(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筆記芯が受ける筆記圧に基づいて回転カムを回転駆動させる回転駆動機構を備え、前記回転カムの回転運動を前記筆記芯に伝達するように構成したシャープペンシルであって、 前記回転駆動機構は、前記回転カムを回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持するホルダー部材と、前記ホルダー部材に取り付けられ、前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す作用を与える摺動部材とが具備されると共に、筆記芯が受ける筆記圧に基づく前記回転カムの軸方向の移動によって、前記回転カムに回転運動を与えるように構成され、 前記ホルダー部材には軸方向に長い柱状体が形成されると共に、前記摺動部材には前記柱状体に対応したガイド部が形成されることにより、前記摺動部材が前記柱状体に対してスライド可能に取り付けられ、かつ前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す付勢力を与えるクッションスプリングが、前記摺動部材に当接して配置されていると共に、前記ホルダー部材に形成された柱状体は、前記摺動部材を中央にして当該摺動部材を囲むようにして複数本配置され、前記各柱状体の長手方向の一部において、各柱状体の周方向の幅寸法が縮小される段部が形成されていることを特徴とするシャープペンシル。
筆記芯が受ける筆記圧に基づいて回転カムを回転駆動させる回転駆動機構を備え、前記回転カムの回転運動を前記筆記芯に伝達するように構成したシャープペンシルであって、 前記回転駆動機構は、前記回転カムを回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持するホルダー部材と、前記ホルダー部材に取り付けられ、前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す作用を与える摺動部材とが具備されると共に、筆記芯が受ける筆記圧に基づく前記回転カムの軸方向の移動によって、前記回転カムに回転運動を与えるように構成され、 前記ホルダー部材には軸方向に長い柱状体が形成されると共に、前記摺動部材には前記柱状体に対応したガイド部が形成されることにより、前記摺動部材が前記柱状体に対してスライド可能に取り付けられ、かつ前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す付勢力を与えるクッションスプリングが、前記摺動部材に当接して配置されていると共に、前記ホルダー部材に形成された柱状体は、前記摺動部材を中央にして当該摺動部材を囲むようにして複数本配置され、前記各柱状体の周方向の幅寸法が、前記柱状体の軸方向の後方に向かって縮小するテーパー形状を構成していることを特徴とするシャープペンシル。
筆記芯が受ける筆記圧に基づいて回転カムを回転駆動させる回転駆動機構を備え、前記回転カムの回転運動を前記筆記芯に伝達するように構成したシャープペンシルであって、 前記回転駆動機構は、前記回転カムを回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持するホルダー部材と、前記ホルダー部材に取り付けられ、前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す作用を与える摺動部材とが具備されると共に、筆記芯が受ける筆記圧に基づく前記回転カムの軸方向の移動によって、前記回転カムに回転運動を与えるように構成され、 前記ホルダー部材には軸方向に長い柱状体が形成されると共に、前記摺動部材には前記柱状体に対応したガイド部が形成されることにより、前記摺動部材が前記柱状体に対してスライド可能に取り付けられ、かつ前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す付勢力を与えるクッションスプリングが、前記摺動部材に当接して配置されていると共に、前記ホルダー部材に形成された柱状体は、前記摺動部材を中央にして当該摺動部材を囲むようにして複数本配置され、前記各柱状体を結ぶ内径寸法が、前記柱状体の軸方向の後方に向かって拡大するテーパー形状を構成していることを特徴とするシャープペンシル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、本件出願人が先に出願したシャープペンシルに利用される回転駆動機構は、回転カムを保持するホルダー部材に、第1と第2の固定カムを一体に成形すると共に、前記回転カムを軸方向に押し出すための軟質弾性素材によるクッション部材を、前記ホルダー部材に取り付けた構成が採用されている。
