(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の噴孔(19、26)が形成された噴孔形成部(16)を有し、前記噴孔形成部に対して斜めの角度に前記噴孔が形成され、前記噴孔から液体を噴射する噴射弁(1)であって、
前記複数の噴孔のうち一つを第1噴孔(19X)、その第1噴孔と対を組む予め定められた噴孔を第2噴孔(19Y)、前記噴孔の出口が形成された前記噴孔形成部の面をノズル端面(20)として、
前記第1噴孔の軸線(101)と前記ノズル端面とで形成される鋭角側の角度における前記ノズル端面の面内方向成分(110)の延長線である第1延長線(104)上、又は前記第1噴孔における液体の噴射方向(102)と前記ノズル端面とで形成される鋭角側の角度における前記ノズル端面の面内方向成分(103)の延長線である第2延長線(105)上、又は前記第1延長線と前記第2延長線の間の領域(R)に前記第2噴孔が配置され、
前記第2噴孔の軸線と前記ノズル端面とで形成される鋭角側の角度における前記ノズル端面の面内方向成分の延長線である第3延長線上、又は前記第2噴孔における液体の噴射方向と前記ノズル端面とで形成される鋭角側の角度における前記ノズル端面の面内方向成分の延長線である第4延長線上、又は前記第3延長線と前記第4延長線の間の領域には前記第1噴孔が配置されておらず、
前記ノズル端面における前記第1噴孔と前記第2噴孔の間の領域に、前記第1噴孔から前記第2噴孔の方向に伸びて前記第2噴孔に繋がる溝(24)が形成され、
前記溝(24)は、前記第1噴孔から離した位置から形成されたことを特徴とする噴射弁。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明が適用された噴射弁の先端側の断面図を示している。
図1の噴射弁1は、車両に搭載されたディーゼルエンジン等の内燃機関の排気管に設置されて、排気管内に還元剤としての尿素水を噴射する装置である。噴射弁1より下流の排気管には排気ガス中のNOxを選択的に還元浄化するSCR触媒が設置されている。噴射弁1から添加された尿素水が排気熱により加水分解されることによりアンモニア(NH3)が生成される。そのアンモニアとNOxとの還元反応がSCR触媒において行われることで、NOxは水や窒素に分解(浄化)する。このように、噴射弁1は尿素SCRシステムの一部を構成する。
【0012】
噴射弁1は、略円筒形状であり、噴射弁1の軸線(中心線)100が例えば鉛直方向に向くように設置されるが、鉛直方向以外の向き(例えばSCR触媒の向き(下流側))に傾いて設置されたとしても良い。噴射弁1は、ノズルボディ4と、そのノズルボディ4を支持する筒状部材2と、ノズルボディ4の先端に配置された噴孔形成部としての噴孔プレート16と、ノズルボディ4及び筒状部材2内に配置されたノズルニードル10とを備える。
【0013】
筒状部材2は略円筒形状に形成された内部空間を有する。筒状部材2の、ノズルボディ4が設けられる側と反対側の端部には、タンクに貯蔵された尿素水が供給される尿素水入口が形成されており、その尿素水入口を通じて筒状部材2の内部空間に尿素水が流入する。
【0014】
ノズルボディ4は、略円筒形状に形成されており、筒状部材2の一方の端部側において、筒状部材2の内側にノズルボディ4の一部が嵌め込まれる形で設けられる。その嵌め込まれた部分において、ノズルボディ4の外周面5と、筒状部材2の内周面3とが溶接により接続されている。
【0015】
ノズルボディ4の先端部(筒状部材2に嵌め込まれる側と反対側の端部)は、先端に近づくにつれて内径が小さくなる円錐状の内周面に弁座部9を有している。また、ノズルボディ4の、筒状部材2に嵌め込まれる側と反対側の端面には内部に貫通する開口6が形成されている。その開口6と弁座部9の最小内径部(縁部)とが繋がっている。
【0016】
噴孔プレート16は、開口6が形成されたノズルボディ4の端面を塞ぐ形で設けられている。噴孔プレート16は、有底の円筒形状に形成され、詳しくは、円筒形状の筒状部17と、その筒状部17の一方の端部に繋がって筒状部17に直角に設けられた平面部18とから構成されている。平面部18は平面視で円状に形成される。噴孔プレート16(筒状部17、平面部18)は、板厚が一定の板部材をプレス加工することにより形成されている。
