(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)担体樹脂とオレフィン−無水マレイン酸の1:1交互コポリマーとを含むマスターバッチ組成物を調製する工程であって、前記オレフィンは、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−オクテン、ブタジエン、イソプレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、およびドデセン−1からなる群から選択される、工程と、
(b)ポリアミドを、前記マスターバッチ組成物、および耐衝撃改質剤と配合する工程と、
を含むプロセスによって製造される、請求項1に記載のポリアミド組成物。
前記ポリアミド組成物は、前記耐衝撃改質剤を含むが前記オレフィン−無水マレイン酸の1:1交互コポリマーを含まない第2のポリアミド組成物と比較して改善された、少なくとも1つの機械特性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
前記ポリアミド組成物は、曲げ弾性率、破断伸び、引張り強度から選択される少なくとも1つの機械特性であって前記ポリアミドと比較して改善された機械特性をさらに有する、請求項6に記載のポリアミド組成物。
前記ポリアミド組成物は、前記耐衝撃改質剤を含むが前記オレフィン−無水マレイン酸の1:1交互コポリマーを含まない第2のポリアミド組成物の機械特性と釣り合う機械特性を有し、前記ポリアミド組成物中の耐衝撃改質剤の濃度は、前記第2のポリアミド組成物中の前記耐衝撃改質剤の濃度より低い、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
前記ポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン6−6、ナイロン−6とナイロン6−6とのコポリマー、ナイロン−9、ナイロン−10、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン6−10、芳香族ポリアミド、エラストマーポリアミド、それらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
前記ポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン6−6、ナイロン−6とナイロン6 6とのコポリマー、それらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
前記オレフィン−無水マレイン酸の1:1交互コポリマーは、重量平均分子量が約1000から約900,000の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
前記1種類以上の安定化剤が各々、ヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))からなる群から独立に選択される、請求項16に記載のポリアミド組成物。
UV安定剤、ハロゲン化または非ハロゲン化難燃添加剤、強化材物質、熱安定剤、光安定剤、重合調節剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー改質剤、摩擦調整剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、UV吸収剤、顔料、染料からなる群から選択される1種類以上の添加剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
前記強化材は、鉱物あるいは、ガラス、炭素、グラファイト、セルロースもしくは芳香族高融点ポリマーで作られた、繊維、布帛、ロービングフィラメント、チューブまたは糸である、請求項21に記載のポリアミド組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「エラストマー材料」および「エラストマー」という用語は、本明細書では同義に用いられ、通常は、典型的なエラストマー特性(引張り伸びが約200%を超え、アイゾッド衝撃強度が破断なしとなり、結晶化度が約3%未満、ガラス転移温度が0℃未満である)を呈するポリマー材料を示す。エラストマーとして用いられるポリマーの例としては、コモノマーの含有量が18%を超えるエチレン−アクリレートエステルコポリマー(たとえば、エチレンとn−ブチルアクリレート、メチルアクリレートまたはエチルアクリレートとのコポリマーなど)、熱可塑性オレフィン(TPO)、熱可塑性エラストマー(TPE)があげられるが、これらに限定されるものではない。TPOおよびTPEの例として、プラストマー、フレキソマー、エチレン−プロピレンコポリマーゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン・ターポリマーゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、「スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)」と呼ばれる水素化スチレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−オクテンコポリマー、エチレン−ヘキセンコポリマー、エチレン−4メチルペンテン−1コポリマー、比重が0.900g/ml未満のエチレン−ブテンコポリマーなどがあげられる。より低分子量でメルトインデックスの高いグレードを選択すると、加工時の高トルク条件が最小限になるおよび/またはプロセスウィンドウが広がることがある。
【0008】
無水物、酸塩化物、カルボン酸、イソシアネート、他の反応性基のうちの1つからグラフト官能基を選択して、ポリエチレンおよびポリプロピレンのようなオレフィン系半結晶性熱可塑性樹脂から、任意の相容化剤を選択できる。このようなポリマーの例は、Addivant社のPolybond(登録商標)1001および3200、DuPont社のNucrel(登録商標)およびFusabond(登録商標)、Dow Chemical社のAmplify(登録商標)およびPrimacor(登録商標)、Exxon Mobil Chemicals社のExxelor(登録商標)などである。
【0009】
第3の成分(c)として、相容化剤を含むエラストマーを用いてもよいし、あるいは、従来の耐衝撃改質剤を用いてもよいことが、本明細書に記載されている。
【0010】
