特許第6453497号(P6453497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6453497二重引戸装置におけるバックラッシュ防止ラック・ピニオンギア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453497
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】二重引戸装置におけるバックラッシュ防止ラック・ピニオンギア
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/635 20150101AFI20190107BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20190107BHJP
   E05F 17/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   E05F15/635
   E05F15/643
   E05F17/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-9413(P2018-9413)
(22)【出願日】2018年1月24日
(62)【分割の表示】特願2016-139416(P2016-139416)の分割
【原出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-62852(P2018-62852A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132758
【氏名又は名称】株式会社ソリック
(74)【代理人】
【識別番号】100175536
【弁理士】
【氏名又は名称】高井 智之
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】安野 康雄
(72)【発明者】
【氏名】眞柳 秀樹
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−102403(JP,A)
【文献】 特開2009−180287(JP,A)
【文献】 特開昭58−154860(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0102439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一開閉ドア及び第二開閉ドアを備える二重引戸装置からなる二重の引戸にしてなり、
前記二重引戸装置は、
自動ドア取付枠としての上枠に固定されるベース部材と、前記上枠の側に配置される前記第一開閉ドアと、該第一開閉ドアを前記ベース部材の延在方向に開閉動自在にする第一レール及び第一吊り金具構造部と、前記上枠から離れる側の前記第一開閉ドアの隣に配置される前記第二開閉ドアと、該第二開閉ドアを前記延在方向に開閉動自在にする第二レール及び第二吊り金具構造部と、前記第一開閉ドア及び前記第二開閉ドアを連動させるラック・ピニオンギア構造部とを備え、
前記ラック・ピニオンギア構造部は、
自動ドア取付枠に固定されるベース部材に形成される上側ラックギア固定部に取り付けられる上側ラックギアと、
前記第二開閉ドアに下側ラックギア固定ベースを介して取り付けられる下側ラックギアと、
前記第一開閉ドアに縦板部を介して回転自在に取り付けられるピニオンギアと、
を備え、
前記ピニオンギアの回転軸に嵌着され、前記上側ラックギアを固定する上側ラックギア固定部と、前記下側ラックギアを固定する下側ラックギア固定ベースの下側ラックギア固定部との間に、前記上側ラックギア固定部と前記下側ラックギア固定部とに圧接するように弾性部材を設けた
ことを特徴とする二重引戸装置におけるバックラッシュ防止ラック・ピニオンギア。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記ピニオンギアの回転に合わせて前記上側ラックギア固定部と前記下側ラックギア固定部との間を転動するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の二重引戸装置におけるバックラッシュ防止ラック・ピニオンギア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも低速開閉ドア、高速開閉ドアを備える二重引戸に係り、特に低速開閉ドアをラック・ピニオンギアによって駆動する自動ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二重引戸の自動ドア装置におけるスライドドアは、人などが出入りする出入口と、出入口の上部に位置する取付横向ベースと、出入口を開閉させるドアと、取付横向ベースに取付けられ、スライドドアをスライド可能に吊下げるレール部とを有している。
自動ドア装置としては、二つの開閉ドアを開閉する二重引戸が広く知られている。
【0003】