【0017】
噴孔プレート16は、ノズルボディ4の外側に筒状部17が嵌め込まれる形で設けられる。その嵌め込まれた部分において、筒状部17の内周面と、ノズルボディ4の外周面5とが溶接により接続されている。また、平面部18の裏面(筒状部17の内周面に繋がる面)は、ノズルボディ4の端面に接触している。さらに、平面部18の法線は、噴射弁1の軸線100と平行な方向を向いている。ノズルボディ4及び噴孔プレート16の材質は例えばステンレス製とすることができる。また、平面部18のうちノズルボディ4の開口6を塞いでいる部分には、平面部18の表裏を貫通する複数の噴孔19が形成されている。噴孔プレート16が排気管内に露出するように噴射弁1が設けられ、噴孔19から排気管内に尿素水が噴射される。噴孔19は本発明の特徴部分であるので、後にさらに詳しく説明する。
【0018】
筒状部材2及びノズルボディ4の内部に形成される収容室には、ノズルニードル10(弁体)が軸線100の方向へ往復移動可能に収容されている。そのノズルニードル10はノズルボディ4と概ね同軸上に配置されている。ノズルボディ4の内周面には周囲に比べて径が小さい径小部8が形成されている。径小部8は、ノズルボディ4の先端部(噴孔プレート16側の端部)と、その反対側の端部の間の位置に形成されている。その径小部8と、ノズルニードル10の外周面とが接触している。その接触部と弁座部9の間には、ノズルニードル10の外周面と、ノズルボディ4の内周面とで囲まれた空間部13が形成されている。その空間部13は尿素水が流通する尿素水通路として機能する。
【0019】
ノズルニードル10の内部には中空部11が形成されている。この中空部11は尿素水が流通する尿素水通路として機能する。また、ノズルニードル10の側部には、中空部11と空間部13とを連通させる連通孔12が形成されている。尿素水入口から筒状部材2内に流入した尿素水は中空部11を流通した後、連通孔12から空間部13に流通する。さらに、ノズルニードル10の先端部には、弁座部9と当接可能なシール部14が形成されている。
【0020】
噴射弁1は、ノズルニードル10を駆動するソレノイド等から構成された駆動部(図示外)を備えている。駆動部のソレノイドが通電されていないときには、シール部14が弁座部9に着座することで、尿素水通路13とサック部15(噴孔19)とが遮断されて、噴孔19からの尿素水噴射が停止される。一方、ソレノイドが通電されると、ノズルニードル10が弁座部9から離れる方向に移動し、この移動により、尿素水通路13が開放されて、尿素水通路13の尿素水が開口6内のサック部15に流通し、サック部15に配置された各噴孔19から尿素水が噴射される。
【0021】
次に、噴孔19の詳細を説明する。
図2に示すように、本実施形態では6個の噴孔19が形成されている。
図3は、ある1つの噴孔19付近の噴孔プレート16(平面部18)の断面図を示している。各噴孔19は、噴射された尿素水噴霧が噴孔プレート16から離れるほど噴射弁1の外径より外側に飛ぶように、噴射弁1の軸線100(
図1参照)に対して斜めの角度に形成されている。言い換えると、噴孔19の上流開口(入口)の中心と、下流開口(出口)の中心とを通る直線を噴孔軸線101としたとき、各噴孔19は、噴孔軸線101が噴射弁軸線100に対して傾くように(噴射弁軸線100と異なる方向に伸びるように)形成されている。さらに言い換えると、噴孔19の下流開口が形成された噴孔プレート16の面20をノズル端面としたとき、各噴孔19は、噴孔軸線101がノズル端面20の法線方向に対して傾くように(法線方向と異なる方向に伸びるように)形成されている。さらに言い換えると、噴孔軸線101とノズル端面20との成す角度を噴孔角度θとしたとき、各噴孔19は、噴孔角度θが90度と異なる角度となるように形成されている。
図3では、鋭角側の角度θを噴孔角度としている。
【0022】
