【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示される差動増幅器は、カスコードカレントミラー回路を使用することによって、チップ面積の増大を抑制しつつ、差動増幅器の入力電流を高精度で増幅していた。しかしながら、特許文献1に開示される差動増幅器は、入力電流が大きい場合、カスコード接続されたトランジスタのソース及びゲート間の電位差によって、入力差動対に加わる電圧が低下するため、入力電流の範囲が制限されてしまうという課題を有していた。
【0009】
また、上述した特許文献2に開示されるCMOS基準電圧回路は、OTAを用いたカレントミラー回路を使用することによって、カスコード接続が入力側の素子に及ぼす影響を排除しつつ、高精度で入力電流を増幅していた。しかしながら、特許文献2に開示されるCMOS基準電圧回路は、広い入力電流の範囲に対応するためにOTAが多くのチップ面積を必要とすることにより、チップ面積の増大を招いてしまうという課題を有していた。
【0010】
そこで、本発明は、チップ面積の増大を抑制しつつ、広い入力電流の範囲に対応しつつ、高精度で電流を増幅することができるカレントミラー回路を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、チップ面積の増大を抑制しつつ、広い入力電流の範囲に対応しつつ、高精度で光信号の強度を測定することができる受信装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、入力電流の大きさに応じて光信号の強度の測定の解像度を変更することができる受信装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、入力電流が光信号の強度の測定の解像度が変更される電流値付近で変動することによって発生する光信号の強度の測定の解像度の頻繁な変更を抑制することができる受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的特徴乃至は発明特定事項を含んで構成される。
【0015】
即ち、ある観点に従う本発明は、電流源によって生成される参照電流を第1の倍率で増幅し、ミラー電流として負荷回路に供給するカレントミラー回路であって、電源を共通にする第1のトランジスタ及び第2のトランジスタと、前記参照電流を第2の倍率で増幅することにより第1の電流を生成し、該生成した第1の電流を第3の倍率で増幅することにより第2の電流を生成し、前記第2の電流に基づいて決定される所定の電位を前記第2のトランジスタのドレインに供給するドレイン電位ミラー部と、を備え、前記参照電流に基づいて決定される前記第1のトランジスタのゲートの電位に基づいて、前記第2のトランジスタから前記ミラー電流を前記負荷回路に供給するように構成された、カレントミラー回路である。
【0016】
ここで、前記カレントミラー回路は、前記所定の電位が前記第1のトランジスタのドレインの電位と略等しい電位となるように、前記第2の倍率及び前記第3の倍率が決定されても良い。
【0017】
また、前記ドレイン電位ミラー部は、前記第1のトランジスタと前記電源を共通にする第3のトランジスタ及び第6のトランジスタと、ソースの電位を共通にする第4のトランジスタ及び第5のトランジスタと、を含み、前記ドレイン電位ミラー部は、前記参照電流に基づいて決定される前記第1のトランジスタのゲートの電位に基づいて、前記第3のトランジスタから前記第1の電流を前記第4のトランジスタに供給し、前記第1の電流に基づいて決定される前記第4のトランジスタのゲートの電位に基づいて、前記第5のトランジスタから前記第2の電流を前記第6のトランジスタに供給し、前記第2の電流に基づいて決定される前記第6のトランジスタのゲートの電位を前記所定の電位として前記第2のトランジスタのドレインに供給しても良い。
【0018】
また、前記ドレイン電位ミラー部は、前記第2のトランジスタと前記負荷回路との間に設けられた第7のトランジスタをさらに含んでも良い。
【0019】
ここで、前記カレントミラー回路は、前記第7のトランジスタのゲートに、前記第6のトランジスタのドレインの電位と略等しい電位が与えられても良い。
【0020】
また、前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、前記第3のトランジスタ及び前記第6のトランジスタは、PMOSトランジスタであり、前記第4のトランジスタ及び前記第5のトランジスタは、NMOSトランジスタであっても良い。
【0021】
また、前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、前記第3のトランジスタ及び前記第6のトランジスタは、NMOSトランジスタであり、前記第4のトランジスタ及び前記第5のトランジスタは、PMOSトランジスタであっても良い。
【0022】
さらに、別の観点に従う本発明は、送信装置から出力される光信号の強度を測定する受信装置であって、前記光信号に基づいて参照電流を生成する光検出器と、前記参照電流を所定の倍率で増幅することによってミラー電流を生成するカレントミラー回路と、前記ミラー電流を所定の変換率でデジタル電圧信号に変換する電流モードAD変換器と、前記デジタル電圧信号が示す前記光信号の強度を測定するロジック部と、を備える、受信装置である。
【0023】
ここで、前記カレントミラー回路は、電源を共通にする第1のトランジスタ及び第2のトランジスタと、前記参照電流を第2の倍率で増幅することにより第1の電流を生成し、該生成した第1の電流を第3の倍率で増幅することにより第2の電流を生成し、前記第2の電流に基づいて決定される所定の電位を前記第2のトランジスタのドレインに供給するドレイン電位ミラー部と、を含み、前記参照電流に基づいて決定される前記第1のトランジスタのゲートの電位に基づいて、前記第2のトランジスタから前記ミラー電流を前記電流モードAD変換器に供給するように構成されても良い。
【0024】
さらに、前記カレントミラー回路は、前記所定の電位が前記第1のトランジスタのドレインの電位と略等しい電位となるように、前記第2の倍率及び前記第3の倍率が決定されても良い。
【0025】
また、前記ドレイン電位ミラー部は、前記第1のトランジスタと前記電源を共通にする第3のトランジスタ及び第6のトランジスタと、ソースの電位を共通にする第4のトランジスタ及び第5のトランジスタと、を含み、前記ドレイン電位ミラー部は、前記参照電流に基づいて決定される前記第1のトランジスタのゲートの電位に基づいて、前記第3のトランジスタから前記第1の電流を前記第4のトランジスタに供給し、前記第1の電流に基づいて決定される前記第4のトランジスタのゲートの電位に基づいて、前記第5のトランジスタから前記第2の電流を前記第6のトランジスタに供給し、前記第2の電流に基づいて決定される前記第6のトランジスタのゲートの電位を前記所定の電位として前記第2のトランジスタのドレインに供給しても良い。
【0026】
また、前記ドレイン電位ミラー部は、前記第2のトランジスタと前記負荷回路との間に設けられた第7のトランジスタをさらに含み、前記ドレイン電位ミラー部は、前記第7のトランジスタのゲートに前記第6のトランジスタのドレインの電位と略等しい電位を供給しても良い。
