(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453152
(24)【登録日】2018年12月21日
    
      
        (45)【発行日】2019年1月16日
      
    (54)【発明の名称】バグフィルター用ろ過材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D  39/16        20060101AFI20190107BHJP        
   D04H   1/4374      20120101ALI20190107BHJP        
   D04H   1/4382      20120101ALI20190107BHJP        
   B32B   5/26        20060101ALI20190107BHJP        
【FI】
   B01D39/16 E
   D04H1/4374
   D04H1/4382
   B32B5/26
【請求項の数】5
【全頁数】8
      (21)【出願番号】特願2015-90763(P2015-90763)
(22)【出願日】2015年4月27日
    
      (65)【公開番号】特開2016-203124(P2016-203124A)
(43)【公開日】2016年12月8日
    【審査請求日】2018年1月5日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000229852
【氏名又は名称】日本フエルト株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人  大島特許事務所
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】濱本  浩一
              
            
        
      
    
      【審査官】
        中村  泰三
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開平05−071055(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2007−175567(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平08−299725(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平06−071122(JP,A)      
        
        【文献】
          特開昭53−053076(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平05−192520(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2007−260489(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2015−047566(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許第06815383(US,B1)    
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D    39/00−20、46/02−08        
B32B      5/26        
D04H      1/4374    
D04H      1/4382    
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  バグフィルター用ろ過材であって、
  基布から形成される基布層と、
  前記基布層の一側に配置され、0.1〜1.5dtexの繊度を有する極細繊維、及び、0.9〜4.0dtexの繊度を有して、少なくとも外面の一部において前記極細繊維よりも融点が低い低融点素材を含む低融点繊維から形成された表層と、
  前記基布層の他側に配置され、前記表層よりも密度が低く、かつ2〜30dtexの繊度を有する太繊維から形成された裏層とを備え、
  前記基布、前記極細繊維及び前記低融点繊維、並びに前記太繊維が互いに交絡された後に、前記表層側のロールのみが前記低融点繊維の融点よりも高くかつ前記極細繊維の融点よりも低い温度に加熱された片熱カレンダー加工が行われて形成され、
  前記極細繊維と前記低融点繊維との混合割合が、97:3〜90:10であることを特徴とするバグフィルター用ろ過材。
【請求項2】
  前記表層の平均密度が、0.2〜0.8g/cm3であり、前記裏層の平均密度が、前記表層の平均密度より小さく、かつ0.05〜0.4g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載のバグフィルター用ろ過材。
【請求項3】
  前記表層と前記裏層との平均密度比が、2:1〜10:1であることを特徴とする請求項2に記載のバグフィルター用ろ過材。
【請求項4】
  前記極細繊維はポリエステル繊維からなり、前記低融点繊維は、ポリプロピレン繊維又は外層がポリプロピレンの芯鞘構造繊維からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバグフィルター用ろ過材。
【請求項5】
  基布層、前記基布層の一側に配置された表層、及び前記基布層の他側に配置されて前記表層より低密度な裏層を備えたバグフィルター用ろ過材を製造する方法であって、
  0.1〜1.5dtexの繊度を有する極細繊維、及び0.9〜4.0dtexの繊度を有して、少なくとも外面の一部において前記極細繊維よりも融点が低い低融点素材を含む低融点繊維のみから実質的になる第1不織布を基布の一側に重ね、前記極細繊維よりも太く、かつ2〜30dtexの繊度を有する太繊維のみから実質的になる第2不織布を前記基布の他側に重ねるステップと、