本明細書に記載されているのは、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーを組成物に加えることで、引張り強度、HDT、曲げ弾性率など衝撃強度以外の機械特性を改善しつつ、衝撃強度の値の高いポリアミド組成物を製造できるという驚くべき発見である。通常は耐衝撃改質剤だけを加えることに付随する、これらの他の機械特性の悪化とは対照的に。
【0011】
引張り強度、衝撃強度および他の機械特性が改善された、ポリアミドを含むポリマー調製物を形成するのに、反応性が高い添加剤であるオレフィン−無水マレイン酸コポリマーを使用することは、過去に、国際特許出願公開第WO2012/024268A1号および対応の米国特許出願公開第2013/0150517号に記載されている。本明細書に記載されているのは、ポリアミド組成物ならびに、これらを調製するためのプロセスであり、ここで、ポリアミドと耐衝撃改質剤とオレフィン−無水マレイン酸コポリマーとの組み合わせは、驚くべきことに、ポリアミド組成物に耐衝撃改質剤を含有することで予想される負の影響の緩和につながり、これによって、引張り強度、引張り弾性率、引張り伸び、曲げ弾性率、曲げ強さ、加熱撓み温度(HDT)、軟化点のみならず、室温および低温における衝撃強度など、全体として望ましい機械特性の組み合わせを持つ組成物が提供される。
【0012】
もうひとつの実施形態では、国際特許出願公開第WO2014/008330A2号に記載されているように、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーを担体樹脂とプレミックスし、ポリアミドに添加可能なマスターバッチを形成することが可能である。
【0013】
本明細書に記載されるのは、1種類以上のエラストマーまたはタフナーとオレフィン−無水マレイン酸コポリマーとが配合されたポリアミドを含むポリマー調製物である。この組成物は、すべての成分を一工程で混合して調製されてもよいし、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーをマスターバッチで混合した後、ポリアミドとマスターバッチとを混合して調製されてもよいことは、自明であろう。マスターバッチ法の望ましい特徴としては、最終組成物へのオレフィン−無水マレイン酸コポリマー添加剤の取り込みの均一性が改善されることと、加工時における最終ポリマー組成物の加工トルクの低減、などがあげられる。マスターバッチを形成するのに用いられる担体樹脂に望ましい特徴としては、担体樹脂が添加剤と反応しない、添加剤が担体樹脂から相分離しない、担体樹脂が調製対象となるポリマーと相分離しない、マスターバッチの担体樹脂が、ポリアミドの加工で一般に用いられる加工条件および加工温度において熱的に安定した状態に保たれる、全体としての組成物がポリアミドの耐衝撃性と剛性を改善するのに有用なものとなるはずであること、などがあげられる。別の実施形態では、ポリアミド組成物は、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーと、エラストマー、ポリアミドまたはナイロンと、任意に別のエラストマーおよび/または相容化剤とを混合することで調製される、オレフィン−無水マレイン酸コポリマー/エラストマーマスターバッチを配合することによって形成される。
【0014】
本明細書に記載の実施形態は、当業者に知られた設備を用いる押出配合などの加工方法の使用を含む。プラスチック業界において、配合とは、1つ以上の工程で、1種類以上のポリマーと1種類以上の添加剤とを混合してプラスチックコンパウンドを製造するプロセスである。原料フィードはペレットであってもよいし、粉末および/または液体であってもよいが、その製品は通常、押出および射出成形などの他のプラスチック製造プロセスで用いられるペレットの形態である。
【0015】
本明細書に記載の方法の他の実施形態は、配合混合物を、直接押し出して、フィラメント、ファイバー、フィルム、シート、成形部品などの最終物品にすることを含む。配合工程には、混合物の1種類以上の成分間の反応を含んでもよいことは、理解できよう。
【0016】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、最終用途に応じて他の添加剤を使用してもよい。このような添加剤としては、1種類以上の酸化防止剤、UV安定剤またはUV吸収剤、ハロゲン化または非ハロゲン化難燃添加剤ならびに、鉱物あるいは、ガラスや炭素、グラファイト、セルロースなどの天然素材で作られた繊維、布帛、ロービングフィラメント、チューブ、糸などの強化材および/または芳香族高融点ポリマー(アラミドとも呼ばれることがある)があげられる。可塑剤、潤滑剤、レオロジー改質剤、摩擦調整剤、当業者に知られた他の添加剤も、任意に添加してもよい。添加剤の例としては、着色剤、熱安定剤、光安定剤、重合調節剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー改質剤、難燃剤、強化剤、摩擦調整剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料、フィラーまたはそれらの混合物があげられる。
【0017】
本明細書に記載された組成物に用いられるオレフィン−無水マレイン酸コポリマーは、1分子鎖あたり1つまたは2つの無水マレイン酸基を有するグラフトコポリマーではなく、ポリマーの主鎖に複数の無水マレイン酸基を有する真のコポリマーである。一実施形態では、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーは、オレフィンと無水マレイン酸との交互コポリマーである。本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィンは、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−オクテン、ブタジエン、スチレン、イソプレン、スチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、他のアルケンから選択可能である。メチルおよびブチルアクリレートのような他のコポリマーも、無水マレイン酸と一緒に使用可能である。
