(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453303
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】レーザビーム位置決めシステムのためのフェーズドアレイステアリング
(51)【国際特許分類】
G02F 1/29 20060101AFI20190107BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20190107BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
G02F1/29
H01S3/10 D
G02B6/02 451
G02B6/02 461
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-503108(P2016-503108)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-517546(P2016-517546A)
(43)【公表日】2016年6月16日
(86)【国際出願番号】US2014029470
(87)【国際公開番号】WO2014144877
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】61/789,580
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(74)【代理人】
【識別番号】100192809
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 宏光
(72)【発明者】
【氏名】クライネルト,ヤン
【審査官】
佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−510901(JP,A)
【文献】
特表2011−512653(JP,A)
【文献】
特開2009−048021(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0154503(US,A1)
【文献】
HUANG,W.R. et al.,High speed,high power one-dimensional beam steering from a 6-element optical phased array,OPTICS EXPRESS,2012年 7月30日,Vol.20,No.16,17311-17318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
G02B 6/02
H01S 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームのフェーズドアレイ変調のための装置であって、
レーザパルスビームを生成するように構成されたシードレーザ源と、
前記レーザパルスビームを複数のビームレットに分割するように構成されたスプリッタと、
前記スプリッタに光学的に連結され、前記ビームレット間の位相差を生み出すことが可能な位相変調器アレイと、
前記位相変調器アレイに連結され、前記位相変調器アレイの動作を制御するように構成された位相変調電子機器と、
前記シードレーザ源に連結され、前記シードレーザ源の出力パワーを変調するように構成されたシードレーザ出力パワー変調器と、
前記位相変調器アレイにより出力された前記ビームレットを増幅し、これによりその出力において増幅レーザビームを生成するように構成されたファイバ増幅器と、
前記位相変調器アレイの出力と前記ファイバ増幅器の入力との間に連結された導波路と
を備え、
前記位相変調電子機器は、前記位相変調器アレイの動作を制御して前記増幅レーザビームをステアリング可能であり、
前記シードレーザ出力パワー変調器は、前記増幅レーザビームをステアリングするための前記位相変調電子機器による前記位相変調器アレイの制御された動作に基づいて、前記シードレーザ源の前記出力パワーを変調するように構成され、
前記ファイバ増幅器は、マルチコアフォトニック結晶ファイバ増幅器である、
装置。
【請求項2】
前記位相変調電子機器は、前記位相変調器アレイの動作を制御して前記増幅レーザビームを整形するように前記ビームレット間の位相差を生成可能である、請求項1の装置。
【請求項3】
前記位相変調電子機器は、前記位相変調器アレイの動作を制御して前記増幅レーザビームの焦点を外すことが可能である、請求項2の装置。
【請求項4】
前記シードレーザ源は、1ns以上のパルス幅を有するレーザパルスビームを生成可能である、請求項1から3のいずれか一項の装置。
【請求項5】
前記シードレーザ源は、1kHzから1GHzの範囲にあるパルス繰り返し率で前記レーザパルスビームを生成可能である、請求項4の装置。
【請求項6】
前記位相変調器アレイは、1GHz以上の帯域幅を有する複数の位相変調器を含む、請求項1から5のいずれか一項の装置。
【請求項7】
前記マルチコアフォトニック結晶ファイバ増幅器は少なくとも7つのコアを含む、請求項1から6のいずれか一項の装置。
【請求項8】
前記マルチコアフォトニック結晶ファイバ増幅器は、前記位相変調器アレイにより出力された前記ビームレットの増幅中に一時結合される複数のコアを含む、請求項1から7のいずれか一項の装置。
【請求項9】
前記マルチコアフォトニック結晶ファイバ増幅器は、前記位相変調器アレイにより出力された前記ビームレットのパッシブ位相ロック増幅を行うことが可能である、請求項1から8のいずれか一項の装置。
【請求項10】
レーザビームのフェーズドアレイ変調のための方法であって、
シードレーザ源を用いてレーザパルスビームを生成し
