特許第6453367号(P6453367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453367
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】広告サーバおよび広告配信システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20190107BHJP
   G09F 19/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   G06Q30/02 380
   G09F19/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-5070(P2017-5070)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-116345(P2018-116345A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】白川 貴久
【審査官】 宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−157623(JP,A)
【文献】 特表2011−504260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G09F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して記事サーバから端末に配信された、記事と前記記事の表示にあたり共通に用いられる情報である記事付帯情報とに基づいて作成される記事表示情報、に基づく前記端末からの要求に応じて、前記ネットワークを介してECサーバが送信する、商取引の電子的な申し出であって前記端末に送信する記事である元記事に関連づけられるEC情報へのリンクを含む広告を、前記ネットワークを介して配信する広告配信手段と、
前記EC情報に関連づけられた前記記事ごとに、前記EC情報が閲覧された割合である閲覧率に基づいて誘導価値を算出し、前記誘導価値の大きい前記記事を選択する記事選択手段と、
前記記事選択手段により選択された前記記事へのリンクである記事リンクを、前記ネットワークを介して前記端末に配信する記事リンク配信手段と、を備えることを特徴とする広告サーバ。
【請求項2】
前記記事選択手段は、前記閲覧率と前記広告の配信により前記商取引が成約された割合である成約率とに基づいて前記誘導価値を算出し、前記誘導価値の大きい前記記事を選択し、
前記記事選択手段は、前記EC情報の表示回数を前記広告の表示回数で除することにより求められる広告クリック率を前記閲覧率として用い、さらに、前記記事の表示回数を前記元記事の表示回数で除することにより求められる記事クリック率を用いて前記誘導価値を算出し、
前記記事選択手段が算出する前記誘導価値は、以下の式により示される値であることを特徴とする、請求項1に記載の広告サーバ。
誘導価値=記事クリック率×広告クリック率×(成約率×成約コスト単価−クリック単価)
【請求項3】
前記記事選択手段は、前記閲覧率と前記広告の配信により前記商取引が成約された割合である成約率とに基づいて前記誘導価値を算出し、前記誘導価値の大きい前記記事を選択することを特徴とする、請求項1に記載の広告サーバ。
【請求項4】
前記記事選択手段は、前記EC情報の表示回数を前記広告の表示回数で除することにより求められる広告クリック率を前記閲覧率として用い、さらに、前記記事の表示回数を前記元記事の表示回数で除することにより求められる記事クリック率を用いて前記誘導価値を算出することを特徴とする、請求項1に記載の広告サーバ。
【請求項5】
前記記事選択手段は、所定の基準に合致する複数の記事から、前記誘導価値が大きい記事が高い確率で選択されるように、前記記事を選択することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の広告サーバ。
【請求項6】
前記記事選択手段は、前記元記事との関連度が所定の閾値以上の前記記事から、前記誘導価値の大きい前記記事を選択することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の広告サーバ。
【請求項7】
前記記事選択手段は、前記記事を前記元記事としたときの誘導価値を、前記誘導価値に含めることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の広告サーバ。
【請求項8】
端末に記事を送信する記事サーバと、ECサーバが送信する商取引の電子的な申し出であって前記端末に送信する記事である元記事に関連づけられるEC情報へのリンクを含む広告を前記端末に配信する広告サーバと、がネットワークを介して接続された広告配信システムであって、
前記記事サーバは、
