特許第6453012号(P6453012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453012
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】妊婦疑似体感装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20190107BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   G09B23/28
   G09B19/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-197967(P2014-197967)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-71016(P2016-71016A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】512064804
【氏名又は名称】相模原商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】滝口 収
(72)【発明者】
【氏名】久留生 好
(72)【発明者】
【氏名】湯藤 梨光
【審査官】 上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−085771(JP,A)
【文献】 特開平11−244783(JP,A)
【文献】 特開2004−077562(JP,A)
【文献】 米国特許第05256098(US,A)
【文献】 実開昭56−102570(JP,U)
【文献】 米国特許第04411629(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00−9−56,17/00−19/26
G09B 23/00−29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎児を模した人形であって、少なくともその内部には振動時間と振動数及び振幅が制御されることで胎児の鼓動及び胎動を表現する圧電振動子が収納された胎児人形と、
子宮を模した袋体であって、少なくともその内部に上記胎児人形が収納される模擬子宮袋と、
上記圧電振動子に鼓動または胎動の表現に係るコマンド信号を出力するとともに、該圧電振動子の振動によって表現される胎児の鼓動または胎動に係るアニメーション情報を表示する送信用または送受信用の端末機を備え、
該端末機から出力される上記コマンド信号は、上記圧電振動子をその固有振動数で振動させ、その振動を1.5秒〜2秒程度の間に急激に減衰させて消滅させることにより胎児のキッキングの胎動を表現し、または、上記圧電振動子をその固有振動数で振動させ、その振動を3秒〜4秒程度の間に振幅の増減を複数回繰り返させた後に消滅させることにより胎児のローリングの胎動を表現するように構成されており、
上記模擬子宮袋を使用者の手と腹部の間に挟持した状態で使用されることを特徴とする妊婦疑似体感装置。
【請求項2】
請求項1において、上記胎児人形は、その背面を、上記模擬子宮袋の表裏両面のうち使用者の手によって支えられる面に対向させた状態で該模擬子宮袋内に収納されていることを特徴とする妊婦疑似体感装置。
【請求項3】
請求項1または2において、上記胎児人形の内部に、上記圧電振動子を収納した振動発生装置と、該振動発生装置に接するようにして、多数の硬質粒状物が収容された詰袋が設けられていることを特徴とする妊婦疑似体感装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、妊婦状態を疑似的に体感できるようにした妊婦疑似体感装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
