特許第6453359号(P6453359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6453359低温での固体イオン交換による金属交換されたメタロアルミノホスフェートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453359
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】低温での固体イオン交換による金属交換されたメタロアルミノホスフェートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/54 20060101AFI20190107BHJP
   B01J 29/85 20060101ALI20190107BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190107BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   C01B39/54ZAB
   B01J29/85 A
   B01D53/94 222
   B01D53/94 400
   B01J37/30
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-561361(P2016-561361)
(86)(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公表番号】特表2017-512744(P2017-512744A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】EP2014072143
(87)【国際公開番号】WO2015154827
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2017年10月13日
(31)【優先権主張番号】PA201400198
(32)【優先日】2014年4月7日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】PA201400474
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤンスン・トン・ヴェ・ドッベルトヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェネストラム・ピーダ・エヌ・エア
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−507361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート又は金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートを含有する混合物の製造方法であって、
a)イオン交換能を示す一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料、及びb)一種又は二種以上の金属化合物
を含有する乾燥混合物を提供する工程;
アンモニアを含有するガス雰囲気中で、該金属化合物のイオン及び該結晶性マイクロポラスの材料のイオンの固体イオン交換を開始させ、かつ、遂行するのに100℃〜250℃の温度で、かつ、十分な時間該混合物を加熱する工程;及び
金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料を含有する混合物を得る工程、
を含み、
前記一種又は二種以上の金属化合物が、酸化Cu(I)及び/又は酸化Cu(II)である上記の方法。
【請求項2】
前記一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料が、ケイ素、チタン、スズ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルト又は鉄の群から選択される一種又は二種以上の金属を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料が、CHA、AEI、AFI、AEL、AST、AFR、AFO及びFAUの群から選択されるフレームワークコードを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料が、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−18又はそれらの組合せの群から選択される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記一種又は二種以上のマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート出発材料が、H又はNHの形態にある、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記一種又は二種以上のマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート出発材料が、有機構造指向剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記雰囲気中のアンモニアの含有量が、1〜5000体積ppmである、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
酸素が10体積%以下の量で前記雰囲気中に含有されている、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記ガス雰囲気が、5体積%以下の水を含有している、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一つに記載の方法によって得られた金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料の混合物を含む触媒に排ガスを接触させることを含む、還元剤による選択的接触還元によって該排ガスから窒素酸化物を除去する方法。
【請求項11】