前記元記事への要求を前記端末から受け付ける記事要求受付手段と、
受け付けた前記元記事と、前記記事サーバの前記記事の表示にあたり共通に用いられる情報である記事付帯情報とに基づいて記事表示情報を作成する記事表示情報作成手段と、
前記記事表示情報を前記端末に送信する記事送信手段と、を備え、
前記広告サーバは、
前記端末からの要求に応じて前記記事に関連づけられた前記EC情報へのリンクを含む前記広告を配信する広告配信手段と、
前記EC情報に関連づけられた前記記事ごとに、前記EC情報が閲覧された割合である閲覧率に基づいて誘導価値を算出し、前記誘導価値の大きい前記記事を選択する記事選択手段と、
前記記事選択手段により選択された前記記事へのリンクである記事リンクを、前記ネットワークを介して前記端末に配信する記事リンク配信手段と、を備える
ことを特徴とする広告配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記事サーバの要求に応じてECサーバの広告情報を配信する広告サーバおよび広告配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定のトピックに関する記事を随時追加して公開する記事サーバは、ユーザが所望の情報を入手するために端末からアクセスされる。特に、人気のある記事サーバの記事は、多くのユーザに閲覧されるため、広告掲載場所として高い価値を有する。ここで広告とは、他サーバへのリンクを含む情報であり、記事においては一般に文字や画像として表示される。端末で記事を閲覧するユーザが広告をクリックないしタップすると(以下、単に「クリック」ということがある)、含まれているリンクに応じて端末が他サーバにアクセスし、所定のページが表示される。
【0003】
一般に、広告のリンク先は、商取引の電子的な申し出を行うEC情報を送信するECサーバである。EC情報は、個々の商品やサービスの購入を個別に決済可能な商品・サービス購入ページの場合もあれば、個々の商品やサービスに限定されないキャンペーンに対する申し込みなどを受け付けるページの場合もある。EC情報による商取引の申し出により商取引が成約されるが、このとき対価の支払が生じてもよいし、生じなくてもよい。このようなEC情報へのリンクを広告として人気の高い記事に掲載することにより、ECサイトはEC情報に対し多くのアクセスを集め、広告効果を向上させることができる。
【0004】
特許文献1に、広告効果の予測精度を向上させることができる情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−177648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
広告の対象となる商品やサービスに特に興味がない場合、ユーザがいわゆる広告らしい外観の広告をクリック等してリンク先にアクセスすることは、多くない。一方、記事サーバの記事と同様の体裁で作成された広告(「記事広告」ないし「ネイティブアド」ともいう)に対しては、ユーザは広告まで自然に誘導されることが多い。したがって、記事広告は、一般の記事に掲載される広告よりも効果が大きい。すなわち、ユーザがEC情報にアクセスし、そこで申し出されている商取引を行う確率が大きくなる。
【0007】
ECサイトとしては掲載する広告の効果を高めたいので、記事広告を多く掲載するのが望ましい。しかし、記事広告の作成には通常の広告よりも多くのコストがかかる。また、複数の記事サイトで同一のものを使用可能な通常の広告に対し、記事広告は記事サイトごとに体裁を変えて作成する必要がある。
【0008】
本発明は、このような広告の効果を向上させるのに記事広告を作成するとコストがかかるという課題を解決するものであり、新規に記事広告を作成することなく広告効果を向上可能な広告サーバおよび広告配信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明にかかる広告サーバは、
ネットワークを介して記事サーバから端末に配信された、記事と前記記事の表示にあたり共通に用いられる情報である記事付帯情報とに基づいて作成される記事表示情報、に基づく前記端末からの要求に応じて、前記ネットワークを介してECサーバが送信する、商取引の電子的な申し出であって前記端末に送信する記事である元記事に関連づけられるEC情報へのリンクを含む広告を、前記ネットワークを介して配信する広告配信手段と、
前記EC情報に関連づけられた前記記事ごとに、前記EC情報が閲覧された割合である閲覧率に基づいて誘導価値を算出し、前記誘導価値の大きい前記記事を選択する記事選択手段と、
前記記事選択手段により選択された前記記事へのリンクである記事リンクを、前記ネットワークを介して前記端末に配信する記事リンク配信手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、新規に記事広告を作成することなく広告効果を向上可能な広告サーバおよび広告配信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態にかかる広告配信システムの概略構成図である。
