特許第6452989号(P6452989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452989
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/143 20180101AFI20190107BHJP
   F21S 41/29 20180101ALI20190107BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20190107BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190107BHJP
【FI】
   F21S41/143
   F21S41/29
   F21W102:30
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-165980(P2014-165980)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-42428(P2016-42428A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕己
【審査官】 野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−161536(JP,A)
【文献】 特開2014−026769(JP,A)
【文献】 特開2011−108570(JP,A)
【文献】 特開2012−064516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される照明装置であって、
光出射面を有する光源と、
前記光出射面に対向し、かつ、前記光源から出射された光の少なくとも一部が通過するように配置された投影レンズと、
前記光源の点消灯を制御する回路を含む駆動回路基板と、
前記光源と前記駆動回路基板を支持し、かつ、前記投影レンズを収容する灯室の一部を区画するハウジングと、
前記投影レンズを保持し、前記光源に対する位置が固定されたホルダと、
前記投影レンズと前記ホルダの一方に設けられ、前記投影レンズの光軸と交差する向きに延びる回動軸と、
前記投影レンズと前記ホルダの他方に設けられ、前記回動軸を保持する軸受と、
前記回動軸を中心として前記投影レンズを前記ホルダに対して回動させるエイミング機構と、
を備えており、
前記光出射面の法線方向である第1方向と、前記駆動回路基板の主面の法線方向である第2方向は、交差しており
前記エイミング機構は、
その一部が前記ハウジングの外側において回転操作可能とされているスクリューと、 前記スクリューの回転を、前記回動軸を中心に前記投影レンズを回動させる力に変換するジョイントと、
を備えており、
前記スクリューは、前記ハウジングの一部を貫通して延びており、
前記駆動回路基板の前記主面は、前記スクリューの一部に対向しており、
前記ハウジングは、前記第1方向から見て円形状の輪郭部分を有しており、
前記回路へ電力を供給する給電線を通す通路および前記灯室に連通する通気部が、前記ハウジングに形成されており、
前記スクリューは、前記通路と前記通気部の間において前記ハウジングを貫通して延びている、
照明装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、当該ハウジングとともに前記灯室を区画する透光カバーが装着される装着部を有しており、
前記装着部は、前記第2方向から見て前記駆動回路基板の前記主面を斜めに横切っている、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、複数の放熱板が一体成型された単一の金属部材であり、
前記灯室に連通する通気部が前記ハウジングに形成されている、
請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記ジョイントは、前記投影レンズと一体に成形されている、
請求項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の照明装置の一例として、ハウジングと透光カバーにより区画された灯室内に、光源と投影レンズが収容されたフォグランプが知られている。光源から出射された光は、投影レンズを通過することにより所定の配向制御を受け、車両前方に所定の配光パターンを形成する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−108570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車両に搭載される照明装置に対するさらなる小型化の要求に応えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる一態様は、車両に搭載される照明装置であって、
