特許第6453302号(P6453302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453302
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】小型空気熱モデルベースの制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/04 20060101AFI20190107BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20190107BHJP
   F02C 9/28 20060101ALI20190107BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   G05B13/04
   F02C9/00 C
   F02C9/28 A
   F02C9/28 C
   F02C7/00 A
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-502500(P2016-502500)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-521394(P2016-521394A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】US2014027636
(87)【国際公開番号】WO2014152701
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】61/800,440
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】カープマン,ボリス
(72)【発明者】
【氏名】ニエムチッキ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ディンズモア,イアン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】センビアンテ,デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ルッポルド,ロバート,エイチ.
【審査官】 大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0052370(US,A1)
【文献】 特開2006−057595(JP,A)
【文献】 特開2009−041565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
G05B 1/00− 7/04
11/00−13/04
17/00−17/02
21/00−21/02
23/00−23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
される装置(130)の制御面の位置決めを行うアクチュエータ(124)と、
モデル出力の関数として前記アクチュエータ(124)に指示する制御則(111)と、
前記モデル出力を生成するモデルプロセッサ(110)と、
を備える、制御システム(100)であって、
前記モデルプロセッサ(110)は、
モデル入力ベクトルを処理し、モデル動作モードを設定する入力オブジェクト(220)と、
前記モデル動作モードに基づき開ループモデル(410)に入力される前記モデルプロセッサ(110)の動的状態を設定する状態設定モジュール(420)であって、前記開ループモデル(410)は、前記動的状態及び前記モデル入力ベクトルの関数として現在の状態の導関数、ソルバ状態誤差、及び合成パラメータを生成し、前記現在の状態の導関数及び前記ソルバ状態誤差の制約条件は一連のサイクル合成モジュールに基づいており、前記一連のサイクル合成モジュールの各メンバは前記制御される装置(130)の1サイクルの構成要素をモデル化するとともに、一連のプログラムを備えており、前記プログラムは、前記構成要素の動作を決定する数理的に抽象化された物理法則に基づいている、状態設定モジュール(420)と、
前の状態、前記在の態の導関数、前記ソルバ状態誤差、及び前記合成パラメータのうちの少なくとも1つに基づき、前記モデルの推定状態を判断する状態推定モジュール(440)と、
前記モデル出力を決定するために前記モデルの少なくとも前記合成パラメータを処理する出力オブジェクト(240)と、
を備える、制御システム(100)。
【請求項2】
前記モデルプロセッサ(110)または前記制御則(111)の少なくとも1つに命令を与えるオペレータインターフェース(140)をさらに備える、請求項1に記載の制御システム(100)。
【請求項3】
前記モデル入力ベクトルにデータを提供するシステムセンサ(126)をさらに備える、請求項1に記載の制御システム(100)。
【請求項4】
前記プログラムのうちの少なくとも1つは、1つあるいは複数のサブプログラムを含む構成可能なプログラムである、請求項1に記載の制御システム(100)。
【請求項5】
少なくとも1つの構成可能なプログラムは、圧縮器要素の物理的プロセスをモデル化するように設計される、請求項4に記載の制御システム(100)。
【請求項6】
少なくとも1つの構成可能なプログラムは、タービン要素の物理的プロセスをモデル化するように設計される、請求項4に記載の制御システム(100)。
【請求項7】
前記モデル入力ベクトルは、生エフェクタデータ、境界条件、エンジン検出データ、単位変換情報、範囲制限情報、レート制限情報、動的補正判定、合成不足入力、の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の制御システム(100)。
【請求項8】
前記制御される装置(130)は、ガスタービンエンジンである、請求項1に記載の制御システム(100)。
【請求項9】
前記1つあるいは複数のサイクル合成モジュールは、前記ガスタービンエンジンの熱力学サイクルの構成要素と関連付けられた物理的プロセスの1つあるいは複数の数理的抽象化に基づいている、請求項8に記載の制御システム(100)
【請求項10】
制御される装置(130)を制御する方法であって、
モデルプロセッサ(110)を使用してモデル出力を生成し、
制御則を使用し前記モデル出力の関数として、前記制御される装置(130)と関連したアクチュエータ(124)に指示し、
前記アクチュエータ(124)を使用して、前記制御される装置(130)の制御面の位置決めを行う、
ことを含み、
記モデルプロセッサ(110)は、
モデル入力ベクトルを処理し、モデル動作モードを設定する入力オブジェクト(220)と、
前記モデル動作モードに基づき開ループモデル(410)に入力される前記モデルプロセッサ(110)の動的状態を設定する状態設定モジュール(420)であって、前記開ループモデル(410)は、前記動的状態及び前記モデル入力ベクトルの関数として現在の状態の導関数、ソルバ状態誤差、及び合成パラメータを生成し、前記現在の状態の導関数及び前記ソルバ状態誤差の制約条件は一連のサイクル合成モジュールに基づいており、前記一連のサイクル合成モジュールの各メンバは前記制御される装置(130)の1サイクルの構成要素をモデル化するとともに、一連のプログラムを備えており、前記プログラムは、前記構成要素の動作を決定する数理的に抽象化された物理法則に基づいている、状態設定モジュール(420)と、
前の状態、前記在の態の導関数、前記ソルバ状態誤差、及び前記合成パラメータのうちの少なくとも1つに基づき、前記モデルの推定状態を判断する状態推定モジュール(440)と、
前記モデル出力を決定するために前記モデルの少なくとも前記合成パラメータを処理する出力オブジェクト(240)と、
を備える、制御される装置(130)を制御する方法。
【請求項11】
前記制御される装置(130)と機能的に関連付けられたオペレータインターフェース(140)を介して前記モデルプロセッサ(110)が命令を受領することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記制御される装置(130)は、ガスタービンエンジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルプロセッサ(110)は、エンジンパラメータオンボード合成装置である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つあるいは複数のサイクル合成モジュールは、前記ガスタービンエンジン(130)の熱力学サイクルの構成要素と関連付けられた物理的プロセスの1つあるいは複数の数理的抽象化に基づいている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記プログラムのうちの少なくとも1つは、1つあるいは複数のサブプログラムを含む構成可能なプログラムである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
