(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に、尿量推定装置100のブロック図を示す。
図2に、尿量推定装置100の使用状態の説明図を示す。
図3は、尿量推定装置100の斜視図を示す。
【0015】
尿量推定装置100は、対象者の膀胱に溜まった尿量を推定するものである。例えば、対象者は、老人若しくは身体障害者等の要介護者、又は要介護者ではないものの体が不自由でトイレに行くまでに時間を要する人等である。ただし、対象者は、これに限られるものではない。尿量推定装置100は、超音波センサ1と、超音波センサ1を制御する装置本体2とを備えている。尿量推定装置100は、
図2に示すように、対象者に装着される。少なくとも超音波センサ1が、対象者の腹部の皮膚上であって、膀胱に対応する部分(例えば、下腹部)に配置される。超音波センサ1と装置本体2とは、筐体20に収容され、一体的に構成されている。
【0016】
筐体20は、
図3に示すように、概略長方形の板状に形成されている。筐体20のうち対象者の腹部に接触する面(以下、「接触面」という)21には、突出部22が設けられており、突出部22内に超音波センサ1が内蔵されている。接触面21において、突起部22は、幅方向略中央で且つ上下方向の比較的下方(上下方向の中央よりも下方)に配置されている。突起部22の先端には、超音波の腹部への透過性を向上させるためのゲルパッド23が設けられている。より詳しくは、突起部22の先端には凹部24が形成され、凹部24にゲルパッド23が設けられている。突起部22は、ゲルパッド23を介して対象者の腹部に接触することになる。
【0017】
尿量推定装置100は、接触面21を対象者の腹部に対向させ且つ突起部22を皮膚に接触させた状態で、尿量推定装置100の上からベルトを腹部に巻き付けることによって、対象者に装着される。あるいは、尿量推定装置100は、接触面21を対象者の腹部に対向させ且つ突起部22を皮膚に接触させた状態で、尿量推定装置100の上から粘着テープを腹部に貼り付けることによって、対象者に装着される。
【0018】
超音波センサ1は、超音波の送受信を行う。具体的には、超音波センサ1は、圧電素子で構成されたトランスデューサを有している。超音波センサ1は、駆動電圧に応じた振動を行って超音波を発生させる一方、超音波を受信すると、その振動に応じた電気信号を発生させる。超音波センサ1は、センサの一例である。
【0019】
装置本体2は、
図1に示すように、超音波センサ1へ駆動電圧を出力する送信部3と、超音波センサ1から電気信号を受信する受信部4と、尿量推定装置100の全体的な制御を行い、尿量を推定する制御部5と、メモリ11と、外部に種々の情報を報知するための報知部12と、実際に排尿があったことの入力を行うための入力部13と、外部との通信を行う通信部14とを有している。
【0020】
送信部3は、超音波センサ1に駆動電圧を供給する。送信部3は、パルス発生器31と増幅部32とを有している。パルス発生器31は、所定のパルス幅及び電圧値のパルス信号を発生させる。パルス発生器31は、パルス幅、及び、周波数を変更可能に構成されていてもよい。増幅部32は、パルス発生器31からパルス信号を増幅し、駆動電圧として超音波センサ1へ出力する。
【0021】
受信部4は、超音波センサ1からの電気信号を受信する。受信部4は、増幅部41と、A/D変換部42とを有している。増幅部41は、超音波センサ1からの受信信号を増幅して、A/D変換部42へ出力する。A/D変換部42は、増幅部41からの受信信号をA/D変換して、制御部5へ出力する。
【0022】
報知部12は、例えば、バイブレータである。バイブレータが振動することによって、対象者に様々な情報(例えば、排尿タイミングの到来)を報知する。
【0023】
入力部13は、ユーザが尿量推定装置100に様々な入力(例えば、実際の排尿があった旨の入力)を行うための操作部である。例えば、入力部13は、押しボタンである。
【0024】
通信部14は、外部の通信端末と通信を行う。尿量推定装置100には、通信を行う外部の通信端末が登録可能であり、該通信端末の情報がメモリ11に記憶されている。つまり、ユーザは、通信端末200を予め尿量推定装置100に登録しておく。そうすることで、尿量推定装置100と通信端末200間の通信が可能となる。例えば、介護者の所持する通信端末200を尿量推定装置100に登録しておく。また、対象者が自力でトイレへ行ける場合には、対象者の通信端末200を登録しておく。通信端末200は、1台に限らず、複数台(例えば、介護者の通信端末と要介護者の通信端末)を登録可能としてもよい。
【0025】
制御部5は、1又は複数のプロセッサを有している。制御部5は、送信部3を制御して、駆動電圧を超音波センサ1へ出力させると共に、受信部4からの受信信号に基づいて尿量を推定する。制御部5は、受信部4からの受信信号に信号処理を施す信号処理部51と、送信部3を制御すると共に、尿量を推定する推定部52とを有している。
【0026】
信号処理部51は、受信部4から入力された受信信号に平均化処理等の信号処理を施し、処理後の信号を推定部52へ出力する。
【0027】
推定部52は、送信部3のパルス発生器31へパルス信号の生成指令を出力すると共に、信号処理部51から入力された受信信号に基づいて尿量を推定する。尚、送信部3の制御は、推定部52とは別の部分が行ってもよい。
【0028】
以下、推定部52の処理を、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0029】
推定部52は、まず、超音波の送信指令を出力する(ステップS1)。具体的には、推定部52は、送信部3へパルス信号の生成指令を出力する。この生成指令が、尿量の推定処理のトリガとなる。送信部3は、生成指令に基づく駆動電圧を超音波センサ1に供給する。超音波センサ1は、駆動電圧に基づく超音波を送信する。推定部52は、生成指令を所定の周期で出力する。
