(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
本発明の無線通信システムは、親局100と複数の子局120で構成されている。本例では親局100と1つの子局120の構成で説明する。
なお、子局120が複数の場合でも動作は同様である。
【0016】
親局100は、操作卓101と、モニタ部102と、地図表示部103と、制御部104と、無線部105と、アンテナ106で構成されている。
操作者は、操作卓101で子局120への指示やマイク(図示略)から音声を入力することにより、子局120の制御や拡声器126からマイクで入力した音声を放送することができる。
【0017】
制御部104は、操作卓101から入力された指示等に従い、制御信号や音声信号等の放送データを無線部105からアンテナ106を介して子局120に送信する。
また、制御部104は、操作卓101から入力された指示等の内容や子局120から送信された情報をモニタ部102または地図表示部103に表示する。
【0018】
子局120は、アンテナ121と、無線部122と、制御部123と、操作部128と、制御部123に制御されて音を出力するトランペットスピーカー等の拡声器126と、所定領域を撮影するカメラ部127で構成されている。
なお、カメラ部127は、雲台等の旋回機能をもっていてもよい。また、カメラ部127は、360°の全方向を撮影できるものでもよいし、熱感知可能な赤外線カメラでもよい。
【0019】
本実施例では、判定部124と、メモリ部125は制御部123に内蔵されている。
判定部124は、カメラ部127が撮影した画像に基づいて人物の有無を検出するものである。具体的には画像処理によって人そのものを検出したり、車両など人が運転している移動体を検出したりして、人物の有無を判定する。
なお、判定部124は、子局120のどこに配置されていてもよく、例えば、カメラ部127に内蔵されていてもよい。
【0020】
メモリ部125は、放送用音声データの記憶やカメラ部127が撮影した画像データを一次記憶するものである。
制御部123と拡声器126とは、無線部122が親局100から受信した放送データに基づいて放送を行う放送部として機能する。
【0021】
操作部128は、子局120を単独使用できるようにするもので、マイク等(図示略)を備えている。なお、操作部128の操作内容等は親局100に送信してもよい。
【0022】
下り回線141は、親局100から子局120に制御信号や音声信号等の放送データを無線伝送するものである。
上り回線142は、子局120から親局100にカメラ部127が撮影した画像データや動作確認信号(アンサーバック)等の子局情報を無線伝送するものである。
【0023】
親局100は、災害等の緊急時、子局120に対して「カメラ連動通報情報」を子局120に対して送信する。
「カメラ連動通報情報」は、子局120に人物の有無の判定に基づく再放送を実施させるための制御情報である。この「カメラ連動通報情報」は、一つのコマンド(例えばフラグ)であってもよいし、システム上の放送種別を示す情報であってもよいし、後述するカメラ部127による撮影画像を送信するか否かを示すコマンドを含む複数のコマンドからなる情報であってもよい。本実施例では、子局120がこの「カメラ連動通報情報」を受信することでカメラ部127と放送部が連動し、カメラ部127が撮影した画像データから人物の有無を判定し、放送部が判定結果に基づいて再放送を行う。
【0024】
次に、本発明の一実施例である無線通信システムの動作について
図2のフローチャートを用いて説明する。
子局120は、親局100から「カメラ連動通報情報」を無線部122で受信する(S201)と、S202の処理に進む。なお、子局120は、受信した放送データに「カメラ連動通報情報」が含まれていなければ、通常通り、受信した放送データに基づく放送(通報)を実施して、処理を終了する。
【0025】
S202の処理では、制御部123が、無線部122が受信した放送データに基づく放送(通報)を拡声器126から実施させる。また、制御部123は、「カメラ連動通報情報」を受信した場合には、受信した放送データをメモリ部125に保存する。また、「カメラ連動通報情報」を検出すると、判定部124は、カメラ部127が撮影した画像データから人物の有無の判定処理を開始し、S203の処理に進む。なお、判定部124は人物有りと判定した場合は、例えば起動接点を出力する等の方法により、制御部123へ人物有りと判定したことを通知する。
