(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453336
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】電磁応答プローブを備えた表面上に粉体床を堆積するための装置、及び対応する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20190107BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20190107BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20190107BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20190107BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20190107BHJP
G01N 27/84 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
B22F3/16
G01R33/02 B
G01R33/02 D
B22F3/105
B33Y30/00
B33Y10/00
G01N27/84
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-539581(P2016-539581)
(86)(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公表番号】特表2016-533432(P2016-533432A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2014069185
(87)【国際公開番号】WO2015032974
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年8月16日
(31)【優先権主張番号】1358611
(32)【優先日】2013年9月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ウィエル ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジャブヴァーラ ジャーマースプ
(72)【発明者】
【氏名】ボイラット エリック
(72)【発明者】
【氏名】サンティ ジル
(72)【発明者】
【氏名】ヒッペルト ダヴィド
【審査官】
米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−277881(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0176312(US,A1)
【文献】
特表2008−546536(JP,A)
【文献】
特開昭52−116290(JP,A)
【文献】
特開2007−187572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(1)上に粉体床を堆積するための装置であって、
粉体を前記表面に供給する間、表面をスキャンするように構成されている堆積モジュール(2)を備え、
前記堆積モジュールは、前記粉体床の固化の前に、前記粉体床の供給部分(6)を分析することができる少なくとも1つの電磁応答プローブ(5)を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記プローブ(5)は、前記表面のスキャン中に前記粉体床のストリップを分析することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記堆積モジュール(2)は、粉体を供給する間、初期位置から一方の方向(4a)で前記表面をスキャンし、かつ、前記初期位置に戻るために逆方向(4b)で前記表面をスキャンするように構成されており、前記プローブは、各スキャン中に前記粉体床の同じストリップを分析することができる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記堆積モジュールは、異なる粉体床供給部分(6)を分析することができる、複数のプローブ(5)を有する、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の装置及び前記粉体床の一部分を固化させるための手段(12)を備える焼結又は選択的レーザ溶解機械(10)であって、
前記固化手段を制御するために、前記少なくとも1つのプローブ(5)が提供する情報を使用することができるプロセッサ(11)を有する、焼結又は選択的レーザ溶解機械(10)。
【請求項6】
表面(1)上に粉体床を堆積する方法であって、
前記方法は、前記粉体が前記表面上に供給される間に、前記表面をスキャンするステップを含み、
前記粉体床の固化の前に、電磁場を測定することで粉体床供給部分の少なくとも1つの分析を行うステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記表面のスキャン中に前記粉体床のストリップを分析する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表面は、前記粉体の供給との間に初期位置から一方の方向にスキャンされ、前記表面は、前記初期位置に戻るように反対方向にスキャンされ、各スキャン中に前記粉体床の同じストリップが分析される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
異なる粉体床供給部分が同時に分析される、請求項6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
焼結又は選択的レーザ溶解を行うステップをさらに含み、前記粉体床の一部分が固化され、前記固化は、前記少なくとも1つの分析によって提供された情報に基づいて制御される、請求項6から9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体床に関し、より具体的には、粉体床の内部の密度及び欠陥の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体床は、焼結機械、もしくは選択的レーザ溶解(SLM)機械で使用される。このような機械における粉体床の密度及び均質性は、物品の製造を上手く行うには特に重要である。従って、測定時に破壊することなく粉体床の特性を測定するのは特に難しい。粉体床の所定の容量を計量することによる測定は、従来から知られているが、この技術には粉体床を破壊するという欠点がある。従って、非破壊で粉体床を分析するための方法が提案されている。欧州出願公開第1915936号及び国際公開第2012/100766号を参照することができ、ここには選択的レーザ溶解で固化された層の渦電流よる測定が記載されている。また、米国出願公開第2006/0127267号を参照することができ、ここには粉体を含有したレセプタクルの周りに配置されたコイルを用いて、渦電流によって粉体の密度を測定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州出願公開第1915936号
【特許文献2】国際公開第2012/100766号
【特許文献3】米国出願公開第2006/0127267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に記載された解決策では、粉体床を非破壊で分析すること、又は粉体床を固化する前に分析することができない。