光出射面を有する光源と、
前記光出射面に対向し、かつ、前記光源から出射された光の少なくとも一部が通過するように配置された投影レンズと、
前記光源の点消灯を制御する回路を含む駆動回路基板と、
前記光源と前記駆動回路基板を支持し、かつ、前記投影レンズを収容する灯室の一部を区画するハウジングと、
を備えており、
前記光出射面の法線方向である第1方向と、前記駆動回路基板の主面の法線方向である第2方向は、交差している。
【0006】
このように駆動回路基板の配置を定めることにより、駆動回路基板の主面の法線方向が光源の光出射面の法線方向と一致している構成と比較して、光出射面の法線方向と直交する平面への照明装置の投影面積を小さくできる。当該面積の大小は観察者に与える印象が特に大きく、小型化の要求が厳しいことが一般的である。上記の構成によれば、車両に搭載される照明装置に対するそのような要求に応えることができる。
【0007】
前記ハウジングは、当該ハウジングとともに前記灯室を区画する透光カバーが装着される装着部を有している構成とされうる。この場合、前記装着部は、前記第2方向から見て前記駆動回路基板の前記主面を斜めに横切っている構成とされうる。
【0008】
車両において照明装置が固定される箇所は、車両の上下方向からみて斜めに延びる面により構成されていることが一般的である。透光カバーの装着部が駆動回路基板の主面を斜めに横切る形状とすることにより、そのような斜めに延びる面に沿う形状の灯室を形成でき、空力性能の低下を抑制できる。他方、駆動回路基板には主面へのアクセスが容易な部分が残される。当該部分を利用して、駆動回路基板をハウジングに固定する部品を配置できるため、車両に搭載される照明装置に対する小型化の要求に応えつつも、駆動回路基板の取付作業性が低下しない。
【0009】
前記ハウジングは、複数の放熱板が一体成型された単一の金属部材である構成とされうる。この場合、前記灯室に連通する通気部が前記ハウジングに形成されている構成とされうる。
【0010】
このような構成によれば、灯室の一部を区画するハウジングを、ヒートシンクとしても機能させうる。灯室の一部を区画する樹脂などからなるハウジングがヒートシンクとは別体として設けられる構成と比較して、照明装置全体を小型化できる。したがって、車両に搭載される照明装置に対するさらなる小型化の要求に応えることができる。
【0011】
灯室内の除湿を目的とした通気部をヒートシンクとしても機能するハウジングに設けることにより、灯室内の温度低下に伴う結露は、まずハウジング上に発生する。これにより、投影レンズや透光カバーに防曇加工を行なう必要性が低下する。したがって、小型化の要求のみならず、コスト抑制の要求にも応えることができる。
【0012】
前記照明装置は、
前記投影レンズを保持し、前記光源に対する位置が固定されたホルダと、
前記投影レンズと前記ホルダの一方に設けられ、前記投影レンズの光軸と交差する向きに延びる回動軸と、
前記投影レンズと前記ホルダの他方に設けられ、前記回動軸を保持する軸受と、
前記回動軸を中心として前記投影レンズを前記ホルダに対して回動させるエイミング機構と、
を備えている構成とされうる。
【0013】
このような構成によれば、ホルダに保持された投影レンズを直接回動させて投影レンズの光軸の基準位置調整を行なえる。したがって、投影レンズとその光軸調整を行なうエイミング機構を備えつつも、車両に搭載される照明装置の一例であるフォグランプに対する小型化の要求に応えることができる。
【0014】
前記エイミング機構は、
その一部が前記ハウジングの外側において回転操作可能とされているスクリューと、
前記スクリューの回転を、前記回動軸を中心に前記投影レンズを回動させる力に変換するジョイントと、
を備えている構成とされうる。
この場合、前記スクリューは、前記ハウジングの一部を貫通して延びており、前記駆動回路基板の前記主面は、前記スクリューの一部に対向している構成とされうる。
【0015】
このような構成によれば、スクリューを設けることにより必要となる空間を有効に活用し、ハウジングの大型化を抑制できる。したがって、投影レンズとその光軸調整を行なうエイミング機構を備えつつも、車両に搭載される照明装置に対する小型化の要求に応えることができる。
【0016】
前記ジョイントは、前記投影レンズと一体に成形されている構成とされうる。
【0017】