この二重引戸においては、取付横向ベースに上側ラックを取り付け、二重引戸における低速開閉ドアにピニオンギアを取り付け、二重引戸における高速開閉ドアに下側ラックを取り付けて、上側ラックと下側ラックでピニオンギアを挟んで噛み合わせ、駆動装置によって二重引戸における高速開閉ドアを駆動することよって下側ラックを移動させ、下側ラックに噛合するピニオンギアを回転させて低速開閉ドアの開閉を行うようになっている。
【0004】
引き戸上部にラックを設け、ピニオン付のモータを組み合わせてスライドドアを開閉するラック・ピニオンギアを用いた自動引き戸が従来より知られている(例えば、特許文献1、参照)。
この特許文献1にあっては、ラックとピニオン間に隙間(バックラッシュ)が生じ、制動時に異音が発生し、耳障りであるという問題点を有している。
このようなラックとピニオン間に隙間(バックラッシュ)は、磨耗により増大するため、振動や騒音の発生及び機械の寿命を低下させる原因となっている。
【0005】
このようなバックラッシュに対し、従来よりバックラッシュを減らす(無くす)様々な工夫が行なわれている。この特許文献1のラックとピニオン間の隙間(バックラッシュ)による異音に対しては、引き戸の自動開閉機構が正逆回転するモータとラックとピニオンとによって構成し、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群の一筋部分を削り取って筋溝を形成し、この筋溝部分に軟質で弾力性を有する帯材または帯リングを設け、動作中に他方の歯先がこの帯材または帯リングを圧接するように構成する自動引き戸の開閉装置が提案されている(例えば、特許文献2、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−6477号公報
【特許文献2】特開2010−7375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の自動引き戸の開閉装置にあっては、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群の一筋部分を削り取って筋溝を形成するため、ラックまたはピニオンは、そのままでは使用できず、ラックまたはピニオンのいずれかに歯群の一筋部分を削り取る溝加工が必要となっているという問題点を有している。
このように、特許文献2に記載のラックまたはピニオンにあっては、設置するラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群の一筋部分を削り取る溝加工を施すため、歯群の一筋部分を削り取って形成した筋溝にバリが生じる。このため、特許文献2に記載のラックまたはピニオンにあっては、このバリを除去する加工がさらに必要となるという問題点を有している。
【0008】
また、特許文献2に記載のラックまたはピニオンにあっては、筋溝部分に軟質で弾力性を有する帯材または帯リングを嵌め込み、ラック・ピニオンが動作中にいずれか他方の歯先が、筋溝部分に嵌め込まれた帯材または帯リングを圧接するようになるため、使用中にラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群が摩耗するという問題点を有している。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされるものであって、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群に筋溝加工を施す必要がなく、バックラッシュの発生を防止し、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群が摩耗するのを防止することのできる二重引戸装置におけるバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明に係る二重引戸装置におけるバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアは、第一開閉ドア及び第二開閉ドアを備える二重引戸装置からなる二重の引戸にしてなり、
前記二重引戸装置は、
自動ドア取付枠としての上枠に固定されるベース部材と、前記上枠の側に配置される前記第一開閉ドアと、該第一開閉ドアを前記ベース部材の延在方向に開閉動自在にする第一レール及び第一吊り金具構造部と、前記上枠から離れる側の前記第一開閉ドアの隣に配置される前記第二開閉ドアと、該第二開閉ドアを前記延在方向に開閉動自在にする第二レール及び第二吊り金具構造部と、前記第一開閉ドア及び前記第二開閉ドアを連動させるラック・ピニオンギア構造部とを備え、
前記ラック・ピニオンギア構造部は、
自動ドア取付枠に固定されるベース部材に形成される上側ラックギア固定部に取り付けられる上側ラックギアと、
前記第二開閉ドアに下側ラックギア固定ベースを介して取り付けられる下側ラックギアと、
前記第一開閉ドアに縦板部を介して回転自在に取り付けられるピニオンギアと、
を備え、