前記レーザパルスビームを複数のビームレットに分割し、
位相変調器アレイ内で、前記ビームレット間の位相差を生み出し、
ファイバ増幅器内で、前記位相変調器アレイにより出力された前記ビームレットを増幅することにより増幅レーザビームを生成し、前記ビームレット間の位相差を生み出す際に、前記位相変調器アレイの動作を制御して前記レーザビームをステアリングし、
前記位相変調器アレイの動作を制御して前記レーザビームをステアリングする際に、前記位相変調器アレイの動作に基づいて前記シードレーザ源の出力パワーを変調し、
前記ファイバ増幅器は、マルチコアフォトニック結晶ファイバ増幅器である、
方法。
【請求項11】
前記ビームレット間の位相差を生み出す際に、さらに、前記位相変調器アレイの動作を制御して前記増幅レーザビームを整形するようにビームレット間の位相差を生成する、請求項10の方法。
【請求項12】
前記ビームレット間の位相差を生み出す際に、さらに、前記位相変調器アレイの動作を制御して前記増幅レーザビームの焦点を外す、請求項11の方法。
【請求項13】
前記レーザビームを生成する際に、1ns以上のパルス幅を有するレーザビームを生成する、請求項10から12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
前記レーザビームを生成する際に、1kHzから1GHzの範囲にあるパルス繰り返し率で前記レーザビームを生成する、請求項13の方法。
【請求項15】
前記位相変調器アレイにより出力された前記ビームレットを増幅する際に、パッシブ位相ロック増幅により増幅する、請求項10から14のいずれか一項の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2013年3月15日に提出された「Quaternary Beam Steering」という表題の米国仮特許出願第61/789,580号の利益を主張し、当該出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(c) 2014 Electro Scientific Industries, Inc.この特許文書の開示の一部には、著作権保護を受ける構成要素が含まれている。この特許文書又は特許開示は米国特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されているので、著作権者は、いかなる者による特許文書又は特許開示のファクシミリによる複製に対して異議を唱えることはないが、それ以外についてはどのようなものであってもすべての著作権を留保する。米国連邦規則集第37巻第1.71条(d)。
【技術分野】
【0003】
本開示は、ワークピース特徴部のレーザ加工に関するものであり、特に、ハイパワーレーザ微細加工システム用のフェーズドアレイステアリング(phased array steering)に関するものである。
【0004】
あるレーザ加工用途では、ワークピース上で規則的に離間したターゲット位置のパターンを加工する。例えば、ある太陽電池加工用途においては、規則的に離間した格子パターンでシリコンウェハを貫通するビアを穿孔する。これらの用途における顧客は、毎秒数千ビアのオーダーの非常に高い加工スループットを求める。
【0005】
これらの用途におけるビアの間隔はかなり狭く、0.25〜1mmのオーダーである。全体の加工領域は大きく、典型的には150×150mm四方のウェハである。したがって、レーザ加工システムは、狭いピッチのビアを高速で穿孔することによりこの領域を加工する。このようなシステムの精度は3〜20μmのオーダーである。それぞれのビアに対する穿孔時間は、レーザ特性(波長、パルス周波数、パルスパワー、及びパルス幅)、ビア径、及び基板材料と厚さに依存している。しかしながら、穿孔時間は、典型的には、0.1〜0.5msecのオーダーである。ビア径は、典型的には、15〜50μmのオーダーである。
【0006】
典型的な従来の加工システムのアプローチは、ガルバノメータ(ガルボ)をベースとして、それ単体によるか(非常に大きなガルボ場を用いる)、あるいは必要に応じて2次可動ステージと組み合わせた(これにより比較的小さいガルボ場とすることができる)レーザ加工ビームの位置決めに依存している。より最近では、3次音響光学偏向器(AOD)ステージが実現されている。しかしながら、これらの1次、2次、及び3次ビームステアリングのアプローチには何らかの制限があることに留意されたい。
【0007】
ガルボをベースとした加工レーザビームの位置決めを実現する第1のシステム構成は、ワークピース全体をカバーする単一の大きなガルボ場を用いる。この実装は、非常に大きなスキャンレンズかレンズ後方スキャンシステムのいずれかを用いる。いずれの場合も、ガルボが、典型的には、加工ビームをワークピースの全面にわたって一定の速度で移動し、コントローラが、ガルボを停止することなくそれぞれのビア位置でレーザパルスを出射する。それぞれのビアに対して比較的少ない数のパルスが使用され、それぞれのビアを完全に穿孔するためにいくつかの加工パスが形成される。したがって、規則的に離間したターゲットビア位置のパターンによって加工時間が改善される。このアプローチでは、ガルボの方向転換がワークピースの縁部でのみ生じるので、頻発するガルボの加速及び減速によるタイミングオーバーヘッドと熱的影響を避けることができる。ワークピース表面でのレーザスポット(単にスポットともいう)が自由空間光学系により過度に歪められずに焦点が合った状態を維持する偏向角度範囲の基準は、典型的には、スキャンの1つの軸を横断する方向に1,000から10,000スポット幅(単にスポットともいう)である。
【0008】