このような構成によれば、車両に搭載される照明装置に対する小型化の要求に応えつつ、部品点数を削減できる。投影レンズとジョイントを別体として構成する場合は、各部材の成形容易性を向上できる。
【0018】
前記ハウジングは、前記第1方向から見て円形状の輪郭部分を有しており、前記回路へ電力を供給する給電線を通す通路および前記灯室に連通する通気部が、前記ハウジングに形成されている構成とされうる。この場合、前記スクリューは、前記通路と前記通気部の間において前記ハウジングを貫通して延びている構成とされうる。
【0019】
光源の光出射面の法線方向から見てハウジングが円形状の輪郭部分を有することにより、当該法線方向と直交する平面への照明装置の投影面積をより小さくできる。このような形状を有するハウジングの場合、円形状の直径部分付近は、部品の配置スペースを比較的確保しやすい。比較的小さな寸法を有する貫通穴と通気部の間に比較的大きな寸法を有するスクリューを配置することにより、スクリューを当該直径部分付近に効率よく配置しやすい。したがって、投影レンズとその光軸調整を行なうエイミング機構を備えつつも、車両に搭載される照明装置に対する小型化の要求に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係るフォグランプを示す斜視図である。
図2図1のフォグランプの一部を示す斜視図である。
図3図1のフォグランプの一部を示す斜視図である。
図4図1のフォグランプの一部を示す斜視図である。
図5図1のフォグランプの一部を示す斜視図である。
図6図1のフォグランプを一部断面視で示す下面図である。
図7図1のフォグランプの一部を示す斜視図である。
図8図1のフォグランプが備える投影レンズを示す斜視図である。
図9図1のフォグランプが備えるレンズホルダを示す斜視図である。
図10図1のフォグランプが備えるエイミング機構の動作を示す側面図である。
図11図1のフォグランプの一部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態例について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。また以降の説明に用いる「右」および「左」は、運転席から見た左右の方向を示している。
【0022】
図1は、一実施形態に係るフォグランプ1(照明装置の一例)を右前上方から見た外観を示す斜視図である。図示のフォグランプ1は、車両の右前部に配置されるように構成されている。車両の左前部におけるに配置されるフォグランプは、図示のものと左右対称の形状を有している。
【0023】
フォグランプ1は、ハウジング2と透光カバー3を備えている。透光カバー3は、ハウジング2に装着されて内部に灯室4を区画している。
【0024】
図2は、透光カバー3を取り外したフォグランプ1の一部を左前上方から見た斜視図である。ハウジング2は、背板2a、支持テーブル2b、および複数の放熱板2cを備えている。背板2aの前面周縁部は、透光カバー3が装着される装着部2a1として構成されている。支持テーブル2bは、背板2aの前方に設けられており、灯室4内に収容されている。複数の放熱板2cは、背板2aの後面に設けられており、上下方向に延びている。すなわち、複数の放熱板2cは、灯室4の外側に配置されている。
【0025】
フォグランプ1は、投影レンズ5、レンズホルダ6、および光源ユニット7を備えている。投影レンズ5、レンズホルダ6、および光源ユニット7は、灯室4内に収容されている。
【0026】
図3は、図2に示した状態から投影レンズ5を取り外したフォグランプ1の一部を左前上方から見た斜視図である。光源ユニット7は、支持基板7a、光源7b、および第1コネクタ7cを備えている。支持基板7aは、ハウジング2の支持テーブル2bの前面に装着されている。光源7bと第1コネクタ7cは、支持基板7aの前面に配置されている。支持基板7aには図示しない回路配線が形成されており、光源7bと第1コネクタ7cを電気的に接続している。
【0027】
本実施形態においては、光源7bは光出射面7b1を有する半導体発光素子により構成されている。半導体発光素子の例としては、発光ダイオード、レーザダイオード、有機EL素子などが挙げられる。発光素子の数は仕様に応じて適宜に定められる。
【0028】
図4は、図3に示した状態からレンズホルダ6を取り外したフォグランプ1の一部を左前下方から見た斜視図である。図5は、同状態を左後下方から見た斜視図である。光源ユニット7は、駆動回路基板7dと第2コネクタ7eをさらに備えている。
【0029】
駆動回路基板7dは、光源7bの点消灯を制御する光源駆動回路を備えている。第2コネクタ7eは、当該回路と電気的に接続されている。駆動回路基板7dは、ハウジング2の支持テーブル2bの下面に装着されている。
