特許第6453013号(P6453013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453013
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】紫外線硬化型インクジェット用インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20190107BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20190107BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   C09D11/30
   B41M5/00 120
   B41J2/01 501
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-198951(P2014-198951)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-69478(P2016-69478A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河村 明広
【審査官】 南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143974(JP,A)
【文献】 特開2000−086713(JP,A)
【文献】 特開2010−195904(JP,A)
【文献】 特開2009−096910(JP,A)
【文献】 特開2012−188612(JP,A)
【文献】 特表2004−536925(JP,A)
【文献】 特開2013−018842(JP,A)
【文献】 特開2010−143982(JP,A)
【文献】 特開2009−035650(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143738(WO,A1)
【文献】 特開2013−159707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
B41J 2/01
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I)で表される化合物と、アミン変性アクリレート類と、光重合開始剤を少なくとも含有する紫外線硬化型インクジェット用インクであって、下記化学式(I)で表される化合物をインク全量に対し5〜20重量%、アミン変性アクリレート類をインク全量に対して5〜20重量%、含有しており、前記化学式(I)で表される化合物が、l+m+n=〜10を満たすカプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートであることを特徴とする、紫外線硬化型インクジェット用インク。
【化1】
【請求項2】
前記アミン変性アクリレート類が、アミン変性ジアクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク。
【請求項3】
さらに単官能アクリレートモノマーがインク全量に対し50〜80重量%含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク。
【請求項4】
前記単官能アクリレートモノマーとして、テトラヒドロフルフリルアクリレート、(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキサノールアクリレートのうちの、少なくとも1つを含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク。
【請求項5】
前記単官能アクリレートモノマーとして、(A)テトラヒドロフルフリルアクリレートおよび/または(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートと、(B)イソボルニルアクリレートおよび/または4−tert−ブチルシクロヘキサノールアクリレートを含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク。
【請求項6】
前記(A)および(B)の相対含有比率が、(A):(B)=3:1〜1:1であることを特徴とする、請求項5に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの硬化膜が高い要求性能を満たし、かつ加工性に優れたインク硬化膜の形成が可能な紫外線硬化型インクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット方式による加飾が様々な基材に対し検討されており、例えば窯業サイディングや塩ビシート、フィルムなど、多種多様な基材での実用化が実現されている。
【0003】
しかしながら、この場合、用いる紫外線硬化型インクは、用いる基材や、製品の使用目的および使用環境などを考慮してその都度設計されることが多く、汎用性の低いものであった。そのため、さまざまな基材や使用目的で利用可能な高い汎用性を有するインクの開発が求められている。
【0004】
紫外線硬化型インクの汎用性を向上させるための課題に、加工性と高い要求性能(具体的には、密着性、硬度(硬質性)、タック性(低タック性)、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、耐劣化性)との両立があげられる。加工性はインク硬化膜の柔軟性に比例し、柔軟性が高いほど、加工性は向上する。しかしながら、インク硬化膜の柔軟性が高くなると、一般にはインク硬化膜の硬度は低下する傾向にあり、タック性は高くなる傾向にある。また一方で、硬度やタック性などを重視した場合には、インク硬化膜は柔軟性に劣るものとなり、加工時にインク硬化膜が割れるなど、加工性を満足することができなかった。
【0005】
このように、加工性と高い要求性能との両立を実現した紫外線硬化型インクは、未だ実用化されていないのが現状である。
【0006】
また、上述した加工性と高い要求性能との両立を強く求められている基材として、プレコートメタルがあげられる。プレコートメタルとは、あらかじめ塗装がされた鋼板である。プレコートメタルは加工して組み立てられることにより最終製品となるため、加工性が求められる。また、プレコートメタルに対する要求性能は他の基材と比較すると非常に高い基準で設定されている。
【0007】
プレコートメタルの製造におけるインクジェット方式による加飾自体はすでに提案されている。例えば特許文献1には、水酸基を有するポリエステル樹脂および/またはエポキシ樹脂からなる架橋性樹脂、熱可塑性樹脂、およびアミノ樹脂および/またはブロック化ポリイソシアネート化合物からなる架橋剤を含有し、固形分質量で計算して該架橋性樹脂と該架橋剤との合計量対熱可塑性樹脂の比率が97対3〜70対30である下塗塗料を金属板の表面に塗布して下塗層を形成し、その後、着色インクを用いてインクジェットプリンターにより該下塗層上に部分的にまたは全面に柄模様を設け、乾燥せしめることからなるプレコートメタルの製造方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法は、下塗塗料として特定のものを使用することにより、後から付与する着色インクの意匠性等を向上させるというものであり、本件の目的とは異なるものである。