【0027】
また、前記受信装置は、前記参照電流に基づいて決定される第1の電位とバイアス回路に基づく第2の電位とを比較して、前記第1の電位が前記第2の電位よりも高いか否かを判断する電圧比較器をさらに備え、前記電流モードAD変換器は、前記電圧比較器の前記判断に基づいて、前記所定の変換率を決定し、前記ロジック部は、前記電圧比較器の前記判断に従って、前記デジタル電圧信号が示す前記光信号の強度を測定しても良い。
【0028】
ここで、前記電流モードAD変換器は、前記電圧比較器による前記判断に基づいて抵抗値が決定され、前記ミラー電流に従う電圧降下によって、前記ミラー電流をアナログ電圧信号に変換する可変抵抗と、前記アナログ電圧信号を前記デジタル電圧信号に変換するAD変換器と、を含んでも良い。
【0029】
さらに、前記電流モードAD変換器は、前記電圧比較器により前記第1の電位が前記第2の電位よりも高いと判断される場合に、前記所定の変換率を第1の値に設定し、前記電圧比較器により前記第1の電位が前記第2の電位よりも高くないと判断される場合、前記所定の変換率を前記第1の値よりも低い第2の値に設定しても良い。
【0030】
また、前記電圧比較器は、前記判断に基づいて電位が決定される比較信号を生成し、前記比較信号の電位に基づいて前記第2の電位を決定しても良い。
【0031】
ここで、前記電圧比較器は、前記第1の電位が前記第2の電位よりも高いと判断する場合、前記比較信号の状態を第1の状態に決定し、前記第1の電位が前記第2の電位よりも高くないと判断する場合、前記比較信号の状態を第2の状態に決定し、前記比較信号の状態が前記第1の状態である場合、前記第2の電位を第3の電位に決定し、前記比較信号の状態が第2の状態である場合、前記第2の電位を前記第3の電位より高い第4の電位に決定しても良い。
【0032】
また、前記受信装置は、複数の前記電圧比較器をさらに備え、前記複数の電圧比較器は、前記第2の電位がそれぞれ異なるように、前記第2の電位を決定し、前記電流モードAD変換器は、前記複数の電圧比較器のそれぞれによる前記判断に基づいて前記所定の変換率を決定しても良い。
【0033】
ここで、前記電流モードAD変換器は、対応する前記複数の電圧比較器のそれぞれの前記判断に基づいて抵抗値が決定され、前記ミラー電流に従う電圧降下によって、前記ミラー電流をアナログ電圧信号に変換する複数の可変抵抗と、前記アナログ電圧信号を前記デジタル電圧信号に変換するAD変換器と、を含んでも良い。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、カレントミラー回路は、チップ面積の増大を抑制しつつ、広い入力電流の範囲に対応しつつ、高精度で電流を増幅することができるようになる。
【0035】
また、本発明によれば、受信装置は、チップ面積の増大を抑制しつつ、広い入力電流の範囲に対応しつつ、高精度で光信号の強度を測定することができるようになる。
【0036】
また、本発明によれば、受信装置は、入力電流の大きさに応じて光信号の強度の測定の解像度を変更することができるようになる。
【0037】
また、本発明によれば、受信装置は、入力電流が光信号の強度の測定の解像度が変更される電流値付近で変動することによって発生する光信号の強度の測定の解像度の頻繁な変更を抑制することができるようになる。
【0038】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体集積回路の一例を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る半導体集積回路1は、例えば、電流源10と、カレントミラー回路20と、負荷回路50とを含む構成により実現される。
【0042】
電流源10は、例えばMOSトランジスタであり、カレントミラー回路20における参照電流IREFを生成する。また、電流源10は、カレントミラー回路20の電流入力端子IIN及びノードaを介して、トランジスタTR1のドレインと、トランジスタTR1乃至TR3のゲートとに接続される。これにより、カレントミラー回路20におけるトランジスタTR1乃至TR3を流れる電流が参照電流IREFとして引き抜かれる。
【0043】
カレントミラー回路20は、電流入力端子IINを介して電流源10によって引き抜かれる参照電流IREFを所定の倍率で増幅し、ミラー電流IMIRとして電流出力端子IOUTから負荷回路50に供給する。カレントミラー回路20は、例えば、トランジスタTR1乃至TR7を含んで構成される。なお、所定の倍率は、トランジスタTR1及びTR2のゲートサイズ(ゲート幅/ゲート長)の比率によって決定される。例えば、トランジスタTR1及びTR2のゲートサイズが同じである場合、所定の倍率は1となり、カレントミラー回路20は、参照電流IREFの電流値をミラー電流IMIRの電流値として、該ミラー電流IMIRを生成することとなる。
【0044】
また、カレントミラー回路20において、トランジスタTR1乃至TR3を接続する配線上にノードaが設けられる。また、トランジスタTR3乃至TR5を接続する配線上にノードbが設けられる。また、トランジスタTR5乃至TR7を接続する配線上にノードcが設けられる。また、トランジスタTR2、TR6及びTR7を接続する配線上にノードdが設けられる。
【0045】
トランジスタTR1は、電流電圧変換素子として機能し、電流源10によって引き抜かれる参照電流IREFに基づいてノードaの電位を決定する。トランジスタTR1は、例えば、P型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR1のソースは、電源線VDDに接続され、ドレインはノードaを介して、電流源10と、トランジスタTR1乃至TR3のゲートとに接続される。
【0046】
トランジスタTR2は、電圧電流変換素子として機能し、トランジスタTR1によって決定されるノードaの電位と、後述するドレイン電位ミラー部21によって決定されるノードdの電位とに基づいて、ミラー電流IMIRを生成し、該電流をトランジスタTR7及び電流出力端子IOUTを介して負荷回路50に供給する。トランジスタTR2は、例えば、P型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR2のソースは、電源線VDDに接続される一方、ドレインはノードdを介してトランジスタTR6のゲート及びトランジスタTR7のソースに接続され、また、ゲートは、上述したように、ノードaを介して、電流源10と、トランジスタTR1のドレインと、トランジスタTR1及びTR3のゲートとに接続される。
【0047】
トランジスタTR3は、電圧電流変換素子として機能し、ノードaの電位に基づいて、電流I1を生成し、該電流をトランジスタTR4及びTR5に供給する。トランジスタTR3は、例えば、P型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR3のソースは、電源線VDDに接続される一方、ドレインはノードbを介してトランジスタTR4のドレインと、トランジスタTR4及びTR5のゲートとに接続され、また、ゲートは、上述したように、ノードaを介して、電流源10と、トランジスタTR1のドレインと、トランジスタTR1及びTR2のゲートとに接続される。なお、トランジスタTR3は、トランジスタTR4乃至TR7とでドレイン電位ミラー部21を構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0048】
