特許第6453579号(P6453579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453579
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20190107BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190107BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20190107BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20190107BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20190107BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/12 B
   H05B33/22 Z
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-162537(P2014-162537)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-39070(P2016-39070A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−211983(JP,A)
【文献】 特開2013−247021(JP,A)
【文献】 特開2007−250370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/12
H05B 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素のそれぞれに設けられているTFTと、
前記TFTを覆っている平坦化膜と、
前記複数の画素のそれぞれに設けられ、前記平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜に形成されているコンタクトホールを介して前記TFTに接続されている下部電極と、
前記複数の画素を区画し、前記複数の画素のそれぞれに開口を有しているバンクと、
発光層を含み、且つ前記バンクの開口の内側に形成される部分を有している有機層と、
無機材料によって形成され、前記バンク及び前記有機層を覆っている第1のバリア層と、
それぞれが有機材料によって形成され、前記第1のバリア層上に配置されている第1有機部及び第2有機部と、
無機材料によって形成され、前記第1のバリア層と前記複数の有機部とを覆っている第2のバリア層と、を含み、
前記バンク及び前記第1のバリア層は前記コンタクトホールを覆っており、
記第1のバリア層は、その表面に、平面視で前記バンクの開口の内側と重畳する第1凹部と、平面視で前記コンタクトホールに対応して凹んだ部分である第2凹部と、を有し、
前記第1有機部は前記第1凹部に形成され
前記第2有機部は前記第2凹部に形成され、
前記第1有機部と、前記第2有機部とは、互いに離間しており、
前記第2有機部は、前記第1有機部よりも上方に形成されている、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項に記載の有機EL表示装置において、
前記バンクの厚さは前記平坦化膜の厚さよりも小さい、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記第2有機部と、前記有機層とは、平面視で互いに重畳しないように設けられる、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記コンタクトホールと、前記有機層とは、平面視で互いに重畳しないように設けられる、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記第2有機部は、平面視で前記コンタクトホールを完全に覆うように前記第2凹部に設けられる、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)表示装置は、各画素に配置されている下部電極と、下部電極の外周に配置され画素を区画するバンクとを有している。また、有機EL表示装置は発光層を含む有機層を有している。有機層はバンク及び下部電極を覆っている。バンクは画素ごとにバンク開口を有しており、有機層はバンク開口の内側で下部電極と接している。また、一般的に有機層は水分の浸入により劣化し易いので、従来、有機層を覆うバリア構造を形成することが提案されている。下記特許文献1乃至3では、複数の層からなるバリア構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−184251号
【特許文献2】特許第4303591号