前記ピニオンギアの回転軸に嵌着され、前記上側ラックギアを固定する上側ラックギア固定部と、前記下側ラックギアを固定する下側ラックギア固定ベースの下側ラックギア固定部との間に、前記上側ラックギア固定部と前記下側ラックギア固定部とに圧接するように弾性部材を設けたことを特徴としている。
【0011】
このような特徴を有する本発明によれば、ピニオンギアの回転軸に嵌着する弾性部材がラックギア固定部と下側ラックギア固定ベースとの間に介在させるようになっているため、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群に筋溝加工を施さなくてもバックラッシュの発生を防止することができる。
また、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群に弾性部材が当接することがないため、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群が摩耗するのを防止することができる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項2に記載の本発明に係る二重引戸装置におけるバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアは、請求項1に記載の二重引戸装置におけるバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアにおける弾性部材を,前記ピニオンギアの回転に合わせて前記上側ラックギア固定部と前記下側ラックギア固定部との間を転動するものであることを特徴としている。
【0013】
上側
このような特徴を有する本発明によれば、弾性部材によってラックギア固定部と下側ラックギア固定ベースを圧接するように上側ラックギア固定部と下側ラックギア固定ベースとの間に介在させ、ピニオンギアの回転に合わせて転動するように形成されているため、バックラッシュの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群に筋溝加工を施す必要がなく、バックラッシュの発生を防止し、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群が摩耗するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを採用する三重引戸の閉状態を示す正面図である。
図2図1に示すバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを採用する三重引戸における自動開閉装置の断面図である。
図3図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを採用する自動開閉装置における駆動装置を装置正面左側から見た時の概略図である。
図4図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを採用する自動開閉装置における駆動装置を装置正面右側から見た時の概略図である。
図5図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアの拡大図である。
図6図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアのベース部材のラックギア固定部への取り付け状態を示す図である。
図7図2のベース部材への低速開閉ドアと中速開閉ドアの分解斜視図である。
図8図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアの分解組み立て斜視図である。
図9】高速開閉ドアと吊り金具構造部の概略図である。
図10】中速開閉ドアと吊り金具構造部の概略図である。
図11】低速開閉ドアと吊り金具構造部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。
また、本明細書においては、低速開閉ドアをラック・ピニオンギアによって駆動する自動ドア装置として、三重引戸を例にとって説明する。
【0017】
図1図8には、本発明に係るバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアの実施例が示されている。
本実例においては、バックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを三重引戸に適用した例について説明する。
【0018】
三重引戸は、ラック・ピニオンギア構造部等を含んで第一開閉ドア及び第二開閉ドアを連動させる二重引戸装置に対し、更に第三開閉ドアと連動装置とを付加して構成されている。このように三重引戸は、二重引戸装置をベースにした構造のものである。