ワークピース領域全体をカバーするために非常に大きなスキャンレンズが使用される場合、その大きなレンズは、ハイパワーレーザビームを用いた作業に起因する光学的加熱により引き起こされる精度劣化の影響を受ける。この大きなレンズは、所望のワークピース表面でのスポットサイズを得るために大きなビーム径を用いる。そのような大きなビーム径は大きなガルボを使用するものであり、これらのガルボは、大きな(高慣性)ミラーを大きな(高慣性)ガルボで移動させることによる熱効率の低下に起因する正確性の影響に悩まされる。
【0009】
ワークピース領域全体をカバーするためにレンズ後方スキャニングシステムを使用すれば、レンズの熱的な正確性に関する影響を低減できる。しかしながら、この加工システムは、穿孔されたビアの品質を悪くする非テレセントリックビーム伝達の影響に悩まされる。また、長い焦点距離を維持することによりそのようなテレセントリックエラーを低減することができるが、これには、所望のワークピース表面でのスポットサイズを得るために大きなビーム径を用いることが必要とされる。そのようなシステムにおいては大きなガルボが用いられるので、これは上述と同様の熱的正確性の問題につながる。テレセントリックエラーが重要ではない場合、FLのより短いレンズを用いることができ、動的フォーカス要素を用いることによりフラットではないフォーカス領域の問題を避けることができる。このアプローチの欠点としては、コスト、複雑性、フォーカス要素の不正確性への寄与、非常に高速のアプリケーションに対するフォーカス要素のコスト、及び残留テレセントリックエラーが挙げられる。
【0010】
第2のシステム構成は、ワークピース上で(X−Yワークピーステーブルを介して、あるいは軸に交差して移動可能な光学的構成により)ガルボヘッドを移動させる構造的機構と連係して小さなガルボ領域(典型的には約20mm四方)が実現される複合位置決めシステムである。第1のシステム構成と同様に、ガルボは、それぞれのビア位置で停止するオーバーヘッドを避けるために、それぞれのビアで加工レーザビームをパルス化し、一定速度でビア上をスキャンしてもよい。ガルボがその領域を高速でスキャンするとき、ガルボは、ワークピースに比べると非常に小さいので、スキャン領域の縁部で加速及び減速するのに非常に多くの時間を費やすことになる。この時間の浪費はスループットが大きく下がる原因となり、方向転換の時間を短くするために大きな加速度を用いる場合には、ガルボの熱的加熱が、正確性を下げ、達成可能な加速度に対して上限を課すことになる。しかしながら、この第2のシステム構成は、正確性が高い(より小さなスキャンレンズによりレンズ歪みを少なくできることに起因する)、ビア品質が改善される(より小さく、歪みの少ないスキャンレンズとテレセントリックスキャン領域に起因する)、潜在的にビーム位置決め速度が速い(小さなガルボとミラーに起因する)という利点がある。それでも、このアプローチは、それぞれのビアを加工するために用いられるレーザパルスの数によっては、上述したスループットの制限があるため実現が難しい場合がある。
【0011】
3次ビーム位置ステージにおけるAODは、ガルボの帯域幅(約2.5kHz)よりも3桁近く大きな帯域幅(約1MHz)を有している。したがって、AODは、その偏向範囲内での非常に速いビームステアリングだけではなく(およそ10から50スポット)、ガルボに対するエラー補正を可能にしている。しかしながら、最新のレーザ(及び現在開発中の実験的なレーザに関してはより一層)は、益々速くなる繰り返し率(例えば、数MHzから数百MHzまで)で益々高くなるパワーを供給する。また、1MHzをかなり超えて繰り返し率を高くすることによって簡単にさらにパワーを増大でき、これにより1.6MHz以上で最大平均パワーに達することができるレーザもある。これらの帯域幅は、それぞれのパルスをこれに隣接するパルスから空間的に完全に分離する3次ビーム位置決めシステムの能力を超えるものである。パルスが部分的に重なり合う場合には、以下の2つの悪い効果が生じるので、完全に分離されたパルスは、レーザ微細加工領域における多くのプロセスで使用される。局所的な熱の蓄積が、超高速レーザにより提供される熱的アブレーションの良い効果を打ち消し、パルスとプルームとの間で相互作用が生じる。
【0012】
位置コマンドに応答してワークピース上のターゲット位置に向けてレーザビームを案内するための装置は、上記位置コマンドの低周波数部分に応答して、上記ワークピース及び上記レーザビームのうち少なくとも一方を互いに方向付ける低帯域幅ポジショナステージと、上記位置コマンドの中間周波数部分に応答して、上記ワークピース及び上記レーザビームのうち少なくとも一方を互いに方向付ける中間帯域幅ポジショナステージと、上記位置コマンドの高周波数部分に応答して上記ワークピースに対して上記レーザビームをフェーズドアレイステアリングするように構成された位相変調器アレイを含む高帯域幅ポジショナステージとを含んでいる。
【0013】
位置コマンドに応答してワークピース上のターゲット位置を加工するためのレーザビームを案内するための方法は、上記位置コマンドの低周波数部分に応答して、上記ワークピース及び上記レーザビームのうち少なくとも一方を互いに方向付け、上記位置コマンドの中間周波数部分に応答して、上記ワークピース及び上記レーザビームのうち少なくとも一方を互いに方向付け、位相変調器アレイを用いて、上記位置コマンドの高周波数部分に応答して上記ワークピースに対して上記レーザビームをフェーズドアレイステアリングすることを含んでいる。
【0014】
