特許第6453310号(P6453310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モーティリティーカウント・エーピーエスの特許一覧

<>
  • 特許6453310-細胞運動性の分析のための装置 図000007
  • 特許6453310-細胞運動性の分析のための装置 図000008
  • 特許6453310-細胞運動性の分析のための装置 図000009
  • 特許6453310-細胞運動性の分析のための装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453310
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】細胞運動性の分析のための装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20190107BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20190107BHJP
   C12N 5/076 20100101ALI20190107BHJP
【FI】
   C12M1/26
   C12N1/00 T
   C12N5/076
【請求項の数】22
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-510939(P2016-510939)
(86)(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公表番号】特表2016-523513(P2016-523513A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】DK2014050117
(87)【国際公開番号】WO2014177157
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年4月27日
(31)【優先権主張番号】PA201370251
(32)【優先日】2013年5月3日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】515304422
【氏名又は名称】モーティリティーカウント・エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】Motilitycount ApS
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン、ヤコブ・モーレンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ロールセン、スティーン・ブロッホ
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/126478(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/162181(WO,A1)
【文献】 Anal.Chem., 2003, Vol. 75, No. 7, pp. 1671-1675
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動性細胞を非運動性細胞から分離するためのメゾスケール流体システムであって、
試料室と分析室とを有する基材を備え、前記試料室は試料塗布区画と調節媒体区画とを画成し、1μmから20μmまでの範囲内の細孔サイズを有する細胞透過性フィルタを備え、
前記試料室は前記試料塗布区画内に試料注入ポートを有し、
前記分析室は入口ポートと出口ポートとを有し、
前記調節媒体区画は流路を介して前記分析室の前記入口ポートと流体連通しており、前記調節媒体区画は、周囲に対して開いている媒体注入ポートをさらに備え、
ここにおいて、前記試料塗布区画は、重力場に関して、前記細胞透過性フィルタの下にあり、前記調節媒体区画は、前記細胞透過性フィルタの上にある、メゾスケール流体システム。
【請求項2】
前記分析室は、前記入口ポートに面する上流表面と前記出口ポートに面する下流表面とを有する細胞保持フィルタを備え、前記細胞保持フィルタは、運動性細胞を保持する細孔サイズを有し、前記細孔サイズは、前記細胞透過性フィルタの細孔サイズよりも小さく、0.1μmから12μmの範囲である、請求項1に記載のメゾスケール流体システム。
【請求項3】
液体を前記試料室から前記分析室に、または前記分析室から前記試料室に移動する液体駆動力をもたらすための手段をさらに備える、請求項1又は2に記載のメゾスケール流体システム。
【請求項4】
液体駆動力をもたらすための手段は、注射器を備える、請求項に記載のメゾスケール流体システム。
【請求項5】
前記試料塗布区画、前記調節媒体区画、または前記分析室と流体連通している貯槽をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
【請求項6】
栄養物、塩類、緩衝液、及び/又は粘度調整剤を含む試料媒体、栄養物、塩類、緩衝液、及び/又は粘度調整剤を含む調節媒体、および/または検出剤をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
【請求項7】
試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法であって、
前記運動性細胞が通ることを可能にする1μmから20μmまでの細孔サイズを有する細胞透過性フィルタを用意するステップと、
運動性細胞を含有する試料を前記細胞透過性フィルタの下に塗布するステップと、
前記試料中の運動性細胞が前記細胞透過性フィルタを通ることを可能にするステップと、
前記細胞透過性フィルタを通った運動性細胞を検出するか、又は前記細胞透過性フィルタを通った運動性細胞を抽出するステップとを備える、試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法。
【請求項8】
前記細胞透過性フィルタを通った運動性細胞を検出するステップにおいて、前記運動性細胞は、検出剤を使用して検出される、請求項7に記載の試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法。
【請求項9】
前記細胞透過性フィルタを通った運動性細胞を検出するステップにおいて、前記検出剤は、テトラゾリウム染料である、請求項8に記載の試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法。
【請求項10】
前記細胞透過性フィルタの下に栄養物、塩類、緩衝液、及び/若しくは粘度調整剤含む試料媒体を、並びに/又は栄養物、塩類、緩衝液、及び/若しくは粘度調整剤を含む細胞調節媒体を塗布するステップをさらに備える、請求項7から9のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法。
【請求項11】
前記運動性細胞は、真核細胞である、請求項7から10のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法。
【請求項12】
前記運動性細胞は、哺乳類精子細胞である、請求項11に記載の試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法。
【請求項13】
前記運動性細胞は、原核細胞である、請求項7から10のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法。
【請求項14】
前記細胞透過性フィルタが請求項1から6のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システムに含まれる、請求項7から13のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法であって、
栄養物、塩類、緩衝液、及び/又は粘度調整剤を含む試料媒体、栄養物、塩類、緩衝液、及び/又は粘度調整剤を含む調節媒体を試料室と分析室とそれらの間の流路とに加えるステップと、
前記試料を試料塗布区画に加えるステップと、
前記試料の前記運動性細胞が調節媒体区画に移動することを可能にするステップと、
液体駆動力を前記試料室から前記分析室に伝えるステップと、
前記分析室内の検出剤を定量化するステップ、又は前記分析室から前記運動性細胞を抽出するステップとをさらに備える、試料中の運動性細胞を非運動性細胞から分離する方法。
【請求項15】
請求項1から6のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システムと、検出剤と、栄養物、塩類、緩衝液、及び/又は粘度調整剤を含む試料媒体、栄養物、塩類、緩衝液、及び/又は粘度調整剤を含む試料媒体と、栄養物、塩類、緩衝液、及び/又は粘度調整剤を含む試料媒体、栄養物、塩類、緩衝液、及び/又は粘度調整剤を含む細胞調節媒体とを備える、パーツのキット。
【請求項16】
前記検出剤は、テトラゾリウム染料である請求項15に記載のパーツのキット。
【請求項17】
細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するためのコンピュータ実装方法であって、
メゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの少なくとも一部の画像を備える画像データを受信するステップと、
前記定量化可能な尺度の前記値を決定するために前記画像データを処理するステップとを備え、
ここにおいて、前記画像データを処理する前記ステップは、マッピング機能を使用して前記画像データを前記定量化可能な尺度の前記値にマッピングするステップを備え、前記マッピング機能は請求項1から6のいずれか一項に記載の特定のメゾスケール流体システムの分析室及び/又は細胞保持フィルタの画像データを前記定量化可能な尺度の値にマッピングするように較正される、コンピュータ実装方法。
【請求項18】
前記画像データが前記マッピング機能への入力として使用可能であるかどうかを決定するために前記画像データを前処理するステップをさらに備え、ここにおいて、前記画像データが入力として使用可能でないと決定された場合に、エラーメッセージが生成される、請求項17に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項19】
前記定量化可能な尺度の前記決定された値をディスプレイ上に表示するステップをさらに備える、請求項17又は18に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項20】
プログラムコード手段がデータ処理システム上で実行されたとき、前記データ処理システムに、請求項17から19のいずれか一項に記載の前記コンピュータ実装方法の前記ステップを実行させるように適合された前記プログラムコード手段を備え、前記プログラムコード手段が記憶されているコンピュータ可読媒体をさらに備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項21】
細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するための装置であって、前記装置はメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャするためのカメラユニットと、前記キャプチャされた画像を処理するための処理ユニットと、細胞運動性の前記定量化可能な尺度の前記値を表示するためのディスプレイと、ユーザ入力ユニットとを備え、ここにおいて、前記ユーザ入力ユニットの作動に応答して、
前記カメラユニットは、メゾスケール流体システムの分析室及び/又は細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャするように構成され、
前記処理ユニットは、前記キャプチャされた画像を前記定量化可能な尺度の前記値にマッピングするように構成されたマッピング機能を使用して、前記キャプチャされた画像を処理し、細胞運動性の前記定量化可能な尺度の前記値を決定するように構成され、ここにおいて、前記マッピング機能は請求項1から6のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システムの分析室及び/又は細胞保持フィルタの画像データを前記定量化可能な尺度の値にマッピングするように較正される、細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するための装置。
【請求項22】
コンピュータ可読コードを備えるデータ記憶媒体であって、前記コンピュータ可読コードが、処理ユニットと、ディスプレイと、ユーザ入力ユニットとを備えるユーザ端末を、請求項21に記載の装置になるようにプログラムするように構成される、データ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の細胞運動性、特に、精子試料中の細胞の運動性を分析するためのメゾスケール流体システムに関するものである。本発明は、試料中の運動性細胞の量と質とを推定する方法、および非運動性細胞から運動性細胞を、特にメゾスケール流体システムを使用して抽出する方法にも関係する。
【背景技術】
【0002】