S203の処理では、放送(通報)終了後、内蔵タイマ(図示略)でカウントを開始する。
【0026】
S204の処理では、制御部128が、カウント時間と繰返しタイマ値とを比較し、カウント時間が繰返しタイマ値未満の場合(S204のNOルート)にはS204の処理に戻り、カウント時間が繰返しタイマ値以上の場合(S204のYESルート)にはS205の処理に進む。
「繰返しタイマ値」は、繰返し放送(通報)するまでの時間であり、これを長くすると次に放送(通報)を開始するまでの時間が延びる。避難に時間がかからない場合、もしくは、緊急性が高い場合は「繰返しタイマ値」を短く設定する。
「繰返しタイマ値」は、予め設定しておくが、親局100から変更の指示を出してもよい。
「繰返しタイマ値」は、例えば、津波警報が発令された場合には5分、土砂災害警報が発令された場合には10分を設定する。
【0027】
S205の処理では、上記S203から人物の有無の判定処理を継続して実施している判定部124から制御部123に対して人物有りの判定を通知していた場合(S205のYESルート)、制御部123は、メモリ部125からS202の処理で保存した放送データを読み出し、その放送データに基づいた放送(通報)を拡声器126から実施させることで再放送(通報)を行う(S202)。人物有りの判定を通知していなかった場合(S205のNOルート)、S206の処理に進む。
【0028】
S206の処理では、制御部128が、カウント時間と人物検出タイマ値とを比較し、カウント時間が人物検出タイマ値未満の場合(S206のNOルート)にはS205の処理に戻り、カウント時間が人物検出タイマ値以上の場合(S206のYESルート)には再放送(通報)の処理を終了する。
【0029】
「人物検出タイマ値」は、判定部124で人物の有無の判定を終了とする時間である。
「人物検出タイマ値」は、予め設定しておくが、親局100から変更の指示を出してもよい。
「人物検出タイマ値」は、例えば、津波警報が発令された場合には60分、土砂災害警報が発令された場合には180分を設定する。
【0030】
なお、「繰返しタイマ値」及び「人物検出タイマ値」は、上述のように親局100から変更の指示を出してもよい。例えば、放送データの制御情報として「繰返しタイマ値」及び「人物検出タイマ値」の情報を親局100から子局120に送信してもよい。また、放送データの制御情報として放送内容(津波警報、土砂災害警報、河川氾濫警報、ミサイル警報、気象情報警報)や緊急度を示す種別情報を親局100が子局120に送信する。子局120は、予め放送内容や緊急度に応じた「繰返しタイマ値」及び「人物検出タイマ値」を複数記憶しておき、受信した上記制御情報に基づいて、「繰返しタイマ値」及び「人物検出タイマ値」を変更してもよい。
【0031】
なお、
図2のフローチャートにおいて、再放送(通報)の処理の終了条件は、判定部124が人物有りの判定を通知せず、かつ、タイマ部のカウント時間が「人物検出タイマ値」以上である場合となっているが、親局100からの終了指示により子局120の再放送(通報)の処理を終了してもよい。この場合、親局100が終了指示を子局120に直接送信してもよいし、親局100と通信を行う移動局を備え、移動局からの指示を受けた親局100が、子局120へ終了指示を送る構成にしてもよい。これにより、親局100から避難した人でも、移動局によって子局120の再放送(通報)の処理を終了することができる。
【0032】
また、上記第1の内臓タイマとは別に、初回の放送(通報)からカウントを行う第2のタイマと、再放送(通報)の処理を終了するタイマ値と、を備え、第2のタイマのカウント時間が、再放送(通報)の処理を終了するタイマ値以上になった場合、上記第1の内臓タイマのカウント時間に関わらず、再放送(通報)処理を終了する構成にしてもよい。これにより、S205で、人物有りを判定し続け、再放送(通報)の処理が終了しないという状況を防ぐことができる。
【0033】
さらに、子局120は、判定部124で人物有りと判定した場合、無線部122によって上り回線142を介して親局100へ通知してもよい。この場合、カメラ部127が撮影した画像データを、無線部122によって上り回線142を介して親局100に伝送してもよい。なお、画像データは動画でも静止画でも良く、画像データの伝送は、例えば、判定部124が人物有りと判定した時に行ったり、放送部による放送(通報)から所定時間が経過する毎に行ったりする。このとき、親局100は、子局120から伝送された画像データを受信し、モニタ部102に表示することが望ましい。