ファンと、
前記ファン下流の圧縮器セクションと、
前記圧縮器セクション下流の燃焼器セクションと、
前記燃焼器セクション下流のタービンセクションと、
前記ガスタービンエンジン(130)の要素の制御面の位置決めを行うアクチュエータ(124)と、
モデル出力の関数として前記アクチュエータ(124)に指示する制御則(111)と、
前記モデル出力を生成するモデルプロセッサ(110)と、
を備える、ガスタービンエンジン(130)であって、
前記モデルプロセッサ(110)は、
モデル入力ベクトルを処理し、モデル動作モードを設定する入力オブジェクト(220)と、
前記モデル動作モードに基づき開ループモデル(410)に入力される前記モデルプロセッサ(110)の動的状態を設定する状態設定モジュール(420)であって、前記開ループモデル(410)は、前記動的状態及び前記モデル入力ベクトルの関数として現在の状態の導関数、ソルバ状態誤差、及び合成パラメータを生成し、前記現在の状態の導関数及び前記ソルバ状態誤差の制約条件は一連のサイクル合成モジュールに基づいており、前記一連のサイクル合成モジュールの各メンバは前記ガスタービンエンジン(130)の1サイクルの構成要素をモデル化するとともに、一連のプログラムを備えており、前記プログラムは、前記構成要素の動作を決定する数理的に抽象化された物理法則に基づいている、状態設定モジュール(420)と、
前の状態、前記在の態の導関数、前記ソルバ状態誤差、及び前記合成パラメータのうちの少なくとも1つに基づき、前記モデルの推定状態を判断する状態推定モジュール(440)と、
前記モデル出力を決定するために前記モデルの少なくとも前記合成パラメータを処理する出力オブジェクト(240)と、
を備える、ガスタービンエンジン(130)。
【請求項17】
前記モデルプロセッサ(110)は、エンジンパラメータオンボード合成装置である、請求項16に記載のガスタービンエンジン(130)。
【請求項18】
前記ガスタービンエンジン(130)のサイクルの前記要素は、ダクト、ブリード、ある位置での圧力損失、タービン、圧縮器、ディフューザ、バーナー、出口ガイドベーン、ノズル、ファン、効率損失モジュール、ファンギアボックス、トルク測定、のうちの少なくとも1つの要素である、請求項16に記載のガスタービンエンジン(130)。
【請求項19】
前記ガスタービンエンジン(130)の動作と関連付けられたデータを収集するセンサ(126)をさらに備え、このデータは前記モデルプロセッサ(110)で使用される、請求項16に記載のガスタービンエンジン(130)
【請求項20】
前記ガスタービンエンジン(130)の動作と関連付けられたデータを前記モデルプロセッサ(110)によって読み取り可能なデータ形式に変換するアナログ−デジタル変換器(123)をさらに備える、請求項16に記載のガスタービンエンジン(130)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年3月15日に出願された仮出願61/800,440号の米国特許法第119(e)条に基づく利益を請求する。
【0002】
本発明は、工学システムの設計及び制御、特に流体工学システムの設計及び制御に関する。
【背景技術】
【0003】
流体工学システムは、広く使用され、航空・発電用ガスタービンエンジン、HVAC&R(暖房、換気、空調、及び冷却)、燃料電池、及びその他、炭化水素抽出、材料処理及び製造用のより一般的な流体処理システムがある。これらのシステムは、次の構成要素の一部または全てを含む:ターボ機械、燃料電池層、電気モータ、パイプ、ダクト、バルブ、ミキサ、ノズル、熱交換器、ギア、化学装置、及びその他流体流生成または変更装置。
【0004】
これらの適用では、工学制御システムに対しそれぞれ異なる動作要求がある。ガスタービンエンジンの適用では、例えば、サイクルとしてブレイトンタービンまたは第一エリクソンサイクルがあり、基本的な熱力学パラメータ(またはプロセス変数)として、インレット、圧縮器、燃焼器、タービン及び排気系での作動流体の圧力、温度、及び流量がある。パラメータは、全体スラスト、回転エネルギー、またはその他パワー出力測定値に関連する。確実に安全で効率的なエンジン動作を維持しながらこの出力を正確に制御するためには、工学制御システムは高速、正確、堅牢である必要があり、全ての性能要求レベルにわたりリアルタイム制御が可能である必要がある。適切なプロセス変数はシステムタイプと構成により異なるが、工学制御には正確性、効率性及び信頼性は変わらず必要であり、全体コスト、動作/維持要求の経済的制約も変わらない。
【0005】
さらに、制御対象のシステムパラメータを直接計測できないこともあるため(技術が未開発、費用が高額、装置の信頼性が低いなどのため)、制御システムではシステムパラメータのリアルタイム推定が必要となることもある。システムパラメータは、制御フィードバックとして使用する所与の組の計測入力のために、工学システム及び/またはプロセスを数理的に抽象化したものである。
【0006】
過去、流体工学システム用制御システムでは区分的線形変数表示を使用していた。これらの制御システムはその性質上、比較的単純な非線形システムに限定された。その他過去の手法では、センサを制御する重要なシステムパラメータを制限する半経験的関係を使用する;そのようなシステムの欠点は、正確性に欠け、実施用ハードウェアを追加するため高額なことにある。その他にも、リテール環境で定常シミュレーションが試された;しかしその性質上、これらのモデルは大きく、反復ソルバを使用し、維持コストが高額であり、リアルタイム環境では決定的に堅牢さに欠ける。
【0007】
近年公知の流体工学システム制御では、流体工学システムの非反復式数理的抽象化に基づく構成要素レベルの物性を使用する。この数理的抽象化は、適用する流体工学システム専用のソフトウェア環境で概念化される。工学システム制御用システム及び手法の例は、米国特許第8,090,456号(「System and method for design and control of engineering systems utilizing component−level dynamic mathematical model」)に詳述されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
従来のエンジンパラメータオンボード合成(EPOS)の演算の非効率性を克服する流体工学システムのリアルタイム制御システムにおけるEPOSが必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様により、制御システムが開示される。本制御システムは、制御面を備えた制御装置の位置決めを行うアクチュエータを備え、前記アクチュエータは、モデル状態を制御するために前記制御面の位置決めを行う。前記システムは、モデル出力の関数として前記アクチュエータに指示する制御則を備える。前記制御システムは、前記モデル出力を生成するモデルプロセッサを備え、前記モデルプロセッサは、モデル入力を処理し、モデル動作モードを設定する入力オブジェクトと、前記モデル動作モードに基づき開ループモデルに入力される前記モデルプロセッサの動的状態を設定する状態設定モジュールと、を備える。ここで、前記開ループモデルは、前記動的状態及び前記モデル入力の関数として前記現状モデルを生成し、前記現状モデルの制約条件は一連のサイクル合成モジュールに基づいており、前記一連のサイクル合成モジュールの各メンバは前記制御装置の1サイクルの構成要素をモデル化するとともに、一連のユーティリティを備えており、前記ユーティリティは、前記構成要素に関連する数理的に抽象化された物理的特性に基づいている。前記モデルプロセッサは、さらに、前記開ループモデルの以前の状態モデル出力及び現状モデルに基づき、前記モデルの推定状態を判断する状態推定モジュールと、前記モデル出力を決定するために前記モデルの前記推定状態を処理する出力オブジェクトと、を備える。
【0010】
一例では、制御システムは、前記モデルプロセッサ及び/または前記制御則に命令を与えるオペレータインターフェースをさらに備える。
【0011】
他の一例では、制御システムは、モデル入力を決定するためにシステムセンサをさらに備える。
【0012】
他の一例では、ユーティリティのうちの少なくとも1つは、1つあるいは複数のサブユーティリティを含む構成可能なユーティリティである。
【0013】
さらに一例では、少なくとも1つの構成可能なユーティリティは、圧縮器要素の物理的プロセスをモデル化するように設計される。
【0014】
