(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一つの冷却回路内に異なる冷却能力が要求される従来の冷蔵庫の冷却システム
150のように、膨張手段として口径や管長の異なる2本のキャピラリーチューブ
162,
163を用意するまでには、設計などにかなりの手間とかなりの時間が必要になるという問題があった。
【0008】
また、最適な2本のキャピラリーチューブ
162,
163を用意できたとしても、これらキャピラリーチューブ
162,
163を、例えば冷蔵庫などの冷却システム
150に組み込む場合は、狭い場所での溶接作業あるいはろう付け作業などが必要となるため、取付に多大な時間を要し、さらには接続部の気密性に十分配慮しなければならないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑み、キャピラリーチューブを使わずに、冷蔵庫などの冷却室を冷却するヒートポンプ装置としての冷却システムの膨張手段を構築できる、スライド弁およびこのスライド弁を使用したヒートポンプ装置を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、キャピラリーチューブのように、狭い場所での煩雑な溶接作業あるいはろう付け作業などを行う必要がなく、また気密漏れのリスクを可及的に防止することができる、スライド弁およびこのスライド弁を使用したヒートポンプ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
また、本発明に係るヒートポンプ装置は、
圧縮機と、凝縮機と、膨張手段と、複数の蒸発器とを有するヒートポンプ装置であって、
スライド弁が、前記膨張手段として構成され、
前記スライド弁が、
入口側ポートが開口する弁室を画定する弁本体と、
前記弁室内に配置された弁座と、
前記弁座の弁座面上を直線的に往復摺動するスライド弁体と、を備え、
前記スライド弁体が前記弁座面上を直線的に摺動することにより、前記弁座に形成されている複数の出口側ポートのうち、いずれか1つの出口側ポートが、前記スライド弁体によって開放するように構成されるとともに、
前記複数の出口側ポートのうち、少なくとも1つの出口側ポートの開口面積が、前記入口側ポートの開口面積に対して小さく設定され、
前記スライド弁の複数の出口側ポートにそれぞれ蒸発器が接続されていることを特徴としている。
【0014】
このようなヒートポンプ装置によれば、キャピラリーチューブを使用しなくても、冷媒の膨張手段を構成することができ、開口面積の異なる出力側ポートの選択により冷媒の圧力を適宜に減圧することができる。
【0015】
また、本発明に係るヒートポンプ装置は、
圧縮機と、凝縮機と、膨張手段と、複数の蒸発器とを有するヒートポンプ装置であって、
スライド弁が複数個用意され、
前記スライド弁が、
入口側ポートが開口する弁室を画定する弁本体と、
前記弁室内に配置された弁座と、
前記弁座の弁座面上を直線的に往復摺動するスライド弁体と、を備え、
前記スライド弁体が前記弁座面上を直線的に摺動することにより、前記弁座に形成されている複数の出口側ポートのうち、いずれか1つの出口側ポートが、前記スライド弁体によって開放するように構成されるとともに、
前記複数の出口側ポートのうち、少なくとも1つの出口側ポートの開口面積が、前記入口側ポートの開口面積に対して小さく設定され、
上流側のスライド弁の一つの出口側ポートの下流に、下流側のスライド弁の入口側ポートが接続されていることを特徴としている。
このような構成のヒートポンプ装置によれば、3つ以上の蒸発器を備えた冷却システムに適用可能である。
【0016】
また、このようなヒートポンプ装置では、キャピラリーチューブを使用しなくても、冷媒の膨張手段を構成することができ、大小異なる出力側ポートの選択により冷媒の圧力を減圧することができる。
【0017】
さらに、本発明に係るヒートポンプ装置では、