【0030】
図4図5に示すように、フォグランプ1は、配線ユニット8を備えている。配線ユニット8は、外部コネクタ8a、第1内部コネクタ8b、第2内部コネクタ8c、第3内部コネクタ8d、第1接続線8e、第2接続線8f、および封止部材8gを備えている。
【0031】
外部コネクタ8aは、灯室4の外側に配置されている。外部コネクタ8aは、フォグランプ1が搭載される車両が備える電源または統合制御部と電源供給または通信可能に接続された相手側コネクタ(図示せず)と接続可能に構成されている。第1内部コネクタ8bは、第1接続線8eを介して外部コネクタ8aと通信可能に接続されている。第1内部コネクタ8bは、駆動回路基板7dに設けられた第2コネクタ7eに接続される。電源より供給された電力または統合制御部より送信された制御信号は、外部コネクタ8a、第1内部コネクタ8b、および第2コネクタ7eを介して、駆動回路基板7dが備える光源駆動回路に入力される。
【0032】
第1接続線8eは、封止部材8gを貫通して延びている。封止部材8gは、支持テーブル2bおよび複数の放熱板2cの下方において背板2aに形成された貫通孔に嵌入されている。
【0033】
第2内部コネクタ8cと第3内部コネクタ8dは、第2接続線8fを介して電力供給または通信可能に接続されている。第2内部コネクタ8cは、駆動回路基板7dに設けられた第2コネクタ7eに接続される。図3に示すように、第3内部コネクタ8dは、支持基板7aに設けられた第1コネクタ7cに接続される。駆動回路基板7dの光源駆動回路から出力された制御信号は、第2内部コネクタ8c、第3内部コネクタ8d、および第1コネクタ7cを介して、光源7bに入力される。これにより、光源7bが所望の点消灯動作を行なう。
【0034】
図4に示すように、本実施形態においては、光源7bの光出射面7b1の法線方向N1(第1方向)と駆動回路基板7dの主面7d1の法線方向N2(第2方向)は直交している。ここで「主面」とは、駆動回路基板7dを構成する面のうち、最も面積の広い面を意味する。
【0035】
このように駆動回路基板7dの配置を定めることにより、駆動回路基板の主面が光源の光出射面の法線方向と一致している(換言すると、主面が前後方向を向いている)構成と比較して、フォグランプ1の上下方向と左右方向の少なくとも一方の寸法を小さくできる。換言すると、フォグランプ1を前方から見た場合における当該上下方向と当該左右方向を含む平面へのフォグランプ1の投影面積を小さくできる。当該面積の大小は観察者に与える印象が特に大きく、小型化の要求が厳しいことが一般的である。上記の構成によれば、車両に搭載される照明装置の一例としてのフォグランプに対するそのような要求に応えることができる。
【0036】
図6は、透光カバー3のみを断面視としたフォグランプ1を下方から見た状態を示している。前述のように、ハウジング2は、当該ハウジング2とともに灯室4を区画する透光カバー3が装着される装着部2a1を有している。装着部2a1は、駆動回路基板7dの主面7d1の法線方向N2から見て、当該主面7d1を斜めに横切っている。
【0037】
車両においてフォグランプ1が固定される箇所は、車両の上下方向から見て斜めに延びる面により構成されていることが一般的である。透光カバー3の装着部2a1が駆動回路基板7dの主面7d1を斜めに横切る形状とすることにより、そのような斜めに延びる面に沿う形状の灯室4を形成できる。他方、駆動回路基板7dには主面7d1へのアクセスが容易な部分が残される。当該部分を利用して、駆動回路基板7dをハウジング2の支持テーブル2bに固定する部品を配置できるため、車両に搭載される照明装置の一例としてのフォグランプに対する小型化の要求に応えつつも、駆動回路基板7dの取付作業性が低下しない。
【0038】
図4図5に示すように、ハウジング2は一対の左取付部2dと一対の右取付部2eを備えている。一対の左取付部2dは、上下方向に並ぶように装着部2a1の左端部に設けられ、左方に延びている。一対の右取付部2eは、上下方向に並ぶように装着部2a1の右端部に設けられ、右方に延びている。図6に示すように、一対の左取付部2dは、一対の右取付部2eよりも前方に配置されている。一対の左取付部2dと一対の右取付部2eは、それぞれフォグランプ1の前後方向に開口する貫通穴を有している。各貫通穴は、フォグランプ1を車両における所定の箇所に固定するための締結部材の挿通を許容する。
【0039】