妊婦の疑似体感は、助産師、保健師、看護師等の妊娠・出産に関わる専門職の人々とか、これから妊娠・出産を経験しようとする女性、あるいは将来的に妊娠・出産を経験すると考えられる生徒・学生等に対する教育的見地から、その必要性が認められており、これに呼応して、いくつかの妊婦疑似体感装置が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示される装置は、児童・生徒等に対して、教育的見地から、胎児の成長・出産に関する知識を教授することを目的とする装置であって、エプロン形の上着の所定部位に、子宮等を模した内部空間を有する胎児人形等収容袋部を設けるとともに、この袋部内に、胎児人形と模擬胎盤等を収納している。また、上記胎児人形の内部には、発熱部材、泣き声発生器、胎児心音発生装置等を収容している。
【0004】
そして、上記発熱部材からの熱を胎児人形を介して感得することで「胎児の体温」を体感し、上記泣き声発生器からスピーカを通して出される泣き声を聴くことで「胎児の泣き声」を体感し、上記胎児心音発生装置からの心音を「胎児の心音」として体感するようになっている。なお、この胎児の「泣き声」と「心音」は、共に、音声ROMに記憶されており、これらの体感時には該音声ROMから「泣き声」とか「心音」を読み出してこれを再生するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−77562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の装置においては以下のような問題があった。
【0007】
(1)特許文献1に記載の装置では、エプロン形の上着の所定部位、例えば、着用した場合に使用者の腹部に対応する位置に上記胎児人形等収容袋部を設け、この胎児人形等収容袋部内に、胎児人形と模擬胎盤等を収納するとともに、該胎児人形の内に上記発熱部材、泣き声発生器、胎児心音発生装置等を収容しており、特に胎児の体温については使用者がその腹部での触覚で感得するようになっている。
【0008】
このように、胎児の挙動等を疑似的に表現する振動等を使用者がその腹部での触覚で感得するようにした場合には、腹部の触覚は手の指先の触覚に比べて低いという知見事項から考えて、使用者に振動等を的確に感得させるためには、振動等のレベルを高くする必要があり、それだけ装置のコストアップを招来するという問題がある。
【0009】
(2)また、特許文献1の装置は、該装置をエプロン形の上着に取り付けるようにしているため、例えば、妊婦講習に参加した複数人の間で上記装置を回しながら交替で体験してもらう場合、交替の都度、エプロン形の上着の着脱が必要であって、体験者の交替に時間が掛るなど、講習効率という点において改善の余地がある。
【0010】
そこで、本願発明では、疑似的な胎児の鼓動、胎動等を的確に感得でき、しかも取扱い性に優れた妊婦疑似体感装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の第1の発明に係る妊婦疑似体感装置は、胎児を模した人形であって、少なくともその内部には振動時間と振動数及び振幅が制御されることで胎児の鼓動及び胎動を表現する圧電振動子が収納された胎児人形と、子宮を模した袋体であって、少なくともその内部に上記胎児人形が収納される模擬子宮袋と、上記圧電振動子に鼓動または胎動の表現に係るコマンド信号を出力するとともに、該圧電振動子の振動によって表現される胎児の鼓動または胎動に係るアニメーション情報を表示する送信用または送受信用の端末機を備え、
該端末機から出力される上記コマンド信号は、上記圧電振動子をその固有振動数で振動させ、その振動を1.5秒〜2秒程度の間に急激に減衰させて消滅させることにより胎児のキッキングの胎動を表現し、または、上記圧電振動子をその固有振動数で振動させ、その振動を3秒〜4秒程度の間に振幅の増減を複数回繰り返させた後に消滅させることにより胎児のローリングの胎動を表現するように構成されており、
上記模擬子宮袋を使用者の手と腹部の間に挟持した状態で使用されることを特徴としている。
【0012】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る妊婦疑似体感装置において、上記胎児人形を、その背面が、上記模擬子宮袋の表裏両面のうち使用者の手によって支えられる面に対向する状態で該模擬子宮袋内に収納したことを特徴としている。
【0013】
