(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452802
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ及び当該リニアアクチュエータを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
F04B 17/04 20060101AFI20190107BHJP
H02K 33/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
F04B17/04
H02K33/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-505506(P2017-505506)
(86)(22)【出願日】2015年7月20日
(65)【公表番号】特表2017-530287(P2017-530287A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】EP2015066534
(87)【国際公開番号】WO2016016031
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2017年3月31日
(31)【優先権主張番号】102014215110.4
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク バッハマイアー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ツュリアクス
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート フライターク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ゲデッケ
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102004042208(DE,A1)
【文献】
実開昭57−059981(JP,U)
【文献】
特開平06−185457(JP,A)
【文献】
特開平07−027041(JP,A)
【文献】
特開昭58−046861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 17/04
H02K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポンプコイル(60、70)と、多方弁(20)と、少なくとも1つの前記ポンプコイル(60、70)の通電によって移動させることができる少なくとも1つのポンプアーマチュア(80)と、切換アーマチュア(310)とを備えた2室ソレノイドポンプ(10)を有しており、
前記切換アーマチュア(310)を用いて前記多方弁(20)が切換可能であり、当該切換アーマチュア(310)を少なくとも1つの前記ポンプコイル(60、70)の通電によって移動させることができる、リニアアクチュエータにおいて、
前記多方弁(20)を用いて、双方向のポンプ流が実現される、
ことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記多方弁(20)は、4ポート2位置弁であるか又は4ポート2位置弁を有する、
請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記多方弁(20)は、前記切換アーマチュア(310)を移動させることによって切換可能である、
請求項1又は2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記リニアアクチュエータの前記ソレノイドポンプ(10)では、前記ポンプアーマチュア(80)が、ポンプコイルヨーク(290、300)に磁束結合可能であるか又は磁束結合されており、
前記切換アーマチュア(310)が、前記ポンプコイルヨーク(290、300)に磁束結合可能であるか又は磁束結合されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ソレノイドポンプ(10)は、1つずつのポンプコイルヨーク(290、300)を備えた少なくとも2つのポンプコイル(60、70)を有しており、