上流側のスライド弁の入口側ポートの開口面積が、下流側のスライド弁に接続される出口側ポートの開口面積以下に設定されているとともに、下流側のスライド弁の入口側ポートの開口面積が、上流側のスライド弁の下流側のスライド弁に接続される出口側ポートの開口面積以上に設定されていても良い。
このようなヒートポンプ装置によれば、スライド弁において冷媒を1回のみ減圧して、各蒸発器に供給することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るスライド弁によれば、キャピラリーチューブを使用しなくとも冷蔵庫などのヒートポンプ装置の膨張手段を構築することができる。
さらに、本発明に係るスライド弁を使用したヒートポンプ装置によれば、膨張手段としてキャピラリーチューブを使用していないことから、キャピラリーチューブの取付作業に係わる問題が発生せず、結果としてコスト的にも安価となり、またヒートポンプ装置自体をコンパクトに設定することが可能となる。
【0019】
また、本発明では、スライド弁を、冷蔵庫に限らず例えば、缶入り飲料の自動販売機や、スーパーマーケットなどに置かれるショーケースなどの複数の冷却室を冷却するヒートポンプ装置として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態(実施例)に係るスライド弁およびこのスライド弁を使用したヒートポンプ装置について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るスライド弁を示したもので、
図2は
図1のスライド弁に組み込まれている弁体アッセンブリを示したものである。
【0022】
本実施例のスライド弁1は、自動販売機、冷蔵庫、空気調和機や冷凍機等に組み込まれる三方弁として例示されている。
このスライド弁1は、
図1、
図2において上下方向垂直に延在する中心軸O−Oを有し、概略、弁本体5、弁体アセンブリ10、ソレノイド18を備えている。
【0023】
スライド弁1を構成する弁本体5は、入口側ポート2aを介して上流側流路に連通する入口側継手2に連結され、出口側ポート8および出口側ポート9を介してそれぞれ下流側流路に連通する出口側継手3および出口側継手4に連結される弁室6を画定している。弁室6内には出口側継手3および出口側継手4の開口端部が差し込まれている弁座7が設けられ、弁座7の弁座面7aには、それぞれ出口側継手3および出口側継手4に連通する出口側ポート8および出口側ポート9が開口するように形成されている。なお、入口側継手2、出口側継手3および出口側継手4は、限定されるものではないが、それぞれの軸がスライド弁1の中心軸O−Oに対して直交するように配置され、弁座7の弁座面7aは、中心軸O−Oに対して平行に配置されることが好ましい。
【0024】
本実施例において、スライド弁1を構成する弁体アセンブリ10は、
図2および
図3に示されるように、概略、弁体11、板バネ13、連結杆12およびプランジャ15を備える。また、
図2および
図3に示されるように、スライド弁1の中心軸O−Oが、連結杆12およびプランジャ15の中心を通っている。
【0025】
弁体アセンブリ10を構成するプランジャ15は、
図1において、ソレノイド18にリード線25を介して電流が流れたとき、コイルバネ16の付勢力に抗して移動し、弁体11をスライドさせる部材である。
図1において、弁体11が上方にスライドすると、出口側ポート8が開けられ、出口側ポート9が閉じられることで流路が切り換えられる。
【0026】
プランジャ15には、
図1〜3に示されるように、中心軸O−Oに沿って、上下に貫通する中心孔15aが形成されている。該中心孔15aは、断面円形であり、中間に上から第1段部15bおよび第2段部15cを備え、直径を変化させている。第1段部15bでは、直径を小さくすることで、コイルバネ16の一端部を保持する。なお、コイルバネ16の他端部は、吸引子17に保持される。第2段部15cでは、直径を大きくすることで、連結杆12の基端部12bを収容する。さらに、プランジャ15の中心孔15aの下端部には、中心孔15aを閉じるように開口縁15dが形成され、中心孔15a内に収容された連結杆12の基端部12bに対して開口縁15dを変形させてカシメ固定することで、連結杆12をプランジャ15に装着する。
