(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記換気路変更手段は、建物内に設置したセンサの検出値に基づいて、複数の前記竪穴部のうち、換気対象階層において前記被換気域よりも竪穴内部域が低圧側又は高温側で、且つ、被換気域と竪穴内部域との圧力差又は温度差が大となる竪穴部を被換気域に連通させるように構成されている請求項1記載の建物の換気システム。
前記換気路変更手段は、複数の前記竪穴部のうちの一部の竪穴部を換気対象階層中の前記被換気域に連通させた状態において、建物内に設置したセンサの検出値に基づいて、換気対象階層において前記被換気域と一部の竪穴部の竪穴内部域との圧力差又は温度差が、竪穴内部域を低圧側又は高温側とする所定値以下になったとき、或いは、被換気域よりも一部の竪穴部の竪穴内部域が高圧又は低温になったとき、被換気域に連通させる竪穴部を一部の竪穴部から他の竪穴部に変更するように構成されている請求項1記載の建物の換気システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、外気温等の外的環境や室内の温度・圧力等の内的環境等の周囲環境によって竪穴内部域の中性帯のレベル(高さ位置)が決まるため、この周囲環境の変化によって竪穴内部域の中性帯のレベルは変化することになる。
【0007】
このように竪穴内部域の中性帯のレベルが変化すると、被換気域に対する竪穴部の空気吸引力(換気性能)に変化が生じ、しかも、中性帯のレベル変化が大きければ、竪穴部が空気吸引力を発揮する階層にまで変化が生じる。つまり、この種の換気システムでは、周囲環境によって換気性能が異なってくる。一方、被換気域に対する換気効率や空調効率等の目的によって被換気域に対して要求される換気性能は異なってくる。
【0008】
上記従来の換気システムでは、1〜5階の換気を下側用竪穴部だけで行い、且つ、6〜10階の換気を上側用竪穴部だけで行うため、例えば、周囲環境の変化によって下側用竪穴部の中性帯のレベルが6階レベルから5階レベルに下がると、この下側用竪穴部で5階の室内空間に対して空気吸引力を発揮できなくなり、結果的に、5階の自然換気が効率的に行えなくなる。すなわち、この換気システムは、周囲環境の変化に対応できない不都合がある。
【0009】
また、この換気システムは、下側用竪穴部と上側用竪穴部の夫々の被換気域が固定されているため、被換気域に対する換気効率や空調効率等の目的の変化にも対応できない不都合がある。
【0010】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的なシステム構成を採用することにより、周囲環境の変化や目的の変化にも対応して建物内の自然換気を行うことのできる建物の換気システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は、建物内の空気を自然上昇させて屋外へ排気する自然換気用の竪穴部が備えられている建物の換気システムであって、
建物内の被換気域に連通可能な複数の前記竪穴部であり、前記被換気域と竪穴内部域とを連通可能な吸気口、及び、上端側で前記竪穴内部域と屋外とを連通させる排気口を備え、前記被換気域から前記吸気口を通して前記被換気域の空気を前記竪穴内部域に吸い込んで、前記竪穴内部域中で自然上昇させたのちに前記排気口から屋外に排気可能に構成された複数の前記竪穴部と、前記被換気域に連通させる前記竪穴部を変更可能な換気路変更手段が設けら
れ、
複数の前記竪穴部として、下側の換気対象階層の最下層から屋上に亘る状態で区画形成された下側用竪穴部と、上側の換気対象階層の最下層から屋上に亘る状態で区画形成された上側用竪穴部とが、換気対象階層を一部重複させる状態で備えられ、
