように構成されており、
前記第一ナットは、平面視において正六角形形状であり、
前記第二ナットは、平面視において正六角形形状であり、平面視において第一ナットと同一の正六角形の外形形状である、
ロックナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックナットに関する。詳しくは、固定ボルトなどに用いられる緩み止めのロックナットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にナットにおいては振動や衝撃が加わると、瞬間的にナットと締め付け面との間に隙間ができて、ナットに荷重が働かなくなって摩擦力がなくなり、それに伴ってナットに回転が生じて緩みが発生することが知られている。このようなナットの緩みを防止するために、締結用ナットとは別に補助ナットを使用し、締結用ナットと補助ナットとを相互に押圧する方向にねじ込んでそれぞれの螺合面に大きな摩擦力を生じさせるダブルロックナット構造が従来から知られている。
【0003】
しかしながら、上記従来のダブルロックナットでは、締結用ナットと補助ナットを固定ボルトに個別に締め付ける作業が必要となるため作業性が悪い問題があり、しかも、締結用ナットと補助ナットを共に適正なトルクで締め付けなければ、緩み止め効果が十分に発揮されないといった問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3187298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のロックナットの課題を解決するものであり、締め付け作業が比較的簡単かつ迅速に行え、しかも、確実かつ強固な緩み止め効果が得られるロックナットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のロックナットは、第一ナットと第二ナットとからなるロックナットであって、前記第一ナットと前記第二ナットは、ボルトに螺合する中央ねじ孔をそれぞれ有しており、前記第一ナットには、前記第二ナットとの対向面側に前記中央ねじ孔より大径の偏心円筒部が前記中央ねじ孔に対し軸直角方向に偏心されて突設されていると共に、前記偏心円筒部の内周には前記中央ねじ孔が連続形成され、前記偏心円筒部の外周には前記中央ねじ孔のピッチとは異なるピッチで前記中央ねじ孔とは逆ネジ方向の大径ねじ部が形成されている一方、前記第二ナットには、前記第一ナットとの対向面側に、前記大径ねじ部と螺合する、前記中央ねじ孔のピッチとは異なるピッチで前記中央ねじ孔とは逆ネジ方向の大径ねじ孔が前記中央ねじ孔に対し軸直角方向に偏心されて形成されており、前記第一ナットの前記大径ねじ部を前記第二ナットの前記大径ねじ孔に、相対向する対向面が接した状態で螺合させると、両者の中央ねじ孔の中心及びピッチが一致するように構成した。
【0007】
このロックナットの使用方法について説明すると、常時は、第一ナットの大径ねじ部が第二ナットの大径ねじ孔に、相対向する対向面が接した状態で螺合され、かつ両者の中央ねじ孔の中心及びピッチが一致する状態にセットされており、締結時には、そのセット状態のまま第一ナットと第二ナットをボルトに所定のトルクが作用するまで締め付け方向に回転させた後、この回転方向と同一方向に、ナットの進行方向と反対側に位置する一方のナットのみを他方のナットに対し所定角度回転させる。これにより、径方向のずれによるロック作用と同時にボルトに対する軸方向の挟み付けによるロック作用とにより緩み止めされるのである。
【0008】
このロックナットは、第一ナットと第二ナットを組み合わせた状態で締め付け方向に回転させた後、この回転方向と同一方向に、ナットの進行方向と反対側に位置する一方のナットのみを他方のナットに対し所定角度回転させるという比較的簡単で迅速に行える動作によって、確実かつ強固な緩み止め効果が得られるという優れた特徴を有する。
【0009】
特に、大径ねじ部および大径ねじ孔のピッチが、中央ねじ孔のピッチとは異なるため、外部から振動などが加わっても緩みにくい。また、大径ねじ部と大径ねじ孔が、中央ねじ孔と逆ネジ方向であるため、外部から振動などが加わってもより緩みにくいばかりか、締結作業が容易となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、締め付け作業が比較的簡単かつ迅速に行え、しかも、確実かつ強固な緩み止め効果が得られるロックナットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロックナットの断面図である。
図2】ロックナットの側面図である。
図3】第一ナットと第二ナットを組み合わせた状態のロックナットの断面図である。
図4】第一ナットと第二ナットを組み合わせた状態のロックナットの側面図である。
図5図4のロックナットの平面図である。
図6】第一ナットと第二ナットを組み合わせた状態で締め付け方向に回転させる様子を示す断面図である。
図7図6の状態から、ナットの進行方向と反対側に位置する一方のナットのみを他方のナットに対し所定角度回転させる様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を用いてロックナットを例示説明する。ロックナット1は、第一ナット2と第二ナット3からなる。なお、図6および図7においては、便宜上、第一ナット2と第二ナット3のみを断面表示してある。
以下の実施形態はあくまで本発明を例示説明するものであって、本発明は、以下の具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0013】
1.第一ナット
第一ナット2は、ボルト5に螺合する中央ねじ孔20を有する。本実施形態では、第一ナット2は、平面視において、中央部に中央ねじ孔20が空いた正六角形形状である(図示せず)。