【0018】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィン−無水マレイン酸は、エチレン対無水マレイン酸のモル比が約1:1であるエチレン無水マレイン酸交互コポリマー(EMA)であってもよい。本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィン−無水マレイン酸は、エチレン対無水マレイン酸のモル比が約1:99から約99:1であるエチレン無水マレイン酸交互コポリマー(EMA)であってもよい。本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーは、エチレン対無水マレイン酸のモル比が約1:50から約50:1の範囲、約1:20から約20:1の範囲、約1:10から約10:1の範囲、約1:5から約5:1の範囲、約1:2から約2:1の範囲にある非交互コポリマーまたはランダムコポリマーであってもよい。
【0019】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーは、重量平均分子量が、約1000から約900,000の範囲、約20,000から約800,000の範囲、約40,000から約600,000の範囲、約50,000から約500,000の範囲または約60,000から約400,000の範囲のものであってもよい。本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、選択されるオレフィン−無水マレイン酸の1:1交互コポリマーは、商品名ZeMac(登録商標)E−60(Vertellus Specialties社、E60)で販売されているものなど、分子量が約60,000の、エチレンと無水マレイン酸との1:1交互コポリマー(1:1 EMA)であってもよいし、選択される1:1 EMAは、商品名ZeMac(登録商標)E−400(Vertellus Specialties社、E400)で販売されているものなど、分子量が約400,000であってもよい。
【0020】
オレフィン−無水マレイン酸コポリマーは一般に、鎖延長剤として作用して、押出プロセスの間にポリアミドと反応できるような、さまざまな分子量の粉末である。
【0021】
オレフィン−無水マレイン酸コポリマーマスターバッチを含む、本明細書に記載のプロセスまたは組成物のいずれにおいても、マスターバッチは、1種類以上の添加剤と、熱的に安定しメルトフローの高いポリマーと、相容性の担体樹脂と、を含む。担体樹脂として用いられるポリマーの例としては、エチレン−エステルコポリマー(たとえば、エチレンとn−ブチルアクリレート、メチルアクリレートまたはエチルアクリレートとのコポリマーなど);ポリアミド、アミン末端基が(たとえばアセチルまたは他の好適な基で)キャップされたポリアミドまたは末端基がカルボン酸基であってアミンではないポリアミド;末端基がアミンではないポリスルホニルアミド;末端基がカルボン酸基であり、アルコールではないポリカーボネート;末端基がカルボン酸基であり、アルコールではないポリエステルまたは上記の組み合わせがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
最終用途に基づいて、組成物に、他の添加剤を使用してもよい。添加剤の例としては、ポリアミド用の、酸化防止剤、造核剤、着色剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー改質剤、摩擦調整剤、他の処理助剤、熱安定剤があげられるが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載の実施例に示されるように、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーとタフナー(エラストマー)とポリアミドとを単一の工程で配合する場合と比較して、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーのマスターバッチおよびタフナーとポリアミドとを配合して形成されるポリアミド調製物では、機械特性の向上に想定外の増加が認められる。オレフィン−無水マレイン酸コポリマーを含むが耐衝撃改質剤を含有しないポリアミド組成物は、WO2012/024268A1(その開示内容を本明細書に援用する)に記載されている。
【0023】
本明細書に記載の組成物は、ポリアミドの鎖延長によって、曲げ弾性率や引張り強度など耐衝撃特性と引張り伸び特性以外の機械特性を実質的に低下させることなく、当該ポリアミドの耐衝撃特性および引張り伸び特性を高めると考えられる。本明細書に記載の組成物の用途例のひとつが、リサイクルポリアミドまたはナイロンをアップグレードすることである。この文脈において、「リサイクル」という用語は、再加工されたポリアミド、再研磨されたポリアミド、再生されたポリアミドのみならず、「規格外の」ポリアミドも含み得る。また、本明細書に記載の組成物は、バージンポリアミドの特性を改善するのにも用いることが可能である。
【0024】
射出成形は、本明細書に記載の組成物の最終成形用として一般に適用されているプロセスのひとつであり、本明細書に記載の組成物は、ブロー成形、回転成形、繊維成形、フィルム押出、異形押出、シート押出、熱成形などの他のプロセスにおいても有用である点に、注意されたい。
【0025】
本明細書に記載されているのは、ポリアミドと、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーと、エラストマーポリマーと、任意の安定剤および他の添加剤と、を含む組成物である。また、本明細書に記載されているのは、エチレン−無水マレイン酸コポリマーおよび1種類以上のエラストマーまたはタフナーを、任意の安定剤と一緒に含む組成物である。安定剤パッケージは、個々にまたは組み合わせで用いられる添加剤を含む。安定剤の例として、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)](Irganox(登録商標)1098およびBNX1098のようなもの)などの1種類以上のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgaphos(登録商標)168およびBenefos(登録商標)1680のようなもの)などのホスファイト、ヨウ化第一銅(CuI)および/またはヨウ化カリウム(KI)があげられるが、これらに限定されるものではない。ポリマー配合分野の当業者であれば、ポリアミド用の添加剤または安定剤、加工条件、ポリアミド組成物の意図した用途の適切な組み合わせを選択できることは、自明であろう。一実施形態では、安定剤は、ポリマー調製物全体の約0.01%から約5.0%w/wまたは約0.1%から約2.0%w/wで存在してもよいし、あるいは、最終組成物中に約0.25%から1.0%w/wおよびマスターバッチ中に約1.0%から約30%w/wの範囲または約5.0から約15%w/wの範囲で存在してもよい。