この10年間に男性受精能力の減少の意識が高まってきており、それにより精子試料を有することに対する需要が生まれている。特に、試料中の運動精子細胞の濃度が、試料の受精能力を推定することに関して最高の予測因子であることが知られている(Tomlinsonら、2013年、Human Fertility、1〜19ページ)。目下のところ、精子試料中の細胞の数と運動性を評価するための分析は、典型的には、実験室環境において専門家によって実施され、男性受精能力を推定するための家庭用診断装置は、従来技術では、限られた範囲でしか扱われていない。そのような家庭用診断装置は、好ましくは、簡単に使用できるものであるべきであり、また顕微鏡、インピーダンス測定用電極、または同様のものなどの補助機器を必要とすることなく性質上使い捨てできるように安価に入手できるものとであるべきである。
【0003】
家庭環境の快適さの中で精子試料を検査するための1つの装置は、国際公開第2012/126478号において説明されている。国際公開第2012/126478号では、運動性細胞をその運動性に基づき分離することと、細胞の検出および定量化を可能にすることとが可能であるメゾスケール流体システムを説明している。システムは、通路を介してさらなる分析室と流体連通する第1の分析室を備え、通路は、第1の分析室と流体連通する入口ポートと、さらなる分析室と流体連通する出口ポートとを有し、入口ポートの断面積は、出口ポートの断面積よりも大きい。各分析室は、分析室に面する上流表面と排出液流路に面する下流表面とを画成する固液分離ユニットをさらに備え、これにより、固液分離ユニットを介して分析室と排出液流路との間の流体連通を可能にする。接続されている分析室は、運動性細胞が第1の分析室から次の分析室に移動することを可能にし、それにより、試料中の細胞の運動性の推定を行う。
【0004】
国際公開第2012/126478号は、調節媒体(conditioning medium)側の反対側に試料塗布側を画成する細胞透過性フィルタをさらに備えるメゾスケール流体システムの一実施形態についても説明しており、細胞透過性フィルタは、運動性細胞が泳いでフィルタを通過することを可能にする細孔サイズを有する。細胞透過性フィルタは、試料塗布側上に塗布された試料の液体と調節媒体側に存在するか、または追加されている調節媒体との混合を最小にすると言われる。そこで、細胞透過性フィルタが、対流を介して試料塗布側から調節媒体側に輸送されないことを確実にするために用意され、これにより、調節媒体側に存在する細胞は、細胞透過性フィルタを泳いで通過することによって横断した運動性細胞となる。
【0005】
従来技術の装置にはいくつかの欠点が存在し、これが運動性細胞の数を推定するときに精度を制限する。特に、現在利用可能な装置は、細胞透過性フィルタが一体化されているときであっても、非運動性細胞などによる汚染を十分に低減することができない。このことは、次に、細胞運動に対する推定に非運動性細胞が含まれ得ることを意味する。それに加えて、運動性精子細胞が流体流路を通って移動することは、定量点での濃度を、検出が難しくなるレベルまで減少させ得る。これは、複数の直列に接続された分析室を備えるシステムの場合に特に当てはまるように思われる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、これらの欠点を解消し、推定精度を改善した、またそれと同時に、機能的な家庭用診断装置の要求条件を満たすメゾスケール流体システムを実現することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様は、試料室と分析室とを有する基材を備えるメゾスケール流体システムに関するものであり、試料室は試料塗布区画と調節媒体区画とを画成する細胞透過性フィルタを備え、
試料室は試料塗布区画内に試料注入ポートを有し、
分析室は入口ポートと出口ポートとを有し、
調節媒体区画は流路を介して分析室の入口ポートと流体連通しており、
ここにおいて、試料塗布区画は、細胞透過性フィルタの下にあり、調節媒体区画は、細胞透過性フィルタの上にある。
【0008】
本発明によるメゾスケール流体システムは、試料中の、特に液体試料中の運動性細胞の量を推定するために使用され得る。一般に、試料が試料塗布区画に加えられ、そこから試料中に存在する運動性細胞が泳いで細胞透過性フィルタを通過して調節媒体区画内に存在する調節媒体中に入る。調節媒体区画内の液体は、分析室に移動されて、そこで、細胞が分析され、たとえば、定量化され得る。運動性細胞は、細胞透過性フィルタを横切らない非運動生細胞から分離されるので、分析室内で定量化された細胞は、運動性細胞である。
【0009】
本発明に関して、マニュアル「WHO laboratory manual for the Examination and processing of human semen」(第5版、世界保健機関、2010年、ISBN 978 92 4 154778 9)では、精子細胞に関する背景情報を提供しており、このマニュアルは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
基材は、好適な任意の材料から作製され得る。試料室は、試料室が細胞透過性フィルタによって2つの分離した区画に分割され得ることを条件として好適な任意の形状またはサイズを有することができる。細胞透過性フィルタは、調節媒体区画と試料塗布区画とを画成し、こうして、細胞透過性フィルタは、調節媒体区画と試料塗布区画とにそれぞれ面する調節媒体側と試料塗布側とを有すると考えられる。システムの企図された使用において、調節媒体は調節媒体区画に加えられる。分析される試料は、試料塗布区画に加えられる。特定の実施形態では、試料は、調節媒体が調節媒体区画に加えられる前に試料塗布区画に加えられるけれども、調節媒体と試料を加える順序は、重要でない。したがって、試料塗布区画および調節媒体区画は、それぞれ好適な任意のサイズを有し得る。細胞透過性フィルタは、試料塗布区画と調節媒体区画とを、これら2つの区画の間の流体的接続のみが細胞透過性フィルタを通るように試料室内に差し渡すことによって画成する。細胞透過性フィルタは、適切な設計、材料、および形状であればどのようなものでもよく、これは分析される運動性細胞が泳いでフィルタを通ることを可能にし、それにより、細胞が試料塗布区画から調節媒体区画内に移動することを可能にする。特に、細胞透過性フィルタは、分離される細胞のサイズおよび他の特性に関して、たとえば、細胞透過性フィルタの細孔のサイズに相対的な細胞のサイズに関して、選択される。細胞透過性フィルタ、たとえば、細胞透過性フィルタの細孔は、運動性細胞が引き付けられる材料を備え得る。試料塗布区画は、細胞透過性フィルタの下にあり、その結果として、調節媒体区画は、細胞透過性フィルタの上にある。「下」という言い回しは、重力が「上」から「下」への方向に及ぼされるように重力場に関してみなされるものである。細胞透過性フィルタは、好適な方法で試料区画上に差し渡すことができ、これにより試料区画は調節媒体区画の下に来る。
【0011】
本発明の発明者らは、驚いたことに、運動性細胞を非運動性細胞から分離するために細胞透過性フィルタを適用する効果が、試料塗布区画が細胞透過性フィルタの下にあり、調節媒体区画が細胞透過性フィルタの上にあるときに著しく改善されることを見いだした。別の態様において、本発明は、
細胞透過性フィルタを用意するステップと、
運動性細胞を含有する試料を細胞透過性フィルタの下に塗布するステップと、
試料中の運動性細胞が泳いで細胞透過性フィルタを通ることを可能にするステップと、
泳いでフィルタを通った運動性細胞を検出するステップとを備える、試料中の運動性細胞の量を推定する方法に関係する。さらなる態様において、本発明は、
細胞透過性フィルタを用意するステップと、
細胞透過性フィルタの下に、運動性細胞と非運動性細胞とを含有する試料を塗布するステップと、
試料中の運動性細胞が泳いで細胞透過性フィルタを通ることを可能にするステップと、
泳いでフィルタを通った運動性細胞を抽出するステップとを備える、非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法に関係する。一般に、本発明のどれかの態様について説明されているすべての変更形態および実施形態は、本発明の他のどれかの態様について関連しており、実施形態の特徴は、自由に組み合わされ得る。
【0012】
本発明のシステムまたは方法は、細胞透過性フィルタの下に存在するか、または加えられる、細胞調節媒体を採用するものとしてよい。本発明の文脈における「細胞調節媒体」は、試料中に細胞を担持する、たとえば、細胞を生存可能に保つことを意図されている任意の液体であり、これは、たとえば、特定の細胞に適しているような栄養物、塩類、緩衝液、および/または粘度調整剤を含有し得る。同様に、本発明のシステムまたは方法は、細胞透過性フィルタの上に存在するか、または加えられる、試料媒体を採用するものとしてよい。「試料媒体」も、特定の細胞に適しているような栄養物、塩類、緩衝液、および/または粘度調整剤を含有し、これは、細胞調節媒体と同じであるか、または試料媒体および細胞調節媒体は、異なる組成物であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞調節媒体および/または試料媒体は、検出剤を備え得る。いくつかの実施形態では、メゾスケール流体システムまたは方法は、試料媒体を採用しない。
【0013】
運動性細胞を定量化するために適している方法はどれも、本発明によるシステムにおいて適用されるものとしてよく、分析室は、選択された方法を受け入れる、好適な任意の形状またはサイズのものであってよい。分析室は入口ポートと出口ポートとを備える。本発明の文脈において、「ポート」は、ポートを介して流体連通を可能にする適切な任意の開口部である。ポートは、デフォルト設定では開いているか、または閉じられており、弁などの、アクチュエータを介して開くことを必要とするものとしてよい。入口ポートは、液体、たとえば、分析室への運動性細胞を含有する調節媒体に対するアクセスを提供する。出口ポートは、調節媒体が分析室から出ることを可能にし、さらに、調節媒体は、分析室の出口ポートを介して調節媒体区画にも塗布され得る。同様に、分析室のポートは、本発明のメゾスケールシステムを通る流体流を可能にする。入口ポートおよび出口ポートは、この機能をもたらす、好適な任意の設計を有するものとしてよく、これらのポートは、流体流路と流体連通し得る。特定の一実施形態において、試料注入ポートは、試料、たとえば、精子試料を受け入れるための受け入れウェルと、たとえば、流路を介して、流体連通している。
【0014】
したがって、システムおよび方法は、試料中の非運動性細胞から運動性細胞の分離を改善し、次いで、これらの運動性細胞は、分析室内で定量化され得る。試料液体と調節媒体との混合は、試料塗布区画が細胞透過性フィルタによって調節媒体区画から分離されているときに最小にされる。本発明の発明者らは、細胞透過性フィルタの適用はたとえば試料塗布側から調節媒体側への非運動性細胞の対流を完全には防がないが、しかしながら、それらには、本発明により、すなわち、試料塗布区画が調節媒体区画の下にあるときに、システム内の細胞透過性フィルタを横切る対流の著しい低減のあることが観察されたと確信している。本発明の文脈において、「対流」という用語は、一般的に、質量の受動的な移動、たとえば、液体成分が液体の流れとともに運ばれる状況を説明するものである。本発明の発明者らは、低減された対流、さらには拡散が、少なくとも一部は、試料に作用する重力に起因し得ると確信している。すなわち、下向きの力が、試料中の細胞などのすべての粒子に及ぼされて、それによって、上向きの方向の受動的移動を制限する。重力に対抗する手段を有しない非運動性細胞は、それほどではないにせよ、細胞透過性フィルタを通る対流と上への拡散とによって輸送される。その一方で、試料の液体中で与えられた方向に自らを能動的に輸送する手段を有する運動性細胞は、それらに及ぼされる重力に容易に打ち勝ち、泳ぐことによって自らを輸送し細胞透過性フィルタに通すことができる。特に、運動性細胞は、細胞透過性フィルタに遭遇した後、遭遇した表面に沿って泳ぎ、それによって泳いで細胞透過性フィルタを通過する傾向を有する。そこで、試料を細胞透過性フィルタの下に位置決めすることで、細胞が対流を介して試料塗布側から調節媒体側に受動的に輸送されないことをかなり程度で確実にする。したがって、本発明によるシステム内の精子試料の分析時に、調節媒体側に存在する細胞は、細胞透過性フィルタを、泳いでそれを通過することによって横断した運動性細胞となる。本発明のシステムのさらなる利点は、運動性細胞が移動しなければならない距離がシステムに比較して短いことであり、ここにおいて、運動性は、流路内の細胞の移動距離によって測定される。したがって、この距離が短ければ短いほど結果として、分析を実施するのに要する時間が短縮される。
【0015】
本発明の発明者らは、本発明のメゾスケール流体システムおよび方法が、調節媒体区画内の調節媒体の汚染をさらに低減することをさらに観察している。精子試料などの試料は、典型的には、細胞透過性フィルタも通過し、調節媒体中に入り得る、追加の粒子と、細胞と、分子とを備える。しかしながら、試料を細胞透過性フィルタの下に塗布することも、そうしなかった場合に調節媒体の内容物の後から行う分析の質を低下させるおそれのある試料のそのような追加の成分の対流および拡散を低減する。特に、精子試料、たとえば、試料液体は、分析に対して負の効果を有し得る酵素を備えることができ、したがって、酵素などを収納する試料液体からの運動性細胞の分離は、特に有利である。
【0016】