前記換気路変更手段は、前記下側用竪穴部と前記上側用竪穴部との重複階層中の被換気域に対して、下側用竪穴部と上側用竪穴部とを選択的に連通変更可能に構成されている点にある。
【0012】
つまり、この構成によれば、建物内の被換気域に連通させる竪穴部を換気路変更手段により複数の竪穴部間で変更することができるため、例えば、被換気域に連通させる竪穴部を自然換気が一層有効に機能するものに変更することで建物内の換気効率を高めたり、被換気域に連通させる竪穴部を空調負荷の大きいペリメータ部に近いものに変更することで被換気域の空調効率を高めたりすることが可能になる。
【0013】
すなわち、この構成によれば、被換気域に連通させる竪穴部を換気路変更手段により適切なものに変更することで、環境の変化や目的の変化に応じて建物内の自然換気を有効に行うことができる。
【0015】
つまり、この構成によれば、複数の前記竪穴部として、換気対象階層が上下方向で異なる下側用竪穴部と上側用竪穴部とが備えられているから、建物の下層側を下側用竪穴部で自然換気を行い、且つ、建物の上層側を上側用竪穴部で自然換気を行う換気形態で、建物の下層側から上層側までの自然換気を行うことができる。
【0016】
しかも、下側用竪穴部と上側用竪穴部とは、竪穴内部域の中性帯のレベルが異なってくるため、下側用竪穴部と上側用竪穴部の重複階層中の被換気域に対する換気性能も異なるが、この重複階層中の被換気域に対して適切な換気性能を有するものに換気路変更手段により下側用竪穴部と上側用竪穴部とを適宜に連通変更することで、環境の変化や目的の変化に応じて重複階層中の自然換気を行うことができる。
【0017】
例えば、下側用竪穴部の中性帯のレベルが下がって下側用竪穴部を通じて重複階層中の自然換気が効率的に行えない場合でも、上側用竪穴部の中性帯のレベルが重複階層よりも高位にあれば、その上側用竪穴部に換気路変更手段で連通変更することで、上側用竪穴部を通じて重複階層中の被換気域の自然換気を行うことができる。
【0018】
したがって、環境の変化や目的の変化に応じて下側用竪穴部と上側用竪穴部の分担を変更する形態で建物内の自然換気を効率的に行うことができる。
【0019】
本発明の第
2特徴構成は、前記換気路変更手段は、建物内に設置したセンサの検出値に基づいて、複数の前記竪穴部のうち、換気対象階層において前記被換気域よりも竪穴内部域が低圧側又は高温側で、且つ、被換気域と竪穴内部域との圧力差又は温度差が大となる竪穴部を被換気域に連通させるように構成されている点にある。
【0020】
つまり、換気対象階層において被換気域よりも竪穴内部域が低圧側又は高温側となる竪穴部は、被換気域に対する空気吸引力(換気性能)が期待できる。更に、この中でも、被換気域と竪穴内部域との圧力差又は温度差が大となる竪穴部は、被換気域と竪穴内部域との圧力差又は温度差が小となる竪穴部よりも被換気域に対する空気吸引力(換気性能)が大きくて自然換気が有効に機能する。
【0021】
そして、上記構成によれば、換気路変更手段は、建物内に設置したセンサの検出値に基づいて、複数の前記竪穴部のうち、換気対象階層において被換気域よりも竪穴内部域が低圧側又は高温側で、且つ、被換気域と竪穴内部域との圧力差又は温度差が大となる竪穴部を被換気域に連通させるから、自然換気がより有効に機能する竪穴部を使用して被換気域の自然換気を効率的に行うことができる。
【0022】
本発明の第
