(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のウインドレギュレータにおいて、上記突出部の少なくとも一部が、上記ワイヤエンド係止部を上記ワイヤの他端側に延長した幅の範囲内に位置しているウインドレギュレータ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1ないし
図3に示すウインドレギュレータ10は、車両のドアパネル(図示略)内に取り付けられてウインドガラス(図示略)を昇降させるものである。
図1ないし
図3中に矢線で示す上方と下方が車両における上下方向に対応している。また、
図3にはウインドレギュレータ10を車両のドアに取り付けた状態での車外側と車内側の向きを矢線で示している。ウインドレギュレータ10は長尺部材であるガイドレール11を有し、ガイドレール11は長手方向に位置を異ならせて設けたブラケット12,13を介してドアパネル(インナパネル)に固定される。この固定状態でガイドレール11はその長手方向を概ね上下方向に向けて配される。以下の説明における幅方向は、
図1と
図2に表されたガイドレール11の幅方向を意味する。
【0013】
ウインドガラスを支持するスライダベース14(ガラスキャリア)がガイドレール11の長手方向に沿って移動可能に支持されている。スライダベース14には一対のワイヤ15,16(
図2)のそれぞれの一端が接続されている。ワイヤ15はスライダベース14からガイドレール11に沿って上方に延び、ガイドレール11の上端付近に設けたガイドプーリ17に案内される。ガイドプーリ17は軸17aを中心として回転可能であり、外周面上に形成したワイヤガイド溝によってワイヤ15を支持する。ワイヤ16はスライダベース14からガイドレール11に沿って下方に延び、ガイドレール11の下端付近に設けたガイドピース18に案内される。ガイドピース18はガイドレール11に対して固定されており、ガイドピース18に形成したワイヤガイド溝に沿って進退可能にワイヤ16が支持される。
【0014】
ガイドプーリ17とガイドピース18から出たワイヤ15,16は、ガイドチューブ21,22内に挿通され、ガイドチューブ21,22が接続されるドラムハウジング20内に設けた巻取ドラムに巻回される。ドラムハウジング20はドアパネル(インナパネル)に固定されている。巻取ドラムはモータ25によって回転駆動される。巻取ドラムが正逆に回転すると、ワイヤ15,16の一方が巻取ドラムへの巻回量を大きくし、他方が巻取ドラムから繰り出されて、この一対のワイヤ15,16の牽引と弛緩の関係によってスライダベース14がガイドレール11に沿って移動する。スライダベース14の移動に応じてウインドガラスが昇降する。
【0015】
図4ないし
図7に示すように、スライダベース14は、合成樹脂製の本体部材30と、金属製の支持部材50を組み合わせて構成されている。
図8ないし
図10は本体部材30を単体で示したものであり、
図11ないし
図13は支持部材50を単体で示したものである。
【0016】
本体部材30は、上下方向(ガイドレール11の長手方向)に位置を異ならせて一対のガイド部31,32を有し、ガイド部31,32がガイドレール11に対して摺動可能に支持される。より詳しくは、ガイドレール11は、板状部11aの両側に一対の側壁11bを有し、各側壁11bからフランジ11cを側方に突出させたハット状の断面形状を有しており(
図1ないし
図3参照)、ガイド部31,32はそれぞれ、ガイドレール11の片側の側壁11bとフランジ11cに嵌る溝部31a,32a(
図4、
図8)を有している。本体部材30は、この片側の側壁11bとフランジ11cに対して溝部31a,32aの内面を摺接させながら、ガイドレール11の長手方向に移動することができる。ガイド部31,32は、ガイドレール11の幅方向には移動が規制されている。
【0017】
ガイド部31,32はそれぞれ、ガイドレール11の幅方向に離間する略平行な一対の側面31b,32bを両側に有する凸部である。各側面31b,32bはガイドレール11の長手方向に延びる面となっている。ガイド部31の片側の側面31bに抜け止め突起41が突設され、ガイド部32の片側の側面32bに抜け止め突起42が突設されている。
【0018】