前記ポンプアーマチュア(80)は、複数の前記ポンプコイルヨーク間、又は少なくとも2つのポンプコイルヨーク(290、300)間で移動可能である、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記ソレノイドポンプ(10)に少なくとも1つの磁束ガイド手段(330)が設けられており、当該磁束ガイド手段(330)により、複数の前記ポンプコイルヨーク(290、300)が、磁束をガイドするように接続されている、
請求項4または5に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記リニアアクチュエータの前記ソレノイドポンプ(10)では、磁束ガイド手段(330)及びポンプコイルヨーク(290、300)が互いに一体で構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記リニアアクチュエータの前記ソレノイドポンプ(10)では、前記磁束ガイド手段(330)もしくは複数の前記ポンプコイルヨーク(290、300)のうちの少なくとも1つに永久磁石(350)が含まれているか、又は、前記磁束ガイド手段(330)もしくは複数の前記ポンプコイルヨーク(290、300)のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの永久磁石(350)が配置されている、
請求項6または、請求項4または5を引用する請求項7に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記リニアアクチュエータの前記ソレノイドポンプ(10)では、前記切換アーマチュア(310)が、複数の前記永久磁石(350)によって発生する磁束によってガイドされる磁束によって固定可能である、
請求項8に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項10】
前記リニアアクチュエータの前記ソレノイドポンプ(10)では、前記ポンプコイル(60、70)によって発生した磁束が、少なくとも、前記磁束ガイド手段(330)及び/又は少なくとも1つのポンプコイルヨーク(290、300)の領域において、少なくとも1つの前記永久磁石(350)によって発生した磁束に対向する、ように少なくとも1つの前記ポンプコイル(60、70)が、電気的に接続されている、かつ/又は、配置されている、
請求項8または9に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項11】
前記リニアアクチュエータの前記ソレノイドポンプ(10)は、ただ1つの導線対だけを有しており、当該導線対により、前記ソレノイドポンプ(10)が電気的に接続されている、
請求項1から10までのいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項12】
前記リニアアクチュエータの前記ソレノイドポンプ(10)では、前記ただ1つの導線対が、少なくとも1つのポンプコイル(60、70)、又は複数の前記ポンプコイル(60、70)に電気的に接触接続している、
請求項1から11までのいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項13】
前記リニアアクチュエータの前記ソレノイドポンプ(10)では、複数のダイオード(D1、D2)が設けられており、当該ダイオード(D1、D2)を用いて、前記導線対又は導線端子対に加わる信号の正の信号成分を、複数の前記ポンプコイル(60、70)のうちの第1のポンプコイル(60)に伝送し、負の信号成分を、複数の前記ポンプコイル(60、70)のうちの第2のポンプコイル(70)に伝送する、
請求項11または12に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項14】
少なくとも1つの前記ポンプコイル(60、70)に通電することにより、前記多方弁(20)をセットするために設けられた位置に前記切換アーマチュア(310)をセットし、前記設けられた位置が維持される際に、少なくとも1つの前記ポンプコイル(60、70)に通電することにより、前記ポンプアーマチュア(80)を移動させる、ことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載のリニアアクチュエータを動作させる方法。
【請求項15】