【0030】
続いて、超音波センサ1が超音波を受信する(即ち、信号処理部51に受信信号が入力される)と(ステップS2)、推定部52は、該受信信号に基づいて小腸からの反射波及び膀胱からの反射波を検出する(ステップS3)。そして、推定部52は、小腸からの反射波及び膀胱からの反射波に基づいて膀胱の尿量を推定する(ステップS4)。
【0031】
ここで、小腸からの反射波及び膀胱からの反射波に基づく膀胱の尿量の推定について
図5〜10を参照しながら説明する。
図5に、尿量が少ない場合の人体の下腹部の模式的な断面図を示す。
図6に、
図5に対応し、尿量が少ない場合の受信信号の波形の一例を示す。
図7に、尿量が中程度の場合の人体の下腹部の模式的な断面図を示す。
図8に、
図7に対応し、尿量が中程度の場合の受信信号の波形の一例を示す。
図9に、尿量が多い場合の人体の下腹部の模式的な断面図を示す。
図10に、
図9に対応し、尿量が多い場合の受信信号の波形の一例を示す。
図6,8,10の受信信号は、信号処理部51において信号処理が施されている。
【0032】
図5に示すように、腹部の表面から背中に向かって、皮下脂肪61、筋肉62、脂肪63、膀胱64、精嚢65若しくは前立腺66(男性の場合)又は膣(女性の場合)、直腸67、背骨(仙骨)68等が順に並んでいる。膀胱64の上には、小腸69が位置しており、膀胱64の前側の斜め下には、恥骨610が位置している。
図5,7,9からわかるように、膀胱64の尿量が増加すると、膀胱64は上方に膨らむ。このとき、膀胱64は、小腸69を上方に押し上げる。
【0033】
図6からわかるように、膀胱の尿量が少ない場合には、反射波W1及び反射波W2が観測される。超音波の送信直後には、ノイズが観測される。反射波W1は、ノイズの直後に観測され、腹部の皮下脂肪61、筋肉62及び脂肪63等からの反射波である。
【0034】
反射波W2は、小腸69からの反射波である。小腸69は、常に蠕動運動をしているため、反射波W2は、明確なピークとしては現れず、ノイズに似た信号として現れる。
図5に示すように、膀胱64の尿量が少ない場合には、膀胱64は小さく萎んでおり、膀胱64の上方に位置する小腸69が下腹部の比較的下方まで移動している。このときの小腸69は、下腹部に装着された尿量推定装置100から出射される超音波のちょうど伝播経路(
図5,7,9の破線)上に位置する。したがって、膀胱の尿量が少ない場合には、小腸69からの反射波W2が観測される。
【0035】
尚、小腸69の内部には、ガスが混在しているため、超音波は小腸69で減衰し、体内の奥の方まで届き難くなる。そのため、
図6における受信信号においては、反射波W2の後には、目立った反射波が観測されていない。
【0036】
膀胱64の尿量が増加すると、
図7に示すように、膀胱64が上方へ膨らみ、超音波の伝播経路上に位置する小腸69が少しずつ上方へ移動する。膀胱64の尿量が中程度の場合には、超音波の伝播経路上に、小腸69及び膀胱64が位置するようになる。
【0037】
そのため、尿量が中程度の場合には、
図8に示すように、反射波W1及び反射波W2に加え、反射波W2の後に反射波W3が観測される。反射波W3は、膀胱64の後壁643からの反射波である。詳しくは、伝播経路上の小腸69が減少することにより、超音波が体内の奥の方まで到達するようになり、膀胱64の後壁643からの反射波W3が観測されるようになる。また、伝播経路上の小腸69が減少するため、小腸69からの反射波W2の振幅は、尿量が少ない場合(
図6)と比較すると小さくなる。
【0038】
さらに、膀胱64の尿量が増加すると、
図9に示すように、膀胱64がさらに上方へ膨らみ、超音波の伝播経路上に位置する小腸69がほとんど存在しないようになる。それにより、超音波は体内のより奥の方まで到達するようになる。
【0039】
そのため、尿量が多い場合には、
図10に示すように、小腸69からの反射波W2はほとんど観測されないようになる。また、膀胱64の後壁643からの反射波W3の振幅が大きくなる。
【0040】
このように、小腸69からの反射波W2の有無、小腸69からの反射波W2の大きさ、膀胱64の後壁643からの反射波W3の有無、及び膀胱64の後壁643からの反射波W3の大きさの少なくとも1つに基づいて尿量を推定することができる。
【0041】
一例として、推定部52は、小腸69からの反射波W2の有無及び膀胱64の後壁643からの反射波W3の有無に基づいて尿量を推定する。反射波W2及び反射波W3が返ってくると想定される受信時間帯は概ねわかっているので、推定部52は、反射波W2及び反射波W3のそれぞれの受信時間帯において反射波が観測されるか否かを判定する。推定部52は、反射波W2の有無及び反射波W3の有無の組み合わせにより、尿量を「少ない」、「中程度」、「多い」の3段階に推定する。具体的には、反射波W2が観測され且つ反射波W3が観測されていない場合には、推定部52は、尿量が「少ない」と推定する。反射波W2及び反射波W3が観測されている場合には、推定部52は、尿量が「中程度」であると推定する。反射波W2が観測されず且つ反射波W3が観測されている場合には、推定部52は、尿量が「多い」と推定する。尿量が「少ない」状態が第1状態に相当し、尿量が「中程度」の状態が第2状態に相当し、尿量が「多い」状態が第3状態に相当する。尚、反射波W2の有無は、反射波W2の振幅が完全に零か否かで判定するのではなく、反射波W2の振幅が所定の閾値以上の場合に反射波W2が有りと判定され、反射波W2の振幅が所定の閾値未満の場合に反射波W2が無いと判定されてもよい。反射波W3についても同様である。
【0042】