  重ね合わされた前記第1不織布、前記基布及び前記第2不織布をニードルパンチにより互いに交絡させて積層体を形成するニードルパンチステップと、
  前記積層体をカレンダー加工して、互いに交絡した前記第1不織布、前記基布及び前記第2不織布をそれぞれ、前記表層、前記基布層及び前記裏層にするカレンダーステップとを含み、
  前記カレンダー加工は、前記第1不織布側のロールのみが前記低融点素材の融点よりも高く、かつ前記極細繊維の融点よりも低い温度に加熱された片熱カレンダー加工であり、
  前記極細繊維と前記低融点繊維との混合割合が、97:3〜90:10であることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、バグフィルター用ろ過材及びその製造方法に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  集塵機等に取り付けられるバグフィルターにおいて、ろ過材としてフェルトが用いられることがある。ろ過材に対しては、集塵率が高く、かつ圧力損失が低いことが望まれる。
【0003】
  フェルトをろ過材として用いる場合、表面に毛羽立ちがあると、毛羽立ちにダストが付着する。毛羽立ちに付着したダストは、フィルターを洗浄しても、ろ過材から離脱し難い。そのため、洗浄してもろ過材の圧力損失が十分に低くならず、ダストの捕集効率が下がる。
【0004】
  従来から、多くの毛羽立ち対策が提案されてきた。例えば特許文献1では、フェルトの表層を構成する繊維に熱可塑性樹脂からなる繊維を混合し、熱カレンダー処理を行うことによって、表層の表面を平滑化し毛羽立ちを抑えることが提案されている。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−260489号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  しかしながら、従来の熱カレンダー処理では溶融した低融点繊維が、フェルトの裏層側でも溶着するため、ろ過材の密度勾配が小さくなり、圧力損失が大きくなるという問題があった。
【0007】
  本発明は、毛羽立ちが抑えられ、圧力損失が低減されたバグフィルター用ろ過材を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  本発明のある側面は、バグフィルター用ろ過材(2)であって、基布から形成される基布層(4)と、
  前記基布層の一側に配置され、0.1〜1.5dtexの繊度を有する極細繊維、及び、0.9〜4.0dtexの繊度を有して、少なくとも外面の一部において前記極細繊維よりも融点が低い低融点素材を含む低融点繊維から形成された表層(6)と、前記基布層の他側に配置され、前記表層よりも密度が低く、かつ2〜30dtexの繊度を有する太繊維から形成された裏層(8)とを備え、前記基布、前記極細繊維及び前記低融点繊維、並びに前記太繊維が互いに交絡された後に、前記表層側のロールのみが前記低融点繊維の融点よりも高くかつ前記極細繊維の融点よりも低い温度に加熱された片熱カレンダー加工が行われて形成されたことを特徴とする。
【0009】
  この構成によれば、表層側においてのみ低融点素材が溶着してバインダー効果を発揮するため、表層表面の毛羽立ちを抑えることができるとともに、裏層側の密度が高くなることを防止できる。そのため、毛羽立ちによる圧力損失の増大を防ぎ、表層と裏層との間に密度勾配があるため、圧力損失を低減できる。
【0010】
  本発明の他の側面は、上記構成において、前記表層の平均密度が、0.2〜0.8g/cm
3であり、前記裏層の平均密度が、前記表層の平均密度より小さく、かつ0.05〜0.4g/cm
3であることを特徴とする。また、前記表層と前記裏層との平均密度比が、2:1〜10:1であることを特徴とする。
【0011】
  この構成によれば、表層と裏層との間の密度勾配が適切であるため、圧力損失を低減できる。
【0012】
  本発明の他の側面は、上記構成において、前記極細繊維と前記低融点繊維との混合割合
が、97:3〜
90:10であることを特徴とする。
【0013】
  この構成によれば、低融点素材の量が過大にならないため、溶着した低融点素材が表層表面を覆うことによるろ過面積の減少を抑えることができる。
【0014】
  本発明の他の側面は、上記構成において、前記極細繊維はポリエステル繊維からなり、前記低融点繊維は、ポリプロピレン繊維又は外層がポリプロピレンの芯鞘構造繊維からなることを特徴とする。
【0015】
  この構成によれば、極細繊維の耐熱温度及び融点と低融点素材の融点との関係が適切となり、低融点素材の融点はフィルターの耐熱温度に影響を与えない。
【0016】
  また、本発明のある側面は、基布層(4)、前記基布層の一側に配置された表層(6)、及び前記基布層の他側に配置されて前記表層より低密度な裏層(8)を備えたバグフィルター用ろ過材(2)を製造する方法であって、0.1〜1.5dtexの繊度を有する極細繊維、及び0.9〜4.0dtexの繊度を有して、少なくとも外面の一部において前記極細繊維よりも融点が低い低融点素材を含む低融点繊維から実質的になる第1不織布を基布の一側に重ね、2〜30dtexの繊度を有する太繊維から実質的になる第2不織布を前記基布の他側に重ねるステップと、重ね合わされた前記第1不織布、前記基布及び前記第2不織布をニードルパンチにより互いに交絡させて積層体を形成するニードルパンチステップと、前記積層体をカレンダー加工して、互いに交絡した前記第1不織布、前記基布及び前記第2不織布をそれぞれ、前記表層、前記基布層及び前記裏層にするカレンダーステップとを含み、前記カレンダー加工は、前記第1不織布側のロールのみが前記低融点素材の融点よりも高く、かつ前記極細繊維の融点よりも低い温度に加熱された片熱カレンダー加工であることを特徴とする。
【0017】
  この構成によれば、表層側においてのみ低融点素材が溶着してバインダー効果を発揮するため、表層表面の毛羽立ちを抑えることができ、裏層側の密度が高くなることが防止される。すなわち、毛羽立ちによる圧力損失の増大を防ぎ、表層と裏層との間に密度勾配があるために圧力損失が低減されたバグフィルター用ろ過材を製造することができる。
 