【0019】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明に係るバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを採用する三重引戸の閉状態を示す正面図、図2図1に示すバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを採用する三重引戸における自動開閉装置の断面図、図3図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを採用する自動開閉装置における駆動装置を装置正面左側から見た時の概略図、図4図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアを採用する自動開閉装置における駆動装置を装置正面右側から見た時の概略図、図5図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアの拡大図、図6図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアのベース部材のラックギア固定部への取り付け状態を示す図、図7は2のベース部材への低速開閉ドアと中速開閉ドアの分解斜視図、図8図2のバックラッシュ防止ラック・ピニオンギアの分解組み立て斜視図である。
【0020】
図1において、引用符号1は引分の三重引戸を示す。この三重引戸1は、人の通行や物の搬入等のために左右方向に開閉する自動ドア装置の一種である。
【0021】
左右両側から内側に向けて順に説明をすると、三重引戸1は、一対の第一開閉ドア(低速開閉ドア)2と、一対の第二開閉ドア(中速開閉ドア)3と、一対の第三開閉ドア(高速開閉ドア)4とを備えて構成されている。
また、これらドアを開閉動させるために上カバー5内に設けられる自動開閉装置6を備えて構成されている。
なお、図中の配置にある第一開閉ドア2は、低速ドアや低速開閉ドアと呼んでもよい。また、第二開閉ドア3は、中速ドアや中速開閉ドアと呼んでもよい。さらに、第三開閉ドア4は、高速ドアや高速開閉ドアと呼んでもよい。
【0022】
第一開閉ドア2、第二開閉ドア3、及び第三開閉ドア4は、特に符号を付さないが、それぞれ矩形の枠部と、この枠部の内側に嵌め込まれるガラス部とを有する。枠部の上端には、後述する吊り金具構造部がそれぞれ設けられている。
【0023】
図2ないし図4において、自動開閉装置6は、図示しないドアコントローラーと、このドアコントローラーにより制御される駆動装置7と、二重引戸装置8と、この二重引戸装置8における第二開閉ドア3を第三開閉ドア4の開閉動に伴って連動させる開閉動タイプ連動装置9(連動装置)とを備えて構成されている。本発明における三重引戸1は、二重引戸装置8に対し更に第三開閉ドア4と連動装置(開閉動タイプ連動装置9)とを付加して三重の引戸にしたものである。
【0024】
駆動装置7は、モーター10と、伝達機構11とを備えて構成されている。この駆動装置7は、自動開閉装置6において一番上に位置するように配置されている。また、この駆動装置7は、図示しないコントローラーに電気的に接続されている。
モーター10は回転軸を有し、この回転軸と伝達機構11の減速機とが図示しないベルトにより連結されている。減速機には、ベルト機構12の駆動プーリー13(主動プーリー)が組み付けられている。ベルト機構12は、駆動プーリー13の他、従動プーリー14と、これら駆動プーリー13及び従動プーリー14に巻き付けられる駆動ベルト15とを備えて構成されている。
【0025】
駆動プーリー13及び従動プーリー14は、所定の歯数を有してそれぞれ形成される。すなわち、歯付きのプーリーとしてそれぞれ形成される。
駆動プーリー13及び従動プーリー14は、左右に大きく離れた位置に配置されている。駆動ベルト15は、駆動プーリー13及び従動プーリー14が上記配置であることから長尺なものが採用されている。また、駆動ベルト15は、駆動プーリー13及び従動プーリー14の歯に噛み合うようなものが採用されている。駆動ベルト15は、公知のタイミングベルトである。なお、引用符号16は歯飛び止めレバーを示している。
【0026】
二重引戸装置8は、自動開閉装置6において下側に位置するように配置されている。また、二重引戸装置8は、自動ドア取付枠としての上枠17の側に位置するようにも配置されている。このような二重引戸装置8は、上枠17に固定されるベース部材18と、上枠17の側に配置される第一開閉ドア2と、この第一開閉ドア2をベース部材18の延在方向に開閉動自在にする第一レール19及び第一吊り金具構造部20と、上枠17から離れる側の第一開閉ドア2の隣に配置される第二開閉ドア3と、この第二開閉ドア3を上記延在方向に開閉動自在にする第二レール21及び第二吊り金具構造部22と、第一開閉ドア(低速開閉ドア)2及び第二開閉ドア(中速側の開閉ドア)3を連動させるラック・ピニオンギア構造部23とを備えて構成される。
【0027】
ベース部材18は、アルミ材を引き抜くことにより図2に示す形状に形成されている。このベース部材18には、この延在方向に真っ直ぐのびる第一レール19と、この第一レール19の斜め上側に配置される第二レール21とが形成されている(上記延在方向は、上記左右方向に一致する)。また、ベース部材18には、上側ラックギア固定部24が形成されている。
【0028】