トランジスタTR4は、電流電圧変換素子として機能し、トランジスタTR3によって供給される電流I1に基づいてノードbの電位を決定する。トランジスタTR4は、例えば、N型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR4のソースは、接地線GNDに接続され、ドレインはノードbを介して、トランジスタTR3のドレインと、トランジスタTR4及びTR5のゲートとに接続される。なお、トランジスタTR4は、トランジスタTR3、TR5、TR6及びTR7とでドレイン電位ミラー部21を構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0049】
トランジスタTR5は、電圧電流変換素子として機能し、ノードbの電位に基づいて電流I2を生成する。トランジスタTR5は、例えば、N型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR5のソースは、接地線GNDに接続される一方、ドレインはノードcを介してトランジスタTR6のドレイン及びトランジスタTR7のゲートに接続され、また、ゲートは、上述したように、ノードbを介して、トランジスタTR3及びTR4のドレインと、トランジスタTR4のゲートとに接続される。これにより、トランジスタTR6を流れる電流が電流I2として引き抜かれる。なお、トランジスタTR5は、トランジスタTR3、TR4、TR6及びTR7とでドレイン電位ミラー部21を構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0050】
トランジスタTR6は、電流電圧変換素子として機能し、トランジスタTR5によって引き抜かれる電流I2に基づいてノードdの電位を決定する。トランジスタTR6は、例えば、P型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR6のソースは、電源線VDDに接続される一方、ドレインはノードcを介してトランジスタTR5のドレイン及びトランジスタTR7のゲートに接続され、また、ゲートは、ノードdを介してトランジスタTR2のドレイン及びトランジスタTR7のソースに接続される。なお、トランジスタTR6は、トランジスタTR3、TR4、TR5及びTR7とでドレイン電位ミラー部21を構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0051】
トランジスタTR7は、バッファとして機能し、負荷回路50によるノードdの電位への影響を抑制する。トランジスタTR7は、例えば、P型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR7のソースは、ノードdを介してトランジスタTR6のゲート及びトランジスタTR2のドレインに接続される一方、ドレインは電流出力端子IOUTを介して負荷回路50に接続され、また、ゲートは、上述したように、ノードcを介してトランジスタTR5及びTR6のドレインに接続される。なお、トランジスタTR7は、トランジスタTR3乃至TR6とでドレイン電位ミラー部21を構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0052】
上述したように、トランジスタTR3乃至TR7は、ドレイン電位ミラー部21を構成する。ドレイン電位ミラー部21は、トランジスタTR2のドレインの電位をトランジスタTR1のドレインの電位と略等しい電位に調整する。具体的には、ドレイン電位ミラー部21は、トランジスタTR3によって参照電流IREFを所定の倍率で増幅し、電流I1としてトランジスタTR4に供給する。次に、ドレイン電位ミラー部21は、トランジスタTR4及びTR5によって電流I1を複製し、電流I2としてトランジスタTR6から該電流を引き抜く。そして、ドレイン電位ミラー部21は、トランジスタTR6及び電流I2に基づいてノードdの電位(即ち、トランジスタTR2のドレインの電位)を決定するとともに、トランジスタTR7によって負荷回路50がノードdの電位に及ぼす影響を抑制する。また、トランジスタTR6のソース及びドレインの間に流れる電流I2と、トランジスタTR1のソース及びドレインの間に流れる参照電流IREFとが略等しくなること、及びトランジスタTR1及びTR6のソースがいずれも電源線VDDに接続されることによって、トランジスタTR6のゲートの電位は、トランジスタTR1のゲートの電位と略等しくなる。従って、ドレイン電位ミラー部21は、トランジスタTR2のドレインの電位であるノードdの電位をトランジスタTR1のドレインの電位であるノードaの電位に略等しく調整することとなる。
【0053】
なお、本例においては、ドレイン電位ミラー部21は、参照電流IREFを所定の倍率で増幅することによって電流I1を生成し、電流I1を複製(即ち、1倍で増幅)することで電流I2を生成し、さらに、電流I2及びトランジスタTR6に基づいてノードdの電位を決定するが、これに限られるものではない。ドレイン電位ミラー部21において、電流I1及び電流I2の電流値は、ノードdの電位がノードaの電位と略等しい電位になる条件を満たす範囲で、それぞれ任意の電流値であって良い。即ち、ドレイン電位ミラー部21において、トランジスタTR3乃至TR7のゲートサイズは、ノードdの電位がノードaの電位と略等しい電位になる条件を満たす範囲で、それぞれ任意の値であって良い。
【0054】
以上のように構成されるカレントミラー回路20は、ドレイン電位ミラー部21によってトランジスタTR2のドレイン電位であるノードdの電位をトランジスタTR1のドレイン電位であるノードaの電位と略等しい電位に決定する。従って、カレントミラー回路20は、電流源10によって引き抜かれる参照電流IREFを
高い精度で増幅し、ミラー電流IMIRとして負荷回路50に供給することができる。また、ドレインミラー部21の構成が単純であることにより、カレントミラー回路20は、チップ面積の増大を抑制することができる。また、カレントミラー回路20は、トランジスタTR1のゲート及びソースの間の電位差に、電源線VDDから電流入力端子IIN(即ちノードa)までの電位の低下を抑制する。トランジスタTR1のゲート及びソースの間の電位差は、参照電流IREFに基づいて決定されるため、カレントミラー回路20は、広い参照電流IREFの範囲で駆動することができる。
【0055】
負荷回路50は、例えば、可変抵抗や、容量性素子、種々のデジタル回路のインターフェースであり、カレントミラー回路20から供給されるミラー電流IMIRによって駆動する。負荷回路50は、カレントミラー回路20の電流出力端子IOUTを介して、トランジスタTR7のドレインに接続される。
【0056】