ワークピース特徴部の加工中に上記レーザビームを案内するレーザビーム位置決め及び光学構成要素に対する動的及び熱的不可に起因するワークピース特徴部の加工の不正確さと品質の低下を最小限にしつつ、密集パターンで配置されたワークピース特徴部の高スループットレーザ加工を達成する方法は、加工表面領域を規定する加工表面を有するワークピースをサポート上に位置決めし、レーザビームをビーム位置決めシステムに案内して上記ワークピースの上記加工表面上の特徴部位置に入射するように加工レーザビームを供給し、上記ビーム位置決めシステムは、可動ステージと、ワークピース特徴部を密集パターンで上記ワークピースの上記加工表面上の上記特徴部位置で加工するように上記可動ステージと連係する第1及び第2のビームポジショナとを含み、上記第1のビームポジショナは、第1の応答時間を有し、上記加工表面のスキャン領域範囲内で上記加工レーザビームを位置決め可能であり、上記第2のビームポジショナは、第2の応答時間を有し、上記加工表面のスキャン領域範囲内の位置に上記加工ビームをフェーズドアレイステアリングすることができる位相変調器アレイを含み、上記第2の応答時間は上記第1の応答時間よりも短く、上記可動ステージ、上記第1のビームポジショナ、及び上記第2のビームポジショナの動作を連係させて上記加工レーザビームを上記スキャン領域範囲内で位置決めし、上記スキャン領域範囲を移動して上記加工表面をカバーすることを含んでいる。
【0015】
追加の態様及び利点は、添付図面を参照して述べられる以下の実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、1次元レーザビームステアリングシステムのブロック図である。
【
図2】
図2は、マルチコアフォトニック結晶ファイバ.の断面を示す走査型電子顕微鏡写真のレンダリングである。
【
図3】
図3、
図4、
図5、及び
図6は、
図2のマルチコアフォトニック結晶ファイバにより伝搬される2つのペアのビームプロファイルのレンダリングであり、それぞれのペアは近視野及び遠視野のレンダリングを含んでいる。
【
図4】
図3、
図4、
図5、及び
図6は、
図2のマルチコアフォトニック結晶ファイバにより伝搬される2つのペアのビームプロファイルのレンダリングであり、それぞれのペアは近視野及び遠視野のレンダリングを含んでいる。
【
図5】
図3、
図4、
図5、及び
図6は、
図2のマルチコアフォトニック結晶ファイバにより伝搬される2つのペアのビームプロファイルのレンダリングであり、それぞれのペアは近視野及び遠視野のレンダリングを含んでいる。
【
図6】
図3、
図4、
図5、及び
図6は、
図2のマルチコアフォトニック結晶ファイバにより伝搬される2つのペアのビームプロファイルのレンダリングであり、それぞれのペアは近視野及び遠視野のレンダリングを含んでいる。
【
図7】
図7は、開示されたファイバ結合光学系レーザビームステアリングシステムの実施形態のハードウェア構成のブロック図である。
【
図8】
図8は、開示されたレーザビーム位置決めシステムの実施形態のハードウェア構成のブロック図である。
【
図9】
図9、
図10、
図11、及び
図12は、
図8のレーザビーム位置決めシステムに関して、偏向位置に対する相対的偏向効率のプロットを示すものであり、破線は、フェーズドアレイステアリングスキャン領域にわたるビーム強度を平坦化するためのギガヘルツ振幅変調の効果を示している。
【
図10】
図9、
図10、
図11、及び
図12は、
図8のレーザビーム位置決めシステムに関して、偏向位置に対する相対的偏向効率のプロットを示すものであり、破線は、フェーズドアレイステアリングスキャン領域にわたるビーム強度を平坦化するためのギガヘルツ振幅変調の効果を示している。
【
図11】
図9、
図10、
図11、及び
図12は、
図8のレーザビーム位置決めシステムに関して、偏向位置に対する相対的偏向効率のプロットを示すものであり、破線は、フェーズドアレイステアリングスキャン領域にわたるビーム強度を平坦化するためのギガヘルツ振幅変調の効果を示している。
【
図12】
図9、
図10、
図11、及び
図12は、
図8のレーザビーム位置決めシステムに関して、偏向位置に対する相対的偏向効率のプロットを示すものであり、破線は、フェーズドアレイステアリングスキャン領域にわたるビーム強度を平坦化するためのギガヘルツ振幅変調の効果を示している。
【0017】
AODの速度は、音速によって根本的に制限される。この制約は、現在のAODを約1MHzの帯域幅に制限し、同じようにガルボは約2.5kHzの帯域幅に制限される。1MHzまでの帯域幅は、1MHzより低い(典型的には500kHz以下)の繰り返し率で動作するQスイッチレーザに対する単一スポット配置制御を可能にするが、ダイオードシード変調モードロックレーザは、数十MHzの範囲で動作可能であり、簡単に数百MHzの範囲に広げることができる。
【0018】
これらの高い繰り返し率に適用するために、本明細書において述べる実施形態は、レーザビーム位置決めシステムのステアリングスピード能力を1GHzを超える速度まで上げる完全ファイバ結合の光学手法を用いた超高速フェーズドアレイステアリングを含んでいる。このもっと高い帯域幅によって、このアプローチは、レーザパルス持続時間が約1nsを超える場合に、レーザパルス自体の持続時間内でのステアリング(すなわちパルス間ビームステアリング)を可能にする。このため、複数の分離されたパルスを所望のパターンで連続的に配置するのではなく、単一のパルスの超高速ステアリングにより、小さな2次元特徴部をワーク表面上に加工することができる。ワーク表面での速度が非常に速いために、レーザと材料との相互作用が、特にその流体力学的側面に関して、遅い繰り返し率で伝搬される連続パルスを配置することによっては、あるいはパルス幅を長くすることによっては簡単に達成できない方法で調整され得る。
【0019】
フェーズドアレイステアリング及び完全ファイバ結合光学系を利用したそのようなシステムの一例について
図8を参照して説明する。とはいうものの、最初に、フェーズドアレイステアリング及び完全ファイバ結合光学系の実施形態を
図1〜