本願の第3の発明では、上記第1または第2の発明に係る妊婦疑似体感装置において、上記胎児人形の内部に、上記圧電振動子を収納した振動発生装置と、該振動発生装置に接するようにして、多数の硬質粒状物が収容された詰袋を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係る妊婦疑似体感装置では、少なくともその内部には振動時間と振動数及び振幅が制御されることで胎児の鼓動及び胎動を表現する圧電振動子が収納された胎児人形と、少なくともその内部に上記胎児人形が収納される模擬子宮袋と、
上記圧電振動子に鼓動または胎動の表現に係るコマンド信号を出力するとともに、該圧電振動子の振動によって表現される胎児の鼓動または胎動に係るアニメーション情報を表示する送信用または送受信用の端末機を備え、該端末機から出力される上記コマンド信号は、上記圧電振動子をその固有振動数で振動させ、その振動を1.5秒〜2秒程度の間に急激に減衰させて消滅させることにより胎児のキッキングの胎動を表現し、または、上記圧電振動子をその固有振動数で振動させ、その振動を3秒〜4秒程度の間に振幅の増減を複数回繰り返させた後に消滅させることにより胎児のローリングの胎動を表現するように構成されており、その使用に際しては、上記模擬子宮袋を使用者の手と腹部の間に挟持するように構成されている。
【0015】
したがって、人の触覚は手の指先部分が最も高く、腹部の触覚はさほど高くないことからして、この発明のように妊婦疑似体感装置の使用に際して、上記模擬子宮袋を使用者の手と腹部の間に挟持することで、上記圧電振動子の振動を受けて上記胎児人形が振動する場合、例えこの振動レベルが低いものであったとしても、使用者は指先での触覚によってこの振動を的確に感得することができ、例えば、上記振動を使用者の腹部での触覚によって感得する場合に比して、より体感性能に優れた妊婦疑似体感装置を提供することができる。
【0016】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明では、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記胎児人形を、その背面が、上記模擬子宮袋の表裏両面のうち使用者の手によって支えられる面に対向する状態で該模擬子宮袋内に収納している。
【0017】
したがって、(イ)上記胎児人形の腹面側には手足が折り重なり状態で存在しているため、該胎児人形内に収納されている上記圧電振動子の振動は、該胎児人形の腹面側よりも背面側において感知し易いこと、(ロ)上記圧電振動子の振動を感知し易い胎児人形の背面を、上記模擬子宮袋の表裏両面のうち使用者の手によって支えられる面、即ち、使用者の触覚が最も反映される面に対向させたこと、これらの相乗効果として、上記胎児人形の振動による疑似的な胎児の鼓動及び胎動をより一層敏感に感得することができ、妊婦疑似体感装置の体感性能がさらに向上する。
【0018】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明では、上記(a)または(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記胎児人形の内部に、上記圧電振動子を収納した振動発生装置と、該振動発生装置に接するようにして、多数の硬質粒状物が収容された詰袋を設けているので、上記圧電振動子の振動が上記詰袋内の硬質粒状物での乱反射によって周囲に分散して広がる。したがって、上記振動が本物の胎児の「胎動」により近似したものとして表現され、リアル性に富んだ妊婦疑似体感装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明に係る妊婦疑似体感装置のシステム構成図である。
図2図1に示した胎児人形の構造説明図である。
図3図1に示した振動発生装置の開蓋状態での斜視図である。
図4図3に備えられた圧電振動子の構造説明図である。
図5】胎児の鼓動・胎動に対応する振動(音)波形図である。
図6】模擬子宮袋への胎児人形、模擬胎盤袋等の収納状態の説明図である。
図7図6のA−A矢視図である。
図8】模擬子宮袋を用いた妊婦疑似体感の実施説明図である。
図9】送受信用端末機の画面表示説明図である。