上述したように半導体集積回路1は、カレントミラー回路20によって、電流源10の電流を高精度で増幅し、該電流を負荷回路50に供給することができる。また、半導体集積回路1は、カレントミラー回路20によって、チップ面積の増大を抑制しつつ、広い入力電流の範囲に対応しつつ、高精度で電流を増幅して、該電流を負荷回路50に供給することができる。
【0057】
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体集積回路の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る半導体集積回路1Aは、例えば、電流源10と、カレントミラー回路20Aと、負荷回路50とを含む構成により実現される。
【0058】
電流源10は、カレントミラー回路20Aにおける参照電流IREFを生成し、カレントミラー回路20Aの電流入力端子IIN及びノードeを介して、該電流をトランジスタTR11乃至TR13に供給する。また、電流源10は、電流入力端子IIN及びノードeを介して、トランジスタTR11のドレインと、トランジスタTR11乃至TR13のゲートとに接続される。
【0059】
カレントミラー回路20Aは、電流入力端子IINを介して電流源10から供給される参照電流IREFを所定の倍率で増幅することによって、ミラー電流IMIRを生成する。また、カレントミラー回路20Aは、電流出力端子IOUTを介して負荷回路50に接続される。これにより、該増幅したミラー電流IMIRは、負荷回路50から引き抜かれる。カレントミラー回路20Aは、例えば、トランジスタTR11乃至TR17を含んで構成される。なお、所定の倍率は、トランジスタTR11及びTR12のゲートサイズの比率によって決定する。例えば、トランジスタTR11及びTR12のゲートサイズが同じである場合、所定の倍率は1となり、カレントミラー回路20Aは、参照電流IREFの電流値をミラー電流IMIRの電流値として、該ミラー電流IMIRを生成することとなる。
【0060】
また、カレントミラー回路20Aにおいて、トランジスタTR11乃至TR13を接続する配線上にノードeが設けられる。また、トランジスタTR13乃至TR15を接続する配線上にノードfが設けられる。また、トランジスタTR15乃至TR17を接続する配線上にノードgが設けられるまた、トランジスタTR12、TR16及びTR17を接続する配線上にノードhが設けられる。
【0061】
トランジスタTR11は、電流電圧変換素子として機能し、電流源10に供給される参照電流IREFに基づいてノードeの電位を決定する。トランジスタTR11は、例えば、N型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR11のソースは、接地線GNDに接続され、ドレインはノードeを介して、電流源10と、トランジスタTR11乃至TR13のゲートとに接続される。
【0062】
トランジスタTR12は、電圧電流変換素子として機能し、トランジスタTR11によって決定されるノードeの電位と、後述するドレイン電位ミラー部21Aによって決定されるノードhの電位とに基づいてミラー電流IMIRを生成する。トランジスタTR12は、例えば、N型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR12のソースは、接地線GNDに接続される一方、ドレインはノードhを介してトランジスタTR16のゲート及びトランジスタTR17のドレインに接続され、また、ゲートは、上述したように、ノードeを介して、電流源10と、トランジスタTR11のドレインと、トランジスタTR11及びTR13のゲートとに接続される。これにより、負荷回路50から電流出力端子IOUT及びトランジスタTR17を介して流れる電流が、ミラー電流IMIRとして負荷回路50から引き抜かれる。
【0063】
トランジスタTR13は、電圧電流変換素子として機能し、ノードeの電位に基づいて電流I1を生成する。トランジスタTR13は、例えば、N型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR13のソースは、接地線GNDに接続される一方、ドレインは、ノードfを介してトランジスタTR14のドレインと、トランジスタTR14及びTR15のゲートとに接続され、また、ゲートは、上述したように、ノードeを介して、電流源10と、トランジスタTR11のドレインと、トランジスタTR11及びTR12のゲートとに接続される。これにより、トランジスタTR14を流れる電流が電流I1として引き抜かれる。なお、トランジスタTR13は、トランジスタTR14乃至TR17とでドレイン電位ミラー部21Aを構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0064】
トランジスタTR14は、電流電圧変換素子として機能し、トランジスタTR13によって引き抜かれる電流I1に基づいてノードfの電位を決定する。トランジスタTR14は、例えば、P型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR14のソースは、電源線VDDに接続され、ドレインはノードfを介して、トランジスタTR13のドレインと、トランジスタTR14及びTR15のゲートとに接続される。なお、トランジスタTR14は、トランジスタTR13、TR15、TR16及びTR17とでドレイン電位ミラー部21Aを構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0065】
トランジスタTR15は、電圧電流変換素子として機能し、ノードfの電位に基づいて電流I2を生成し、該電流をトランジスタTR16に供給する。トランジスタTR15は、例えば、P型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR15のソースは、電源線VDDに接続される一方、ドレインは、ノードgを介してトランジスタTR16のドレイン及びトランジスタTR17のゲートに接続され、また、ゲートは、上述したように、ノードfを介して、トランジスタTR13及びTR14のドレインと、トランジスタTR14のゲートとに接続される。なお、トランジスタTR15は、トランジスタTR13、TR14、TR16及びTR17とでドレイン電位ミラー部21Aを構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0066】
トランジスタTR16は、電流電圧変換素子として機能し、トランジスタTR15によって供給される電流I2に基づいてノードhの電位を決定する。トランジスタTR16は、例えば、N型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR16のソースは、接地線GNDに接続される一方、ドレインは、ノードgを介してトランジスタTR15のドレイン及びトランジスタTR17のゲートに接続され、また、ゲートは、ノードhを介してトランジスタTR12のドレイン及びトランジスタTR17のソースに接続される。なお、トランジスタTR16は、トランジスタTR13、TR14、TR15及びTR17とでドレイン電位ミラー部21Aを構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0067】