図2】第1の実施形態にかかる記事サーバの機能ブロック図である。
図3】第1の実施形態にかかる広告サーバの機能ブロック図である。
図4】第1の実施形態における広告の価値評価を説明する図である。
図5】第1の実施形態において端末に記事を送信するときの記事サーバと広告サーバの処理を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態において記事サーバから送信された記事に基づき端末の表示部に表示される画面の例である。
図7】第2の実施形態における広告の価値評価を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
まず、ECサーバの運営者が広告主として記事サーバの記事に広告を掲載する第1の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態にかかる広告配信システムの概略構成図である。図1に示すように、広告配信システムは、記事サーバ1と、広告サーバ2と、ECサーバ3と、端末4とがそれぞれネットワーク5に接続されて構成される。記事サーバ1、広告サーバ2、ECサーバ3は、読み込んだプログラムに基づいてデータ処理を実行するコンピュータである。端末4は、ユーザの操作を受けつけ、読み込んだプログラムに基づいてデータ処理を実行し、結果をユーザに出力するコンピュータであり、パーソナルコンピュータやタブレット、スマートフォンなどに対応する。
【0014】
記事サーバ1は、記憶する記事を端末4に提供する。広告サーバ2は、記事とともに端末4に提供すべき広告を端末4に配信する。ECサーバ3は、電子的な商取引の申し出であるEC情報を端末4に提供する。ここで広告とは、EC情報へのリンクが対応づけられた情報をいい、文字列や画像により構成される。端末4は、ユーザの入力に応じて記事を取得し、広告とともに表示する。また、ユーザの広告への操作により、EC情報を取得し、表示する。図1では、記事サーバ1と広告サーバ2とECサーバ3と端末4とをそれぞれ1台ずつ示しているが、複数台あってもよい。
【0015】
記事サーバ1の通信部10は、記事サーバ1をネットワーク5に接続し、情報の送受信を行う。通信部10は、具体的には図示しない有線LANインタフェースや無線LANインタフェースや携帯電話通信インタフェースおよびこれらの制御ソフトウェアないしファームウェアにより構成可能である。
【0016】
広告サーバ2の通信部20、ECサーバ3の通信部30、端末4の通信部40は、記事サーバ1の通信部10と同様であるので、説明を省略する。
【0017】
記事サーバ1の処理部11は、各種情報処理を実行する。各種情報処理には、図示しない入力部を介してユーザの指定するソフトウェアの実行の他に、記事サーバ1を構成する各部の制御など、ユーザが明示的に指定しない処理が含まれる。処理部11は、図示しないCPUおよびメモリにより構成可能である。
【0018】
広告サーバ2の処理部21、ECサーバ3の処理部31、端末4の処理部41は、記事サーバ1の処理部11と同様であるので、説明を省略する。
【0019】
記事サーバ1の記憶部12は、各種データを不揮発に記憶する。各種データは、通信部10によりネットワーク5から受信されるものであってよく、図示しない入力部を介して入力されるものであってもよい。また、各種データは、処理部11の処理の対象とすることができる。記事サーバ1においては、記憶部12は、記事や処理部11が実行するプログラムなどを記憶することができる。記憶部12は、ハードディスクドライブやSSD(Solid State Drive)などの不揮発記憶装置により構成可能である。
【0020】
広告サーバ2の記憶部22、ECサーバ3の記憶部32は、記事サーバ1の記憶部12と同様に構成可能である。広告サーバ2の記憶部22は、記事と広告との対応付けや処理部21が実行するプログラムなどを記憶することができる。ECサーバ3の記憶部32は、EC情報や処理部31が実行するプログラムなどを記憶することができる。
【0021】
端末4の表示部43は、処理部41による処理結果をユーザに視認可能に表示する。表示部43は、LCDパネルなどのディスプレイデバイスにより構成可能である。
【0022】
次に、図2図3を参照して、記事サーバ1と広告サーバ2の機能ブロックを説明する。図2は、第1の実施形態にかかる記事サーバの機能ブロック図である。図2に示すように、記事サーバ1は、記事要求受付手段100と、記事表示情報作成手段110と、記事送信手段120とを有する。
【0023】
記事要求受付手段100は、端末4からの記事への要求を受け付ける。本明細書において、端末4から要求された記事のことを「元記事」という。記事要求受付手段100は、記憶部12に記憶された所定のプログラムを実行する処理部11が通信部10を制御することにより実施可能である。