その結果、本発明の発明者らは、運動性細胞が細胞透過性フィルタの下にある状態で、たとえば、細胞透過性フィルタの下に試料塗布区画を、細胞透過性フィルタの上に調節媒体区画を有する装置を用意することによって試料を塗布すると、その結果、非運動性細胞さらには試料の追加の汚染成分による調節媒体の汚染の低減が生じることを見いだした。運動性細胞のみが分析室内に入り、これにより、試料中に存在する非運動性細胞、異物、および他の成分が偽陽性および/または偽陰性の寄与の形態で試験結果にマイナスの影響を及ぼすことを防ぐことが確実にされる。
【0017】
本発明の一実施形態では、調節媒体区画は、媒体注入ポートをさらに備え、これは周囲と流体連通し得る。媒体注入ポートは、液体、たとえば、細胞の分析に必要な成分を含有する試料調節媒体が入るのを円滑にすることができ、さらに、媒体注入ポートは、周囲と流体連通し得るので圧力解放機能を提供することができる。媒体注入ポートは、これにより、細胞透過性フィルタ上の圧力低下は媒体注入ポート上の圧力低下よりも著しく大きいので、相対的陰圧が分析室の出口ポートを介して印加されるとき、または相対的陽圧が媒体注入ポートを介して印加されるときに、試料塗布区画内の試料が能動的に輸送されて細胞透過性フィルタに通され、調節媒体区画および/または分析室内に入るということがないことを確実にする。液体が分析室の入口ポートを介するか、または媒体注入ポートを介するかのいずれかで調節媒体区画に、または調節媒体区画から装填されるか、または引き出されるときに、加えられた圧力は、反対側のポートを通して解放される。したがって、調節媒体が、たとえば分析室の入口ポートを通じて、調節媒体区画内に装填されるときに、過剰な調節媒体によって加えられる圧力は、媒体注入ポートを介して解放される。調節媒体が、分析室の入口ポートを通じて調節媒体区画から引き出されるときに、圧力は媒体注入ポートによって解放され、これにより、細胞透過性フィルタを通して試料塗布室からたとえば細胞を吸引することを防ぐ。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態では、分析室は、入口ポートに面する上流表面と出口ポートに面する下流表面とを有する細胞保持フィルタを備える。細胞保持フィルタは、適切な設計、材料、および形状であればどのようなものでもよく、これは液体がフィルタを通過するときに細胞を懸濁された細胞を含有する液体から分離する、たとえば、保持することを可能にする。細胞保持フィルタは、分析室の入口ポートと出口ポートとの間の流体的接続のみが細胞保持フィルタを通るように分析室内に差し渡される。調節媒体区画内の液体は、試料室から、たとえば、分析室のポートと流体連通している排出液流路を介して、引き出されるときに、細胞は、分析室内の液体中で、または細胞保持フィルタの上流表面上で細胞が濃縮されるように細胞保持フィルタの上流側に保持される。この濃縮効果は、調節媒体区画内の液体(たとえば、調節媒体)中に自らを能動的に輸送した、試料内の運動性細胞が、たとえば細胞保持フィルタの上流表面上で目視で観察され得ることを可能にする。その結果も、細胞保持フィルタの下流表面上で目に見え得る。代替的に、細胞は、液体を引き出す前に液体中に存在する濃度と比較して分析室内により高い濃度の細胞が提供されるように分析室内に残っている量が減った液体中に懸濁され得る。
【0019】
好ましい一実施形態では、調節媒体区画と分析室との間に流体連通をもたらす流路に対する細胞保持フィルタの位置決めは、細胞保持フィルタの上流表面および/または下流表面が目視で観察されることを可能にする。たとえば、調節媒体区画を分析室の入口ポートと流体連通させるための流路は曲がり角または同様のものを備え、これにより、細胞保持フィルタの上流表面の観察は、その曲がり角と細胞保持フィルタとの間の流路のセクションのみを通る流路に沿って観察することを必要とする。したがって、細胞保持フィルタは直接観察され得、これは、光学的検出機能との容易な一体化を円滑にする。
【0020】
本発明の一実施形態では、分析室は、物理的にアクセス可能である。これは、1つまたは複数の細胞が分析室から取り出されることを可能にし、および/または室内にすでに存在している細胞の操作を可能にする。システムは、細胞をその運動性に基づき、そのような細胞を含有する試料から細胞群の一部を提供することを意図して分離するためにも使用され得る。これは、生殖介助術(ART)で使用するために運動性の低い精子細胞から運動性の高い精子細胞を分離するために特に有用である。そのため、分離は、本発明によるシステム内で実行されるものとしてよく、運動性細胞は、分析室から抽出され得る。
【0021】
本発明の一実施形態において、メゾスケール流体システムは、液体を試料室から分析室に、および/または分析室から試料室に移動する液体駆動力をもたらすための手段をさらに備える。液体が試料室から分析室に移動されるときに、液体は、運動性細胞を備える調節媒体であってよい。液体がその一方で分析室から試料室に移動されるときに、液体は、調節媒体でもあってよい。液体駆動力をシステム内にもたらすのに適している手段であればどのようなものでも適用され得る。
【0022】
好ましい一実施形態において、液体駆動力をもたらすための手段は、注射器を備える。注射器は、たとえば、ボタンを押すことによって、または別のアクチュエータを作動させることによって容易に動作させられ、したがって、注射器の動作は、エンドユーザの最小限度の労力を必要とする。それに加えて、注射器の機構は、システムの全体的な堅牢性に寄与する単純な機械的原理である。注射器のシリンダ内のピストンの移動も、液体駆動力を、メゾスケール流体システムを通るいずれかの方向に、すなわち、調節媒体区画から分析室に、またはその逆の方向に印加することができる。したがって、単一の注射器が、調節媒体をシステムに装填することと、システムを通して試料を引き出すことの両方に十分であるものとしてよい。
【0023】
本発明の一実施形態では、メゾスケール流体システムは、試料媒体、調節媒体、および/または検出剤をさらに備える。他の実施形態では、試料媒体、調節媒体、および/または検出剤は、メゾスケール流体システムの使用時に加えられ得る。いずれの場合も、システムは、使いやすい診断装置の要求条件に従うが、それは、エンドユーザに必要なステップが少ないほどヒューマンエラーのリスクをさらに低減するからである。特定の一実施形態において、試料媒体、試料調節媒体、および/または検出剤は、1つまたは複数の分離したカプセル、注射器、もしくは同様のもので供給されるか、または適切な成分、たとえば、試料媒体または細胞調節媒体の検出剤または成分が、乾燥されるか、またはシステム内に直接コーティングされ得る。分離したカプセルまたは注射器は、メゾスケール流体システム内に一体化され得るか、またはメゾスケール流体システムの外部にあってもよい。媒体および/または媒体、たとえば検出剤の成分を分離したカプセルまたは注射器内に有することで、個別の媒体が最適な条件の下で貯蔵され得るのでメゾスケール流体システムの貯蔵寿命を改善することができる。
【0024】
本発明の別の態様は、試料中の運動性細胞の量を推定するための方法に関係し、さらなる態様は、上で概要が述べられているように非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法に関係する。両方の方法において、運動性細胞を含有する試料は、細胞透過性フィルタの下に塗布され、運動性細胞を含有する試料は、運動性細胞が分離され得る非運動性細胞も含有し得る。両方の方法において、フィルタの上の細胞調節媒体は、細胞透過性フィルタの上に、すなわち、調節媒体側に存在するか、または加えられるものとしてよく、試料媒体は、細胞透過性フィルタの下に存在するか、または加えられ得る。細胞調節媒体および試料塗布媒体は、上で定められている通りである。本発明のメゾスケール流体システムに関連する検出原理は、本発明の方法態様の任意の実施形態に対しても関連しており、これらの方法態様の任意の実施形態に対して、細胞透過性フィルタは、メゾスケール流体システムの任意の実施形態に対してと同様であるものとしてよい。特定の実施形態において、細胞透過性フィルタは、本発明によるメゾスケール流体システムに収容される。メゾスケール流体システムの実施形態はどれも、本発明の両方の方法態様に対して関連する。メゾスケール流体システムが採用されるときに、この方法は、調節媒体を試料室と分析室とそれらの間の流路とに加えるステップ、適宜、検出剤を試料室に加えるステップ、試料を試料塗布区画に加えるステップ、試料の運動性細胞が調節媒体区画に移動することを可能にするステップ、液体駆動力を試料室から分析室に伝えるステップ、たとえば細胞保持フィルタ上で分析室内の検出剤をもし存在すれば定量化するステップ、または分析室から運動性細胞を抽出するステップをさらに備え得る。そこで、メゾスケール流体システムは、媒体、たとえば、試料媒体および/または細胞調節媒体を事前充填され得るか、またはこれらの媒体は、使用時にメゾスケール流体システムに施され得る。
【0025】
本発明の発明者らは、本発明によるシステムを使用するための方法を企図しており、ここにおいて、調節媒体は、最初に、試料室の少なくとも調節媒体内に送られる。いくつかの実施形態では、調節媒体は、エンドユーザに供給されるときに、貯槽内に、または試料室の調節媒体区画内に存在し得る。媒体、たとえば、試料媒体および/または細胞調節媒体、または検出剤が入っている貯槽は、適切な室または区画と流体連通する。他の実施形態では、調節媒体は、たとえば、注射器などの液体駆動力の使用によって、分析室を通じて、または調達媒体区画の媒体注入ポートを介して、調節媒体区画内に加えられる。定量化方法に応じて、検出剤が試料室に加えられ得る。検出剤は、運動性細胞が検出剤で染色されるような適切な染料であってよく、これは染料の強度から分析室内の細胞集団の検出および定量化を可能にする。検出剤は、適宜蛍光信号の測定から細胞が定量化され得るような蛍光染料であってもよい。検出剤は貯槽内に存在しているか、または試料室内にすでに存在しているものとしてよく、たとえば、乾燥されるか、またはシステム内に直接コーティングされ得る。次いで、試料が、試料塗布区画に加えられ、試料の運動性細胞が調節媒体区画に移動するための時間期間が斟酌される。次いで、調節媒体は、注射器などの液体駆動力を用いて分析室を通して引かれる。調節媒体中の運動性細胞は、分析室内に保持され、保持されている細胞が定量化される。運動性細胞が、細胞保持フィルタによって保持される場合、検出剤は、典型的には、細胞が分析室内で視覚的手段によって定量化されるように使用される。
【0026】
したがって、上述の方法、たとえば、本発明のメゾスケール流体システムを使用する方法は、試料中の運動性細胞の正確な推定を円滑にする。したがって、エンドユーザが事前の経験なく、また高度な技術的知識もなく、家庭環境内で試料に対してこの方法を実行することによって細胞の運動性に関する情報を取得することが可能である。
【0027】
メゾスケール流体システムおよび方法態様は、試料中の運動性細胞の量および運動性を分析するため、または適宜、たとえば、ARTを目的として、運動性細胞をその運動性に基づき分離するために使用され得る。運動性細胞は、原核細胞、たとえば、細菌性細胞、または酵母細胞、アメーバ、微小または大寄生虫、および同様のものなどの真核細胞、または運動性哺乳類細胞種類であってもよい。好ましい細胞種類は、精子細胞であり、特に、ヒト精子細胞またはたとえば牛、馬、羊、犬、猫などの家庭動物の他の哺乳類精子細胞である。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、本発明の任意の態様によるメゾスケール流体システムと、検出剤と、試料媒体と、細胞調節媒体とを備えるパーツのキットに関係する。検出剤、試料媒体、または細胞調節媒体は、メゾスケール流体システム、たとえば、貯槽もしくは室内に存在し得るか、またはメゾスケール流体システムから分離している容器内に収容され得る。キットは、キットの使用のための取扱説明書も備え得る。キット内の好ましい検出剤は、MTTなどの、テトラゾリウム染料である。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、試料中の運動性細胞の分析用のシステムに関係し、システムは本発明の第1の態様によるメゾスケール流体システムと外部検出器装置とを備え、これは光学検出器と、メゾスケール流体システムの分析室内または細胞保持フィルタ上の検出剤をもし存在すれば定量化するように構成されているコンピュータプログラムコードを収容するコンピュータ可読記憶媒体と、コンピュータプログラムコードを実行するためのデータプロセッサとを備える。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の第1の態様によるメゾスケール流体システムの分析室内または細胞保持フィルタ上の検出剤をもし存在すれば定量化するように構成されているコンピュータプログラムコードを収容する、モバイルユーザ端末、たとえば、携帯電話に関係する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するためのコンピュータ実装方法に関係し、
メゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの少なくとも一部の画像を備える画像データを受信するステップと、
定量化可能な尺度の値を決定するために画像データを処理するステップとを備え、
ここにおいて、画像データを処理するステップは、マッピング機能を使用して画像データを定量化可能な尺度の値にマッピングするステップを備え、マッピング機能は、本発明の第1の態様に関して開示されているような特定のメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの画像データを定量化可能な尺度の値にマッピングするように較正される。