加えて、前記クッション部材には、軸に直交する方向に突出する鍔部が一体形成され、前記ホルダー部材の軸方向に形成された一対の柱状体に内側から対峙するように、前記鍔部に凹状のガイド部を形成した構成が採用されている。
【0010】
この構成によると、筆記動作に基づく前記回転カムの軸方向の移動により、前記鍔部に形成された凹状のガイド部が、ホルダー部材の柱状体に沿って移動するので、クッション部材が圧縮変形するに際して、鍔部がほぼ直線運動するように動作する。
したがって、クッション部材を構成するゴム素材(エラストマー)の変形に偏りが生じても、ホルダー部材の柱状体と、鍔部に形成された凹状のガイド部の作用により回転駆動機構の円滑な回転駆動動作を期待することができる。
【0011】
しかしながら、前記した鍔部における凹状のガイド部は、前記したとおりゴム素材(エラストマー)により成形されるので、硬質樹脂により成形されたホルダー部材の柱状体との間において滑りが悪く、回転駆動機構の動作に不具合が生ずる場合があることを出願人は検証しており、この点について改良の余地が残されている。
【0012】
この発明は、前記した点に着目してなされたものであり、ホルダー部材の柱状体とクッション部材に形成された凹状のガイド部との間のすべりの問題を解消すると共に、柱状体と凹状のガイド部との間の成形上のクリアランスの管理を容易になし得るように構成することで、回転駆動機構のより円滑な回転駆動動作を保証することができるシャープペンシルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかるシャープペンシルは、筆記芯が受ける筆記圧に基づいて回転カムを回転駆動させる回転駆動機構を備え、前記回転カムの回転運動を前記筆記芯に伝達するように構成したシャープペンシルであって、前記回転駆動機構は、前記回転カムを回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持する樹脂成型されたホルダー部材と、前記ホルダー部材に取り付けられ、前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す作用を与える樹脂成型された摺動部材とが具備されると共に、筆記芯が受ける筆記圧に基づく前記回転カムの軸方向の移動によって、前記回転カムに回転運動を与えるように構成され、前記ホルダー部材には軸方向に長い柱状体が形成されると共に、前記摺動部材には前記柱状体に対応したガイド部が形成されることにより、前記摺動部材が前記柱状体に対してスライド可能に取り付けられ、かつ前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す付勢力を与えるクッションスプリングが、前記摺動部材に当接して配置されていることを特徴とする。
【0014】
この場合、好ましい一つの形態においては、前記ホルダー部材に形成された柱状体は、前記摺動部材を中央にして当該摺動部材を囲むようにして複数本配置され、前記各柱状体の長手方向の一部において、各柱状体の周方向の幅寸法が縮小される段部が形成される。
【0015】
また、好ましい他の一つにおいては、前記ホルダー部材に形成された柱状体は、前記摺動部材を中央にして当該摺動部材を囲むようにして複数本配置され、前記各柱状体の周方向の幅寸法が、前記柱状体の軸方向の後方に向かって縮小するテーパー形状を構成した形態になされる。
【0016】
さらに、好ましい他の一つにおいては、前記ホルダー部材に形成された柱状体は、前記摺動部材を中央にして当該摺動部材を囲むようにして複数本配置され、前記各柱状体を結ぶ内径寸法が、前記柱状体の軸方向の後方に向かって拡大するテーパー形状を構成した形態になされる。
【0017】