【0024】
記事表示情報作成手段110は、記事要求受付手段100が端末4から要求を受け付けた元記事と、記事付帯情報とに基づいて、記事表示情報を作成する。元記事は、本文、タイトル、見出し、画像などの単位で構造化して構成される。記事付帯情報とは、記事サーバ1の記事の表示にあたり共通に用いられる情報であり、例えばCSS(Cascading Style Sheets)による画面デザインの定義や、最新記事・関連記事・広告、Javascript(登録商標)による記事を受信した端末4の動作の指定などがある。
【0025】
記事付帯情報は、記憶部12に記憶される。記事と記事付帯情報とに基づく記事情報の作成には、記事を構成するファイルへの記事付帯情報の内容の追加や、記事を構成するファイルに記載された情報に基づく端末4の要求に応じた別ファイルの記事付帯情報の送信といった態様が考えられる。記事表示情報作成手段110は、所定のプログラムを実行する処理部11により実施可能である。
【0026】
記事送信手段120は、端末4から要求された元記事を端末4に送信する。記事送信手段120は、所定のプログラムを実行する処理部11が通信部10を制御することにより実施可能である。
【0027】
図3は、第1の実施形態にかかる広告サーバの機能ブロック図である。図3に示すように、広告サーバ2は、広告配信手段200と、記事選択手段210と、記事リンク配信手段220とを有する。
【0028】
広告配信手段200は、記事に付加された記事付帯情報に基づく端末4からの要求に応じて、記事に関連づけられたEC情報へのリンクを含む広告を配信する。EC情報へのリンクには、EC情報のURL(Uniform Resource Locator)を用いることができる。記事とEC情報との関連づけは、記憶部22に記憶されていてもよいし、ネットワーク5を介して外部サーバに問い合わせるようにしてもよい。また、記事とEC情報の内容やアクセス状況などの属性に基づいて、記事ごとにEC情報を特定するようにしてもよい。広告配信手段200は、所定のプログラムを実行する処理部21が通信部20を制御することにより実施可能である。
【0029】
記事選択手段210は、EC情報に関連づけられた記事ごとに、EC情報が閲覧された割合である閲覧率に基づいて誘導価値を算出し、誘導価値の大きい記事を選択する。記事選択手段210は、誘導価値の大きい記事を選択するにあたり、閲覧率と、広告の配信による商取引が成約された割合である成約率とに基づいて誘導価値を算出してもよい。記事選択手段210は、所定のプログラムを実行する処理部21により実施可能である。
【0030】
誘導価値の算出について、詳細に説明する。前提として、Web広告掲載に関する各当事者の関係を説明する。まず、広告主(本実施形態ではECサーバ3の運営者に相当)が広告業者(本実施形態では広告サーバ2の運営者に相当)に広告の掲載を依頼する。広告業者はメディア業者(本実施形態では記事サーバ1の運営者に相当)に、記事への広告の掲載を依頼する。このとき、広告業者は広告主にて商取引が効率よく成約されるよう、記事と広告との関係を調整する。
【0031】
広告主から広告業者に支払う費用、および、広告業者からメディア業者に支払う費用は、記事に掲載された広告がクリックされてEC情報が閲覧された回数に応じて定められる場合が一般的である。広告主の立場では、EC情報の閲覧回数が維持され、ないし増加し、かつ広告費用と商取引成約数との関係、すなわち成約に係るコストが維持される限り、広告費用の計算ルールを変更しても不利益になることはない。
【0032】
図4は、第1の実施形態における広告の価値評価を説明する図である。図4(a)を参照すると、平均的な記事である記事Xと広告効果の大きい記事である記事αにはそれぞれ広告が含まれ、広告のクリックによりEC情報が表示される。EC情報では商取引の申し出がなされ、所定の操作により商取引が成約される。この例では、広告のクリックによってEC情報が表示されると、1回のクリックあたり100の費用が発生する(CPC(Cost Per Click)=100)とする。
【0033】
図4(a)の例では、記事Xは25,000回表示され、広告がその内250回クリックされる。よって、記事Xにおける広告クリック率(EC情報の閲覧率)CTRc(X)(Click Through Rate, commercial)は、以下のようにEC情報の表示回数を広告の表示回数で除することにより求められる。
CTRc(X)=250/25000=1%
【0034】
図4(a)の例では、記事Xに含まれる広告がクリックされることによりEC情報が250回表示され、そこから5件の成約に至る。よって、記事Xの成約率CVR(X)(Conversion Rate)は以下のように求められる。
CVR(X)=5/250=2%
【0035】
