特許第6453583号(P6453583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453583
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   A47L9/28 E
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-167916(P2014-167916)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-42937(P2016-42937A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 功一
(72)【発明者】
【氏名】冨山 隆志
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−330567(JP,A)
【文献】 特開2006−026028(JP,A)
【文献】 特開2013−223734(JP,A)
【文献】 特開2013−223650(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0276407(US,A1)
【文献】 特表2014−501426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
この本体ケースを被掃除面上で走行可能とする駆動輪と、
被掃除面を掃除する掃除部と、
前記本体ケースに設けられ、この本体ケースの前側の複数の方向の角度範囲の所定距離以内の物体の存否を検出する物体検出手段と、
前記本体ケースに設けられ、この本体ケースの側部前方の所定距離以内の物体の存否を検出する検出手段と、
これら物体検出手段および検出手段による物体の検出に基づいて前記駆動輪の動作を制御することで前記本体ケースを自律走行させる制御手段とを具備し、
前記制御手段は、前記物体検出手段により物体を検出したときに、この検出した物体の方向の角度範囲に対応して設定された角度、前記本体ケースを旋回させ、この状態で前記物体検出手段により物体を所定時間内に検出したことが所定回数以上連続したときに、前記本体ケースをさらに旋回させることで前記物体検出手段により検出した物体に沿わせつつ湾曲状に走行させる
ことを特徴とした電気掃除機。
【請求項2】
物体検出手段は、物体との接触により物体を検出する接触センサであり、
制御手段は、前記物体検出手段により物体を検出したときに、一旦後退して物体から物体検出手段を離間させた後、この検出した物体の方向の角度範囲に対応して設定された角度、前記本体ケースを旋回させるように前記駆動輪の動作を制御する
ことを特徴とした請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
制御手段は、本体ケースの側部を物体に向けるように駆動輪の動作を制御した状態で、検出手段により物体を検出しない場合には、前記本体ケースを所定距離直進させた後、前記物体検出手段により検出した物体側に旋回走行させるように前記駆動輪の動作を制御する
ことを特徴とした請求項1または2記載の電気掃除機。
【請求項4】
制御手段は、本体ケースの側部を物体に向けるように駆動輪の動作を制御した状態で、検出手段により物体を検出した場合には、この物体に沿って前記本体ケースを直進させるように前記駆動輪の動作を制御する
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか一記載の電気掃除機。
【請求項5】
制御手段は、本体ケースを直進させるとともに物体検出手段により物体を検出したときに前記本体ケースの側部を物体に向けるように駆動輪の動作を制御する第1走行モードと、前記本体ケースが前記物体検出手段により検出した物体に沿いつつ湾曲状に走行するように前記駆動輪の動作を制御する第2走行モードとを備え、前記第1走行モード時に前記物体検出手段により物体を所定時間内に検出することが所定回数以上連続したときに、前記第2走行モードに切り換わる
ことを特徴とした請求項1ないし4いずれか一記載の電気掃除機。
【請求項6】
制御手段は、第2走行モード時に本体ケースが所定角度以上旋回したと判断したときには、反対方向に旋回させた後、前記本体ケースを直進させるように駆動輪の動作を制御する
ことを特徴とした請求項5記載の電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、物体検出手段による物体の検出に基づいて駆動輪の動作を制御することで自律走行する電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばセンサなどを用いて障害物などを検出しつつ、被掃除面上を自律走行しながら掃除する、いわゆる自律走行型の電気掃除機(掃除ロボット)が知られている。
【0003】
一般に、被掃除面上には形状や配置が異なる様々な障害物が存在するため、それら障害物を効果的に回避して被掃除面を可能な限り隙間なく掃除できることが望ましい。しかしながら、このような電気掃除機に搭載されているセンサは、通常、赤外線センサや超音波センサなどであるため、障害物をセンサによって直接識別することは容易でない。
【0004】
そこで、例えば電気掃除機を旋回させながらセンサによって障害物をスキャンすることで、障害物の形状を識別し、障害物の種類を類推することが考えられるものの、掃除動作としては無駄な動作となるとともに、障害物に囲まれている狭所に侵入したり、狭所から脱出したりする場合には、都度スキャンをすることとなり、効率が悪い。
【0005】
