特許第6453362号(P6453362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453362
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】血流センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0285 20060101AFI20190107BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20190107BHJP
   G01F 1/704 20060101ALI20190107BHJP
   G01F 1/66 20060101ALI20190107BHJP
   G01P 5/26 20060101ALI20190107BHJP
   H01L 31/12 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   A61B5/0285 H
   A61B5/026 120
   G01F1/704
   G01F1/66 103
   G01P5/26 A
   H01L31/12 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-563363(P2016-563363)
(86)(22)【出願日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2014082887
(87)【国際公開番号】WO2016092680
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五明 智夫
(72)【発明者】
【氏名】平 英路
(72)【発明者】
【氏名】友安 直人
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/153664(WO,A1)
【文献】 特開2007−225923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02−5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明管の中を流れる血液の流速を計測可能な血流センサであって、
レーザー光を発光する発光素子と、
光を受光する受光素子と、
前記発光素子及び前記受光素子を覆う遮光性の素子カバーと、
前記透明管の外面の一部を覆う遮光性の管カバーを備え、
前記発光素子は、前記透明管の中を流れる血液に向けてレーザー光を発光し、
前記受光素子は、前記発光素子が発光して前記透明管内で反射されたドップラー効果を受けていない光と、前記発光素子が発光して前記透明管の中を流れる血液成分で反射されたドップラー効果を受けた光を受光し、
前記管カバーは、前記素子カバーに固定されており、前記素子カバーから前記透明管の外面に沿って延びている、血流センサ。
【請求項2】
前記管カバーが前記透明管の外面に密着しており、
前記素子カバーから延びる前記管カバーの長さM、前記透明管の管壁の厚みt1、および、前記透明管の外面から管壁に光が入射するときの臨界屈折角Cが、M≧4×t1×tanCの関係式を満たしている、請求項1に記載の血流センサ。
【請求項3】
前記透明管の外面と前記管カバーとの間に配置された透明な中間部材を備え、
前記中間部材の前記管カバー側の面が複数の凹凸を有している、請求項1に記載の血流センサ。
【請求項4】
前記管カバーは、前記中間部材の前記管カバー側の端部に密着しており、
前記素子カバーから延びる前記管カバーの長さM、前記透明管の管壁の厚みt1と前記中間部材の厚みt2、および、前記透明管の外面から管壁に光が入射するときの臨界屈折角Cが、M≧4×(t1+t2)×tanCの関係式を満たしている、請求項3に記載の血流センサ。
【請求項5】
前記管カバーは、前記透明管の周方向に延びており、前記透明管の周方向における前記管カバーの端部の横から前記透明管の一部が露出している、請求項1から4のいずれか一項に記載の血流センサ。
【請求項6】
前記管カバーが黒色である、請求項1から5のいずれか一項に記載の血流センサ。
【請求項7】
前記管カバーが無光沢である、請求項1から6のいずれか一項に記載の血流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、血流センサに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、体内にある血管内を流れる血液の流速を計測する血流センサが開示されている。この血流センサは、発光素子、受光素子、および制御部を備えている。この血流センサは、人体の近くに置いて用いられ、発光素子が、体表面に向けてレーザー光を発光する。発光素子が発光したレーザー光は、その一部が体表面で反射し、他の一部は体内に侵入して血管内を移動する赤血球によって反射される。受光素子は、体表面による反射光と、赤血球による反射光を受光する。前者は、血液の流速によるドップラー効果を受けていない参照光となり、後者は血液の流速によるドップラー効果を受けている計測光となる。制御部は、受光素子が受光した、体表面による反射光と赤血球による反射光を重ね合わせた光に基づいて、ヘテロダイン技術により赤血球の流速を計算する。この種の血流センサは、レーザードップラー式の血流センサと呼ばれている。