本体部材30は、上下方向においてガイド部31とガイド部32の間に位置する一対のワイヤガイド溝33,34を有している(
図10)。ワイヤガイド溝33,34はそれぞれ本体部材30の一方の側部に開口するワイヤ導入口33a,34aを有し、本体部材30の他方の側部にワイヤエンド収納部35,36が形成されている。ワイヤガイド溝33はワイヤ導入口33aとワイヤエンド収納部35を連通する溝部である。ワイヤ導入口33aはワイヤエンド収納部35よりも上方に位置しており、ワイヤガイド溝33はワイヤ導入口33aからワイヤエンド収納部35に向けて斜め下方に延びている。ワイヤガイド溝34はワイヤ導入口34aとワイヤエンド収納部36を連通する溝部である。ワイヤ導入口34aはワイヤエンド収納部36よりも下方に位置しており、ワイヤガイド溝34はワイヤ導入口34aからワイヤエンド収納部36に向けて斜め上方に延びている。
図10のように本体部材30を平面視すると、ワイヤガイド溝33とワイヤガイド溝34が互いにワイヤ導入口33aとワイヤ導入口34aの近傍の交差部45で交差する関係になっている。この交差部45でワイヤガイド溝33とワイヤガイド溝34は本体部材30の厚み方向に位置を異ならせている。
【0019】
ワイヤエンド収納部35,36はそれぞれワイヤガイド溝33,34よりも幅広の凹部である。ワイヤエンド収納部35はワイヤガイド溝33の延長上に位置して本体部材30の側部から斜め下方に突出しており、ワイヤエンド収納部36はワイヤガイド溝34の延長上に位置して本体部材30の側部から斜め上方に突出している。ワイヤエンド収納部35は、ワイヤガイド溝33に接続する側の端部に当接面35a(ワイヤエンド係止部)が形成され、当接面35aと反対側の端部が開放されており、この開放端部に抜け止め突起35bが設けられている。ワイヤエンド収納部36も同様に、ワイヤガイド溝34に接続する側の端部に当接面36a(ワイヤエンド係止部)が形成され、当接面36aと反対側の端部が開放されており、この開放端部に抜け止め突起36bが設けられている。
【0020】
ワイヤガイド溝33,34とワイヤエンド収納部35,36はそれぞれ、本体部材30のうち車外側(
図10で見えている側)の面に開放されている。本体部材30にはさらに、この車外側の面に凹設した差込溝37,38と、車外側の面から突出する突出部39,40が設けられている。突出部39はワイヤガイド溝33に隣接した位置に形成され、突出部40はワイヤガイド溝34に隣接した位置に形成されている。差込溝37は、ワイヤガイド溝33と交差する溝部であり、ワイヤガイド溝33の延設方向においてワイヤエンド収納部35と突出部39の間に位置している。差込溝37内には、当接面35aと同じ方向を向く被押圧面(被押圧部)43が形成されている(
図7、
図10)。差込溝38は、ワイヤガイド溝34と交差する溝部であり、ワイヤガイド溝34の延設方向においてワイヤエンド収納部36と突出部40の間に位置している。差込溝38内には、当接面35aと同じ方向を向く被押圧面(被押圧部)44が形成されている(
図10)。ワイヤエンド収納部35と差込溝37はそれぞれワイヤガイド溝33の溝幅よりも広い幅を有しており、突出部39は、ワイヤエンド収納部35と差込溝37をワイヤガイド溝33に沿う方向に延長した幅の範囲内に位置している。ワイヤエンド収納部36と差込溝38はそれぞれワイヤガイド溝34の溝幅よりも広い幅を有しており、突出部40は、ワイヤエンド収納部36と差込溝38をワイヤガイド溝34に沿う方向に延長した幅の範囲内に位置している。
【0021】
本体部材30にはさらに、交差部45の下方に嵌合孔46(嵌合部)が形成され、交差部45の上方に嵌合孔47(嵌合部)が形成されている。嵌合孔46,47は、本体部材30のうち車外側の面に凹設された略円形の有底孔である。
【0022】