【0026】
それぞれの用途での要件に応じて、当業者に知られた可塑剤、潤滑剤、着色剤、レオロジー改質剤、摩擦調整剤、UV安定剤、難燃剤、強化材、フィラーおよび他の添加剤を、本明細書に記載のポリアミド組成物に任意に加えてもよい。
【0027】
一実施形態では、本明細書に記載されているようにポリアミドとエラストマーポリマーおよびオレフィン−無水マレイン酸ポリマーとを配合することによるポリアミドのポリマー組成物の製造方法を用いると、ポリアミドの分子量の増大および/または好ましい構造的な変化が生じ、衝撃強度と伸び性能(引張り伸びとして知られる)が実質的に改善されるだけでなく、引張り強度、曲げ弾性率、熱変形温度などの他の特性も改善される。
【0028】
本明細書に記載の配合ポリアミドを製造する方法の一実施形態において、この方法は、任意に、配合ポリアミドの射出成形などの当業者に知られた方法を用いて、組成物を成形する工程をさらに含む。任意に、このポリアミドは、射出成形時に、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーのマスターバッチと直接混合されてもよい。
【0029】
本明細書に記載の組成物は通常、ペレット形態に形成され、後に、押出、熱成形、ブロー成形および/または射出成形などの他のプラスチック成形プロセスで用いられることになる。本明細書に記載の組成物の調製には、バルク密度の低い粉末を取り扱うためのフィーダーが装備された、二軸押出機または連続ミキサーを用いることが好ましい。なぜならこうした機械を用いると、低溶融温度での混合状態がより良くなるからである。これらの機械のほとんどは、スクリューと、混合、搬送、脱気、添加剤供給用の複数のセグメントからなるバレルと、を有する。担体樹脂の可撓性がさらに高い場合は、配合用に、たとえば一軸押出機、振動スクリュー押出機、連続ミキサー、バンバリーミキサー、プラネタリー押出機などの他のプラスチック配合設備を用いると都合がよいこともある。各セグメントまたはゾーンの温度、供給速度、滞留時間、スクリューのデザインおよび速度などの加工パラメーターは、用途ごとに当業者が修正可能である。
【0030】
ポリアミドは一般に、ジカルボン酸とジアミンとの反応によって、あるいは、ラクタムの開環によって形成される縮合コポリマーである。炭素数を調節することで、さまざまなポリアミドを作成できる。本明細書で用いる名称では、ジアミンにおける炭素原子数を最初に示し、二酸における炭素原子数を2番目に示してある。すなわち、ポリアミド−6,6は、ジアミンの炭素が6つ、二酸の炭素が6つであり、ポリアミド−6,12は、ジアミンに炭素を6つ有し、二酸の炭素が12となろう。ポリアミド−6は、開環重合(すなわち、カプロラクタムの開環重合)によって形成されるホモポリマーである。また、ポリアミドは、ナイロン−9、ナイロン−12、ナイロン−11、ナイロン4,6、ナイロン6,10あるいは、本明細書に列挙するポリアミドのいずれであってもよい。
【0031】
一実施形態では、オレフィン−無水マレイン酸コポリマー(たとえば、ZeMac)は、無水マレイン酸グラフト耐衝撃改質剤を生成するプロセス中に取り込まれる。このプロセスでは、無水マレイン酸モノマーおよび過酸化物触媒を、改質前のエラストマーに(たとえば、一般にフレキソマーまたはプラストマーとして知られるメタロセンエチレン−オクテンコポリマーに)添加することを含む。当業者であれば、無水マレイン酸グラフト耐衝撃改質剤の形成に用いられる一般的な条件下で、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーが、共有結合的に無水マレイン酸グラフト耐衝撃改質剤に対して大幅に取り込まれることはないと考える。このため、得られる組成物をナイロンと配合し、耐衝撃性が改善された組成物を製造する。
【0032】
本発明のいくつかの例示的な実施形態が、以下の項にて記載される。
*ポリアミドと、1種類以上のエラストマーと、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーと、を含む混合物を配合する工程を含むプロセスによって製造されるポリアミド組成物。
【0033】
*(a)ポリアミドと、
(b)オレフィン−無水マレイン酸コポリマーと、
(c)耐衝撃改質剤と、
を含む混合物を配合する工程を含むプロセスによって製造される、ポリアミド組成物。
【0034】
*(a)エラストマー耐衝撃改質剤とオレフィン−無水マレイン酸コポリマーとを含むマスターバッチ組成物を調製する工程と、
(b)ポリアミドを、マスターバッチ組成物と配合する工程と、を含むプロセスによって製造される、ポリアミド組成物。
【0035】
*耐衝撃改質剤オレフィン−無水マレイン酸コポリマーマスターバッチ組成物は、
(a)オレフィン−無水マレイン酸コポリマーと、無水マレイン酸モノマーと、エラストマーと、過酸化物触媒との混合物を調製する工程と、
(b)オレフィン−無水マレイン酸コポリマーの存在下、耐衝撃改質剤を形成する工程と、
を含むプロセスによって調製される、前項に記載のポリアミド組成物。
【0036】
*ポリアミド組成物は、耐衝撃改質剤を含むがオレフィン−無水マレイン酸コポリマーを含まない第2のポリアミド組成物と比較して改善された、少なくとも1つの機械特性を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0037】
*ポリアミド組成物は、耐衝撃改質剤を含むがオレフィン−無水マレイン酸コポリマーを含まない第2のポリアミド組成物の機械特性と釣り合う機械特性を有し、ポリアミド組成物中の耐衝撃改質剤の濃度は、第2のポリアミド組成物中の耐衝撃改質剤の濃度より低い、前述の請求項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0038】
*改善された機械特性は、衝撃強度である、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0039】
*組成物は、曲げ弾性率、破断伸び、引張り強度から選択される、少なくとも1つの、ポリアミドと比較して改善された機械特性をさらに有する、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0040】
*ポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン6−6、ナイロン−6とナイロン6−6とのコポリマー、ナイロン−9、ナイロン−10、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン6−10、芳香族ポリアミド、エラストマーポリアミド、それらの混合物からなる群から選択される、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0041】
*ポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン6−6、ナイロン−6とナイロン6−6とのコポリマー、それらの混合物からなる群から選択される、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0042】
*ポリアミドは、リサイクルポリアミドである、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0043】
*オレフィンは、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−オクテン、ブタジエン、スチレン、イソプレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、ドデセン−1、1−テトラデセンから選択される、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0044】
*オレフィンは、エチレンである、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0045】
*オレフィン−無水マレイン酸コポリマーは、オレフィン−無水マレイン酸の1:1交互コポリマーである、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0046】
*オレフィン−無水マレイン酸コポリマーは、重量平均分子量が約1000から約900,000の範囲である、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0047】
*オレフィン−無水マレイン酸コポリマーは、重量平均分子量が約60,000である、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0048】
*コポリマーは、重量平均分子量が約400,000である、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0049】
*1種類以上の安定化剤をさらに含む、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0050】
*1種類以上の安定化剤が各々、ヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))からなる群から独立に選択される、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0051】
*1種類以上の安定化剤は、その濃度が独立に、約0.01から約1.0%w/wである、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0052】
*相容化剤をさらに含む、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0053】
*エラストマーは、無水マレイン酸グラフトエラストマーである、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0054】
*耐衝撃改質剤は、無水マレイン酸の濃度が約0.5%から約5%であるグラフト無水マレイン酸エラストマーまたはグラフト無水マレイン酸ターポリマーから選択される、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0055】
*無水マレイン酸の濃度が約0.8%から約2%である、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0056】
*マレイン酸無水物グラフトエラストマーは、各々が無水マレイン酸とグラフト重合されている、熱可塑性オレフィン(TPO)、リアクター内でエチレンとプロピレンから製造される二元共重合ゴム(EPR)、エチレン、プロピレン、ジエン改質剤の三元共重合ゴム(EPDM)、エチレンとα−オレフィンのプラストマーからなる群から選択される、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0057】
*マレイン酸無水物グラフトエラストマーは、エチレンとアクリル酸エステルと無水マレイン酸とのランダムターポリマーであって、無水マレイン酸の濃度は約1%から約5%である、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0058】
*EPDMは、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)またはビニルノルボルネン(VNB)であり、EPDMの濃度は約1%から約12%である、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0059】
*耐衝撃改質剤は、エチレン−アクリレートエステル−無水マレイン酸ターポリマーである、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0060】
*アクリレートエステルは、メチル、プロピルまたはブチルアクリレートエステルである、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0061】
*UV安定剤、ハロゲン化または非ハロゲン化難燃添加剤、強化材物質、熱安定剤、光安定剤、重合調節剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー改質剤、摩擦調整剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、UV吸収剤、顔料、染料から選択される1種類以上の添加剤をさらに含む、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0062】