【0032】
その結果、定量化可能な尺度は、自動的に、操作者独立に決定され得る。
【0033】
この方法のすべてのステップは、ユーザ端末、たとえば、スマートフォンなどの、単一のデータ処理システム上で実行され得る。単一のデータ処理システムは、固定型システム、たとえば、臨床装置であってもよい。代替的に、これらのステップのうちのいくつかは、リモートコンピュータサーバ上で実行され得る、たとえば、画像データを処理するステップは、リモートコンピュータサーバ上で実行され得る。
【0034】
定量化可能な尺度は、絶対尺度、たとえば、試料中の運動性細胞の数、相対的尺度、たとえば、試料中の運動性細胞のパーセンテージであり得る。定量化可能な尺度は、「良い」、「標準的」、「平均」、「低い」などの状態も記述し得る。ヒト精液の試験および処理のためのWHO実験マニュアル、付録1では精液分析のための基準値を提示し、ヒト精液の試験および処理のためのWHO実験マニュアルの付録1は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0035】
マッピング機能の較正は、特定のメゾスケール流体システムと伝統的な技術、たとえば、顕微鏡を使った手作業による技術の両方を使用して多数の試料の運動性を分析することによって行われ得る。精子細胞の顕微鏡分析の手順は、ヒト精液の試験および処理のためのWHO実験マニュアルの第2章、たとえば、2.7節と2.8節とで説明されおり、これは参照により本明細書に組み込まれている。
【0036】
いくつかの実施形態では、この方法は、画像データがマッピング機能への入力として使用可能であるかどうかを決定するために画像データを前処理するステップをさらに備え、ここにおいて、画像データが入力として使用可能でないと決定された場合に、エラーメッセージが生成される。
【0037】
いくつかの実施態様では、この方法は、
定量化可能な尺度の決定された値をディスプレイに表示するステップをさらに備える。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、プログラムコード手段がデータ処理システム上で実行されたとき、データ処理システムに、すでに開示されているコンピュータ実装方法のステップを実行させるように適合されたプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム製品に関係する。
【0039】
いくつかの実施形態では、コンピュータ可読プログラムは、プログラムコード手段が記憶されているコンピュータ可読媒体を備える。
データ記憶媒体は、DVD、USBドライブ、または同様のものなどの、可搬型媒体であってよい。代替的に、データ記憶媒体は、コンピュータネットワークに接続されたコンピュータサーバ上のハードドライブであり得、たとえば、データは、Dropbox(商標)などのインターネットサービスを介して、またはクラウドストレージを使用して記憶され得る。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は、細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するための装置に関係し、装置はメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャするためのカメラユニットと、キャプチャされた画像を処理するための処理ユニットと、細胞運動性の定量化可能な尺度の値を表示するためのディスプレイと、ユーザ入力ユニットとを備え、ここにおいて、ユーザ入力ユニットの作動に応答して、
カメラユニットは、メゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャするように構成され、
処理ユニットは、キャプチャされた画像を定量化可能な尺度の値にマッピングするように構成されたマッピング機能を使用して、キャプチャされた画像を処理し、細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するように構成され、ここにおいて、マッピング機能は、本発明の第1の態様に関して開示されているような特定のメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの画像データを定量化可能な尺度の値にマッピングするように較正される。
【0041】
カメラユニットは、画像の適切なデータを収集することができるユニット、たとえば、デジタルカメラ、レーザスキャナ、CCD読取装置、フォトダイオードスキャナ、または同様のものであってよい。
ディスプレイおよびユーザ入力ユニットは、単一のユニット、たとえば、タッチスクリーンに組み合わされ得る。
【0042】
特定の一実施形態において、本装置は、本発明のメゾスケール流体装置を収納するためのハウジング室を備える。ハウジング室は、メゾスケール歩流体装置の周りの照明条件を制御するようにセットアップされ得、たとえば、ハウジング室は、外部光を遮断することができる。ハウジング室は、たとえば、波長と強度とに関して、制御された構成の光を供給することができるランプ、たとえば、発光ダイオードを装着することもできる。ハウジング室は、メゾスケール流体装置とカメラユニットとの間の特定の距離を画定するようにもセットアップされ得るか、または距離は、たとえば、ステージまたは同様のものを使用して制御され得る。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、コンピュータ可読コードを備えるデータ記憶媒体に関係し、ここにおいて、前記コンピュータ可読コードは、処理ユニットと、ディスプレイと、ユーザ入力ユニットとを備えるユーザ端末を、すぐ上で指定されているような装置になるようにプログラムするように構成される。
【0044】
ユーザ端末は、スマートフォンまたはタブレットであってよい。ユーザ端末は、ポータブルコンピュータ、たとえば、ラップトップコンピュータ、または固定型コンピュータであってもよい。したがって、コンピュータ可読コードは、スマートフォンまたはタブレットをプログラムするように構成されたアプリケーション、たとえばApple(登録商標)IOSアプリ、Windows(登録商標)Mobile App、および/またはGoogle(登録商標)Android Appであってよい。代替的に、コンピュータ可読コードは、ユーザ端末をプログラムするように構成されたウェブページ、たとえば、ウェブアプリであってよい。
次に、本発明は、実施形態の例の助けを借りて、概略図を参照しつつ、さらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明のメゾスケール流体システムの概略断面図。
図2】本発明の一実施形態による、細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するための装置の概略図。
図3】精液試料の滴定に対するデータを示す図。
図4】使用後の本発明のメゾスケール流体装置の細胞保持フィルタの写真。
【発明を実施するための形態】
【0046】
様々な実施形態における特徴の組合せも企図され、様々な特徴、詳細、および実施形態は、他の実施形態に組み合わされ得ることは理解されるであろう。特に、メゾスケール流体システム、試料中の運動性細胞の量を推定する方法、および/または非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法に関するすべての定義、特徴、詳細、および実施形態は、等しく互いに適用されることが企図される。
図への参照は、本発明を説明するために使用されており、特徴を示されているような特定の実施形態に制限すると解釈されるべきでない。
【0047】
本発明は、運動性細胞をその運動性に基づき分離すること、たとえば、運動性細胞を非運動性細胞から、また試料液体から分離することができるメゾスケール流体システムと、試料中の運動性細胞の量を推定する方法と、運動性細胞を非運動性細胞から抽出する方法とに関係する。このシステムは、運動性細胞を含有していると知られているか、または予想されている試料中の細胞の含有量または量と運動性とを分析するために使用され得る。システムは、細胞をその運動性に基づき、そのような細胞を含有する試料から細胞群の一部を提供することを意図して分離するためにも使用され得る。これは、生殖介助術(ART)で使用するために運動性の低い精子細胞から運動性の高い精子細胞を分離するために特に有用である。
【0048】
本発明の文脈において、「運動性」および「運動(性)」という用語は、液体の流れに無関係に液体中で移動することができる細胞を指す。特に、運動性細胞は、非流動液体中で移動することができる。運動性細胞は、「移動する」または「泳ぐ」などとも言われ得る。運動性は、ランダムであると考えられ得るか、または細胞は、泳ぐことによって、たとえば、与えられた条件の方に向かって、または離れる方向に泳ぐことによって刺激に応答し得る。共通の刺激は、化学勾配(「chemotaxis」)、温度勾配(「thermotaxis」)、光勾配(「phototaxis」)、磁力線(「magnetotaxis」)、または電場(「galvanotaxis」)に応答して移動する運動性細胞に対するものであってよい。関連する刺激は、当業者に知られる。いくつかの実施形態では、細胞運動は、注目する運動性細胞に関連する刺激を与えることによって誘発され、これは細胞をその追加点からシステム内のその後の分析室の方へ泳がせる。たとえば、ケモカインまたは他の化学物質が、調節媒体区画内に、たとえば、調節媒体中に、または分析室内に留置され、試料塗布区画内に、または受け入れウェルに加えられた運動性細胞を引き付けることができる。
【0049】
本発明の文脈において、「メゾスケール」という用語は、流路の最小寸法が約10μmから約4mmまで、たとえば、約100μmから約3mmまでの範囲内、典型的には約2mmであるサイズの範囲に及ぶことを意図されているが、流路は収縮部も収容し得る。同様に、室は、約500μmから約2mm、たとえば、約500μmまたは約1mmなど、約100μmから約20mm以上の深さを有するものとしてよく、最大水平寸法は、約1mmから約50mm、たとえば、約1mmから約30mmまたは約1mmから約20mm、または約1mmから約10mm、たとえば、約2mmから約6mmまでとすることができる。受け入れウェルのサイズは、もし存在すれば、分析のため試料室の試料塗布区画を流体で満たすように試料液体を保持するのに十分なサイズであるべきであるけれども、試料は、試料塗布区画を満たすように受け入れウェル内で希釈され得ることも企図される。一般的に、メゾスケール流体システム内の流体は、層流条件の下で流れていると言われる場合があり、上で定義されているのと異なる流路または室を有する流体システムは、システム内に収容される流体が層流条件の下で流れる限り「メゾスケール」と記述されてよい。
【0050】
次のこれらの図を参照すると、本発明によるメゾスケール流体システムが図1に示されており、前記メゾスケール流体システム1は試料室3と分析室4とを有する基材2を備え、試料室は試料塗布区画7と調節媒体区画8とを画成する細胞透過性フィルタ6を備え、試料室3は試料塗布区画7内に試料注入ポート15を有し、分析室4は入口ポート9と出口ポート10とを有し、調節媒体区画8は流路5を介して分析室4の入口ポート9と流体連通しており、試料塗布区画7は、細胞透過性フィルタ6の下にあり、調節媒体区画8は、細胞透過性フィルタ6の上にある。メゾスケール流体システム1は、試料塗布区画7と流体連通する受け入れウェル12も備え得る。分析室は、細胞保持フィルタ13を備え得る。
【0051】
本発明による「フィルタ」は、固形物、たとえば、細胞と、液体とを分離することができるユニットとして最も広い意味で理解されるべきである。したがって、フィルタは、たとえば、濾紙、フィルタ膜など、篩い、粒子充填層であってよい。本発明のシステムは、細胞がフィルタを横断することを可能にする、細胞透過性フィルタを備える。適宜、本発明のシステムは、液体が細胞を通過することを許し、細胞を保持する、細胞保持フィルタも備える。したがって、2種類フィルタは、分析される細胞に応じて異なる細孔サイズを備えていなければならない。細胞透過性フィルタ6は、たとえば、1μmから20μm、たとえば、1、3、5、8、10、12、15μmなど、1μmから3μmまでの細孔サイズを有することができ、運動性細胞は同時にフィルタに圧力低下をもたらしながら細胞が泳いでそれを通ることを可能にする。好ましい細孔サイズは、約10μmである。一実施形態では、細胞透過性フィルタ6は、ヌクレオポアフィルタである。細胞保持フィルタ13の適切な材料は、たとえば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0μmなどの約0.1μmから約20μmまでの範囲のカットオフサイズを有するものとしてよいが、より大きいカットオフサイズも、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または12μmも適切であり得る。好ましいカットオフサイズは、0.2μm、0.45μm、1μm、および3μmである。特に、細胞透過性フィルタ6および細胞保持フィルタ13のカットオフサイズは、注目する運動性細胞が細胞保持フィルタ13よって保持されている間に泳いで細胞透過性フィルタ6を通るように選択される。一実施形態では、細胞保持フィルタは、混合セルロースエステルのフィルタである。
【0052】