一方、前記した回転駆動機構の好ましい形態においては、前記回転カムの軸方向に直交する上下面にそれぞれ円環状に連続した多数のカムが形成され、前記ホルダー部材には、前記回転カムの上下のカムを挟むように対峙して配置された第1固定カムおよび第2固定カムが具備され、前記第1固定カムは、前記回転カムの軸方向の後退動作により当該回転カムの上側のカムに噛み合って、前記回転カムを一方向に回転駆動させると共に、前記第2固定カムは、前記回転カムの軸方向の前進動作により当該回転カムの下側のカムに噛み合って、前記回転カムを前記一方向に回転駆動させるように構成される。
【0018】
そして、前記ホルダー部材の柱状体を一次側成形体として、前記摺動部材におけるガイド部が、前記柱状体に対応して二色成形により形成されることが望ましく、さらに前記ホルダー部材と前記摺動部材とは、それぞれPOM(ポリアセタール)により成形されることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
前記したこの発明に係るシャープペンシルによると、回転駆動機構を構成する回転カムは、樹脂成型されたホルダー部材に回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持され、同じくホルダー部材には、クッションスプリングの付勢力を受けて前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す作用を与える樹脂成型された摺動部材が配置される。
そして、ホルダー部材には軸方向に長い柱状体が前記摺動部材を囲むようにして配置され、前記摺動部材の前記柱状体に対峙する位置には、前記柱状体に対応したガイド部が形成される。
【0020】
この場合、前記ホルダー部材の前記柱状体を一次側成形体として、前記柱状体に対応した前記ガイド部を含む摺動部材を二色成形により形成することができ、望ましくは前記ホルダー部材および摺動部材は、それぞれPOMにより成形される。
これにより、摺動部材に形成される前記ガイド部は、ホルダー部材における前記柱状体の外形形状に転写された状態で成形され、両者のクリアランスを限り無く小さく成形することが可能となる。したがって、前記柱状体に対する前記摺動部材の遊び(ガタ)の少ない往復移動動作を実現させることができる。
またホルダー部材と摺動部材とは、共にPOMにより成形することにより、二色成形後における両者の分離が容易であり、かつ両者間の摺動に良好な潤滑特性(滑り)を持たせることができる。
【0021】
これにより、前記回転カムは筆記動作に基づく軸方向の移動に際してねじれ作用を受けることなく、軸方向に抵抗なく直線的に移動することができる。それ故、前記回転駆動機構のより円滑な回転駆動動作を保証することができるシャープペンシルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明に係るシャープペンシルについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては同一部分もしくは同一の機能を果たす部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面については代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付した符号を引用して説明する場合もある。
【0024】
先ず
図1、
図2、
図4に示すように、軸筒1の先端部には、飾りリング2が取り付けられた口先部材3が螺合されることで、口先部材3は軸筒1に対して着脱可能に取り付けられている。
前記軸筒1の軸芯に沿って筒状の芯ケース4が収容されており、この芯ケース4の先端部には短軸の芯ケース継手5が取り付けられ、前記芯ケース継手5を介して真ちゅう製のチャック6が連結されている。
【0025】
前記チャック6内には、その軸芯に沿って図示せぬ筆記芯の通孔が形成され、またチャック6の先端部が周方向に複数(例えば3つ)に分割されて、分割された先端部は真ちゅうによりリング状に形成された締め具7内に遊嵌されている。またリング状の前記締め具7は前記チャック6の周囲を覆うようにして配置された回転駆動機構21の一部を構成する回転カム23の先端部内面に装着されている。
【0026】
前記回転カム23の前端部には、前記した口先部材3内に収容されて、その前端部が口先部材3より突出されるスライダー9が、回転カム23の外周面を覆うようにして嵌合されて取り付けられ、さらにスライダー9の前端部には、筆記芯を案内する先端パイプ10がパイプ保持具11を介して取り付けられている。