【0003】
医療現場では、体内を流れる血液を体外に送り出し、体外に送り出した血液を再び体内に戻す体外循環が行われている。体外循環では、血液の状態を観測できるように透明な管を用いる。透明管が体内の血管に接続され、体内の血管を流れる血液が体外の透明管に流入し、透明管の中を流れた血液が体内の血管に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−330936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、血流センサの周囲の光が血流センサと人体の間を通過して血流センサに入射することがある。これにより、体表面による反射光と赤血球による反射光以外の余分な光を受光素子が受光することがある。そうすると、受光素子が受光した余分な光がノイズになり、血流センサの計測精度が低下してしまう。また、体表面による反射光と赤血球による反射光は光量が少ないので、受光素子が余分な光を受光すると、余分な光のノイズが相対的に大きくなる。
【0006】
また、特許文献1の技術を透明管に適用し、透明管の中を流れる血液の流速を計測することが可能である。この場合、発光素子から発光されたレーザー光の一部が透明管で反射して参照光となり、他の一部が赤血球で反射して計測光となる。受光素子は、透明管による反射光と赤血球による反射光を受光する。
【0007】
透明管では、管の周囲の光が管壁内に入り、管壁内を進行してゆく。特許文献1の技術を透明管に適用すると、管壁内を進行する光を受光素子が受光することがある。そうすると、透明管による反射光と赤血球による反射光以外に、管壁内を進行する余分な光を受光素子が受光するので、血流センサの計測精度が低下してしまう。また、管の周囲から管壁内に入射して進行する光は光量が多いので、周囲の光によるノイズが大きくなり、計測精度の低下が大きくなる。そこで本明細書は、受光素子が余分な光を受光することを抑制し、血液の流速を精度良く計測することを可能にした技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示する血流センサは、透明管の中を流れる血液の流速を計測可能であり、レーザー光を発光する発光素子と、光を受光する受光素子を備えている。また、血流センサは、受光素子を覆う遮光性の素子カバーと、透明管の外面の一部を覆う遮光性の管カバーを備えている。発光素子は、透明管の中を流れる血液に向けてレーザー光を発光する。受光素子は、発光素子が発光して透明管内で反射されたドップラー効果を受けていない光と、発光素子が発光して透明管の中を流れる血液成分で反射されたドップラー効果を受けた光を受光する。管カバーは、素子カバーに固定されており、素子カバーから透明管の外面に沿って延びている。
【0009】
上記構成によれば、管が透明なので、体外に取り出した血液の状態を管の外部から観察することができる。発光素子から発光されたレーザー光の一部は、透明管内で反射する。また、他の一部は、透明管の管壁を通過して透明管の中を流れる血液に入射して血液成分で反射する。受光素子は、透明管による反射光と血液成分による反射光を受光する。このとき、受光素子が遮光性の素子カバーにより覆われているので、透明管の周囲の光が受光素子に入射することを抑制できる。また、透明管の一部が遮光性の管カバーにより覆われているので、透明管の周囲の光が管壁の中に入射することを抑制できる。また、管カバーにより覆われていない部分から透明管の管壁に光が入射し、この光が管壁内を進行することがある。しかしながら、上記構成によれば、管カバーが素子カバーから透明管の外面に沿って延びているので、管壁に光が入射する位置から受光素子までの距離を長くすることができる。これにより、管壁に光が入射しても、受光素子まで距離があるので、光が管壁内を進行する過程で、受光素子に到達する前に光量が少なくなる。以上の結果、受光素子が余分な光を受光することを抑制でき、血液の流速を精度良く計測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】血流センサおよび管の断面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3】血流センサのブロック図である。
図4図1の要部IVの拡大図である。
図5図1のV−V断面図である。
図6】他の実施例に係る血流センサおよび管の断面図である。