さらに他の一例では、少なくとも1つの構成可能なユーティリティは、タービン要素の物理的プロセスをモデル化するように設計される。
【0015】
他の一例では、モデル入力は、生エフェクタデータ、境界条件、エンジン検出データ、単位変換情報、範囲制限情報、レート制限情報、動的補正判定、合成不足入力、の少なくとも1つを含む。
【0016】
他の一例では、制御装置は、ガスタービンエンジンである。
【0017】
さらに一例では、1つあるいは複数のサイクル合成モジュールは、ガスタービンエンジンの熱力学サイクルの構成要素と関連付けられた物理的プロセスの1つあるいは複数の数理的抽象化に基づいている。
【0018】
本発明の別の態様では、制御装置を制御する方法が開示される。本方法は、モデルプロセッサを使用してモデル出力を生成することを含む。制御システムは、モデル出力を生成するモデルプロセッサを備え、前記モデルプロセッサは、モデル入力を処理し、モデル動作モードを設定する入力オブジェクトと、前記モデル動作モードに基づき開ループモデルに入力される前記モデルプロセッサの動的状態を設定する状態設定モジュールと、を備える。ここで、前記開ループモデルは、前記動的状態及び前記モデル入力の関数として前記現状モデルを生成し、前記現状モデルの制約条件は一連のサイクル合成モジュールに基づいており、前記一連のサイクル合成モジュールの各メンバは前記制御装置の1サイクルの構成要素をモデル化するとともに、一連のユーティリティを備えており、前記ユーティリティは、前記構成要素に関連する数理的に抽象化された物理的特性に基づいている。前記モデルプロセッサは、さらに、前記開ループモデルの以前の状態モデル出力及び現状モデルに基づき、前記モデルの推定状態を判断する状態推定モジュールと、前記モデル出力を決定するために前記モデルの前記推定状態を処理する出力オブジェクトと、を備える。本方法は、さらに、制御則を使用し前記モデル出力の関数として、前記制御装置と関連したアクチュエータに指示すること、および、前記アクチュエータを使用して、制御面を備える前記制御装置の位置決めを行うことを含み、ここで、前記アクチュエータは、前記モデル状態を制御するために、前記制御面の位置決めを行う。
【0019】
一例では、本方法は、さらに、制御装置と機能的に関連付けられたオペレータインターフェースを介してモデルプロセッサが命令を受領する。
【0020】
他の一例では、制御装置は、ガスタービンエンジンである。
【0021】
さらなる一例では、モデルプロセッサは、システムパラメータオンボード合成装置である。
【0022】
さらに別の一例では、1つあるいは複数のサイクル合成モジュールは、ガスタービンエンジンの熱力学サイクルの構成要素と関連付けられた物理的プロセスの1つあるいは複数の数理的抽象化に基づいている。
【0023】
他の一例では、ユーティリティのうちの少なくとも1つは、1つあるいは複数のサブユーティリティを含む構成可能なユーティリティである。
【0024】
本発明の別の態様によれば、ガスタービンエンジンが開示される。ガスタービンエンジンは、ファンと、ファン下流の圧縮器セクションと、圧縮器セクション下流の燃焼器セクションと、燃焼器セクション下流のタービンセクションと、を含む。さらにガスタービンエンジンは、制御面を有するガスタービンエンジンの位置決めを行うアクチュエータを含み、アクチュエータは、モデル状態を制御するために制御面の位置決めを行う。ガスタービンエンジンは、モデル出力の関数としてアクチュエータに指示する制御則を含む。ガスタービンエンジンは、モデル出力を生成するモデルプロセッサを含み、このモデルプロセッサは、モデル入力を処理し、モデル動作モードを設定する入力オブジェクトと、モデル動作モードに基づき開ループモデルに入力されるモデルプロセッサの動的状態を設定する状態設定モジュールと、を含み、前記開ループモデルは、動的状態及びモデル入力の関数として前記現状モデルを生成し、前記現状モデルの制約条件は一連のサイクル合成モジュールに基づいており、前記一連のサイクル合成モジュールの各メンバはガスタービンエンジンの1サイクルの構成要素をモデル化するとともに、一連のユーティリティを備えており、前記ユーティリティは、前記構成要素に関連する数理的に抽象化された物理的特性に基づいている。前記モデルプロセッサは、さらに、前記開ループモデルの以前の状態モデル出力及び現状モデルに基づき、前記モデルの推定状態を判断する状態推定モジュールと、前記モデル出力を決定するために前記モデルの前記推定状態を処理する出力オブジェクトと、を含む。
【0025】
一例では、モデルプロセッサは、エンジンパラメータオンボード合成装置である。
【0026】
他の一例では、ガスタービンエンジンのサイクルの前記要素は、ダクト、ブリード、ある位置での圧力損失、タービン、圧縮器、ディフューザ、バーナー、出口ガイドベーン、ノズル、ファン、効率損失モジュール、ファンギアボックス、トルク測定、のうちの少なくとも1つの要素である、
他の一例では、ガスタービンエンジンは、ガスタービンエンジンの動作と関連付けられたデータを収集するセンサをさらに備え、このデータは前記モデルプロセッサで使用される。
【0027】
さらなる例では、ガスタービンエンジンは、さらに、ガスタービンエンジンの動作と関連付けられたデータをモデルプロセッサによって読み取り可能なデータ形式に変換するアナログ−デジタル変換器を備える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、好適な流体工学システム用制御システムのブロック図を示す。
図2図2は、図1に示す制御システムの好適なエンジンパラメータオンボード合成(EPOS)モジュールのブロック図を示す。
図3図3は、図2に示すEPOSの好適なCAM入力オブジェクトのブロック図を示す。
図4図4は、図2に示すEPOSの好適な小型空気熱(CAM)オブジェクトのブロック図を示す。
図5図5は、図4に示すCAMオブジェクトの好適な開ループモデルのブロック図を示す。
図6図6は、図2に示すEPOSの好適な出力調整モジュールのブロック図を示す。
図7図7は、図1及び/または図2に示す好適なEPOSを実施するよう実行される代表的な機械可読指示のフローチャートを示す。
図8図8は、図2及び/または図4に示す好適なCAMオブジェクトを実施するよう実行される代表的な機械可読指示のフローチャートを示す。
図9図9は、図7及び図8に示す好適な機械可読指示を実行する好適な処理システム、及び/または本発明の構成要素のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に添付の図では必ずしも縮尺付けするものではないと理解されたい。本発明の解釈に必要の無い説明、または他の説明を理解しにくくするような説明は省略した。本発明は当然、本明細書に図示する特定の実施形態に限定されるものではないと理解されたい。
【0030】
図、特に図1を参照し、本発明による流体工学システム用制御システムを概して参照符号100とする。制御要求は、オペレータインターフェース140により生成され、エンジンパラメータオンボード合成装置(EPOS)110で受信される。例えば、オペレータインターフェース140は、コックピットナビゲーションシステム、及び/またはオペレータワークステーションなどのリアルタイムインターフェースである。追加して、または代わりに、オペレータインターフェース140は、ソフトウェア制御部150へ制御コマンドを記録するのに適した、その他より一般的なプロセス制御インターフェースを含み、例えばガイダンス、ナビゲーション、及び制御コンピュータまたはオートパイロットシステム(複数可)である。さらに、制御要求は、内部メモリ、またはソフトウェア制御要素150に動作可能に関連付けられた別の内部プログラムにより生成されても良い。
【0031】
制御要素150は、装置130への制御指示を生成及び/または処理するEPOS110及び制御則111を備える。EPOS110及び制御則111は、装置130を監視、制御し、または装置130と連係して動作するよう設計されたソフトウェアモジュールとして実施される。制御則111は、EPOS110から制御フィードバックを取得し、オペレータインターフェース140から制御コマンドを取得する。制御則111は、装置130を制御するためにハードウェア制御要素120が処理する工学ユニットにおける制御リクエストを生成する。
【0032】
さらに、ソフトウェア制御部150は、データ入力先への入力データを処理する入力調整器115、及び/または、データ出力先への出力データを処理する出力調整器113を備える。入力調整器115が行うEPOS110への入力は、故障検出調整(FDA)ロジック117が処理し、範囲故障を範囲内故障(例えば、レート制限、交差チャンネル不整合など)とともに検出し、入力用の健全性状態指示とともに適正入力値を提供する。
【0033】