続いて、推定部52は、推定した尿量に基づいて排尿タイミングを判定する(ステップS5)。具体的には、尿量が「少ない」の場合には、推定部52は、排尿タイミングは未だであると判定すると共に、待機時間として所定の第1待機時間を設定する(ステップS6)。そして、推定部52は、前回の超音波の送信から第1待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。第1待機時間が経過していれば、推定部52は、ステップS1へ戻り、超音波の送信を行う。一方、第1待機時間が経過していない場合は、推定部52は、第1待機時間が経過するのを待機し、第1待機時間が経過後にステップS1へ戻る。このように、推定部52は、尿量が「少ない」の場合に超音波の送信を第1待機時間の間隔で行い、排尿タイミングの判定を定期的に行う。つまり、第1待機時間は、尿量が「少ない」の場合に尿量の推定を行う繰り返し周期に相当する。
【0043】
尿量が「中程度」の場合には、推定部52は、排尿タイミングは未だであると判定すると共に、第1待機時間よりも短い第2待機時間を待機時間として設定する(ステップS7)。そして、推定部52は、前回の超音波の送信から第2待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。第2待機時間が経過していれば、推定部52は、ステップS1へ戻り、超音波の送信を行う。一方、第2待機時間が経過していない場合は、推定部52は、第2待機時間が経過するのを待機し、第2待機時間が経過後にステップS1へ戻る。このように、推定部52は、尿量が「中程度」の場合には超音波の送信を第2待機時間の間隔で行い、排尿タイミングの判定を定期的に行う。つまり、第2待機時間は、尿量が「中程度」の場合に尿量の推定を行う繰り返し周期に相当する。
【0044】
尿量が「多い」の場合には、推定部52は、排尿タイミングが到来したと判定し、排尿タイミングを報知する(ステップS9)。具体的には、推定部52は、報知部12を作動させると共に、登録された通信端末200に通信部14を介して排尿タイミングの到来を報知する。これにより、対象者は、そのうち尿意をもよおすことが事前に知らされるので、トイレへ行く準備を行うことができる。
【0045】
また、通信端末200は、尿量推定装置100専用のアプリをダウンロードしておくことによって、尿量推定装置100との通信及び尿量推定装置100の操作が可能となる。通信端末200は、尿量推定装置100からの排尿タイミングの到来の信号を受信すると、排尿タイミングの到来をユーザに通知をディスプレイに表示する等して、通信端末200の所持者に排尿タイミングの到来を報知する。これにより、通信端末200の所持者に排尿タイミングの到来を知らせ、対象者のトイレへの誘導を促すことができる。
【0046】
このように、尿量が少ない場合には、推定部52は、第1待機時間の間隔で尿量の推定を繰り返す。尿量が増加して、尿量が中程度になると、推定部52は、第1待機時間よりも短い第2待機時間の間隔で尿量の推定を繰り返す。つまり、推定部52は、より短い周期で尿量の推定を繰り返す。さらに尿量が増加して、尿量が多くなると、推定部52は、排尿タイミングが到来したと判定し、対象者に排尿タイミングの到来を報知する。尿量の増加に伴って尿量の推定頻度を増加させることによって、排尿タイミングの判定精度を向上させることができる。
【0047】
また、推定部52は、排尿タイミングの判定(パルス信号の生成指令から判定までの一連の処理)を定期的に実行する際に、その都度、尿量をメモリ11に記録しておく。つまり、メモリ11には、尿量の時系列的変化が記録されている。
【0048】
その後、推定部52は、排尿タイミングの到来を報知した後、実際の排尿があった旨の報告を待機する(ステップS10)。実際に排尿が終了すると、対象者又は介護者等の第三者に入力部13を操作してもらう。さらに、通信端末200からも、実際の排尿があった旨を尿量推定装置100へ入力することができる。通信端末200の所持者は、実際の排尿が終了したときに、通信端末200を操作して、実際の排尿があった旨を尿量推定装置100へ送信する。
【0049】
推定部52は、入力部13からの信号又は通信端末200からの実際の排尿があった旨の報告が入力されると、実際の排尿が有ったと判定して、排尿タイミングの到来を報知する時期を修正する(ステップS11)。例えば、推定部52は、排尿タイミングの到来の報知から実際の排尿の入力までの時間に基づいて、報知時期が適切か否かを判定する。推定部52は、排尿タイミングの到来の報知から実際の排尿の入力までの時間と、排尿タイミングとして想定している排尿までの時間との差が所定範囲内であれば、報知時期をそのままとする。このような場合には、推定部52は、適切な時期に排尿タイミングを報知しているからである。一方、排尿タイミングの到来の報知から実際の排尿の入力までの時間が想定している排尿までの時間よりも所定範囲を超えて長い場合には、推定部52は、報知時期を遅らせる。具体的には、推定部52は、尿量が「多い」と判定してから少し待機し、その後、排尿タイミングの到来を報知する。このときの待機時間によって報知時期が調整される。また、排尿タイミングの到来の報知から実際の排尿の入力までの時間が想定している排尿までの時間よりも所定範囲を超えて短い場合には、推定部52は、報知時期を早める。具体的には、推定部52は、尿量が「多い」とより早く判定するように、反射波W2の有無を判定する閾値を引き上げる。つまり、反射波W2が観測されないとより早く判定されるようになり、結果として、報知時期が早められる。
【0050】
推定部52は、ステップS11において修正した待機時間及び閾値をメモリ11に上書きする。膀胱の貯留量には個人差がある。実際の排尿が有った際には、フィードバックを受けて報知時期を修正することによって、対象者に応じた適切な時期に排尿タイミングの到来を報知することができる。
【0051】
推定部52は、判定閾値の修正が完了すると、ステップS6へ進む。つまり、排尿タイミングが到来した後は、推定部52は、待機時間を、尿量が「少ない」場合に相当する第1待機時間に再び設定し、超音波の送信を第1待機時間の間隔で行い、排尿タイミングの判定を定期的に行う。