【0027】
弁体アセンブリ10を構成する連結杆12は、弁体11を保持する扁平な板状部材であって、基端部12bおよび末端部12cを備えている。連結杆12の末端部12cにおいて断面長円形の貫通孔12aが形成され、この貫通孔12aに弁体11を保持する。貫通孔12aは、連結杆12を含む弁体アセンブリ10がスライド弁1として組み立てられたとき、弁体11の中心軸A−Aがスライド弁1の中心軸O−Oに対して直角を成すように、連結杆12の末端部12cに形成される。貫通孔12aの断面形状は、弁体11の基部11aの断面形状と概略同じであって、本実施例では、貫通孔12aの断面形状は長円形である。貫通孔12aの大きさは、少なくとも、弁体11の基部11aが(
図3において左右方向に)出入り可能な大きさに所望の寸法公差の範囲内で設定されればよい。なお、本実施例においては、貫通孔12aの長さ(
図3において、貫通孔12aの上下方向の長さ)は、弁体11の長さ(
図4(a)において、基部11aの左右の長さ)に対して若干の隙間が存在するように、弁体11の長さより大きく形成されている。このように貫通孔12aの長さを弁体11の長さより若干大きく形成すると、
図1において、プランジャ15と一体に形成されている連結杆12が上下方向に移動するとき、先に連結杆12が移動した後、弁体11が移動するように構成することができる。したがって、弁体11の移動(スライド)が円滑に行われる。
【0028】
弁体アセンブリ10を構成する板バネ13は、基端部13aおよび末端部13bを備え、基端部13aにおいて固定金具14により連結杆12に固定され、末端部13bにおいて、突起13cを介して弁体11の溝部11eの底面11fを押圧する。本実施例では、突起13cの断面形状は、円弧状である。板バネ13は、基端部13aと末端部13bとの間に弾性変形部としての傾斜部13eが形成されている。
【0029】
弁体アセンブリ10を構成する弁体11は、シール面11cが弁座7の弁座面7aに面接触しながらスライドし、出口側ポート8および9を開閉し、通路を切り換える部材である。弁体11は、中心軸A−Aを有し、上述したように、連結杆12に保持される。本実施例に係る弁体11は、
図4(a)〜(d)に示されるように、断面長円形の基部11a、断面略正方形の突出部11bを備えている。弁体11の基部11aは、平坦な背面11dに、該背面11dに対して段部を形成する溝部11eが形成される。また、弁体11の突出部11bは、基部11aから上方に突出し、その上面は、基部11aの背面11dに対向し、平坦なシール面11cとして形成される。
【0030】
弁体11は、
図3に示されるように、弁体11の中心軸A−Aがスライド弁1の中心軸O−Oに対して、すなわち、弁座面7aに対して、直角を成すように連結杆12に保持される。また、
図4に示されたように弁体11の基部11aの背面11dに形成される段部としての溝部11eの底面11fには、板バネ13の末端部13bに形成される円弧状の突起13cが当接する。それにより、スライド弁1として組み立てられたとき、
図1に示されるように、弁体11のシール面
11cが、弁座7の弁座面7aに押し付けられる。したがって、弁体11は、開口面積が異なる出口側ポート8または出口側ポート9のいずれか一方のポートを開閉するとともに、シールする。
図1では、開口面積の大きい出口側ポート8が閉、開口面積の小さい出口側ポート9が開とされている。
【0031】
なお、弁体11の背面11dに形成される溝部11eは、本実施例は、
図4(c)に示されるように、背面11dを左右方向に横切って延在するように形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、