一方、記事αも25,000回表示され、広告がその内500回クリックされる。よって、記事αにおける広告クリック率CTRc(α)は以下のように求められる。
CTRc(α)=500/25000=2%
【0036】
また、記事αに含まれる広告がクリックされることによりEC情報が500回表示され、そこから15件の成約に至る。よって、記事αの成約率CVR(α)は以下のように求められる。
CVR(α)=15/500=3%
【0037】
このように、記事αは記事XよりもCVRが高い。広告主の視点からは、このような記事αは、記事Xよりも大きな広告効果を有している。すなわち、記事αの閲覧数が増えることで、全体としての商取引成約数の増加を見込むことができる。
【0038】
そこで、記事Xに記事αへの記事リンクを含めることを考える。図4(b)は、記事Xに記事αへの記事リンクを含めた状態を示している。25,000回表示される記事Xから、記事リンクのクリックによって記事αが5,000回表示される。よって、記事Xにおける記事クリック率CTRa(X)(Click Through Rate, article)は、以下のように記事αの表示回数を元記事である記事Xの表示回数で除することにより求められる。
CTRa(X)=5000/25000=20%
【0039】
記事Xの記事リンクのクリックにより表示された記事αからも、単に記事αが表示された場合と同様の割合で広告がクリックされ、表示されたEC情報にて商取引が成約されることが想定できる(CTRc(α)=2%、CVR(α)=3%)。
【0040】
広告主の立場では、成約に係るコストは以下のように把握される。
成約に係るコスト単価(平均CPA(Cost Per Action))=広告コスト総額/成約数
=(広告コスト総額/広告クリック総数)×(広告クリック総数/成約数)
=広告クリック単価(CPC)÷平均成約率(ACVR)
図4(a)の例では、
広告コスト総額=100×(500+250)=75000
成約数=15+5=20
であるので、
平均CPA=75000/20=3750
【0041】
CVRが他の記事よりも高い記事αの閲覧回数が増えると、ACVR(Average Conversion Rate)が上昇するため、平均CPAは低下する。仮に記事αの閲覧回数を増加させるためにコストをかけても、ある程度であればACVRの上昇によりカバーされ、CPAを維持可能である。このとき、広告主としては、従来と同程度の効果を有する広告をより多く購入するのと同値となる。
【0042】
図4(b)のように記事Xに記事リンクを含めて記事αに誘導することによって生まれる成約数(追加成約数)は、記事Xの表示回数に、記事Xから記事αに誘導される率であるCTRa(X)と、記事αからEC情報に誘導される率であるCTRc(α)とを乗じ、記事αから誘導されたEC情報の成約率CVR(α)を乗じて求めることができる。すなわち、
追加成約数=記事Xの表示回数×CTRa(X)×CTRc(α)×CVR(α)
=25000×20%×2%×3%=3
【0043】
また、この追加成約数を平均CPAで得ているとすると、広告に追加で発生する費用は、上記追加成約数に平均CPAを乗じて求められる。
追加成約コスト=3×3750=11250
ただし、記事αからの100クリック分の広告費は別にかかっているので、記事Xから記事αへの誘導価値総数は
誘導価値=11250−100×100=1250
となる。
【0044】
以上を整理して定式化しておくと、記事Xの表示回数に、記事Xから記事αに誘導される率であるCTRa(X)と、記事αからEC情報に誘導される率であるCTRc(α)とを乗じ、記事αから誘導されたEC情報の成約率CVR(α)とCPAの積から広告クリック単価CPCcの減じたものを乗じることで求められる。
誘導価値=記事Xの表示回数×CTRa(X)×CTRc(α)×(CVR(α)×CPA−CPCc)
=25000×20%×2%×(3%×3750−100)=1250
と求めることができる。
【0045】
また、記事Xの1回の表示あたりの誘導価値は、CTRa(X)×CTRc(α)×(CVR(α)×CPA−CPCc)
と求めることができる。記事選択手段210は、このように算出された誘導価値の大きい記事を選択するのである。
【0046】
なお、記事Xから記事αに誘導される率であるCTRa(X)は、記事Xから記事αへのリンクを設置して実際に誘導を実施する前には正確には不明である。その場合は、一般的に記事から別の記事に誘導した場合の平均誘導率ACTRや、これまで記事Xから別の記事に誘導した場合の平均誘導率ACTRa(X)で代用してもよい。また、記事Xから記事αの誘導1回表示あたりの誘導価値単価は、
誘導価値単価=1250÷5000=0.25 となる。
【0047】
このようにして誘導価値単価、すなわち誘導記事クリック単価CPCa(Cost Per Click, article)を求めることにより、記事Xに掲載される記事αへのリンクの価値を、同様に記事Xに掲載される一般的な広告と、同一の基準で比較することが可能となる。例えば、クリックあたりの価値が記事αへのCPCaよりも小さい広告よりも、記事αへのリンクを優先的に掲載するように調整することができる。