【0052】
以上のように、尿量推定装置100は、体内に超音波を送信し、該超音波の反射波を検出する超音波センサ1と、超音波センサ1により検出される膀胱からの反射波W3に基づいて膀胱の尿量を推定する推定部52とを備える。換言すると、尿量推定装置100の尿量推定方法は、体内に超音波を送信する工程と、体内からの該超音波の反射波を検出する工程と、検出される膀胱からの反射波に基づいて膀胱の尿量を推定する工程とを含む。
【0053】
膀胱の形状及び/又は大きさは膀胱の尿量に応じて変化するので、膀胱からの反射波W3も膀胱の尿量に応じて変化する。そこで、推定部52は、膀胱からの反射波W3に基づいて膀胱の尿量を推定する。これにより、推定部52は、膀胱の尿量を非侵襲的に推定することができる。
【0054】
具体的には、推定部52は、超音波センサ1により膀胱からの反射波W3が検出されない場合には、膀胱の尿量が少ないと推定する一方、超音波センサ1により膀胱からの反射波W3が検出される場合には、膀胱の尿量が多いと推定する。
【0055】
膀胱は、尿量が多くなるほど大きくなる。つまり、尿量が少ない場合には、膀胱は小さいので、体内に超音波を送信しても、膀胱からの反射波W3が返ってこない場合がある。一方、尿量が多くなると、膀胱は大きくなるので、体内に超音波を送信したときに膀胱からの反射波W3が返ってきやすくなる。そのため、推定部52は、膀胱からの反射波W3が検出されない場合には膀胱の尿量が少ないと推定する一方、膀胱からの反射波W3が検出される場合には膀胱の尿量が多いと推定する。このように、推定部52は、膀胱からの反射波W3の有無に基づいて尿量を推定する。
【0056】
また、尿量推定装置100は、体内に超音波を送信し、該超音波の反射波を検出する超音波センサ1と、超音波センサ1により検出される小腸からの反射波W2に基づいて膀胱の尿量を推定する推定部52とを備える。換言すると、尿量推定装置100の尿量推定方法は、体内に超音波を送信する工程と、体内からの該超音波の反射波を検出する工程と、検出される小腸からの反射波に基づいて膀胱の尿量を推定する工程とを含む。
【0057】
前述の如く、膀胱の形状及び/又は大きさは膀胱の尿量に応じて変化する。膀胱の上には小腸が位置しているので、小腸の位置も膀胱の尿量に応じて変化する。つまり、小腸からの反射波W2も膀胱の尿量に応じて変化する。そこで、推定部52は、小腸からの反射波W2に基づいて膀胱の尿量を推定する。これにより、推定部52は、膀胱の尿量を非侵襲的に推定することができる。
【0058】
具体的には、推定部52は、超音波センサ1により小腸からの反射波W2が検出される場合には、膀胱の尿量が少ないと推定する一方、超音波センサ1により小腸からの反射波W2が検出されない場合には、膀胱の尿量が多いと推定する。
【0059】
膀胱は、尿量が多くなるほど、上方に膨らんでいく。つまり、尿量が少ない場合には、膀胱は小さく萎んで、下腹部の下の方に位置する。そのため、小腸も、膀胱に合わせて、下腹部の比較的下方に位置する。一方、尿量が多い場合には、膀胱が上方に膨らみ、小腸も下腹部から上方へ移動していく。そのため、超音波センサ1を下腹部に装着している場合には、尿量が少ないと、小腸からの反射波W2が返ってきやすく、尿量が多いと、小腸からの反射波W2が返ってきにくい。そのため、推定部52は、小腸からの反射波W2が検出される場合には膀胱の尿量が少ないと推定する一方、小腸からの反射波W2が検出されない場合には膀胱の尿量が多いと推定する。このように、推定部52は、小腸からの反射波W2の有無に基づいて尿量を推定する。
【0060】
さらに、推定部52は、超音波センサ1により検出される膀胱からの反射波W3と超音波センサ1により検出される小腸からの反射波W2との両方に基づいて膀胱の尿量を推定する。
【0061】
つまり、前述の如く、膀胱からの反射波W3及び小腸からの反射波W2は、それぞれ膀胱の尿量に応じて変化する。また、膀胱からの反射波W3及び小腸からの反射波W2は、それぞれ膀胱の尿量に対して異なる挙動を示す。そこで、推定部52は、膀胱からの反射波W3及び小腸からの反射波W2の両方を考慮して膀胱の尿量を推定する。これにより、推定部52は、膀胱の尿量をより精度良く推定することができる。
【0062】
具体的には、推定部52は、超音波センサ1により膀胱からの反射波W3が検出されず且つ超音波センサ1により小腸からの反射波W2が検出される場合には、膀胱の尿量が少ない第1状態と推定し、超音波センサ1により膀胱からの反射波W3が検出され且つ超音波センサ1により小腸からの反射波W2が検出される場合には、膀胱の尿量が第1状態よりも多い第2状態と推定し、超音波センサ1により膀胱からの反射波W3が検出され且つ超音波センサ1により小腸からの反射波W2が検出されない場合には、膀胱の尿量が第2状態よりも多い第3状態と推定する。
【0063】
この構成によれば、膀胱からの反射波W3と小腸からの反射波W2との組み合わせで膀胱の尿量が推定される。そのため、膀胱からの反射波W3だけで膀胱の尿量を推定する場合や小腸からの反射波W2だけで膀胱の尿量を推定する場合と比較して、膀胱の尿量を精度良く推定することができる。
【0064】
推定部52は、推定される尿量が多い場合には、推定される尿量が少ない場合に比べて、超音波センサ1による反射波の検出頻度を増加させる。
【0065】
尿量が少ないときには排尿タイミングの検出の必要性が小さいので、推定部52は、検出頻度を低下させる。これにより、消費電力を抑制することができる。一方、尿量が多くなると、排尿タイミングの検出の必要性も大きくなるので、推定部52は、検出頻度を増加させる。これにより、排尿タイミングの到来を漏れなく検出することができる。
【0066】
具体的には、推定部52は、第1状態と推定したときには、所定の第1待機時間の間隔で超音波センサ1による反射波の検出を行う一方、第2状態と推定したときには、第1待機時間よりも短い第2待機時間の間隔で超音波センサ1による反射波の検出を行う。