また、前記スライダー9の内周面における前記した先端パイプ10の直後には、軸芯部分に通孔を形成したゴム製の保持チャック12が装着されている。
【0027】
前記した構成により、芯ケース4に続くチャック6内に形成された通孔、および前記保持チャック12の軸芯に形成された通孔を介して、先端パイプ10に至る直線状の芯挿通孔が形成されており、この直線状の芯挿通孔内に図示せぬ筆記芯が挿通される。そして、前記した回転カム23と芯ケース継手5との間には、コイル状のチャックスプリング13が配置されている。
【0028】
すなわち、前記チャックスプリング13は、その前端部が回転カム23の内周面に形成された環状の段部に当接し、チャックスプリング13の後端部は前記芯ケース継手5の前端面に当接した状態で収容されている。したがって、前記チャックスプリング13の軸方向の拡開作用により、前記チャック6は回転カム23内を後退して、その先端部がリング状の締め具7内に収容される方向に、すなわち筆記芯を把持する方向に付勢されている。
【0029】
前記した回転カム23を含む筆記芯の回転駆動機構21は、その外郭がホルダー部材22により構成され、このホルダー部材22に円柱状に形成された前記回転カム23が回転可能にかつ軸方向にスライド可能に装着されている。
また、前記ホルダー部材22内の後半部には、ホルダー部材22に対して軸方向にスライド可能となるように、円筒状に形成された摺動部材24が装着されており、この摺動部材24内には金属製のクッションスプリング25が配置されている。このクッションスプリング25の一端は前記摺動部材24の前端部内面に当接し、摺動部材24を介して前記回転カム23に対して、当該回転カム23を軸方向の前方に押し出す作用を与えている。
【0030】
また、前記ホルダー部材22の後端部には、樹脂により成形された中栓26が嵌め込まれて前記クッションスプリング25の後端部を受けており、前記中栓26の後端部には、円環状のアンダーカット部26aが形成され、このアンダーカット部26aによって中栓26は軸筒1内において嵌合されて固定されている。
【0031】
さらに前記中栓26の中央部は、周方向に複数のスリットを形成することで蛇腹状になされており、この蛇腹構造によりスプリング体26bを構成し、このスプリング体26bの作用により、前記ホルダー部材22を前方に向かって押し出すように構成されている。
これにより、ホルダー部材22の一部を軸筒内に形成された段部1aに当接させて、ホルダー部材22を含む回転駆動機構21の位置決めを果たしている。
【0032】
なお、前記回転カム23、摺動部材24、中栓26の内側面は、前記した芯ケース4を通す空間部になされており、これにより芯ケース4およびチャック6等は独立して軸方向に移動可能になされている。
そして、前記回転駆動機構21は、ホルダー部材22、回転カム23、摺動部材24、中栓26等を備えてユニット化されており、このユニット化された回転駆動機構21の構成については、
図5以降に基づいて後で詳細に説明する。
【0033】
図1および
図3に示されているように、軸筒1の後端部にはクリップ31aが一体に形成された円筒状のクリップ支持体31が、軸筒1の内周面に嵌合されて取り付けられている。また、前記クリップ支持体31および軸筒1内に沿って円筒状に形成されたノック棒32が装着されており、このノック棒32の前端部と、前記した中栓26の後端部との間には軸スプリング33が装着され、ノック棒32を軸筒の後部に向かって突出させる作用を与えている。
なお、前記ノック棒32の外径が太くなされた段部32cが、前記クリップ支持体31の内周面の一部に軸方向に当接することで、ノック棒32の抜け止めが構成されると共に、ノック棒32の位置決めを果たしている。
【0034】
前記ノック棒32の後端部には、消しゴム34が着脱可能に装着されると共に、前記消しゴム34を覆うノックカバー35が、ノック棒32の後端部の周面に着脱可能に取り付けられている。
前記ノック棒32における消しゴム34の装着位置には、小口径になされた筆記芯の補給孔32aが形成され、その直前には軸に直交するようにして当接部32bが形成されている。
【0035】
加えて、ノック棒32に形成された当接部32bと、前記した芯ケース4の後端部とは、軸方向に所定の間隔をもって対峙した構成にされている。