図4(c)において、溝部11eが左右両端を基部11aにより塞がれている状態、すなわち、断面矩形状の凹部として形成されていてもよい。該凹部は、背面11dに対して段部を成している。本実施例においては、凹部で段部を形成するとき、凹部の長さ(
図4(c)において、凹部の左右方向の長さ)は、貫通孔12aの長さと弁体11の長さとの間の差(貫通孔12aと弁体11との間に形成される隙間の長さ)より大きく設定される。このように設定する理由は、以下の通りである。
【0032】
すなわち、本実施例では、上述したように、板バネ13が連結杆12と一体にされており、また、連結杆12とプランジャ15も同様に一体にされている。したがって、プランジャ15が移動を開始した瞬間は、弁体11は停止したままであり、連結杆12のみが貫通孔12aと弁体11との間の隙間分先に移動する。同様に、連結杆12と一体である板バネ13の突起13cは、停止している弁体11の背面11dに形成されている凹部の底面上を移動する。貫通孔12aと弁体11との関係をこのように構成することで、弁体11の移動が円滑に実行され得る。
【0033】
本実施例では、また、板バネ13の末端部13bは、該末端部13bに形成された突起13cが弁体11の溝部11eの底面11fに当接するように構成される。また、板バネ13の突起13cを除く平坦な末端部13bが弁体11の背面11dの少なくとも一部を覆うように配置されることが好ましい。このように配置することで、例えば、
図1に示されるように閉じていた出口側ポート8から弁体11が逆圧で浮き上がったとき、弁体11の背面11dが、該背面11dを覆っている板バネ13の平坦な末端部13bに当接する。それにより、弁体11の回転が妨げられ、弁体11が中心軸A−Aに対して傾斜したり、弁体11がずれたりする度合いが抑えられる。そのため、逆圧が解消されたときには、弁体11は、傾斜状態にロックされること無く、当初の位置、すなわち出口側ポート8を閉じ、これをシールする位置に速やかに戻ることができる。
【0034】
最後に、スライド弁1を構成するソレノイド18は、中心に弁体アセンブリ10のプランジャ15を収容することができる空間18aを備えるように、外函19内に電気絶縁性の合成樹脂でモールド成形されている。本実施例では、上部が外函19で塞がれている空間18a内に、吸引子17と溶接により一体化されているプランジャチューブ20が挿入され、取り付けビス21により吸引子17が外函19に固定される。このとき、プランジャチューブ20内には弁体アセンブリ10のプランジャ15が嵌め込まれており、プランジャ15は、
図1において、プランジャチューブ20内を上下方向に移動することができる。また、上述したように、吸引子17とプランジャ15との間には、コイルバネ16が装着される。該コイルバネ16により、吸引子17とプランジャ15とは、互いに離れる方向に付勢されている。
【0035】
本実施例では、上述したことから理解されるように、吸引子17、プランジャチューブ20、コイルバネ16、弁体アセンブリ10、弁本体5および入口側継手2、出口側継手3および4は、予め一体にされる。該一体化された弁部材(吸引子17やプランジャ15)をソレノイド18の空間18a内に挿入することで、スライド弁1として容易に組み立てられることができる。
【0036】
本実施例においては、例えばソレノイド18に電流が流れていないときは、
図1に示されるように、プランジャ15は、コイルバネ16に付勢されて下方に位置する。これにより、弁体11は、出口側ポート8を閉じている。この場合、出口側ポート9が開いているので、流体は、継手2から継手4に流れる。他方、リード線25を介してソレノイド18に電流が流れると、吸引子17がプランジャ15を引き寄せることで、プランジャ15が駆動され、上方に移動する。それにより、プランジャ15と一体化されている弁体11は、
図1において、弁座面7a上を上方にスライドし、出口側ポート8が開けられ、出口側ポート9が閉じられる。この場合、出口側ポート8が開いているので、流体は、継手2から継手3に流れる。
【0037】
以下、本発明の要部について説明する。