少なくとも1つの前記ポンプコイル(60、70)は、前記ポンプアーマチュア(80)を移動させるために、前記切換アーマチュア(310)を移動させるよりも小さい絶対値で通電する、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータ及びこのようなリニアアクチュエータを動作させる方法に関する。所定の複数の応用分野において、例えばガス弁を調節する際、スロットルを制御する際、ピックアンドプレースのような位置決め駆動器及び別のロボットに対し、オートメーション又はヘルスケア領域におけるリニアアクチュエータに対し、特に患者台又は処置装置に対し、マイクロメートル領域にまで達する精度を有すると共に数センチメールの長いストロークも達成することが可能なリニアアクチュエータが必要である。
【0002】
このようなリニアアクチュエータが、可能な限りに小型に形成されかつ可能な限りに電気的に及び長期間にわたって摩耗なしに、及び、劣悪な環境条件、特に汚損に対して可能な限りに頑強に動作させることができ、好適である。特に望ましいのは、これらのようなリニアアクチュエータが容易に相互接続できる場合である。繁雑なアクチュエータ構成では、複数のリニアアクチュエータを配置する必要がある。したがってこのようなリニアアクチュエータが、電気的な接続のための電気的な導線又は導線端子を可能な限りに少なくし、これによって必要な導体の数を全体として少なく維持したい。
【0003】
リニアアクチュエータそれ自体は、数多くの実施形態で公知である。例えば、複数のステップモータが公知であるが、これらのステップモータは、精度が限られていることが多い。さらに複数の空気圧式及びハイドロリックのリニア駆動部が公知であり、これらのリニア駆動部は、2方弁を介して圧縮空気アキュムレータに又はハイドロリックポンプを介して接続されている。これらの実施例においても正確な制御は困難である。さらに電気駆動機械として構成されている複数の電気力学リニアモータが公知である。これらの電気力学リニアモータは高速でありかつ精度が高いが、一般的に構造が複雑であり、十分にスペースを節約して構成することはできない。これに対して圧電結晶又は磁歪材料をベースとするリニアアクチュエータは、特殊分野に使用されるが、極めて短い走行パスに対してだけしか構成されていない。摩擦接触をベースとする圧電モータは、確かに大きなストロークを行うことができるが、寿命が限られることが多くかつ周囲の影響を受け易い。さらに静電作用メカニズムをベースとする人工筋肉が公知であるが、最大力及び寿命が限られている。
【0004】
したがって本発明の課題は、従来技術のこの背景に対し、改善されたリニアアクチュエータを提供することである。特にリニアアクチュエータを可能な限りにスペースを節約して構成できるようにし、かつ/又は、可能な限りに容易に電気的に接触接続できるようにする。本発明の課題はさらに、このようなリニアアクチュエータを動作させる方法を提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1に示した特徴的構成を備えたリニアアクチュエータにより、及び、請求項15に示した特徴的構成を備えた方法により解決される。本発明の有利な発展形態は、対応する従属請求項、以下の説明及び図面から得られる。
【0006】
本発明によるリニアアクチュエータには、ソレノイドポンプ、特に2室ソレノイドポンプが含まれている。本発明によるリニアアクチュエータは好適には、ソレノイドポンプにハイドロリックに接続されているハイドロリックシリンダを有しており、このハイドロリックシリンダは、ハイドロリックピストンを有する。ソレノイドポンプを用いれば、ハイドロリックシリンダ内でハイドロリックピストンを出し入れ動作させることができる。本発明によるリニアアクチュエータには好適には、ソレノイドポンプに接続されている、油圧油を供給又は排出するための貯蔵槽が含まれている。
【0007】
本発明によれば、リニアアクチュエータにおいて、ソレノイドポンプは、少なくとも1つのポンプコイルと、多方弁と、少なくとも1つのポンプコイルに通電することによって移動させることができる少なくとも1つのポンプアーマチュアとを有する。さらに本発明によるリニアアクチュエータでは、ソレノイドポンプは、切換アーマチュアを有しており、この切換アーマチュアを用いて多方弁を切換可能である。本発明では、リニアアクチュエータのソレノイドポンプにおいて、少なくとも1つのポンプコイルに通電することによって切換アーマチュアを移動させることができる。
【0008】