この構成によると、筆記に伴いチャック6および芯ケース4が若干後退しても、芯ケース4の後端部が前記ノック棒32に衝突することはなく、前記回転駆動機構21の回転動作に障害を与えるのを避けることができる。
【0036】
以上の構成において、前記したノックカバー35をノック操作することにより、前記した軸スプリング33は収縮し、ノック棒32の当接部32bが芯ケース4を前方に押し出す。これにより、チャック6が前進してスライダー9を若干前方に押し出す。しかしスライダー9の一部が口先部材3内に当接してその前進が阻まれるため、チャック6の先端部が締め具7から相対的に突出してチャック6による筆記芯の把持状態が解除される。
そして、前記ノック操作を解除することにより、前記軸スプリング33の作用により、ノックカバー35は元の状態に後退すると共に、チャックスプリング13の作用によりチャック6および芯ケース4も軸筒1内において後退する。
【0037】
この時、筆記芯は保持チャック12に形成された通孔内において摩擦により一時的に保持されており、この状態でチャック6が後退してその先端部が前記締め具7内に収容されることで、筆記芯を再び把持状態にする。
すなわち、ノックカバー35のノック操作の繰り返しによりチャック6が前後に移動し、これにより筆記芯の解除と把持が行われ、筆記芯はチャック6から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0038】
図5〜
図11は、筆記芯の回転駆動機構21の外郭を構成するホルダー部材22を示している。このホルダー部材22は、その中央部に円筒部22aが形成され、この円筒部22aの内周面が前記回転カム23を回転可能に、かつ軸方向に移動可能に支持する機能を果たす。
【0039】
前記円筒部22aの一端部側、すなわち回転駆動機構21を軸筒1内に装着した状態における前端部側には、軸方向に長い一対の弾性部材22bが軸対称の位置(180度対向する位置)にそれぞれ形成されている。この一対の弾性部材22bは前記した中央の円筒部22aに一体に樹脂成形により形成され、かつ細長く形成されることで弾性作用が付与されている。
【0040】
そして、一対の弾性部材22bにおける円筒部22a側の基端部、すなわち前記円筒部22aの端面には円環状に連続して鋸歯状に成形された多数のカム(これを、第1固定カムという。)22cが形成されている。
また、一対の弾性部材22bの先端部には、それぞれ鋸歯状に形成されたカム(これを、第2固定カムという。)22dが形成されている。
なお、前記第2固定カム22dは、前記弾性部材22bの長手方向の先端部から軸芯に向かって、若干鈍角に屈曲した傾斜面上に成形されている。
【0041】
前記した中央の円筒部22aの他端部側、すなわち回転駆動機構21が軸筒1内に装着された状態における後端部側には、軸方向に伸びる一対の柱状体22eが軸対称の位置に形成されており、この柱状体22eを介して第2円筒部22fが前記円筒部22aと一体に成形されている。
【0042】
加えて、前記ホルダー部材22における前記した一対の柱状体22eおよび第2円筒部22fに囲まれた領域には円筒状に形成された摺動部材24が装着されている。この摺動部材24の前端部には、鍔部24aが軸方向に直交するように突出して形成されており、この鍔部24aにおける前記一対の柱状体22eに対峙する位置には、
図9に断面図で示したとおり、凹状のガイド部24bが形成されている。
また、前記摺動部材24の後端部は、円筒状に形成されて摺接部24cを構成している。すなわち、この摺接部24cは、
図11に示すように前記したホルダー部材22の第2円筒部22fの内周面に摺接する機能を果たす。
【0043】
そして、この実施の形態においては、前記一対の柱状体22eは、周方向の幅寸法が軸方向において同一となるように直線状に構成されており、かつ一対の柱状体22eの内側間の対向寸法が軸方向において同一となるように構成されている。
したがって、前記鍔部24aに形成された凹状のガイド部24bが、前記一対の柱状体22eに沿ってスライドすることで、前記摺動部材24は回転が阻止されつつ、ホルダー部材22内を軸方向に往復移動するように作用する。
【0044】
また、前記摺動部材24の円筒状の前端面には、周方向にほぼ等間隔をもって半球状の小突起24dが形成されている。これらの小突起24dは前記した回転カム23の後端部に当接して回転カム23を前方に押し出す作用を与えつつ、回転カム23の後端面との間で滑りが生ずるように機能する。