【0067】
この構成によれば、推定部52は、検出頻度を尿量に応じて2段階で切り替える。詳しくは、尿量が少ない第1状態のときには、第1待機時間の間隔で尿量の推定が行われ、尿量が中程度の第2状態のときには、第1待機時間よりも短い第2待機時間の間隔で尿量の推定が行われる。
【0068】
また、推定部52は、推定した尿量に基づいて排尿タイミングを判定する。すなわち、尿量推定方法は、推定した尿量に基づいて排尿タイミングを判定する工程をさらに含む。例えば、推定部52は、尿量が多い第3状態であると推定すると、排尿タイミングが到来したと判定する。
【0069】
また、尿量推定装置100は、排尿タイミングの到来を報知する報知部12をさらに備え、推定部52は、排尿タイミングが到来したと判定したときに報知部12を作動させる。
【0070】
この構成によれば、推定部52により排尿タイミングの到来が判定された場合に、報知部12がその旨を外部に報知する。これにより、超音波センサ1を装着している対象者又はそれ以外の第三者が排尿タイミングを知ることができる。例えば、体が不自由でトイレに行くまでに時間を要する人が対象者である場合には、対象者が尿意を感じる前であっても排尿の予告を行うことができる。これにより、対象者に早めにトイレへ行く準備を促すことができる。また、要介護者が対象者である場合にも、要介護者が尿意を感じる前であっても排尿の予告を行うことができる。これにより、介護者は、余裕を持って、要介護者をトイレへ案内することができる。
【0071】
さらに、推定部52は、排尿タイミングの到来を報知した後に実際の排尿のフィードバックを受け付け、排尿タイミングの到来の報知時期を修正する。
【0072】
この構成によれば、推定部52は、尿量に基づいて排尿タイミングを判定する。ところが、膀胱の貯留量は個人差があるため、排尿タイミングが到来したと判定するための尿量も個人差がある。推定部52は、排尿タイミングの到来を報知した後に実際の排尿のフィードバックを受け付けて、排尿タイミングの到来の報知時期を修正する。これにより、報知時期が対象者に応じて修正されていく。その結果、排尿タイミングの到来をより適切な時期に報知することができる。
【0073】
具体的には、推定部52は、実際の排尿があった旨の入力を受け付けるように構成されており、排尿タイミングの到来を報知してから実際の排尿があった旨の入力を受けるまでの時間に基づいて報知時期を修正する。
【0074】
これにより、実際の排尿に基づいて報知時期を修正することができる。
【0075】
また、超音波センサ1は、前述の突出部22に設けられているので、対象者の皮膚(体表)との密着性が向上し、超音波の人体への入射が促進される。これにより、小腸及び膀胱の検出能力が高められる。
【0076】
さらに、突起部22を接触面21の比較的下方に配置することによって、尿量推定装置100の装着時に対象者に与える違和感を低減することができる。つまり、小腸及び膀胱を検出するためには、下腹部の比較的下方の位置から超音波を出射することが好ましい。しかし、尿量推定装置100の装着位置が下腹部の下方になり過ぎると、対象者に違和感を与えてしまう。それに対し、突起部22を接触面21の比較的下方に配置することによって、突起部22を下腹部の下方に配置した場合であっても、尿量推定装置100を、全体として、できる限り上方に配置することができる。超音波センサ1は、突起部22に内蔵されているので、対象者への違和感を低減しつつ、下腹部の比較的下方の位置から超音波を出射することができる。
【0077】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0078】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0079】
尿量推定装置100は、超音波を送信し(ステップS1)、超音波を受信すると(ステップS2)、小腸及び膀胱からの反射波の検出を行っている(ステップS3)。このとき、尿量推定装置100は、小腸及び膀胱からの反射波の検出を行う前に、超音波センサ1の装着位置の適否の判定及び/又は膀胱64の検出が可能か否かの判定を行うようにしてもよい。その場合のフローチャートを
図11に示す。
【0080】
図11に示すフローチャートでは、推定部52は、ステップS2において超音波を受信した後、ステップS12において、超音波センサ1の装着位置の適否を判定する。
【0081】
詳しくは、推定部52は、受信信号におけるノイズの直後の反射波W1に基づいて、超音波センサ1の装着位置が適切か否かを判定する。
図12に、反射波W1を詳細に分析できるように信号処理した受信信号を示す。
図13は、
図12と同様の信号処理をした受信信号であり、超音波センサ1の装着位置が
図12の位置よりも高い位置となっている。
【0082】
超音波は音響インピーダンスの異なる媒体間の境界において反射するので、超音波センサ1から送信された超音波は、皮下脂肪61、筋肉62及び脂肪63の表面においても反射する。反射波W1を詳しく解析すると、反射波W1には、皮下脂肪61からの反射波w11と、筋肉62からの反射波w12と、脂肪63からの反射波w13とが含まれている。そして、
図12,13を比較すると、反射波w11〜w13のそれぞれが受信される時間が変化している。
図5からわかるように、皮下脂肪61、筋肉62及び脂肪63の厚みは、上下の位置に応じて変化する。反射波w11〜w13の受信時間に基づいて、皮下脂肪61、筋肉62及び脂肪63の厚みを推定することができ、ひいては、超音波センサ1の装着位置を推定することができる。
【0083】
超音波センサ1の装着位置が上過ぎると、尿量が増えた場合であっても、膀胱64の後壁643を検出できない可能性がある。一方、超音波センサ1の装着位置が下過ぎると、尿量が少ない場合にも後壁643を検出してしまう可能性や、超音波センサ1から送信された超音波が恥骨610で反射してしまう可能性がある。