図5に示すように、ハウジング2の後面には通気性キャップ10が装着されている。図7は、図5に示した状態から、通気性キャップ10と配線ユニット8の封止部材8gを取り外したフォグランプ1の一部を左後下方から見た斜視図である。ハウジング2は、通気部2fを有している。通気部2fは、灯室4に連通するとともに、ハウジング2の後方へ開口する通気路を形成している。通気性キャップ10は、通気部2fを覆うようにハウジング2に装着される。これにより、通気部2fを通じて水分や埃が灯室4に侵入することを防止する。
【0040】
本実施形態においては、背板2a、支持テーブル2b(図3参照)、複数の放熱板2c、一対の左取付部2d、一対の右取付部2e、および通気部2fは、一体成型された単一の金属部材の一部である。すなわち、ハウジング2は、灯室4の一部を区画するとともに、ヒートシンクを兼ねている。
【0041】
このような構成によれば、灯室の一部を区画する樹脂などからなるハウジングがヒートシンクとは別体として設けられる構成と比較して、フォグランプ1全体を小型化できる。したがって、車両に搭載される照明装置の一例としてのフォグランプに対するさらなる小型化の要求に応えることができる。
【0042】
通気部2fは、灯室4内の除湿を目的として形成されている。すなわち、光源7bの点消灯に伴う灯室4内の温度変化に起因する結露を抑制するために設けられている。本実施形態のように通気部2fをヒートシンクとしても機能するハウジング2に設けることにより、灯室4内の温度低下に伴う結露は、まずハウジング2上に発生する。これにより、投影レンズ5や透光カバー3に防曇加工を行なう必要性が低下する。したがって、小型化の要求のみならず、コスト抑制の要求にも応えることができる。
【0043】
図3に示すように、レンズホルダ6は、支持基板7aの前面に固定されている。図2に示すように、レンズホルダ6は、投影レンズ5を保持している。光源7bから出射された光の少なくとも一部は、投影レンズ5を通過する。投影レンズ5を通過した光は、透光カバー3を通過して、フォグランプ1の前方を照明する。
【0044】
次に図8図9を参照しつつ、投影レンズ5がレンズホルダ6に保持される構造について説明する。図8は、投影レンズ5を左後下方から見た外観を示す斜視図である。図9は、光源ユニット7に装着されたレンズホルダ6を左前下方から見た外観を示す斜視図である。
【0045】
図8に示すように、投影レンズ5は、右回動軸5aと左回動軸5bを備えている。右回動軸5aは、投影レンズ5の右側部に配置されている。右回動軸5aは、半球形状を呈するように形成されており、球面が右方を向いている。左回動軸5bは、投影レンズ5の左側部に配置されている。左回動軸5bは、半球形状を呈するように形成されており、球面が左方を向いている。右回動軸5aと左回動軸5bの中心同士を結ぶ軸線Aは、投影レンズ5の光軸Bと直交する向きに延びている。
【0046】
図9に示すように、レンズホルダ6は、右軸受6aと左軸受6bを備えている。右軸受6aと左軸受6bは、レンズホルダ6の前面に設けられている。
【0047】
右軸受6aは、周壁6a1、一対の突起6a2、および湾曲受け面6a3を備えている。周壁6a1は、レンズホルダ6の前面より前方に突出し、半円弧状に延びている。当該半円弧は、左方に開いている。一対の突起6a2の各々は、周壁6a1の前端部より半円弧の内側へ向かってオーバーハングするように延びている。一対の突起6a2の各々は後方へ幾らかの撓み変形が可能とされている。湾曲受け面6a3は、周壁6a1が描く半円弧の内側に配置され、一対の突起6a2と対向している。湾曲受け面6a3は、右回動軸5aの半球面に沿う形状を有している。
【0048】
左軸受6bは、周壁6b1、一対の突起6b2、および湾曲受け面6b3を備えている。周壁6b1は、レンズホルダ6の前面より前方に突出し、半円弧状に延びている。当該半円弧は、右方に開いている。一対の突起6b2の各々は、周壁6b1の前端部より半円弧の内側へ向かってオーバーハングするように延びている。一対の突起6b2の各々は後方へ幾らかの撓み変形が可能とされている。湾曲受け面6b3は、周壁6b1が描く半円弧の内側に配置され、一対の突起6b2と対向している。同図においては一対の突起6b2に隠れているが、湾曲受け面6b3は、湾曲受け面6a3と左右対称で、左回動軸5bの半球面に沿う形状を有している。
【0049】
上記のような構成を有する投影レンズ5とレンズホルダ6は、図2に示すように結合される。このとき、投影レンズ5の右回動軸5aと左回動軸5bは、それぞれレンズホルダ6の右軸受6aと左軸受6bに保持される。
【0050】