本発明のメゾスケール流体システムは、調節媒体とともに採用される。「調節媒体」という用語は、限定することを意図されていないが、「調節」は、媒体が運動性細胞の分析、さらには細胞を生存可能に保つために必要な成分を含有することができることを指す。したがって、調節媒体は、注目している細胞種類に適しているようにpH緩衝液、塩類、栄養物を含有することができる。調節媒体は、検出剤も含有することができるか、または検出剤は、システム内の調節媒体に別々に加えられるか、または流路もしくは室内に乾燥形態で存在し得る。
【0053】
検出および定量化のために、調節媒体は、典型的には、検出剤を備える。検出剤は、染料または染料で標識された細胞に対する結合パートナー、たとえば、細胞上の表面マーカーに対する抗体であってよく、抗体は染料または放射性同位体または同様のもので標識される。適切な染料は、蛍光染料または他の染料であってよく、染料は、注目する細胞種類に特異的にまたは非特異的に結合することができるものとしてよい。精子細胞を定量化するため検出標識として使用する例示的な染料は、クマシーブルー、トリパンブルー、クリスタルバイオレット、ナイルブルー、ナイルレッド、ヘマトキシリン、酸性フクシン、エオシン、サフラニン、ニグロシン、アクリジンオレンジ、ギムザ染色、エリトロシン、パパニコロー、メチレンブルー、ニュートラルレッド、フェノールレッド、ヘキスト染色、レザズリン、ビスマルクブラウン、テトラゾリウム染料、オレンジG、過ヨウ素酸シッフ、ローライト染色、ジェンナー染色、リーシュマン染色、ギムザ染色、ロマノフスキー染色、スダン染色、ヨウ化プロピジウム、および臭化エチジウムを備える。好ましい染料は、水溶性もしくは不水溶性テトラゾリウム塩または化合物、たとえば、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MMT)、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム(INT)、たとえば、それらの臭化物塩または塩化物塩として、2,3−ビス−(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキサニリド(XTT)、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)、2,3,5−トリフェニル−2H−テトラゾリウム(TTC)、たとえば、塩化物塩として、またはジメチルテトラゾリウムなどのテトラゾリウム染料である。テトラゾリウム染料およびその対応するアッセイは、当技術分野でよく知られている。メゾスケール流体システムが、たとえば、ARTに使用される、試料中の運動性細胞を分離するために採用されるときに、染料または標識が存在しないことが好ましい。特定の実施形態において、2つまたはそれ以上の異なる検出剤が採用され、追加の検出剤で運動性細胞のさらなる特性を検出または定量化することができ、たとえば、2つまたはそれ以上の検出剤、たとえば、異なる検出剤は、検出剤に適切なように2つまたはそれ以上の特性、特に2つまたはそれ以上の異なる特性を定量化することができる。たとえば、適切に標識された抗体は、運動性細胞上の特異的表面抗原を検出または定量化するために追加の検出剤として使用され得る。追加の検出剤は、特定の成分が分析室内に、または細胞透過フィルタの調節媒体上に存在しないことを確実にするために陰性対照としても採用され得る。一般に、本発明の実施形態はどれも、2つまたはそれ以上の検出剤を採用することができる。
【0054】
複数の細胞種類が試料中に存在するときに、検出剤は、有利には、注目する細胞に特異的に、場合によっては、選択的にも結合し得る。検出剤は、特定の細胞種類、たとえば、生きている運動性精子細胞に結合した後、色を変化させることが好ましい。したがって、好ましい検出剤は、細胞に結合されていないときには目に見える色を有さず、細胞に結合した後に、検出可能な、たとえば、目に見える色を有するように変化する。検出剤は、細胞に悪影響を及ぼさないことが好ましい。好ましい一実施形態では、検出剤を含有する調節媒体は、貯槽、たとえば、受け入れウェル内に収容されるが、分析室と通路との中にある液体は検出剤を含有しない。これは、分析室内、または細胞保持フィルタの表面上の運動性細胞が、分析室内の検出剤のみが連動性細胞によってそこに運ばれているので検出のために洗浄される必要がないということを認める。代替的に、検出剤が、試料を加えた後に、検出剤を含まない調節媒体を収容する、受け入れウェルに加えられる。これは、同じ効果をもたらす。さらに別の実施形態において、特にメゾスケール流体システムが調節媒体を充填されていないときに、検出剤は、流路もしくは室内に、または細胞透過性フィルタ内に乾燥形態で存在しているか、または検出剤は、細胞保持フィルタ内に存在しているか、またはメゾスケール流体システムは、パッドまたは同様のもの内に吸着された検出剤を収容し得る。たとえば、検出剤は、室または流路壁上にコーティングされ得る。検出剤を乾燥形態で有していることで、エンドユーザによるシステムの操作を容易にすることができるが、それは、検出剤が正しい用量で存在し、試料調節媒体を塗布した後に容易に再溶解されるからである。非結合検出剤は、典型的には、細胞結合染料が保持されている間に細胞保持フィルタを通して洗浄される。さらなる実施形態では、特定の機能を有する作用物質が、たとえば、乾燥形態で、分析室または通路内に存在し得る。
【0055】
一実施形態では、検出剤は、調節媒体中に溶解されているか、または保持フィルタ内で乾燥され、調節媒体がシステムに加えられたときに溶解される、染料である。別の実施形態では、検出剤は、媒体注入ポート11または流路5の近くの区画内に乾燥形態で置かれ、調節媒体区画を充填するときに溶解される、染料である。
【0056】
使用時に、運動性細胞を含有する試料が、試料室3の試料塗布区画7内に、適宜受け入れウェル12を通して導入される。次いで、細胞は、試料室3の調節媒体区画8に移動することを許される。試料を加えた後許容される時間は、運動性細胞の種類によって決まり、典型的には、約10分から約1時間までの間であるが、より短いまたはより長い時間も使用され得る。システムが、精子細胞とともに使用される場合、許容される時間は、約10分、約20分、約30分、または約40分であるものとしてよい。時間が費やされたときに、調節媒体は、試料室3の調節媒体区画8と分析室4とから引き出され得る。次いで、分析室4内の細胞が検出され、および/または定量化され得るか、または細胞は、たとえば、ピペットを使用して分析室4から引き抜かれ得る。セル保持フィルタ13上の、または分析室4内の運動性細胞の検出は、単純に、たとえば細胞保持フィルタの上流表面上で観察された色の強さを比較することと、これをたとえば基材2上に、またはオプションの制御室から与えられる細胞数と染色の強さとの間の相関関係の指示と比較することとによって実行され得る。
【0057】
細胞透過性フィルタ6は、細胞を細胞透過性フィルタ6に引き付け、それを通して泳ぐ、化合物、たとえば、ヒアルロン酸をさらに収容し得る。調節媒体側は、分析室4に接続される。細胞透過性フィルタ6は、試料塗布側上に塗布された試料の液体と調節媒体側に存在するか、または追加されている調節媒体との混合をさらに最小にするか、または防ぐことすらできる。そこで、細胞透過性フィルタ6は、対流または拡散を介して試料塗布側から調節媒体側に輸送されないことを確実にし、これにより、調節媒体側に存在する細胞は、細胞透過性フィルタ6を泳いで通過することによって横断した運動性細胞となる。
【0058】
本発明のメゾスケール流体システム1は、ポリマー、ガラス、金属、セラミック材料、またはこれらの組合せなどの、任意の都合の良い材料から作られ得る、基材2を備える。基材2は、室および流路などのメゾスケール流体構造物を備えるのに適している頂部および底部および高さを有する中実構造物によって画成される。メゾスケール流体構造物の室は、適しているとみなされるときに、たとえば、周囲に対して開かれているか、または閉じられているものとしてよい。たとえば、上で画成されたポートは、たとえば、弁を使用して閉鎖可能であり得るか、または室は、他の開口部を備えることもできる。これらの室は、頂部のところで恒久的に閉鎖され得るか、またはシステムは、摺動式もしくはヒンジ付き蓋または取り外し可能な蓋などの、任意の種類の閉鎖可能部材を備え得る。アクセスのためのそのような手段は、システムの全体に、または個別の室および/または流路および/または構造物に適用され得る。この文脈において、たとえば、分析室4に関する「物理的アクセス」という用語は、室4の内容物を操作するために分析室4内の液体中に工具が挿入され得ることを意味する。この操作は、1つまたは複数の細胞を分析室4から取り出すことであるか、またはこれは、室4内にすでに存在している細胞の操作を伴い得る。この種類の物理的アクセスは、試料室に対しても用意され得る。
【0059】
一実施形態では、基材2は、平行六面体に最も似た形状を有する。基材2は、底面と、試料室3、分析室4、および室同士の間の流路5の1つまたは複数の側壁とを画成する。すべての構造物は、基材2内に画成される。基材2が上から見たときに、側壁は、その形状を画成する室の各々に対する周を形成し得る。前記形状は、丸形、正方形、多角形、または長方形などであってよい。好ましい一実施形態では、周によって形成される形状は丸形である。同様に、流路5は、上から見たときに都合のよい形状を有しているものとしてよい。基材2が頂部のところで閉じられている場合、使用される材料は、好ましくは透明である。システムの関連するセクションの観察のみを許すように材料の一部のみが透明であることが好ましく、残りの材料は不透明、たとえば、白色である。本発明のメゾスケール流体システム1は、好ましくは、疎水性表面の適切に画成された領域も使用され得るけれども、親水性表面を持つ本質的に透明な材料から作製される。いくつかの実施形態では、メゾスケール流体システム1は、試料室、分析室、および通路を水性液体で容易に濡らせるように超親水性表面のセクションを備えるものとしてよい。メゾスケール流体システム1は、不透明な、たとえば白色の材料からも作製され得る。作製材料は、好ましくは1つまたは複数の熱可塑性ポリマーであるが、ガラス、ケイ素、金属、弾性ポリマーなどの、他の材料も使用され得る。
【0060】
試料室3は、試料室3が2つの分離した区画7、8に分割され得ることを条件として好適な任意の形状を有し得る。典型的な一実施形態では、試料室3は、基材2内に陥凹された形状によって画成され、形状の本体部は、少なくとも底部基部と、少なくとも試料室3の中空空間を画成する壁を有する。基材2内に陥凹された形状は、好ましくは、基材2の底部の端から端まで完全に及ばないように切り詰められる。試料室3の形状は、たとえば、円筒形、円錐台、立方体、直方体などであってよい。本発明の一実施形態では、試料室3は、基材2内に陥凹された円筒形状によって画成され、円筒形状の本体部は、平行な円形基部と、実質的に一定の円形断面を持つ壁とを有し、円形基部は、少なくとも基材2の底部平面に平行である。試料室3は、頂部のところで開いているか、または閉じられているものとしてよい。特定の一実施形態において、試料室3は周囲に対して開いている、たとえば、上方に開いており、媒体および同様のものを調節媒体区画8に加えることを可能にし、この実施形態は、試料室3を閉じるためのカバーをさらに備えることができる。同じことが、分析室4にも適用され得る。
【0061】
一実施形態では、試料室3は、細胞透過性フィルタ6によって区画7、8に分離され、細胞透過性フィルタ6は、試料室3に差し渡されるシート状の断面を画成し、細胞透過性フィルタ6は、少なくとも基材の底部平面に実質的に平行である。いくつかの実施形態では、試料室3は、基材2内に陥凹された円筒形状によって画成され、試料室3は、試料室3を2つの区画に分割する円板の形状を形成するように少なくとも底部平面に平行な円形断面を画成する、細胞透過性フィルタ6によって区画7、8に分離される。特定の実施形態において、試料室3の底部、たとえば、「床」から細胞透過性フィルタ6までの距離は、約100μmから約5mm、たとえば、約4mmまたは約2mmであり、これは試料塗布区画7の高さを画定する。この実施形態は、運動性細胞を分析するのに特に適しており、運動性細胞の予備精製に対する一実施形態では、この距離は、より大きい、たとえば、約30mmであってよい。本発明の発明者らは、非運動性細胞からの運動性細胞の分離は、試料塗布区画7の高さが5mmよりも低いときに特に効率的であることを見いだした。5mmより低い、たとえば、2mmの高さは、運動性細胞が細胞透過性フィルタ6の表面に遭遇し、それによって泳いで細胞透過性フィルタ6を横切り、調節媒体区画内に入るように誘導される確率を改善すると確信されている。特定の一実施形態では、試料塗布区画は、4.4mmの深さを有し、調節媒体区画は、13.2mmの深さを有し、試料室の直径は、9.4mmである。
【0062】
試料塗布区画7は、細胞透過性フィルタ6の下にあり、調節媒体区画8は、細胞透過性フィルタ6の上にある。本発明は、任意の実施形態を包含するように解釈されるべきであり、試料塗布区画を調節媒体区画の下に設ける一般的原理があり、これらの区画は細胞透過性フィルタによって分離される。すなわち、試料室は、装置の底部に関してある傾斜をなして試料室3に差し渡される細胞透過性フィルタによって区画に分割され得る。そこで、本発明の発明者らは、たとえば、細胞透過性フィルタ6は区画7、8のいずれかに関して凹形または凸形のいずれかである部分的球状部分を備えることができる。本発明の別の実施形態では、細胞透過性フィルタ6は実質的に水平に試料室3に差し渡される。試料塗布区画7の底部から細胞透過性フィルタ6までの距離が均一であり、たとえば、底部および細胞透過性フィルタが両方とも、水平であるときに、非連動性細胞からの運動性細胞の改善された分離が、特に試料塗布区画7と細胞透過性フィルタ6との間の距離が5mm以下であるときに観察されている。