【0009】
また、プレコートメタルへの加飾、すなわちプレコートメタルの有する塗装面への加飾も現在検討されているが、加飾層にもプレコートメタル同様の加工性および要求性能が求められることから、その実現は非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−188309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、これらの現状に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、プレコートメタルをはじめ様々な基材への適用が可能であり、インクの硬化膜が高い要求性能(具体的には、密着性、硬度(硬質性)、タック性(低タック性)、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、耐劣化性)を満たし、かつ加工性に優れたインク硬化膜の形成が可能な紫外線硬化型インクジェット用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)下記化学式(I)で表される化合物と、アミン変性アクリレート類と、光重合開始剤を少なくとも含有する紫外線硬化型インクジェット用インクであって、下記化学式(I)で表される化合物をインク全量に対し5〜20重量%、アミン変性アクリレート類をインク全量に対して5〜20重量%、含有しており、前記化学式(I)で表される化合物が、l+m+n=〜10を満たすカプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートであることを特徴とする、紫外線硬化型インクジェット用インクである。
【0013】
【化1】
(2)前記アミン変性アクリレート類が、アミン変性ジアクリレートであることが好ましい。
)さらに単官能アクリレートモノマーがインク全量に対し50〜80重量%含有されていることが好ましい。
)前記単官能アクリレートモノマーとして、テトラヒドロフルフリルアクリレート、(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキサノールアクリレートのうちの、少なくとも1つを含有することが好ましい。
)前記単官能アクリレートモノマーとして、(A)テトラヒドロフルフリルアクリレートおよび/または(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートと、(B)イソボルニルアクリレートおよび/または4−tert−ブチルシクロヘキサノールアクリレートを含有することが好ましい。
)前記(A)および(B)の相対含有比率が、(A):(B)=3:1〜1:1であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、プレコートメタルをはじめ様々な基材への適用が可能であり、インクの硬化膜が高い要求性能(具体的には、密着性、硬度(硬質性)、タック性(低タック性)、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、耐劣化性)を満たし、かつ加工性に優れたインク硬化膜の形成が可能な紫外線硬化型インクジェット用インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクについて、詳細に説明する。本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクは、化学式(I)で表される化合物と、アミン変性アクリレート類と、光重合開始剤を少なくとも含有する。以下、それぞれの構成について説明する。
【0016】
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクに含まれる化合物は、下記化学式(I)によって表される。
【0017】
【化2】
前記化学式(I)で表される化合物をインク中に含有することにより、インク硬化膜の加工性を保持しつつ、高い硬度や、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、耐摩耗性などの耐性を付与することが可能となる。
【0018】
前記化学式(I)で表される化合物は、l+m+n=0〜10であることが好ましく、l+m+n=1〜6が特に好ましい。上記範囲の化合物を使用することにより、インク硬化膜の硬度および加工性を共に向上させることができる。一方、前記化学式(I)で表される化合物がl+m+n=10を超えると、インク硬化膜の加工性は向上するものの、硬度や反応性は低下する傾向がある。
【0019】
前記化学式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートやカプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートがあげられる。なかでも、常温下において液体でありハンドリング性に優れる点で、カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートが好ましい。
【0020】
前記化学式(I)で表される化合物は、インク全量に対し5〜20重量%含まれる必要がある。含有量が5重量%未満であると、インク硬化膜の硬度が低下する傾向にあり、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、耐摩耗性などの耐性も不十分となるおそれがある。一方、含有量が20重量%を超えると、インク硬化膜の加工性が低下する傾向にある。
【0021】
また、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクには、アミン変性アクリレート類が含有される必要がある。
アミン変性アクリレート類を含有することで、アミノ基によって重合反応が促進され、硬度を高め、タック性を改善することが可能となる。
重合反応促進剤として、アミン化合物をインクに含有することは知られているが、通常のアミン化合物はインク硬化膜中に重合することなく存在するため、インク硬化膜の耐水性や耐薬品性を低下させるおそれがある。しかしながら、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクにおいては、重合反応時に、自身の有するアクリレート基によってアミン変性アクリレート類が架橋構造内に取り込まれる。これにより、アミン変性アクリレート類によるインク硬化膜の耐水性や耐薬品性の低下を抑制することができる。
また、アミン変性アクリレート類はTgが非常に低く、耐衝撃性に優れている。そのため、アミン変性アクリレート類を含有することによって、インク硬化膜に耐衝撃性を付与することも可能となる。
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクに含まれるアミン変性アクリレート類としては、例えば、分子中にアミノ基およびアクリレート基1つを有するアミン変性モノアクリレート、アミノ基およびアクリレート基2つを有するアミン変性ジアクリレート、アミノ基およびアクリレート基3つを有するアミン変性トリアクリレートなどがあげられる。