第一吊り金具構造部20は、1つの第一開閉ドア(低速開閉ドア)2につき2つ設けられている(図11参照)。2つの第一吊り金具構造部20は、第一開閉ドア(中速開閉ドア)2の枠部上端において左右に離れて配置されている。この第一吊り金具構造部20は、上記枠部上端にボルト止めされる縦板部25と、この縦板部25の上端に固定される横板部26と、第一レール19を転がる一対のハンガーローラー27とを備えて構成されている。
縦板部25は、左右方向にのびる横板部26を所定の高さ位置で固定する部品として設けられている。左右方向にのびる横板部26の一方の面には、所定の間隔をあけて一対のハンガーローラー27が回転自在に組み付けられている。
なお、横板部26の他方の面には、上記ピニオンギア33(後述する)が1つ組み付けられている。第一レール19とハンガーローラー27は、これらの接触部分が凸と凹の形状になるような脱輪し難い形状に形成される。
【0029】
第二吊り金具構造部22は、第一開閉ドア(低速開閉ドア)2の第一吊り金具構造部20と同様、1つの第二開閉ドア(中速開閉ドア)3につき2つ設けられる(図6参照)。2つの第二吊り金具構造部22は、第二開閉ドア3の枠部上端において左右に離れて配置される。第二吊り金具構造部22は、上記枠部上端にボルト止めされる縦板部28と、この縦板部28の上端に固定される横板部29と、第二レール21を転がる一対のハンガーローラー30とを備えて構成されている。
【0030】
縦板部28は、左右方向にのびる横板部29を所定の高さ位置で固定する部品として設けられている。この縦板部28は、第一吊り金具構造部20の縦板部25よりも上下方向に長く形成されている。この縦板部28の中間には、ラック・ピニオンギア構造部23を構成する下側ラックギア固定ベース35(後述する)が組み付けられている(図2及び図6参照)。左右方向にのびる横板部29の一方の面には、所定の間隔をあけて一対のハンガーローラー30が回転自在に組み付けられている。第二レール21とハンガーローラー30は、これらの接触部分が凸と凹の形状になるような脱輪し難い形状に形成されている。
【0031】
ラック・ピニオンギア構造部23は、図5図8に示す如く、上側ラックギア31と、下側ラックギア32と、ピニオンギア33とによって構成されている。
このラック・ピニオンギア構造部23は、第二開閉ドア(中速開閉ドア)3が開閉動すると、この開閉動に伴って第一開閉ドア(低速開閉ドア)2も開閉動させることができるように構成されている。
具体的には、上側ラックギア31と、下側ラックギア32と、ピニオンギア33と、下側ラックギア固定ベース34とを備えて、上記の開閉動をさせることができるように構成されている。
【0032】
上側ラックギア31は、公知のラックギアであって、自動ドア取付枠としての上枠17に固定されるベース部材18に形成される上側ラックギア固定部24に取り付けられている。
この上側ラックギア固定部24は、上記延在方向に真っ直ぐのびて形成されている。また、この上側ラックギア固定部24の上側には、第二レール21が配置形成されている(別な言い方をすれば、第二レール21の下側に上側ラックギア固定部24が配置形成されている)。
【0033】
下側ラックギア32は、公知のラックギアであって、第二開閉ドア(中速開閉ドア)3の縦板部28の中間に組み付けられている下側ラックギア固定ベース34の下側ラックギア固定部35に取り付けられている。
この下側ラックギア固定ベース34は、アルミ材を引き抜くことにより図2に示す形状に形成されている。また、下側ラックギア固定ベース34は、第二開閉ドア3と第一開閉ドア2とを連動させるのに必要な長さに形成される。具体的には、2つの第二吊り金具構造部22に跨る長さに形成されている(図10参照)。下側ラックギア固定ベース34は、上側ラックギア31及び下側ラックギア32の長さに合わせて形成されている。
【0034】
ピニオンギア33は、上側ラックギア31及び下側ラックギア32に噛み合うように組み付けられている。このピニオンギア33は、第一開閉ドア(低速開閉ドア)2の枠部上端にボルト止めされている縦板部25の上端に固定される横板部26に組み付けられている。
また、ピニオンギア33の回転軸36には、弾性部材37が取り付けられている。この弾性部材37は、弾性を有する材質、例えば、合成樹脂材で形成されており、リング状に形成され、ピニオンギア33の回転軸36に嵌合固着されている。
【0035】
また、この弾性部材37は、上側ラックギア31を固定する上側ラックギア固定部24と、下側ラックギア32を固定する下側ラックギア固定ベース34の下側ラックギア32を抱え込む下側ラックギア固定部35との間に挟み込まれ、上側ラックギア固定部24と下側ラックギア固定部35とに圧接するように設けられている。
この弾性部材37は、ピニオンギア33が上側ラックギア31及び下側ラックギア32に噛み合う際に発生するバックラッシュによる異音の発生を防止するために装着している。
【0036】