本実施例において、流体は、例えばヒートポンプ装置としての冷却システムに使用される冷媒である。
【0038】
また、本実施例のスライド弁1では、入口側継手2の入口側ポート2aの開口面積をA、出口側継手3の出口側ポート8の開口面積をB、出口側継手4の出口側ポート9の開口面積をCとしたとき、それらの開口面積は、
C<B<A
に設定されている。
【0039】
すなわち、出口側継手3の出口側ポート8の開口面積Bと、出口側継手4の出口側ポート9の開口面積Cは、入口側ポート2aの開口面積Aに比べて両方とも小さく設定され、さらに出口側ポート9の開口面積Cと出口側ポート8の開口面積Bとを比べた場合に、出口側ポート9の開口面積Cが出口側ポート8の開口面積Bに比べて小さく設定されている。
【0040】
これにより、入口側継手2の入口側ポート2aから、出口側継手3の出口側ポート8または出口側継手4の出口側ポート9に液冷媒が流れるとき、その冷媒は減圧されることになる。
【0041】
このようにして、
図1に示した入口側継手2から冷媒が導入され、出口側ポート8または出口側ポート9のうち弁体11によって閉鎖されていない方の出口側ポート9または8を冷媒が通過することによって、高温・高圧の液冷媒が、蒸発し易い状態に減圧され、低温・低圧で気体・液体混相状態の冷媒となって、出口側継手4または出口側継手3から排出される。
【0042】
したがって、本実施例のスライド弁1では、
図5に示したように、例えば、冷蔵庫用の冷却システム60に組み込んだ場合に、圧縮機62を介して凝縮器64から送出され、その凝縮器64から送出された高温・高圧の液冷媒が、スライド弁1の出口側ポート8または出口側ポート9のうち弁体11によって閉鎖されていない方の出口側ポートを冷媒が通過することによって、高温・高圧の液冷媒が、蒸発し易い状態に減圧され、低温・低圧で気体・液体混相状態の冷媒となって、出口側継手3または出口側継手4内から排出され、蒸発器36、または蒸発器38を介して再び圧縮機62に戻されることになる。
【0043】
なお、出口側ポート9および出口側継手4を介して第1冷却室用の蒸発器36に送出されるか、または、出口側ポート8および出口側継手3を介して第2冷却室用の蒸発器38のどちらに送出されるかの選択は、スライド弁1の制御スイッチのON,OFFで行われる。したがって、本発明では、冷媒流量の制御を行う場合に、複雑なコントローラが不要であり、コスト安に寄与することができる。
【0044】
なお、スライド弁1の弁体11を駆動させる手段として、マグネットラッチコイルが採用されることが好ましい。このような構成であればON/OFF信号のみで冷媒流量の制御を行うことができ、安価で弁体の制御を行うことができる。
【0045】
このようなスライド弁1が組み込まれた冷却システム60では、例えば、冷蔵庫の第1冷却室内の温度が温度センサで検知される。第1冷却室内の温度が、所定の温度以上であり、冷却が必要であることが検知された場合には、スライド弁1を制御する図示しない切り換えスイッチがOFFになる。これにより、弁体11が出口側ポート9を開放する。
【0046】
出口側ポート9が開放された
図1の状態では、ソレノイド18に電流が流れておらず、プランジャ15は、コイルバネ16に付勢されて下方に位置している。すなわち、弁体11は、開口面積の大きい出口側ポート8を閉じており、開口面積の小さい出口側ポート9が開いている。この状態では、入口側継手2から出口側継手4の出口側ポート9に流れる。このとき冷媒は減圧される。そして、第1冷却室内が、第1冷却室用の蒸発器36により冷却される。
【0047】
一方、第2冷却室内の温度が、所定の温度以上であり、冷却が必要であることが温度センサにより検知された場合には、その検知信号に基いて、スライド弁1の切り換えスイッチがONになる。そして、リード線25を介してソレノイド18に電流が流れる。ソレノイド18に電流が流れると、吸引子17がプランジャ15を引き寄せることで、プランジャ15が駆動され、上方に移動する。それにより、プランジャ15と一体化されている弁体11は、