さらに、ハードウェア制御部120は、ソフトウェア制御部150が生成するデジタルデータを装置130で読み取り可能なアナログ形式(例えば、電気信号)に変換し、装置130が生成するアナログデータをソフトウェア部150で読み取り可能なデジタルデータに変換し、その入力データ及び出力データの可読性を調整し、及び/または、装置130に関連付けられたアクチュエータ124を制御する。デジタル―アナログ変換器122は、制御則111が生成するデジタル信号をアクチュエータのリクエストに変換できる。アクチュエータ124は、EPOS110が生成する指示に従い装置130の各制御要素の位置決めを行うハードウェアを使用する1つあるいは複数の装置である。アクチュエータ124などのアクチュエータは、装置を迅速に正確に制御するように設計される。
【0034】
アクチュエータ124の様々な状態を計測するためアクチュエータセンサ125を備えており、そのアクチュエータの状態(または位置)は装置130の各制御部の物理的構成に関係がある。例えば、流体システムでは通常複数のアクチュエータを備えるが、そのアクチュエータの直線位置または角度位置をアクチュエータセンサ124が検出し、これら位置は、制御面の物理位置、または、圧縮器、燃焼器、タービン、及び/またはノズル/排気アッセンブリの近傍に配置されたその他制御装置の物理位置に関係がある。
【0035】
また、ハードウェア制御部120は、装置システムセンサ126を備える。装置システムセンサ126は、装置130に関する動作パラメータを計測する。例えば、流体システムは、流路における様々な軸方向位置及び径方向位置での作動流体圧、温度、流体流量を計測する装置システムセンサ126を備える。装置システムセンサ126は、温度センサ、流センサ、振動センサ、デブリセンサ、電流センサ、電圧センサ、水平センサ、高度センサ、及び/または、ブレード先端センサ、を含むがこれに限定されない多種多様なセンサから成る。装置システムセンサ126は、装置130を制御するようアクチュエータ124に指示を出すために、EPOS110に送信する制御コマンドに関連するパラメータ、及びEPOS110が生成する制御リクエストに関連するパラメータなど、装置130の機能に関する動作パラメータを測定するよう配置される。
【0036】
装置システムセンサ126もアクチュエータセンサ125も、前記センサからの読み取り結果に基づき電気信号を生成する。アクチュエータセンサ125及び装置システムセンサ126が生成する電気信号は、アナログ−デジタル変換器123に送信される。アナログ−デジタル変換器は、電気信号を、入力調整モジュール115が処理した後にEPOS110に対応し読み取り可能なデジタル信号データに変換する。
【0037】
装置130は、いずれの流体工学システムであっても良い。流体工学システムは、例えば、航空用及び発電用のガスタービンエンジン、HVAC&R(暖房、換気、空調、及び冷却)、燃料電池、及びその他、炭化水素抽出、材料処理及び製造用のより一般的な流体処理システムである。様々な実施形態において、装置130の物理的構成要素として、圧縮器、燃焼器、タービン、シャフト、スプール、ファン、送風器、熱交換器、バーナー、燃料電池、電動モータ及び発電機、反応容器、貯蔵容器、流体分離器、パイプ、ダクト、バルブ、ミキサ、及びその他流体処理または流量制御装置を備えるがこれに限定されない。
【0038】
実施例の中には、回転エネルギー、電力、または反応トラストを生成し、暖房、換気、空調、及び冷却、またはその他の流体処理機能を実行するために、装置130が作動流体の熱力学的サイクルを実行するものがある。使用可能なサイクルには、次のサイクル及びその派生サイクルを含むがこれに限定されない:オットーサイクル、ディーゼルサイクル、ブレイトンタービン(または第一エリクソン)サイクル、ブレイトンジェット(バーバー/ジュール)サイクル、ベル−コールマン(逆ブレイトン)サイクル、エリクソン(第二エリクソン)サイクル、ルノアール(噴射追加型)サイクル、カルノーサイクル、ストッダードサイクル、及びスターリングサイクル。追加してまたは代わりに、装置130は、暖房、冷却、流量制御のため、または農業、運搬、食品飲料生産、製剤生産または製造での処理のため、または炭化水素燃料の抽出、運搬または処理のため、多くの熱力学プロセスをそれぞれ実行する。使用可能な熱力学プロセスには、断熱変換、恒温変換、定圧変換、等エントロピ変化、アイソメトリック(等容または等体積)変換、発熱反応、吸熱反応及び相変化を含むがこれに限定されない。
【0039】
本実施例において、装置130はガスタービンエンジンである。よって、装置130の前記態様は、圧縮器、燃焼器、タービン及び/またはノズル/排気アッセンブリを備えるがこれに限定されない。ガスタービンエンジンへの適用では、EPOS110が受け付け/生成する入出力値は、ガスタービンエンジンの構成要素(例えば、圧縮器、燃焼器、タービン及び/またはノズル/排気アッセンブリなど)についての、位置(例えば、ノズル面積、可変ベーン角度、流路面積など)、状態、及び、実際に検出したパラメータ値(例えば、スプール速度、ガス経路温度、構成要素近傍圧力、構成要素近傍流量など)を示すベクトルである。
【0040】
EPOS110が処理するデータは、装置130の機能に関するパラメータを含むベクトルである。例えば、EPOS110への入力ベクトルには、外部入力ベクトル(UE)及び修正部真ベクトル(YCt)が含まれる。UEは、EPOS110が処理すべき外部入力に関する値を含む。UEは装置130における様々な制御要素の構成、位置及び状態を表す。例えば、ガスタービンエンジンでは、外部入力ベクトルUEの要素は個々にエフェクタ位置に関する数値セットを有する;このエフェクタ位置の値は、燃料流量、ノズル面積、可変ベーン角度、流路オリフィス面積、その他制御要素パラメータを示す。さらに、UEは装置130の動作に関する境界条件に関する数値セットを有する。境界条件の中には装置システムセンサ126が直接計測するものがあり、例えば装置130の物理的境界における流体温度、流体圧、及び流量などである。流体を基にした適用では、境界条件に、境界流量条件及び入口と出口の位置が含まれる。他に、航空機への適用に特有な境界条件として、飛行速度、高度、及びブリードまたは出力抽出のパラメータを含むがこれに限定されない。
【0041】
修正部真ベクトルYCtは、制御システムのリアルタイム実行に関するデータを含み、装置130の動作に関するパラメータの実際の値(検出値)を示す。YCtの要素は、アクチュエータセンサ125及び/または装置システムセンサ126による測定値に基づく。さらに、YCtの要素は、公知で信頼性のある検出パラメータモデルから求められる値に基づく;例えば、ピトー管またはベンチュリ管を通過する際の差圧低下に基づく流量モデルである。ガスタービンエンジンでは、典型的なYCtベクトル要素は、圧縮器、燃焼器、タービンなどのエンジン要素近傍におけるスプール速度、ガス流路温度、及び/または、圧力、の全てを含むがこれに限定されない。校正を含む非リアルタイムでの適用では、YCtは、物理的に試験可能であるかモデルベースであるかのいずれかであり、忠実性が高いデータに対応している。
【0042】
本発明の小型空気熱モデル(CAM)を採用し、図1に示すEPOS110の実施形態を図2にさらに詳細に示す。図2に示すEPOS110は、CAM入力オブジェクト220、小型空気熱モデル(CAM)オブジェクト230、及びCAM出力オブジェクト240、を備えるがこれに限定されない。EPOS110は、ベクトルUERaw及びベクトルYCtRawに関連する生の入力データを受け付ける。UERawはアクチュエータセンサ125、装置システムセンサ126、及び/または他の関連するセンサ及び/または入力から取得する値を含む。YCtRawは、アクチュエータセンサ125、装置システムセンサ126、及び/または他の関連するセンサ及び/または入力から取得する値を含む。
【0043】
CAM入力オブジェクト220は、受領した入力ベクトルUEから選択した値を入力ベクトルUE_inにパッケージ化する。同様に、CAM入力オブジェクト220は、受領した入力から選択した値を入力修正部真ベクトルYCt_inにパッケージ化する。その後、ベクトルUE_in及びベクトルYCt_inは、入力値を保護するため調整される;この調整では、値の範囲を限定し、指示に従い値を制限し、及び/または、ベクトルに対しさらに入力修正関数を実行する。CAM入力オブジェクト220は、また、受領した入力ベクトルを使用し、FADEC110の動作モード(OpMode)を判断する。入力調整を行うモジュール220は、調整済外部入力ベクトルUE、調整済真ベクトルYCt、及びOpModeベクトルを出力する。
【0044】