トランジスタTR17は、バッファとして機能し、負荷回路50によるノードhの電位への影響を抑制する。トランジスタTR17は、例えば、N型MOSトランジスタを含んで構成される。この場合、トランジスタTR17のソースは、トランジスタTR16のゲート及びトランジスタTR12のドレインに接続される一方、ドレインは、電流出力端子IOUTを介して負荷回路50に接続され、また、ゲートは、上述したように、ノードgを介してトランジスタTR15及びTR16のドレインに接続される。なお、トランジスタTR17は、トランジスタTR13乃至TR16とでドレイン電位ミラー部21Aを構成するが、その動作の詳細については後述する。
【0068】
上述したように、トランジスタTR13乃至TR17は、ドレイン電位ミラー部21Aを構成する。ドレイン電位ミラー部21Aは、トランジスタTR12のドレインの電位をトランジスタTR11のドレインの電位と略等しい電位に調整する。具体的には、ドレイン電位ミラー部21Aは、トランジスタTR13によって参照電流IREFを所定の倍率で増幅し、電流I1としてトランジスタTR14から該電流を引き抜く。次に、ドレイン電位ミラー部21Aは、トランジスタTR14及びTR15によって電流I1を複製し、電流I2としてトランジスタTR16に供給する。そして、ドレイン電位ミラー部21Aは、トランジスタTR16及び電流I2に基づいてノードhの電位(即ち、トランジスタTR12のドレインの電位)を決定するとともに、トランジスタTR17によって負荷回路50がノードhの電位に及ぼす影響を抑制する。トランジスタTR11のソース及びドレインの間に流れる参照電流IREFと、トランジスタTR16のソース及びドレインの間に流れる電流I2とが略等しくなること、及びトランジスタTR11及びTR16のソースはいずれも接地線GNDに接続されることによって、トランジスタTR16のゲートの電位は、トランジスタTR11のゲートの電位と略等しくなる。従って、ドレイン電位ミラー部21Aは、トランジスタTR11のドレインの電位であるノードeの電位に、トランジスタTR12のドレインの電位であるノードhの電位を略等しく調整することとなる。
【0069】
なお、本例においては、ドレイン電位ミラー部21Aは、参照電流IREFを所定の倍率で増幅することによって電流I1を生成し、電流I1を複製(即ち、1倍で増幅)することで電流I2を生成し、さらに、電流I2及びトランジスタTR16に基づいてノードhの電位を決定するが、これに限られるものではない。ドレイン電位ミラー部21Aにおいて、電流I1及び電流I2の電流値は、ノードhの電位がノードeの電位と略等しい電位になる条件を満たす範囲で、それぞれ任意の電流値であって良い。即ち、ドレイン電位ミラー部21Aにおいて、トランジスタTR13乃至TR17のゲートサイズは、ノードhの電位がノードeの電位と略等しい電位になる条件を満たす範囲で、それぞれ任意の値であって良い。
【0070】
以上のように構成されるカレントミラー回路20Aは、ドレイン電位ミラー部21AによってトランジスタTR12のドレイン電位であるノードhの電位をトランジスタTR11のドレイン電位であるノードeの電位と略等しい電位に決定する。従って、カレントミラー回路20Aは、電流源10から供給される参照電流IREFを略等しい精度で増幅し、ミラー電流IMIRとして負荷回路50に供給することができる。また、ドレイン電位ミラー部21Aの構成が単純であることにより、カレントミラー回路20Aは、チップ面積の増大を抑制することができる。また、カレントミラー回路20Aは、接地線GNDから電流入力端子IINの電位(即ちノードaの電位)までの電位の上昇をトランジスタTR11のソース及びゲートの間の電位差に抑制する。トランジスタTR11のゲート及びソースの間の電位差は、参照電流IREFに基づいて決定されるため、カレントミラー回路20Aは、広い参照電流IREFの範囲で駆動することができる。
【0071】
負荷回路50は、カレントミラー回路20Aから引き抜かれるミラー電流IMIRによって駆動する。負荷回路50は、カレントミラー回路20Aの電流出力端子IOUTを介して、トランジスタTR17のドレインに接続される。
【0072】
上述したように半導体集積回路1Aは、カレントミラー回路20Aによって、電流源10の電流を高精度で増幅し、該電流を負荷回路50に供給することができる。また、半導体集積回路1Aは、カレントミラー回路20Aによって、チップ面積の増大を抑制しつつ、広い入力電流の範囲に対応しつつ、高精度で電流を増幅して、該電流を負荷回路50に供給することができる。
【0073】
図3は、本発明の一実施形態に係る光信号の受信装置を含む装置構成の一例を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る装置構成は、送信装置2と、受信装置3とを含んで構成される。
【0074】
送信装置2は、例えばPON(Passive Optical Network)の送信部である。PONとは、光信号を用いた通信システムであって、送信装置及び受信装置の間に分岐装置を挿入することによって、一本の光ファイバーを複数の光ファイバーに分岐し、該分岐した光ファイバーを介して複数の受信装置に光信号を送信するように構成される通信システムである。送信装置2は、外部の別の装置(図示せず)又は自身が有する制御装置(図示せず)の制御に基づいて、光信号OPT_SIGを生成し、該光信号を受信装置3の光検出器11に出力する。
【0075】
受信装置3は、例えば、PONの受信部である。受信装置3は、送信装置2から出力される光信号OPT_SIGを電流信号に変換し、変換した電流信号をさらに電圧信号に変換して、該電圧信号に従う種々の処理を実行する。また、受信装置3は、送信装置2から出力される光信号OPT_SIGの信号強度を電流信号に変換し、変換した電流信号をさらにデジタル信号に変換した後に、該デジタル信号に基づいて該光信号OPT_SIGの信号強度を測定する。受信装置3は、例えば、光検出器11と、カレントミラー回路20と、電流電圧変換器30と、電圧比較器40と、電流モードAD(Analog-Digital)変換器60と、ロジック部70とを含んで構成される。なお、受信装置3において、カレントミラー回路20の電流入力端子IINと、光検出器11と、電圧比較器40の入力端子INとを接続する配線上にノードxが設けられる。また、受信装置3において、光検出器11及び電流電圧変換器30を接続する配線上にノードyが設けられる。
【0076】
受信装置3において、光検出器11、カレントミラー回路20及び電流電圧変換器30は、参照電流IREFが流れる電流経路を構成する。斯かる電流経路において、カレントミラー回路20の電源線VDDから光検出器11を介して電流電圧変換器30の接地線GNDに、参照電流IREFが流れることとなる。
【0077】