噴孔プレート16に対して噴孔19が斜めの角度θに形成されることで、尿素水の噴射中又は噴射停止時(サック部15の尿素水が噴孔19から漏れた場合)に、一部の尿素水200が鋭角側の噴孔角度θの方向110におけるノズル端面20上を滑るように飛び出す(
図3参照)。その尿素水200の飛び出し速度はノズル端面20との摩擦により減衰し、やがてノズル端面20上に停止する。なお、噴孔角度θの方向110は、噴孔角度θにおけるノズル端面20の面内方向成分を言い、言い換えると、噴孔軸線101の方向(噴孔19の入口から出口に向かう方向)におけるノズル端面20の面内方向成分を言う。
【0023】
従来では、ノズル端面20上に停止した尿素水200が高温の排気ガスに晒されて樹脂化し、この樹脂化した尿素由来デポジットにより噴霧形状に影響を及ぼしたり、噴霧の貫徹を阻害したりするといった不具合が発生するおそれがあった。
【0024】
本実施形態では、この不具合を回避するため、各噴孔19は
図4、
図5のように形成されている。ここで、
図4は
図2のA矢視方向から見た噴孔プレート16の図、すなわちノズル端面20の側から見た噴孔プレート16の平面図を示している。
図5は、
図4に示す噴孔19a〜19fのうち任意に選択された隣り合う2つの噴孔19X、19Yが形成された部分における噴孔プレート16の断面図を示している。なお、
図4において、各噴孔19の入口を点線で図示している。
【0025】
図4に示すように、6個の噴孔19a〜19fが、平面視円状の噴孔プレート16の中心部Oを中心とした一重の円状(環状)に配置されている。円状の配列方向における隣り合う2つの噴孔19間の間隔は一定となっている。すなわり、第1の噴孔19aと第2の噴孔19bとの間隔、第2の噴孔19bと第3の噴孔19cとの間隔、第3の噴孔19cと第4の噴孔19dとの間隔、第4の噴孔19dと第5の噴孔19eとの間隔、及び第5の噴孔19eと第6の噴孔19fとの間隔は互いに等しい。
【0026】
また、
図5に示すように、一方の噴孔19X(本発明の第1噴孔に相当)の軸線101Xの方向(噴孔19Xの入口から出口に向かう方向)におけるノズル端面20の面内方向成分110Xの延長線(本発明の第1延長線に相当)上に、他方の噴孔19Yの出口が配置されている。面内方向成分110Xは、軸線101Xとノズル端面20とで形成される鋭角側の噴孔角度θxにおけるノズル端面20の面内方向成分でもある。さらに、噴孔19Yの軸線101Yの方向(軸線101Yとノズル端面20とで形成される鋭角側の角度)におけるノズル端面20の面内方向成分の延長線(本発明の第3延長線に相当)上には、噴孔19Xが配置されないようにしている。なお、
図4では、各噴孔19a〜19fの軸線101a〜101fの方向におけるノズル端面20の面内方向成分110a〜110fの矢印を、各軸線101a〜101fに重ならない位置に図示しているが、実際は、各面内方向成分110a〜110fは
図4の平面視で各軸線101a〜101fに重なる位置にくる。
【0027】
6個の噴孔19a〜19fから選択される隣り合う2つの噴孔の全ての組み合わせに対して、
図5で説明した配置関係が成立する。すなわち、第1の噴孔19aの面内方向成分110aの延長線上に第2の噴孔19bが配置されている。第2の噴孔19bの面内方向成分110bの延長線上に第3の噴孔19cが配置されている。第3の噴孔19cの面内方向成分110cの延長線上には、第4の噴孔19dが配置されている。第4の噴孔19dの面内方向成分110dの延長線上には第5の噴孔19eが配置されている。第5の噴孔19eの面内方向成分110eの延長線上には、第6の噴孔19fが配置されている。第6の噴孔19fの面内方向成分110fの延長線上には第1の噴孔19aが配置されている。
【0028】
このように、6個の噴孔19a〜19fの配列方向である円周方向のうち
図4の方向から見て反時計回りの方向を噴孔配列方向として、各噴孔19a〜19fの軸線101a〜101fの面内方向成分110a〜110bの延長線上に、噴孔配列方向における隣りに位置する噴孔が配置される関係が成立する。
【0029】
なお、上記説明では、各噴孔19の軸線101と、各噴孔19から噴射される尿素水の噴射方向102(尿素水噴霧Bの中心線102。