【0048】
記事選択手段210は、誘導価値以外の条件を併用して記事を選択してもよい。例えば、元記事との関連度が所定の閾値以上の記事の中から記事を選択すると、ユーザが記事リンク先の記事にも興味を持ってアクセスしやすくなることが期待できる。この他、ユーザごとのアクセス傾向が類似する記事を選択するようにしてもよい。また、記事選択手段210が選択する記事の数は1つに限らず複数であってもよい。所定の基準に合致することなどにより選択候補となる記事が記事リンクを表示する領域の数より多い場合は、誘導価値が大きい記事ほど確率が高くなるように選択を行うことができる。
【0049】
図3に戻り、記事リンク配信手段220は、記事選択手段210により選択された記事へのリンクである記事リンクを、ネットワーク5を介して端末4に配信する。記事リンクには、記事のURLを用いることができる。記事リンクの提供は、記事に付加された記事付帯情報に基づく端末4からの要求に応じて実行することができる。記事リンク配信手段220は、所定のプログラムを実行する処理部21が通信部20を制御することにより実施可能である。
【0050】
続いて、図5を参照して本実施形態の記事サーバ1と広告サーバ2が実行する処理の流れを説明する。図5は、第1の実施形態において端末に記事を送信するときの記事サーバと広告サーバの処理を示すフローチャートである。
【0051】
図5を参照すると、記事サーバ1は、記事への要求を端末4から受け付ける(ステップS11)。記事要求の受付は、記事要求受付手段100が行う。続いて記事サーバ1は、ステップS11にて端末4から要求を受け付けた記事と記事付帯情報とに基づいて記事表示情報を作成する(ステップS12)。記事表示情報の作成は、記事表示情報作成手段110が行う。
【0052】
記事サーバ1は、ステップS12で作成された記事表示情報を、端末4に送信する(ステップS13)。記事表示情報の送信は、記事送信手段120が行う。
【0053】
広告サーバ2は、ステップS13で送信された記事に付加された記事付帯情報に基づく端末4からの要求に応じて、記事に関連づけられたEC情報へのリンクを含む広告を配信する(ステップS21)。広告の配信は、広告配信手段200が行う。
【0054】
広告サーバ2は、EC情報に関連づけられた記事ごとに、広告の配信による商取引が成約された割合である成約率に基づいて誘導価値を算出し、誘導価値の大きい記事を選択する(ステップS22)。記事の選択は、記事選択手段210が行う。
【0055】
広告サーバ2は、ステップS22で選択された記事へのリンクである記事リンクを、ネットワーク5を介して端末4に配信する(ステップS23)。記事リンクの配信は、記事付帯情報に基づく端末4からの要求に応じて行うようにしてもよい。記事リンクの配信は、記事リンク配信手段220が行う。
【0056】
なお、このフローチャートでは、広告サーバ2から端末4への広告の配信を記事選択(ステップS22)および記事リンク配信(ステップS23)より前のステップS21で行っているが、このタイミング以外の実行も可能である。例えば、ステップS21で記事サーバ1からの広告要求を一旦受け付けておき、ステップS22で記事を選択した後でステップS23において記事リンクとともに配信するようにしてもよいし、記事選択および記事リンク配信の後に広告を配信してもよい。
【0057】
ここで、記事サーバ1から送信された記事に基づき端末4の表示部43に表示される画面を図面で説明する。図6は、第1の実施形態において記事サーバから送信された記事に基づき端末の表示部に表示される画面の例である。図6を参照すると、画面には、文章400と画像401が表示されている。画面には、文章400と画像401とは必ずしも両方が表示されていなくてもよい。
【0058】
図6において、画面には、記事内容に関連性のある記事へのリンクや広告を表示する記事広告欄402が画面下方に設けられている。記事広告欄402のそれぞれの領域には、記事リンクおよび広告が表示されている。この例では、記事広告欄402の上側領域には記事リンクが表示され、下側領域には広告が表示されている。記事広告欄402に表示された広告を指定してユーザがクリックやタップなどの所定の操作を行うと、端末4は広告に含まれるリンクに従って、ECサーバ3におけるEC情報にアクセスする。記事広告欄402に表示された記事リンクを指定してユーザがクリックやタップなどの所定の操作を行うと、端末4は記事リンクに従って、記事サーバ1における所定の記事にアクセスする。
【0059】