【0034】
また、親局100は、地図表示部103に画像データを伝送してきた子局120の位置と、カメラ部127の撮影範囲を表示しても良く、画像データを伝送してきた子局120の位置は点滅等させて目立つように表示させることが望ましい。
【0035】
以上説明した通り、実施例1に係る無線通信システムにおいて、子局120は、親局100から送信された放送データを受信する無線部122と、無線部122から受信した放送データに基づいて放送を行う放送部と、放送データを保持するメモリ部125と、所定領域を撮影するカメラ部127と、カメラ部127が撮影した撮影画像から人物の有無を判定する判定部124と、を備え、放送部は、判定部124が人物有りと判定した場合には、放送データに基づいた再放送を行うことを特徴としている。これにより、親局100からの制御無しに、人が存在している場所を重点にした再放送を行うことができる。例えば、親局100から子局120へ津波による避難の放送指示を1度行えば、その後は子局120が、近くに人が存在していると自発的に判定して避難の再放送を行うので、親局100にいる人も即座に津波から避難することができる。また、人が存在しないのに無意味に再放送を繰り返すことがなく、効率良く必要に応じた再放送を実施できる。
【0036】
また、実施例1に係る無線通信システムにおいて、親局100は、「カメラ連動通報情報」を子局120へ送信し、子局120は、親局100から「カメラ連動通報情報」を無線部122で受信した場合に、カメラ部127の撮影画像から人物の有無を判定部124で判定することを特徴としている。これにより、子局120での人物の有無の判定を必要に応じて行うことが可能となり、子局120における消費電力やメモリ部125の容量の圧迫を抑止することができる。
【0037】
また、実施例1に係る無線通信システムにおいて、子局120は、判定部124がカメラ部127の撮影画像から人物有りと判定した場合、無線部122により親局100へ通知を行うことを特徴としている。これにより、親局100からどの子局120が人物有りと判定したのかを確認することができるため、避難できていない人がどの子局120の近くにいるのかを確認することができる。
【0038】
また、実施例1に係る無線通信システムにおいて、子局120は、メモリ部125にカメラ部127の撮影画像を保持し、判定部124がカメラ部127の撮影画像から人物有りと判定した場合、無線部122によりカメラ部127の撮影画像を親局100へ送信することを特徴としている。これにより、子局120のカメラ部127が撮影し、判定部124が人物有りと判定した画像データが、親局100へ送られるため、避難できていない人の状況を親局100から確認することができる。
【0039】
また、実施例1に係る無線通信システムにおいて、子局120は、メモリ部125にカメラ部127の撮影画像を保持し、親局100から送信された放送データを受信した時から所定の時間が経過する毎に、無線部122によりカメラ部127の撮影画像を親局100へ送信することを特徴としている。これにより、子局120のカメラ部127が撮影した画像データは、遂次親局100へ送られるため、子局120のカメラ部127が撮影している所定領域の避難状況を親局100から遂次確認することができる。
【0040】
また、実施例1に係る無線通信システムにおいて、子局120は、放送部が放送を行うとカウントを開始するタイマ部と、第1のタイマ値と、第2のタイマ値と、を備えており、再放送を行う処理において、タイマ部のカウント時間が第1のタイマ値未満の場合、放送部は、再放送を行わず、判定部124において、人物有りの判定が無く、かつ、タイマ部のカウント時間が第2のタイマ値以上の場合、再放送を行う処理を終了することを特徴としている。これにより、再放送の間隔及び再放送の処理を終了する時間の設定を子局120ごとに行うことができるため、放送内容や子局120の設置環境などに応じた再放送の処理の設定を行うことができる。
【0041】
(実施例2)
次に、本発明の他の一実施例に係る無線通信システムを
図3の概略図で説明する。
