特許第6452930号(P6452930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

<>
  • 特許6452930-電池制御装置 図000002
  • 特許6452930-電池制御装置 図000003
  • 特許6452930-電池制御装置 図000004
  • 特許6452930-電池制御装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452930
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】電池制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20190107BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20190107BHJP
【FI】
   H02J7/00 Q
   H02J7/00 P
   B60L3/00 S
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-176359(P2013-176359)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-46997(P2015-46997A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】関▲崎▼ 将士
(72)【発明者】
【氏名】榎本 倫人
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
(72)【発明者】
【氏名】板垣 勇志
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−253283(JP,A)
【文献】 特開2011−160613(JP,A)
【文献】 特開2011−031822(JP,A)
【文献】 特開2006−121834(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0338871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池システムの自己診断機能を有する電池制御装置であって、
アイドルストップ機能を搭載する車両の車両動作状態の情報及びエンジン動作の情報をもとに、車両が動作状態であり、かつエンジン停止状態である場合に電流計測を実施した際の電流計測結果により、蓄電池の放電電流の値が規定以下であれば、アイドリングストップ状態にもかかわらずアイドリングストップ状態において正常時に流れているはずの電流が計測されていないため、電流計測系に異常が発生していると判断する
ことを特徴とする電池制御装置。
【請求項2】
前記車両動作状態の情報は、イグニションがオンであるか否かの情報であることを特徴とする請求項1に記載の電池制御装置。
【請求項3】
前記エンジン動作の情報は、エンジン回転数であることを特徴とする請求項1または2に記載の電池制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置に係り、例えば、電池システムの自己診断機能を有する電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やPHV(プラグインハイブリット自動車)が実用化され様々な車種が市場に投入されるようになっている。このような車両においては、動力源として電力が利用される。また、アイドルストップ機能を搭載し燃料消費率の改善が図られるようになっている。また、このような車両においては、システムの信頼性、つまり電池制御装置を含む電池ユニットの信頼性確保が非常に重要である。そして、電池制御装置においては自己診断機能を実行して、異常発生を把握することがなされている。
【0003】
図1は公知の自己診断機能を有する電池システムの制御部(CPU110)を示すブロック図である。また、図2はCPU110による自己診断機能の処理を示すフローチャートであり、主に、電流計測系の異常検出処理に着目して示している。
【0004】
取得した電池電圧変化に対する電流変化量が事前に定められた上で、CPU110は、それに応じて異常検出を行っていた。具体的には、CPU110は、計測系自己診断を開始し(S110)、イグニション130がオフであれば(S112のN)、規定電圧変化を検知する処理を行う(S114)。CPU110は、規定電圧変化を検知すると(S114のY)、放電電流が規定電流以下であるか否かを検知する処理を行う(S116)。規定電流以下であれば(S116のY)、CPU110は電流計測系に異常が発生していると判断する(S118)。
【0005】
このような電池システムにおいて2次電池の劣化や計測系の異常を検出できる自己診断技術について知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に開示の技術は、電流測定部によって検出された電流を積算することで二次電池の充電状態(SOC)を算出し、電圧測定部及び電流測定部の測定値に基づいて、所定の第1及び第2タイミングにおける二次電池の開放電圧を第1及び第2開放電圧値として推定する。つづいて、第1及び第2タイミングにおける第1及び第2SOCに基づいて二次電池の充放電量に関する第1情報を取得し、第1及び第2タイミングにおける第1及び第2開放電圧値に基づいて、二次電池の充放電量に関する第2情報を取得し、第1及び第2情報に基づいて、二次電池、電圧検出部、及び電流検出部における異常の有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−200574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図1及び図2で示した従来技術では、電圧測定系が正常であることが前提となっている。このため、異常が発生したと判断した場合であっても、電圧計測系の異常なのか電流計測系の異常なのかが区別できないという課題があった。特許文献1に開示の技術においても同様であった。このため、異常検出する自己診断処理が増えてしまい、処理が複雑になったり、また、自己診断処理のタイミングが限られてしまうといった課題があり、別の技術が求められていた。