【特許文献3】特開2010−272270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異物が原因でバリア構造にピンホールが形成される場合がある。ピンホールが形成されると、そこから水分が入り、有機層を劣化させる。
【0005】
本願の発明者は、無機材料で形成される複数のバリア層と有機材料とで形成されるバリア構造を検討している。第1のバリア層が発光層を含む上述の有機層を覆っている。有機材料は第1のバリア層上に分散して存在している(有機材料が形成している部分を「有機部」と称する)。第1のバリア層上に異物が存在している場合、その異物を取り囲むように有機部が形成される。第2のバリア層は第1のバリア層と有機部とを覆っている。この構造によると、異物の周りの段差が有機部によって軽減される。そのため、第2のバリア層を薄くしても、第2のバリア層が異物を完全に覆うことができる。すなわち、第2のバリア層を薄くしても、第2のバリア層が異物の周りで破断しない。その結果、水分の有機層への浸透を効果的に抑えることができる。なお、有機部は、例えば、次のようにして形成される。有機材料を含む溶剤を第1のバリア層上に噴霧する。噴霧された溶剤は表面張力により異物の周りに凝集する。凝集した溶剤が固化すると、有機部となる。
【0006】
ところが、この構造では、有機部の形成過程で、異物の周りだけで無く、バンク開口の外周部(バンクの側面と下部電極の表面との間の角)にも有機部が形成されていた。有機部の屈折率はバリア層の屈折率とは異なる。そのため、有機部が多重干渉膜となってしまい、バンク開口の中心部分と外周部とで出射光の色が異なるという問題が生じていた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、バンク開口の外周部に溜まる有機材料を低減できる有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る有機EL表示装置は、複数の画素を区画し、前記複数の画素のそれぞれに開口を有しているバンクと、発光層を含み、且つ前記バンクの開口の内側に形成されている部分を有している有機層と、無機材料によって形成され、前記バンク及び前記有機層を覆っている第1のバリア層と、有機材料によって形成され、前記第1のバリア層上に配置されている複数の有機部と、無機材料によって形成され、前記第1のバリア層と前記複数の有機部とを覆っている第2のバリア層と、を含み、前記バンクと前記第1のバリア層とに凹部が形成されており、前記複数の有機部の一部は前記凹部に形成されている、ことを特徴とする。
【0009】
(2)(1)に記載の有機EL表示装置において、前記複数の画素のそれぞれに設けられているTFTと、前記TFTを覆っている平坦化膜と、前記複数の画素のそれぞれに設けられ、前記平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜に形成されているコンタクトホールを介して前記TFTに接続されている下部電極と、を含み、前記バンクは前記コンタクトホールを覆っており、前記バンクと前記第1のバリア層の前記凹部は前記コンタクトホールに対応して凹んだ部分であることを特徴とする。
【0010】
(3)(2)に記載の有機EL表示装置において、前記バンクの厚さは前記平坦化膜の厚さよりも小さいことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る有機EL表示装置を概略的に示す平面図である。
図2】TFT基板に形成されている回路の一例を示す回路図である。
図3】本発明に係る有機EL表示装置の平面図である。
図4図3に示すIV−IV線での断面図である。
図5】異物が混入した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る有機EL(Electro Luminescence)表示装置2を概略的に示す平面図である。有機EL表示装置2は、TFT(Thin Film Transistor)基板12と、TFT基板12と対向している対向基板13とを有している。これらの基板の間には充填材30(図4参照)が充填されている。有機EL表示装置2は、その表示領域Iに、水平方向及び垂直方向に並んでいる複数の画素PXを有している。
【0014】