図10】第1の妊婦疑似体感例における制御手法の説明図である。
図11】第2の妊婦疑似体感例における制御手法の説明図である。
図12】第3の妊婦疑似体感例における制御手法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本願発明の実施形態に係る妊婦疑似体感装置Zのシステム構成を示している。この妊婦疑似体感装置Zは、子宮を模した袋体で構成される模擬子宮袋1と、胎児を模した胎児人形2と、胎盤を模した模擬胎盤袋3と、臍帯を模したケーブル4と、振動発生装置5とセンサ6と詰袋7、及び送受信用端末機8を備えて構成される。
【0021】
「模擬子宮袋1」
上記模擬子宮袋1は、所定大きさの袋体で構成されており、その内部には上記胎児人形2と模擬胎盤袋3及びケーブル4が収納される。なお、上記模擬胎盤袋3には、バッテリ(図示省略)が内蔵されており、このバッテリには上記ケーブル4が接続されている。そして、このケーブル4は次述の振動発生装置5に接続され、該振動発生装置5側へ給電するようになっている。
なお、上記模擬子宮袋1や模擬胎盤袋3は、本物の子宮や胎盤にそっくりの形態である必要はなく、ある程度の雰囲気が感じられるような形態であればよい。
また、上記模擬子宮袋1内への上記胎児人形2等の収納方法については後述する。
【0022】
「胎児人形2」
上記胎児人形2は、胎児を模して作られた布製の人形であって、その内部には綿材9が充填されているが、この実施形態においては該綿材9の一部を取り除いてここに収納スペースを確保し、この収納スペース内に、後述の振動発生装置5を収容するとともに、該振動発生装置5の両端側に該振動発生装置5にそれぞれ接するようにして詰袋7を収容し、さらに一方の詰袋7の近傍にはセンサ6を収容している。
なお、上記胎児人形2は、本物の胎児にそっくりの形態である必要はなく、ある程度の雰囲気が感じられるような形態であればよい。
【0023】
「振動発生装置5」
上記振動発生装置5は、図3及び図4に示すように、硬質樹脂製の箱体51aと蓋体51bを備えた収納箱51の上記箱体51a内に制御手段11を収納固定するとともに、上記蓋体51bの内面に次述の圧電振動子13を取り付けて構成される。
【0024】
上記圧電振動子13は、所定長さの帯状のステンレスからなる弾性板材15の長さ方向の略中央部に圧電素子16を固定してなる圧電振動板14を、その両端に設けた支持台18を介して上記収納箱51の蓋体51bに固定して構成される。そして、この圧電振動子13と上記制御手段11は、上記圧電素子16から延びるハーネス12を介して接続されている。
【0025】
また、上記圧電振動子13は、上記左右一対の支持台18で支持された上記圧電振動板14が100Hz〜300Hz、より好ましくは150Hz〜250Hzの固有振動数をもつように重量設定がなされるが、該圧電振動板14だけでは上記固有振動数に対応する重量が確保できない場合には、上記圧電素子16の下面側に錘17を取り付けて重量調整を行うようになっている。
【0026】
上記圧電振動子13は、その振動によって胎児の鼓動及び胎動を表現するものであり、これを実現すべく上記制御手段11によって振動時間、振動数及び振幅が制御される。そして、胎児の鼓動及び胎動に疑似する振動波形を波形データとして保有し、コマンド信号に基づいてこれを選択して実行するようになっている(後述する)。
【0027】
ここで、上記圧電振動子13の固有振動数については、人の体感振動において心地よく感じられる振動は50Hz〜350Hz程度といわれていることからして、上記圧電振動子13の固有振動数を100Hz〜300Hzの範囲に設定すれば、該圧電振動子13の振動を「鼓動」あるいは「胎動」として何れも心地よく感じることができる。しかも、上記圧電振動子13を上記固有振動数で振動させて共振を起こさせることで、その振幅が増幅され、「鼓動」あるいは「胎動」をより明確に認識することができる。
また、上記圧電振動子13の固有振動数を150Hz〜250Hzの範囲に設定すれば、該圧電振動子13の振動を、より本物の胎児の「胎動」に近似したものとして感じることができるため好ましい。
【0028】
「波形データ」