3特徴構成は、前記換気路変更手段は、複数の前記竪穴部のうちの一部の竪穴部を換気対象階層中の前記被換気域に連通させた状態において、建物内に設置したセンサの検出値に基づいて、換気対象階層において前記被換気域と一部の竪穴部の竪穴内部域との圧力差又は温度差が、竪穴内部域を低圧側又は高温側とする所定値以下になったとき、或いは、被換気域よりも一部の竪穴部の竪穴内部域が高圧又は低温になったとき、被換気域に連通させる竪穴部を一部の竪穴部から他の竪穴部に変更するように構成されている点にある。
【0023】
つまり、例えば、換気対象階層中の前記被換気域に対して連通させる一部の竪穴部を予め定めておくことで、建物全域の自然換気がバランスよく行えることも考えられる。
【0024】
しかしながら、このようにしても、被換気域と一部の竪穴部の竪穴内部域との圧力差又は温度差が竪穴内部域を低圧側又は高温側とする所定値以下になると、或いは、被換気域よりも一部の竪穴部の竪穴内部域が高圧又は低温になると、この一部の竪穴部では、被換気域に対する十分な空気吸引力(換気性能)が期待できなくなる。
【0025】
これに対し、上記構成によれば、換気路変更手段は、この一部の竪穴部を換気対象階層中の被換気域に連通させた状態において、建物内に設置したセンサの検出値に基づいて、換気対象階層において被換気域と一部の竪穴部の竪穴内部域との圧力差又は温度差が内部域を低圧側又は高温側とする所定値以下になったとき、或いは、被換気域よりも一部の竪穴部の竪穴内部域が高圧又は低温になったとき、被換気域に連通させる竪穴部を一部の竪穴部から他の竪穴部に変更するから、一部の竪穴部では被換気域に対する十分な空気吸引力(換気性能)が期待できなくなると他の竪穴部を使用する形態で、換気対象階層中の被換気域の自然換気を継続的に行うことができる。
【0026】
本発明の第
4特徴構成は、前記換気路変更手段を構成するのに、複数の前記竪穴部の各々と建物中の被換気域とを連通させる連通口と、前記連通口を開閉自在な切替ダンパーと、前記切替ダンパーの動作を制御する制御手段とが設けられている点にある。
【0027】
上記構成によれば、連通口と切替ダンパーと制御手段とから換気路変更手段を簡単且つ経済的に構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、中高層ビル等の多層の建物Aに採用した換気システムの全体構成を示し、この換気システムは、建物A内に区画形成した複数の竪穴部Bを通して建物A内の空気をドラフト効果により自然上昇させて屋外へ排気するとともに、建物Aの各階の外周部等に適宜に形成した外気導入口等(図示省略)を通して屋外から建物A内に外気を導入することで、建物A内の自然換気を行うように構成されている。
【0030】
また、この換気システムには、環境の変化や目的の変化に応じて建物内の自然換気を行うことができるように、特定の換気対象階層(後述する第1、第2重複階層)の室内空間Sに連通させる竪穴部Bを変更可能な換気路変更手段Tが備えられている。
【0031】
前記複数の竪穴部Bとしては、上下方向で異なる階層を換気対象階層とする第1〜第3竪穴部1〜3が備えられており、これら第1〜第3竪穴部1〜3を通して建物Aの下層階から上層階に至る建物Aの全域の自然換気を有効に行えるように構成されている。
【0032】
前記第1竪穴部1は、低層側の第1階層H1(本例では1階〜5階)を換気対象階層とし、この第1階層H1の最下階から屋上に亘る状態に区画形成されている。
【0033】
この第1竪穴部1と第1階層H1中の各階の室内空間Sとの間には、第1竪穴部1の竪穴内部域S1と第1階層H1中の各階の室内空間Sとを連通させる連通口(吸気口)1aが形成されている。また、第1竪穴部1の上端側には、第1竪穴部1の竪穴内部域S1を屋上で外部に連通させる連通口(排気口)1bが形成されている。
【0034】