図3の無線通信システムは、子局であり、操作部128と、制御部123と、拡声器126と、カメラ部127で構成されている。
判定部124と、メモリ部125は制御部123に内蔵されている。
なお、判定部124は、どこに配置されていてもよく、例えば、カメラ部127に内蔵されていてもよい。
操作者301は、操作部128を操作して、災害情報等を放送する。
【0042】
メモリ部125は、放送用音声データの記憶やカメラ部127が撮影した画像データを一次記憶するものである。
操作部128は、
図1における子局120を単独使用できるようにするもので、図示していないマイク等を備えている。なお、操作部128の操作内容等は親局100(図示略)に送信してもよい。
【0043】
カメラ部127は雲台等の旋回機能をもっていてもよい。また、カメラ部127は360°の全方向を撮影できるものでもよいし、熱感知可能な赤外線カメラでもよい。
危険エリア310は、津波が到達する範囲や土砂災害が発生し易い場所であり、予め設定しておく。
人物311は危険エリア310内にいる。人物313は危険エリア310の圏外にいる。
避難312は、人物311が危険エリア310から圏外に移動した場合を示す。
【0044】
次に、本発明の他の一実施例である無線通信システムの動作について
図4のフローチャートを用いて説明する。
制御部123は、操作者301が操作部128から「避難放送」を入力した指示を受け付けて(S401)、S402の処理に進む。
S402の処理では、「避難放送」から音声コマンドを検出し、検出した音声コマンドの(録音)音声データをメモリ部125から読出し(再生)、拡声器126から避難放送(初回)し、S403の処理に進む。
【0045】
S403の処理では、放送終了後から所定時間が経過した否かを判定し、所定時間を経過していない場合(S403のNOルート)にはS403の処理に戻り、所定時間を経過した場合(S403のYESルート)にはS404の処理に進む。
【0046】
S404の処理では、カメラ部127が撮影した危険エリア310の画像データを取得し、S405の処理に進む。
S405の処理では、カメラ部127で撮影した画像データを判定部124により周知の方法で人物の有無を判定し、S406の処理に進む。
【0047】
S406の処理では、判定部124が、人物有りの判定をした場合(S406のYESルート)にはS407の処理に進み、人物有りの判定をしない場合(S406のNOルート)にはS409の処理に進む。
S407の処理では、操作者301が操作部128を操作して、「放送停止」指示を入力したか否かを判定し、「放送停止」指示を入力した場合(S407のYESルート)にはS409の処理に進み、「放送停止」指示を入力していない場合(S407のNOルート)にはS408の処理に進む。
【0048】
S408の処理では、上述の音声コマンドの(録音)音声データをメモリ部125から読出し(再生)、拡声器126から避難放送(再放送)し、S404の処理に戻る。
S409の処理では、拡声器126から避難放送(再放送)を停止し、S404の処理に戻る。
【0049】
以上の避難指示再放送は、操作者301が、操作部128により終了指示を制御部123に送ることにより終了する。または、制御部123が、タイマと、避難指示再放送を終了するタイマ値と、を備えており、タイマのカウント時間が、避難指示再放送を終了するタイマ値以上になった場合、避難指示再放送を終了するようにしてもよい。
【0050】
以上説明した通り、実施例2に係る無線通信システムは、災害が発生または予測された地域について、避難指示放送が行われた後、カメラ部が撮影した画像データから人物の有無の判定を行い、避難指示再放送を開始および終了する。
また、避難指示放送から所定時間が経過した後、危険エリアをカメラにて撮影する。そして、撮影した画像データの画像処理を行い、残留者もしくは侵入者の有無を判定する。カメラ画像から人物有りと判定すると、人物有りと判定されなくなるまで、避難指示の再放送を行う。
さらに、監視カメラ画像で人物有りと判定された場所が限定できた場合、人物有りと判定された場所のみに限定した避難指示の再放送指示を行うこともできる。
【0051】
以上本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、上記以外の無線通信システムに広く適用することができることは言うまでもない。