本発明によるリニアアクチュエータでは、多方弁を用いて、双方向のポンプ流を実現することができる。このために多方弁は好適には、ソレノイドポンプの入口及び出口に流体的に接続されている。このために本発明によるリニアアクチュエータは好適には、ソレノイドポンプの入口及び出口との接続部において双方向のポンプ流を可能にする多方弁を有する。この双方向のポンプ流により、ハイドロリックシリンダ内でガイドされるハイドロリックピストンを双方向にガイドすることができる。ポンプ流方向を変化させるため、多方弁を切り換えることができる。本発明では、少なくとも1つのポンプコイルに通電することによって多方弁のこの切換を行うことができ、ここでこのポンプコイルにはいずれにせよ、少なくとも1つのポンプアーマチュアを移動させるために通電される。従来公知のリニアアクチュエータはこれとは異なり、一般的には別々にポンプ及び多方弁を有している。しかしながらポンプ及び多方弁用に専用の1つずつの駆動部が必要であり、その結果、1つずつの電気駆動制御部も、したがって少なくとも1つの導線対も必要である。これとは異なり、本発明ではソレノイドポンプ及び多方弁がただ1つの装置に組み込まれており、有利である。ここでは特に、本発明にしたがって利用される磁束は、ポンプを動作させるためにも、同時に多方弁を切り換えるためにも利用される。本発明によるリニアアクチュエータでは結果的に、電気配線コストが特に少なくなる。ソレノイドポンプを備えたリニアアクチュエータによって同時に、精度の高い調整パスが設定され、この調整パスは基本的に制限されることがない。さらにこれらのソレノイドポンプには大きな設置スペースは不要であり、長期間にわたって摩耗なしに、特に劣悪な環境条件、例えば汚損に対して頑強に動作させることができる。配線コストが極めて少ないことにより、特に複数のリニアアクチュエータを備えた構成において、わずかな電気的な導体又は導線又は導線端子しか必要ではない。
【0009】
特に本発明によるリニアアクチュエータには、ただ1つの電気導線対、又はただ1つの導線端子対しか必要ではない。結果的に本発明によるリニアアクチュエータでは、配線コストはわずかであり、信頼性が特に高い。
【0010】
さらに本発明によるリニアアクチュエータでは有利には、単純なソレノイドポンプの代わりにダブルソレノイドポンプが利用される。このダブルソレノイドポンプでは、体積流は、持続的にゼロに低下することはない。これに対応して、体積流及び圧力における脈動、及び、雑音形成などのこれに結び付いた欠点、又は励起された振動による大きな摩耗を回避することができる。
【0011】
上記のソレノイドポンプ、有利にはダブルソレノイドポンプには有利にはポット磁石が含まれている。このようなポット磁石は、その他の場合にしばしば設けられるヨークディスクと異なり、一般的にヨークディスクの流体的な減衰が、このヨークへ当接の直前に著しく増大するという利点を有する。一般的なソレノイドポンプには別の減衰装置が必要であるか又は雑音及び振動低減のための特別な努力が必要である(例えば欧州特許出願公開第1985857号明細書(EP1985857)を参照されたい)。ソレノイドポンプ又はダブルソレノイドポンプがポット磁石を含むこの発展形態では、このような機能機構がすでに組み込まれており、有利である。
【0012】
本発明によるリニアアクチュエータにおいて好適には上記多方弁が4ポート2位置弁であるか又はこの多方弁が4ポート2位置弁を有する。これにより、ソレノイドポンプのポンプ流を特に容易に逆転させることができ、ここでこれは、ソレノイドポンプの入口及び出口を、4ポート2位置弁の切換可能な入口及び出口に接続することによって行われる。
【0013】
本発明によるリニアアクチュエータのソレノイドポンプにおいて、多方弁は好適には切換アーマチュアの移動によって切換可能である。有利にはこのために多方弁の移動と切換アーマチュアの移動とを連動させて、切換アーマチュアの移動が、本発明によるリニアアクチュエータのソレノイドポンプの入口及び出口に対する、多方弁の入口及び出口の空間的な変位に結び付くようにする。これにより、多方弁を特に容易に切り換えることができる。
【0014】
本発明によるリニアアクチュエータのソレノイドポンプにおいて好適には、ポンプアーマチュアが、ポンプコイルヨークに磁束結合可能であるか又は磁束結合されており、切換アーマチュアが、ポンプコイルヨークに磁気結合可能であるか又は磁気結合されている。第1にポンプコイルヨークがポンプアーマチュアに、また第2にポンプコイルヨークが切換アーマチュアに磁束結合可能であるか又は磁束結合されていることにより、少なくとも1つのポンプコイルの通流により、切換アーマチュアの移動を特に容易に実現することができる。
【0015】