前記還元剤がアンモニア又はそれの前駆体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤が炭化水素を含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物又は金属塩又はそれらの組合せの物理的な混合物、及びイオン交換能を有する結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートを、アンモニアを含有する雰囲気に曝すことによる、金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロアルミノホスフェートのイオン交換能は、結晶性のマイクロポラスのフレームワークにおいて形式上の原子価がそれぞれ5+又は3+であるリン原子又はアルミニウム原子のいくつかが、形式上の異なる電荷有する原子に同形置換されるという事実に由来している。このことによってメタロアルミノホスフェート中に負の電荷が生じ、これは、正のイオン、例えば、H、NH、Na又はKによって相殺される。銅イオン及び鉄イオンもまた、この負の電荷を相殺する適切なカチオンを形成することができ、このことが、上述の方法によってCu及びFe交換されたメタロアルミノホスフェートを製造できる理由である。
【0003】
メタロアルミノホスフェートという語は、その結晶性フレームワーク中のリン又はアルミニウムのいくつか、またはそれらの組合せが、金属、ケイ素及びゲルマニウムからなる群から選択される一種又は二種以上の原子によって同形置換されているアルミノホスフェート材料を示す。そのような材料の公知の例は、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、チタンアルミノホスフェート、スズアルミノホスフェートである。
【0004】
Fe又はCuで交換されたメタロアルミノホスフェート材料は、例えば、発電所の排ガス、又は据置型用途及び自動車用途の両方におけるディーゼルエンジンの排ガス中のNOを触媒作用により還元するための効果的な触媒である。最も良く知られているそのような材料の例は、Cuで交換されたSAPO−34である。
【0005】
NOの触媒作用による還元は、SCRと呼ばれている(選択的接触還元)。NOを還元するための最も良く知られている二つのSCRプロセスは、(1)炭化水素が還元剤として使用される炭化水素SCR(HC−SCR)、及び(2)アンモニアが還元剤として使用されるアンモニアSCR(NH−SCR)である。炭化水素SCRの場合、炭化水素の源は、ディーゼルエンジンにも使用されているディーゼル燃料か、又は不完全燃焼に起因する排ガス中の残滓の炭化水素である。NH−SCRを使用するための通常の技術は、排ガス流中に尿素を注入することによるものであり、これは分解してSCR反応に必要なNHが生ずる。Cu−SAPO−34は、両方のタイプのSCR反応の触媒として知られている。
【0006】
金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートを製造するための一般的な方法は、所望の金属イオンの溶液に結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートを接触させて、その後、ろ過、洗浄、乾燥及びか焼することである。それ故、この一般的な方法に続いて、Cuイオン又はFeイオンを含有する、例えば、硝酸Cu、酢酸Cu、硝酸Fe、硫酸Cu又は硫酸Feなどの適切な溶液にH、NHの形態にある結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートか、又は別のカチオンでイオン交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートを接触させることで、炭化水素又はNHによるSCR反応に対して触媒活性を示す材料が通常生成される。金属塩のアニオンの選択は、原則的に任意であるが、通常、アニオンは、十分な溶解性が得られるように、製造の間、簡単に除去できるように、取扱が安全であるように、かつ、好ましくない方法でゼオライトと相互作用しないように選択される。
【0007】
結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート中に金属イオンを導入する従来の方法は、しばしば、それほど効率的ではない。SAPO−34材料による選択的接触還元において十分高い活性を得るために、高温(>750℃)での活性化が必要であることは知られている(P. N. R. Vennestroem, A. Katerinopoulou, R. R. Tiruvalam, A. Kustov, P. G. Moses, P. Concepcion, A. Corma, ACS Catal. 2013, 3, 2158-2161(非特許文献1)。そのような加熱過程によって、SAPO−34触媒全体にわたってCuが再分散してしまい、これは、初期の水の変換がささいではないことを暗に意味している。
【0008】
結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料中にイオンを導入するための代替的な方法は、固体状態でイオン交換することによる方法であり、該方法は、結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料及びそのマイクロポラス結晶中へ導入されるカチオンの源の物理的な混合物を製造し、その後、該カチオンをそのマイクロポラスの材料中へ移動させるよう適切に処置することを含む(G.L. Price, in:, J.R. Regalbuto (Ed.), Catalyst Preparation: Science and Engineering, CRC Press, Boca Raton, London, New York, 2007, pp. 283-296(非特許文献2)。
【0009】