このように上側ラックギア31は、ベース部材18に固定されており、下側ラックギア32は、第二開閉ドア(中速開閉ドア)3の縦板部28の中間に組み付けられる下側ラックギア固定ベース34に固定されている。したがって、駆動プーリー13が右回りし駆動ベルト15が移動すると、この移動に伴って連結金具38が移動し、第二開閉ドア(中速開閉ドア)3が開閉動する。この第二開閉ドア(中速開閉ドア)3の開閉動によって下側ラックギア固定ベース34が移動し、この下側ラックギア固定ベース34が移動すると、上側ラックギア31及び下側ラックギア32に噛み合っているピニオンギア33は、回転しながら第一開閉ドア(低速開閉ドア)2を移動させ、開閉動させる。
【0037】
本発明に係るの自動ドア装置である三重引戸1は、以上のような二重引戸装置8に対し更に第三開閉ドア(高速開閉ドア)4と連動装置とを付加した構成であり、以下、第三開閉ドア(高速開閉ドア)4の開閉動について、及び、連動装置としての開閉動タイプ連動装置9について、図2ないし図8を参照しながら詳細に説明をする。
【0038】
第三開閉ドア(高速開閉ドア)4は、以下の構成により上記延在方向に開閉動自在になっている。すなわち、駆動装置7と、この駆動装置7に駆動されるベルト機構12(すなわち駆動プーリー13、従動プーリー14、及び駆動ベルト15)と、第三レール38及び第三吊り金具構造部39と、駆動ベルト15及び第三吊り金具構造部39を連結する連結金具40とにより開閉動自在になる。
【0039】
第三レール38は、第三開閉ドア(高速開閉ドア)4用のベースレールユニット41を構成するベースレール42に形成される。第三開閉ドア(高速開閉ドア)4用のベースレールユニット41は、ベース部材18と別体であって、ベース部材18よりも上側の位置で上枠17に取り付け固定されている。ベースレール41は、アルミ材を引き抜くことにより図2に示す形状に形成されている。ベースレール41は、駆動装置7の下側の位置に組み付けられる。
なお、ベースレール41の下側には、後述する大径従動プーリー43が配置され、更に間隔をあけた下側には、第三開閉ドア(高速開閉ドア)4が配置される。第三レール38は、真っ直ぐのびるように形成される。
【0040】
第三吊り金具構造部39は、1つの第三開閉ドア(高速開閉ドア)4につき2つ設けられる(図9参照)。2つの第三吊り金具構造部39は、第三開閉ドア(高速開閉ドア)4の枠部上端において左右に離れて配置されている。第三吊り金具構造部39は、上記枠部上端にボルト止めされる縦板部44と、この縦板部44の上端に固定される横板部45と、第三レール38を転がる一対のハンガーローラー46とを備えて構成される。
【0041】
縦板部44は、幅広で上下方向に長くのびる板状の部品として設けられる。縦板部44は、この上端に横板部45が固定され、中間には連結金具固定部47が形成されている。連結金具固定部47には、後述する第三開閉ドア側連結金具48が固定されている。横板部45の一方の面には、所定の間隔をあけて一対のハンガーローラー46が回転自在に組み付けられる。第三レール38とハンガーローラー46は、これらの接触部分が凸と凹の形状になるような脱輪し難い形状に形成される。
【0042】
第三開閉ドア(高速開閉ドア)4における2つの第三吊り金具構造部39のうち、一方には、連結金具40が取り付けられている。具体的には、縦板部44の上端側に連結金具40が取り付けられている。この連結金具40は、上記のように駆動ベルト15及び第三吊り金具構造部39を連結する部品であって、図2の配置においては、図3及び図4の駆動ベルト15の下側部分に固定されている。
なお、別の第三開閉ドア(高速開閉ドア)4に設けられる連結金具は、駆動プーリー13の図に隠れてしまい、図2では見えない状態となっている。この見えてない連結金具は、駆動ベルト15の上側部分に固定される。例えば駆動プーリー13が右回りし駆動ベルト15が移動すると、この移動に伴って連結金具40と見えてない連結金具も移動する。具体的には、駆動ベルト15の下側部分に固定される連結金具40が左方向に移動し、駆動ベルト15の上側部分に固定される、見えてない連結金具が右方向に移動する(この場合、二つの第三開閉ドア(高速開閉ドア)4が開く方向に移動する)。
【0043】
開閉動タイプ連動装置9は、第二レール21と第三レール38との間に配置される。このような配置の開閉動タイプ連動装置9は、大径に形成される一対の大径従動プーリー43と、この一対の大径従動プーリー43に取り付けられる大径従動プーリー用ベルト49と、各大径従動プーリー43に一体化し且つ大径従動プーリー43よりも少ない歯数で形成される一対の小径従動プーリー50と、この一対の小径従動プーリー50に取り付けられる小径従動プーリー用ベルト51と、ベース部材18に固定され且つ大径従動プーリー43及び小径従動プーリ50を同軸で回転自在に取り付けるプーリーベース52と、第三吊り金具構造部39及び大径プーリー用従動ベルト49を連結する第三開閉ドア側連結金具48と、第二吊り金具構造部22及び小径プーリー用従動ベルト1を連結する第二開閉ドア側連結金具53とを備えて構成されている。
【0044】
大径従動プーリー43は、第三開閉ドア(高速開閉ドア)4の上方に配置されている。また、この大径従動プーリー43に一体化する小径従動プーリー50は、第二開閉ドア(中速開閉ドア)3の上方に配置されている。