図3参照)とが一致することを前提としていた。この前提のもとでは、噴射方向102におけるノズル端面20の面内方向成分(噴射方向102とノズル端面20とで形成される鋭角側の角度)の延長線上に隣りの噴孔を配置することを意味する。
【0030】
一方で、噴射弁の仕様によっては、
図6に示すように、軸線101の方向と、尿素水の噴射方向102(噴霧Bの中心線)とが異なる場合もある。なお、
図6は、隣り合う2つの噴孔19X、19Yを、噴孔の出口側から見た平面図を示している。この場合には、一方の噴孔19Xの噴射方向102におけるノズル端面20の面内方向成分103(噴射方向102とノズル端面20とで形成される角度の面内方向成分)の延長線105近辺に尿素水が付着しやすくなる。そこで、延長線105(本発明の第2延長線に相当)上に、隣りの噴孔19Yを配置するようにしても良い(
図6参照)。
【0031】
また、噴孔軸線101の方向と、尿素水の噴射方向102とが異なる場合であっても、それら方向のズレ量はそれほど大きくないと考えられるので、噴孔軸線101の面内方向成分110の延長線104上、又は両延長線104、105間の領域Rにも他の領域に比べると尿素水が付着しやすいと言える。そこで、噴孔軸線101の方向と、尿素水の噴射方向102とが異なる場合であっても、延長線104上、又は両延長線104、105間の領域Rに隣りの噴孔を配置するようにしても良い。
【0032】
なお、
図6に示す他方の噴孔19Yの軸線の面内方向成分の延長線(本発明の第3延長線に相当)上、又は噴孔19Yにおける尿素水の噴射方向の面内方向成分の延長線(本発明の第4延長線に相当)上、又はこれら2つの延長線間の領域には、一方の噴孔19Xが配置されないようにする。
【0033】
図4に示すように、ノズル端面における隣り合う2つの噴孔19間の領域には、隣り合う2つの噴孔19の一方からノズル端面の面内に飛び出した尿素水を他方の噴孔付近に導くための、有底の溝22(噴孔プレート16の裏面に貫通していない溝)が形成されている。本実施形態では、溝22は、隣り合う2つの噴孔19間を繋ぐように形成される。すなわち、第1の噴孔19aと第2の噴孔19bの間の領域には、これら噴孔19a、19b間を繋ぐ第1の溝22aが形成されている。第2の噴孔19bと第3の噴孔19cの間の領域には、これら噴孔19b、19c間を繋ぐ第2の溝22bが形成されている。第3の噴孔19cと第4の噴孔19dの間の領域には、これら噴孔19c、19d間を繋ぐ第3の溝22cが形成されている。第4の噴孔19dと第5の噴孔19eの間の領域には、これら噴孔19d、19e間を繋ぐ第4の溝22dが形成されている。第5の噴孔19eと第6の噴孔19fの間の領域には、これら噴孔19e、19f間を繋ぐ第5の溝22eが形成されている。第6の噴孔19fと第1の噴孔19aの間の領域には、これら噴孔19f、19a間を繋ぐ第6の溝22fが形成されている。
【0034】
図4では、各溝22a〜22fは、隣り合う2つの噴孔19の一方から他方に直線状に伸びるように形成されているが、平面視で曲線状や折れ線状に形成されたとしても良い。曲線状に溝を形成する場合、例えば、噴孔19の配列方向である円周方向に沿った円弧状に溝を形成しても良い。また、
図7の平面図で示すように、一方の噴孔19Xにおける噴孔軸線の方向の面内方向成分110と、噴射方向の面内方向成分103とが異なる場合には、面内方向成分110の延長線上に他方の噴孔19Yを配置するとともに、噴孔19Xの直近では面内方向成分103の方向に伸び、以降は他方の噴孔19Yに繋がるように曲がった曲線状又は折れ線状の溝23を形成しても良い。これによって、噴孔190Xから面内方向成分103の方向に飛び出した尿素水を、溝23を通じて隣りの噴孔19Y付近に導きやすくできる。
【0035】
また、
図4の溝22、
図7の溝23の断面形状は、
図8(a)のように底面と側面とが直角の形状、
図8(b)のようにU状、
図8(c)のようにV状など、どのような形状であっても良い。
【0036】
次に、噴射弁1の作用効果を説明する。