つまり、この第1竪穴部は、第1階層H1中の各階の室内空間Sから連通口1aを通して室内空気を竪穴内部域S1に吸い込んで、竪穴内部域S1中で自然上昇させたのちに連通口1bから外部に排気可能に構成されている。
【0035】
前記第2竪穴部2は、中層側の第2階層H2(本例では5階〜8階)を換気対象階層とし、この第2階層H2の最下階から屋上に亘る状態に区画形成されている。
【0036】
この第2竪穴部2と第2階層H2中の各階の室内空間Sとの間には、第2竪穴部2の竪穴内部域S2と第2階層H2中の各階の室内空間Sとを連通させる連通口2aが形成されている。また、第2竪穴部2の上端側には、第2竪穴部2の竪穴内部域S2を屋上で外部に連通させる連通口(排気口)2bが形成されている。
【0037】
つまり、この第2竪穴部2は、第2階層H2中の各階の室内空間Sから連通口2aを通して室内空気を竪穴内部域S2に吸い込んで、竪穴内部域S2中を自然上昇させたのちに連通口2bから外部に排気可能に構成されている。
【0038】
前記第3竪穴部3は、高層側の第3階層H3(本例では8階〜10階)を換気対象階層とし、この第3階層H3の最下階から屋上に亘る状態に設置されている。
【0039】
この第3竪穴部3と第3階層H3中の各階の室内空間Sとの間には、第3竪穴部3の竪穴内部域S3と第3階層H3中の各階の室内空間Sとを連通させる連通口3aが形成されている。また、第3竪穴部3の上端側には、第3竪穴部3の竪穴内部域S2を屋上で外部に連通させる連通口(排気口)3bが形成されている。
【0040】
つまり、この第3竪穴部3は、第3階層H3中の各階の室内空間Sから連通口3aを通して室内空気を竪穴内部域S3に吸い込んで、竪穴内部域S3中を自然上昇させたのちに連通口3bから外部に排気可能に構成されている。
【0041】
なお、第1竪穴部1と第2竪穴部2の関係では、第1竪穴部1が下側用竪穴部に該当し、第2竪穴部2が上側用竪穴部に該当する。また、第2竪穴部2と第3竪穴部3の関係では、第2竪穴部2が下側竪穴部に該当し、第3竪穴部3が上側竪穴部に該当する。
【0042】
第1竪穴部1と第2竪穴部2は、各々の換気対象階層を一部重複させる状態で、換言すれば、第1竪穴部1が換気対象とする第1階層H1と第2竪穴部2が換気対象とする第2階層H2の接続階層R1(第1重複階層R1)を共有する状態で配置されている。
【0043】
同様に、第2竪穴部2と第3竪穴部3は、各々の換気対象階層を一部重複させる状態で、換言すれば、第2竪穴部2が換気対象とする第2階層H2と第3竪穴部3が換気対象とする第3階層H3の接続階層R2(第2重複階層R2)を共有する状態で配置されている。
【0044】
そして、換気路変更手段Tは、第1重複階層R1の室内空間Sに対して第1竪穴部1と第2竪穴部2とを選択的に連通変更可能に構成されている。
【0045】
具体的には、換気路変更手段Tは、
図1に示すように第1重複階層R1の室内空間Sに対して第1竪穴部1を連通させる状態と、
図3に示すように第1重複階層R1の室内空間Sに対して第2竪穴部2を連通させる状態とを切替可能に構成されている。
【0046】
また、換気路変更手段Tは、第2重複階層R2の室内空間Sに対して第2竪穴部2と第3竪穴部3とを選択的に連通変更可能に構成されている。
【0047】
具体的には、換気路変更手段Tは、
図1に示すように第2重複階層R2の室内空間Sに対して第3竪穴部3を連通させる状態と、
図2に示すように第2重複階層R2の室内空間Sに対して第2竪穴部2を連通させる状態とを切替可能に構成されている。
【0048】