【発明の効果】
【0018】
  本発明によれば、毛羽立ちが抑えられ、圧力損失が低減されたバグフィルター用ろ過材を提供することができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】ろ過材の表面写真((a)本発明に係るろ過材(b)従来のろ過材)
 
【
図3】洗浄と使用とが繰り返された場合の圧力損失の時間変化を表すグラフ
 
 
【発明を実施するための形態】
【0020】
  以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態に係るろ過材2の縦断面図である。フェルトからなるろ過材2は、基布層4と、基布層4の図面上側に配置された表層6と、基布層4の図面下側に配置された裏層8とを備える。表層6は、極細繊維及び低融点繊維を主原料として形成される。表層6は、低融点繊維が溶着することにより、表面は、毛羽立ちが抑えられて平滑になっている。裏層8は、太繊維を主原料として形成される。なお、極細繊維及び低融点繊維と太繊維とは、ろ過材2の製造過程において交絡されるため、表層6には太繊維の一部が、裏層8には極細繊維の一部及び低融点繊維の一部が混ざっている。裏層8は、表層6よりも密度が小さい。以下、製造工程に沿って、詳細に説明する。
 
【0021】
  まず、基布層4を構成する基布を製織する。基布の材質、糸種及び組織は限定されるものではないが、例えば、基布として、複数の経糸10と複数の緯糸12とが互いに織り合わされて形成された平織の織布を使用することができる。経糸10及び緯糸12は、例えばポリエステルのマルチフィラメントを使用することができる。経糸10及び緯糸12には、m−アラミド、ポリイミド等の他の素材の繊維やモノフィラメントを使用してもよい。また、基布として、平織以外の織布や、不織布を使用してもよい。
 
【0022】
  次に、基布の一側(
図1の上側)に表層6となるべき第1不織布を、他側(
図1の下側)に裏層8となるべき第2不織布を重ね合わせ、積層体を形成する。第1不織布は、短繊維の極細繊維と、短繊維の低融点繊維からなる。第2不織布は、短繊維の太繊維からなる。第1不織布及び第2不織布は、それぞれ複数枚重ね合わせられる。
 
【0023】
  極細繊維は、0.1〜1.5dtexの繊度を有する。低融点繊維は、0.5〜11.2dtex、好ましくは0.9〜4.0dtexの繊度を有し、少なくとも外面の一部において極細繊維よりも融点が低い低融点素材を含む。低融点繊維は、繊維全体が低融点素材からなる繊維でもよく、融点の高い繊維の回りを低融点素材で覆った芯鞘構造の繊維でもよい。熱処理時に極細繊維が融解することを防ぐために、低融点素材の融点と極細繊維の融点との温度差は、30℃以上あることが好ましく、60℃以上あることがさらに好ましい。フィルターの耐熱温度を下げないように、低融点素材の融点は、極細繊維の耐熱温度より高いことが望ましい。極細繊維と低融点繊維との混合割合は、97:3〜70:30である。
 