ベクトル値の入力正当性を、CAM入力オブジェクト220の各センサ入力に専用の適応ロジック(例えば、FDAロジック117による処理を実行し)及び故障検出で保障する。故障検出及び適応ロジックにより範囲故障ならびに範囲内故障(例えば、レート制限、交差チャンネル不整合など)を検出し、健全性状態指示とともに適正入力値を提供する。CAM入力オブジェクト220の実施例を、図3を参考に下記に詳しく説明する。
【0045】
CAM入力オブジェクト220の出力をCAMオブジェクト230で受領する。CAMオブジェクト230は、エンジン要素の空気熱表現または要素モジュールを含む。CAMオブジェクト230内の要素モジュールは、装置130の動作を決定する数理的に抽象した物理法則(例えば、エネルギー保存則、質量保存則、運動量保存則、回転系に関するニュートンの運動第二法則、及び/または、計算可能なその他公知の物理的モデル)に関連するシステム上の制約に従い動作する。CAMオブジェクト230内に備える各モジュールに対するシステム上の制約は、装置130(例えば、バイパスダクトブリードモジュール、低スプール圧縮モジュール、バーナーモジュール、寄生出力抽出モジュールなど)の監視エリア及び/または機能をシミュレートする内蔵プログラム特有の制約を含む。
【0046】
CAMオブジェクト230は、動作中のオンボード修正部状態、ソルバ状態、及び物理的状態を表す内部ソルバ状態と合わせて入力ベクトルを使用する。ソルバ状態は、高速動力学に対応し、代数ループを解決し、高非線形モデル要素の実行を円滑にするため導入される。CAMオブジェクト230は、合成パラメータベクトルYを出力する。ベクトルYはCAMオブジェクト230が判断する動作範囲について推定される。CAMオブジェクト230の実施例を、図4を参考に下記に詳しく説明する。
【0047】
CAMオブジェクト230の出力は、CAM出力オブジェクト240で受領する。CAM出力オブジェクト240は、制御ソフトウェア及び/またはハードウェアの使用に必要なCAM出力を後工程用に選択する。いくつかの出力について、CAM出力オブジェクト240は、単位変換しても良く、試験加算器にかけても良く、及び/または、周囲状況の補間、及び/または、作動開始中にCAM出力を行っても良い。CAM出力オブジェクト240は、関連構成要素が要求する特有の値(例えば、温度、圧力、流量、センサ温度、及び/または、その他出力合成)にYベクトルを展開する。また、CAM出力オブジェクト240は、要素間内部流量、温度、圧力、及び/または、燃空比、トルク、推力、ブリード流量、及び/または、圧縮器及びタービンのケースクリアランス、を出力する。CAM出力オブジェクト240は、EPOS110が判断したように、現在の状態(例えば、上記「OpMode」動作モード)を示す。CAM出力オブジェクト240の実施例を、図10を参考に下記により詳細に説明する。
【0048】
CAM入力オブジェクト220に戻り、図2のCAM入力オブジェクト220の好適な実施形態を図3に示す。図3に示すCAM入力オブジェクトは、UEベクトルパッケージャ310、YCtベクトルパッケージャ320、OpMode判断部330、及び入力保護モジュール340、を備える。UEベクトルパッケージャは、ベクトルUERawを受領し、UEベクトルパッケージャ310は、入力ベクトルから所望値を選択して、入力保護モジュール340に出力するベクトルUE_inを生成する。UEベクトルパッケージャ310は、単位変換や実在しないUE用に値を合成する際にも使用される。同様に、YCtベクトルパッケージャは、ベクトルYCtRawを受領する。YCtベクトルパッケージャ310は、入力ベクトルから所望値を選択して、入力保護モジュール340に出力するベクトルYCt_inを生成する。
【0049】
OpMode判断部330は、各動作モードで動作するのに必要な入力値の健全性状態に基づきCAMオブジェクト230の動作モードを確立する。健全性状態には、内部状態及び出力状況など、FDAロジック117が判断する制御センサ状態が、CAMオブジェクト230が内部で生成する情報とともに含まれる。OpMode判断部330は、使用可能な入力を基に忠実性が最も高くなるモードを目指したロジック設計を使用して動作し得、障害に適応するように忠実性が低下したモードにも後退し得る。OpMode判断部330が判断する動作モードは、装置130の機能に関連する動作モードのプログラムリストの中の一つであり、入力ベクトル値及び/またはCAM状態及び/または出力状況に基づく。様々な下流要素の機能は、OpMode判断部330が決定した結果得られる動作モードに影響される。
【0050】
CAMのOpModeが決定されると、入力保護モジュール340は、OpModeベクトルとベクトルパッケージャ310及び320からの入力を使用し、入力ベクトルUE及びYCtを決定する。前記ベクトルは、図4に詳細に示すCAMオブジェクト230で受領する。
【0051】
CAMオブジェクト230は、状態ベクトルXC、XS,XPを生成する。物理的状態ベクトル(XP)は、装置130の対象期間の力学に関するシミュレートパラメータを含み、その導関数(XPDot)は開ループモデル410で計算される。ベクトルXPは、スプールシャフト速度、装置材料温度などを含むが、これに限定されない。ソルバ状態ベクトルXSは、装置130の特定要素に対してなされる調整に関連する値を含む。これらの値はCAMに起因する誤差を修正するための修正値である。XCベクトルはオンボード修正部状態に関連する値を含むが、その値は、YCベクトルをYCtの実際値と比較可能にするためにYCtベクトルをリファインしたシミュレート要素レベル値である。さらに、CAMオブジェクト230はリアルタイムシミュレーションとして個々に実施されるため、CAMオブジェクト230は、シミュレーションの各力学的パス(個々のパスをkで記す)をフルに実行する。各シミュレーションパスk及びシミュレーション時間ステップdtの積により、シミュレーション時間が得られる。kの値は1つずつ増加する(例えば、k=[1、2、3、・・・])。
【0052】
状態設定モジュール420は、UEベクトル、YCtベクトル、及びOpModeベクトルの入力を受領する。さらに、状態設定モジュール420は、状態推定モジュール440が生成するXベクトルの以前の値を受領する。図4では、以前の状態を状態「(k−1)」で示す。状態設定モジュール420は、Xベクトルにおける状態を基点値で上書きするが、値を上書きする必要が無ければ、状態設定モジュール420は要素を通過するためのパスとして機能する。状態設定モジュール420の上書き機能では、CAMモジュール230に入力された動作モード(OpMode)に従い、Xベクトル内の値を基点(U)値または外部(YCt)値で上書きする。上書き値を取得するため、状態設定モジュール420は初期化時に使用するCAM状態の基点値を検索する。また、状態設定モジュール420は、ソルバ状態のアクティブなサブセットも選択する。出力値として、状態設定モジュール420は、開ループモデル410において使用する修正部状態(XC)ベクトル、ソルバ状態(XS)ベクトル、及び物理的状態(XP)ベクトルを生成する。
【0053】
開ループモデル410は、1つあるいは複数のサイクル合成モジュールから成り、各サイクル合成モジュールは装置130に関連付けられた、構成要素、機能、及び/または、状況に関連する。本実施例において、開ループモデル410は、装置130のサイクルに関連付けられた、構成要素、機能及び/または、状況を示す様々なサイクル合成モジュールから成る。開ループモジュールにおいて、モジュール数は特定の個数に限定されておらず、装置130に関連付けられた構成要素、機能及び/または状況をシミュレートするのに使用されるモジュール数はいくつでも良い。開ループモデル410は、状態設定モジュール420から、修正部状態(XC)ベクトル、ソルバ状態(XS)ベクトル、物理的状態(XP)ベクトル、の入力を受領し、かつ、エフェクタ/境界条件ベクトル(UE)の入力を受領する。開ループモデル410に入力された値は、装置130の構成要素をシミュレートする様々なモジュールへの入力として使用される。開ループモデル410は、サイクル合成モジュールが生成した値を使用し、UE(k)及びX(k)に基づき合成パラメータベクトルY(k)を形成する。合成パラメータベクトルY(k)は、開ループモジュール410でシミュレートした物理的性質から判断した合成サイクル値を含み、装置130の制御に使用可能である。
【0054】