前記換気路変更手段Tを構成するのに、第1重複階層R1中の室内空間Sと第1、第2竪穴部1、2との連通口1a、2aの各々を開閉自在な第1、第2切替ダンパー4a、4bと、第2重複階層R2中の室内空間Sと第2、第3竪穴部2、3との連通口2a、3aの各々を開閉自在な第3、第4切替ダンパー4c、4dと、各切替ダンパー4a〜4dの動作を制御する制御器5(制御手段の一例)が備えられている。
【0049】
第1重複階層R1中には、第1、第2竪穴部1、2の各竪穴内部域S1、S2と室内空間Sとの圧力差Δa、Δbを検出する第1、第2差圧センサ6a、6b(センサの一例)が設置されている。また、第2重複階層R2中には、第2、第3竪穴部2、3の各竪穴内部域S2、S3と室内空間Sとの圧力差Δc、Δdを検出する第3、第4差圧センサ6c、6dが設置されている。
【0050】
そして、前記制御器5は、各差圧センサ6a〜6dから検出値Δa〜Δdの入力を受けて、これら検出値Δa〜Δdに基づいて、例えば、制御指令によって以下の二種の制御方式で各切替ダンパー4a〜4dの状態を切り替えることで、室内空間Sに連通させる竪穴部Bを変更することができる。
【0051】
(第1制御方式)
この制御方式は、複数の竪穴部Bのうちで換気対象階層中の室内空間Sに対する換気性能が高い竪穴部Bを優先的に使用する換気性能優先制御方式である。この制御方式について、
図1、
図2を参酌し、第2重複階層R2を例に挙げて説明する。
【0052】
この制御方式では、前記制御器5は、第3差圧センサ6cの検出値Δcと、第4差圧センサ6dの検出値Δdとに基づいて、第2重複階層R2において室内空間Sよりも竪穴内部域が低圧側で、且つ、室内空間Sと竪穴内部域との圧力差が大となる竪穴部Bを室内空間Sに連通させるように各切替ダンパー4c、4dの状態を切り替える。
【0053】
つまり、制御器5は、第2重複階層R2において室内空間Sよりも第3竪穴部3の竪穴内部域S3が低圧側となり、且つ、室内空間Sと第3竪穴部3の竪穴内部域S3との圧力差Δdが、室内空間Sと第2竪穴部2の竪穴内部域S2との圧力差Δcよりも大(Δd>Δc)となる場合は、
図1に示すように、第3切替ダンパー4cを閉じ状態にし、第4切替ダンパー4dを開き状態にすることで、第2重複階層R2中の室内空間Sに第3竪穴部3を連通させる。
【0054】
また、制御器5は、第2重複階層R2において室内空間Sよりも第2竪穴部2の竪穴内部域S2が低圧側となり、且つ、室内空間Sと第2竪穴部2の竪穴内部域S2との圧力差Δcが、室内空間Sと第3竪穴部3の内部域S3との圧力差Δdよりも大(Δc>Δd)となる場合は、
図2に示すように、第3切替ダンパー4cを開き状態にし、第4切替ダンパー4dを閉じ状態にすることで、第2重複階層R2中の室内空間Sに第2竪穴部2を連通させる。
【0055】
要するに、この制御方式では、前記換気路変更手段Tは、建物A内に設置した第3、第4差圧センサ6c、6dの検出値Δc、Δdに基づいて、複数の竪穴部B(第2竪穴部2、第3竪穴部3)のうち、室内空間Sよりも竪穴内部域が低圧側で、且つ、室内空間Sと竪穴内部域との圧力差が大となる竪穴部Bを室内空間Sに連通させる。
【0056】
そのため、自然換気がより有効に機能する竪穴部Bを使用して室内空間Sの自然換気を効率的に行うことができる。
【0057】
(第2制御方式)
この制御方式は、予め担当と定めた竪穴部Bを優先的に使用する担当割り優先制御方式である。この制御方式について、
図1、
図3を参酌して第1重複階層R1を例に挙げて説明する。なお、第1重複階層R1は第1竪穴部1の担当階層に設定されている。
【0058】