プーリーベース52は、この一端に大径従動プーリー43及び小径従動プーリ50が同軸で回転自在に取り付けられ、他端がベース部材18に固定されている。プーリーベース52の中間は、前後方向に真っ直ぐのびるように形成されている。
【0045】
第三開閉ドア側連結金具48は、上記のように、第三吊り金具構造部39と大径プーリー用従動ベルト49とを連結するための部品として用いられている。もう少し詳しく説明すると、第三開閉ドア側連結金具48は、この一端が第三吊り金具構造部39における縦板部44の連結金具固定部47に固定されている。また、第三開閉ドア側連結金具48の他端は、大径従動プーリー用ベルト49の下側部分に固定されている。
なお、図2における引用符号55は、大径従動プーリー用ベルト49(図4参照)の上側部分に固定される第三開閉ドア側連結金具を示す。この第三開閉ドア側連結金具55は、図2中と別な第三開閉ドア(高速開閉ドア)4の第三吊り金具構造部39に固定されたものであり、図2では一部が見える。
【0046】
第三開閉ドア側連結金具54及び55は、2つの第三開閉ドア(高速開閉ドア)4が開く方向に移動すると、大径従動プーリー用ベルト49を右回りに移動させ、逆に2つの第三開閉ドア(高速開閉ドア)4が閉じる方向に移動すると、大径従動プーリー用ベルト49を左回りに移動させるように取り付けられる。
【0047】
大径従動プーリー用ベルト49は、上記のように移動することから、同軸で一体の大径従動プーリー43及び小径従動プーリ50を右回り、左回りさせることができる。これにより、小径プーリー用従動ベルト51も移動する。
【0048】
小径プーリー用従動ベルト51には、第二開閉ドア側連結金具53が固定されている。第二開閉ドア側連結金具53は、上記のように、第二吊り金具構造部22及び小径プーリー用従動ベルト51を連結するための部品として用いられている。もう少し詳しく説明すると、第二開閉ドア側連結金具53は、この一端が第二吊り金具構造部22における縦板部28に固定されている。
また、第二開閉ドア側連結金具53の他端は、小径プーリー用従動ベルト51の下側部分に固定されている。
なお、図2中と別の第二開閉ドア(中速開閉ドア)3に設けられている第二開閉ドア側連結金具は、小径従動プーリ50の図に隠れてしまい、図2では見えてない。この見えてない第二開閉ドア側連結金具は、小径プーリー用従動ベルト51の上側部分に固定されている。例えば、小径プーリー用従動ベルト51が移動すると、この移動に伴って第二開閉ドア側連結金具53及び見えてない第二開閉ドア側連結金具も移動する。
【0049】
第二開閉ドア側連結金具53の移動、及び上記見えてない第二開閉ドア側連結金具の移動は、二つの第二開閉ドア(中速開閉ドア)3の移動を生じさせ、さらには、ラック・ピニオンギア構造部23を介して二つの第一開閉ドア(低速開閉ドア)2の移動を生じさせる。つまり、各ドアが連動することが分かる。
【0050】
以上、図1ないし図11を参照しながら説明してきたように、本発明に係る三重引戸1によれば、ラック・ピニオンギア構造部23等を含んで第一開閉ドア(低速開閉ドア)2及び第二開閉ドア(中速開閉ドア)3を連動させる二重引戸装置8に対し、更に第三開閉ドア(高速開閉ドア)4と開閉動タイプ連動装置9とを付加して三重の引戸にしてなるものであることから、既存技術を活用しつつ三つの開閉ドアを自動開閉させることができる。
【0051】
また、本発明によれば、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群に筋溝加工を施す必要がなく、バックラッシュの発生を防止し、ラックまたはピニオンのいずれか一方の歯群が摩耗するのを防止することができる。
【0052】
なお、引分の例で説明してきたが、片引にも本発明を適用できるのは勿論である。
【0053】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1…三重引戸、 2…第一開閉ドア(低速開閉ドア)、 3…第二開閉ドア(中速開閉ドア)、 4…第三開閉ドア(高速開閉ドア)、 7…駆動装置、 8…二重引戸装置、 9…開閉動タイプ連動装置(連動装置)、 10…モーター、 11…伝達機構、 12…ベルト機構、 13…駆動プーリー、 14…従動プーリー、 15…駆動ベルト、 17…上枠、 18…ベース部材、 20…第一吊り金具構造部、 22…第二吊り金具構造部、 23…ラック・ピニオンギア構造部、 24…上側ラックギア固定部、 27,30…ハンガーローラー、 31…上側ラックギア、 32…下側ラックギア、 33…ピニオンギア、 34…下側ラックギア固定ベース、 35…下側ラックギア固定部、 39…第三吊り金具構造部、 40…連結金具、 43…大径従動プーリー、 46…ハンガーローラー、 47…連結金具固定部、 48,55…第三開閉ドア側連結金具、 49…大径従動プーリー用ベルト、 50…小径従動プーリー、 51…小径従動プーリー用ベルト、 53…第二開閉ドア側連結金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11