一連のサイクル合成モジュールを示すため、図4に示す開ループモデル410の実施例を図5に示す。開ループモデル410は、一次ストリームモジュール510のグループ、二次ストリームモジュール520のグループ、追加モジュール530のグループ、及びベクトルデータパッケージャ540を備える。開ループモデル410は、状態設定モジュール420から、修正部状態(XC)ベクトル、ソルバ状態(XS)ベクトル、物理的状態(XP)ベクトル、の入力を受領し、かつエフェクタベクトル(UE)の入力を受領する。一次ストリームモジュール510のグループ、二次ストリームモジュール520のグループ、及び追加モジュール530は全て、状態設定モジュール420から、修正部状態(XC)ベクトル、ソルバ状態(XS)ベクトル、物理的状態(XP)ベクトル、の入力を受領し、かつエフェクタベクトル(UE)の入力を受領する。さらに、開ループモジュール410は、上記のモジュールグループを備えることに限定されず、むしろ、開ループモジュール410はモジュールグループを省略し、及び/または、他のモジュールグループを備えても良い。開ループモデル410の任意の及び全てのモジュールは相互に作用して各モジュールの出力を行う。
【0055】
開ループモジュール410の各モジュールは、装置130の構成要素を表現し、ユーティリティのライブラリにより実行され、各ユーティリティは、要素演算の各部を成す物理的特性を数理的に表現したものである。例えば、モジュールのユーティリティは、CAMオブジェクト230全体で再利用可能な圧縮器、タービン、ブリード、圧力損失などの表現を含み、EPOS110の可読性及び整備性を向上させる。これらの構成要素は、空気力学プロセス及び熱力学プロセスの物理的表現で構成される。各モジュールは、例えば、全圧、全温、燃空比、構成要素出口におけるガス流量、及び/または、その他、装置130のモデル化部に関する任意の他のパラメータなどを含む出力ベクトルを生成する。
【0056】
いくつかの実施例では、一次ストリームモジュール510は、装置130に対応する要素に従い下記を含んでも良いがこれに限定されない:低スプール圧縮器をモデル化するCMP_Lモジュール605、低スプール圧縮器に関連するブリードをモデル化するD_BLD_STB610モジュール、圧縮器のダクトを通過する空気流量に関連する圧力損失をモデル化するD_CS_INTモジュール615、高スプール圧縮器をモデル化するCMP_Hモジュール620、高スプール圧縮器出口のダクト内の計装に関連する圧力損失をモデル化するD_I030 625モジュール、ディフューザをモデル化するD_DIF_BURNモジュール630、バーナーをモデル化するBRN_PRIモジュール635、高スプールタービンをモデル化するTRB_Hモジュール640、低スプールタービンをモデル化するTRB_Lモジュール645、低タービン出口ガイドベーンダクトをモデル化するD_EGV_LTモジュール650、出口ガイドベーンダクトの後方にあるプローブに関連する圧力損失をモデル化するD_I0495モジュール655、計装プローブを備えたダクトを流れる空気に関係する圧力損失をモデル化するD_I_NOZ_PRIモジュール660、一次ノズルダクトをモデル化するD_TEC_NOZモジュール665、一次ノズルダクトに関連する圧力損失をモデル化するD_NOZ_PRIモジュール670、及び一次ノズルをモデル化するNOZ_PRIモジュール675。さらに、二次ストリームモジュール520は、装置130の対応する要素に従い下記を含むがこれに限定されない:例えば、ファン外径圧縮器をモデル化するCMP_F_SECモジュール705、ファン出口ガイドべーンダクトをモデル化するD_EGV_FOモジュール710、低圧縮器及び高圧縮器間の出口ダクトをモデル化するD_BLD_SECモジュール715、B25ブリード下流側ダクトをモデル化するD_AVE_140モジュール720、装置130のバイパスダクトブリードをモデル化するD_BLD_NOZ_SECモジュール725、二次ノズルダクトをモデル化するD_I_NOZ_SECモジュール730、二次ノズルをモデル化するNOZ_SECモジュール735。また、特定ストリームに関連しないいくつかのモジュールがあり、モジュール530は、装置130の状況に従い下記を備えるがこれに限定されない:装置130におけるエネルギー効果及び/または効率損失をモデル化するPOWER_EXTRACTモジュール805、装置130のファンギアボックスによる出力損失算定をモデル化するFAN_ID_POWERモジュール810、装置130内の非定常トルクバランスに関連するエネルギー保存算定をモデル化するTORQUE_BALANCEモジュール815、OLM410で検出された誤差に対する解を策定するCALC_ERR_SLVRモジュール820。また、装置130に関連する任意の別の物理的特性をモデル化する任意の別のモジュール及び/またはモジュールグループを、開ループモデル410の一部として備えても良い。
【0057】
物理的特性に基づく1つあるいは複数の構成可能なユーティリティを使用し、図5に示すモジュールの実施例を設計する。構成可能なユーティリティをEPOS構造内のサブシステムのライブラリ内に備える。開ループモジュール440は、事前にプログラムされた指示及び/またはユーザ入力に基づき、構成可能な物理的特性ベースのユーティリティのサブシステムから上記モジュールをコンパイルする。
【0058】
データを開ループモデル410の様々なモジュールを通して処理した後、ベクトルデータパッケージャ540は、一次ストリームモジュール510のグループ、二次ストリームモジュール520のグループ、及び追加モジュール530から入力データを受領する。モデル状態及び入力に基づき合成されたパラメータベクトルY(k)の他、開ループモデルは、ソルバ状態ベクトル(XS)に関連するソルバ誤差ベクトル(ErrSlvr)も出力する。また、開ループモデル410は、物理的状態導関数ベクトル(XPDot)を収集し出力する。受領データはベクトルデータパッケージャ540によりベクトルY(k)、ErrSlvr,及びXPDotの形式にパッケージ化される。さらに、ベクトルデータパッケージャは、ベクトルデータを、少数のベクトル、及び/または、追加のベクトルへとパッケージ化し得る。
【0059】
開ループモデル410の前記モジュールの構成に使用される特定のユーティリティは、ガスベース特性をモデル化し、例えば、温度と燃空比の関数として比熱、エンタルピと燃空比の関数として相対圧、温度と燃空比の関数としてエンタルピ、温度と燃空比の関数として比熱比、温度と燃空比の関数として相対圧、温度と燃空比の関数として相対圧、エンタルピと燃空比の関数として温度、及び/または、ガス定数、温度と燃空比の関数として比熱比、を表す。その他のモデル化するユーティリティの例として、ガスの全温度の関数として熱伝導率、ガスの全温度の関数として絶対粘度、比熱とガス定数の関数として臨界流パラメータ、材料温度及び/または種類の関数として熱膨張率、材料温度及び/または種類の関数として材料比熱、及び/または材料温度及び種類の関数として材料熱伝導率、がある。また、その他ガス関連関数をモデル化するその他ユーティリティが存在する。追加してまたは代わりに、装置130に関係する他の特性をモデル化するその他のユーティリティを備えても良い。
【0060】
さらに、開ループモデル410を備えるモジュールは、1つあるいは複数の構成可能なユーティリティを備える。構成可能なユーティリティは、エンジン要素を複素表現したものである。構成可能なユーティリティは、例えば、圧縮器またはタービンなどの主要エンジン構成要素における特定の物理的作用を表す。構成可能なモデルのインターフェースに変更が無くても、構成可能なユーティリティの各例を、モデル化した複数の物理プロセス表現の一つとして選択する。構成可能なユーティリティは、下位の構成可能なサブシステムを交換することで、自身を再構成し特定構成要素を表現する。構成可能なユーティリティを使用することで、開ループモデル430のソフトウェアアプリケーションの保守性が向上する。
【0061】
例示の実施例において、構成可能なユーティリティは、装置130の圧縮器におけるレイノルズ効果をモデル化し、自身を再構成し、圧縮器(例えば、高スプール圧縮器、低スプール圧縮器など)の特定構成要素を表現する。本例での構成可能なレイノルズ効果圧縮器ユーティリティは、サイクル合成モジュール形式で使用され、低スプール圧縮器(例えば、図5のCMP_Lモジュール605)、高スプール圧縮器(図5のCMP_Hモジュール620)、及び/または圧縮器シミュレーションに関連するその他のモジュールをシミュレートするモジュールで使用される。同様に、開ループモデル410の特定モジュールは、構成可能なユーティリティを使用して装置130のタービンにおけるレイノルズ効果をモデル化し、自身を再構成し、圧縮器の特定構成要素を表現する。
【0062】