光検出器11は、例えば、フォトダイオードである。光検出器11は、送信装置2から出力される光信号OPT_SIGを電流信号に変換し、参照電流IREFとして各コンポーネントに供給する。具体的には、光検出器11は、送信装置2から出力される光信号OPT_SIGに基づいて、所定の効率で参照電流IREFを生成し、該参照電流IREFを電流信号として電流電圧変換器30に出力するとともに、カレントミラー回路20から該参照電流IREFを引き抜く。光検出器11は、そのアノード端子はノードyを介して電流電圧変換器30に接続される一方で、そのカソード端子はノードxを介してカレントミラー回路20の電流入力端子IIN及び電圧比較器40の入力端子INに接続される。参照電流IREFは、光信号OPT_SIGのノードxの電位強度の情報と、光信号OPT_SIGが示す受信すべきデータの情報とを示す。
【0078】
なお、上述した電流経路によって、ノードxの電位がノードyの電位よりも高くなるため、光検出器11は、その大きさをノードx及びノードyの間の電位差とする逆バイアスで駆動されることとなる。斯かる逆バイアスの大きさは、光検出器11が生成する参照電流IREFに基づいて、カレントミラー回路20及び電流電圧変換器30によって所定の大きさ以上となるように決定される。
【0079】
カレントミラー回路20は、光検出器11によって電流入力端子IINから引き抜かれる参照電流IREFを所定の倍率で増幅し、ミラー電流IMIRとして電流出力端子IOUTから電流モードAD変換器60の電流入力端子IINに出力する。また、カレントミラー回路20は、該参照電流IREFに基づいて、ノードa(
図1参照)と同電位となるノードxの電位を決定する。
【0080】
電流電圧変換器30は、例えば、TIA(Trans Impedance Amplifier)であり、光検出器11によって変換された電流信号を電圧信号に変換し、該電圧信号をロジック部70に出力するとともに、該電流信号に基づいてノードyの電位を決定する。具体的には、電流電圧変換器30は、光検出器11から出力される参照電流IREFを電流信号から電圧信号VDATAへと変換し、該電圧信号VDATAをロジック部70に出力する。また、電流電圧変換器30は、参照電流IREFに基づいて発生する電圧降下によってノードyの電位を決定する。
【0081】
電圧比較器40は、カレントミラー回路20によって決定されるノードxの電位である入力電位VINに基づいて、電流モードAD変換器60の所定の変換率を制御するとともに、該所定の変換率の情報をロジック部70に出力する。具体的には、電圧比較器40は、入力端子INに供給される入力電位VINと、バイアス回路(図示せず)から参照端子REFに供給される参照電位VREFとを比較して、入力電位VINが参照電位VREFよりも高いか否かを判断する。電圧比較器40は、入力電位VINが参照電位VREFよりも高いと判断する場合、例えばその電位を接地線GNDの電位(即ち“L”)とする比較信号COMPを生成し、該信号を出力端子OUTから電流モードAD変換器60の制御端子CTと、ロジック部70とに出力する。一方、電圧比較器40は、入力電位VINが参照電位VREFよりも高くないと判断する場合、例えばその電位を電源線VDDの電位(即ち“H”)とする比較信号COMPを生成し、該信号を出力端子OUTから電流モードAD変換器60の制御端子CTと、ロジック部70とに出力する。なお、電圧比較器40は、入力電位VIN及び比較信号COMPの電位の間の関係においてヒステリシスを有していても良いが、その詳細については後述する。
【0082】
電流モードAD変換器60は、電圧比較器40によって制御される所定の変換率で、カレントミラー回路20から出力されるミラー電流IMIRが示す光信号OPT_SIGの強度の情報をデジタル信号に変換し、該デジタル信号をロジック部70に出力する。具体的には、電流モードAD変換器60は、ロジック部70からクロック端子CKに出力される所定のクロックCLKに基づいて、電圧比較器40から制御端子CTに出力される比較信号COMPに従う所定の変換率で、カレントミラー回路20から電流入力端子IINに供給されるミラー電流IMIRをモニタ信号MONに変換し、該信号を出力端子OUTからロジック部70に出力する。所定の変換率は、電圧比較器40から出力される比較信号COMPの電位が例えば“H”である場合低い値となり、該信号の電位が例えば“L”である場合高い値となる。
【0083】
ロジック部70は、電流電圧変換器30によって電圧信号に変換された光信号OPT_SIGの内容に従って、種々の処理を実行する。また、ロジック部70は、電圧比較器40から出力される電流モードAD変換器60の所定の変換率の情報と、電流モードAD変換器60によってデジタル電圧信号に変換された光信号OPT_SIGの強度の情報とに基づいて、光信号OPT_SIGの強度を測定する。具体的には、ロジック部70は、電流電圧変換器30から出力される電圧信号VDATAの内容に従って、種々の処理を実行する。また、ロジック部70は、所定のクロックCLKを生成し、該クロックを電流モードAD変換器60のクロック端子CKに出力するとともに、電圧比較器40から出力される比較信号COMPの状態を判断する。ロジック部70は、比較信号COMPの電位が例えば“H”である場合、電流モードAD変換器60の所定の変換率は低い値であると判断する。一方、ロジック部70は、比較信号COMPの電位が例えば“L”である場合、電流モードAD変換器60の所定の変換率は高い値であると判断する。そして、ロジック部70は、該判断した所定の変換率と、電流モードAD変換器60から出力されるモニタ信号MONの内容とに基づいて、光信号OPT_SIGの強度を測定する。
【0084】
以上のように構成される受信装置3は、送信装置2から出力される光信号OPT_SIGに基づいて、光検出器11によって所定の効率で参照電流IREFを生成し、さらに、カレントミラー回路20によって、該生成した参照電流IREFを所定の倍率で増幅することでミラー電流IMIRを生成する。受信装置3は、該生成したミラー電流IMIRを参照電流IREFに基づく所定の変換率でデジタル電圧信号であるモニタ信号MONに変換し、該信号と所定の変換率に基づいて光信号OPT_SIGの強度を測定する。また、受信装置3は、参照電流IREFを電流電圧変換器30で電圧信号VDATAに変換し、該信号に従う処理を実行する。
【0085】
図4は、本発明の一実施形態に係る受信装置における電圧比較器の構成の一例を示す図である。具体的には、
図4は、本発明の一実施形態に係る受信装置3における電圧比較器40が入出力特性に関してヒステリシスを有する場合の電圧比較器40の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る電圧比較器40は、例えば、増幅器41と、可変抵抗R1及びR2とを含んで構成される。また、電圧比較器40において、増幅器41の非反転端子“+”と、可変抵抗R1及びR2とを接続する配線上にノードsが設けられる。
【0086】
増幅器41は、例えばオペアンプである。増幅器41は、反転端子“−”に入力される入力電位VINの電位と、非反転端子“+”に入力されるノードsの電位Vsの電位とを比較し、入力電位VINがノードsの電位Vsよりも小さいか否かを判断する。増幅器41は、入力電位VINがノードsの電位Vsよりも小さいと判断する場合、その電位を“H”とする比較信号COMPを生成し、該信号を可変抵抗R2と、電流モードAD変換器60と、ロジック部70とに出力する。一方、増幅器41は、入力電位VINがノードsの電位Vsよりも小さくないと判断する場合、その電位を“L”とする比較信号COMPを生成し、該信号を可変抵抗R2と、電流モードAD変換器60と、ロジック部70とに出力する。