支持部材50は、平板状のカバー部51と、カバー部51の両側に位置するガラス取付部52,53とを有する。ガラス取付部52とガラス取付部53は図示を省略する締結手段を用いてウインドガラスに固定される。カバー部51には、対をなす第1挟持片54,55と、対をなす第2挟持片56,57が形成されている。第1挟持片54,55は、カバー部51の上端側と下端側に分けて配置され、かつカバー部51の幅方向に位置を異ならせて配置されている。第2挟持片56,57も同様に、カバー部51の上端側と下端側に分けて配置され、かつカバー部51の幅方向に位置を異ならせて配置されている。より詳しくは、第1挟持片54と第2挟持片56は、カバー部51の上端側に設けられて幅方向に対向する位置関係となっている。第1挟持片55と第2挟持片57は、カバー部51の下端側に設けられて幅方向に対向する位置関係となっている。また第1挟持片54と第2挟持片57は、カバー部51の幅方向においてガラス取付部52に近い位置に設けられ、第1挟持片55と第2挟持片56は、カバー部51の幅方向においてガラス取付部53に近い位置に設けられている。従って
図11や
図13のように支持部材50を平面視した状態で、第1挟持片54,55を結ぶ直線と、第2挟持片56,57を結ぶ直線が互いに交差する関係となる。第1挟持片54,55と第2挟持片56,57はいずれも、カバー部51に対して車内側に向けて曲げられた曲げ部の一部として形成されている。第1挟持片54,55と第2挟持片56については、カバー部51に対して略直角に曲げられた基端曲げ部54a,55a,56aに対して、カバー部51の内側(第1挟持片54と第2挟持片56では下側、第1挟持片55では上側)に向けて略直角に曲げた形態となっている。これに対して第2挟持片57は、カバー部51に対して略直角に曲げられた基端曲げ部57aに対して、カバー部51の外側(下側)に向けて略直角に曲げた形態になっている。
【0023】
支持部材50にはさらに、対をなすワイヤエンド抜け止め片58,59が上下方向に位置を異ならせて形成されている。
図12に示すように、各ワイヤエンド抜け止め片58,59は、カバー部51の一部を車内側に向けて切り起こして形成され、その先端部分にワイヤ挿通溝58a,59aを有する二股状の突出部である。カバー部51には、ワイヤエンド抜け止め片58,59を形成する際の切り起こしによって係合孔60,61が形成されている。係合孔60と係合孔61は、支持部材50の幅方向においてガラス取付部53側からガラス取付部52側に進むにつれて互いの上下方向間隔を小さくするように傾斜した孔である。
図11ないし
図13に示すように、係合孔60,61の近傍に嵌合突起62,63(嵌合部)が形成されている。嵌合突起62,63は円筒状の突起であり、ワイヤエンド抜け止め片58,59と同様に車内側に向けて突出している。
【0024】
本体部材30と支持部材50を組み合わせる前に、ワイヤ15とワイヤ16が本体部材30に組み付けられる。
図7に示すように、ワイヤ15の端部にはワイヤ15よりも大径のワイヤエンド70が設けられる。前述のように、ワイヤガイド溝33とワイヤエンド収納部35は本体部材30の車外側の面に開放されており、ワイヤ15とワイヤエンド70はそれぞれ開放されている車外側からワイヤガイド溝33とワイヤエンド収納部35に挿入される。
図7に示すように、ワイヤエンド収納部35に挿入したワイヤエンド70の鍔部と当接面35aとの間に圧縮バネ71が挿入される。ワイヤ15と同様にしてワイヤ16はワイヤガイド溝34に挿入される。ワイヤガイド溝34の端部には大径のワイヤエンド72(
図5に一部を示す)が設けられ、ワイヤエンド72がワイヤエンド収納部36に挿入される。ワイヤエンド72の鍔部と当接面36aの間に圧縮バネ(図示略)が挿入される。ワイヤガイド溝33内に挿入されたワイヤ15とワイヤガイド溝34内に挿入されたワイヤ16はそれぞれ、ワイヤガイド溝33とワイヤガイド溝34が交差する交差部45を通り、ワイヤ導入口33aとワイヤ導入口34aを通して本体部材30の外側に引き出される。交差部45においてワイヤガイド溝33とワイヤガイド溝34は本体部材30の厚み方向に位置を異ならせているので、交差部45ではワイヤ15とワイヤ16が互いに干渉しない。
【0025】
以上のワイヤ15とワイヤ16の組み付けに際して、各ワイヤ15,16にテンションがかかっていない状態ではワイヤエンド70とワイヤエンド72がそれぞれ対応するワイヤエンド収納部35,36内で当接面35a,36a側に押し付けられていない。抜け止め突起35bと抜け止め突起36bは、この状態でのワイヤエンド収納部35,36からの各ワイヤエンド70,72の脱落を防ぐ。
【0026】