図1において、弁座面7a上を上方にスライドし、出口側ポート8が開放され、出口側ポート9が閉鎖される。この場合、出口側ポート8が開いているので、入口側継手2から出口側継手3の出口側ポート8に流れる。このとき冷媒は減圧される。そして、第2冷却室が第2の冷却室用の蒸発器38により冷却される。なお、第1冷却室内の温度、および、第2冷却室の温度が共に所定温度以下の場合には、圧縮機62を停止する制御が行われる。
【0048】
また、
図1のスライド弁1において、出口側ポート8を開とするか、出口側ポート9を開とするかは、頻繁に使用する出口側ポートを開とする方を非通電時とし、頻繁に使用しない方を通電時のモードに設定すれば、省エネを図ることができる。
【0049】
このように本実施例では、膨張手段としてキャピラリーチューブを使用しないので、キャピラリーチューブを使用した場合の問題が発生しない。すなわち取付作業も容易であり、さらに高価な配管部材を用意する必要もない。また、気密性を特に注意しなくても接続することが可能である。
このように本実施例に係るスライド弁1は、膨張手段を備えた三方弁として、例えば、2つの冷却室を冷却する冷蔵庫の冷却システム60に有効に利用することができる。
【0050】
以上、本発明の一実施例に係るスライド弁1とそのスライド弁1を使用した冷却システム60について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。例えば、スライド弁1は、冷蔵庫に限らず缶入り飲料の自動販売機や、スーパーマーケットなどに置かれるショーケースなどに用いられるヒートポンプ装置に適用可能である。
【0051】
また、本発明は、
図6に示した冷却システム56のように、2つのスライド弁1、1’を用いることにより、3つの冷却室を備えた冷蔵庫などにも適用可能である。すなわち、本発明に係るスライド弁1、1’は、第1冷却室用の蒸発器66、第2冷却室用の蒸発器68、第3冷却室用の蒸発器70に接続される膨張手段として使用することもできる。
【0052】
このような冷却システム56では、第1冷却室用の蒸発器66に供給される冷媒は、第1のスライド弁1の入口側ポート2aを通過してから、第1のスライド弁1の出口側ポート8を通過し、その後、第2のスライド弁1’に供給される。そして、第2のスライド弁1’に供給された冷媒が、第2のスライド弁1’の出口側ポート9’を通過することにより減圧され、第1冷却室用の蒸発器66に供給される。
【0053】
一方、第2冷却室用の蒸発器68に供給される冷媒は、第1のスライド弁1の入口側ポート2aを通過してから、第1のスライド弁1の出口側ポート8を通過し、その後、第2のスライド弁1’に供給される。そして、第2のスライド弁1’に供給された冷媒が、第2のスライド弁1’の出口側ポート8’を通過することにより減圧され、第2冷却室用の蒸発器68に供給される。
【0054】
第3冷却室用の蒸発器70に供給される冷媒は、凝縮器64から第1のスライド弁1の入口側ポート2aを通過した後、第1のスライド弁1の出口側ポート9を通過することにより減圧され、その後、第3冷却室用の蒸発器70に供給される。
【0055】
ここで、
図6の冷却システム56では、第1冷却室用の蒸発器66の蒸発圧力が最も低く、第2冷却室用の蒸発器68の蒸発圧力は、第1冷却室用の蒸発器66の蒸発圧力より高く、第3冷却室用の蒸発器70の蒸発圧力は、最も高いものとする。
【0056】
蒸発器66で熱交換される第1冷却室とは、製氷あるいは冷凍保存を行う冷凍室であり、蒸発器68で熱交換される第2冷却室とは、製氷には至らずとも低めの温度に設定される冷却室であり、蒸発器70で熱交換される第3冷却室とは、第2冷却室より高めの温度に設定される冷却室である。
【0057】
このような冷却システム56では、上流側のスライド弁1の開口面積の大きい方の出口側ポート8に、下流側のスライド弁1’の入口側ポート2a’を接続して三方弁同士を接続する。
【0058】