【0014】
そして、第一ナット2には、第二ナット3との対向面21側に偏心円筒部22が突設されている。この偏心円筒部22は、中央ねじ孔20より大径である。また、偏心円筒部22は、中央ねじ孔20に対し軸直角方向に偏心されて第二ナット3との対向面21側に突設されている。
【0015】
また、偏心円筒部22の内周には中央ねじ孔20が連続形成されている。一方、偏心円筒部22の外周には、大径ねじ部23が形成されている。そして、この大径ねじ部23は、中央ねじ孔20のピッチとは異なるピッチで中央ねじ孔20とは逆ネジ方向に形成されている。本実施形態では、大径ねじ部23のピッチは、中央ねじ孔20のピッチよりも大きくしてある。
【0016】
2.第二ナット
第二ナット3も、ボルト5に螺合する中央ねじ孔30を有する。中央ねじ孔30は、第一ナット2の中央ねじ孔20と連続するため同一方向および同一ピッチである。
本実施形態では、第二ナット3も、平面視において、中央部に中央ねじ孔30が空いた正六角形形状であり、平面視において、第一ナット2と同一の正六角形の外形形状である。
【0017】
そして、第二ナット3には、第一ナット2との対向面31側に、大径ねじ部23と螺合する大径ねじ孔33が形成されている。
【0018】
大径ねじ孔33は、中央ねじ孔30より大径である。また、大径ねじ孔33は、中央ねじ孔30に対し軸直角方向に偏心されて形成されている。中央ねじ孔30に対する大径ねじ孔33の偏心寸法は、前述した第一ナットにおける、中央ねじ孔20に対する偏心円筒部22の偏心寸法と等しい。
【0019】
さらに、大径ねじ孔33は、中央ねじ孔30のピッチとは異なるピッチで中央ねじ孔30とは逆ネジ方向に形成されている。本実施形態では、大径ねじ孔33のピッチは、中央ねじ孔30のピッチよりも大きくしてある。
【0020】
加えて、図3に例示するように、第一ナット2の大径ねじ部23を第二ナット3の大径ねじ孔33に、第一ナット2と第二ナット3の相対向する対向面21,31が接した状態に螺合させると、第一ナット2の中央ねじ孔20と第二ナット3の中央ねじ孔30の中心及びピッチが一致するように構成されている。
また、第一ナット2の大径ねじ部23を第二ナット3の大径ねじ孔33に、第一ナット2と第二ナット3の相対向する対向面21,31が接した状態に螺合させると、図4および図5に例示するように、第一ナット2と第二ナット3とが平面視で一致するように構成されている。
【0021】
3.ロックナットの使用方法
[常時(締結前の状態)]
ロックナット1による締結に先だって、上記第一ナット2と上記第二ナット3を組み合わせてセット状態とする。具体的には、第二ナット3の大径ねじ孔33に第一ナット2の大径ねじ部23を、相対向する対向面21,31が接した状態で螺合する。
【0022】
この状態では、第一ナット2と第二ナット3とが平面視で一致すると同時に両者の中央ねじ孔20,30の中心及びピッチが一致する。そのため、第一ナット2と第二ナット3をあたかも一つのナットのようにボルト5に螺合させることができる。
【0023】
[締結時]
そして、ロックナット1による締結時には、まず、セット状態の第一ナット2と第二ナット3を、ボルト5に所定のトルクが作用するまで締め付け方向に回転させる。
このとき、例えば、ボルト5に対するナットの進行方向側に位置する側のナットに力を加えてボルト5に所定のトルクが作用するまで締め付け方向に回転させることができる。
図6に示す例では、進行方向側に位置する第一ナット2に力を加えてボルト5に所定のトルクが作用するまで締め付け方向に回転させることができる。
【0024】
ここで、第一ナット2の大径ねじ部23と第二ナット3の大径ねじ孔33は、ボルト5に螺合する中央ねじ孔20,30とは逆ネジ方向に形成されているため、ナットの進行方向側に位置する一方のナットに力を加えて締め付け方向に回転させると、他方のナットもこれに追従しやすい。
図6に示す例では、進行方向側に位置する第一ナット2に力を加えて締め付け方向に回転させると、第二ナット3もこれに追従する。
【0025】
その後、ボルト5に対するナットの進行方向と反対側に位置する一方のナットのみを、他方のナットに対し、締め付け方向と同一方向に所定角度回転させる。所定角度としては、大径ねじ部23と大径ねじ孔33のピッチにもよるが、通常は45〜360度の範囲である。
図7に示す例では、進行方向と反対側に位置する第二ナット3のみを、第一ナット2に対し、締め付け方向と同一方向に所定角度回転させる。
【0026】
こうすることによって、径方向のずれによるロック作用と、同時にボルト5に対する軸方向の挟み付けによるロック作用とにより緩み止めされるのである。
【0027】
このように、本発明のロックナットは、第一ナットと第二ナットで締め付けた後、ナットの進行方向と反対側に位置するナットのみを更に所定角度回転させることによって、簡単で迅速かつ確実で強固な緩み止め効果が得られるという優れた特徴を有するのである。
【0028】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態では、大径ねじ部23のピッチが、中央ねじ孔20のピッチよりも大きくしてあるが、これに限定されず、中央ねじ孔20のピッチよりも小さくしてもよい。
また、上記実施形態では、大径ねじ孔33のピッチが、中央ねじ孔30のピッチよりも大きくしてあるが、これに限定されず、中央ねじ孔30のピッチよりも小さくしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ロックナット

2 第一ナット
20 中央ねじ孔
21 対向面
22 偏心円筒部
23 大径ねじ部

3 第二ナット
30 中央ねじ孔
31 対向面
33 大径ねじ孔

5 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7