支持部材50は、第1挟持片54,55、第2挟持片56,57、ワイヤエンド抜け止め片58,59及び嵌合突起62,63が突出する側を車内側に向けて、本体部材30に対してカバー部51を車外側から被せて組み付けられる。
図4や
図6に示すように、支持部材50を本体部材30に組み付けた状態では、支持部材50に設けた第1挟持片54と第2挟持片56によって本体部材30のガイド部31の両側面31bを挟持し、第1挟持片55と第2挟持片57によってガイド部32の両側面32bを挟持する。これらの挟持によって幅方向における本体部材30と支持部材50の相対移動が規制される。また、基端曲げ部54a,55a,56a及び57aによって本体部材30の上端と下端を挟むことによって、上下方向における本体部材30と支持部材50の相対移動が規制される。このとき
図6に示すように、本体部材30の抜け止め突起41が支持部材50の第1挟持片54に係合し、本体部材30の抜け止め突起42が支持部材50の第2挟持片57に係合し、本体部材30と支持部材50がスライダベース14の厚さ方向に離間しないように結合される。より詳しくは、本体部材30に対して支持部材50を組み付ける際に、第1挟持片54が抜け止め突起41に当接すると、第1挟持片54はガラス取付部52側に向けて弾性変形して抜け止め突起41を乗り越え、第2挟持片57が抜け止め突起42に当接すると、第2挟持片57はガラス取付部52側に向けて弾性変形して抜け止め突起42を乗り越える。そして、抜け止め突起41と抜け止め突起42をそれぞれ乗り越えた後で第1挟持片54と第2挟持片57が弾性変形から復帰すると、
図6に示す係合状態となる。
【0027】
また、支持部材50を本体部材30に組み付けると、ワイヤエンド抜け止め片58が差込溝37に挿入され、ワイヤエンド抜け止め片59が差込溝38に挿入される。ワイヤエンド抜け止め片58はワイヤ15の延長上に挿入されるが、ワイヤ挿通溝58a内にワイヤ15を挿通させることでワイヤ15と干渉しない。同様に、ワイヤエンド抜け止め片59はワイヤ16の延長上に挿入されるが、ワイヤ挿通溝59a内にワイヤ16を挿通させることでワイヤ16と干渉しない。さらに、支持部材50を本体部材30に組み付けると、
図6に示すように、突出部39が係合孔60に挿入され、突出部40が係合孔61に挿入される。突出部39は係合孔60の内縁部のうちワイヤエンド抜け止め片58と反対側の部分に当接する。突出部40は係合孔61の内縁部のうちワイヤエンド抜け止め片59と反対側の部分に当接する。すなわち、突出部39は係合孔60の内縁部に対して、ワイヤエンド70の端面(ワイヤ15が接続する側の端面)が当接面35aに当接するのと同じ方向に当接し、突出部40は係合孔61の内縁部に対して、ワイヤエンド72の端面(ワイヤ16が接続する側の端面)が当接面36aに当接するのと同じ方向に当接する。また、支持部材50を本体部材30に組み付けた状態では、嵌合突起62と嵌合孔46が嵌合し、嵌合突起63と嵌合孔47が嵌合する。
【0028】
以上のように構成したスライダベース14に対して一端のワイヤエンド70を接続させたワイヤ15は、ガイドレール11に沿って上方へ延設され、ガイドプーリ17に案内されてガイドチューブ21に挿入されてドラムハウジング20内の巻取ドラムに巻回される。ウインドレギュレータ10に一端のワイヤエンド72を接続させたワイヤ16は、ガイドレール11に沿って下方へ延設され、ガイドピース18に案内されてガイドチューブ22に挿入されてドラムハウジング20内の巻取ドラムに巻回される。巻取ドラムに対する各ワイヤ15,16の巻回量を大きくするにつれて各ワイヤ15,16のテンションが強まる。テンションが強まると、各ワイヤ15,16のワイヤエンド70,72(ワイヤエンド70のうちワイヤ15が接続している側の端面、ワイヤエンド72のうちワイヤ16が接続している側の端面)が、対応するワイヤエンド収納部35,36の当接面35a,36aに押し付けられ、ワイヤエンド70,72に嵌る圧縮バネ71(ワイヤエンド72に嵌る圧縮バネは不図示)が圧縮変形される。
図7はワイヤエンド70が当接面35aに押し付けられている状態を示しており、ワイヤエンド72も同様に当接面36aに押し付けられる。
【0029】
図1ないし