図7を参照して紹介する。最後に、
図9〜
図12を参照して、完全ファイバ結合光学系とともにフェーズドアレイステアリングを用いてギガヘルツの帯域幅にまで相対的に偏向効率を補正することが可能な実施形態について説明する。
【0020】
フェーズドアレイステアリングは、比較的長い電磁波波長で確立された技術であり、したがって、例えばレーダーにおいてよく用いられている。概念的には、フェーズドアレイステアリングの原理は、ハイパワーレーザ微細加工領域においてよく使用される比較的短い光波長、特に、赤外波長、可視波長、及びUV波長にも適用することができる。
【0021】
McManamon等は、IEEE議事録第97巻第6号1078〜1096ページ(2009年)の「A Review of Phased Array Steering for Narrow-Band Electrooptical Systems」という表題の論文においてフェーズドアレイステアリングの背後にある物理的現象について述べている。一般的に、フェーズドアレイステアリングは、その波面に垂直なレーザビーム伝播に基づくものである。したがって、一部のビームレットを遅延させるが、整形された(ステアリングされた)波面を発展させるためにその後(再)結合される他のビームレットは遅延させない位相変調器アレイを用いることにより、数多くの個々の高密度集積位相ロックエミッタビーム(いわゆるビームレット)からステアリングされた波面が確立され得る。波面の一部が遅れるので、これによって波面が効果的に傾斜し、これにより、生じる結合ビームがステアリングされる。現在の位相変調器は、1GHzよりも高い帯域幅を有しており、これはAODよりも数桁速い値である。これによって、複合ビーム位置決めシステムに対する帯域幅の階層構造における次のレベルが提供される。
【0022】
レーザ、前置増幅器、及びフェーズドアレイステアリング用の位相変調器アレイを含む電気光学フェーズドアレイステアリングシステムの完全一体化オンチップバージョンが、Doylend等によるOptics Letters誌第37巻第20号4257〜4259ページ(2012年)の「Hybrid III/IV silicon photonic source with integrated 1D free-space beam steering」という表題の論文において述べられている。しかしながら、このシステムは比較的低いレーザパワーで動作するものである。
【0023】
微細加工は、典型的には、位相変調器アレイによって扱えるよりも高い平均パワー及びピークパワーに依存している。レーザの増幅ステージの前に位相変調を行うことにより高いパワーを得ることができる。位相変調が実際にビームをステアリングするとすると、ステアリングされたビームがそのビームレットのコーヒレントな総量として伝播できるのであれば、位相変調後の増幅は重要である。例えば、大きな厚板状の増幅器がなければ、ステアリングされたビームは、高利得増幅領域を外れてステアリングされることになる。他方で、ビームステアリング偏向領域の全幅を包含する均質の増幅領域を有する大きな厚板状の増幅器では、ビームが任意の一時点においてアプリケーション領域の非常に小さな部分を通過するとしても、全体のアプリケーション領域を励起する必要があるので、非効率である。
【0024】
位相変調後に増幅を行うことは、マサチューセッツ工科大学のリンカーン研究所で行われている。Optics Express誌第20巻第16号17311〜17318ページ(2012年)の「High speed, high power one-dimensional beam steering from a 6-element optical phased array」という表題の論文において、Huang等が、スプリッタ18によりステアリングされていないビームレット20に分割されるレーザビーム16を生成する主発振器パワー増幅器(MOPA)構造14を含むシステム10について述べており、
図1がこれを示している。ビームレット20は、ステアリング電子機器24に作用的に連結された位相変調器アレイ22に個々に案内される。電子機器24は、ビームレット20のうち対応するビームレットを遅延させ、これによりフェーズドアレイステアリングされたビームレット26を生成するようにアレイ22の一部の変調器に指示する。ビームレット26は、厚板状の結合光学導波路型半導体増幅器(SCOWA)30のアレイに入射し、増幅ステージにより増幅され、変換レンズ32で集束され、フィードバック経路36及び出力経路38に向かって出射する。
【0025】
SCOWA30の導波路の性質により、SCOWA30を通過するフェーズドアレイステアリングされたビームレット26の動きが阻害される。しかしながら、バルク(厚板状に結合された)光学系を含むことによる位相ドリフト及びSCOWA30の中の個々の分離した増幅器40の一意な増幅特性は、メンテナンス間隔スイッチ42が一時的にフェーズドアレイステアリング動作を無効化して、確率的平行勾配降下(SPGD)コントローラ44のアルゴリズムを有効化して電流ドライバ46に対するメンテナンス調整を行う期間である正規メンテナンス間隔に至る。
【0026】
メンテナンスは、SCOWA30の出口でのビームレット26間の位相関係を再確立(例えば較正)する。アクティブ位相ロック補償再位相メンテナンス動作中の時間間隔が微細加工プロセスの速度を遅くする。公開されている論文においては、システム10に対する動作デューティサイクルは66%であった。このデューティサイクルは改善できるが、分離された増幅器40は、時間の経過に伴って依然として大きな特徴的位相ドリフトを生み出す。
【0027】
バルク増幅器に起因すると考えられる特徴的位相ドリフトを低減するために、マルチコアフォトニック結晶ファイバ(MC−PCF)50(