【0063】
試料室3は、試料を試料塗布区画7に、調節媒体を調節媒体区画8内に保持するための好適な容積を有するべきである。当業者であれば、試料室3が試料を収容するために必要な寸法が容易にわかるであろう。試料塗布区画7および調節媒体区画8は、ほぼ等しい容積を有し得るが、試料塗布区画は、典型的には、調節媒体区画よりも大きく、たとえば、2から5倍大きい。これらの比は、運動性細胞の分析に対して特に関連する。運動性細胞の予備精製のためにこの比はなおいっそう大きくてもよい。
【0064】
試料注入ポート15は、広い意味で試料を試料塗布区画7内に留置するための手段として解釈されるべきである。試料は、細胞透過性フィルタ6の下に留置される。好ましい一実施形態では、試料注入ポート15は、外側から、試料室3の試料塗布区画7内への流体連通をもたらす流路を備える。メゾスケール流体システム1は、有利には、試料注入ポート15と流体連通する受け入れウェル12も備え得る。本発明の発明者らは、試料塗布区画7の内側に試料を留置するための代替的手段も企図する。代替的に、受け入れウェル12は、周囲との流体連通を可能にする試料塗布配置と、試料塗布区画7との流体連通を可能にする試料分析配置とを有するドロワーまたは同様のものの形態であってよい。たとえば、受け入れウェルが、周囲配置にあるときに、試料は受け入れウェルに加えられ得る。たとえば試料を収容する、受け入れウェルが、試料分析配置に移動されるときに、受け入れウェルは、試料塗布区画7と流体連通するが、もはや周囲とは流体連通しない。
【0065】
好ましい一実施形態では、装置1は、試料注入ポート15と流体連通する受け入れウェル12を備える。受け入れウェル12は、分析される試料を加えるための配置を提供する。
【0066】
好ましい一実施形態では、調節媒体区画と分析室との間に流体連通をもたらす流路に対する細胞保持フィルタ13の位置決めは、細胞保持フィルタの上流表面および/または下流表面が目視で観察されることを可能にする。たとえば、基材2またはカバーは、使用されるときに、透明であってよく、これは、分析室4の内容物が、たとえば、裸眼により、または顕微鏡もしくは同様のものを使用して、観察され得ることを意味する。しかし、可視光線に対して透過的であることに加えて、基材2またはカバーは、紫外線または赤外線などの他の波長に対しても透過的であってよい。紫外線に対する透過性は、ある種の蛍光性分子、たとえば、染料もしくは標識が、適切な光源により励起され得ることを可能にする。残りの基材2は、同様に透明であってよい。基材2およびカバーは、透明性に関して同じ、または異なる特性を有することができる。しかし、いくつかの実施形態では、基材2は、蛍光染料の励起と観察を補助するために一連の波長に対するフィルタを備えることができる。たとえば、基材2の一方の部分は励起波長に対して透過的であり得るが、放射波長に対してはそうでなく、次いで別の部分は放射波長に対して透過的であり得るが、励起波長に対してはそうでない。いくつかの実施形態では、基材2または分析室4の上のカバーは、拡大鏡を備える。これは、分析室4および好ましくはさらには細胞保持フィルタ13の内容物を観察するのを容易にすることができる。拡大鏡は、当業者によく知られている。
【0067】
本発明の一実施形態において、メゾスケール流体システム1は、液体を試料室3、特に調節媒体区画8から分析室4に、または分析室4から試料室3に移動する液体駆動力をもたらすための手段をさらに備える。液体駆動力は、正の相対的圧力を媒体注入ポート11に印加して、液体を調節媒体区画8から分析室4内に分散させることによってもたらされ得る。代替的に、出口ポート10を介して分析室4から排出液流路5に印加される負の相対的圧力は、同じ効果を引き起こす、すなわち、液体を試料室3の調節媒体区画8から分析室4に移動し、存在するときに細胞保持フィルタ13を介して分析室4から液体をさらに引き抜く。本質的にすべての液体が、分析室4から引き抜かれ、細胞保持フィルタ13の表面上で分析室4内に存在する運動性細胞を濃縮し、細胞の検出を可能にし得る。液体駆動力を与えるための手段は、メゾスケール流体システム1に一体化されても、または外部にあってもよい。
【0068】
好ましい一実施形態において、液体駆動力をもたらすための手段は、注射器を備える。注射器は、補助ポンプまたは同様のものを必要とすることなく、エンドユーザによる装置1の容易な操作を可能にする。注射器は、好ましくは、手動操作可能であるように設計される。注射器は、事前定義された設定を持つピストンを有することができ、ユーザが装置を操作するのを補助する。たとえば、注射器は、「開始位置」を画成する第1の設定と、「終了位置」を画成する第2の設定とを備える2つの設定を有し得る。一実施形態では、試料は受け入れウェル12内に塗布され、調節媒体区画8は調節媒体を充填され、この場合、注射器のピストンは開始位置にあり、ピストンを終了位置に移動することで、液体を調節媒体区画8から分析室4を介して移動して細胞保持フィルタ13に通して排出液流路5に入れる駆動力を引き起こす。代替的に、注射器は、調節媒体を収容することができ、ピストンを開始位置から終了位置に移動することで、調節媒体区画8を充填することができる。試料を受け入れウェル12または試料塗布区画7に塗布した後に、ピストンを終了位置から開始位置に戻すことで、細胞保持フィルタ13を通り、排出液流路5に入る分析室4を介した調節媒体区画8からの液体駆動力を引き起こす。ピストンは、中間設定が装置1の動作の様々な段階に対応する開始位置と終了位置との間にある2つより多い事前定義された設定を有することもできる。
【0069】
液体流を装置内に引き起こす他の手段も可能である。たとえば、排出液流路に作用する蠕動機能形態である。代替的に、システムは、外部補助ポンプまたは真空容器に接続され得る。
【0070】
本発明の一実施形態では、メゾスケール流体システム1は、試料媒体、調節媒体、および/または検出剤をさらに備える。したがって、特定の一実施形態では、メゾスケール流体システム1は、調節媒体を事前充填される。調節媒体は、分析室4と、試料室3と、特に調節媒体区画8と、通路5、14とに存在し得る。メゾスケール流体システム1は、試料調節媒体および/または検出剤に対する分離している貯槽も備え得る。メゾスケール流体システム1は、異なる反応物質が運動性細胞の異なる分析段階において必要になるときに複数の分離している貯槽も備え得る。貯槽は、試料室3、特に調節媒体区画8、または適宜分析室4と流体連通する、すなわち、調節媒体が、いずれかの室または区画を介してシステム1に塗布され得る。本発明の一実施形態では、試料調節媒体は、分離しているカプセル、注射器、または同様のもので供給される。そのような実施形態では、メゾスケール流体システム1は、外部流体塗布ポートを有する分離している流路を備えることができ、この流路は、分析室4または試料室3、特に調節媒体区画8と直接流体連通する。しかしながら、外部流体塗布ポートは、分析室4の出口ポート10または調節媒体区画8の媒体注入ポート11であり得る。カプセルおよび外部流体塗布ポートは、補完的な接続装置を装着され得る。カプセルは、カプセルの内容物を流体塗布ポート内に注入するため容積の調整、たとえば、低減を可能にする可撓性材料から作られ得る。調節媒体が、貯槽に収容される場合、これは、試料室3の調節媒体区画8または分析室4のいずれかと流路もしくは同様のものを介して流体連通し得る。そのような流路は、弁または膜または類似の構造物を備え、弁または膜が流れを許すように作動されるまで流路内の流れを妨げることができる。これは、調節媒体が室内に早期に入るのを防がれることを確実にする。たとえば、アクチュエータは、貯槽から試料室3、特に調節媒体区画8への液体の流れに対して流路を開くことを可能にし得る。したがって、一実施形態では、試料調節媒体は、最初に、貯槽内に収容されるが、試料室3および分析室4は、液体を収容しない。流れに対して流路が開かれた後、調節媒体は、貯槽から試料室3と分析室4とに流れる。試料室3の調節媒体区画8および分析室4が液体を収容した後、運動性細胞は、試料塗布区画7から調節媒体区画8に移動し得る。代替的実施形態において、分析室4は、貯槽内に存在する同じ液体、または異なる液体であってもよい、液体を供給され得る。さらに別の実施形態では、液体はメゾスケール流体システム1内に供給されないが、試料の分析前にシステムに加えられる。
【0071】
細胞保持フィルタ13の下流表面は、排出液流路14と流体連通し得る。メゾスケール流体システム1は、好ましくは、液体駆動力をもたらすための単一の手段、たとえば、ポンプもしくは注射器が試料室3と分析室4とから液体を引き抜くために採用され得ることを可能にする単一の排出液流路14のみを備える。排出液流路14は、上で定義されているように排出液流路14内の流体流が層流となるようなメゾスケール寸法である。典型的には、排出液流路14の寸法は、約500μmから約3mmまで、たとえば約1mmである。一般に、排出液流路14の直径は、試料室3と分析室4とからの液体が単純な手段、たとえば、注射器を使用して容易に引き抜かれ得るように流路内に過剰な圧力低下を導入しないことが望ましい。
【0072】
いくつかの実施形態では、メゾスケール流体システム1は、温度を調節する、特に、温度を典型的な周囲温度より高くするための手段を備える。温度を調節するための適切な手段は、したがって、導電性ワイヤのコイル、ペルチェ素子、加熱および/または冷却液体用の管、または同様のものなどの、加熱素子を備えることができる。望ましい場合にはシステムを冷却するためにペルチェ素子も使用され得ることに留意されたい。
【0073】
本発明のメゾスケール流体システム1の流路、室、通路、および他の構造物は、流路と室とに対応する構造物を備える第1の基材を第2の基材に連結することによって形成され得る。次の段落では、そのような特徴が、一般的に、「流路および室」と一般的に称されるが、これは、制限するものとして考えられるべきでない。したがって、流路および室は、層内で基材を連結した後に2つの基材の間に形成され得る。メゾスケール流体システムは、2つの基材層に制限されない。いくつかの実施形態では、複数の基材層が使用され、基材層の各々は適宜流路および室に対する構造物を備えることができる。特に、細胞透過性フィルタ6および細胞保持フィルタ13は、各々、単一の層内に収容され、同様に、流路5、14は、各々、2つの基材層の間に形成され得る。次いで、これらの複数の基材層は、メゾスケール流体システム1として組み立てられるように連結される。
【0074】
基材内の流路および室に対応する構造物は、適切な方法を使用して作製され得る。好ましい一実施形態において、基材材料は、熱可塑性ポリマーであり、適切な方法は、フライス加工、微小フライス加工、ドリルあけ、切断、レーザー切断、熱エンボス加工、射出成形およびマイクロインジェクション成形、ならびに3Dプリンティングを備える。これらおよび他の技術は、当技術分野ではよく知られている。流路は、鋳造、成形、ソフトリソグラフィなどの適切な方法を使用して他の好適な材料で作製され得る。異なる種類の材料、たとえば、熱可塑性プラスチック材料、ガラス、金属などを採用して、単一のメゾスケール流体システムを製作することも可能である。基材材料は、適切な方法を使用して連結され得る。好ましい一実施形態では、基材材料は、熱可塑性ポリマーであり、適切な連結方法は、グルーイングと、溶剤結合と、クランプ締めと、超音波溶接と、レーザー溶接とを備える。他の関連する方法は、ネジまたは他の締め手段による固定である。
【0075】
本発明の別の実施形態では、メゾスケール流体システムは、試料室と2つまたはそれ以上の分析室とを有する基材を備え、試料室は試料塗布区画と調節媒体区画とを画成する細胞透過性フィルタを備え、試料室は試料塗布区画内に試料注入ポートを有し、2つのまたはそれ以上の分析室は各々入口ポートと出口ポートとを有し、試料塗布区画は、細胞透過性フィルタの下にあり、調節媒体区画は、細胞透過性フィルタの上にあり、調節媒体区画は、調節媒体区画8の2つまたはそれ以上の部分区画を画成する1つまたは複数の追加の細胞透過性フィルタ(複数可)を備え、調節媒体区画8の2つまたはそれ以上の部分区画の各々は、流路を介して対応する分析室の入口ポートと流体連通する。好ましい一実施形態において、1つまたは複数の追加の細胞透過性フィルタ(複数可)が、試料塗布室7と調節媒体室8とを画成する、第1の細胞透過性フィルタ6に平行な平面内で試料室に差し渡される。1つまたは複数の追加の細胞透過性フィルタ(複数可)は、調節媒体区画8の少なくとも2つの部分区画を画成し、これにより、互いの上に一連の部分区画を形成する。次いで、運動性細胞は、試料塗布区画7から調節媒体区画8の第1の部分区画内に移動することができ、直列に接続された部分区画は、運動性細胞が第1の部分区画から第2の部分区画、第3の部分区画、と次々に移動することをさらに可能にする。最高の運動性を有する運動性細胞は、さらなる部分区画内に移動し、各部分区画内に蓄積された細胞は、次いで、それぞれの部分区画に接続されているそれぞれの分析室内で検出され得る。次いで、細胞集団の運動性が、各分析室内の細胞の数から推定され得る。したがって、運動性細胞の推定は、運動性の追加の画分に分けられる。いくつかの実施形態では、メゾスケール流体システム1は、調節媒体区画8の3つよりも多い部分区画および対応する数の分析室を有することができ、たとえば、メゾスケール流体システム1は、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、またはそれ以上に多くの部分区画と分析室とを有することができる。
【0076】