図3は、ワイヤ15とワイヤ16の配索が完了し、かつガイドレール11に対してスライダベース14のガイド部31,32を摺動可能に支持させたウインドレギュレータ10の完成状態である。この完成状態でドラムハウジング20内の巻取ドラムを回転させると、その回転方向に応じてワイヤ15とワイヤ16の一方と他方が牽引及び弛緩される。牽引された側のワイヤ15,16では、ワイヤエンド70,72が対応するワイヤエンド収納部35,36の当接面35a,36aに力を伝える。ワイヤエンド70,72は当接面35a,36aとの当接によってスライダベース14に対するワイヤ15,16の他端側(巻取ドラム側)への移動が規制されるため、牽引された側の各ワイヤ15,16からスライダベース14に対して着力部F1,F2(
図10)において、ガイドレール11の長手方向へ移動させる力が作用する。着力部F1は、ワイヤ15を牽引したときに該ワイヤ15からスライダベース14の当接箇所に対して上方への牽引力が作用する箇所であり、着力部F2は、ワイヤ16を牽引したときの該ワイヤ16からスライダベース14の当接箇所に対して下方への牽引力が作用する箇所である。弛緩した側のワイヤ15,16は、圧縮バネ71(ワイヤエンド72に作用する圧縮バネは不図示)の力によってワイヤエンド70,72が当接面35a,36aから離れる方向に押圧されて弛みが除去される。
【0030】
図14ないし
図16は、ウインドガラスの上死点でのスライダベース14とガイドプーリ17の関係と、ウインドガラスの下死点でのスライダベース14とガイドピース18の関係をまとめて示したものである。これらの図から分かるように、スライダベース14におけるガイド部31やガイド部32は、ガイドレール11の幅方向においてガイドプーリ17やガイドピース18と位置を異ならせて配置されているため、スライダベース14は、ウインドガラスの上死点ではガイドプーリ17の側方まで干渉することなく移動することができ、ウインドガラスの下死点ではガイドピース18の側方まで干渉することなく移動することができる。すなわちガイドレール11の長手方向の略全体がスライダベース14の可動域となるため、ウインドレギュレータ10は小型でありながらウインドガラスの移動量(スライダベース14のストローク量)を大きくすることができる。
【0031】
以上のように構成されたウインドレギュレータ10では、各ワイヤ15,16の牽引によってスライダベース14をガイドレール11の長手方向に移動させるとき、ガイドレール11に対して摺動可能に嵌るガイド部31,32と、ワイヤ15,16から昇降方向の牽引力が作用する着力部F1,F2とがガイドレール11の幅方向に位置を異ならせているため、スライダベース14には牽引力を受けている側の着力部F1,F2を中心とする回転のモーメントが働く。ここでスライダベース14では、ガイドレール11の幅方向で、着力部F1,F2とワイヤエンド収納部35,36の間にガイド部31,32が位置している。そのため、ワイヤエンド収納部35,36やワイヤエンド70,72の配置スペースに影響を受けずに着力部F1,F2とガイド部31,32の幅方向距離を小さくすることができ、モーメントを抑制することができる。スライダベース14に働くモーメントを小さくすることで、ガイドレール11に対するガイド部31,32の摩耗を少なくし、ウインドガラス昇降時の作動効率を高めることができる。
【0032】
スライダベース14ではさらに、上下方向においてガイド部31とガイド部32の間に着力部F1,F2とワイヤエンド収納部35,36(特に当接面35a,36a)が位置している。この配置によると、上下方向の間隔が大きいガイド部31とガイド部32によってガイドレール11に対するスライダベース14の回転を抑制することができると共に、スライダベース14に対するワイヤ15,16の支持接続構造(ワイヤ15,16から昇降方向の力を受ける着力部F1,F2と、ワイヤエンド70,72を係止するワイヤエンド収納部35,36の当接面35a,36a)をガイド部31とガイド部32の間の上下方向範囲に集約して、スライダベース14を上下方向にコンパクトに構成できる。
【0033】