具体的には、右回動軸5aが右軸受6aに押し付けられることにより、右回動軸5aが一対の突起6a2を後方に変形させつつ、周壁6a1に囲まれた領域に進入する。右回動軸5aの半球面の一部が湾曲受け面6a3に接すると、一対の突起6a2は元の位置に復帰し、右回動軸5aが前方へ抜けることを防止する。これにより、右回動軸5aは、周壁6a1に囲まれた領域内で、図8に示した軸線Aに直交する面内で回動可能とされる。
【0051】
同様に、左回動軸5bが左軸受6bに押し付けられることにより、左回動軸5bが一対の突起6b2を後方に変形させつつ、周壁6b1に囲まれた領域に進入する。左回動軸5bの半球面の一部が湾曲受け面6b3に接すると、一対の突起6b2は元の位置に復帰し、左回動軸5bが前方へ抜けることを防止する。これにより、左回動軸5bは、周壁6b1に囲まれた領域内で、図8に示した軸線Aに直交する面内で回動可能とされる。
【0052】
図4図5に示すように、フォグランプ1は、エイミングスクリュー9を備えている。エイミングスクリュー9は、ヘッド部9aと軸部9bを備えている。図5に示すように、ヘッド部9aは、ハウジング2の背板2aの後面における複数の放熱板2cの下方に配置されている。すなわち、ヘッド部9aは、ハウジング2の外側に配置されている。ヘッド部9aは、所定の工具により回転操作可能とされている。軸部9bは、背板2aを貫通して灯室4内に延びている。軸部9bの外周面にはネジ溝が形成されている。
【0053】
図8に示すように、投影レンズ5は、連結部5cとジョイント5dを備えている。連結部5cは、投影レンズ5の下部と一体成型されており、当該下部より下方に延びている。ジョイント5dは、連結部5cに装着されている。ジョイント5dには貫通孔5d1が形成されている。貫通孔5d1の内周面にはネジ溝が形成されている。
【0054】
図2に示すように、エイミングスクリュー9の軸部9bは、ジョイント5dの貫通孔5d1に挿入される。このとき、軸部9bの外周面に形成されたネジ溝と貫通孔5d1の内周面に形成されたネジ溝が螺合する。所定の工具によりエイミングスクリュー9のヘッド部9aが回転操作されると、軸部9bとジョイント5dの螺合位置が変化し、ジョイント5dが前後方向に変位する。
【0055】
図10は、エイミングスクリュー9の回転に伴う、投影レンズ5の動きを説明するための左側面図である。図10の(a)は初期状態を示している。
【0056】
この状態からエイミングスクリュー9が左に回転されると、ジョイント5dは前方に変位する。これに伴い、投影レンズ5の連結部5cが前方に押される。このとき、投影レンズ5の右回動軸5aと左回動軸5bが、それぞれレンズホルダ6の右軸受6aと左軸受6b内で時計回り(左方から見て)に回転する。したがって、図10の(b)に示すように、投影レンズ5の光軸Bが上方に傾く。
【0057】
一方、エイミングスクリュー9が右に回転されると、ジョイント5dは後方に変位する。これに伴い、投影レンズ5の連結部5cが後方に引かれる。このとき、投影レンズ5の右回動軸5aと左回動軸5bが、それぞれレンズホルダ6の右軸受6aと左軸受6b内で反時計回り(左方から見て)に回転する。したがって、図10の(c)に示すように、投影レンズ5の光軸Bが下方に傾く。
【0058】
すなわち、エイミングスクリュー9とジョイント5dは、右回動軸5aと左回動軸5bを中心として投影レンズ5をレンズホルダ6に対して回動させるエイミング機構を構成している。エイミングスクリュー9のヘッド部9aが回転操作されることにより軸部9bが回転し、ジョイント5dにより軸部9bの回転が投影レンズ5を回動させる力に変換される。これにより、エイミングスクリュー9の回転操作を通じて、投影レンズ5の光軸Bの上下方向に係る基準位置が調節されうる。
【0059】
このような構成によれば、レンズホルダ6に保持された投影レンズ5を直接回動させて投影レンズ5の光軸Bの基準位置調整を行なえる。したがって、投影レンズ5とその光軸調整を行なうエイミング機構を備えつつも、車両に搭載される照明装置の一例であるフォグランプに対する小型化の要求に応えることができる。
【0060】
図4に示すように、光源駆動回路を備える駆動回路基板7dは、その主面7d1がエイミング機構の一部であるエイミングスクリュー9に対向するように配置されている。
【0061】
このような構成によれば、エイミングスクリュー9を設けることにより必要となる空間を有効に活用し、ハウジング2の大型化を抑制できる。したがって、投影レンズ5とその光軸調整を行なうエイミング機構を備えつつも、車両に搭載される照明装置の一例であるフォグランプに対する小型化の要求に応えることができる。
【0062】
なお、エイミング機構は、必ずしもハウジング2の外側から操作可能なエイミングスクリューを用いることを要しない。例えば、灯室4内に投影レンズ5と連結されたアクチュエータを設置し、当該アクチュエータにより投影レンズ5をレンズホルダ6に対して回動させる構成としてもよい。この場合、アクチュエータを制御する信号は、配線ユニット8を通じて入力される構成とすればよい。