本発明の別の実施形態では、メゾスケール流体システムは、全細胞数の平行推定のためのさらなる分析室を備える。さらなる分析室は、運動性細胞を分析するための分析室に類似する設計であってよい。一実施形態では、さらなる分析室は、入口ポートと出口ポートとを備える。さらなる分析室は、流路を介して入口ポートを通じて試料塗布区画と流体連通し得る。さらなる分析室は、代替的に、流路を介して入口ポートを通じて追加の試料室と流体連通するものとしてよく、試料室3および追加の試料室は、適宜、同じ受け入れウェル12と流体連通し得る。
【0077】
メゾスケール流体システム1の一実施形態において、受け入れウェル12、分析室4、および通路は、カバーで覆われ、分析室4を覆っている、カバーの少なくとも一部は、透明である。別の実施形態では、メゾスケール流体システムのカバーの透明部分はスマートフォンのソフトウェアアプリケーションの読み取り可能なディスプレイを構成する。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、試料中の運動性細胞の分析用のシステムに関係し、システムは本発明の第1の態様によるメゾスケール流体システムと外部検出器装置とを備え、これは光学検出器と、メゾスケール流体システムの分析室内または細胞保持フィルタ上の検出剤をもし存在すれば定量化するように構成されているコンピュータプログラムコードを収容するコンピュータ可読記憶媒体と、コンピュータプログラムコードを実行するためのデータプロセッサとを備える。外部検出器装置は、定量化の結果を操作者に提示するためのディスプレイをさらに備え得る。たとえば、結果は、表の形で提示され、各分析室内の細胞の推定された量は絶対量として、またはたとえば分析室内の細胞の相対的分布の相対量として提示され得るか、または結果は、試料を記述するために結果全体として提示され得る、たとえば、試料は、「良い」、「標準」、「平均」、「低い」などとして記述され得る。光学検出器は、メゾスケール流体システムからの結果を読み取る、たとえば、細胞保持フィルタ上の検出剤を定量化することができる検出器であれば何でもよい。特に、有用な光学的検出器は、バーコードまたは同様のものをスキャンするために使用されるものであり、いくつかの実施形態では、光学的検出器は、カメラ、レーザスキャナ、CCD読取装置、フォトダイオードスキャナ、または同様のものからなる群から選択される。好ましい一実施形態では、外部検出器装置は、モバイルユーザ端末である。「モバイルユーザ端末」で、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、または同様のものなどの、ポータブルコンピューティング装置を意味する。モバイルユーザ端末は、好ましくは、Apple iOS、Android、Symbian、Windows Phone、または同様のオペレーティングシステムを採用するコンピューティング装置である。
【0079】
本発明のさらなる態様は、本発明の第1の態様によるメゾスケール流体システムの細胞保持フィルタ上の検出剤を定量化するように構成されているコンピュータプログラムコードを収容する、モバイルユーザ端末、たとえば、携帯電話に関係する。
【0080】
一実施形態では、運動性精子細胞の定量化は、外部検出器装置としてスマートフォンを使用することによって実行される。この実施形態では、メゾスケール流体システムの受け入れウェル、分析室、および通路は、カバーで覆われ、分析室を覆うカバーの少なくとも一部は、透明であり、スマートフォンの読み取り可能なディスプレイを構成する。デジタルカメラ、およびスマートフォンがカメラによって取得されたデータを遂行する(prosecute)ことを可能にするコンピュータプログラムコード、たとえば、アプリを備えるスマートフォンを使用することによって、ディスプレイが読み取られ、定量化を目的とするデータおよび運動性精子細胞の定量化(運動性)が取得され、それによって、スマートフォンのユーザに、たとえば、精子細胞の濃度と運動性に関する、結果の指示値を与えることができる。データは、スマートフォンの中に記憶され、以前の検査からのデータと比較するために使用され得る。特定の一実施形態において、コンピュータプログラムコードは、結果をデータベースにアップロードして、たとえば、他のユーザからの、または以前の検査からの、データベース内の結果との比較を可能にするように構成される。データベースにアップロードされたデータは、将来の比較のためにデータベースに記録され得る。
【0081】
本発明の一実施形態は、メゾスケール流体システムの使用に関係し、精子試料の装填は、1)精子採取カップで精子試料を採取するステップと、2)パスツールピペットを使用するなどの好適な手段によって本発明によるメゾスケール流体システムに試料カップから精子試料を移送するステップとを備える。
【0082】
図2は、本発明の一実施形態による、細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するための装置220の概略図を示している。装置220は、メゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャするためのカメラユニット221と、キャプチャされた画像処理するための処理ユニット222と、細胞運動性の定量化可能な尺度の値を表示するためのディスプレイ223と、ユーザ入力ユニット224とを備える。ユーザ入力ユニット224の作動に応答して、
カメラユニット221は、メゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャするように構成され、
処理ユニット222は、キャプチャされた画像を定量化可能な尺度の値にマッピングするように構成されたマッピング機能225を使用して、キャプチャされた画像を処理し、細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するように構成される。マッピング機能225は、本発明の特定のメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの画像データを定量化可能な尺度の値にマッピングするように較正される。
【0083】
ディスプレイ223およびユーザ入力ユニット224は、単一のユニット、たとえば、タッチスクリーン226に組み合わされ得る。
【0084】
特定の細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するために、試料を備える本発明のメゾスケール流体システムは、装置220に近接して配置構成され得る。これは、装置220とメゾスケール流体システムとを共通整列ユニット内に配置構成することによって達成され得る。代替的に、装置220は、カメラユニットがメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの方を指したまま、メゾスケール流体システムの上に手で保持され得る。次に、ユーザ入力ユニット224の作動に応答して、カメラユニット221は、メゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャし、処理ユニット222は、キャプチャされた画像を処理して、細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定する。
【0085】
これは、メゾスケール流体システムの視覚的出力が自動的に分析されることを可能にする。これは、特にメゾスケール流体システムが自己検査に使用されるときに、すなわち、ユーザが専門の健康管理担当者でないときに、精度を改善することができる。
【0086】
本発明の一実施形態において、精子採取カップは、装置の一体化された部分である。精子採取カップは、射精後に、装置に接続され、それによって精子試料を装填することができる。本発明の別の実施形態では、試料塗布区画7は、より正確な結果を当てるよう正確な試料量がシステム内に用意されることを確実にするための手段を備える。特定の実施形態において、正確な試料量を確実にするための手段は、オーバーフロートシステムである。
【実施例1】
【0087】
細胞透過性フィルタの下の試料塗布区画と細胞透過性フィルタの上の調節媒体区画が細胞透過性フィルタを有する効果を以前の塗布と比較するために実験が実施され、試料塗布区画は、たとえば、調節媒体区画の隣り、または上にある。
【0088】
細胞透過性フィルタの上および下に試料塗布区画を有することの比較が実施された。
【0089】
非運動性細胞のみを含有する精液試料が使用された。次いで、試料は検査のため2つの試料に分割された。
細胞透過性フィルタの上の試料塗布区画
1つの試料が、細胞透過性フィルタの上に試料塗布区画を、フィルタの下に調節媒体を有するシステムに塗布された。調節媒体は、ピペットで取って調節媒体区画内に入れられ、精液試料は、ピペットで取って試料塗布区画に入れられた。調節媒体の試料は、以下の表1に提示されている時間間隔で抽出され、分析された。
【0090】
【表1】
【0091】
明らかに、これらの結果は、非運動性細胞が細胞透過性膜を横断したことを示しており、本発明の発明者は、この結果を重力の効果に帰している。
細胞透過性フィルタの下の試料塗布区画
試料の第2の部分が、細胞透過性フィルタの下に試料塗布区画を、フィルタの上に調節媒体を有するシステムに塗布された。調節媒体は、ピペットで取って調節媒体区画内に入れられ、精液試料は、ピペットで取って試料塗布区画に入れられた。調節媒体の試料は、以下の表2に提示されている時間間隔で抽出され、分析された。
【0092】
【表2】
【0093】
本発明の発明者らは、試料がフィルタの下に置かれたときには細胞透過性フィルタを横断した細胞はなかったことを見いだした。
【実施例2】
【0094】
本発明のメゾスケール流体装置から画像に対する画像データのRGB値の色の強さのダイナミックレンジは、滴定された精液試料の手集計と相関された。1ミリリットル当たり18500万個の運動性精子を含有する精液試料が、精液漿で連続的に2倍に希釈された。試料は、検出剤として0.5mg/mlの濃度のMTTを使用して標準インキュベーションパラメータを使用して検査装置に塗布された。結果の写真は、Microsoftライフデジタルカメラを使用して撮られ、色の強さ(RGB値)が測定された。メゾスケール流体装置は、細胞保持フィルタを備え、分析に対する各画像について、メゾスケール流体装置は、常に同じ条件となることを確実にするようにライトボックス内に留置された。ライトボックスは、ボックスからなり、物体から約55mmのところに位置決めされたカメラと、12ボルトハロゲン球とを備えていた。カメラ属性は、カスタムメードのLabviewプログラムによって制御された。検査が実施された条件は、温度:20℃±1.5℃、湿度:38%RHであった。
【0095】
結果は図3に示されており、これは、得られた滴定曲線のダイナミックレンジを示している。試料中の運動性精子の色の強さと対数濃度との間に直線関係がある。検査装置内のスポットの色の強さは、光学分析と目視の両方によって測定された試料中に存在する運動性精子の数との間に高い相関がある。
【実施例3】
【0096】
2つの検出剤、MTTとクリスタルバイオレットの精子細胞の運動性に対する可能な効果が検査された。それぞれ5mg/mlおよび1mg/mlのMTTおよびクリスタルバイオレットの原液が、調製され、これらは、2倍に連続的に希釈された。検出剤は、50:50の比で合わせて1ミリリットル当たり6000万個の運動性細胞と1ミリリットル当たり7200万個の細胞とを備える精子試料と混合され、混合物は、細胞を顕微鏡で分析する前に周囲温度で60分間インキュベートされた。
【0097】
【表3】
【0098】
表3から、MTTが細胞運動性に効果があったことは明らかである。運動性細胞対非運動性細胞との比(%運動性)は、より高い濃度では低くなったが、比はクリスタルバイオレットの影響を受けなかった。しかし、2.5mg/mlより低いMTT濃度では、運動性に対する効果は観察されなかった(図示せず)。したがって、両方の検出剤が、使用されるものとしてよく、標準条件、たとえば、MTTに対してインキュベーション時間<30分、0.5mg/mlでは、運動性に対する効果は観察されない。これらの効果は、細胞が細胞透過性フィルタを通って移動することを可能にする前に検出剤が試料と混合される実施形態においてのみ関連していることに留意されたい。
【実施例4】
【0099】
本発明のメゾスケール流体装置は、精子試料で検査された。システムは、直径13mm、細孔サイズ10μmの細胞透過性フィルタを備えていた。細胞透過性フィルタの厚さは、10μmであった。試料塗布区画の容積は、約600μlであり、試料塗布区画の底部から細胞透過性フィルタまでの距離は、4.25mmであった。試料カップは、試料塗布区画と流体連通していた。精子試料が試料カップに塗布され、600μlの量の試料が試料塗布区画に入った。試料を塗布した後に、調節媒体(0.5mg/mlのMTTを備える)が、注射器を使用し、分析室の出口ポートを介して、細胞保持フィルタを通して、調節媒体区画(容積300μlの)内に注入された。装置は、30分間インキュベートされた。インキュベーションの後、現在は運動性細胞を含む液体を試料塗布区画から引き抜き、細胞保持フィルタ上で運動性細胞を捕捉するために注射器が使用された。
【0100】
検査は、連動性細胞の濃度が顕微鏡で定量化され、1ミリリットル当たり60万個から1ミリリットル当たり2000万個までの範囲内の細胞を含有するように希釈された精液試料から調製された試料を使用して実施された。装置からの細胞保持フィルタの写真が図4に示されており、これは、濃度範囲内で1ミリリットル当たり500万個の運動性細胞がより低い濃度から容易に区別可能であったことを示している。