本発明によるリニアアクチュエータのソレノイドポンプでは有利には、1つずつのポンプコイルヨークを備えた少なくとも2つのポンプコイルが設けられており、ポンプコイルアーマチュアは、複数の上記ポンプコイルヨーク間、又は少なくとも2つのポンプコイルヨーク間で移動可能である。ここでは好適には1つずつのポンプコイルヨークを備えた1つずつのポンプコイルが、2室ソレノイドポンプとして構成されたソレノイドポンプの1つずつの室に対応する。
【0016】
本発明によるリニアアクチュエータの有利な一発展形態では、ソレノイドポンプに少なくとも1つの磁束ガイド手段が設けられており、この磁束ガイド手段により、複数のポンプコイルヨークが、磁束をガイドするように互いに接続されている。本発明によるリニアアクチュエータの別の有利な発展形態では、ソレノイドポンプにおいて、上記のように磁束ガイド手段が複数のポンプコイルヨークと共に一体で構成されている。この発展形態からは特に簡単な構造が得られる。
【0017】
本発明によるリニアアクチュエータの特に有利な発展形態では、ソレノイドポンプにおいて、磁束ガイド手段もしくは複数のポンプコイルヨークのうちの少なくとも1つに永久磁石が含まれているか、又は、磁束ガイド手段に、もしくは複数のポンプコイルヨークのうちの少なくとも1つに永久磁石が配置されている。本発明による方法のこの発展形態では、永久磁石を磁束形成要素として使用することができ、この永久磁石は、少なくとも1つのポンプコイルによって発生する磁束を弱めるか又は強めることができる。これにより、本発明によるリニアアクチュエータでは、切換アーマチュアによる切り換えのための磁気的な自由度が得られる。
【0018】
本発明によるリニアアクチュエータの好適な発展形態では、ソレノイドポンプにおいて切換アーマチュアが、複数の永久磁石によって発生する磁束によって、また特に磁束ガイド手段によってガイドされる磁束によって固定可能である。これに対応して、この切換アーマチュアの移動に対しても別の自由度が得られる。
【0019】
本発明によるリニアアクチュエータの2室ソレノイドポンプにおいて好適には、少なくとも1つのポンプコイルによって発生した磁束が、少なくとも、磁束ガイド手段及び/又は少なくとも1つのポンプコイルヨークの領域において、少なくとも1つの永久磁石によって発生した磁束に対向する、ように上記の少なくとも1つのポンプコイルが、電気的に接続されている、かつ/又は、この少なくとも1つのポンプコイルが、配置されている。特に少なくとも1つの永久磁石によって発生した磁束を打ち消すことができる。これに対応して、少なくとも1つのポンプコイルを用いて切り換えることができる。
【0020】
本発明によるリニアアクチュエータのソレノイドポンプは理想的には、ただ1つの導線対又は導線端子対だけを有しており、この導線対により、ソレノイドポンプが電気的に接続されている。これにより、本発明によるリニアアクチュエータのソレノイドポンプの電気配線コスト及び/又は駆動制御コストが、ひいては本発明によるリニアアクチュエータの配線コストが格段に低減される。
【0021】
ここでは特に上記のただ1つの導線対又は導線端子対は、少なくとも1つのポンプコイル、又は複数の上記のポンプコイルに電気的に接触接続している。
【0022】
好適な発展形態では、本発明によるリニアアクチュエータのソレノイドポンプにおいて、ポット磁石形状に構成されている少なくとも2つのポンプコイルが設けられており、ポンプアーマチュア及び/又は切換アーマチュアは好適にはポット磁石形状のポット底面に対して横方向に移動可能にガイドされている。これに対応して、特に単純かつ小型の、空間的な構造を実現することができる。
【0023】
本発明によるリニアアクチュエータのソレノイドポンプでは有利には、複数のダイオードが設けられており、これらのダイオードを用いて、導線対又は導線端子対に加わる信号の正の信号成分を第1のポンプコイルに伝送し、負の信号成分を第2のポンプコイルに伝送する。
【0024】
本発明によるリニアアクチュエータを動作させる方法では、ソレノイドポンプの少なくとも1つのポンプコイルに通電することにより、多方弁のセットのあらかじめ設けられた位置に切換アーマチュアをセットし、この設けられた位置が維持される際に、少なくとも1つのポンプコイルを通電することにより、ポンプアーマチュアが移動する。これにより、第1には、切換アーマチュアをセットして、多方弁をポンピングモードに適切にセットすることができ、この際にこの位置においてポンプアーマチュアが移動することができ、ソレノイドポンプが、あらかじめ設定された方向モードでポンピングを行う。
【0025】