【0084】
そこで、推定部52は、反射波w11〜w13に基づいて皮下脂肪61、筋肉62及び脂肪63の各厚み又は各割合を推定し、それに基づいて超音波センサ1の装着位置の適否を判定する。適切な装着位置における皮下脂肪61、筋肉62及び脂肪63の各厚み又は各割合が、予め求められ、メモリ11に記憶されている。推定部52は、反射波w11〜w13に基づいて推定した皮下脂肪61、筋肉62及び脂肪63の各厚み又は各割合をメモリ11に記憶された厚み又は割合と照らし合わせることによって、前記判定を行う。また、推定部52は、恥骨610からの反射波の有無によって、超音波センサ1の装着位置が下過ぎることを判定してもよい。
【0085】
超音波センサ1の装着位置が適切な場合には、推定部52は次のステップに進む一方、超音波センサ1の装着位置が不適切な場合には、推定部52は、報知部12を介して対象者に警告を行い(ステップS13)、超音波センサ1の装着位置の修正を促す。
【0086】
尚、皮下脂肪61、筋肉62及び脂肪63の各厚み又は各割合は個人差が大きいので、超音波センサ1の装着位置が不適切と判定された場合であっても、推定部52は、その旨を対象者に報知する程度に留めて、次のステップに進んでもよい。
【0087】
また、超音波センサ1の装着位置の適否は、実際に尿量が少ないとき及び多いときの反射波の状況に基づいて判定してもよい。例えば、排尿直後の尿量が少ないときに、小腸からの反射波W2が観測され且つ膀胱からの反射波W3が観測されないかを確認することによって超音波センサ1の装着位置が適切か否かを判定することができる。それに加えて、尿意を感じているとき、即ち、尿量が多きときに、小腸からの反射波W2が観測されず且つ膀胱からの反射波W3が観測されるかを確認することによって超音波センサ1の装着位置が適切か否かを判定することができる。このように実際に尿量が少ないとき及び多きときに適切な反射波が観測されているか否かを確認することによっても、超音波センサ1の装着位置の適否を判定することができる。
【0088】
また、センサは、超音波センサ1に限られるものではない。超音波センサ以外であっても、膀胱及び小腸を検出できる限り、任意のセンサを採用することができる。超音波センサを採用する場合であっても、超音波センサの構成は、前記の構成に限られるものではない。例えば、アレイ状に配列された複数のトランスデューサを有する超音波センサであってもよい。複数のトランスデューサの超音波の出射角度は、異なっていてもよい。例えば、第1トランスデューサは、接触面21に対して垂直に超音波を照射し、第2トランスデューサは、第1トランスデューサよりも斜め下方に向かって超音波を照射するように構成されていてもよい。この場合、尿が溜まっていく過程では、第2トランスデューサ、第1トランスデューサの順に膀胱からの反射波W3を検出するようになり、排尿する過程では、第1トランスデューサ、第2トランスデューサの順に膀胱からの反射波W3が検出できないようになる。これにより、尿量及び実際の排尿タイミングをより精度良く推定することができる。
【0089】
尿量推定装置100の装着方法は、前記の方法に限られるものではない。例えば、接触面21を粘着性を有する貼付面で形成し、接触面21を対象者の腹部に貼り付けるようにしてもよい。
【0090】
尿量推定装置100では、超音波センサ1と装置本体2とが一体的に構成されているが、これに限られるものではない。例えば、超音波センサ1と装置本体2とを別体に構成し、超音波センサ1だけが対象者に装着され、装置本体2は必ずしも対象者に装着されなくてもよい。その場合、超音波センサ1と装置本体2とは、有線又は無線で通信する。また、対象者に装着される側の装置には、少なくとも超音波センサ1が含まれるが、それ以外の要素も含まれるようにしてもよい。例えば、送信部3及び受信部4を装置本体2から分離して、対象者に装着される側の装置に含めてもよい。さらに、信号処理部51を対象者に装着される側の装置に含めてもよい。さらには、制御部5及びメモリ11を対象者に装着される側の装置に含め、報知部12及び入力部13だけを分離させてもよい。
【0091】
尚、対象者に装着されない側の装置は、スマートフォンやPC等の通信端末で構成してもよい。例えば、超音波センサ1、送信部3、受信部4、制御部5及びメモリ11を一体的に形成し、報知部12及び入力部13を通信端末によって構成してもよい。その場合、尿量推定装置100は、超音波センサ1、送信部3、受信部4、制御部5及びメモリ11を備え、例えば介護者が所持する通信端末が報知部12及び入力部13として機能する。尿量推定装置100は、排尿タイミングの判定を前述の如く実行し、排尿タイミングが到来したときにはその旨を通信端末へ送信する。介護者は、排尿タイミングの通知を受けて、要介護者をトイレへ誘導し、実際の排尿があったときにはその旨を通信端末を介して尿量推定装置100へ送信する。尿量推定装置100は、実際の排尿の報告を受信したときには、前述の如く、報知時期を修正する。
【0092】
さらには、超音波センサ1及び装置本体2とスマートフォン又はPC等の通信端末200とで尿量推定装置100を形成してもよい。この場合、送信部3、受信部4、信号処理部51及び推定部52のうち尿量を推定する以外の機能部及び通信部14が装置本体2に設けられ、メモリ11、報知部12、入力部13及び推定部52のうち尿量を推定する機能部が通信端末200に設けられてもよい。つまり、超音波を送信し、その反射波を受信し、受信信号を信号処理するまでを超音波センサ1及び装置本体2で行い、信号処理した後の受信信号が装置本体2から通信端末200に送信される。通信端末200は、受信信号を受信してメモリ11に記憶すると共に、その受信信号を用いて尿量の推定及び排尿タイミングの予測等の演算を行い、必要に応じて報知等を行うようにしてもよい。
【0093】