一例のOLM410において、特定のユーティリティは、装置130の圧縮器の物理的プロセスをモデル化し、サブユーティリティとして物理的プロセスの表現を含む。例にあげる圧縮器ユーティリティのサブユーティリティには、装置130の基本物理的特性に関する基本物理的特性ユーティリティ(例えば、等エントロピ圧縮、熱力学則、理想ガス特性など)、要素空気熱マップ評価、ガス−材料熱伝達性、要素ブリードモデル、定常断熱によるトルク要素、及び/または、マップ状況及びサイクル状況のスケーリング効果(設計、ガス特性、レイノルズ効果、クリアランス、解撚効果など)、が含まれるがこれに限定されない。圧縮器ユーティリティの出力には、要素出口ガス流状況、ブリード流量、旋回角、要素入口全ガス流量、抽出トルク、材料温度導関数、が含まれるがこれに限定されない。圧縮器ユーティリティは、その他のユーティリティ(例えば、選択可能なスケジューリングパラメータを備えたオフボード修正ルックアップテーブル、オンボード及び/またはオフボード要素修正を可能にするセレクタなど)と動作可能に関連付けられ、例えばCMP_Lモジュール605及び/またはCMP_Hモジュール620のような圧縮器関連モジュールを形成する。
【0063】
別のOLMモデルユーティリティの実施例に、タービンユーティリティがある。例えば、タービンユーティリティのサブユーティリティには、装置130の基本物理的特性に関する基本物理的特性ユーティリティ(例えば、等エントロピ膨張、熱力学則、理想ガス特性など)、要素空気熱マップ評価、ガス−材料熱伝達性、インレットガイドベーンモデル、連結タービン冷却ブリードモデル、ロータインレット温度算定、タービンクリアランス効果、及び/または、マップ状況及びサイクル状況のスケーリング効果(設計、ガス特性、レイノルズ効果、クリアランス、解撚効果など)、が含まれるがこれに限定されない。例にあげたタービンユーティリティの出力には、要素出口ガス状況、ロータインレット温度、タービン内への流量、生成トルク、材料温度導関数、現状における材料定常温度、材料温度時定数、熱膨張を受けた装置半径、及び/または、クリアランス値、が含まれるがこれに限定されない。タービンユーティリティは、その他ユーティリティ(例えば、選択可能なスケジューリングパラメータを備えたオフボード修正ルックアップテーブル、オンボード及び/またはオフボード要素修正を可能にするセレクタなど)と動作可能に関連付けられ、例えばTRB_Hモジュール640及び/またはTRB_Lモジュール645のような圧縮器関連モジュールを形成する。
【0064】
図4に戻り、検出合成モジュール430は、センサ周囲及びセンサ本体の熱慣性の状態/位置効果が原因で、Yにパッケージ化された対応する平均ガス流路エンジンステーション推定値とは異なるものとなる制御センサ測定値をモデル化する。Y及び導関数物理的状態ベクトル(XPDot)の入力を受領すると、検出合成モジュール430は、CAMモジュール230内で障害検出または誤差検出をする別の手段として働く。
【0065】
Y(k)、YC(k)、XPDot(k)、及び/または、ErrSlvr(k)の入力を受領すると、状態推定モジュール440はこれらの入力を使用し、CAM状態ベクトルX(k)の次のパス値を決定する。状態推定モジュール440は、ソルバ状態誤差ベクトルをスケーリング及び修正し、ソルバゲインスケジューリングパラメータを選択し、ソルバ状態ゲインを算定し、スケーリングを算定し、修正部状態誤差ベクトルを修正する。また、状態推定モジュール440は、状態導関数を積分し、状態インテグレータ範囲を制限し、初期化中に状態インテグレータをリセットし、飽和状態インテグレータを検出し、及び/または、過大な合成値が示す内部誤差を検出する。
【0066】
状態推定モジュール440は、エフェクタベクトル(UE)、合成パラメータベクトル(Y)、オンボード修正部状態ベクトル(XC)、物理的状態ベクトル(XP)、ソルバ状態ベクトル(XS)、ソルバ誤差ベクトル(errSlver)、及び物理的状態導関数ベクトル(XPDot)、の入力を受領する。状態推定モジュール440は、それぞれ最新のオンボード修正部状態ベクトル(XC_ESM)、物理的状態ベクトル(XP_ESM)、及びソルバ状態ベクトル(XS_ESM)、を出力する。これらのベクトルは、開ループモデル410の現行反復で分析した状態ベクトルである。
【0067】
状態推定モジュール440の出力を、図6に示すCAM出力オブジェクト240で受領する。CAM出力オブジェクト240は、ベクトルアンパッカ910、温度バリュエータ920、圧力バリュエータ930、流量バリュエータ940、センサ温度バリュエータ950、他の出力合成器960、状態表示器970、を備えるがこれに限定されない。ベクトルアンパッカ910は、合成パラメータベクトル(Y)の入力を受領する。ベクトルアンパッカ910は、出力調整モジュールのその他の構成要素にアンパックしたYベクトルを出力する。状態表示器970は、動作モードベクトル(OpMode)の入力を受領する。また、出力調整モジュール240は、上記要素を備えることに限定せず、むしろ、出力調整モジュール240は、構成要素を省略しても良く、及び/または、他の構成要素を備えても良い。
【0068】
温度バリュエータ920は、合成パラメータベクトル(Y)の温度関連値を処理する。この処理では、装置130の機能開始時に、単位変換し、試験加算器を実行し、温度値に非線形補間を実施し、及び/または、必要であればバックアップとしてデフォルトテーブルから温度値を入手する。温度バリュエータ920は、上記方法での機能実行に限定されず、むしろ、温度バリュエータ920は、上記のいずれかの機能を省略してもよく、及び/または、合成パラメータベクトル(Y)の温度データ処理に関連するさらなる機能を追加しても良い。
【0069】
圧力バリュエータ930は、合成パラメータベクトル(Y)の圧力関連値を処理する。この処理では、装置130の機能開始時に、単位変換し、試験加算器を実行し、圧力値に非線形補間を実施し、及び/または、必要であればバックアップとしてデフォルトテーブルから圧力値を入手する。圧力バリュエータ930は、上記方法での機能実行に限定されず、むしろ、圧力バリュエータ930は、上記のいずれかの機能を省略しても良く、及び/または、合成パラメータベクトル(Y)の圧力データ処理に関連するさらなる機能を追加しても良い。
【0070】
流量バリュエータ940は、合成パラメータベクトル(Y)の燃料流量関連値を処理する。この処理では、装置130の機能開始時に、単位変換し、試験加算器を実行し、燃料流量値に非線形補間を実施し、及び/または、必要であればバックアップとしてデフォルトテーブルから燃料流量値を入手する。流量バリュエータ940は、上記方法での機能実行に限定されず、むしろ、流量バリュエータ940は、上記のいずれかの機能を省略しても良く、及び/または、合成パラメータベクトル(Y)の燃料流量データ処理に関連するさらなる機能を追加しても良い。
【0071】
センサ温度バリュエータ950は、合成パラメータベクトル(Y)のセンサ温度関連値を処理する。この処理では、装置130の機能開始時に、単位変換し、試験加算器を実行し、温度値に非線形補間を実施し、及び/または、必要であればバックアップとしてデフォルトテーブルからセンサ温度値を入手する。センサ温度バリュエータ950は、上記方法での機能実行に限定されず、むしろ、センサ温度バリュエータ950は、上記のいずれかの機能を省略しても良く、及び/または、合成パラメータベクトル(Y)のセンサ温度データ処理に関連するさらなる機能を追加しても良い。
【0072】
他の出力合成器960は、温度バリュエータ920、圧力バリュエータ930、流量バリュエータ940、及び/または、センサ温度バリュエータ950で処理されない合成パラメータベクトル(Y)のその他の出力データを処理する。この処理では、装置130の機能開始時に、単位変換し、試験加算器を実行し、温度値に非線形補間を実施し、及び/または、必要であればバックアップとしてデフォルトテーブルからその他の出力値を入手する。流量バリュエータ940は、上記方法での機能実行に限定されず、むしろ、流量バリュエータ940は、上記のいずれかの機能を省略しても良く、及び/または、合成パラメータベクトル(Y)のその他出力データ処理に関連するさらなる機能を追加しても良い。
【0073】
状態表示器970は、動作モードベクトル(OpMode)からの入力を受領する。この入力を使用し、状態表示器970は、任意の下流の論理装置で使用できるようCAMモジュール230の動作状態の状態表示を生成し、提供する。
【0074】
図1に示すEPOS110の実行方法の実施例を図2から図6に示したが、図2から図6に示す1つあるいは複数の構成要素、プロセス、及び/または、装置を、別の方法で結合、分解、再配置、省略、削除、及び/または、実施、しても良い。さらに、図1から図6に示す構成要素の実施例を、1つあるいは複数の回路(複数可)、プログラマブルプロセッサ(複数可)、特定用途向け集積回路(複数可)(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(複数可)(PLD)、及び/または、フィールドプログラマブルロジックデバイス(複数可)(FPLD)、などで実行することも可能である。本特許の装置またはシステムについての請求項が純粋にソフトウェア及び/またはファームウェア実行を包含すると捉える場合、少なくとも1つの構成要素の実施例は、ソフトウェア及び/またはファームウェアを記憶するメモリ、DVD,CD,ブルーレイなどのコンピュータで読み取り可能な有形記憶媒体を備えるよう本明細書に明確に規定される。また、図に示した実施形態は、図1から図6に示した構成要素、プロセス及び/または装置に加え、または代わりに、1つあるいは複数の構成要素、プロセス及び/または装置を備えても良く、及び/または、図に示した構成要素、プロセス及び装置の一部または全てのものを複数備えていても良い。