図7図6の要部VIIの拡大図である。
図8】他の実施例に係る血流センサおよび管の要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施形態の主要な特徴を列記する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものである。
【0012】
(特徴1)管カバーが透明管の外面に密着している。素子カバーから延びる管カバーの長さM、透明管の管壁の厚みt1、および、透明管の外面から管壁に光が入射するときの臨界屈折角Cが、M≧4×t1×tanCの関係式を満たしている。これにより、管壁に入射した余分な光を受光素子が受光することを抑制できる。
(特徴2)透明管の外面と管カバーとの間に配置された透明な中間部材を備えている。中間部材の管カバー側の面が複数の凹凸を有している。これにより、管壁に入射した光が中間部材の凹凸面により拡散する。その結果、管壁に入射した余分な光を受光素子が受光することを抑制できる。
(特徴3)管カバーが中間部材の管カバー側の端部に密着している。素子カバーから延びる管カバーの長さM、透明管の管壁の厚みt1と中間部材の厚みt2、および、透明管の外面から管壁に光が入射するときの臨界屈折角Cが、M≧4×(t1+t2)×tanCの関係式を満たしている。
(特徴4)管カバーは、透明管の周方向に延びているが、透明管を一巡せず、周方向における管カバーの端部の横に透明管が露出している。これにより、透明管の周方向の一部において管カバーが透明管を覆うが、管カバーにより覆われていない部分から透明管の中を視認できる。また、管カバーは、透明管の軸方向に延びており、透明管の一部を覆っている。透明管の軸方向において、管カバーにより覆われていない部分から透明管の中を視認できる。
(特徴5)管カバーが黒色である。また、管カバーが無光沢である。これにより、管カバーの遮光性が高くなる。
【0013】
(第1実施例)
以下、実施例について添付図面を参照して説明する。第1実施例に係る血流センサ1は、図1および図2に示すように、発光素子10および受光素子20を備えている。また、血流センサ1は、素子カバー70および管カバー30を備えている。また、図3に示すように、血流センサ1は、発光素子10および受光素子20に接続された制御部90を備えている。
【0014】
図1および図2に示すように、血流センサ1は、血液Bが流れている透明管40に取り付けて利用する。血流センサ1は、透明管40の外側に配置される。血流センサ1は、透明管40の中を流れる血液Bの流速および流量を計測可能である。以下の説明では、血流センサ1が透明管40(以下では管40という)に取り付けられた状態で説明する。
【0015】
管40は、管壁41および流路42を備えている。管壁41によって囲まれた空間に流路42が形成されている。管40は患者の体内の血管(図示省略)に接続されており、患者の血管から管40に血液Bが流入する。血液Bは、管40の中心軸40aに沿って流路42を流れる。管40を流れた血液Bは、再び患者の血管に送り返される。このように、患者の血液Bが患者の血管から体外に一旦取り出され、再び患者の血管に送り戻されることにより、血液Bの体外循環が行われる。血液Bには、様々な成分が含まれている。例えば、血液Bには、赤血球、白血球、血小板、血漿、リンパ球などの成分が含まれている。
【0016】
管壁41は、例えば透明な樹脂やガラスにより形成されている。管壁41は、光透過性を有しており、レーザー光Lおよび可視光を透過可能である。管壁41が透明に形成されているので、管壁41を通じて管壁41の内側が視認でき、管壁41の内側の流路42を流れる血液Bが視認できる。流路42は、管40の中心軸40aに沿って延びており、血液Bが管40の中心軸40aに沿って流れる。
【0017】
管40の中心軸40aに直交する方向の管40の断面形状は特に限定されない。本実施例では、図2に示すように、中心軸40aに直交する方向の管40の断面形状は、正方形となっている。管40の外面43が4方向に形成されている。
【0018】
発光素子10と受光素子20は、血液Bの流れ方向に沿って並んで配置されている。発光素子10が、血液Bの流れ方向の上流側に配置されており、受光素子20が血液Bの流れ方向の下流側に配置されている。発光素子10と受光素子20は、素子カバー70に固定されている。
【0019】
発光素子10は、レーザー光Lを発光する。発光素子10としては、例えばレーザーダイオード(LD)を用いることができる。発光素子10が発光するレーザー光Lの周波数は特に限定されるものではない。
【0020】