【0063】
図11は、図3に示した状態のフォグランプ1の一部を、光源7bの光出射面7b1の法線方向N1から見た正面図である。ハウジング2は、当該方向から見て円形状の輪郭部分を有している。
【0064】
図7に示すように、配線ユニット8の封止部材8gを取り外した状態においては、ハウジング2が有する貫通穴2gが露出する。貫通穴2gは、駆動回路基板7dが備える光源駆動回路へ電力を供給する第1接続線8e(給電線の一例)を通すための通路である。エイミングスクリュー9は、当該貫通穴2gと前述の通気部2fの間において、ハウジング2を貫通して延びている。
【0065】
光源7bの光出射面7b1の法線方向N1から見てハウジング2が円形状の輪郭部分を有することにより、フォグランプ1の上下方向と左右方向を含む平面へのフォグランプ1の投影面積をより小さくできる。このような形状を有するハウジング2の場合、左右方向の中央部付近は、部品の配置スペースを比較的確保しやすい。比較的小さな寸法を有する貫通穴2gと通気部2fの間に比較的大きな寸法を有するエイミングスクリュー9を配置することにより、エイミングスクリュー9をハウジング2の左右方向中央部付近に効率よく配置しやすい。したがって、投影レンズ5とその光軸調整を行なうエイミング機構を備えつつも、車両に搭載される照明装置の一例であるフォグランプに対する小型化の要求に応えることができる。
【0066】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0067】
上記の実施形態においては、光源7bの光出射面7b1の法線方向N1と駆動回路基板7dの主面7d1の法線方向N2は直交している。しかしながら、法線方向N1と法線方向N2が交差していれば、必ずしも両者が直交していることを要しない。
【0068】
上記の実施形態においては、光源駆動回路を備える駆動回路基板7dの主面7d1は、フォグランプ1の下方を向くように配置されている。しかしながら、光出射面7b1の法線方向N1と主面7d1の法線方向N2が交差していれば、主面7d1の向きは適宜に定められうる。例えば、駆動回路基板7dは、主面7d1がフォグランプ1の上方、左方、あるいは右方を向くように配置されうる。
【0069】
上記の実施形態においては、光源7bの光出射面7b1が投影レンズ5に対向する配置とされている。このような構成によれば、光源7bと投影レンズ5との距離を短くできる。しかしながら、光源7bの光出射面7b1の向きは、光出射面7b1の法線方向N1と駆動回路基板7dの主面7d1の法線方向N2が交差していれば、仕様に応じて適宜に定められうる。
【0070】
上記の各実施形態においては、右回動軸5aと左回動軸5bは、投影レンズ5に設けられ、右軸受6aと左軸受6bは、レンズホルダ6に設けられている。この構成とは逆に、レンズホルダ6に右回動軸と左回動軸を設け、投影レンズ5に右軸受と左軸受を設けてもよい。
【0071】
上記の実施形態においては、図8に示すように、ジョイント5dは、投影レンズ5と別体として成形されており、連結部5cに装着されている。しかしながら、ジョイント5dは、投影レンズ5の一部として一体成型されてもよい。この場合、部品点数を削減できる。本実施形態のように連結部5cとジョイント5dを別体として構成する場合は、各部材の成形容易性を向上できる。
【0072】
上記の実施形態においては、ハウジング2が一対の左取付部2dと一対の右取付部2eを備えている。しかしながら、左取付部2dと右取付部2eの位置、寸法、および数は、フォグランプ1が固定される車両の仕様に応じて適宜に定められうる。
【0073】
上記の実施形態においては、照明装置の一例としてフォグランプ1を例示した。しかしながら、本発明は、ハウジングと透光カバーにより区画される灯室内に投影レンズを備え、当該投影レンズの光軸調整を必要とする各種の照明装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1:フォグランプ、2:ハウジング、2a1:装着部、2c:放熱板、2f:通気部、2g:貫通穴、3:透光カバー、4:灯室、5:投影レンズ、5a:右回動軸、5b:左回動軸、5d:ジョイント、6:レンズホルダ、6a:右軸受、6b:左軸受、7b:光源、7b1:光出射面、7d:駆動回路基板、9:エイミングスクリュー、N1:光出射面の法線方向、N2:駆動回路基板の主面の法線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11