【0075】
機械可読指示の実施例の代表的なフローチャートを図7及び図8に示す。これらの実施例において、図9について下記で説明するコンピュータ1200の実施例にプロセッサ1210を示すが、機械可読指示はそのプロセッサ1210などのプロセッサが実行するプログラムを備える。プログラムは、プロセッサ1210に連係するCD−ROM,フロッピディスク、ハードディスクドライブ、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、ブルーレイディスク、または記憶装置などコンピュータで読み取り可能な有形記憶媒体に記憶されるソフトウェアに組み込まれる。また、プログラム全体及び/または一部をプロセッサ1210以外の装置で代替的に実行可能であり、及び/または、ファームウェアまたは専用ハードウェアへの組み込みも可能である。プログラムの実施例を図7及び図8に示したフローチャートを参考に記述するが、代わりに本発明の実施形態を実施する別の方法を使用しても良い。例えば、実行ブロックの順番を変更し、及び/または、記載したブロックの一部を変更、削除、または統合しても良い。
【0076】
図7を参考に、実施例とする機械可読指示1000を実行し、図1及び/または図2のEPOS110を実施する。図1及び/または図2を参考に、実施例とする機械可読指示1000はブロック1010で実施開始される。入力ベクトルをCAMインプットオブジェクト220で受領し、CAMインプットオブジェクト220で使用してシミュレーションの動作モード(OpMode)を判断し、CAMインプットベクトルUE及びYCtを合成する(ブロック1015)。その後CAMインプットベクトルをCAMオブジェクト230で使用し、CAMモジュール230の内部物理的状態モジュール及び外部入力UE、YCt及びOpModeを基に、合成パラメータベクトルYを決定する(ブロック1020)。合成パラメータベクトルYをCAMアウトプットオブジェクト240で調整し、例えば図1の制御則123などの外部モジュールで使用する(ブロック1025)。
【0077】
図8に示す実施例の機械可読指示1100を実行して、図2及び/または図4のCAMオブジェクト230を実施する。図2及び/または図4を参照して、状態設定モジュールは、CAMオブジェクト230から入力を受けるとともに、ベクトルUE、YC(k)、OpModeと、状態推定モジュール440がXE_ESM(k−1)、XC_ESM(k−1)、XP_ESM(k−1)の形式に生成した以前の物理的状態ベクトルと、に基づいて、CAMオブジェクト230の状態を設定する(ブロック1110)。開ループモデル410は、1あるいは複数あるサイクル合成モジュールを使って、UE、YC(k)、XC(k−1)、XS(k−1)及びXP(k−1)に含まれるデータを処理し、合成パラメータベクトルY(k)を決定する。ここで、その1つあるいは複数のサイクル合成モジュールは、装置130のサイクル構成要素に関する数理的に抽象化した物理的状態(複数可)である(ブロック1115)。検出合成モジュール430は、合成パラメータベクトルY(k)を受信し、ベクトル内の潜在誤差を検出する(ブロック1120)。状態推定モジュール440は、現状(k)の物理的状態ベクトルXS_ESM(k)、XC_ESM(k)、及びXP_ESM(k)を決定する(ブロック1125)。状態推定モジュール440は、次の状態の処理用に、状態設定モジュール420にベクトルXS_ESM(k)、XC_ESM(k)及びXP_ESM(k)を出力する(ブロック1130)。状態推定モジュール440は、CAMモジュール230外部での使用のためベクトルY(k)を出力する(ブロック1135)。
【0078】
図1から図6の装置を実施するために図7及び図8に示す指示を実行することが可能なコンピュータ1200の実施例のブロック図を図9に示す。コンピュータ1200を、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ、あるいは他のタイプのコンピュータ装置とすることも可能である。
【0079】
本実施例のシステム1200はプロセッサ1210を備える。例えば、プロセッサ1210を、所望の系列または製造者の1つあるいは複数のマイクロプロセッサまたは制御装置で実施可能である。
【0080】
プロセッサ1210はローカルメモリ1215を備え、読み出し専用メモリ1230及びランダムアクセスメモリ1220を備えるメインメモリと、バス1240を介して接続している。ランダムアクセスメモリ1220は、同期式ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、ラムバスダイナミックランダムアクセスメモリ(RDRM)、及び/または、その他タイプのランダムアクセスメモリデバイスで実施されても良い。読み出し専用メモリ1230は、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、及び/または、その他所望タイプのメモリデバイスで実施されても良い。
【0081】
また、コンピュータ1200は、インターフェース回路1250も備える。インターフェース回路1230は、イーサネットインターフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB)、及び/または、PCI−エキスプレスインターフェースなど、いずれのインターフェース標準で実施されても良い。
【0082】
1つあるいは複数の入力デバイス1254がインターフェース回路1250に接続している。入力デバイス(複数可)1254では、ユーザはプロセッサ1210にデータ及びコマンドを入力できる。入力デバイス(複数可)は、例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン、トラックパッド、トラックボール、イソポイント、及び/または、音声認識システムにより実施可能である。インターフェース1250は、図1のオペレータインターフェース115と合わせて、並行して、またはそれに代わり、動作しても良い。
【0083】
また、インターフェース回路1250には、1つあるいは複数の出力デバイス1258も接続している。出力デバイス1258は、例えば、関連データ表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイ、ブラウン管ディスプレイ(CRT)など)、及び/または、航空・発電用ガスタービンエンジン、HVAC&R(暖房、換気、空調、及び冷却)、燃料電池、及び、炭化水素抽出、材料処理及び製造用のその他より一般的な流体処理システムなどの流体工学システムに動作可能に関連付けられたアクチュエータで実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
前述から、本明細書に記載の技術は、流体工学システムを制御するシステム及び方法(これに限定されない)の様々な設定において、産業上利用可能であると言える。実施例とする流体工学システムには、航空・発電用ガスタービンエンジン、HVAC&R(暖房、換気、空調、及び冷却)、燃料電池、及びその他、炭化水素抽出、材料処理及び製造用のより一般的な流体処理システムが含まれる。本発明の教示を使用し、システム制御装置及び/またはオンボードプロセッサにおいて演算負荷を減少するよう流体工学システムの小型空気熱モデルを設計する。一連のユーティリティを使い、モデル効率を向上させるが、そのユーティリティは、工学システムの構成要素に関連付けられ、数理的に抽象化した物理的特性に基づいている。従来技術より改善したことで、演算効率を維持しつつ、流体工学システム用制御システムの正確性を向上させることができる。
【0085】
本発明では航空機用ガスタービンエンジンを参考にしたが、当業者であれば、上記したように、本明細書に記載の教示をその他の適用でも使用可能であることを理解するものである。よって、本発明の範囲を、本発明を実施する最適な形態として本明細書に記述した実施形態に限定しないことを意図し、本発明で請求する意図範囲にはあらゆる均等物も含むことを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9