また、ウインドレギュレータ10のスライダベース14では、ウインドガラスに対して金属製の支持部材50を固定し、合成樹脂製の本体部材30は、ウインドガラスに対して直接に固定せずに支持部材50を介して間接的にウインドガラスと結合されている。そのため、ウインドガラスに対して働く力を剛性の高い支持部材50を受けて、本体部材30への応力の集中を防ぐことができる。本体部材30はガイドレール11に対する摺動やワイヤ15,16の接続を担う部位であるため、本体部材30への応力集中による撓みや変形を防ぐことで、ウインドレギュレータ10の性能を維持できる。特に、支持部材50に設けた一対の第1挟持片54,55と一対の第2挟持片56,57とによって本体部材30のガイド部31,32を幅方向に挟持することで、
図1や
図2の左右方向(ウインドレギュレータ10を車両の側面ドアに取り付けた場合の車両の前後方向)へのウインドガラスの傾きに対するスライダベース14の回転剛性を高めることができる。
【0034】
例えば、ウインドガラスから支持部材50に対して
図1の時計方向(
図2の反時計方向)へ回転しようとする力が働いた場合、ガイド部31,32を挟んで対角に位置する第1挟持片54,55からガイド部31,32に対して押圧力が加わる。逆に、ウインドガラスから支持部材50に対して
図1の反時計方向(
図2の時計方向)へ回転しようとする力が働いた場合、ガイド部31,32を挟んで対角に位置する第2挟持片56,57からガイド部31,32に対して押圧力が加わる。ガイド部31,32は上下方向で離間した位置(スライダベース14の上端と下端)にあるため、こうした押圧力を受けたときに本体部材30に局所的な撓みや変形が生じにくく、スライダベース14の動作性能への悪影響を防ぐことができる。さらに、スライダベース14をガイドレール11に支持させた状態でガイド部31,32の溝部31a,32a内にはガイドレール11の側壁11bとフランジ11cが嵌っているため、第1挟持片54,55や第2挟持片56,57からガイド部31,32へ押圧力が作用した場合に、ガイドレール11がガイド部31,32に対する補強材として機能して高い剛性を得ることができる。
【0035】
本体部材30のガイド部31,32は、ガイドレール11に摺動可能に嵌ると共に、第1挟持片54,55と第2挟持片56,57によって挟持される。また、本体部材30のガイド部31,32に設けた抜け止め突起41,42は、支持部材50の第1挟持片54と第2挟持片57との係合によって、スライダベース14の厚さ方向への本体部材30と支持部材50の離間を規制する抜け止め部として機能する。このようにガイド部31,32と各挟持片54,55,56及び57に複合的な機能を持たせたことにより、スライダベース14における構成の簡略化が実現されている。
【0036】
図14と
図16に示すように、第1挟持片54の基端曲げ部54aはガイドプーリ17とは幅方向位置を異ならせており、ウインドガラスの上死点までスライダベース14を移動させたときに基端曲げ部54aとガイドプーリ17が干渉しない。一方、第2挟持片57の基端曲げ部57aはガイドピース18の一部と重なる幅方向位置にある。そこで、第2挟持片57については、基端曲げ部57aからの曲げ方向を第1挟持片55とは逆にして、基端曲げ部57aから先端に向かうにつれてカバー部51から離れる方向(下方)に突出させている。これにより基端曲げ部57aの位置を基端曲げ部55aよりも上方に設定して、基端曲げ部57aとガイドピース18を干渉させずにスライダベース14の下方へのストロークを大きくさせることが可能となっている。
【0037】
本実施形態のウインドレギュレータ10では、二組の第1挟持片54,55と第2挟持片56,57を備えており、この構成ではウインドガラスのいずれの方向の傾きに対しても回転剛性を高めることができるので好ましいが、一組の挟持片のみを備える構成にすることも可能である。例えば、
図1の時計方向(
図2の反時計方向)へのウインドガラスの回転に対するスライダベース14の回転剛性向上が主に求められる場合には、第2挟持片56,57を省略して第1挟持片54,55のみを設けてもよい。
【0038】
ウインドレギュレータ10でウインドガラスの昇降動作に際して巻取ドラムを回転させて各ワイヤ15,16を牽引すると、牽引された側のワイヤ15,16のワイヤエンド70,72から対応する当接面35a,36aに対して引張力が働く。例えば、ワイヤエンド70から当接面35aへの引張力は、当接面35aが形成されている本体部材30に対して、ワイヤガイド溝33に沿ってワイヤ15の他端部に向かう方向の荷重として作用する。より詳しくは、本体部材30の当接面35aに加わる荷重を支持部材50のワイヤエンド抜け止め片58で受け、ワイヤエンド抜け止め片58が被押圧面43を押圧して、本体部材30に荷重が作用する。