【0087】
可変抵抗R1及びR2は、例えば、ポリシリコン抵抗や拡散抵抗であり、分圧回路を構成することによってノードsの電位Vsを生成する。可変抵抗R1及びR2で構成される分圧回路は、出力端子OUTの電位と、参照端子REFの電位とを分圧することによってノードsの電位Vsを生成し、該電位を増幅器41の非反転端子“+”に供給する。なお、ノードsの電位Vsは、出力端子OUTの電位に依存する。出力端子OUTの電位は、典型的には“H”及び“L”のいずれかであるため、ノードsの電位Vsは、出力端子OUTの電位“H”及び“L”に基づく2通りの電位に決定されることとなる。
【0088】
次に、電圧比較器40の動作について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る受信装置における電圧比較器の入力端子及び出力端子の電位の関係を示す図である。同図において、参照電位VREFは、説明の簡単のため、(“H”+“L”)/2に示される関係(即ち、“H”及び“L”の平均値)を有すると仮定する。また、同図において、比較信号COMPの電位が“H”及び“L”である場合のノードsの電位をそれぞれ“Vsh”及び“Vsl”と定義する。また、同図において、“Vsh”と“Vsl”の電位差及び平均値をそれぞれ“Vsδ”及び“Vsm”と定義する。
【0089】
まず、電圧比較器40において、入力端子INにはその電位を“L”とする入力電位VINが供給されており、増幅器41は、比較信号COMPの電位を“H”として出力していると仮定する。このとき、ノードsの電位Vsは“Vsh”となる。斯かる状態で、入力電位VINが上昇した場合、増幅器41は、入力電位VINが“Vsh”を上回るまで比較信号COMPの電位を“H”として出力し、入力電位VINが“Vsh”を上回った場合に比較信号COMPの電位を“H”から“L”へと遷移させる。なお、“Vsh”は、以下に示す式1によって示される。
Vsh=(VREF×R2)/(R1+R2)+(VDD×R1)/(R1+R2) …<式1>
【0090】
次に、電圧比較器40において、入力端子INにはその電位を“H”とする入力電位VINが供給されており、増幅器41は、比較信号COMPの電位を“L”として出力していると仮定する。このとき、ノードsの電位Vsは“Vsl”となる。斯かる状態で、入力電位VINが低下した場合、増幅器41は、入力電位VINが“Vsl”を下回るまで比較信号COMPの電位を“L”として出力し、入力電位VINが“Vsl”を下回った場合に比較信号COMPの電位を“L”から“H”へと遷移させる。なお“Vsl”は、以下の式2によって示される。
Vsl=VREF×R2/(R1+R2) …<式2>
【0091】
従って、電圧比較器40は、参照電位VREFを中心とする“Vsδ“の幅をもつ電位の範囲の上限”Vsh“及び下限”Vsl“に、比較信号COMPの電位を切り替える入力端子INの電位を設定することとなる。なお、”Vsm“及び”Vsδ“は、それぞれ、式1及び式2に基づいて算出される以下の式3及び式4によって示される。
Vsm=(VREF×R2)/(R1+R2)+(1/2)×VDD×R1/(R1+R2) …<式3>
Vsδ=(VDD×R1)/(R1+R2) …<式4>
式3及び式4が示すように、電圧比較器40は、可変抵抗R1及びR2と、参照電位VREFとに基づいて、“Vsδ”及び“Vsm”を決定する。従って、本実施形態に係る受信装置3は、参照電位VREFと、可変抵抗R1及びR2の抵抗値とを制御することによって、“Vsδ”及び“Vsm”を任意の電位に設定することができる。
【0092】
上述したように、電圧比較器40は、比較信号COMPの電位を“H”として出力する場合、入力電位VINが“Vsh”を上回った時に比較信号COMPの電位を“H”から“L”へと遷移させる。一方、電圧比較器40は、比較信号COMPの電位を“L”として出力する場合、入力電位VINが“Vsl”を下回った時に比較信号COMPの電位を“L”から“H”へと遷移させる。従って、電圧比較器40は、比較信号COMPの電位を遷移させる入力電位VINの電位を比較信号COMPの電位に応じて変更するため、電圧比較器40は、入力電位VINが比較信号COMPの電位を遷移させる電位付近で変動することによる比較信号COMPの電位の頻繁な遷移を抑制することができる。
【0093】
図6は、本発明の一実施形態に係る電流モードAD変換器の構成の一例を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る電流モードAD変換器60は、可変抵抗R3と、AD(Analog Digital)変換器61とを含んで構成される。なお、電流モードAD変換器60において、電流入力端子IINと、AD変換器61と、可変抵抗R3とを接続する配線上にノードkが設けられる。
【0094】
可変抵抗R3は、カレントミラー回路20から出力されるミラー電流IMIRが示す光信号OPT_SIGの強度の情報をアナログ電圧信号へと変換する。また、可変抵抗R3は、電圧比較器40によってその抵抗値が制御される。具体的には、可変抵抗R3は、自身の抵抗値と、カレントミラー回路20から出力されるミラー電流IMIRとに基づいてノードkの電位を決定し、該電位をアナログ電圧信号Vkとする。可変抵抗R3の抵抗値は、電圧比較器40から出力される比較信号COMPの電位が例えば“H”である場合、低い抵抗値となり、該信号の電位が例えば“L”である場合、高い抵抗値となる。
【0095】
AD変換器61は、可変抵抗R3によってアナログ電圧信号に変換された光信号OPT_SIGの強度の情報をデジタル電圧信号に変換し、該信号をロジック部70に出力する。具体的には、AD変換器61は、ロジック部70から出力される所定のクロックCLKに基づいて、可変抵抗R3によって変換されたアナログ電圧信号Vkをデジタル電圧信号に変換し、モニタ信号MONとしてロジック部70に出力する。
【0096】
上述したように、電流モードAD変換器60において、可変抵抗R3は、電圧比較器40によって制御される抵抗値に基づいて、ミラー電流IMIRをアナログ電圧信号Vkに変換する。また、AD変換器61は、該変換されたアナログ電圧信号Vkに基づいてモニタ信号MONを生成する。従って、電流モードAD変換器60は、電圧比較器40の制御に基づいて変動する可変抵抗R3の抵抗値と、AD変換器61の変換率とによって決定される所定の変換率に基づいて、ミラー電流IMIRをモニタ信号MONに変換することとなる。
【0097】
図7は、本発明の一実施形態に係る受信装置における参照電流と、モニタ信号の電位との関係を示す図である。同図において、電流モードAD変換器60におけるAD変換器61は、アナログ電圧信号Vkを8ビット(即ち、2^8より、256段階)のモニタ信号MONに変換するものと仮定する。また、同図において、参照電流IREFは、0uAから1mAまでの範囲で変化するものと仮定する。また、同図において、上述した“Vsh”及び“Vsl”に相当する参照電流IREFの電流値は、それぞれ250uA+α及び250uA−αであると仮定する。また、同図においてカレントミラー回路20の所定の倍率は1であると仮定する。