従って、本発明の目的は、粉体床を得ること、並びに固化する前にこの粉体床を分析することを可能にする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様は、表面上に粉体床を堆積するための装置を提供し、この装置は、粉体を表面上に供給すると同時にこの表面をスキャンするように構成された堆積モジュールを備える。本発明の一般的特徴によれば、堆積モジュールは、粉体床の供給部分を分析することができる少なくとも1つの電磁応答プローブを有する。
【0006】
従って、従来の解決策とは対照的に、プローブは、堆積モジュール上に、例えば表面をスキャンするアーム上に直接配置される。従って、プローブは、粉体が堆積されると即座に使用することができる。
【0007】
電磁応答プローブは粉体床を破壊することなく分析できるので、このプローブの使用は特に好都合である。
【0008】
プローブは、表面のスキャン中に粉体床のストリップを分析することができる。
従って、堆積モジュールの移動に追従するプローブによってスキャンすることができる全領域に対する情報が得られる。ストリップは、使用する電磁応答プローブが分析できる部分の幅に対応する幅を有する。
【0009】
堆積モジュールは、粉体の供給と同時に、表面を初期位置から一方の方向にスキャンし、さらに初期位置に戻すために表面を反対方向にスキャンするように構成することができ、プローブは、各スキャン中に粉体床の同じストリップを分析することができる。
従って、2度の分析で、粉体床のストリップの良好な分析を得ることができる。
【0010】
モジュールは、異なる粉体床の供給部分を分析することがでる複数のプローブを有することができる。
例えば、1度のスキャンで粉体床の全てをカバーして分析するために、複数の一定の間隔で配置されたプローブを導入することができる。
【0011】
他の態様は、上記で定義された粉体床堆積装置及び粉体床の一部を固化するための手段を備え、さらに固化手段を制御するために、少なくとも1つのプローブから提供された情報を使用するプロセッサを有する焼結又は選択的レーザ溶解機械を提供する。
従って、プローブ又は複数のプローブから提供された情報は、粉体床の溶解を適応させるために考慮することができる。特に、密度又は均質性の変動は、溶解時間を適応させるために考慮することができる。従って、良好な焼結、又は良好な選択的レーザ溶解を得ることができ、このことは特に品質の優れた物品をもたらすことができる。
【0012】
さらに他の態様は、表面上に粉体床を堆積するための方法を提供し、この方法は、粉体が表面上に供給される間に、表面をスキャンする段階を含む。
【0013】
一般的特徴によれば、この方法は、磁場を測定することによる供給された粉体床の少なくとも1の分析を含む。
磁場の測定は、電磁応答プローブを用いて行うことができる。
粉体床のストリップは、表面のスキャン中に分析することができる。
【0014】
粉体の供給と同時に、表面を初期位置から一方の方向にスキャンし、さらに初期位置に戻すために表面を反対方向にスキャンして、各スキャン中に粉体床の同じストリップを分析することができる。
異なる粉体床供給部分を同時に分析することができる。
【0015】
この方法は、焼結又は選択的レーザ溶解をさらに含むことができ、粉体床の一部分が固化され、この固化は、上記少なくとも1に分析で提供される情報に基づいて制御される。
【0016】
他の目的、特徴、及び利点は、単に非限定的な実施例を与えかつ添付図面を参照する以下の説明を読むことで理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による堆積装置の実施形態を概略的に示す。
【
図2】本発明の実施形態による堆積装置の実施形態を概略的に示す。
【
図3】本発明の他の実施形態による焼結又は選択的レーザ溶解機械を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、例えば、後続の焼結又は選択的レーザ溶解を目的として、粉体床で覆うことが意図されている表面1を示す。粉体床の形成は、粉体を供給しながら表面1をスキャンすることができる堆積モジュール2を利用して、表面1をスキャンすることで得られる。
【0019】
堆積モジュール2は、矢印4a及び4bで示す2方向での長手方向移動でもって駆動することができるアーム3を備えることができる。アーム3は、粉体を表面上に供給する手段を備える。例えば、粉体の堆積は、図面の右側に位置付けられた初期位置から、矢印4aの方向に移動することで実施することができ、アームは、表面1の左側端部の範囲まで表面1を粉体で覆うことができる。その後、アームは、矢印4bで示す反対方向に移動することで(粉体を供給しながら)初期位置に戻ることができる。
【0020】
粉体床の特性を分析するために、電磁応答プローブ5は、堆積モジュール2の内側のアーム3上に直接設けることが特に好都合である。従って、プローブは、まさに供給された粉体床の部分6を分析することができる。このために、プローブは、堆積モジュールの側面に設けられ、ここでは図面の右側の堆積モジュールが到来する側面に対応する。
【0021】
変形例として、プローブは、その後に分析されることになる粉体を供給するためにアームが移動している間に、連続部分を分析することで粉体床のストリップを分析することができる。
【0022】
表面1上に粉体床を堆積させる装置はこのようにして得られ、この装置は、電磁応答プローブ5を用いて、得られた粉体床を分析することができる。
例えば、電磁応答プローブの使用に適している鉄又は任意の他の材料を含む、磁性粉体の使用が好ましいことに留意されたい。
【0023】
図2は、本発明の変形例を示し、アーム3は、複数の電磁応答プローブ5を備える。
各プローブ5は、粉体床の一部分6を分析することができる。
図2から分かるように、プローブは、複数の隣接する各部分6をカバーするために一定の間隔で配置することができる。プローブ5の数を増やすことで、横断ストリップをカバーすることが可能になり、粉体床の全ては、アーム3が行うスキャン中に分析することができる。
【0024】
図3は、例えば、焼結又は選択的レーザ溶解機械である機械10を示す。機械10は、
図1及び2を参照して説明したものに類似した堆積装置を備えることができる。正確には、機械10は、表面1、アーム3、及び少なくとも1つの電磁応答プローブ5を備えることができる。
粉体床部分、粉体床ストリップ、又は粉体床全体を分析した後、この分析で得られた、例えば、粉体床の密度又は均質性に関するデータは、プロセッサ11で処理される。
【0025】
例えば、プロセッサ11は、分析結果を記憶してこの結果を処理する手段を備える、計算ユニットとすることができる。
機械10は、堆積された粉体床の少なくとも一部分を固化するための固化手段12を備える。例示的に、固化手段は、レーザービーム装置を備えることができる。
【0026】
固化手段12は、プロセッサ11で制御することができる。従って、後続の固化ステップのパラメータを適応させるために電磁分析の結果を用いることができる。従って、後続の固化ステップは、粉体床の欠陥を考慮しながら行われる。電磁応答プローブ5はコイルとすることができ、インピーダンスの変化を測定することに留意されたい。従って、渦電流プローブを使用することができる。
【0027】
勿論、本発明による方法において、電磁応答プローブを用いて電磁場を測定するステップを実行することができ、例えば、電磁応答プローブはコイルであり、そのインピーダンス変化を測定する。また、渦電流プローブを用いることもできる。
【0028】
本発明により、堆積を行った直後に粉体床の分析を行うことができる。
この分析で得られた情報により、後続の焼結又は選択的レーザ溶解ステップを改善することができ、これによって良好な固化を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0029】
1 表面
2 堆積モジュール
3 アーム
4a 矢印
4b 矢印
6 粉体床の一部分