図3で説明したように、噴孔プレート16に対して斜めの角度θに噴孔19が形成されると、噴孔19から噴射された尿素水の一部が、噴孔角度θの方向110(噴孔軸線の方向の面内方向成分)に飛び出して、その方向110におけるノズル端面20に付着しやすい。しかし、本実施形態では、
図5に示すように、隣り合う2つの噴孔19の一方19Xの軸線方向における面内方向成分110Xの延長線上に、他方の噴孔19Yが配置されるので、ノズル端面20に付着した尿素水200は噴射を繰り返すにしたがって次第に隣りの噴孔19Yに近づき、噴孔19Yからの噴射によって付着した尿素水200をノズル端面20外に持ち去ることができる。
【0037】
また、隣り合う2つの噴孔19X、19Y間で、噴孔軸線の面内方向成分が互いに向き合わないようにしているので、相互の噴孔19X、19Yから面内に飛び出して付着した尿素水がノズル端面20上で干渉して留まってしまうのを回避できる。
【0038】
また、各噴孔19の角度の面内方向成分を、最も近い位置にある隣りの噴孔19に向くようにしたので、隣り以外の噴孔19に向けた場合に比べて、各噴孔19から面内方向に飛び出してノズル端面20に付着した尿素水を、別の噴孔19付近に集めやすくでき、ノズル端面20への尿素水の付着を抑制しやすくできる。
【0039】
さらに、本実施形態では、隣り合う2つの噴孔19間に溝22が形成されているので、一方の噴孔19からノズル端面20の面内方向に飛び出して付着した尿素水を、溝22を通じて隣りの噴孔19付近に集めやすくできる。
【0040】
また、本実施形態では、
図4に示すように、6個の噴孔19a〜19fを一重の円状に配置して、各噴孔19a〜19fの軸線101a〜101fの面内方向成分110a〜110fが、隣りの噴孔の方向に向くように各噴孔19a〜19fの角度を設定しているので、隣り合う2つの噴孔の全ての組み合わせに対して、一方の噴孔から面内方向に飛び出して付着した尿素水を他方の噴孔の噴射によって持ち去ることができるという条件を成立させることができる。よって、ノズル端面20に尿素水由来のデポジットが形成されるのを抑制でき、噴霧形状に影響を及ぼしたり、噴霧の貫徹を阻害したりするといった不具合を抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、引用文献1の噴孔形成部に比べて、噴孔プレート16が単純な形状、すなわち噴孔プレート16の各部位の板厚が一定となっているので、プレス加工により簡単に噴孔プレート16を製造できる。
【0042】
また、本実施形態では、噴孔プレート16に対して斜めの角度に各噴孔19が形成されているので、各噴孔19から噴射された尿素水噴霧を排気ガス中のより広範囲に行き渡らせることができる。また、斜めの角度に噴孔が形成された従来の噴孔プレートを大幅に変更することなく、尿素水の付着を抑制でき、かつ広範囲に尿素水を噴射できる本実施形態の噴孔プレート16を製造することができる。詳しくは、
図13は、本実施形態の比較例の噴孔プレート32の平面図を示し、
図13(a)は使用前(噴射前)の噴孔プレートを示し、
図13(b)は使用後(噴射後)の噴孔プレート32を示している。
図13の噴孔プレート32には、一重の円状に配置されるように6個の噴孔31a〜31fが形成されている。各噴孔31a〜31fは、噴射された尿素水が噴射弁外径より外側に飛ぶように、噴孔入口から出口にいくにしたがって噴孔の中心位置が噴孔プレート32の径方向外側に向けて変位するように、斜めの角度に形成されている。言い換えると、各噴孔31a〜31fの軸線方向の面内方向成分120は径方向外側に向いている。
【0043】
図4の各噴孔19a〜19fは、
図13の各噴孔31a〜31fの配置位置を変更するだけで製造することができる。詳しくは、
図4の第1の噴孔19aの向きは、
図13の第3の噴孔31cの向きに相当し、
図4の第2の噴孔19bの向きは
図13の第4の噴孔31dの向きに相当し、
図4の第3の噴孔19cの向きは
図13の第5の噴孔31eの向きに相当し、
図4の第4の噴孔19dの向きは
図13の第6の噴孔31fの向きに相当し、
図4の第5の噴孔19eの向きは