【0045】
前記した構成の摺動部材24は、ホルダー部材22の前記柱状体22eの内側面、および第2円筒部22fの内周面を一次側成形体として利用して、二色成形される。
この実施の形態においては、二色成形を実行するにあたって、一次側成形体としてのホルダー部材22はPOMにより成形し、ホルダー部材22の一部に二色成形される摺動部材24も、同一の樹脂素材であるPOMを用いて成形される。
【0046】
前記したとおり、ホルダー部材22の柱状体22eに接する摺動部材24のガイド部24b、およびホルダー部材22における第2円筒部22fの内周面に接する摺動部材24の摺接部24cを二色成形することにより、特に摺動部材24に形成される前記ガイド部24bは、ホルダー部材22における前記柱状体22eの形状に転写された状態で成形される。これにより、両者間のクリアランスを限り無く小さく成形することができる。
【0047】
また、一次側成形体と二次側成形体とに、同一の素材であるPOMを利用することで、二色成形後において両者は貼り付くことなく分離され、しかもPOM同志は互いに潤滑性(滑り)が良好であるという特質を生かすことができ、前記ホルダー部材22に対する摺動部材24の軸方向の移動も抵抗なく円滑になし得ることができる。
【0048】
図12〜
図15は、前記したホルダー部材22の軸方向の前方に、回転カム23を装着すると共に、ホルダー部材22の後端部側にクッションスプリング25および中栓26を装着することで、ユニット化された回転駆動機構21を構成した状態を示している。
前記回転カム23は円筒状に形成されると共に、中央部が大径部になされ、その大径部の軸に直交する上下の面には、円環状に連続して多数の鋸歯状のカム23a,23bがそれぞれ形成されている。なお、以下においては前記ホルダー部材22の第1固定カム22cに噛み合うカム23aを上側のカムと称呼し、第2固定カム22dに噛み合うカム23bを下側のカムと称呼する。
【0049】
そして、前記回転カム23の回転軸23cを、ホルダー部材22に形成された一対の弾性部材22b側から押し込むことで、一対の弾性部材22bは互いに外側に押し広げられつつ、回転軸23cは円筒部22a内に収容される。これにより、回転カム23はホルダー部材22に対して回転可能に、かつ軸方向に移動可能に装着される。
【0050】
なお、この実施の形態においては、前記下側のカム23bは円錐形状に成形された傾斜面上に成形されており、これに噛み合う第2固定カム22dは、前記したとおり弾性部材22bの長手方向の先端部から軸芯に向かって、若干鈍角に屈曲した傾斜面上に成形されている。したがって、この形態によると前記したクッションスプリング25の作用により回転カム23が軸方向の前方に向かって付勢されるので、回転カム23の軸芯がホルダー部材22の軸芯に一致した理想的な噛み合い状態を実現させることができる。
【0051】
一方、前記ホルダー部材22の第2円筒部22fには、その後端部より中栓26が嵌め込まれ、前記したクッションスプリング25を、前記摺動部材24内に装着した状態で、回転駆動機構21が構成されている。
すなわち前記中栓26には、
図15に断面図で示したとおり、その前端部が外径を細くした嵌合部26cが形成されている。
【0052】
したがって、先ずクッションスプリング25を摺動部材24内に装着した後に、前記嵌合部26cをホルダー部材の第2円筒部22fに対して後端部側から押し込むことで、
図12〜
図15に示す回転駆動機構21を形成させることができる。
そして、前記回転駆動機構21は、軸筒1の後端部側より挿入し、すでに
図1、
図2、
図4等に基づいて説明したとおり、中栓26のアンダーカット部26aを軸筒1内の所定の位置に嵌合させることで、前記回転駆動機構21は軸筒1内に装着される。
【0053】
以上のように構成された筆記芯の回転駆動機構21によると、
図2および
図4に示すようにチャック6が筆記芯を把持した状態で、前記回転カム23はチャック6と共に軸芯を中心にして回転可能になされている。そして、シャープペンシルが筆記状態以外の場合においては、回転駆動機構21内に配置された前記したクッションスプリング25の作用により、摺動部材24を介して回転カム23は前方に付勢されている。
【0054】