この制御方式では、前記制御器5は、基本的に担当竪穴部Bとしての第1竪穴部1を室内空間Sに連通させるとともに、第1差圧センサ6aの検出値Δaに基づいて、この第1竪穴部1から所定の換気性能が失われたと判断する所定の条件にある場合には、他の竪穴部Bとしての第2竪穴部2を室内空間Sに連通させるように各切替ダンパー4a、4bの状態を切り替える。
【0059】
つまり、制御器5は、基本的には、第1切替ダンパー4aを開き状態にし、第2切替ダンパー4bを閉じ状態にすることで、
図1に示すように、担当の竪穴部Bとしての第1竪穴部1を第1重複階層R1中の室内空間Sに連通させる。
【0060】
そして、制御器5は、第1差圧センサ6aの検出値Δaが第1竪穴部1の竪穴内部域S1を低圧側とする所定値α以下(Δa≦α)になったとき、或いは、室内空間Sよりも第1竪穴部1の竪穴内部域S1が高圧になったとき、第1切替ダンパー4aを閉じ状態にし、第2切替ダンパー4bを開き状態にすることで、
図3に示すように、第2竪穴部2を第1重複階層R1中の室内空間Sに連通させる。
【0061】
なお、制御器5は、第1竪穴部1から第2竪穴部2への連通変更を実行させる前に、第2差圧センサ6bの検出値Δbが第2竪穴部2の竪穴内部域S2を低圧側とする所定値αを超える値(Δb>α)であるか否かを判定し、検出値Δbが所定値αを超えないときは、第1竪穴部1から第2竪穴部2への連通変更の実行を停止させるようにしてもよい。
【0062】
要するに、この制御方式では、換気路変更手段Tは、複数の竪穴部Bのうちの一部の竪穴部B(第1竪穴部1)を室内空間Sに連通させた状態において、建物内に設置した第1差圧センサ6aの検出値Δaに基づいて、室内空間Sと一部の竪穴部B(第1竪穴部1)の竪穴内部域との圧力差が、竪穴内部域を低圧側とする所定値α以下になったとき、或いは、室内空間Sよりも一部の竪穴部B(第1竪穴部1)の竪穴内部域が高圧になったとき、室内空間Sに連通させる竪穴部Bを一部の竪穴部B(第1竪穴部1)から他の竪穴部(第2竪穴部2)に変更する。
【0063】
そのため、予め定めた担当割りに基づいて複数の竪穴部Bで建物全域の自然換気をバランスよく行いながら、中性帯のレベルが下がる等の事情によって担当の竪穴部Bでは室内空間Sに対する十分な吸引力(換気性能)が期待できなくなると、他の竪穴部Bを使用する形態で、室内空間Sの自然換気を継続的に行うことができる。
【0064】
〔別実施形態〕
(1)前述の実施形態では、換気路変更手段Tで変更可能な竪穴部Bとして、上下方向で換気対象階層の異なる複数の竪穴部が設けられている場合を例に示したが、例えば、換気対象階層を同一にし、水平方向で位置の異なる複数の竪穴部が設けられていてもよい。
【0065】
その場合、例えば、
図4に示すように、複数の竪穴部Bが換気対象階層中の室内空間Sの中央部に位置する複数の中央側竪穴部8A、8Bと室内空間Sの外周部(隅部)に位置する複数の外周側竪穴部9A〜9Dとから構成され、換気路変更手段Tによって、室内空間Sに連通させる竪穴部Bを中央側竪穴部8A、8Bとする状態(
図4(a)参照)と、室内空間Sに連通させる竪穴部Bを外周側竪穴部9A〜9Dとする状態(
図4(b)参照)とに変更可能に構成されていてもよい。
【0066】
また、例えば、換気路変更手段Tによって、各竪穴部8A、8B、9A〜9Dの少なくとも1つを使用するように、室内空間Sに連通させる竪穴部Bを適宜に変更可能に構成されていてもよい。
【0067】
なお、
図4中、6e〜6jは、各竪穴部8A、8B、9A〜9Dの各々の竪穴内部域と室内空間Sとの圧力差を検出する差圧センサであり、4e〜4jは各竪穴部8A、8B、9A〜9Dの各々と室内空間Sとの連通口8a、8b、9a〜9dを開閉自在な切替ダンパーである。また、同図において前述の実施形態で説明した構成と同一の構成箇所には同一の番号を付記している。