【0024】
  太繊維は、極細繊維よりも太い、2〜30dtexの繊度を有する。太繊維の耐熱温度と融点との間に、低融点素材の融点があることが望ましい。第2不織布の密度は、第1不織布の密度よりも低い。
 
【0025】
  例えば、極細繊維及び太繊維にポリエステル繊維を使用し、低融点繊維にポリプロピレン繊維、又はポリエステルとポリプロピレンの芯鞘構造繊維を使用することができる。表層6となる第1不織布の繊維の平均繊度と、裏層8となる第2不織布の平均繊維の繊度との比は、1:2〜1:20である。なお、極細繊維−低融点繊維のその他の組み合わせとして、ポリエステル−低融点ポリエステル、ポリエステル−6ナイロン、m-アラミド−PPS、ポリイミド−PPS等が使用できる。
 
【0026】
  次に、ニードルパンチを行い、基布、第1不織布及び第2不織布を互いに交絡させ、積層体をフェルト状にする。洗浄時のダスト払い落とし性を重視する場合、表突き上がりニードルが行われる。すなわち、第2不織布側からニードルパンチが行われた後、第1不織布側から仕上げのニードルパンチが行われる。第2不織布側からのニードルパンチでは、針が積層体を貫通しないように行われてもよい。表突き上がりニードルの場合、第1不織布側の表面の毛羽立ちが抑えられるため、熱処理後の表層6が平滑となり、ダスト払い落とし性が高くなる。また、集塵率を重視する場合、裏突き上がりニードルが行われる。すなわち、第1不織布側からニードルパンチが行われた後、第2不織布側から仕上げのニードルパンチが行われる。第2不織布側からのニードルパンチでは、針が積層体を貫通するように行われてもよい。裏突き上がりニードルの場合、第1不織布の表面に毛羽立ち生じ、後述の熱処理によって大きな毛羽立ちは抑えられるが、細かい毛羽立ちが残り易い。この細かい毛羽立ちにダストが吸着して、プレコート層が形成され、フィルターはより細かいダストを吸着し、集塵率が向上する。
 
【0027】
  次に、カレンダー加工による熱処理によって、低融点繊維を溶着させる。この熱処理は、片熱カレンダー加工、すなわち、第1不織布側のロールを低融点素材の融点よりも高く、かつ前記極細繊維の融点よりも低い温度に設定し、第2不織布側のロールを低融点素材の融点よりも低い温度、例えば常温に設定したカレンダー加工によってなされる。
 
【0028】
  毛焼き加工を行うと低融点素材の溶融玉が発生しやすいが、カレンダー加工は、低融点素材の溶融玉の発生を防止できる。極細繊維と低融点繊維との混合割合が97:3〜70:30であること、低融点繊維の繊度が極細繊維と同等以下であること、及び片熱カレンダー加工であることによって、低融点繊維のバインダー効果を発揮させて毛羽を抑えることができるとともに、
図2に示すように、低融点素材が表層6の表面に過剰に溶着してろ過面積が減少することを防ぐことができる。また、低融点素材の溶着によって、表層側の平均密度が高くなる。一方、裏層8側は加熱されていないため、ニードルパンチによる繊維の交絡によって裏層8側に侵入した低融点繊維は融着せず、裏層側の密度が高くなることは防止される。もともとの第1不織布及び第2不織布間の密度差と、片熱カレンダー加工とによって、表層6及び裏層8間の密度勾配が形成され、圧力損失の増加を防ぐ。
 
【0029】
  完成したろ過材2において、表層6の平均密度は、0.2〜0.8g/cm
3であり、裏層8の平均密度は、表層6よりも低く、かつ0.05〜0.4g/cm
3であり、好ましくは0.05〜0.25g/cm
3である。表層6と裏層8との平均密度比は、2:1〜10:1である。表層6が小繊度かつ高密度であるため、集塵率を高くすることができる。また、表層6が繊度の小さい繊維から高密度に形成され、裏層8が繊度の大きな繊維から低密度に形成されているため、圧力損失を抑えることができる。
 