米国特許出願第2013/0108544号明細書(特許文献1)は、イオン交換された結晶性マイクロポラスのシリコアルミノホスフェート材料を、SAPO−34触媒の表面上に金属酸化物粒子又は金属塩粒子を精製し、その後、500〜800℃、好ましくは、650〜750℃で12〜72時間の期間加熱して金属カチオンを生じさせることによって製造する方法を開示している。該金属酸化物粒子又は金属塩粒子は、含浸又は沈殿によってSAPO−34触媒の表面上で形成される。実際のイオン交換工程が、含浸又は沈着に必要な液体を除去した後に行われるため、この過程は、従来のイオン交換とは異なっている。該過程は、高温かつ長い加熱時間を規定している。該過程は、乾燥空気又は湿潤空気中で行うことができる。この方法の変法は、D. Wang, L. Zhang, J. Li, K. Kamasamudram, W.S. Epling, Catal. Today (2013), DOI 10.1016/j.cattod.2013.11.040(非特許文献3)及びM. Zamadics, X. Chen, L. Kevan, J. Phys. Chem. (1992) 5488(非特許文献4)に記載されている。SAPO結晶の表面上に金属酸化物粒子を生じさせる代わりに、H形態のSAPO−34を、CuOと物理的に混合し、そして、12時間の間800℃に加熱した。Cuイオン交換の達成は、両方の文献において確認できた。
【0010】
欧州特許第955080号明細書(特許文献2)は、(i)アンモニウム塩、NH/NHゼオライト、又はN含有の化合物、及び(ii)Si/Al比が5超のゼオライト、及び(iii)一種又は二種以上の上述の金属の化合物から選択される活性化合物を、室温及び周囲圧力で物理的に混合し、次いで、イオン交換プロセスが完了するまで少なくとも300℃に加熱し、その後、室温に冷却することによって、Si/Al比が5超のゼオライト中に、Cu、Fe、Co、Mn、Pd、Rh又はPtを導入する方法を記載している。加熱の間、好ましくは、10K超/分の加熱速度で、アンモニア又はアミンを含有する雰囲気にその混合物は曝される。
【0011】
金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料の製造が、金属の酸化物及び/又は塩及びマイクロポラスのシリコアルミノホスフェートの物理的な混合物をNHを含有する雰囲気中で固体イオン交換が行われる場合に著しく改善されることを我々は観察した。アンモニアの存在によって、250℃という低い温度での固体イオン交換を実施することが可能となる。SCR反応のためのCu−SAPO−34材料を活性するには、通常、600〜800℃の範囲の温度が必要であるという事実を鑑みれば、これは驚くべきことである。さらに、本発明の方法は、欧州特許第955080号明細書(特許文献2)に記載されている、アルミナ−シリケートゼオライトの固体イオン交換のための、金属イオンを導入するのに通常はるかに容易である温度限界よりも低い300℃未満の温度を用いることを可能にもする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願第2013/0108544号明細書
【特許文献2】欧州特許第955080号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】P. N. R. Vennestroem, A. Katerinopoulou, R. R. Tiruvalam, A. Kustov, P. G. Moses, P. Concepcion, A. Corma, ACS Catal. 2013, 3, 2158-2161
【非特許文献2】G.L. Price, in:, J.R. Regalbuto (Ed.), Catalyst Preparation: Science and Engineering, CRC Press, Boca Raton, London, New York, 2007, pp. 283-296
【非特許文献3】D. Wang, L. Zhang, J. Li, K. Kamasamudram, W.S. Epling, Catal. Today (2013), DOI 10.1016/j.cattod.2013.11.040
【非特許文献4】M. Zamadics, X. Chen, L. Kevan, J. Phys. Chem. (1992) 5488
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の利点は、SCR活性の結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料が非常に低い温度で製造でき、それ故に、これらの材料が金属イオンの導入の間に損傷する危険性が低減されるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の観察に基づいて、本発明は、金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料を含有する混合物を製造するための、
a)イオン交換能を示す一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料、及び
b)一種又は二種以上の金属化合物
を含有する乾燥混合物を提供する工程;
アンモニアを含有するガス雰囲気中で、該金属化合物のイオン及び結晶性マイクロポラス材料のイオンの固体イオン交換を開始させ、かつ、遂行するのに十分な温度及び時間、該混合物を加熱する工程;及び
金属交換されたマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は金属交換されたマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料を含有する混合物を得る工程、を含む固体イオン交換法を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態において該一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料は、ケイ素、チタン、スズ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルト又は鉄の群から選択される一種又は二種以上の金属を含有する。
【0017】
有用なマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート出発材料は、イオン交換能を有するいずれのマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料であることができる。