本発明による方法の好適な発展形態では、ポンプアーマチュアを動かすために、少なくとも1つのポンプコイルは、切換アーマチュアを移動させるよりも小さい絶対値で通電される。少なくとも1つのポンプコイルを駆動制御する振幅を介して結果的に調整できるのは、ポンプアーマチュアだけを移動させようとしているか又は切換アーマチュアも移動させようとしているかである。
【0026】
以下では図面に示した実施例に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ポンピング方向を設定するため、一方では貯蔵槽に、他方ではハイドロリックピストンを備えたハイドロリックシリンダに接続されている多方弁を有する2室ソレノイドポンプを備えた、本発明によるリニアアクチュエータを略示する原理図である。
【
図2】第1及び第2のポンプコイルを駆動制御した結果、第1(A)及び第2(B)切換位置にある、
図1に示した本発明によるリニアアクチュエータの2室ソレノイドポンプを略示する長手方向断面図である。
【
図3】第1及び第2のポンプコイルの駆動制御を略示する線図である。
【
図4】切換アーマチュアの2つの切換位置にある、
図2に示した2室ソレノイドポンプを略示する長手方向断面図である。
【
図5】
図2に示した2室ソレノイドポンプの概略図において切換アーマチュアの切換原理を略示する長手方向断面図である。
【
図6】ポンプアーマチュア及び切換アーマチュアを駆動制御するための、第1及び第2のポンプコイルの通電を略示する線図である。
【
図7】
図1に示した本発明によるリニアアクチュエータを略示する長手方向断面図である。
【
図8】
図1及び
図7に示したリニアアクチュエータの電気的な配線を略示する基本図である。
【
図9】リニアアクチュエータを駆動制御する入力信号と、
図8に示したリニアアクチュエータの配線によるコイル信号とを示す概略線図である。
【
図10】
図1(A)に示した本発明によるリニアアクチュエータのポンプアーマチュアを略示する斜視図と、
図1に示した本発明によるリニアアクチュエータの磁束ガイド手段と共に、
図10(A)に示したポンプアーマチュアを1つに配置することを略示する斜視図である。
【
図11】一体型のポンプアーマチュアを備えた、本発明によるリニアアクチュエータの択一的な実施形態を略示する原理図である。
【
図12】本発明によるリニアアクチュエータの別の択一的な構成を略示する原理図である。
【0028】
図1に示したリニアアクチュエータには、2方弁20を備えた2室ソレノイドポンプ10が含まれており、この2室ソレノイドポンプにより、ハイドロリック流体が、貯蔵槽30から、ハイドロリックシリンダ40の作業室にポンピングされる。ハイドロリックシリンダ40内ではハイドロリックピストン50がリニア運動するようにガイドされる。それぞれ別の切換位置に2方弁20をセットすることにより、2室ソレノイドポンプ10のポンピング方向を反転できるため、ハイドロリック流体は、ハイドロリックシリンダ40の作業室から貯蔵槽30にポンピングされて戻る。これに対応してハイドロリックピストン50は、前進又は後退する。
【0029】
2室ソレノイドポンプ10の構造は、
図2A及び2Bに詳しく示されている。すなわち、2室ソレノイドポンプ10には、2つのポンプコイル60及び70が含まれている。ポンプコイル60及び70はそれぞれポット磁石の形態で構成されている。ポンプコイル60と70との間には磁石ポンプアーマチュア80があり、この磁石ポンプアーマチュアは、ポンプコイル60、70のポット底面に垂直な方向90にガイドされている。ポンプアーマチュア80には、2つの軟磁性孔開きディスク100、110が含まれており、これらは、非磁性接続チューブ120によって互いに接続されており、この非磁性接続チューブは、その長手方向長さが、ポンプコイル60、70のポット底面に垂直な方向90に延在している。孔開きディスク100、110はそれぞれ自由振動するように隔膜130に懸架されており、これらの隔膜により、それぞれハイドロリック室140、150が画定かつ密閉されている。
【0030】
ハイドロリック室140及び150は、供給部160、170を有しており、これらの供給部はそれぞれ、ポンプアーマチュア80の両側において、逆止め弁180、190を介してハイドロリック室140、150に通じている。さらにハイドロリック室140、150は、排出部200、210を有しており、これらの排出部は、ハイドロリック室140、150から逆止め弁220、230を介して外部に導かれている。供給部160、170及び排出部200、210はそれぞれ、入力側及び出力側において共通の入口240及び共通の出口250にまとめられている。