*強化材は、鉱物あるいは、ガラス、炭素、グラファイト、セルロース、芳香族高融点ポリマーで作られた、繊維、布帛、ロービングフィラメント、チューブまたは糸である、前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【0063】
*前述の項のいずれか1項に記載のポリアミド組成物で製造された物品。
【実施例】
【0064】
方法および実施例
材料:
Jamplast社からリサイクル品質のポリアミド6(グレードPA6 NG320HSL)を入手し、受領時のまま使用した。使用した他のポリアミド−6は、BASF社から入手した、Ultramid(登録商標)B3SおよびUltramid(登録商標)B24 N02と呼ばれる最高(バージンナイロン−6とも呼ばれる)グレードであった。使用したポリアミド−6,6は、BASF社から入手した、Ultramid(登録商標)A3Kと呼ばれる最高(バージンナイロン−66とも呼ばれる)グレードであった。すべてのグレードが乾燥した状態のまま保たれるよう、注意を払った。
【0065】
実施例では、Vertellus Specialties社から入手した、重量平均分子量(MWw)が60,000の1:1エチレン−無水マレイン酸交互コポリマーグレードZeMac(登録商標)E−60(E−60)を使用した。Vertellus Specialties社から入手した、重量平均分子量(MWw)が400,000の1:1エチレン−無水マレイン酸交互コポリマーグレードZeMac(登録商標)E−400(E−400)も、他の実施例で使用した。
【0066】
また、DuPont社から入手したFusabond(登録商標)N493(エチレン−オクテン−g−MAh)と、Addivant社から入手したRoyaltuf(登録商標)485(EPDM−g−MAh)と、Dow Chemical社から入手したAmplify GR216(無水マレイン酸とグラフト重合したプラストマー)とを、市販の耐衝撃改質剤として使用した。
【0067】
Lion Copolymer社から入手したRoyalene(登録商標)IM7200ペレットと、ExxonMobil Chemicals社から入手したエチレン−メチルアクリレートコポリマー樹脂(メルトインデックス110g/分)であるOptema(商標)グレードTC 141と、Lotryl(登録商標)グレード28BA175エチレン−ブチルアクリレートコポリマーとを、無水マレイン酸のグラフト重合をしていないエラストマーの代表として用いた。
【0068】
Dow Chemical社から入手したAmplify(登録商標)GR205(無水マレイン酸とグラフト重合した高密度ポリエチレン)を、非エラストマーグラフトコポリマーの代表として使用し、相容化剤として用いた。
【0069】
ExxonMobil Chemicals社から入手したエチレン−メチルアクリレートコポリマー樹脂であるOptema(登録商標)グレードTC 141(メルトインデックス110g/分)と、Dow Chemical社から入手したAmplify(登録商標)GR216(無水マレイン酸とグラフト重合した)とを、マスターバッチ配合物用の担体樹脂として用いた。
【0070】
使用したガラス繊維グレードは、NEGのECS 03 T275Hであり、配合時にサイドフィーダーで、下流に向けてメルトに供給した。
【0071】
試験:
以下の表1に、使用した試験方法と対応するASTMの方法を示す。
【表1】
【0072】
エラストマーポリマー、オレフィン−無水マレイン酸、ポリアミドの配合
かみ合い型異方向回転二軸押出機(Berstorff 25mm)を使用して、温度プロファイル220℃、235℃、255℃、245℃、240℃、240℃、240℃、260℃で配合を行い、水槽中で冷却し、ペレット化した。配合用ホッパーへの供給には、2つのフィーダーを有する系を使用した。添加剤(たとえば、酸化防止剤および熱安定剤などの安定剤)については、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーと事前に混合して一方のフィーダーを用いて供給し、本明細書に記載の担体樹脂および他のペレットを他方のフィーダーで供給した。得られたペレットを70℃で12時間乾燥させ、残っていた水分を除去した。調製物を表2に示す。使用したバージンナイロン−6は、Ultramid(登録商標)B3Sであり、使用したEPDMペレットは、Royalene(登録商標)IM 7200で、いずれも本明細書に記載されている。使用した高密度ポリエチレングラフト無水マレイン酸は、Amplify(登録商標)GR 205(POE−g−MAh)であった(相容化剤を任意に用いたことを示している)。使用した安定剤および使用したエチレン−無水マレイン酸交互コポリマーも、本明細書に記載されている。
【表2】
【表3】
衝撃強度値について、CBは完全な破断を示し、HBは、いくつかの試験片は破断したが破断しなかったものもあることを示し、NBは破断なしを示す。
【0073】
配合と試験の後に得られた結果を表3に示す。実施例2、3、4のデータは、実施例1(対照)と比較して、ほとんどの特性における改善を示している。全体として衝撃強度が改善される。この改善は、相容化剤を含む組成物すなわち実施例4で高めであり、実施例2および3の非相容化組成物で低めである。実施例3における組成物の引張り強度は高く、実施例4ではさらに高い。同様に、破断時の曲げ強さも、実施例2および3の組成物で高めである。想定外の結果は、本発明の組成物がエラストマー成分を25%含有するにもかかわらず、一般に低下する引張り強度および曲げ弾性率などの他の特性が、実際には改善されていることである。本明細書に記載のプロセスおよび組成物を、プラストマーおよびエラストマーの組み合わせなどの他のエラストマー系を使用することにまで拡張して、本発明のエチレン−無水マレイン酸交互コポリマーの存在下における機械特性を高めることが可能である。
【0074】
表4および表6に示す別の配合例は、かみ合い型異方向回転二軸押出機(Coperion ZSK−40)を使用し、バージンポリアミド−6を、温度設定230℃、240℃、240℃、240℃、240℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、245℃、240℃で用いて、かつ、サイドフィーダー(グレードECS 03 T275H)を介して供給されるNEGのガラス繊維を含むバージンポリアミド−6,6を、温度設定243℃、254℃、262℃、268℃、274℃、281℃、280℃、276℃、271℃、274℃で用いて行われた。これらの実験ではともに、市販のグラフト無水マレイン酸コポリマーであるFusabond(登録商標)N493(PE−g−MAh)およびRoyaltuf(登録商標)485(EPDM−g−MAh)を使用した。