図2はTFT基板12に形成されている回路の一例を示す回路図である。TFT基板12には、水平方向に伸びている複数の走査信号線GLと、垂直方向に伸びている複数の映像信号線DLとが形成されている。隣接する2つの走査信号線GLと隣接する2つの映像信号線DLとで囲まれる領域が1つの画素PXとなっている。また、TFT基板12には電源線CSLが形成されている。後述するように、TFT基板12には、発光層を含む有機層18や、有機層18への電荷供給を制御する駆動TFT10などが形成されている(図4参照)。図2に示すように、各画素PXには、駆動TFT10と、保持容量CPRと、スイッチングTFT11とが形成されている。また、各画素PXには有機発光ダイオードODが形成されている。有機発光ダイオードODは、有機層18、並びに、後述する下部電極(アノード電極)4及び上部電極(カソード電極)20で構成される(図4参照)。走査信号線GLにゲート電圧が印加されることにより、スイッチングTFT11がON状態となる。このとき、映像信号線DLから映像信号が供給されると、保持容量CPRに電荷が蓄積される。そして、保持容量CPRに電荷が蓄積されることにより、駆動TFT10がON状態となって、電源線CSLから有機発光ダイオードODに電流が流れて、有機発光ダイオードODが発光する。
【0015】
複数の画素PXによって1つの画素単位が構成される。図3は、1つの画素単位を示すTFT基板12の平面図である。図4図3に示すIV−IV線における有機EL表示装置2の断面図である。一例では、図3に示すように、4つの画素によって1つの画素単位が構成される。4つの画素PXは、例えば、赤画素PX、緑画素PX、青画素PX、及び白画素PXである。4つの画素PXは、例えば、2列及び2行で配置される。画素単位を構成する画素PXの配置は図3に示す配置だけに限らない。例えば、1つの画素単位を構成する4つの画素PXは一方向に並んでもよい。また、1つの画素単位を構成する画素PXの数も図3に示す4つだけに限らない。例えば、3つの画素PX(例えば、赤画素PX、緑画素PX、及び青画素PX)で1つの画素単位が構成されてもよい。また、各画素を色分けする方法(いわゆるカラー化方式)も特定の方法に限定されず、いずれの方法も採用可能である。
【0016】
図4に示すように、TFT基板12には上述の下部電極4が形成されている。下部電極4は各画素PXに形成されている。TFT基板12には、複数の画素PXを区画するバンク16が備えられている。図3においては、バンク16の領域にハッチングが施されている。図4に示すように、バンク16は、各下部電極4の外周を取り囲み且つ下部電極4の外周縁に重なっている。バンク16には、画素PXごとにバンク開口Aが形成され、下部電極4はバンク開口Aにおいて露出している。また、TFT基板12には、複数のコンタクトホールCHが備えられている。コンタクトホールCHはバンク16により覆われている。図3に示す例では、下部電極4は矩形形状を有し、各画素PXに、コンタクトホールCHが形成されている。
【0017】
図4に示すように、TFT基板12は、下部電極4の下層に、基板8及び平坦化膜14を有している。TFT基板12は、基板8を含み、基板8の上面には、上述の駆動TFT素子10が形成されている。TFT10は下部電極4に流れる電流を制御するスイッチング素子となる。また、平坦化漠14は、TFT基板12の上面に設けられ、各所にコンタクトホールCHが形成されている。このコンタクトホールCHを介し、各下部電極4が、TFT10に接続している。なお、符号D1は、平坦化膜14の膜厚を表している。
【0018】
上述したように、TFT基板12は、絶縁体からなり、下部電極4の上に形成されるバンク16を有している。バンク16には上述のバンク開口Aが形成されている。一例では、図3に示すように、バンク開口Aは平面視でL字になるように形成される。バンク16の形成過程では、例えば下部電極4の上に絶縁体(バンク16の材料)の層を形成した後、形成した層のうちバンク開口Aに相当する部分を除去し、これによりバンク16が形成される。図4に示すように、バンク16は、コンタクトホールCHを覆う領域CVを有している。一例では、図3に示すように、1つの画素単位を構成する4つの画素PXは、それらの領域CVが1つの画素単位の中央部で互いに繋がるように形成されている。すなわち、4つの画素PXのバンク開口Aが、当該4つの画素PXの中央部を取り囲むように配置されている。バンク開口Aの位置や形状は図3に示すものに限定されない。バンク16は、コンタクトホールCHを覆う領域CVに、コンタクトホールCHに対応して凹む凹部を有する。本実施形態では、バンク16の膜厚D2(下部電極4からバンク16の上面までの距離)が薄い。例えば、バンク16の膜厚D2は平坦化膜14のより小さい。そのため、バンク16を形成したときに、当該バンク16に、下部電極4の形状に応じた起伏ができやすくなっている。なお、バンク16の膜厚D2は平坦化膜14の膜厚D1の半分よりも小さくてもよい。領域CVに形成されているバンク16の凹部は、バンク16を形成した際、下部電極4の形状に応じて生じた起伏によって自ずと形成される。
【0019】
TFT基板12は、下部電極4の他にも、図2で示した有機発光ダイオードODを形成するための構成要素を有している。すなわち、TFT基板12には、有機エレクトロルミネッセンス現象により発光する発光層を含む有機層18と、上部電極20と、がさらに備えられる。駆動TFT10と通して下部電極4及び上部電極20に電圧をかけることにより、下部電極4及び上部電極20から正孔と電子がそれぞれ有機層18に注入され、注入された正孔と電子が発光層で結合して光を発する。なお、バンク16により、下部電極4と上部電極20とのショートが防止される。