発光素子10は、透明な管40および管40の中を流れる血液Bに向けてレーザー光Lを発光する。発光素子10は、管40の外側から管40の内側に向けてレーザー光Lを発光する。発光素子10が発光したレーザー光Lは、管40の管壁41を通過する。管壁41を通過したレーザー光Lの一部は、管壁41と流路42の境界(管壁41の内面)で反射する。あるいは、レーザー光Lの一部は、管壁41の内面に接する部分の血液Bに含まれる静止した赤血球で反射する。このように、レーザー光Lの一部が透明管40内で反射するときは、管壁41の内面で反射する場合と、管壁41の内面に接する部分の血液Bに含まれる動いていない赤血球で反射する場合がある。一方、レーザー光Lの他の一部は、流路42に入射する。
【0021】
管壁41と流路42の境界で反射したレーザー光Lは、受光素子20に向かって進行する。管壁41と流路42の境界で反射したレーザー光Lは、ドップラー効果を受けていない参照光である。受光素子20に向かって進行するレーザー光Lは、管壁41を通過した後、受光素子20に入射する。
【0022】
一方、管壁41と流路42の境界から流路42に入射したレーザー光Lは、血液Bの中を進む。流路42に入射するレーザー光Lは、管壁41と流路42の境界において屈折する。血液Bの中を進むレーザー光Lは、血液Bに含まれる成分に当たって反射する。具体的には、レーザー光Lが血液Bに含まれる赤血球Rに当たって反射し、反射光Sが生じる。移動する赤血球Rに反射することで、反射の前後で光の周波数が変化する。よって、レーザー光Lの周波数と反射光Sの周波数は異なる。赤血球Rで反射した反射光Sは、ドップラー効果を受けている計測光である。反射光Sは、受光素子20に向かって進行する。反射光Sは、流路42と管壁41の境界から管壁41に出射し、管壁41を通過した後、受光素子20に入射する。管壁41に出射する反射光Sは、流路42と管壁41の境界において屈折する。
【0023】
受光素子20は、受光素子20に入射する光を受光し、受光した光量に対応する電気信号を出力する。受光素子20には、フォトダイオード(PD)を用いることができる。受光素子20は、管40で反射された光(ドップラー効果を受けていない参照光)と、赤血球Rで反射された光(ドップラー効果を受けている計測光)を受光する。受光素子20が受光した光(管40による反射光と赤血球Rによる反射光)は、管40の中を流れる血液Bの流速を計算するために用いられる。
【0024】
図3に示す制御部90は、発光素子10および受光素子20を制御する。制御部90は、受光素子20が受光した光に基づいて、管40の中を流れる血液Bの流速を計算することができる。また、制御部90は、血液Bの流速を計算することができる。制御部90は、ヘテロダイン技術を用いて計算を行う。ヘテロダイン技術は、周波数が異なる2つの波(光)を重ね合わせてうなり(ビート)を生じさせ、このうなりを用いて計算を行う方法である。ヘテロダイン技術は、2つの波(光)の周波数の差、すなわち、ドップラーシフトを利用して計算を行う方向である。制御部90は、ヘテロダイン技術を用いて、参照光と計測光の周波数の差を計算し、その計算結果から血液Bの流速を計算する。ヘテロダイン技術については公知であるので、詳細な説明を省略する。制御部90は、計算した血液Bの流速および流量をモニタ(図示省略)に出力する。
【0025】
図1及び図2に示すように、素子カバー70は、発光素子10および受光素子20を覆っている。素子カバー70に発光素子10および受光素子20が固定されている。素子カバー70は、不透明であり、遮光性を有している。素子カバー70の色は、黒色が好ましい。また、素子カバー70は、無光沢であることが好ましい。素子カバー70は、発光素子10および受光素子20に不要な光が入らないように光を遮断する。素子カバー70は、接触面71を有している。接触面71は、管40の外面43に接触する。接触面71は、管40の外面43の形状と一致する形状になるように形成されている。素子カバー70は、管40の外面43の一部を覆っている。
【0026】
管カバー30は、素子カバー70の端部74に固定されている。管カバー30は、素子カバー70から管40の外面43に沿って素子カバー70の周囲に延びている。管カバー30の厚みは、素子カバー70の厚みより薄い。管カバー30は、管40の外面43の一部を覆っている。管カバー30の内面31(管40側の面)は、管40の外面43に密着している。管カバー30は、不透明であり、遮光性を有している。管カバー30の色は、黒色が好ましい。管カバー30は、例えば黒色の樹脂や繊維から形成されている。また、管カバー30は、無光沢であることが好ましい。管カバー30の内面31は、無光沢に形成されている。管カバー30は、管40の周囲の光が管40に入射することを遮断する。管カバー30が管40を覆う部分では、管40の周囲から管40に光が入射しない。
【0027】
図1に示すように、管カバー30は、管40の軸方向に延びている。管40の軸方向において、素子カバー70の両側にそれぞれ管カバー30が配置されている。管40の軸方向における管カバー30の端部32の横から、管40の外面43が露出している。
【0028】