そして、スライド弁1の入口側ポート2aの開口面積をA、スライド弁1の開口面積の大きい方の出口側ポート8の開口面積をB、スライド弁1の開口面積の小さい方の出口側ポート9の開口面積をCとし、スライド弁1’の入口側ポート2a’の開口面積をD、スライド弁1’の開口面積の大きい方の出口側ポート8’の開口面積をE、スライド弁1’の開口面積の小さい方の出口側ポート9’の開口面積をFとしたとき、
F<E<C<A
A≦B≦D
となるように設定する。
【0059】
開口面積をそれぞれこのように設定すれば、第1冷却室用の蒸発器66の蒸発圧力が最も低く、次に第2冷却室用の蒸発器68の蒸発圧力が低く、第3冷却室用の蒸発器70の蒸発圧力が最も高くなる。
【0060】
このようにして、第1冷却室と第2冷却室と第3冷却室とを冷却することもできる。
このように、
図6に示した冷却システム56では、スライド弁1において、出口側ポート8を閉鎖し、出口側ポート9を開放するように設定すれば、第3冷却室用の蒸発器70により第3冷却室を冷却することができる。
【0061】
また、
図6に示した冷却システム56では、スライド弁1の出口側ポート8を開放しスライド弁1の出口側ポート9を閉鎖するように設定するとともに、スライド弁1’の出口側ポート9’を閉鎖しスライド弁1’の出口側ポート8’を開放するように設定すれば、第2冷却室用の蒸発器68により第2冷却室を冷却することができる。
【0062】
さらに、
図6に示した冷却システム56では、スライド弁1の出口側ポート8を開放しスライド弁1の出口側ポート9を閉鎖するとともに、スライド弁1’の出口側ポート8’を閉鎖しスライド弁1’の出口側ポート9’を開放すれば、第3冷却室用の蒸発器66により第3冷却室を冷却することができる。
【0063】
ここで、スライド弁1の開口面積の大きい方の出口側ポート8の開口面積をBとスライド弁1’の入口側ポート2a’の開口面積をDとの関係が上述のようにB≦Dの関係に設定されていることから三方弁同士の連結部、すなわちスライド弁1とスライド弁1’の連結部では、圧力損失(膨張)が生じない。
【0064】
したがって、スライド弁1’の小さい方の出口側ポート9’の開口面積を、所望とする蒸発圧力に応じてより小さい開口面積に設定すれば、より低い蒸発圧力が得られることになるので、弁の設計が容易になる。
【0065】
さらに、第1のスライド弁1の出口側ポート9の開口面積Cと、第2のスライド弁1’の出口側ポート8’の開口面積Eと、第2のスライド弁1’の出口側ポート9’の開口面積Fとを、第1冷却室用の蒸発器66と第2冷却室用の蒸発器68と第3冷却室用の蒸発器70との所望の蒸発圧力に応じた開口面積にそれぞれ設定すれば良い。
【0066】
このように設定すれば、例えば、製氷あるいは冷凍保存を行う第1冷却室と、製氷には至らずとも低めの温度に設定される第2冷却室と、第2冷却室より高めの温度に設定される第3冷却室とを所望とする温度で冷却することが可能である。
【0067】
なお、以上の説明では
図6のシステムにおいて、下流側のスライド弁1’でも減圧を行う説明をしたが、スライド弁1では、膨張(減圧)を行いながらも、下流側のスライド弁1’では、減圧を行わず流路の切換えのみを行っても良い。この場合、上流側のスライド弁1の入口側ポート2aの開口面積は、下流側のスライド弁1’に接続される出口側ポート8に対して大きく設定し、そして、下流側のスライド弁1’の入口側ポート2a’、出口側ポート8’、および出口側ポート9’のそれぞれの開口面積は、上流側のスライド弁1の出口側ポート8’の開口面積以上に設定される。
【0068】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明の技術思想は、三方弁に限定されず、四方弁あるいは三方弁以上の多方弁にも適用可能である。その場合には、
図1に示したスライド弁体11で開閉し得る出口側ポートのうち、少なくとも一つの出口側ポートを入口側ポート2aより開口面積を小さく設定すれば良い。また、複数ある出口側ポートの開口面積に大小関係を設けておけば、冷媒の減圧の度合いを適宜調整することが可能となる。