【0008】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電池システムの自己診断機能を有する電池制御装置であって、アイドルストップ機能を搭載する車両の車両動作状態の情報及びエンジン動作の情報をもとに、車両が動作状態であり、かつエンジン停止状態である場合に電流計測を実施した際の電流計測結果により、蓄電池の放電電流の値が規定以下であれば、アイドリングストップ状態にもかかわらずアイドリングストップ状態において正常時に流れているはずの電流が計測されていないため、電流計測系に異常が発生していると判断する。
また、前記車両動作状態の情報は、イグニションがオンであるか否かの情報であってもよい。
また、前記エンジン動作の情報は、エンジン回転数であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄電池の状態を検出可能な電池制御装置において、シンプルな自己診断処理で計測系の異常判定処理を可能とする技術を提供できる。また、別の観点では、自己診断処理のタイミングを増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】背景技術に係る、自己診断機能を有する電池システムの制御部を示すブロック図である。
図2】背景技術に係る、制御部(CPU)による自己診断機能の処理を示すフローチャートである。
図3】発明の実施形態に係る、自己診断機能を有する電池システムの制御部を示すブロック図である。
図4】発明の実施形態に係る、制御部(CPU)による自己診断機能の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図3は、本実施形態に係る、自己診断機能を有する電池システム1の制御部(電池制御装置)であるCPU10(マイコン)を示すブロック図である。
【0014】
CPU10は、自己診断処理を行う機能を備えており、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載される電池システム1の制御を行うものであって、車両動作情報及びエンジン動作情報を取得するとともに、電池電圧及び充放電電流を計測する。
【0015】
本実施形態においてCPU10が行う自己診断処理は、取得した車両動作情報及びエンジン動作情報をもとに、車両がアイドルストップ状態にあるか否かを判断し、異常検出処理を行う。アイドルストップ機能を搭載する車両では、車両動作中に進行停止した場合、所定の条件を満たすと、エンジンが停止する。この状態では、車両の電装部品には、搭載されている電池から電源(電力)が供給される。そのため、この状態では必ず電池から電装部品に対して電流が流れることになる。その結果、CPU10は、車両停止中かつイグニション30がオン状態で電流計測を実施した際の電流計測結果により計測系に異常があるか否かを検出する。
【0016】
図4は、CPU10による自己診断機能の処理を示すフローチャートであって、特に電流計測系20の異常検出処理に着目して示すものである。
【0017】
CPU10は、計測系の自己診断処理を開始すると(S10)、イグニション30がオン状態であるか否かを判断する(S12)。イグニション30がオン状態である場合(S12のY)、CPU10は、取得したエンジン回転数情報40からエンジン回転数が0より大きいか否かを判断する(S14)。つまり、エンジンが動作中か停止中かを判断する。
【0018】
エンジンが停止中であれば(S14のN)、CPU10はアイドルストップ状態と判断するとともに、電流計測系20から電流値を取得し、規定以上の放電電流が流れているか否かを判断する(S16)。上述のように、アイドルストップ状態の場合には、車両の電装部品に対して電力供給がなされるので、正常であれば規定以上の放電電流が流れている必要がある。したがって、規定以上の放電電流が流れていない場合(S16のN)、CPU10は電流計測系に異常が発生していると判定する(S18)。
【0019】
イグニション30がオフ状態である場合(S12のN)、エンジンが動作中の場合(S14のY)、及びアイドルストップ状態で規定以上の放電電流が流れている場合(S16のY)、CPU10の処理はS12の処理に戻る。
【0020】
以上、本実施形態によると、電流計測結果で規定以上の放電電流値でなかった場合に、計測系に異常ありと判断できる。つまり、シンプルな構成・処理によって、電圧系に左右されず電流計測系の異常判定を行うことができる。そして、その結果(異常)を上位のシステムへ警告することができ、上位のシステムは早期の適切な対応が可能となる。
【0021】
また、車両情報とエンジン回転数情報40を使用することで自己診断処理のタイミングが増え、異常を検出する能力を向上させることができる。
【0022】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、自己診断処理をする構成として1つのCPU10を例示したが、当然に複数のCPUで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 電池システム
10 CPU(電池制御装置)
20 電流計測系
30 イグニション(車両動作情報)
40 エンジン回転数情報
図1
図2
図3
図4