ここで、この波形データについて説明する。ここでは、胎児情報として、胎児の「鼓動」と「胎動」を想定し、さらに胎児の「鼓動」については「早い鼓動」と「遅い鼓動」の二つの場合を想定し、また、「胎動」については、手足を突っ張る「キッキング」と寝返りする「ローリング」の二つの場合を想定している。そして、これら各胎児情報に対応する波形データを図5に示している。以下、これを個別に説明する。
【0029】
「胎動」のうちの「キッキング」を表現するには、例えば、圧電振動子13をその固有振動数で振動させ、その振動が1.5秒〜2秒程度の間に急激に減衰して消滅するように制御すればよい(図5の「キッキング」の波形データを参照)。
【0030】
「胎動」のうちの「ローリング」を表現するには、例えば、圧電振動子13をその固有振動数で振動させ、その振動が3秒〜4秒程度の間に振幅の増減を複数回繰り返した後に消滅するように制御すればよい(図5の「ローリング」の波形データを参照)。
【0031】
胎児の鼓動を表現するには、例えば、圧電振動子13をその固有振動数で0.3〜0.4秒振動させ、これを1分間に130〜160回程度繰り返すように制御すれば良いが、リアリティを高めるためには、実際の胎児の鼓動(胎児の心拍数は妊娠週によって変動するが、平均的には1分間に110〜160回程度)を参考にして周波数、振幅及び時間の組み合わせからなる波形データを作成すればよい(図5の「早い鼓動」と「遅い鼓動」の波形データを参照)。
【0032】
「詰袋7」
上記詰袋7は、上述のように上記振動発生装置5とともに上記胎児人形2の内部に収容されるものであって、その目的とするところは、上記胎児人形2に実際の胎児の体重に相応した重さを与えることと、上記振動発生装置5の上記圧電振動子13から発生される振動を効率よく上記胎児人形2に拡散伝達させることで該振動により疑似的に表現される胎児の胎動にリアリティをもたせる点にある。係る観点から、上記詰袋7内には、硬質粒状物として、例えば、石、アルミニウム、鉄、銅等で構成された、比重1〜10程度、直径5〜20mm程度の粒体が多数収容されている。
【0033】
そして、上記詰袋7を上記振動発生装置5とともに上記胎児人形2の内部に収容すると、上記振動発生装置5の上記圧電振動子13から発生される振動が、上記詰袋7内に収容された多数の硬質粒状物において乱反射して周囲に分散され、これによって、該振動により疑似的に表現される胎児の胎動が、より本物らしく感じられるものとなる。
【0034】
「センサ6」
上記センサ6は、単体のセンサを指すものではなく、例えば、上記模擬子宮袋1とか上記胎児人形2に設けられた温度センサ、加速度センサ、圧力センサ等の複数のセンサを総称したものであって、これら各センサにおいて取得された情報に基づいて、例えば、上記模擬子宮袋1に触れている人の手の動きをセンシングし、そのセンシングデータを後述する送受信用端末機8に出力する。
【0035】
「送受信用端末機8」
上記送受信用端末機8は、上記妊婦疑似体感装置Zの使用者(即ち、体感者)の手元にあって、各種の入力信号を受けて、上記振動発生装置5の制御手段11に振動に関するコマンドを出力するとともに、該コマンドに対応した胎児の動作を表現したアニメーションを表示画面に再生するものであって、係る作業を遂行するための専用のアプリケーションを内蔵している。
【0036】
具体的には、図9に示すように、上記送受信用端末機8の画面にはメニュー項目欄8aと、イベント項目欄8bが設定されている。上記メニュー項目欄8aには、例えば、「鼓動を感じてみよう」、「胎動を感じてみよう」及び「胎児と遊ぼう」という三個のメニューボタンが表示されるように設定されており、体感者はこれらのメニューボタンの何れかを選択する。このメニューボタンの何れかが選択されると、上記イベント項目欄8bには、該メニューボタンに対応したイベントボタンが表示されるので、使用者40は表示されたイベントボタンの中から何れかを選択する。
【0037】
このようにメニューボタンとイベントボタンが選択されると、上記送受信用端末機8から上記制御手段11に、選択されたメニューとイベントに対応するコマンド信号が出力され、該制御手段11からの制御信号を受けて上記圧電振動子13が振動し、所要の振動を発生し、これが上記胎児人形2に伝達される。したがって、体感者は、上記胎児人形2の振動を胎児の鼓動あるいは胎動として体感することができる。また、これと並行して、上記コマンドに対応する胎児の動作を表現したアニメーションが、上記送受信用端末機8の画面において再生される。