さらには、超音波センサ1及び装置本体2と、スマートフォン又はPC等の通信端末200と、サーバとで尿量推定装置100を形成してもよい。この場合、送信部3、受信部4、信号処理部51及び推定部52のうち尿量を推定する以外の機能部及び通信部14が装置本体2に設けられ、メモリ11及び推定部52のうち尿量を推定する機能部がサーバに設けられ、報知部12及び入力部13が通信端末200に設けられてもよい。つまり、超音波を送信し、その反射波を受信し、受信信号を信号処理するまでを超音波センサ1及び装置本体2で行い、信号処理した後の受信信号が装置本体2からサーバに送信される。サーバは、受信信号を受信してメモリ11に記憶すると共に、その受信信号を用いて尿量の推定及び排尿タイミングの予測等の演算を行う。そして、サーバは、尿量及び/又は排尿タイミングを通信端末200に送信するか、又は、尿量及び/又は排尿タイミングに関し報知が必要な場合に通信端末200にその旨を報知する。通信端末200は、サーバから尿量及び/又は排尿タイミングに関する情報を受信し、必要に応じてその内容をディスプレイに表示したり、アラーム又はバイブレータを作動させたりする。排尿のフィードバックは、通信端末200が操作されることによって、排尿があった旨が通信端末200からサーバへ送信される。
【0094】
尿量推定装置100は、小腸からの反射波W2及び膀胱からの反射波W3の何れか一方のみに基づいて尿量を推定してもよい。例えば、尿量推定装置100は、膀胱からの反射波W3の有無にかかわらず、小腸からの反射波W2が観測されている場合に尿量が「少ない」と推定し、小腸からの反射波W2が観測されていない場合に尿量が「多い」と推定してもよい。あるいは、尿量推定装置100は、小腸からの反射波W2の有無にかかわらず、膀胱からの反射波W3が観測されていない場合に尿量が「少ない」と推定し、膀胱からの反射波W3が観測されている場合に尿量が「多い」と推定してもよい。
【0095】
また、小腸からの反射波W2の有無及び/又は膀胱からの反射波W3の有無ではなく、小腸からの反射波W2の大きさ及び/又は膀胱からの反射波W3の大きさに基づいて尿量を推定してもよい。
図6,8,10に示すように、小腸からの反射波W2は、尿量の増加に伴い小さくなり、膀胱からの反射波W3は、尿量の増加に伴い大きくなる傾向がある。例えば、小腸からの反射波W2の大きさに関する判定閾値を設定し、反射波W2の大きさと該判定閾値との大小関係により尿量を推定するようにしてもよい。また、膀胱からの反射波W3の大きさに関する判定閾値を設定し、反射波W3の大きさと該判定閾値との大小関係により尿量を推定するようにしてもよい。さらには、小腸からの反射波W2の大きさと膀胱からの反射波W3の大きさとを総合的に判断して尿量を推定してもよい。具体的には、推定部52は、小腸からの反射波W2の大きさが第1判定閾値以上で且つ膀胱からの反射波W3の大きさが第3判定閾値未満である場合に尿量が「少ない」と推定し、小腸からの反射波W2の大きさが第1判定閾値未満且つ第2判定閾値(<第1判定閾値)以上又は膀胱からの反射波W3の大きさが第3判定閾値以上且つ第4判定閾値(>第3判定閾値)未満である場合に尿量が「中程度」と推定し、小腸からの反射波W2の大きさが第2判定閾値未満で且つ膀胱からの反射波W3の大きさが第4判定閾値以上である場合に尿量が「多い」と推定してもよい。そして、推定部52は、尿量が「中程度」の場合には尿量が「少ない」場合に比べて検出頻度を増加させ、尿量が「多い」場合には排尿タイミングの到来を報知するようにしてもよい。
【0096】
また、尿量推定装置100は、尿量を「少ない」、「中程度」、「多い」の3段階に推定するものに限定されない。尿量推定装置100は、尿量を2段階若しくは4段階以上、又は、線形的に(連続的に)推定してもよい。
【0097】
さらに、推定部52は、小腸からの反射波W2の有無、膀胱からの反射波W3の有無、小腸からの反射波W2の大きさ、及び膀胱からの反射波W3の大きさを組み合わせて尿量を推定してもよい。
【0098】
例えば、推定部52は、前述のような小腸からの反射波W2の有無及び膀胱からの反射波W3の有無の組み合わせによって尿量を「少ない」、「中程度」、「多い」の3段階におおまかに推定し、排尿タイミングが到来したか否かは小腸からの反射波W2の大きさ及び/又は膀胱からの反射波W3の大きさに基づいて細かく推定してもよい。例えば、推定部52は、反射波W2が観測されず且つ反射波W3が観測されることをもって尿量が「多い」と推定しても直ちには排尿タイミングの到来と判定せず、反射波W3の大きさが所定の判定閾値を超えた場合、反射波W2の大きさが所定の判定閾値を下回った場合、又はそれらの両方を満たした場合に、排尿タイミングの到来と判定するようにしてもよい。この場合、尿量の段階に応じて反射波の検出頻度を変更してもよい。具体的には、尿量が段階的に増加するに従って検出頻度を増加させる。
【0099】
また、推定部52は、反射波W2に基づいて反射波の検出頻度を調整し、反射波W3に基づいて排尿タイミングを判定してもよい。例えば、推定部52は、反射波W2が小さい場合には、反射波W2が大きい場合に比べて検出頻度を増加させるようにしてもよい。この際、推定部52は、反射波W2の大きさに応じて検出頻度を連続的に増加させてもよく、反射波W2の大きさに応じて検出頻度を段階的に増加させてもよい。一方、推定部52は、反射波W2の有無及び大きさにかかわらず、反射波W3の大きさが所定の判定閾値を超えた場合に排尿タイミングが到来したと判定する。
【0100】
さらに、排尿タイミングを反射波W3の大きさに基づいて判定する場合には、排尿タイミングを判定するための反射波W3の判定閾値を調整可能としてもよい。この反射波W3の判定閾値を調整することによって、排尿直前の何分前をもって排尿タイミングとするかを変更することができる。例えば、ユーザが排尿5分前を排尿タイミングとして入力すると、推定部52は、排尿5分前と想定される尿量を判定閾値として設定する。メモリ11は、平均的な膀胱の大きさを基準として、尿量と排尿までの時間との関係を記憶しておき、推定部52は、入力された時間に応じた尿量を判定閾値として設定する。この判定閾値の調整は、前述の排尿タイミングの到来の報知時期を調整することに等しい。そのため、平均的な膀胱の大きさを基準として設定した判定閾値がユーザに入力された排尿タイミングからずれている場合には、前述の排尿のフィードバックの入力を受けて、推定部52は、判定閾値を修正する。これにより、推定部52は、排尿タイミングの到来の報知をより適切な時期に行うことができる。