なかでも、インク硬化膜の硬質性および加工性向上に特に優れる点で、アミン変性ジアクリレートが好ましい。
【0022】
前記アミン変性アクリレート類は、インク全量に対し5〜20重量%含まれる必要がある。含有量が5重量%未満であると、アミノ基による重合反応促進が十分に得られないおそれがある。一方、含有量が20重量%を超えると、アミン変性アクリレート類が高粘度であるためにインクの粘度が高くなり、インクジェットに適したインク粘度に調整することが困難となる傾向がある。
【0023】
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクには、さらに単官能アクリレートモノマーをインク全量に対し50〜80重量%含有することが好ましい。単官能モノマーを50重量%以上含有することにより、インク硬化膜の加工性をさらに向上させることができる。また、上限を80重量%とすることで、インク硬化膜の硬度低下や耐薬品性、耐水性、耐摩耗性といった耐性を保持することができる。
【0024】
前記単官能アクリレートモノマーとしては、例えば、テトラヒドロフルフリル基、ピペリジニル基等のヘテロ環状構造を有するモノマーとシクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基等の炭化水素環状構造を有するモノマーなどがあげられる。
なかでも、テトラヒドロフルフリルアクリレート、(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキサノールアクリレートのうちの、少なくとも1つを含有することが好ましい。
テトラヒドロフルフリルアクリレートと(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートは多くの樹脂に対して溶解性が高いためにインク密着性に優れる点や、自身の粘度が低い点で好ましい。
イソボルニルアクリレートと4−tert−ブチルシクロヘキサノールアクリレートは、疎水性の剛直な構造を有するため、単官能アクリレートモノマーの中でもインク硬化膜の硬度が高い点や、耐水性低下が生じにくい点、自身の粘度が低い点で好ましい。
【0025】
さらに、前記単官能アクリレートモノマーとして、(A)テトラヒドロフルフリルアクリレートおよび/または(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートと、(B)イソボルニルアクリレートおよび/または4−tert−ブチルシクロヘキサノールアクリレートを含有することが好ましい。これによって、インク硬化膜の密着性と、硬度や耐水性との両立性が向上する。
【0026】
前記(A)および(B)の相対含有比率は、(A):(B)=3:1〜1:1であることが好ましい。上記比率よりも(A)が多くなる場合は、硬度や耐水性が低下する傾向がある。一方、上記比率よりも(B)が多くなる場合は、密着性が低下する傾向がある。
【0027】
本実施形態においては、前記アクリレートモノマー以外に、インク硬化膜に大きく影響しない範囲で、反応性モノマーや反応性オリゴマーなどを添加することができる。
【0028】
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクに含まれる光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系、チオキサントン系、ベンゾフェノン系、ケタール系、アセトフェノン系があげられ、これらを1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
前記光重合開始剤の含有量は、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク全量に対して3〜15重量%であることが好ましく、5〜12重量%であることがより好ましい。含有量が3重量%未満であると、重合が十分に進まず未硬化となるおそれがある。一方、含有量が15重量%を超えてもそれ以上の硬化率や硬化スピードの向上が期待できず、コスト高となる。
【0030】
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクには、必要に応じて着色剤を添加してもよい。
前記着色剤としては特に限定するものではないが、耐候性や耐光性の観点から顔料を使用することが好ましく、有機、無機を問わず任意のものが選択可能である。
【0031】
有機顔料としては、たとえばニトロソ類、染付レーキ類、アゾレーキ類、不溶性アゾ類、モノアゾ類、ジスアゾ類、縮合アゾ類、ベンゾイミダゾロン類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、アゾメチン類、ピロロピロール類などがあげられる。
【0032】
無機顔料としては、酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉類などがあげられる。
【0033】
また、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インクには、必要に応じて、分散剤を添加してもよい。
前記分散剤としては、高分子タイプのものが好ましく、さらには、末端に酸性吸着基や塩基性吸着基を持つものが好ましい。
分散剤の添加量は、添加する着色剤の重量に対して1〜100重量%であることが好ましく10〜50重量%であることがより好ましい。1重量%未満では十分な分散効果が得られないおそれがある。一方、100重量%を超えるとインクの粘度が上昇して、インクジェットでの吐出の際に吐出不良となるおそれがある。
【0034】
その他、前記紫外線硬化型インクジェット用インクには、添加剤として、例えば光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、浸透剤、スリップ剤などを添加することも可能である。
【0035】
前記紫外線硬化型インクジェット用インクは、60℃条件下における粘度が5〜20cpsであることが好ましく、さらには10〜15cpsであることが好ましい。粘度が5cps未満または20cpsを超えると、インクジェット加飾時に吐出不良となるおそれがある。
【0036】
前記紫外線硬化型インクジェット用インクは、公知のインクジェット加飾装置にて付与することができる。インクジェット加飾装置としては、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式等の連続方式、ピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電吸引方式等のオンデマンド方式などがあげられ、いずれも採用可能である。
【実施例】
【0037】
本発明について、実施例をあげて説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
下記処方に従い、各材料をミキサーにて混合、ろ過することにより、実施例1の紫外線硬化型インクジェット用インクを得た。