一方、筆記動作により先端パイプ10から突出している筆記芯に筆記圧が加わった場合には、前記チャック6は前記クッションスプリング25の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転カム23も軸方向に僅かに後退する。したがって、回転カム23に形成された鋸歯状の上側のカム23aは、前記第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされる。
【0055】
この場合、対峙した状態の上側のカム23aと第1固定カム22cは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されており、前記したように上側カム23aが第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされることによって、回転カム23は上側カム23aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
【0056】
そして、前記したように上側カム23aが第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされた状態においては、対峙した状態の鋸歯状の下側カム23bと第2固定カム22dは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0057】
したがって一画の筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解かれた場合には、前記したクッションスプリング25の作用により回転カム23は軸方向に僅かに押し出されて前進し、回転カム23に形成された下側カム23bが、第2固定カム22dに噛み合う。これにより回転カム23は下側カム23bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する同方向の回転駆動を再び受ける。
【0058】
以上のとおり、前記したシャープペンシルによると、筆記圧を受けることによる回転カム23の軸方向への往復運動(クッション動作)に伴って、回転カム23は上側カム23aおよび下側カム23bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、前記したチャック6を介してこれに把持された筆記芯も同様に一方向に回転駆動される。
したがって、筆記芯は自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するのを防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0059】
図16〜
図19は、回転駆動機構21の第2の実施の形態を示したものであり、このうち
図16および
図17は、ホルダー部材22の構成を示している。
この第2の実施の形態においては、ホルダー部材22に形成された一対の柱状体22eの一部には、柱状体の周方向の幅寸法を縮小する段部22gが柱状体22eの幅方向の両側に形成されている。
すなわち、この実施の形態においては、前記段部22gは柱状体22eの長手方向の中央部において、長手方向のほぼ1/3を占める程度の長さに渡って形成されている。
【0060】
これは、すでに説明したとおりホルダー部材22に対して摺動部材24を二色成形するにあたり、ホルダー部材22と摺動部材24との位置関係は、
図16および
図17に示した位置関係においてなされる。すなわち、摺動部材24の鍔部24aは、ホルダー部材22の柱状体22eにおける円筒部22a寄りの位置において二色成形される。
そして、ホルダー部材22に対して回転カム23を装着した場合には、前記摺動部材24の鍔部24aの位置は、幅寸法を縮小する段部22gの形成位置に設定される。
【0061】
図18および
図19は、前記
図16および
図17に示すホルダー部材22を利用して回転駆動機構21を構成した場合の要部の断面図を示したものである。
この実施の形態によると、特に
図19に示すように、柱状体22eの内側面と摺動部材24のガイド部24bとの間のクリアランスは限り無く小さく設定されるのに対して、柱状体22eにおける幅方向において、ガイド部24cの凹部の両外側に若干のクリアランス(隙間g1)が発生するようになされる。
【0062】