また、図2に示すように、管カバー30は、管40の周方向にも延びている。管40の周方向において、素子カバー70の両側にそれぞれ管カバー30が配置されている。管カバー30は、管40の4つの外面43のうち1つの外面43を覆っている。管40の周方向における管カバー30の端部33の横から、管40の外面43が露出している。
【0029】
図4に示すように、管カバー30が管40を覆わいない部分、すなわち、管40が外部に露出している部分では、管40の周囲から管壁41に光が入射する。管壁41に入射した光は、管壁41内で反射を繰り返しながら進行する。管壁41内を進行する光は、管壁41と流路42の境界、および、管壁41と管カバー30の境界において反射しながら進行する。管壁41内の光は、反射を繰り返すことにより光量が低下してゆく。
【0030】
図4及び図5に示すように、素子カバー70から延びる管カバー30の長さをMとし、管40の管壁41の厚みをt1とし、管40の外面43から管壁41に光が入射するときの臨界屈折角をCとすると、M、t1、およびCは下記の関係式(1)を満たしていることが好ましい。
【0031】
M≧4×t1×tanC (1)
【0032】
上記の関係式(1)において、素子カバー70から延びる管カバー30の長さMは、素子カバー70の端部74から、管40の軸方向における管カバー30の端部32までの距離、および、管40の周方向における管カバー30の端部33までの距離である。臨界屈折角Cは、管40の周囲の光が管壁41に入射するときに、管40の外面43で全反射を起こすことなく入射可能な最大の屈折角のことである。管壁41に入射した際の屈折角が臨界屈折角Cに近づくほど、管壁41の幅方向の奥まで光が入射する。関係式(1)における(4×t1×tanC)は、管40の周囲の光が管壁41に臨界屈折角Cとなる入射角で入射し、管壁41内で反射を繰り返しながら進行する場合に、管壁41内で反射を4回繰り返したときに到達する距離に相当する。
【0033】
管カバー30の長さMが関係式(1)を満たしていると、管壁41に入射した光が管壁41内で4回以上反射する。管壁41に入射した光は、管壁41内で4回反射することにより十分に光量が低下する。光量の低下率は、管壁41と流路42の境界、および、管壁41と管カバー30の境界における反射率に基づいて計算できる。例えば、境界における光の反射率が0.1である場合は、光が境界で4回反射すると、光量は入射した光に対して1/10000(=0.1)まで低下する。
【0034】
上述の説明から明らかなように、血流センサ1は、透明な管40の中を流れる血液Bの流速を計測可能であり、レーザー光Lを発光する発光素子10と、光を受光する受光素子20を備えている。また、血流センサ1は、受光素子20を覆う遮光性の素子カバー70と、管40の外面43の一部を覆う遮光性の管カバー30を備えている。発光素子10は、管40の中を流れる血液Bに向けてレーザー光Lを発光する。受光素子20は、発光素子10から発光されたレーザー光Lが管40内で反射した反射光(ドップラー効果を受けていない光)と、発光素子10から発光されたレーザー光Lが管40の中を流れる血液成分で反射した反射光(ドップラー効果を受けた光)を受光する。また、管カバー30は、素子カバー70に固定されており、素子カバー70から管40の外面43に沿って延びている。
【0035】
このような構成によれば、血液Bが透明な管40の中を流れているので、管40の中の血液Bを外部から視認することができ、血液Bの状態を外部から把握することができる。また、受光素子20が素子カバー70により覆われているので、血流センサ1の周囲の光が受光素子20に入射することを抑制できる。また、管40が管カバー30により覆われているので、管40の周囲の光が管40に入射することを抑制できる。一方、管カバー30により覆われていない部分から管40の管壁41に光が入射して管壁41内を進行することがある。しかしながら、管カバー30が素子カバー70から管40の外面43に沿って延びているので、光が管壁41に入射する位置から受光素子20まで距離がある。したがって、管壁41に入射した光は、受光素子20まで到達しにくい。素子カバー70から延びる管カバー30の長さMを長くすることにより、管カバー30によって覆われていない部分から管40の管壁41に入射した光が、受光素子20まで到達しにくい。これにより、管壁41に入射した光が受光素子20に入射することを抑制できる。以上より、受光素子20が余分な光を受光することを抑制でき、血液Bの流速を精度良く計測することが可能になる。
【0036】
また、管40の周方向における管カバー30の端部33の横から管40の外面43が露出している。よって、管40の周方向において管カバー30が管40を覆うが、管カバー30により覆われていない部分から透明な管40の中の血液Bを視認できる。
【0037】
以上、一実施形態について説明したが、具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。以下の説明において、上述の説明における構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