【0098】
まず、参照電流IREFが0uAから1mAまで上昇したと仮定する。斯かる場合において、受信装置3は、参照電流IREFが250uA+αを上回るまで、参照電流IREFが0uA及び300uAである時に、モニタ信号MONの状態がそれぞれ、例えば、“00000000”(即ちゼロスケール)及び“11111111”(即ちフルスケール)に対応するように、アナログ電圧信号Vkをモニタ信号MONに変換する。斯かる場合、受信装置3のLSB(Least Significant Bit)は、300uA/256により1.2uAに略等しい値となる。
【0099】
受信装置3は、参照電流IREFが250uA+αを上回った時、参照電流IREFが0uA及び1mAである時に、モニタ信号MONの状態がそれぞれゼロスケール及びフルスケールに対応するように、アナログ電圧信号Vkからモニタ信号MONへの変換率を変更する。斯かる場合、受信装置3のLSBは、1mA/256により4uAに略等しい値となる。
【0100】
次に、参照電流IREFが1mAから0uAまで下降したと仮定する。斯かる場合において、受信装置3は、参照電流IREFが250uA−αを下回るまで、参照電流IREFが0uA及び1mAの時に、モニタ信号MONの状態がそれぞれゼロスケール及びフルスケールに対応するように、アナログ電圧信号Vkをモニタ信号MONに変換する。斯かる場合、受信装置3のLSBは上述したように4uAに略等しい値となる。
【0101】
受信装置3は、参照電流IREFが250uA−αを下回った時、参照電流IREFが0uA及び300uAの時に、モニタ信号MONの状態がそれぞれゼロスケール及びフルスケールに対応するように、アナログ電圧信号Vkからモニタ信号MONへの変換率を変更する。斯かる場合、受信装置3のLSBは、上述したように1.2uAに略等しい値となる。
【0102】
上述したように、受信装置3は、電圧比較器40及び電流モードAD変換器60によって、参照電流IREFの電流値に応じて、参照電流IREFからモニタ信号MONへの変換率を変更する。従って、受信装置3は、参照電流IREFの電流値に応じた解像度で、光信号OPT_SIGの強度を測定することができる。また、受信装置3は、参照電流IREFの上昇時及び下降時において、電流モードAD変換器60の所定の変換率を変更する参照電流IREFの電流値が異なるように該所定の変換率を設定する。従って、受信装置3は、光信号OPT_SIGの強度の測定の解像度を変更する電流値付近で参照電流IREFの電流値が変動することによる解像度の頻繁な変更を抑制することができる。
【0103】
なお、本例において、受信装置3は、参照電流IREFの電流値に応じて、電流モードA変換器60の所定の変換率を2段階に変更するが、これに限られるものではない。受信装置3は、例えば、電圧比較器40と、電流モードAD変換器60における可変抵抗R3とを複数設けることによって、該所定の変換率を任意の段階で変更しても良い。
【0104】
図8は、本発明の一実施形態に係る受信装置におけるカレントミラー回路の参照電流とミラー電流との関係を示す図である。図中、比較のため、従来のカレントミラー回路における参照電流IREFとミラー電流IMIRとの関係も示している(太い破線)。従来のカレントミラー回路は、カレントミラー回路20からドレイン電位ミラー部21を除外することによって構成される。なお、同図において、従来のカレントミラー回路及びカレントミラー回路20の所定の倍率は、いずれも1であると仮定する。
【0105】
同図に示すように、本実施形態に係る受信装置3におけるカレントミラー回路20は、従来のカレントミラー回路と比較して、高精度で参照電流IREFを増幅して、ミラー電流IMIRを生成することが分かる。また、従来のカレントミラー回路が参照電流IREFの電流値が低くなるに従って、ミラー電流IMIRを生成する精度が低下するのに対して、カレントミラー回路20は、参照電流IREFの電流値によらずに高精度でミラー電流IMIRを生成することが分かる。例えば、参照電流IREFがサブスレッショルド範囲内の1.E−06[A]である時、従来のカレントミラー回路は、ミラー電流IMIRの電流値を約2.E−06[A]をやや下回る電流値として該電流を生成するのに対して、カレントミラー回路20は、ミラー電流IMIRの電流値を略1.E−06[A]として該電流を生成する。
【0106】
図9は、本発明の一実施形態に係る受信装置における参照電流
とエラー率との関係を示す図である。図中、比較のため、従来の受信装置における参照電流IREF
とエラー率との関係も示している(太い破線)。従来の受信装置は、カレントミラー回路20の代わりに、例えば、上述した従来のカレントミラー回路を含んで構成される。なお、エラー率は、
参照電流IREFに対して、ミラー電流IMIRがもつ誤差と定義される。
【0107】
同図に示すように、本実施形態に係る受信装置3は、従来の受信装置と比較して、
参照電流IREFが低下した場合においても、誤差の小さいミラー電流IMIRを生成するため、エラー率が低いことが分かる。また、従来のカレントミラー回路においては、参照電流IREFの電流値が低下するに従って該
ミラー電流のエラー率が顕著に増大するのに対して、本実施形態に係る受信装置3においては、該
ミラー電流のエラー率は、参照電流IREFの電流値にそれほど影響されないことが分かる。例えば、参照電流IREFが1.E−03[A]である時、従来の受信装置は、およそ13%の
誤差を含むのに対して、受信装置3は、
ほとんど誤差を含まない。また、例えば、参照電流IREFがサブスレッショルド範囲の1.E−06[A]である時、従来の受信装置は、およそ50%の
誤差をもつのに対して、受信装置3は、およそ
1%
程度の
誤差にとどまる。
【0108】
上述したように、本実施形態に係る受信装置3は、単純な回路構成で、広い参照電流IREFの範囲で駆動することができ、さらに、高精度で参照電流IREFを増幅することができるカレントミラー回路20を備える。従って、受信装置3は、チップ面積の増大を抑制しつつ、広い参照電流IREFの範囲に対応しつつ、高精度で光信号OPT_SIGの強度を測定することができる。
【0109】
また、本実施形態に係る受信装置3は、その入出力特性にヒステリシスを有する電圧比較器40を備え、該電圧比較器40の制御の下、電流モードAD変換器60がミラー電流IMIRをデジタル電圧信号に変換する所定の変換率を変更する。従って、本実施形態に係る受信装置3は、参照電流IREFの大きさに応じて光信号OPT_SIGの強度の測定の解像度を変更することができる。また、受信装置3は、光信号OPT_SIGの強度の測定の解像度を変更する電流値付近で参照電流IREFの電流値が変動することによって発生する該解像度の頻繁な変更を抑制することができる。
【0110】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0111】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0112】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。