図6及び
図7に示すように、この荷重の作用方向には突出部39が設けられており、本体部材30への荷重を受けて突出部39が係合孔60の内縁部に押し付けられる。すると、ワイヤエンド抜け止め片58と被押圧面43の当接箇所と、突出部39と係合孔60の内縁部の当接箇所との間で、本体部材30に対する圧縮荷重が作用する。同様に、ワイヤエンド72から当接面36aへの引張力は、本体部材30に対して、ワイヤガイド溝34に沿ってワイヤ16の他端部に向かう方向の荷重として作用する。より詳しくは、本体部材30の当接面36aに加わる荷重を支持部材50のワイヤエンド抜け止め片59で受け、ワイヤエンド抜け止め片59が被押圧面44を押圧して、本体部材30に荷重が作用する。
図6に示すように、この荷重の作用方向には突出部40が設けられており、本体部材30への荷重を受けて突出部40が係合孔61の内縁部に押し付けられる。すると、ワイヤエンド抜け止め片59と被押圧面44の当接箇所と、突出部40と係合孔61の内縁部の当接箇所との間で、本体部材30に対する圧縮荷重が作用する。合成樹脂製の本体部材30は、引張荷重や剪断荷重に比して圧縮荷重に対する耐荷重性に優れるため、強い荷重が加わっても本体部材30に破損や変形が生じにくくなるという利点がある。
【0039】
本体部材30と支持部材50はさらに、交差部45を挟む上下位置に、嵌合孔46と嵌合突起62からなる嵌合部と、嵌合孔47と嵌合突起63からなる嵌合部を有している。このように交差部45を挟む上下位置で本体部材30と支持部材50を嵌合させることにより、ワイヤガイド溝33,34のワイヤ導入口33a,34aを通して配索されたワイヤ15,16が上下方向に引っ張られたときに(ワイヤ15が上方に引っ張られたときと、ワイヤ16が下方に引っ張られたときに)、本体部材30に加わる応力を支持部材50に分散させることができる。これによりスライダベース14の耐荷重性がさらに向上する。
【0040】
突出部39,40は本体部材30のうち車外側を向く面に突設した突起であり、本体部材30の成形に際して容易に形成することができる。特に本体部材30では、
図10から分かる通り、ワイヤガイド溝33,34とワイヤエンド収納部35,36と突出部39,40と嵌合孔46,47がいずれも車外側を向く面に設けられており、車外側に向けて離型する成形型によってこれらの部位を一度に形成することができる。また、係合孔60,61は、支持部材50においてワイヤエンド抜け止め片58,59を切り起こす際に同時に形成できる。従って、突出部39,40と係合孔60,61はそれぞれ生産性に優れた構成である。
【0041】
なお、図示実施形態とは凹凸の関係を逆にして、本体部材30側に係合孔60,61に相当する凹部を設け、支持部材50側に突出部39,40に相当する凸部を設けた構成を採用することもできる。同様に、本体部材30側に嵌合突起62,63に相当する凸部を設け、支持部材50側に嵌合孔46,47に相当する凹部を設けた構成を採用することもできる。
【0042】
前述のように、本体部材30と支持部材50は、突出部39,40と係合孔60,61からなる係合部に加えて、差込溝37,38とワイヤエンド抜け止め片58,59を有している。差込溝37とワイヤエンド抜け止め片58は、突出部39及び係合孔60よりもワイヤエンド収納部35に近く位置しており、差込溝38とワイヤエンド抜け止め片59は、突出部40及び係合孔61よりもワイヤエンド収納部36に近く位置している。ワイヤエンド70から当接面35aに加わる引張力を差込溝37内のワイヤエンド抜け止め片58で受け、ワイヤエンド72から当接面36aに加わる引張力を差込溝38内のワイヤエンド抜け止め片59で受け、前述した突出部39,40と係合孔60,61からなる係合部と共に、ワイヤエンド70,72から本体部材30に加わる応力をワイヤエンド抜け止め片58,59経由で支持部材50へ分散させることができる。