【0031】
軟磁性孔開きディスク100、110の内半径では、ハイドロリック室140、150が、非磁性チューブ260によってシーリングされており、この上でポンプアーマチュア80が往復して滑走する。
【0032】
このポンピング作用は、
図3に示したポンプコイル60、70の駆動制御によって生じる(図示されているのはそれぞれ、時間tについての左側のポンプコイル60の通電(曲線EK)又は右側のポンプコイル70の通電(曲線ZK)の電流強度Iである)。
【0033】
左側のポンプコイル60又は右側のポンプコイル70のいずれかに交互に通電が行われる。磁気抵抗原理により、すなわち、磁束回路を適切に閉じようとすることにより、ポンプアーマチュア80は左又は右に交互に引っ張られる。矢印270、280は、1つずつのポンプコイル60、70の外周を部分的に包囲するポンプコイルヨーク290、300を流れる基礎となる磁束を表しており、このヨークはそれぞれ、ポンプコイル60、70を、それぞれ他方のポンプコイル70、60とは反対側を向いたその面から、それぞれ外周を部分的に包囲する。ポンプアーマチュア80が左に向かって又は右に向かって移動することにより、ポンプコイル60、70と、ポンプアーマチュア80との間にあるハイドロリック体積体は交互に減少又は増大する。このハイドロリック体積体には、ハイドロリック流体が、図示した実施例ではシリコーンオイル又はグリセリンが充填されている。パルス状の圧力変化により、入口240から出口250に至る油圧油の単方向の流れが結果的に得られる。
【0034】
単方向の流れの方向を変更するためには、
図1に示したように、4ポート2位置弁の形態の2方弁20が設けられており、ここでこの4ポート2位置弁は、切換アーマチュア310によって移動され、これによって切り換えられる。切換アーマチュア310は、
図4に示したように2室ソレノイドポンプ10に組み込まれている。
【0035】
すなわちポット底面に垂直な方向90に見た中心部には、非磁性チューブ260を貫通して、非磁性ガイドロッド320がガイドされている。この非磁性ガイドロッド320は、ポット底面に垂直な方向90に、
図4に示した図では水平方向に滑走することができる。非磁性ガイドロッド320には、軟磁性材料製の切換アーマチュア310が固定されている。切換アーマチュア310を水平方向に、すなわち方向90に移動させるため、ポンプコイルヨーク290及びポンプコイルヨーク300は、非磁性接続チューブ120から半径方向に離れた所で、水平方向90に磁束ガイド手段330を介して接続されている。磁束ガイド手段330は、半径方向に突出部340を有しており、この突出部は、半径方向に非磁性接続チューブ120に向かって延在している。
【0036】
この突出部の半径方向内側端部では、半径方向に延在する1つずつの棒磁石350が突出部340に固定されている。切換アーマチュア310は、対応する突出部360をさらに有しており、この突出部は、切換アーマチュア310においてこれに沿って長く水平方向に延在しており、これにより、切換アーマチュア310が、左側のポンプコイルヨーク290又は右側のポンプコイルヨーク300に当接する場合(
図4A及び
図4B)に、この突出部360が、半径方向内側を向いている、磁束ガイド手段330の突出部340と、引き続いてつねに水平方向に重なるようになっている。切換アーマチュア310が、
図4Aに示したように左側の位置にある場合、こちら側の磁気抵抗が低いことに起因して、棒磁石350の磁束は主に、(最小の)空隙を介して左側のポンプコイルヨーク290を通してガイドされる。これにより、ここで保持力が形成されて、この保持力によって切換アーマチュア310がこの位置に固着される。まったく同様に
図4Bではこの切換アーマチュアが右側の位置に保持される。すなわち、切換アーマチュア310の左側の位置においても、切換アーマチュア310の右側の位置においても共に切換アーマチュア310はそれぞれその位置に保持される。
【0037】
切換アーマチュア310を1つの位置から、つぎの位置に移動させるため、
図6に示したように、大きな電流信号HSSを一時的に利用する。すなわち、以下では、この一時的に大きい電流信号HSSを用いて切換アーマチュア310がどのように右側に移動されるかを例示的に説明する。
【0038】
右側のポンプコイル70には、一時的に大きな電流信号HSSが加えられる。この電流信号HSSにより、右側のポンプコイル70の温度が一時的に上昇する(すなわちポンプコイル60、70は実際にはそれぞれ、比較的長い動作持続時間の間、電流信号HSSの際に得られるような大きな電流に対して設計されていない)。択一的には、特に示していない別の複数の実施例において、このような大きな電流用にポンプコイル60、70を設計することが可能である。