【0101】
また、判定閾値の修正は、入力部13からの入力に基づくのではなく、尿量の推定値に基づいて行ってもよい。例えば、排尿タイミングの判定の繰り返し周期が短い場合には、膀胱の尿量が増加し、排尿されて、尿量が減少するまでの尿量の推定値がメモリ11に細かく記録される。そのような場合には、メモリ11に記録された尿量の推定値に基づいて、実際の排尿がいつあったかを判定することができ、それに基づいて、排尿までの時間が所定の設定時間となる尿量の推定値を求めることができる。例えば、排尿タイミングの到来を報知した後、尿量の推定値が極大となり、その後、急に減少したときが実際の排尿時である。つまり、排尿タイミングの報知から尿量の推定値が極大となるまでの時間又は、尿量が急減するまでの時間に基づいて、判定閾値を修正するようにしてもよい。これにより、判定閾値をより正確に修正することができる。
【0102】
また、推定部52は、排尿タイミングの到来を報知する際に、排尿までのおおよその時間を報知するようにしてもよい。かかる構成であっても、前述のように、実際の排尿の推定値に基づいて判定閾値、及び、排尿までの予測時間を修正するようにしてもよい。
【0103】
報知部12は、バイブレータに限られるものではない。報知部12は、アラームやランプ、又はそれらの組み合わせであってもよい。さらに、報知部12は、ディスプレイであってもよく、報知する内容に応じたイメージやアニメーションを表示するようにしてもよい。例えば、報知部12は、排尿タイミングに応じたイメージをディスプレイに表示するようにしてもよい。具体的には、排尿までの時間を人の顔を模したイメージで表し、排尿までに時間が短くなるほど我慢している度合が強くなるように顔の表情が変わるようにしてもよい。
【0104】
また、送信部3は、パルス信号を駆動信号として超音波センサ1に入力しているが、駆動信号は、パルス信号に限定されるものではない。駆動信号は、パルス波ではなく、バースト波等であってもよい。
【0105】
さらには、駆動信号に、周波数変調連続波(Frequency Modulated Continuous Wave)を用いてもよい。その場合、推定部52は、受信信号の周波数解析を行って、小腸からの反射波W2及び膀胱からの反射波W3を検出する。周波数解析の手法としては、高速フーリエ変換(FFT)であってもよいし、最大エントロピー法(MEM)であってもよい。
【0106】
また、尿量推定装置100により検出される膀胱からの反射波W3は、膀胱64の後壁643からの反射波に限られるものではない。超音波センサ1の装着位置によっては、後壁643以外の壁部、例えば、上壁641等からの反射波が検出される場合もあり得る。ただし、超音波センサ1から体内への超音波の入射角度及び膀胱64の壁からの反射角度等を考慮すると、超音波センサ1を腹部に装着する場合には、上壁641等よりも後壁643からの反射波の方が検出しやすい。
【0107】
また、前記実施形態では、尿量推定装置100は、推定した尿量に基づいて排尿タイミングを予測しているが、排尿タイミングを予測しなくてもよい。尿量推定装置100は、単に尿量を推定するだけであってもよく、又は、尿量を推定し、その尿量を用いて排尿タイミング以外の事象を予測するものであってもよい。
【0108】
さらに、尿量推定装置100は、対象者が所定の姿勢のときに超音波の送信及び検出を行うようにしてもよい。例えば、体内における小腸及び膀胱の形状及び位置は、対象者の姿勢に応じて変わり得る。そのため、超音波の送信及び検出を行うときの対象者の姿勢を統一している方が、膀胱の尿量を精度良く推定することができる。そこで、尿量推定装置100は、超音波の送信及び検出を行う際に、対象者に予め決めた姿勢を取るように促すように構成されていてもよい。例えば、尿量推定装置100は、超音波の送信及び検出を行う前に、超音波の送信及び検出を行う旨を対象者に報知するように構成されていてもよい。具体的には、推定部52は、報知部12を作動させたり、登録された通信端末200に通信部14を介して報知したりしてもよい。ただし、超音波の送信及び検出を行う旨の報知は、前述の排尿タイミングの到来の報知とは異なる態様で行うことが好ましい。例えば、報知部12がバイブレータである場合には、バイブレータの振動態様を超音波の送信及び検出を行う旨の報知と排尿タイミングの到来の報知とで異ならせることが好ましい。尚、超音波の送信及び検出を行う際の姿勢は、超音波の送信及び検出を繰り返して行う際に統一されていればよく、座位等の特定の姿勢でなければならないというわけではない。
【0109】
さらにまた、尿量推定装置100は、対象者の姿勢を検出する姿勢センサを備えていてもよい。姿勢センサの一例としては、ジャイロセンサが挙げられる。例えば、推定部52は、ジャイロセンサにより検出された対象者の姿勢が所定の測定姿勢であり且つ、前述の待機時間で規定される超音波の送信タイミングが到来したときに、超音波の送信及び検出を行うようにしてもよい。さらに、測定姿勢は、臥位、座位及び立位等の中からユーザが任意に登録できるようになっていてもよい。
【0110】
尚、寝たきりの要介護者が対象の場合には、このような姿勢の検出の必要性は低い。そのため、超音波の送信及び検出を行う際に対象者の姿勢を条件の1つにするか否かは切り替え可能となっていてもよい。
【0111】
尚、姿勢の統一は、推定精度の観点からは好ましいものではあるが、単に尿量を推定するという点においては必須ではない。