【0038】
ここで、上記送受信用端末機8におけるメニュー項目とイベント項目の組み合わせの一例を示す。
(1) メニュー項目「鼓動を感じてみよう」については、「びっくり」(胎児の早い時の鼓動)と「リラックス」(胎児の平常時の鼓動)等のイベントメニューが設定されている。
(2) メニュー項目「胎動を感じてみよう」については、例えば、「キッキング」(胎児が子宮内を蹴ったときの胎動の再現)、「ローリング」(胎児が子宮内で寝返りを打つ等の動きをした時の胎動の再現)等のイベントメニューが設定されている。
(3) メニュー項目「胎児と遊ぼう」については、例えば、「キックゲーム」、「あやす」、「くすぐる」等の胎児とお母さんとのコミュニケーションの遊びに関するイベントメニューが設定されている。
【0039】
なお、上記送受信用端末機8は、上記センサ6から出力されるセンシングデータ等を受信する必要がない場合には、送信機能だけを備えた送信用端末機(図示せず)によって代替することができる。
【0040】
「上記模擬子宮袋1への胎児人形2等の収容」
上述のように、上記模擬子宮袋1内には、上記胎児人形2,模擬胎盤袋3及びケーブル4等が収容されるが、この場合の収容方法を図6及び図7に基づいて説明する。
【0041】
上記模擬子宮袋1は、その上端が開口した扁平袋体とされ、その上端開口部分を通して上記胎児人形2、模擬胎盤袋3等が収容され、上記送受信用端末機8とともに上記妊婦疑似体感装置Zを構成する。そして、上記妊婦疑似体感装置Zを用いて妊婦疑似体感をする場合は、図8に示すように、使用者(体感者)40は、その腹部41に上記模擬子宮袋1の裏面1bを押し付けながら、該模擬子宮袋1の表面1a側を両手42,43の掌で支持した状態で、上記妊婦疑似体感装置Zを使用する。
【0042】
このような上記妊婦疑似体感装置Zの使用時形態を考慮して、上記模擬子宮袋1内に上記胎児人形2等が収容される。即ち、図6及び図7に示すように、上記胎児人形2はその頭部2aを上記模擬子宮袋1の底部側に向けた倒立姿勢で、且つ該胎児人形2の背面2bを上記模擬子宮袋1の表面1aにその内側から近接対向させた姿勢で、該模擬子宮袋1内に収納される。そして、この胎児人形2の腹側、即ち、上記模擬子宮袋1の裏面1b寄り位置に、上記ケーブル4を備えた上記模擬胎盤袋3が収容される。
【0043】
このように、上記胎児人形2の背面2bを上記模擬子宮袋1の表面1aにその内側から近接対向させることで、図8に示すように上記妊婦疑似体感装置Zを使用者40が保持した場合、上記使用者40の両手42,43の掌が上記胎児人形2の背面2b側に当接することになる。この場合、人の触覚は手の指先部分が最も高く、腹部の触覚はさほど高くないことからして、両手42,43の掌が上記胎児人形2の背面2b側に当接するようにして上記模擬子宮袋1を保持することで、上記振動発生装置5の圧電振動子13の振動を受けて上記胎児人形2が振動する場合、例えこの振動レベルが低いものであったとしても、使用者40この振動を指先によって的確に感知することができることになる。
【0044】
「妊婦疑似体感装置Zを用いた疑似体感例」
「第1の疑似体感例」
図10には、上記妊婦疑似体感装置Zを使用して行われる第1の疑似体感例に係るブロック図を示している。この第1の疑似体感例は、使用者40の手動操作を起点として、胎児の鼓動及び胎動を体感できるものである。
【0045】
即ち、この疑似体感例では、先ず使用者40が、上記送受信用端末機8(送信用端末機でもよい)において所望のメニュー項目とこれに対応する適宜のイベント項目を選択してそれぞれ入力する。すると、上記送受信用端末機8から上記振動発生装置5の制御手段11に対して、当該メニュー及びイベントに対応する振動を発生すべくコマンド信号が出力される。このコマンド信号を受けた上記制御手段11は、上記波形データ10に基づいて上記圧電振動子13に制御信号を出力し、該圧電振動子13から所定大きさの振動を発生させる。この圧電振動子13の振動を受けて上記胎児人形2が振動し、疑似的な鼓動あるいは胎動が発生するので、使用者40は上記胎児人形2を介して、胎児の鼓動あるいは胎動を体感することができる。