(第2実施例)
第2実施例に係る血流センサ1は、図6に示すように、管カバー30と管40の間に配置された中間部材50を備えている。中間部材50は、例えば透明な樹脂やガラスにより形成されている。中間部材50は、光透過性を有しており、レーザー光Lおよび可視光を透過可能である。
【0039】
図7に示すように、中間部材50は、接触面52および凹凸面51を備えている。接触面52は、管40の外面43に接触する。接触面52の形状は、管40の外面43の形状と一致する形状になっている。凹凸面51は、管カバー30に密着している。管カバー30の内面31は、凹凸面51に合わせて凹凸状に形成されている。凹凸面51は、複数の第1斜面511および複数の第2斜面512を有している。本実施例では、第1斜面511と第2斜面512は、直交している。第1斜面511と第2斜面512がなす角度は特に限定されるものではない。第1斜面511の傾斜方向の長さと第2斜面512の傾斜方向の長さは等しい。よって、第1斜面511と第2斜面512は、図7に示す断面において二等辺になっている。
【0040】
このような構成によれば、管40の管壁41に入射した光が、管壁41から中間部材50に入射する。中間部材50に入射した光は、中間部材50と管カバー30の境界の凹凸面51で反射する。第1斜面511と管カバー30の境界で反射した光は、受光素子20から遠ざかる方向に進む。これにより、受光素子20が余分な光を受光することを抑制できる。
【0041】
中間部材50を備える血流センサ1では、素子カバー70から延びる管カバー30の長さをMとし、管40の管壁41の厚みをt1とし、中間部材50の厚みをt2とし、管40の外面43から管壁41に光が入射するときの臨界屈折角をCとすると、M、t1、t2、およびCは下記の関係式(2)を満たしていることが好ましい。中間部材50の厚みt2は、中間部材50最も厚い部分の厚みである。管40の管壁41の厚みをt1と中間部材50の厚みをt2の合計(t1+t2)は、管40の内面から中間部材50の管カバー30側の端部までの距離に相当する。
【0042】
M≧4×(t1+t2)×tanC (2)
【0043】
管カバー30の長さMが関係式(2)を満たしていると、管壁41に入射した光が管壁41内および中間部材50内で合計4回以上反射する。管壁41に入射した光は、管壁41内および中間部材50内で4回反射することにより十分に光量が低下する。光量の低下率は、管壁41と流路42の境界、および、中間部材50と管カバー30の境界における反射率に基づいて計算できる。
【0044】
(第3実施例)
第3実施例に係る血流センサ1では、図8に示すように、中間部材50の凹凸面51が複数の湾曲面513を有している。このような構成によれば、中間部材50に入射した光は、中間部材50と管カバー30の境界の湾曲面513により様々な方向に反射する。これにより、受光素子20に向かって進む光の光量を低下することができ、受光素子20が余分な光を受光することを抑制できる。
【0045】
また、中間部材50の凹凸面51の構成は上記の実施例に限定されるものではない。例えば、凹凸面51は、ディンプル状、粗面状などの形状で形成されていてもよい。また、中間部材50の凹凸面51と管カバー30の内面31との間に隙間が形成されていてもよい。
【0046】
また、発光素子10の構成は上記の実施例に限定されるものではない。他の実施例では、発光素子10におけるレーザー光Lが出射する部分にレンズ(図示省略)を取り付けてもよい。レンズは、発光素子10の先端部に固定される。このような構成では、発光素子10から発光されたレーザー光Lがレンズにより拡散し、拡散したレーザー光Lが管40および血液Bに向かって進む。そして、レーザー光Lの一部が管壁41と流路42の境界(管壁41の内面)で反射し、他の一部が流路42を流れる血液Bに入射し、血液Bに含まれる移動する赤血球Rで反射する。このような構成によっても、ドップラー効果を受けていない参照光とドップラー効果を受けた計測光をそれぞれ受光できる。
【0047】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0048】
1 ;血流センサ
10 ;発光素子
20 ;受光素子
30 ;管カバー
31 ;内面
32 ;端部
33 ;端部
40 ;管
40a;中心軸
41 ;管壁
42 ;流路
43 ;外面
50 ;中間部材
51 ;凹凸面
52 ;接触面
70 ;素子カバー
71 ;接触面
74 ;端部
90 ;制御部
511;第1斜面
512;第2斜面
513;湾曲面
B ;血液
C ;臨界屈折角
L ;レーザー光
R ;赤血球
S ;反射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8