図2に断面が示されている)は、パッシブ位相ロック増幅又はアクティブ位相ロック増幅のいずれかを提供することができる。MC−PCF50は、MC−PCF50における励起源エネルギー(図示せず)をトラップする周縁空気毛細管52と、7つのイッテルビウム添加コア56と、コア56を通過する高い又は低いビームレットエネルギー60,62(
図3〜
図6)の回折エネルギー損失を抑制するが、励起源エネルギーの自由な移動を可能にし、これにより通過したビームレットエネルギー60,62を増幅する比較的小さな空気毛細管58とを含んでいる。
【0028】
Optics Letters誌第35巻第14号2326〜2328ページ(2010年)の「Generation of 150 MW, 110 fs pulses by phase-locked amplification in multicore photonic crystal fiber」という表題の論文において、Fang等は、ピークパワーをより高くするためにフォトニック結晶ファイバにおける実効モード領域をスケーリングすることに関してMC−PCFを利用することについて述べている。この論文は、コア間のパッシブ位相ロックを可能にする一時結合コアを有するMC−PCFの利用について述べており、
図3〜
図6がこれを示している。例えば、
図3及び
図4は、20Wのポンプパワーで生成されたMC−PCF出力のそれぞれ近視野ビームプロファイル図及び遠視野ビームプロファイル図であり、パッシブ位相ロックが生じていないことを示している。一方、
図5及び
図6は、60Wのポンプパワーで生成されたパッシブ位相ロックを示している。換言すれば、
図3は、コア間の位相がランダムであることを示しており、これにより
図4のビームプロファイルにおいてノイズが生じている。一方、
図5は、位相が安定していることを示しており、
図6の綺麗なガウス型ビームプロファイルを生み出している。
【0029】
図5及び
図6に示されるパッシブ位相ロックは、アクティブ位相安定化に費やされるリソースを削減することができる。さらに、MC−PCFは、本来的に高充填密度を有しており、これは、有効な光の放射体の間の距離が比較的短い(そして性能の差がある)ことを意味している。高充填密度は、遠視野における側方ローブ(side lobes)に含まれるエネルギーに対して中央ローブ(central lobe)に含まれるエネルギーの比を高く維持する。
【0030】
図7は、本開示の実施形態において、完全ファイバ結合光学系導波路及びMC−PCF増幅器を用いることにより位相変調の後に増幅を行うファイバ結合光学系レーザビームステアリングシステム80を示している。
【0031】
シードレーザ84は、(例えば、1GHzの帯域幅を有するマッハツェンダー干渉計を用いた)可変の低パワーのレーザパルス86であって、パルス幅持続時間がフェムト秒又はナノ秒、パルス繰り返し率が1kHzから1GHzの範囲にあるレーザパルス86を生成する。ナノ秒のパルスタイミングにより、
図9〜
図12を参照して説明されるように1ナノ秒の期間に応じて可変強度を変更することが可能となる。シードレーザ84は、任意の低パワーレーザであってもよいが、一実施形態は、本開示の譲受人であるオレゴン州ポートランドのElectro Scientific Industries社から入手可能な2Wレーザを含んでいる。
【0032】
ドイツ連邦共和国イェーナのJenoptik社から入手可能なスプリッタ88は、レーザパルス86をいくつかのビームレット90に分割する。ビームレット90は、ステアリング電子機器94に作用的に連結された位相変調器アレイ92に個々に案内される。これは、システム10のものと同様である。
【0033】
位相変調器アレイ92は、複数の入出力を有する単一のアレイデバイスであってもよく、あるいは、Jenoptik社から入手可能ないくつかの個々の(分離された)変調器から構成されるアレイであってもよい。他の実施形態は、フランス共和国ブザンソンのPhotline社から入手可能なNIR-MPX-LN-05変調器を用いる。レーザを位相アレイステアリングできる速度は、位相変調器の速度に依存している。上述した変調器は、現在、1GHzを越える帯域幅を有しており、これは、現在利用可能な中で最も速い機械的なガルボ又はAOD/EODレーザ加工ビームステアリング技術よりも数桁速いものである。
【0034】
位相変調器アレイ92は、ビームレット96が3次元のシングルモード導波路100に向かってアレイ92を通過すると、ビームレット96間の位相差を生み出す。好適な導波路は、英国リビングストンのOptoScribe社から入手可能である。導波路100は、アレイ92と7から21個の範囲のコア(図示せず)を有するMC−PCF102との間でファイバ結合されている。MC−PCF102は、
図2〜
図6を参照して先に述べたように、ポンプドライバ104により励起されるマルチコアファイバ(又はマルチコアフォトニックファイバロッド)を含んでいる。マルチコアファイバは、通信業界のために例えば日本国東京のNTTコミュニケーション社により開発されている。また、マルチコアフォトニック結晶ファイバロッドを作ることができる会社として以下の会社が挙げられる。デンマーク王国ビルケロッドのNKT Photonics A/S社、フランス共和国ランニオンのPhotonics Bretagne社、及びカナダケベックのINO社。
【0035】
システム80の完全ファイバ分離ビーム経路は、ステアリングされたビーム106に高い利得と高い平均及びピークパワー互換性を与えている。MC−PCF102の密接充填された増幅器コアは、MC−PCF102の増幅器の相対位相ドリフトを低減する。完全ファイバ結合システム80は、自由空間光学系を有していないので、システム10に比較するとより安定している。
【0036】