【実施例】
【0030】
  サンプルAは、本発明の実施例である。基布は、経糸及び緯糸にポリエステルマルチフィラメントを使用した平織組織から形成された。表層は、極細繊維90%(ポリエステル繊維、平均繊度0.7dtex)と低融点繊維10%(ポリプロピレン繊維、平均繊度2.2dtex)とから形成され、その平均密度は0.48g/m
3であった。裏層は、太繊維100%(ポリエステル繊維、平均繊度7.7dtex)から形成され、その平均密度は0.09g/m
3であった。表層と裏層との平均密度比は、5.3:1であった。なお、平均密度は、基布目付分を表層及び裏層に均等に割り振って算出した。全体として、目付が401g/m
2、厚さが2.7mmであった。
【0031】
  サンプルBは、比較対照であり、表層の表面側に細繊維、表層の裏面側に極細繊維、裏層に繊度が細繊維と太繊維の中間の通常繊維を用いたものである。基布は、経糸及び緯糸にポリエステルマルチフィラメントを使用した平織組織から形成された。表層は、表面側に細繊維(ポリエステル繊維、平均繊度2.2dtex)、裏面側に極細繊維(ポリエステル繊維、平均繊度0.8dtex)を用いて形成され、その平均密度は0.27g/m
3であった。裏層は、通常繊維100%(ポリエステル繊維、平均繊度3.3dtex)から形成され、その平均密度は0.23g/m
3であった。表層と裏層との平均密度比は、1.2:1であった。全体として、目付が500g/m
2、厚さが2.0mmであった。また、表層の表面には鏡面加工がなされた。
【0032】
  サンプルCは、別の比較対照であり、表層の表面側に極細繊維、表層の裏面側に通常繊維、裏層に通常繊維を用いたものである。基布は、経糸及び緯糸にポリエステルマルチフィラメントを使用した平織組織から形成された。表層は、表面側に極細繊維(ポリエステル繊維、平均繊度0.9dtex)、裏面側に通常繊維(ポリエステル繊維、平均繊度4.4dtex)を用いて形成され、その平均密度は0.35g/m
3であった。裏層は、通常繊維100%(ポリエステル繊維、平均繊度4.4dtex)から形成され、その平均密度は0.33g/m
3であった。表層と裏層との平均密度比は、1.1:1であった。全体として、目付が546g/m
2、厚さが1.4mmであった。また、表層の表面には鏡面加工がなされた。
【0033】
  サンプルA、B及びCの通気度は、それぞれ、13.5cm
3/秒/cm
2、7.9cm
3/秒/cm
2及び6.2cm
3/秒/cm
2であった。
【0034】
  サンプルA、B及びCの集塵率は、新品時で、それぞれ、99.995%、99.996%及び99.995%であり、エージング後では全て100%となり、集塵率では有意な差は見られなかった。一方、圧力損失では、
図3に示すように有意な差が見られた。集塵試験は、JIS Z 8909-1:2005 「集じん用ろ布の試験方法」に基づいて行われ、一定濃度(5g/m
3)のダストを流してフィルターにダストを付着させ、決まった圧損(1000Pa)になるとパルスを打ってダストを払い落とした。
図3に示す試験時間は、これを30サイクル行うのにかかった時間である。例えば、圧損上昇速度が速い、または、目詰まりが進んで圧損の下がりが悪い、などの現象が見られると、短時間で1000Paになり試験時間は短くなる。前者後者ともパルスを頻繁に打つこととなるが、後者はそれに加えて圧損が常に高い状態で使用されることになる。いずれの場合もエネルギーコストは増大する。したがって、試験時間の長いものほどが、エネルギーコストを抑えることができる。サンプルA、B及びCの試験時間は、それぞれ、792.45分、367.43分及び92.2分であり、サンプルAが最も優れていた。
【0035】
  以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
 
 
【符号の説明】
【0036】
2...ろ過材、4...基布層、6...表層、8...裏層、10...経糸、12...緯糸