【0018】
好ましくは、該マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料中のリン原子及び可能なアルミニウム原子の一部は、Siによって置き換えられてシリコアルミノホスフェートが生成される。
【0019】
好ましくは、該マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート出発材料は、CHA、AEI、AFI、AEL、AST、AFR、AFO及びFAUとして設計された結晶構造を有する。そのような材料の最も良く知られている例は、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−18である。
【0020】
一実施形態において、マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料は、H形態又はNH形態にある。
【0021】
別の実施形態において、マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート出発材料は、有機構造指向剤を含有する。
【0022】
さらなる実施形態において、金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートを製造するための乾燥混合物中の金属化合物は、金属酸化物、金属硝酸塩、金属ホスフェート、金属硫酸塩、金属シュウ酸塩、金属酢酸塩又はそれらの組合せである。
【0023】
これらの金属化合物における有用な金属は、Fe、Cu、Co又はそれらの組合せを包含する。
【0024】
一実施形態において、これらの金属は、Fe及び/又はCuから選択される。
【0025】
一実施形態において、該金属化合物は、CuO又はCuO又はそれらの混合物である。
【0026】
別の実施形態は、上記の混合物をアンモニアを含有する雰囲気に曝すことであり、その際、該雰囲気中のアンモニアの含有量は、1〜5000体積ppmである
【0027】
さらなる実施形態は、上記の混合物をアンモニアを含有する雰囲気に曝すことであり、その際、該雰囲気中の酸素の含有量は10体積%以下である。
【0028】
別の実施形態は、上記の混合物をアンモニアを含有する雰囲気に曝すことであり、その際、該雰囲気中の水の含有量は5体積%以下である。
【0029】
好ましい実施形態において、該混合物は、アンモニアを含有するガス雰囲気中で300℃未満の温度に加熱される。
【0030】
さらに好ましい実施形態において、該混合物は、アンモニアを含有するガス雰囲気中で100℃〜250℃の温度に加熱される。
【0031】
本発明のさらなる態様は、上述した態様のいずれか一つによって得られる金属交換されたマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は金属交換されたマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料の混合物である。
【0032】
本発明のさらなる態様は、還元剤による選択的接触還元によって排ガスから窒素酸化物を除去する方法であって、該方法は、本発明の上述した実施形態のいずれか一つの方法によって得られた金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は、金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料の混合物を含む触媒に該排ガスを接触させることを含んでいる。
【0033】
好ましい還元剤は、アンモニア又はそれの前駆体又は炭化水素を含む。
本発明の特徴は次の通りである。
1. 金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート又は金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェートを含有する混合物の製造方法であって、
a)イオン交換能を示す一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料、及びb)一種又は二種以上の金属化合物
を含有する乾燥混合物を提供する工程;
アンモニアを含有するガス雰囲気中で、該金属化合物のイオン及び該結晶性マイクロポラスの材料のイオンの固体イオン交換を開始させ、かつ、遂行するのに十分な温度、かつ、時間該混合物を加熱する工程;及び
金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料を含有する混合物を得る工程、
を含む上記の方法。
2. 前記一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料が、ケイ素、チタン、スズ、亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルト又は鉄の群から選択される一種又は二種以上の金属を含有する、上記の特徴1に記載の方法。
3. 前記一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料が、CHA、AEI、AFI、AEL、AST、AFR、AFO及びFAUのフレームワークコードを有する、上記の特徴1又は2に記載の方法。
4. 前記一種又は二種以上のメタロアルミノホスフェート出発材料が、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−18又はそれらの組合せの群から選択される、上記の特徴1〜3のいずれか一つに記載の方法。
5. 前記一種又は二種以上のマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート出発材料が、H又はNHの形態にある、上記の特徴1〜4のいずれか一つに記載の方法。
6. 前記一種又は二種以上のマイクロポラスの金属のホスフェート出発材料が、有機構造指向剤を含有する、上記の特徴1〜5のいずれか一つに記載の方法。
7. 前記乾燥混合物中の前記一種又は二種以上の金属化合物が、金属酸化物、金属硝酸塩、金属ホスフェート、金属硫酸塩、金属シュウ酸塩、金属酢酸塩又はそれらの組合せの群から選択される、上記の特徴1〜6のいずれか一つに記載の方法。