図6のようにスライダベース14を平面視したときのワイヤエンド抜け止め片58,59のそれぞれの幅は、ワイヤエンド70,72が当接面35a,36aに当接する箇所の幅よりも広く、応力の分散効果が高い。また、本体部材30における被押圧面43,44と突出部39,40の間の部分が圧縮荷重に対して突っ張る形態になることにより、支持部材50から片持ち状に突出しているワイヤエンド抜け止め片58,59の変形を抑制する効果も得られる。従って、本体部材30と支持部材50が相互に強度を高める関係が成立する。
【0043】
図4、
図6、
図10から分かるように、突出部39は、ワイヤエンド収納部35とワイヤエンド抜け止め片58をワイヤガイド溝33に沿ってワイヤ15の他端側に延長した幅の範囲内に位置している。同様に、突出部40は、ワイヤエンド収納部36とワイヤエンド抜け止め片59をワイヤガイド溝34に沿ってワイヤ16の他端側に延長した幅の範囲内に位置している。つまり、突出部39と係合孔60の当接箇所の全体が、ワイヤエンド70から本体部材30に対して加わる荷重の作用方向の延長上に位置し、突出部40と係合孔61の当接箇所の全体が、ワイヤエンド72から本体部材30に対して加わる荷重の作用方向の延長上に位置している。このように配置することで、突出部39,40と係合孔60,61による前述の応力分散効果を高めることができる。
【0044】
但し、本実施形態と異なり、突出部39と係合孔60の当接箇所の一部が、ワイヤエンド収納部35やワイヤエンド抜け止め片58を延長した幅の範囲内から外れる配置にしたり、突出部40と係合孔61の当接箇所の一部が、ワイヤエンド収納部36やワイヤエンド抜け止め片59を延長した幅の範囲内から外れたりする配置であっても、スライダベース14における耐荷重性の向上に関して所定の効果を得ることができる。
【0045】
図17にスライダベース14の異なる実施形態を示す。この実施形態は、ワイヤエンド70のうちワイヤ15が接続する側の端面を、本体部材30ではなく支持部材50に対して当接させている。より詳しくは、支持部材50には切り起こしによってワイヤエンド抜け止め片158が形成されており、ワイヤ15を牽引するとワイヤエンド70の端面がワイヤエンド抜け止め片158に当接する。本体部材30には、ワイヤエンド抜け止め片158のうちワイヤエンド70が当接する側と反対の面が当接する被押圧面143(被押圧部)が形成されており、ワイヤエンド70からワイヤエンド抜け止め片158へ加わる荷重が被押圧面143にも作用する。先の実施形態と同じく、この荷重の作用方向の先で突出部39が係合孔61の内縁部に当接しており、ワイヤエンド抜け止め片158と被押圧面143の当接箇所と、突出部39と係合孔60の内縁部の当接箇所との間で、本体部材30に対する圧縮荷重が作用する。これにより先の実施形態と同様の効果が得られる。図示を省略するが、他方のワイヤ16についても同様の荷重受け構造が設けられている。
【0046】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は図示した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて改良や改変が可能である。
【0047】
例えば、図示実施形態のウインドレギュレータ10は、ガイドレール11に対してスライダベース14が摺動可能に支持されるタイプであるが、本発明はガイドレールを備えないタイプのウインドレギュレータにも適用が可能である。すなわち、少なくとも、ワイヤと、該ワイヤによって牽引されてウインドガラスの昇降方向に移動するガラスキャリアと、を有するウインドレギュレータであれば適用可能である。
【0048】
図示実施形態のスライダベース14では、各ワイヤ15,16のワイヤエンド70,72を個別に係止させる2つのワイヤエンド収納部35,36を備えているが、2つのワイヤエンド70,72をまとめて係止させる共用のワイヤエンド収納部を用いることも可能である。
【0049】
また前述のように、突出部39,40と係合孔60,61の凹凸の関係を逆にした変形例や、突出部39,40と係合孔60,61の嵌合箇所の一部を、ワイヤエンド収納部35,36やワイヤエンド抜け止め片58,59を延長した幅の範囲外に位置させた変形例を採用することも可能である。
ことも可能である。