【0046】
また、上記送受信用端末機8は、使用者40により手動入力がなされた場合、この入力情報を専用のアプリケーションに反映させ、上記入力情報に対応する胎児の動作(例えば、キッキング動作)を該送受信用端末機8においてアニメーションとして再生する。
【0047】
なお、他の実施形態としては、図10に鎖線図示するように、上記送受信用端末機8を、該送受信用端末機8からのコマンド信号を上記制御手段11が受けたとき、該制御手段11から出力されるアニメーション再生信号に基づいて、上記コマンドに対応した胎児の動作を表現するアニメーションを再生するように構成しても良い。
【0048】
「第2の疑似体感例」
図11には、上記妊婦疑似体感装置Zを使用して行われる第2の疑似体感例に係るブロック図を示している。この第2の疑似体感例は、上記センサ6が、上記模擬子宮袋1を支持している使用者40の手の動きをセンシングし、そのデータを上記送受信用端末機8に入力することを起点として、胎児の鼓動及び胎動を体感できるものである。
【0049】
即ち、上記送受信用端末機8にセンシングデータ信号が入力されると、該送受信用端末機8では、該センシングデータに対応する動作のコマンド信号を上記振動発生装置5の制御手段11に出力する。このコマンド信号を受けた上記制御手段11は、上記波形データ10に基づいて上記圧電振動子13に制御信号を出力し、該圧電振動子13から所定大きさの振動を発生させる。この圧電振動子13の振動を受けて上記胎児人形2が振動し、疑似的な鼓動あるいは胎動が発生するので、使用者40は上記胎児人形2を介して、胎児の鼓動あるいは胎動を体感することができる。
【0050】
一方、上記送受信用端末機8は、入力されたセンシングデータ信号を専用のアプリケーションに反映させ、該センシングデータ信号に対応する動作(例えば、キッキング動作)を該送受信用端末機8においてアニメーションとして再生する。
【0051】
「第3の疑似体感例」
図12には、上記妊婦疑似体感装置Zを使用して行われる第3の疑似体感例に係るブロック図を示している。この第3の疑似体感例は、使用者40が上記送受信用端末機8(送信用端末機でもよい)に話しかけることを起点として、胎児の鼓動及び胎動を体感できるとともに、胎児と遊ぶことができるものである。
【0052】
即ち、上記送受信用端末機8に音声信号が入力されると、該送受信用端末機8では、この音声信号に対応する動作のコマンド信号を上記振動発生装置5の制御手段11に出力する。このコマンド信号を受けた上記制御手段11は、上記波形データ10に基づいて上記圧電振動子13に制御信号を出力し、該圧電振動子13から所定大きさの振動を発生させる。この圧電振動子13の振動を受けて上記胎児人形2が振動し、疑似的な鼓動あるいは胎動が発生するので、使用者40は上記胎児人形2を介して、胎児の鼓動あるいは胎動を体感することができる。
【0053】
一方、上記送受信用端末機8は、入力された音声信号を専用のアプリケーションに反映させ、該音声信号に対応する動作(例えば、キックゲームに係る動作)を該送受信用端末機8においてアニメーションとして再生する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本願発明に係る妊婦疑似体感装置は、助産師、看護師等の妊娠・出産に関わる専門職の人等に対する妊娠・出産に係る講習等における教材等として利用されるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 ・・模擬子宮袋
2 ・・胎児人形
3 ・・模擬胎盤袋
4 ・・ケーブル
5 ・・振動発生装置
6 ・・センサ
7 ・・詰袋
8 ・・送受信用端末機
9 ・・綿材
11 ・・制御手段
12 ・・ハーネス
13 ・・圧電振動子
14 ・・圧電振動板
15 ・・弾性板材
16 ・・圧電素子
17 ・・錘
18 ・・支持台
40 ・・使用者
Z ・・妊婦疑似体感装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12