【実施例5】
【0101】
本発明のメゾスケール流体装置は、SpermCheckと呼ばれている市販のテストストリップアッセイに対して検査された。SpermCheckでは、2000万個の全精子/mlより高い、または低いことを区別すると主張するが、本発明の装置は、500万個の良好精子細胞のカットオフ値を有する(WHO2010基準、ヒト精液の試験および処理のためのWHO実験マニュアル)。特に、検査の目的は、素人に、本発明のメゾスケール流体装置によって生成された検査結果を2つのカテゴリ「悪い」または「標準」に分けてもらうことである。45個の精子試料が取得され、すべての試料を本発明のメゾスケール流体装置またはSpermCheckテストストリップに塗布する前に顕微鏡で分析された。分析の後、すべての装置およびテストストリップが写真に撮られ、写真は、カテゴリ「低い」と「標準」に従って写真を分類するように指示された5人の異なる人々(SDUからの2人の大学生と2C Engineering companyからの3人の技術者、以下の表4および表5では、被験者はAからEで示されている)へのプレゼンテーションに含まれた。同じ処置が、内部の人(「対照」と示されている)によって実行された。表4および表5は、実験の結果を示している。
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
素人のユーザの検査結果は、検査を内部で実施したときにわれわれが得た結果に近かった。興味深いことに、間違えて置かれた検査結果は、5人すべての素人の間で非常によく似ていた。重要なのは、間違えて置かれた検査結果の80%が、1ml当たり500万個の良好運動性精子細胞の値のカットに非常に近かった。SpermCheckテストストリップの感度は、かなり悪い、すなわち、検査は、標準の精液品質を有する男性を正しく識別することができず、NPVは、極端に低い、すなわち、検査は、精子数が実際に低い場合に陰性の検査結果をユーザに知らせることができない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1]
試料室と分析室とを有する基材を備え、前記試料室は試料塗布区画と調節媒体区画とを画成する細胞透過性フィルタを備え、
前記試料室は前記試料塗布区画内に試料注入ポートを有し、
前記分析室は入口ポートと出口ポートとを有し、
前記調節媒体区画は流路を介して前記分析室の前記入口ポートと流体連通しており、
ここにおいて、前記試料塗布区画は、前記細胞透過性フィルタの下にあり、前記調節媒体区画は、前記細胞透過性フィルタの上にある
メゾスケール流体システム。
[2]
前記調節媒体区画は、媒体注入ポートをさらに備える請求項1に記載のメゾスケール流体システム。
[3]
前記分析室は、前記入口ポートに面する上流表面と前記出口ポートに面する下流表面とを有する細胞保持フィルタを備える請求項1または2に記載のメゾスケール流体システム。
[4]
前記調節媒体区画と前記分析室との間に流体連通をもたらす前記流路に対する前記細胞保持フィルタの位置決めは、前記細胞保持フィルタの前記上流表面および/または前記下流表面が目視で観察されることを可能にする請求項3に記載のメゾスケール流体システム。
[5]
前記分析室は、物理的にアクセス可能である請求項1−4のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[6]
液体を前記試料室から前記分析室に、または前記分析室から前記試料室に移動する液体駆動力をもたらすための手段をさらに備える請求項1−5のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[7]
液体駆動力をもたらすための手段は、注射器を備える請求項6に記載のメゾスケール流体システム。
[8]
前記試料塗布区画、前記調節媒体区画、または前記分析室と流体連通している貯槽をさらに備える請求項1−7のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[9]
前記試料注入ポートと流体連通している受け入れウェルをさらに備える請求項1−8のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[10]
前記流路は、約10μmから約4mmまでの範囲内の最小の寸法を有する請求項1−9のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[11]
前記試料室および/または分析室は、約100μmから約20mmまでの範囲内の深さを有する請求項1−10のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[12]
前記細胞透過性フィルタは、約1μmから約20μmまでの範囲内の細孔サイズを有する請求項1−11のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[13]
細胞保持フィルタが、約0.1μmから約1.0μmまでの範囲内の細孔サイズを有する請求項1−12のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[14]
試料媒体、調節媒体、および/または検出剤をさらに備える請求項1−13のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システム。
[15]
細胞透過性フィルタを用意するステップと、
運動性細胞を含有する試料を前記細胞透過性フィルタの下に塗布するステップと、
前記試料中の運動性細胞が泳いで前記細胞透過性フィルタを通ることを可能にするステップと、
泳いで前記細胞透過性フィルタを通った運動性細胞を検出するステップとを備える、試料中の運動性細胞の量を推定する方法。
[16]
前記運動性細胞は、検出剤を使用して検出される、請求項15に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法。
[17]
前記検出剤は、MTTなどの、テトラゾリウム染料である請求項16に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法。
[18]
前記2種類またはそれ以上の検出剤が使用される請求項16または17に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法。
[19]
細胞透過性フィルタを用意するステップと、
前記細胞透過性フィルタの下に、運動性細胞と非運動性細胞とを含有する試料を塗布するステップと、
前記試料中の運動性細胞が泳いで前記細胞透過性フィルタを通ることを可能にするステップと、
泳いで前記細胞透過性フィルタを通った運動性細胞を抽出するステップとを備える、非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法。
[20]
前記フィルタの下に試料媒体を塗布するステップをさらに備える、請求項15から18のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法、または請求項19に記載の非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法。
[21]
前記フィルタの上に細胞調節媒体を塗布するステップをさらに備える、請求項15から18または20のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法、または請求項19または20のいずれか一項に記載の非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法。
[22]
前記細胞透過性フィルタは、1μmから20μmまでの範囲内の細孔サイズを有する、請求項15から18または20から21のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法、または請求項19から21のいずれか一項に記載の非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法。
[23]
前記運動性細胞は、哺乳類精子細胞、たとえば、ヒト精子細胞などの、真核細胞である、請求項15から18または20から22のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法、または請求項19から22のいずれか一項に記載の非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法。
[24]
前記細胞透過性フィルタは、請求項1から14のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システムに収容される、請求項15から18または20から23のいずれか一項に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法、または請求項19から23のいずれか一項に記載の非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法。
[25]
調節媒体を前記試料室と前記分析室とそれらの間の前記流路とに加えるステップと、
適宜、検出剤を前記試料室に加えるステップと、
前記試料を前記試料塗布区画に加えるステップと、
前記試料の前記運動性細胞が前記調節媒体区画に移動することを可能にするステップと、
液体駆動力を前記試料室から前記分析室に伝えるステップと、
前記分析室内の前記検出剤を定量化するステップまたは前記分析室から前記運動性細胞を抽出するステップとをさらに備える、
請求項24に記載の試料中の運動性細胞の量を推定する方法、または請求項24に記載の非運動性細胞から運動性細胞を抽出する方法。
[26]
請求項1から14のいずれか一項に記載のメゾスケール流体システムと、検出剤と、試料媒体と、細胞調節媒体とを備えるパーツのキット。
[27]
前記検出剤は、MTTなどの、テトラゾリウム染料である請求項26に記載のパーツのキット。
[28]
細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するためのコンピュータ実装方法であって、
メゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの少なくとも一部の画像を備える画像データを受信するステップと、
前記定量化可能な尺度の前記値を決定するために前記画像データを処理するステップとを備え、
ここにおいて、前記画像データを処理する前記ステップは、マッピング機能を使用して前記画像データを前記定量化可能な尺度の前記値にマッピングするステップを備え、前記マッピング機能は請求項1から14のいずれか一項に記載の特定のメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの画像データを前記定量化可能な尺度の値にマッピングするように較正される方法。
[29]
前記画像データが前記マッピング機能への入力として使用可能であるかどうかを決定するために前記画像データを前処理するステップをさらに備え、ここにおいて、前記画像データが入力として使用可能でないと決定された場合に、エラーメッセージが生成される請求項28に記載のコンピュータ実装方法。
[30]
前記定量化可能な尺度の前記決定された値をディスプレイ上に表示するステップをさらに備える請求項28または29に記載のコンピュータ実装方法。
[31]
プログラムコード手段がデータ処理システム上で実行されたとき、前記データ処理システムに、請求項28から30のいずれか一項に記載の前記コンピュータ実装方法の前記ステップを実行させるように適合された前記プログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム製品。
[32]
前記コンピュータプログラム製品は、前記プログラムコード手段が記憶されているコンピュータ可読媒体を備える請求項31に記載のコンピュータプログラム製品。
[33]
細胞試料に対する細胞運動性の定量化可能な尺度の値を決定するための装置であって、前記装置はメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャするためのカメラユニットと、前記キャプチャされた画像を処理するための処理ユニットと、細胞運動性の前記定量化可能な尺度の前記値を表示するためのディスプレイと、ユーザ入力ユニットとを備え、ここにおいて、前記ユーザ入力ユニットの作動に応答して、
前記カメラユニットは、メゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの一部の画像をキャプチャするように構成され、
前記処理ユニットは、前記キャプチャされた画像を前記定量化可能な尺度の前記値にマッピングするように構成されたマッピング機能を使用して、前記キャプチャされた画像を処理し、細胞運動性の前記定量化可能な尺度の前記値を決定するように構成され、ここにおいて、前記マッピング機能は請求項1から14のいずれか一項に記載の特定のメゾスケール流体システムの分析室および/または細胞保持フィルタの画像データを前記定量化可能な尺度の値にマッピングするように較正される装置。
[34]
コンピュータ可読コードを備える、前記コンピュータ可読コードが、処理ユニットと、ディスプレイと、ユーザ入力ユニットとを備えるユーザ端末を、請求項33に記載の装置になるようにプログラムするように構成されるデータ記憶媒体。
図1
図2
図3
図4