【0020】
有機層18は、バンク開口Aの内側に形成される部分を有している。図4に示す例では、有機層18は、バンク16の端部と下部電極4とに連続的に載るように設けられている。上部電極20は、バンク16及び有機層18に連続的に載るように設けられ、これらを覆っている。上部電極20は、コンタクトホールCHを覆う領域CVに、コンタクトホールCHに対応して凹む凹部を有する。また、上部電極20は、バンク開口Aの外周部P(バンク開口Aの縁部分)に、バンク16の形状に応じて盛り上がる段差を有している。この凹部及び段差は、有機層18及び上部電極20の形成過程で、下部電極4及びバンク16の形状(凹凸)に応じた起伏として自ずと有機層18及び上部電極20に形成される。
【0021】
有機層18及び上部電極20は、バリア層22によって覆われている。すなわち、上部電極20に連続的に載るように(上部電極20を覆うように)、バリア層22が設けられている。バリア層22により、有機発光ダイオード(特に有機層18)を水分から保護する。
【0022】
また、バリア層22の上方に対向基板13(図1参照)が備えられ、バリア層22と対向基板13との間に充填材30が充填される。
【0023】
図4に示すように、バリア層22は、複数の有機バリア部26を、第1無機バリア層24と第2無機バリア層28とでサンドイッチした多層構造となっている。第1無機バリア層24は、有機層18を水分から保護するために設けられている。第1無機バリア層24は、図4に示すように、上部電極20に連続的に載るように形成され、バンク16及び有機層18を覆っている。第1無機バリア層24は、水分透過を妨げる無機材料によって形成される。無機材料は例えばSiNであるが、これに限定されない。第1無機バリア層24は1つの層だけでなく、複数の層によって構成されてもよい。例えば、第1無機バリア層24はSiNの層とSiOの層とを含んでもよい。SiOの層は有機バリア層26や第2無機バリア層に触れるように上層側に設けられ、有機バリア層26と第1無機バリア層24との密着性を上げる。第1無機バリア層24は、上述の領域CVに、コンタクトホールCHに対応して凹む凹部を有する。また、第1無機バリア層24は、バンク16の形状に対応して盛り上がる段差を外周部Pに有する。第1無機バリア層24は、例えば、プラズマCVD法で上部電極20に形成できる。第1無機バリア層24の凹部及び段差は、第1無機バリア層24を形成する過程で、上部電極20の形状に応じた起伏として自ずと形成される。第1無機バリア層24には、異物21の混入が原因で、ピンポールhが形成される場合がある。図5は、異物21が混入した様子を示す図である。同図に示すように、異物21の付け根にピンポールhが形成されている。このピンホールhは、外部から水分が侵入する原因となる。
【0024】
第1無機バリア層24上には複数の有機バリア部26が配置されている。複数の有機バリア部26によってピンホールhを埋めることができる。これら有機バリア部26は、有機材料(例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂など)によって形成され、第1無機バリア層24上に分散して設けられている。すなわち、図4及び図5に示すように、有機バリア部26は、第1無機バリア層24に形成された凹部(すなわち領域CV)及び段差(すなわち、バンク開口Aの外周部P)に形成される。異物21が混入した場合、有機バリア部26は、図5に示すように、異物21を取り囲むようにして形成され、その結果、ピンホールhが埋められる。
【0025】
これら有機バリア部26は、有機材料と重合開始剤とを混合した溶剤を真空環境下において第1無機バリア層24に噴霧することで形成される。具体的には、溶剤を一定量ずつ断続的に噴霧する。このとき、有機材料が第1無機バリア層24上に連続的な膜を形成しないように、溶剤の供給条件(供給時間、基板温度、成膜雰囲気など)が調整される。付着した有機材料は液体としての挙動を示すため、平坦でない場所では表面張力により凝集しやすく、平坦な場所では凝集しにくい。そのため、有機材料は、第1無機バリア層24に形成された凹部、段差(すなわち外周部P)、及びピンホールhに溜まり、それ以外の場所には留まりにくい。そのため、複数の有機バリア部26が第1無機バリア層24上に分散して設けられることになる。
【0026】