<紫外線硬化型インクジェット用インク処方>
IRGALITE BLUE GLNF 2重量%
(チバスペシャルティケミカルズ(株)製 銅フタロシアニン;顔料)
フローレンDOPA−33 1重量%
(共栄社化学(株)製 分散剤 変性アクリル系共重合物)
A9300−1CL 10重量%
(新中村化学工業(株)製 カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート;化学式(I)l+m+n=1で表される化合物)
EBECRYL7100 15重量%
(ダイセル・オルネクス(株)製 アミン変性ヘキサンジオールジアクリレート;アミン変性アクリレート類)
ビスコートV#150 40重量%
(大阪有機化学工業(株)製 (テトラヒドロフルフリルアクリレート;単官能アクリレートモノマー)
IBXA 22重量%
(共栄社化学(株)製 イソボルニルアクリレート;単官能アクリレートモノマー)
Irgcure184 5重量%
(BASFジャパン(株)製 1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン;光重合開始剤)
Irgcure819 5重量%
(BASFジャパン(株)製 2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド;光重合開始剤)
【0039】
[実施例2]
インク処方について、実施例1にて用いた「A9300−1CL 10重量%」にかわって、A9300−3CL 10重量%(新中村化学工業(株)製 カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート;化学式(I)l+m+n=3で表される化合物)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の紫外線硬化型インクジェット用インクを得た。
【0040】
[実施例3]
インク処方について、実施例1にて用いた「A9300−1CL 10重量%」にかわって、A9300−6CL 10重量%(新中村化学工業(株)製 カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート;化学式(I)l+m+n=6で表される化合物)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の紫外線硬化型インクジェット用インクを得た。
【0041】
[実施例4〜7]
各インク処方を、表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4〜7の紫外線硬化型インクジェット用インクを得た。
【0042】
[比較例1〜2]
各インク処方を、表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜2の紫外線硬化型インクジェット用インクを得た。
【0043】
[評価に使用するインクジェット加飾物の作製]
各実施例および比較例の紫外線硬化型インクジェット用インクを用いてインクジェット加飾を行い、インクジェット加飾物を作製した。このとき使用した基材およびインクジェット加飾条件を下記に示す。