この両外側に形成される隙間g1は、前記した段部22gを形成したことによるものとなる。したがって、前記ホルダー部材22を樹脂成形(一次成形)するに際して、前記段部22gの幅寸法を予め金型に反映しておくことで、前記ガイド部24cの両外側のクリアランスの調整をすることができる。
【0063】
次に
図20は、回転駆動機構21の第3の実施の形態を示したものであり、この例においては、ホルダー部材22に形成された一対の柱状体22eの周方向の幅寸法が、軸方向の後方に向かって僅かに縮小するテーパー形状を構成している。
すなわち、一対の柱状体22eにおける円筒部22a側の幅寸法をa1、第2円筒部22f側の幅寸法をa2とした場合、a1>a2の関係となるように構成されている。
【0064】
この構成によると、筆記圧が加わり前記回転カム23および摺動部材24が後退動作するに伴って、摺動部材24のガイド部24cの両外側と、前記柱状体22eとの間に生ずるクリアランス、すなわち
図19に示した隙間g1の発生度合いが大きくなるように作用する。したがって、ホルダー部材22を成形する際の前記した柱状体22eの幅寸法a1,a2を調整することで、適切なクリアランスの調整を図ることができる。
【0065】
図21および
図22は、回転駆動機構21の第4の実施の形態を示したものであり、この例においては、ホルダー部材22に形成された各柱状体22eを結ぶ内径寸法が、軸方向の後方に向かって僅かに拡大するテーパー形状を構成している。
すなわち、一対の柱状体22eにおける円筒部22a側における対向寸法をb1、第2円筒部22f側における対向寸法をb2とした場合、b1<b2の関係となるように構成されている。
【0066】
この構成によると、筆記圧が加わり前記回転カム23および摺動部材24が後退動作するに伴って、摺動部材24のガイド部24cと、前記柱状体22eとの間に生ずるクリアランスの発生度合いが大きくなるように作用する。したがって、ホルダー部材22を成形する際の前記した柱状体22eの対向寸法b1,b2を調整することで、適切なクリアランスの調整を図ることができる。
【0067】
ところで、前記したように筆記芯の回転駆動機構21を備えたシャープペンシルにおいては、筆記に伴い芯が前記したクッション動作を伴うために、独特の違和感が発生することが検証されている。特に筆記圧の解除により前記した回転カム23を前進移動させる金属製のクッションスプリング25を用いた場合には、筆記芯の後退動作において「ヘコヘコ」した感触が伴われ、また前記クッションスプリング25による戻り動作において「カチャカチャ」する感触が発生する。
【0068】
その原因としては、筆記芯に一定の加重(筆記圧)が加わった時に、突然後退動作が開始することが挙げられる。また、筆記圧が解除された時における前記クッションスプリング25による戻り動作のスピードが速く、このためにペンを浮かせた瞬間においても、紙面をペン先(筆記芯)が追従するという動作が発生する。したがって、いわゆるハネやハライなどの筆記操作を行った時に、ペン先を浮かせたつもりでも思ったところで筆記が終わらないという挙動が発生し、これらが相乗して前記した独特の違和感になるものと考えられる。
【0069】
前記した課題を解消するためには、前記した回転駆動機構21の一部にダンパー機能を持たせることで、前記したクッション動作が緩慢になされるように配慮することが望ましい。これを実現する好ましい例においては、
図15および
図18に示すようにホルダー部材22内における中栓26と摺動部材24との間の空間部に、粘着性媒体として例えば粘着性グリースGが封入される。
この構成によると、ホルダー部材22の内側面と、摺動部材24の外周面(
図18に示す摺接部24c)との間に、前記した粘着性グリースGが介在されるので、前記摺動部材24の軸方向の移動に前記したダンパー機能が付与される。
【0070】
前記したダンパー機能を付与させる粘着性グリースGとしては、そのちょう度が100〜400の範囲のものを用いることが望ましく、例えば信越化学工業社製の商品名「信越シリコーングリース」品番:G330〜334,G340〜342,G351〜353,G631〜633などを好適に利用することができる。
【0071】
ダンパー機能として前記した粘着性グリースGを利用することで、筆記芯の急激な軸方向への移動動作には大きな粘性抵抗が発生し、比較的緩慢に動く静的な荷重に対しては粘性抵抗が小さくなる。これにより、ペン先と紙面との接触時の衝撃を筆圧、筆記速度に応じて効果的に緩和させることが可能となる。