以上、電子的商取引の申し出を行うECサーバ3の運営者が広告主である例を第1の実施形態として説明してきた。第1の実施形態では、広告の閲覧により達成すべき事象(コンバージェント)はEC情報に基づく商取引の成約であって、明確に測定可能である。しかし、測定できない事象の達成を目的とする広告もある。例えば、警察の交通安全のお知らせのような広告の場合、真のコンバージェントは「お知らせを理解してもらうこと」であり、測定はできない。このような場合、広告により誘導されるWebページの露出(表示)自体に基づいて誘導価値を算出する必要がある。
【0060】
このような、商取引の成約を目的としない広告を記事サーバの記事に掲載する広告配信システムの例を、第2の実施形態として説明する。第2の実施形態における広告配信システムの概略構成、記事サーバ・広告サーバの機能ブロックは、第1の実施形態のものと同様であるので、説明を省略する。なお、上述のように第2の実施形態におけるECサーバ3は、EC情報として必ずしも電子的な商取引の申し出を提供するものではないが、第1の実施形態と同様に「ECサーバ」「EC情報」の名称を用いて説明する。
【0061】
図7は、第2の実施形態における広告の価値評価を説明する図である。図7(a)を参照すると、3つの記事α、β、Xにはそれぞれ広告が含まれ、広告のクリックによりEC情報が表示される。
【0062】
図7(a)の例では、記事αは200回表示され、そのうち広告が10回クリックされてEC情報が表示される。よって、記事αにおける広告クリック率(EC情報の閲覧率)CTRc(α)は5%である。記事βは300回表示され、そのうち広告が12回クリックされてEC情報が表示され、記事βにおけるCTRc(β)は4%である。記事Xは10,000回表示され、そのうち広告が20回クリックされてEC情報が表示され、記事XにおけるCTRc(X)は0.2%である。
【0063】
次に、図7(b)を参照して、記事Xに記事αまたは記事βへのリンクを含める場合の、記事αと記事βそれぞれの誘導価値を検討する。ここで、記事Xの記事リンクのクリックにより記事が表示される率であるCTRaが、記事αについてCTRa(α)=20%、記事βについてCTRa(β)=30%であるとする。
【0064】
記事αの表示回数は、記事Xの記事リンクからの誘導により、2,000回増加する。
記事Xの表示回数×CTRa(α)=10000×20%=2000
同様に、記事βの表示回数は、記事Xの記事リンクからの誘導により、3,000回増加する。
記事Xの表示回数×CTRa(β)=10000×30%=3000
【0065】
このとき、記事αへの記事リンクの追加によって増加した記事αの表示により、EC情報へのアクセスは100回分増加する。
記事αの増加表示回数×CTRc(α)=2000×5%=100
同様に、記事βへの記事リンクの追加によって増加した記事βの表示により、EC情報へのアクセスは120回分増加する。
記事βの増加表示回数×CTRc(β)=3000×4%=120
【0066】
このような記事リンクを設けたときの、記事α・β・X全体としてEC情報に誘導する率であるCTRcは、以下のように求めることができる。
(記事αへの記事リンクを追加したとき)
記事表示回数=200+300+10000+2000=12500
EC情報表示回数=10+12+20+100=142
CTRc=142/12500=1.1%
(記事βへの記事リンクを追加したとき)
記事表示回数=200+300+10000+3000=13500
EC情報表示回数=10+12+20+120=162
CTRc=162/13500=1.2%
【0067】
すなわち、記事リンク設置個所が1つという制約下であれば、より誘導価値の大きい記事βへのリンクを貼るべきということが判断できる。記事選択手段210は、このように算出された誘導価値の大きい記事を選択するのである。
【0068】
ここで、CTRaは実際に記事リンクを設置してみないと厳密な値が分からない。上記の説明では、記事表示回数の比率から想定CTRaを求めている。すなわち、記事αの表示回数が200回であり、記事βの表示回数が300回であることから、記事リンクからも同様の比率(2:3)で表示されるものとしている。このように求めたCTRaに従って誘導価値を算出し、より誘導価値が高い記事βへの誘導が高確率に表示されるようにすると、広告誘導数の最大化と、実際のCTRaの測定を同時に行うことができる。
【0069】
特に、記事リンクを設置した初期段階では誘導価値比率に応じた確率で表示し、記事表示回数が増えてCTRaの尤度が高くなるに従い、高誘導価値側により100%に近い確率を割り当てるように表示確率を変動させると尚よい。
【0070】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 記事サーバ
2 広告サーバ
3 ECサーバ
4 端末
5 ネットワーク
100 記事要求受付手段
110 記事表示情報作成手段
120 記事送信手段
200 広告配信手段
210 記事選択手段
220 記事リンク配信手段
400 文章
401 画像
402 記事広告欄
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7