8. 前記一種又は二種以上の金属化合物中の金属が、Fe、Co、Cuの群から選択される、上記の特徴1〜7のいずれか一つに記載の方法。
9. 前記一種又は二種以上の金属化合物が、Fe及び/又はCuの酸化物からなる、上記の特徴1〜7のいずれか一つに記載の方法。
10. 前記一種又は二種以上の金属化合物が、酸化Cu(I)及び/又は酸化Cu(II)である、上記の特徴1〜9のいずれか一つに記載の方法。
11. 前記雰囲気中のアンモニアの含有量が、1〜5000体積ppmである、上記の特徴1〜10のいずれか一つに記載の方法。
12. 酸素が10体積%以下の量で前記雰囲気中に含有されている、上記の特徴1〜11のいずれか一つに記載の方法。
13. 前記ガス雰囲気が、5体積%水以下を含有している、上記の特徴1〜12のいずれか一つに記載の方法。
14. 前記混合物が、アンモニアを含有する前記ガス雰囲気中で300℃未満の温度に加熱される、上記の特徴1〜13のいずれかひとつに記載の方法。
15. 前記混合物が、アンモニアを含有する前記ガス雰囲気中で100℃〜250℃の温度に加熱される、上記の特徴1〜14のいずれか一つに記載の方法。
16. 上記の特徴1〜15のいずれか一つに記載の方法によって得られる金属交換されたマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は金属交換されたマイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料の混合物。
17. 上記の特徴1〜15のいずれか一つに記載の方法によって得られた金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料又は金属交換された結晶性マイクロポラスのメタロアルミノホスフェート材料の混合物を含む触媒に排ガスを接触させることを含む、還元剤による選択的接触還元によって該排ガスから窒素酸化物を除去する方法。
18. 前記還元剤がアンモニア又はそれの前駆体である、上記の特徴17に記載の方法。
19. 前記還元剤が炭化水素を含む、上記の特徴17に記載の方法。
【実施例】
【0034】
実施例1
CuOとH−SAPO−34材料とを、12.5重量%CuOの含有量になるように混合することによって触媒を製造した。該触媒の試料を、石英のU字管リアクターに投入して、N中に500ppmNHを含有する雰囲気中で10時間かけて250℃に加熱した。その加熱後、触媒を160℃に冷却し、そしてN中に500ppmのNO、533ppmのNH、5体積%のHO、10体積%のOを含有するガス混合物に曝した。その後、その温度を、180、200及び220℃に段階的に高め、そして材料のSCR活性に関する記録として、2700NL/触媒1g時間の空間速度でNOの変換率を測定した。
【0035】
異なる温度で測定したNO変換率を表1に示す。SCR活性SAPO−34材料は、Cuの添加後、250℃以上に加熱されなかったことに留意されたい。この例は、本発明の方法が、マイクロポラス材料にCuを添加した後に、イオン交換されたSAPO−34材料の場合の従来の高い温度(>700℃)で活性化(P. N. R. Vennestroem, A. Katerinopoulou, R. R. Tiruvalam, A. Kustov, P. G. Moses, P. Concepcion, A. Corma, ACS Catal. 2013, 3, 2158-2161(非特許文献1))する必要なく、SAPO−34材料をベースとする活性触媒を製造する方法を提供することを示している。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例2
比較のために、CuOとH−SAPO−34材料とを、12.5重量%CuOの含有量になるように混合して、実施例1に記載した触媒と同様の触媒を製造した。触媒の試料を、石英のU字管リアクターに投入して、純粋なN雰囲気中で10時間かけて250℃に加熱した。その加熱後、触媒を160℃に冷却し、そしてN中500ppmのNO、533ppmのNH、5体積%のHO、10体積%のOのガス混合物に曝した。その後、その温度を、180、200及び220℃に段階的に高め、そして材料のSCR活性に関する記録として、2700NL/触媒1g時間の空間速度でNOの変換率を測定した。
【0038】
異なる温度で測定したNO変換率を表2に示す。CuO及びH−SAPO−34の混合物を純粋なN中で処理した後に得られたNOx変換率は、比較可能な実施例1に示した500ppmNHの存在下で処理した後に得られた変化率よりもはるかに低い。これは、低い温度における固体イオン交換によってCu−SAPO−34を製造できるためにはNHの存在が必須であることを示している。そのSCR活性の測定は、低濃度のアンモニアにシステムを曝すことを意味しているため、その測定の間にCu−SAPO−34が幾分か形成され、本発明と完全に一致して、NOxの低い変換率が測定される。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例3
この実施例は、SCRに活性の金属交換されたメタロアルミノホスフェート触媒が、CuOを用いる本発明の方法によって300℃未満で製造できることを示す。10重量%のCuOとH−SAPO−34ゼオライトとの乾燥混合物を乳鉢中で粉砕することによって製造した。この混合物の試料を、石英のU字管リアクターに投入して、窒素中、100〜250℃の所定の温度に加熱した。所望の温度に到達後、500ppmのNHをそのガス流に5時間かけて添加した。この処理の後、窒素中で160℃に冷却し、そしてその粉末混合物を、N中に500ppmのNO、533ppmのNH、5体積%のHO、10体積%のOを含有するガス雰囲気に曝し、そして、材料のSCR活性に関する記録として、2700Nl/触媒1g時間の空間速度でNOxの変換率を測定することによって、得られた材料の触媒活性を測定した。次いで、反応温度を180及び200℃に高め、そしてそれぞれの温度におけるNOx変換率を同じ条件下で測定した。
【0041】
100、150、200及び250℃のそれぞれにおいて、500ppmのNH中で製造された金属交換されたゼオライトによるSCR反応におけるNOx変換率を表3に示す。
【0042】
【表3】