また、第2無機バリア層28は、異物21が混入した場合に、異物21を完全に覆うために設けられる。第2無機バリア層28は、第1無機バリア層24と同様、水分の透過を妨げる無機材料によって形成される。この無機材料も、第1無機バリア層24の材料と同様に、例えばSiNであるが、これに限定されない。第2無機バリア層28も、第1無機バリア層24と同様に、1つの層だけでなく、複数の層によって構成されてもよい。第2無機バリア層28は、図4及び図5に示すように、第1無機バリア層24及び複数の有機バリア部26に連続的に載るように形成され、これらを覆っている。第2無機バリア層28は、例えば、プラズマCVD法で形成される。混入した異物21は、ピンホールhに形成された有機バリア部26により取り囲まれる。そのため、第2無機バリア層28は、異物21によって破断せず、異物21を完全に覆うことができる。従って、バリア層22は、この多層構造により、異物21が混入しても、有機発光ダイオードODを水分から保護できる。
【0027】
ところで、第1無機バリア層24が有する段差(すなわち、外周部P)に形成された有機バリア部26は、有機バリア部26と無機バリア層24,28との光の屈折率の違いから、多重干渉膜となり、各画素の発光に影響する。また、各画素に存在する有機バリア部26の量は、各画素に形成されるバンク開口Aの外周部Pの段差に敏感に反応する。そのため、段差の大きさが画素間で異なることにより、画素間の光学特性のばらつきが生じる。したがって、この段差に溜まる有機材料を減らし、この段差に形成される有機バリア部26を小さくすることが望ましい。
【0028】
この有機EL表示装置2では、バンク16に形成された凹部によって第1無機バリア層24に凹部が形成される。例えば、図4に示す例では、コンタクトホールCHを覆う領域CVに形成されたバンク16の凹部により、領域CVにおいて第1無機バリア層24に凹部が形成される。よって、有機バリア部26の形成過程において、有機材料が、バンク開口Aの外周部P(すなわち、第1無機バリア層24が有する段差)だけでなく、この凹部にも溜まるようになる。よって、バンク開口Aの外周部Pに溜まる有機材料を減らし、バンク開口Aの外周部Pに形成される有機バリア部26を小さくすることができる。
【0029】
上述したように、バンク16、有機層18、及び第1無機バリア層24が、領域CVに有している凹部は、コンタクトホールCHを利用して形成された部分である。こうすることにより、凹部を形成する工程(例えば、エッチング)を別途行わなくてもよくなる。なお、バンク16、有機層18、及び第1無機バリア層24の厚さと、平坦化膜14の厚さとの関係は、平坦化膜14のコンタクトホールCHによって第1無機バリア層24に凹部が形成されるように設定されている。一例では、上述したように、バンク16の膜厚D2が平坦化膜14の膜厚D1より小さい。こうすることにより、バンク16がコンタクトホールCHに対応して凹みやすくなる。
【0030】
本発明のように凹部にも有機バリア層26が形成されるような構成とすることにより、異物21の周りを取り囲むのに十分な有機バリア層26を形成しつつ、外周部Pにたまる有機バリア層26の量を低減することができるので、異物21がある際の有機膜18に対する水分遮断性を維持しつつ、画素間の光学特性のばらつきを低減することができる。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【0032】
例えば、第1無機バリア層24は、無機材料(例えばSiN)の層とその上のSiOの層との積層構造であってもよい。SiOの層によって、表面張力による有機材料の凝集を促進できる。
【0033】
また、例えば、バンク16の膜厚D2は膜厚D1より厚くてもよい。また、例えば、エッチングによりバンク16に凹部を形成してもよい。例えば、バック16の膜厚D2が厚く領域CVに凹部が形成されにくい場合、エッチングによりバンク16に凹部を形成すればよい。また、エッチングによりバンク16に凹部を形成する場合、画素PXごとに凹部を形成するのではなく、複数の画素PX(例えば、1つの画素単位を構成する複数の画素PX)に跨がるように凹部を形成してもよい。
【0034】
また、バンク16に形成される凹部は、コンタクトホールCHを覆う領域CVに限らず、どこに形成されてもよい。
【0035】
また、有機層18は画素PXごとに分離されていてもよいし、上部電極20と同様に表示領域の全体に亘って形成されていてもよい。画素PXごとに分離されている場合は、画素PXごとに必要な色を発光する発光層が有機層18に設けられる(塗り分け方式)。有機層18が表示領域の全体に亘って形成される場合には、有機層18は白発光するように構成される。また、この場合、対向基板13は各画素PXにカラーフィルタを有する。
【符号の説明】
【0036】
2 有機EL表示装置、4 下部電極、8 基板、10 TFT、12 TFT基板、13 対向基板、14 平坦化膜、16 バンク、18 有機層、20 上部電極、21 異物、22 バリア層、24 第1無機バリア層、26 有機バリア部、28 第2無機バリア層、30 充填材、 A バンク開口、CH コンタクトホール、CV 領域、h ピンホール、P 外周部、PX 画素。

図1
図2
図3
図4
図5