フェーズドアレイステアリング技術が、(技術的には、その性能や特性は根本的に既存のビーム位置決めシステムを置換又は補足するようにスケーリング可能であるが)AODや他の3次ビームステアリング技術に取って代わる必要はない。しかしながら、既存のレーザビーム位置決めシステムの一部として、フェーズドアレイステアリングは、ビームステアリング帯域幅の次の強化層を提供するビームステアリング構成要素の第4の(4次)ステージとして組み込むことができる。
【0037】
図8は、一実施形態におけるレーザを用いた試料加工システム112のレーザビーム位置決めシステム110のハードウェア構成を示すものである。ビーム位置決めシステム110は、システム80から位相アレイステアリングレーザ入力ビーム106を生成し、サポート122上に搭載されたワークピース120のターゲット特徴部118(例えばビア)を加工する加工レーザビーム116を形成するようにこのビームを方向付ける。
【0038】
ビーム位置決めシステム110は、システム80を有するビームステアリングステージ124と、ミラーを利用したビームポジショナ130と、ゼロ慣性光学偏向器132(例えばAOD)を有するゼロ慣性光学偏向ステージ131と、ワークピース120の加工表面138上のターゲット特徴部の位置136でターゲット特徴部118を加工するように加工ビーム116を方向付ける可動ステージ134とを含んでいる。これら4つのステージは、以下の特徴を有している。
【0039】
主可動ステージ134は、約100Hzの帯域幅と、(理論上は)スポット数に制限のないビーム偏向範囲とを有している。偏向に関して特徴付けられたステージがあるが、可動ステージは、例えば、ビームを移動させ、厳密な意味ではビームを偏向させない。可動ステージ134は、ガルバノメータヘッド130、AOD132、及びシステム80を支持しており、X軸に沿った方向140及びY軸に沿った方向142への変位を可動ステージ134に与えるアセンブリの一部である。
【0040】
2次(ガルボ)ミラーを利用したビームポジショナステージ130は、約2.5kHzの帯域幅を有している。その偏向範囲は、あるスキャン軸にわたって約1,000スポット(又はそれより多い)のオーダーである。このように、その偏向領域は、四角形内のスポットの意味において、約1,000スポット(又はそれより多い)×1,000スポット(又はそれより多い)である。ミラーを利用したビームポジショナ130は、2軸ファーストステアリングミラー(FSM)又は2軸ガルバノメータビームポジショナヘッドであってもよく、この実施形態においては後者が用いられる。FSMの好適な例は、ドイツ連邦共和国カールスルーエ/パルムバッハのPhysik Instrumente社から入手可能なPI S330ピエゾチップ/チルトプラットフォームである。好適なガルバノメータは、マサチューセッツ州レキシントンのCambridge Technology社から入手可能な6230Hガルバノメータである。
【0041】
3次ゼロ慣性光学偏向器ステージ131は、100kHz〜1MHzの範囲の帯域幅と、約10〜100個×約10〜100個のスポットの偏向領域を有している。AODの好適な例は、フロリダ州メルボルンのNeos Technologies社から入手可能なNeos 45100-5-6.5 DEG-.51 1次元偏向器である。
【0042】
4次フェーズドアレイステアリングステージ124は、1GHzを超える帯域幅と、7〜19個のスポットの偏向領域とを有している。このスポットの領域又はスキャン領域は、システム80において利用可能な位相変調器/増幅器のコアの数に依存している。現在比較的高価であるが、位相変調器の数は理論的には無制限であり、これはフェーズドアレイステアリングが低速なステージに取って代わることができることを示している。
【0043】
システム110は、付加的な構成要素を含んでいる。例えば、従来のリレーレンズ構成要素144は、ステアリングされたビーム106がAOD132により偏向された後、ガルバノメータヘッド130に入射する前に、そのビーム106を調整するように位置決めされている。リレーレンズ144は、ガルバノメータヘッド130のスキャンミラー表面に伝播する、ステアリングされたビーム106の「ピボット点」を平行移動させる。リレーレンズ144は、AOD132の偏向角度範囲及びビーム経路長によって必要に応じて設けられるものである。リレーレンズ144の目的は、ガルバノメータスキャンミラーに当たるビームの偏向を低減することである。ビームは、ビームが中央に位置していないときのスポット歪み及びスキャン領域歪みを抑制するために、ガルバノメータスキャンミラーの中央に当たる必要がある。同様の他のリレーレンズ系をフェーズドアレイステアリングシステム80とAOD132との間に配置することができる。
【0044】
スキャンレンズ146は、加工ビーム116がガルバノメータヘッド130により偏向された後、ワークピース120の加工表面138に入射する前に、加工ビーム116を調整するように位置決めされている。
【0045】
ガルバノメータヘッド130は、加工ビーム116によってカバーされる加工表面138のスキャン領域範囲150を規定するX−Y変位限度によって特徴付けられる。スキャン領域範囲150は、それぞれの軸方向寸法に沿って1mmから50mmの範囲のサイズを有している。AOD132は、印加されたRFパワーに応答して、加工ビーム116を1つの軸(すなわちX軸)に沿って移動させてスキャン領域範囲150内の加工帯152に沿って位置する複数のターゲット特徴部118を加工するためにステアリングされたビーム106を偏向する。可動ステージ134は、加工表面138の全体にわたってスキャン領域範囲150を回転させてワークピース120のターゲット特徴部118のすべてを加工する。
【0046】