【表4】
【0075】
表5は、表4に示す組成物の配合および射出成形後に得られた材料での試験結果を示す。実施例9および11は、室温と−30℃の低温の両方の機械特性が、E−60を含有する実施例10および12で得られる特性と比較される対照である。実施例10および12は、低温での耐衝撃性、引張り強度、伸び、曲げ弾性率の改善に加えて、室温での耐衝撃性に顕著な改善が認められる。
【表5】
【0076】
表6は、オレフィン−無水マレイン酸コポリマー(E−60)と一緒に、耐衝撃改質剤としても知られる市販のグラフト無水マレイン酸コポリマーであるFusabond(登録商標)N493(PE−g−MAh)およびRoyaltuf(登録商標)485(EPDM−g−MAh)と一緒に、30%のガラス繊維を含有するナイロン6−6の組成を示す。
【表6】
【0077】
表7におけるE−60を含有する実施例14および16を、E−60を含まないそれぞれの対照と比較する(実施例13および15)。E−60は、ナイロン、ガラス繊維、耐衝撃改質剤間の界面剤として作用し、低温での耐衝撃性を含むすべての機械特性を改善すると考えられている。
【表7】
【0078】
マスターバッチ法を用いたリサイクルポリアミドおよびバージンポリアミドでの組成物の調製:
本明細書には、一般に2つの工程からなるマスターバッチ法を用いて調製される組成物も記載されている。工程1では、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーとエラストマー材料とを合わせることでマスターバッチを調製し、工程2では、マスターバッチを「レットダウン」するか、さらにポリアミドに配合する。工程1または2のいずれにおいても、組成物に追加の成分を含んでもよい。
【0079】
工程1−一般的な配合マスターバッチ調製
上記に加えて、マスターバッチ法を用いて本発明の組成物を調製した。表8は、各マスターバッチ(MB)MB−1、MB−2、MB−3の組成を示す。加工については、かみ合い型異方向回転二軸押出機(Berstorff 25mm)を使用して、温度プロファイル140℃、150℃、155℃、155℃、155℃、155℃、155℃、170℃で行ってストランドを得て、これを水槽中で冷却してペレット化した。また、表8は、組成物のマスターバッチMB−4も示す。このマスターバッチの配合は、かみ合い型異方向回転二軸押出機(Berstorff 52mm)を用いる二段プロセスで行った。供給を最初から最後まで一定させるとともに、アミンで末端キャップしたナイロン−6との激しい反応を回避するために、それぞれの工程において、ZeMac(登録商標)E−60粉末とアミンで末端キャップしたナイロン−6(Ultramid(登録商標)B24 N02)との比を変化させた。どちらの工程でも、150℃、200℃、230℃、230℃、200℃、200℃、200℃、200℃、200℃、230℃の同じ温度プロファイルを使用し、ストランドを水槽中で冷却し、ペレット化した。配合用のホッパーへの供給には、2つのフィーダーを有する系を使用した。添加剤(たとえば、安定剤、酸化防止剤、任意に潤滑剤粉末)については、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーと事前に混合して一方のフィーダーを用いて供給し、本明細書に記載の担体樹脂および他のペレットを他方のフィーダーで供給した。得られたペレットを70℃で12時間乾燥させ、残っていた水分を除去した。オレフィン−無水マレイン酸コポリマーを含むマスターバッチの生成に使用した調製物を、表8に示す。
【表8】
*MB=マスターバッチ材料
1N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]
2トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
3N,N’エチレンビス−ステアラミド
【0080】
工程2A−リサイクルポリアミド−6とエラストマーおよびマスターバッチの調製物の配合:
表8に示すマスターバッチMB−1およびMB−2の調製物を、第2のステップにて、かみ合い型異方向回転二軸押出機(Coperion ZSK−40)中で、温度設定230℃、240℃、240℃、240℃、240℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、245℃、240℃を使用して、リサイクルポリアミド−6とさらに配合した。両方の組の調製物を表9に示す。
【表9】
【0081】
表1に列挙した方法を用いて、引張り強度、曲げ強度、アイゾッド衝撃強度を測定した。これらの機械的な試験は、配合ペレットを70℃で12時間かけて乾燥させて残留水分を除去した後に行った。試料については、ASTMのプロトコールに記載されているようにして試験片を調整後に、成形した状態で使用した。また、吸収されたすべての水が乾燥レベル0.01%〜0.3%になるように、平衡まで乾燥させた後、吸水試験を行った。
【0082】
表10は、配合されたリサイクルポリアミド−6の室温における引張り強度、曲げ強度、ノッチ付アイゾッド衝撃強度を示す。通常、エラストマーは、衝撃強度を高めるが剛性を低下させることが知られている。
【表10】
【0083】
実施例18(対照)すなわち、無水マレイン酸グラフトエラストマー(Fusabond(登録商標)N493)を配合したリサイクルポリアミド−6について表10に示す結果は、実施例17(対照)に示す対照試料の組成物と比較して、アイゾッド衝撃強度が改善されたことを示している。しかしながら、引張り特性と曲げ特性のどちらも低めである。引張り伸びですら、低めである。実施例19で用いたものなどの担体樹脂としてエラストマーを用いて調製したマスターバッチを組み合わせると、衝撃強度が高くなり、引張り強度、伸び弾性率、曲げ弾性率が改善される。驚くべきことに、少量のマスターバッチ(2.5重量%)を7.5重量%のエラストマーと併用すると(実施例11)、タフナーだけを同じ総重量%で使用した場合(実施例19)と比較して衝撃強度が2倍になるだけでなく、市販の良い耐衝撃改質剤を20〜25重量%含有する組成物で得られる衝撃強度に匹敵するものとなる。
【0084】