【0039】
したがって通常のポンピングシーケンス(
図4も参照されたい)を再度開始する前、右側のポンプコイル70は、短い待機時間中、冷却され得る。
【0040】
切換過程中の磁気特性は
図5に示されている。すなわち、この大きな電流によって確かにはじめのうちポンプアーマチュア80は、ポンピングシーケンスにおけるのと同様に、右側の通電されるポンプコイル70の側に引っ張られる。しかしながらポンプコイル70の通電が大きいことにより、右側のポンプコイルヨーク300及びポンプアーマチュア80を通る磁気回路(右側のポンプコイル70の外周を取り囲む細い矢印400)は急速に過飽和する。したがってこの磁束はまた、双安定アクチュエータの磁束ガイド手段330を介して流れる。ここでは破線で磁束Fが示されており、この磁束は、棒磁石350の磁束とは逆に、切換アーマチュア310の保持側に流れる。ポンプコイル70が通電する際の電流振幅を適切に選択することによって達成できるのは、ポンプコイル70の磁束が棒磁石350の磁束Fと逆向きではあるが大きさが等しくなるようにすることである。これによって切換アーマチュア310の保持力が効果的に打ち消される。しかしながら他方では(太い実線の)磁束410が、大きな空隙360を介して切換アーマチュア310の右側を流れる。この磁束は、吸引力を形成し、この磁束は、切換アーマチュア310を最終的に右側に引っ張る。つぎに電流を遮断することができ、切換アーマチュア310は、
図4Bに示した磁束の経過によってそこに安定して停止したままになる。
【0041】
つまりこの切換過程は、一時的な高めた通電により、すなわち、高めた振幅を有する一時的な電流信号HSSによって引き起こされる。
【0042】
最後にアクチュエータ全体は、
図1の原理図にしたがって配線される。これは、設けられている2方弁20と共に、
図1に対応する
図7に略示されている。
【0043】
図3及び
図6に示したように2つのポンプコイル(ポンプコイル60及びポンプコイル70)に作用する電流信号を、ただ1つの導線対を介して伝送するため、
図8に示した回路を使用する。すなわち、信号源SQにより、正負の信号成分を有するただ1つの入力信号ESを供給する。このリニアアクチュエータには、2つのダイオードD1、D2が含まれており、これらのダイオードにより、正の信号成分EKがポンプコイル60に、また負の信号成分ZKがポンプコイル70に接続される。このことは、
図9に例示的に示されている。
【0044】
図2に示したような2つの部分に分かれたポンプアーマチュア80は、2つの磁性孔開きディスク100、110と、非磁性接続チューブ120とからなる。安定性上の理由から、2つの孔開きディスク100、110の接続は、別の複数の安定化接続部分500によって行うことも可能であり、これらの安定化接続部分は、非磁性接続チューブ120に加えて、支持用円筒形要素として孔開きディスク100、110間に配置される。
【0045】
図4に示した磁束ガイド手段330の突出部340は、孔開きディスク100、110の間に配置されており、また
図10(B)に示したように、必ずしも回転対称に構成する必要はなく、例えば互いに90°だけずらされた4つの方向から、非磁性接続チューブ120に向かって半径方向に突入させることが可能である。
【0046】
図11に示したように2つの部分からなるアーマチュアを完全に避けることも可能である。すなわち、例えば、ポンプアーマチュア80’をただ1つの孔開きディスク100’として実現することが可能である。しかしながらこの場合にはポンプアーマチュア80’を内半径において、例えばここでは別のベローズによってガイドしなければならない。しかしながらこの場合には、ポンプコイル60’、70’の「後ろ」から双安定切換アーマチュア310’の方向に磁束を引き出すことしかできない。したがってここでは磁束的な狭窄箇所ENGが組み込まれる。
【0047】
本発明によるリニアアクチュエータは、別の実施形態では、細長く、すなわち「ピンに類似して」構成される。
図12に示したように、隔膜ベローズの代わりに、長手方向ベローズLBを使用し、2つの部分からなるポンプアーマチュア80’’が、内半径においても外半径においても共に長手方向ベローズLBによって支承される。上記のガイドは、複数の非磁性ガイドロッドFSによって実現される。その他の点において構造、特に磁気的な構造は、
図4と完全に同じである。