【0068】
(2)前述の実施形態では、制御器5で竪穴部Bの適否を判定するためのセンサとして、室内空間Sと竪穴部Bの竪穴内部域との圧力差を検出する差圧センサ6a〜6dを例に示したが、これに限らず、制御器5で竪穴部Bの適否を判定するための数値を検出又は推定できるものであれば種々のセンサを採用することができる。例えば、室内空間Sと各竪穴部Bの竪穴内部域の圧力を夫々検出する圧力センサや室内空間Sと竪穴部Bの内部域の温度を夫々検出する温度センサ等であってもよい。
【0069】
(3)前述の実施形態で示した第1制御方式の変形として、換気路変更手段Tが、建物A内に設置したセンサの検出値に基づいて、複数の竪穴部Bのうち、室内空間Sよりも竪穴内部域が高温側で、且つ、室内空間Sと竪穴内部域との温度差が大となる竪穴部Bを室内空間Sに連通させるようにしてもよい。この場合は、前記センサとして、室内空間Sの温度と各竪穴部Bの竪穴内部域の温度を夫々検出する温度センサを用い、室内空間Sと各竪穴内部域との温度差を制御器5で演算させるのが好ましい。
【0070】
(4)前述の実施形態で示した第2制御方式の変形として、換気路変更手段Tが、複数の竪穴部Bのうちの一部の竪穴部Bを室内空間Sに連通させた状態において、建物内に設置したセンサの検出値に基づいて、室内空間Sと一部の竪穴部Bの竪穴内部域との温度差が、竪穴内部域を高温側とする所定値以下になったとき、或いは、室内空間Sよりも一部の竪穴部Bの竪穴内部域が低温になったとき、室内空間Sに連通させる竪穴部Bを一部の竪穴部Bから他の竪穴部Bに変更するようにしてもよい。この場合も、前記センサとして、室内空間Sの温度と各竪穴部Bの竪穴内部域の温度を夫々検出する温度センサを用い、室内空間Sと各竪穴内部域との温度差を制御器5で演算させるのが好ましい。
【0071】
(5)換気路変更手段Tによる竪穴部Bの変更制御は、前述の実施形態で示した第1制御方式や第2制御方式に限らず、室内空間Sの空調効率を優先する制御方式や建物A全体の空調効率を優先する制御方式、或いは、建物A全体の自然換気量を優先する制御方式等の種々の制御方式を採用することができる。
例えば、建物A全体の自然換気量を優先する制御方式を採用する場合、建物Aの各階における室内空間Sと各竪穴部Bの竪穴内部域との圧力差や温度差をセンサで常時又は定期に監視し、換気路変更手段Tが、前記センサの検出値に基づいて、建物A全体の自然換気量を演算し、この建物A全体の自然換気量が最大となるように各階の室内空間Sに連通させる竪穴部Bを変更するようにしてもよい。
【0072】
(6)換気路変更手段Tを構成する各切替ダンパー4a〜4jとして、例えば、上端横軸周りで揺動開閉自在なダンパー羽根を上下移動可能な錘等の重力付勢手段で閉じ側に付勢したもの等、ダンパー羽根の前後の圧力差に応じて、この圧力差で生じる空気圧で開閉動作(及び開度調整)を行うものを用いてもよい。
このようにすれば、竪穴部Bの竪穴内部域と室内空間Sとが設定圧力差以上になると、圧力差で生じる空気圧でダンパー羽根が自然と開き状態になって竪穴部Bの竪穴内部域と室内空間Sとを連通させるので、別途の動作指令等の電気的な変更制御に基づかずに室内空間Sに連通させる竪穴部Bを変更することができる。
なお、この場合、例えば、竪穴部Bの竪穴内部域から室内空間Sへの空気の逆流を防止するように、ダンパー羽根の閉じ位置から室内空間S側への開き動作を規制するストッパー等の逆流防止手段を付加するのが好ましい。
【0073】
(7)竪穴部Bは、前述の実施形態で示した建物Aの屋上から屋外へ排気するものに限らず、建物Aの外周部から屋外へ排気するもの等であってもよい。