図13の第1の噴孔31aの向きに相当し、
図4の第6の噴孔19fの向きは
図13の第2の噴孔31bの向きに相当する。このように、
図13の噴孔プレート32から大幅に変更することなく、
図4の噴孔プレート16を製造できる。
【0044】
図13(b)では、噴孔プレート32に付着した尿素水201(斜線ハッチングの部分)を図示している。
図13(b)に示すように、従来では、各噴孔31a〜31fの噴孔角度の方向に尿素水201が付着しやすいが、本実施形態の噴孔プレート16を用いることで、上記したように噴孔プレート16への尿素水の付着を抑制できる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。ここで、
図9、
図10は、変形例1を説明する図であり、詳しくは、
図9は変形例1に係る噴孔プレート16の平面図、
図10は、隣り合う2つの噴孔19X、19Yが形成された部分における
図9の噴孔プレート16の断面図である。なお、
図9の噴孔19a〜19fは
図4の噴孔19a〜19fと同じである。
【0046】
図9に示すように、隣り合う2つの噴孔間に形成する溝24は、隣り合う2つの噴孔19のうち
図9の方向から見て反時計回りの方向の手前側に位置する噴孔(本発明の第1噴孔に相当)(
図10の例では左側の噴孔19X)から離した位置から形成されている。溝24は、反時計回りの奥側に位置する噴孔(本発明の第2噴孔に相当)(
図10の例では右側の噴孔19Y)に繋がっている。溝24と噴孔19Xの外縁との間隔d(
図9参照)は、0.5mm又は隣り合う2つの噴孔間の距離の4分の1の小さい方とするのが好ましい。
【0047】
これによれば、溝24は、隣りの噴孔19Y(
図10参照)に繋がっているので、上記実施形態と同様に、噴孔19Y付近に付着尿素水を集めやすくでき、噴孔19Yからの噴射によって付着尿素水を持ち去ることができる。加えて、
図10に示すように、一方の噴孔19Xに近い領域25には溝24が形成されていないので、溝形成によって噴孔19Xから噴射される尿素水噴霧Bの形状に影響を及ぼすのを抑制できる。特に、間隔dを、0.5mm又は隣り合う2つの噴孔間の距離の4分の1の小さい方とすることで、より一層、噴孔19Y付近に付着尿素水を集めやすくできるとともに、噴孔19Xに近い領域25へのデポジットを抑制でき、尿素水噴霧Bの形状に影響を及ぼすのを抑制できる。
【0048】
また、上記実施形態では、噴孔プレートに6個の噴孔が形成された例を説明したが、3個以上であれば、噴孔は何個形成されたとしても良い。
図11では、8個の噴孔26が形成された例を示している。各噴孔26は一重の円状となるように配置されている。さらに、各噴孔26は、各噴孔26の角度方向130(噴孔軸線の面内方向成分)が、
図9の方向から見て反時計回りの方向における隣りに位置する噴孔26の方に向くように、形成されている。これによって、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0049】
なお、
図11の噴孔プレートは、
図12の従来の噴孔プレートにおける噴孔33の配置位置を変更することで、製造できる。
図12の噴孔プレートには、一重の円状に配置されるように8個の噴孔33が形成されている。各噴孔33の軸線方向の面内方向成分は径方向外側に向いている。
図11の各噴孔26の向きは、
図12のいずれかの噴孔33の向きに相当する。このように、
図12の従来の噴孔プレートから大幅な変更をすることなく、尿素水付着を抑制できる8噴孔の噴孔プレートを製造できる。
【0050】
また、上記実施形態では、ノズルボディとは別に、噴孔が形成された噴孔プレートを備えた噴射弁を説明したが、ノズルボディに直接に噴孔が形成された噴射弁に本発明を適用しても良い。また、尿素水以外の液体を噴射する噴射弁(例えばエンジン筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁)に本発明を適用しても良い。また、上記実施形態では、複数の噴孔を円状に配置した例を説明したが、複数の噴孔を円状以外の環状(例えば、楕円状、四角形状)に配置しても良い。