実施例20および21の調製物で得られる結果は、実施例17(対照)と比較するとアイゾッド衝撃強度が2倍以上であることを示している。この衝撃強度は、エラストマーを単独で用いた場合またはマスターバッチと併用した場合ほどは高くはないが、全体としては引張り強度および衝撃強度が改善されており、これでもまだ多くの用途では十分に望ましい。
【0085】
工程2B−バージンポリアミド−6およびポリアミド−6,6とエラストマーおよびマスターバッチの調製物の配合:
表8に示す配合マスターバッチMB−2およびMB−3を、第2の工程において、かみ合い型異方向回転二軸押出機(Coperion ZSK−40)を使用して温度設定230℃、240℃、240℃、240℃、240℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、245℃、240℃で、バージンポリアミド−6と再配合した。調製物を表11に示す。
【表11】
【0086】
表12は、バージンポリアミド−6中に15%と25%の濃度で用いた2種類の市販の耐衝撃改質剤を含有する対照試料(実施例22、26、28、32)の機械特性を示す。実施例23〜25、27、29〜31、32でマスターバッチを加えた結果、それぞれの対照試料と比較して、耐衝撃性は適度に増加するか保持され、引張り強度、伸び弾性率、曲げ弾性率は大幅に増加していることがわかる。得られたポリアミド−6は、一般に知られているスーパータフナイロン−6よりも優れているとみなせるであろう。
【表12】
【0087】
表13は、バージンポリアミド−6と同様の装置を用いたが243℃、254℃、262℃、268℃、274℃、281℃、280℃、276℃、271℃、274℃という異なる温度プロファイルを使用して、耐衝撃改質剤およびマスターバッチと配合されたバージンポリアミド−6,6の組成を示す。
【表13】
【0088】
表14は、表13の配合組成物の機械特性を示す。オレフィン−無水マレイン酸コポリマーのマスターバッチの存在下におけるバージンポリアミド−6,6は、耐衝撃性の改善と他の機械特性の向上という点で、バージンポリアミド−6で得られたもの(表12)と極めて近い傾向を示している。唯一の例外は実施例35で、その対照(実施例34)と比較して、耐衝撃性がわずかに下がっている。しかしながら、他の機械特性は大幅に改善されている。他の実施例では、実施例36および40は、対照試料(実施例34および38)と比較して、いずれかのタイプの耐衝撃改質剤(FusabondおよびRoyaltuf)と併用した場合に、MB−3の存在下にて極めて顕著な耐衝撃性の向上を示している。
【表14】
【0089】
表15に示す対照の実施例44、49、52でみられるように、エラストマーまたは耐衝撃改質剤の存在は通常、熱変形温度/加熱撓み温度(HDT)の低下につながる。本明細書に記載のプロセスおよび組成物は、驚くべきことに、HDTを向上させ、エラストマーまたは耐衝撃改質剤と配合されたバージンナイロンのHDTすらも向上させる。表15は、ZeMac(登録商標)E−60およびそのマスターバッチの組成ならびに、これらがエラストマーまたは耐衝撃改質剤の存在下にてバージンナイロン−6およびナイロン−66のHDTに対しておよぼす影響を示す。
【表15】
【0090】
表15の実施例45〜48、50〜51、53〜56は、それぞれの対照試料と皮革した場合にHDT値が高くなったことを示している。表15に示す組成のいくつかは、実施例45、48、50、51、53、56を除いて、表11および表13に示すものと同様である。マスターバッチおよび耐衝撃改質剤を含有する表11および表13と同様である表15の実施例は、耐衝撃性の値が高いだけでなく、機械特性および熱特性が向上している。
【0091】
組成物を用いた物品の作製
本明細書における本発明の組成物は、当業者らに知られた方法を用いて物品に形成できる。一例として、射出成形、ブロー成形、押出などがあげられる。表11のポリアミド−6組成物を、犬用の骨やプラークなどのさまざまな形状に射出成形した。この成形は、以下の装置とプロセス条件を用いて行った。
i. 直径35mmでL/D比が20/1に等しい標準的なシングルスクリューを有するVandorn Intelect 110T射出成形プレス;
ii. バレル温度225〜250℃の範囲でプロファイルを上昇;
iii. ノズル温度238℃;
iv. 型の温度83℃;
v. 引張り試験片用にはASTM D638タイプIの型;
vi. プラーク寸法4.25インチ×4.25インチ×0.125インチの型;
vii. スクリューの回転速度100RPM;
viii. 速度1〜1.5インチ/秒で射出;
ix. 一定の射出圧2300 psiおよび保持圧800psi;
x. 保持時間8〜10秒。
【0092】
以上、耐衝撃性、機械特性、熱特性の値が高いポリアミド組成物を製造するための方法ならびに当該組成物を用いて物品にするための方法のいくつかの実施形態を本明細書にて説明したが、これらの実施形態は、本明細書に記載の本発明を示す非限定的な例として提示したものにすぎない。本開示を考慮すると、本明細書に記載の実施形態に対する多くの変更および改変が自明になるであろう。したがって、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者が変更および改変をほどこしてもよく、その要素に対して等価物と置き換えることもできる旨も理解されたい。
【0093】
さらに、代表的な実施形態について説明するにあたり、この開示が、工程の特定の並びとしての方法および/またはプロセスを提示してきている場合もある。しかしながら、こうした方法またはプロセスが本明細書に記載の工程の特定の順序に依存するものでないかぎり、当該方法またはプロセスは、そこに記載の工程の一連の並びに限定されるものではない。工程を他の並びにしてもよいことは、明らかになるであろう。したがって、本明細書に開示した工程の特定の順序は、特許請求の範囲に対する限定と解釈されるべきものではない。また、方法および/またはプロセスに関する特許請求の範囲は、そこに記載の順序でのそれらの工程の性能に限定されるべきものではなく、その並びを変更してもよいことならびに、それでもなお本発明の主旨および範囲内にとどまることは、容易に明らかになるであろう。
【0094】
==関連出願へのクロスリファレンス==
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/788,900号の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体を本明細書に援用する。