コントローラ160は、システム80、AOD132、ガルバノメータヘッド130、及び可動ステージ134の動作を調整する。このように、ビーム位置決めシステム110は、コントローラ160によって調整される後続のビーム位置決めシーケンスに従って加工ビーム116を移動させることによってビア118を形成するように動作する。
【0047】
加工ビーム116がX軸方向140に移動して作用線(LOA)152の形態で加工帯152に沿ってビア位置136でビア118の線を加工するように、システム80はビーム106をステアリングし、AOD132はステアリングされたビーム106を偏向する。加工されたビーム116は、好ましくは少数(例えば、1〜5個)のレーザパルスによってパンチングすることによってビア118を穿孔するのに十分な時間の間、ビア位置136のそれぞれに留まる。
【0048】
LOA152に沿ってビア118の線を穿孔するのを完了すると、ガルバノメータヘッド130は、システム80及びAOD132のビーム偏向動作を繰り返して、スキャン領域範囲150におけるビア位置136でビア118の隣の線を穿孔するために、加工ビーム116のLOA152を位置決めする。LOA152の位置決め及びビア118の線の穿孔は、スキャン領域範囲150に含まれるビア118のすべての線の穿孔が完了するまで繰り返される。可動ステージ134は、穿孔されていないビア位置136をカバーし、システム80、AOD132、又はこれら両方からのビーム偏向に応答した加工レーザ116によってそれらを穿孔できるように、加工表面138にわたってスキャン領域範囲150を回転させる。付加的なビーム位置決めシーケンス動作が、本開示の譲受人でもあるElectro Scientific Industries社に譲渡された米国特許第8,680,430号に述べられている。
【0049】
別の実施形態では、コントローラ160は、可動ステージ134が移動しているときであってもLOA152を加工表面138上の一定の位置に維持するために可動ステージ134及びガルバノメータヘッド130の移動を調整することができる。そのような動作は、いずれもElectro Scientific Industries社に譲渡されている米国特許第5,798,927号及び第5,751,585号において述べられている複合ビームポジショナシステムによって実現される。
【0050】
システム80のフェーズドアレイステアリング動作は、加工レーザビーム116がそれぞれのビア位置136で加工のために留まることを可能にしつつ、加工ビーム116を次の隣接するビア位置136に素早く位置決めし、これによりビア位置136間及びLOA152に沿った移動時間を効果的になくす。このように移動と停止ができるので、ビア位置136を加工しつつ、AOD132及びガルバノメータヘッド130がスキャン領域範囲150の位置決めを停止又は遅くすることを可能にしている。
【0051】
図9〜
図12は、フェーズドアレイステアリングシステムのデザイン例に関して、システム例のスキャン領域にわたる偏向に対するスポットサイズ効率のプロットを示すものである。これらのプロットは、フェーズドアレイステアリングシステムによってビーム偏向が増加すると、ステアリングされたビームはエネルギーを失い、微細加工において効率的でなくなることを示している。フェーズドアレイステアリングシステムのスキャン領域にわたってワーク表面でのエネルギーを一定に維持するために、変調効率における変動を補償するように、シードレーザ出力パワーが偏向範囲に従って変調制御と同期して(同時に)変調される。このパルス内又はパルス間振幅変調は、位相変調器アレイ92と同一の1GHzの帯域幅で行われる。したがって、1GHzまでの帯域幅で伝搬されるパルスが偏向量によって振幅変調されるようにパルス内又はパルス間振幅変調をフェーズドアレイステアリングと同期することができ、これにより高偏向に起因すると考えられる効率の損失を補償することができる。破線180は、改良された振幅変調パルスの伝搬を示している。
【0052】
フェーズドアレイステアリングにより、ステアリングに加えてビーム整形を行うことが可能になる。例えば、アレイ92の変調器を制御するために線形位相遅延プロファイルを用いる代わりに、スポットに焦点を合わせるため又はスポットから焦点を外すために放物線状位相遅延プロファイルを用いることができる。しかしながら、原則としては、位相変調器の数及びMC−PCF内のコアの充填密度によって与えられる空間解像度内で任意の種類の波面を生成することができ、これは、波面歪み補償だけではなくビーム整形も本開示の範囲内にあることを意味している。これらの技術は、(現在)1nsよりも長いパルス幅期間の間のパルス間ビーム整形に拡張することができる。パルス間ビーム整形により、パルスの開始が1つの領域に集束され、パルスの終わりが他の領域に集束される。
【0053】
ビーム位置決めシステム110の利点としては以下のものが挙げられる。ビーム位置決めシステム110は、ビーム位置決め及び光学構成要素に対する動的及び熱的負荷に起因する正確性の低下及びワークピース特徴部の品質の低下を最小限にしつつ、規則的に離間されたワークピース特徴部118に対する高スループット加工を提供する。ビーム位置決めシステム110は、ビームステアリング及び整形だけではなく、1GHzの帯域幅を達成することができる。ビームステアリング及び整形は、パルス内又はパルス間レーザ焦点合わせを提供することができ、これにより付加的なシステム構成要素をなくすことができる。
【0054】
当業者は、本発明の根底にある原理を逸脱することなく上述の実施形態の詳細に対して多くの変更をなすことが可能であることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲のみによって決定されるべきである。