<基材作成条件>
鋼板 SPCC−ダル鋼板
前処理 リン酸亜鉛化成被膜処理
塗料 イノバックPCMシリーズノンブロックタイプ
(神東塗料(株)製 ポリエルテル樹脂系粉体塗料)
膜厚 50μm
焼き付け条件 240℃×2分

<付与条件>
ヘッド加熱温度 50℃
ノズル径 40μm
印加電圧 85V
パルス幅 10μs
駆動周波数 15kHz
解像度 400×800dpi
インク付与量 20g/m
柄 5mm×5mm格子柄

<硬化条件>
ランプ種類 メタルハライドランプ
出力 120W/cm
照射時間 0.3秒×8回照射
照射高さ 3mm

このとき365nmにおけるピーク照度は、400mW/cm、積算光量900mJ/cmであった。
【0044】
[評価:インク密着性]
作製した各インクジェット加飾物に対し、JIS K5600−5−6に準じ、100マスの碁盤目状クロスカット(1mm幅)を行い、テープ剥離にて剥がれなかったマス数によって、インクの密着性を下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。(△以上を合格とした。)

○:100マス
△:95〜99マス
×:94マス以下
【0045】
[評価:加工性]
作製した各インクジェット加飾物に対し、屈曲試験機を使用して屈曲試験(180度曲げ)を行い、そのときのT数を測定した。なお、T数とは、180度曲げにより形成したU字型の隙間に入れることのできる、試験基材と同じ厚みの基材の枚数をさす。次いで、得られた結果より、下記基準に従い、各インクジェット加飾物の加工性を評価した。評価結果およびT数を表1に示す。(△以上を合格とした。)

○:0T〜1T
△:2T
×:3T以上
【0046】
[評価:硬度]
JIS K5600−5−4に準じて、作製した各インクジェット加飾物の表面に対する鉛筆硬度を測定した。次いで、得られた結果より、下記基準に従い、各インクジェット加飾物の硬度を評価した。評価結果およびキズがついた時の鉛筆硬度を表1に示す。(△以上を合格とした。)

○:2Hでもキズがつかない
△:H〜2Hでキズがつく
×:Fでキズがつく
【0047】
[評価:タック性]
作製した各インクジェット加飾物の表面に対し、指触試験を行った。その結果を、下記評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。

○:加飾部分にタックを感じない
×:加飾部分にタックを感じる
【0048】
[評価:耐薬品性]
作製した各インクジェット加飾物の表面に対し、IPAを用いたワイピングを30往復行い、インクジェット加飾物表面の膨潤や白化・色移りについて観察した。次いで、結果を下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。

○:膨潤や白化・色移りがない
×:膨潤や白化・色移りが確認できる
【0049】
[評価:耐水性(耐沸騰水性)]
作製した各インクジェット加飾物を、沸騰水に2時間浸漬させ、インクジェット加飾物表面の膨潤や白化について観察した。次いで、結果を下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。

○:膨潤や白化がない
×:膨潤や白化が確認できる
【0050】
[評価:耐衝撃性1]
作製した各インクジェット加飾物に対して、JIS K5600−5−3に準じ、デュポン式衝撃試験機(R=1/2インチ(12.70mm)、重り500g、高さ50cm)を用いて衝撃試験を行い、試験を実施したインクジェット加飾物表面(塗膜)を、ルーペおよび肉眼にて観察した。次いで、結果を下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。(△以上を合格とした。)

○:塗膜に割れが発生していない
△:ルーペで確認可能なレベルの割れが確認できる
×:肉眼で確認可能なレベルの割れが確認できる
【0051】
[評価:耐衝撃性2]
耐水性(耐沸騰水性)試験を実施した後の各インクジェット加飾物に対して、耐衝撃性評価と同様の衝撃試験を行い、試験を実施したインクジェット加飾物表面(塗膜)を、ルーペおよび肉眼にて観察した。評価結果を表1に示す。(△以上を合格とした。)

○:塗膜に割れが発生していない
△:ルーペで確認可能なレベルの割れが確認できる
×:肉眼で確認可能なレベルの割れが確認できる
【0052】
[評価:耐劣化性]
耐衝撃性評価1および2で得られた結果から、下記基準に従い、インクジェット加飾物表面の耐劣化性について評価した。評価結果を表1に示す。(△以上を合格とした。)

○:耐衝撃性評価2において、耐衝撃性評価1とほぼ同じ程度の結果が得られた
△:耐衝撃性評価2において、耐衝撃性評価1よりわずかに劣る結果が得られた
×:耐衝撃性評価2において、耐衝撃性評価1より明らかに劣る結果が得られた
【0053】
表1に示すように、実施例1〜5の紫外線硬化型インクジェット用インクを用いたインクジェット加飾物は、いずれも、加工性に優れ、かつ、高い要求性能(インク密着性、硬度(硬質性)、タック性(低タック性)、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、耐劣化性)に対しても、基準を満足させるものであった。
一方、比較例1および2の紫外線硬化型インクジェット用インクを用いたインクジェット加飾物は、いずれも、加工性と高い要求性能(インク密着性、硬度(硬質性)、タック性(低タック性)、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、耐劣化性)との両立性を満足させるものではなかった。
【0054】
【表1】