したがって、障害物を効果的に回避しながら狭所を効率よく掃除できるようにすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2014−501426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、物体を効果的に回避しつつ狭所をより効率よく掃除できる電気掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の電気掃除機は、本体ケースと、駆動輪と、掃除部と、物体検出手段と、検出手段と、制御手段とを有する。駆動輪は、本体ケースを被掃除面上で走行可能とする。掃除部は、被掃除面を掃除する。物体検出手段は、本体ケースに設けられ、この本体ケースの前側の複数の方向の所定距離以内の物体の存否を検出する。検出手段は、本体ケースに設けられ、この本体ケースの側部前方の所定距離以内の物体の存否を検出する。制御手段は、物体検出手段および検出手段による物体の検出に基づいて駆動輪の動作を制御することで本体ケースを自律走行させる。そして、この制御手段は、物体検出手段により物体を検出したときに、この検出した物体の方向の角度範囲に対応して設定された角度、本体ケースを旋回させ、この状態で物体検出手段により物体を所定時間内に検出したことが所定回数以上連続したときに本体ケースをさらに旋回させることで物体検出手段により検出した物体に沿わせつつ湾曲状に走行させる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の電気掃除機の第2掃除走行モードの第1走行モードでの動作の一例を(a)ないし(h)の順に模式的に示す説明図である。
図2】(a)は同上電気掃除機の第1掃除走行モードで物体検出手段により物体を検出したときの動作の一例を模式的に示す説明図、(b)は同上電気掃除機の第1掃除走行モードで物体検出手段により物体を検出したときの動作の他の例を模式的に示す説明図である。
図3】同上電気掃除機の第1掃除走行モードで検出手段により物体を検出したときの動作の一例を(a)ないし(c)の順に模式的に示す説明図である。
図4】同上電気掃除機の第2掃除走行モードの第2走行モードでの動作の一例を(a)ないし(c)の順に模式的に示す説明図である。
図5】同上電気掃除機の第2掃除走行モードの第2走行モードを終了するときの動作の一例を(a)ないし(c)の順に模式的に示す説明図である。
図6】同上電気掃除機の斜視図である。
図7】同上電気掃除機を上方から示す平面図である。
図8】同上電気掃除機を下方から示す平面図である。
図9】同上電気掃除機の内部構造を示すブロック図である。
図10】(a)は同上電気掃除機の第1掃除走行モードの動作の一例を模式的に示す説明図、(b)は同上電気掃除機の第2掃除走行モードの動作の一例を模式的に示す説明図、(c)は同上電気掃除機の第3掃除走行モードの動作の一例を模式的に示す説明図である。
図11】同上電気掃除機が入り込む狭所の例を(a)ないし(c)に模式的に示す説明図である。
図12】同上電気掃除機の掃除動作の処理の概要を示すフローチャートである。
図13】同上電気掃除機の第1掃除走行モードの処理を示すフローチャートである。
図14】同上電気掃除機の第2掃除走行モードの処理を示すフローチャートである。
図15】同上電気掃除機の第2走行モードの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0011】
図6ないし図9において、11は自律走行体としての電気掃除機であり、この電気掃除機11は、例えば充電回路を内蔵した図示しない基地装置としての充電装置(充電台)などとともに、自律走行体装置としての電気掃除装置を構成する。
【0012】
そして、電気掃除機11は、本実施形態において、走行面としての被掃除面である床面上を自律走行(自走)しつつ床面を掃除する、いわゆる自走式のロボットクリーナ(掃除ロボット)である。この電気掃除機11は、中空状の本体ケース15と、この本体ケース15を床面上で走行させる走行部16と、床面などの塵埃を掃除する掃除部17と、充電装置を含む外部装置と通信する通信部18と、各種情報を表示する表示部19と、走行部16、掃除部17、通信部18および表示部19を制御する制御手段20と、これら走行部16、掃除部17、通信部18、表示部および制御手段20などに給電する二次電池21とを備えている。なお、以下、電気掃除機11(本体ケース15)の走行方向に沿った方向を前後方向(図6などに示す矢印FR,RR方向)とし、この前後方向に対して交差(直交)する左右方向(両側方向)を幅方向として説明する。また、図1などに示す矢印Xの指す方向が、電気掃除機11(本体ケース15)の前側を表すものとする。
【0013】
本体ケース15は、例えば合成樹脂などにより扁平な円柱状(円盤状)などに形成されており、床面に対向する下面に吸込口22および排気口23がそれぞれ開口されている。
【0014】
走行部16は、複数(一対)の駆動部としての駆動輪25,25と、これら駆動輪25,25を駆動させる動作部としての駆動手段であるモータ26,26と、旋回用の旋回輪27と、各種センサを有するセンサ部28などを備えている。
【0015】
各駆動輪25は、電気掃除機11(本体ケース15)を床面上で前進方向および後退方向に走行(自律走行)させる、すなわち走行用のものであり、左右幅方向に沿って図示しない回転軸を有し、幅方向に対称に配置されている。
【0016】
各モータ26は、例えば駆動輪25のそれぞれに対応して配置されており、各駆動輪25を独立して駆動させることが可能となっている。
【0017】
旋回輪27は、本体ケース15の下面の幅方向の略中央部で、かつ、前部に位置しており、床面に沿って旋回可能な従動輪である。
【0018】
センサ部28は、例えば各駆動輪25(各モータ26)の回転数を検出する回転数検出手段30と、本体ケース15の前方の所定距離以内の壁や家具などの物理的な物体(障害物)の存否を検出する(第1の)障害物検出手段である物体検出手段31と、本体ケース15の側部前方の所定距離以内の壁や家具などの物理的な物体(障害物)の存否を検出する(第2の)障害物検出手段である検出手段32とを備えている。このセンサ部28には、他に、例えば床面の段差などを検出する赤外線センサなどの図示しない段差検出手段、床面の塵埃量を検出する図示しない塵埃量検出手段、充電装置などからの無線信号(赤外線信号)を受信するフォトトランジスタなどの基地装置検出手段、および、充電装置や領域区画手段(バーチャルガード)などの外部装置から出力される無線信号(赤外線信号)を検出することで、この無線信号によって外部装置の周囲や領域内などに形成された仮想的な物体(障害物)を検出する赤外線センサなどの物体検出手段としての障害物検出手段である衝突防止信号検出手段(衝突防止センサ)となどを備えていてもよい。
【0019】
回転数検出手段30は、例えば光エンコーダなどであり、この測定した駆動輪25(モータ26)の回転数によって制御手段20が電気掃除機11(本体ケース15)の旋回角度や進行距離を検出および監視するようになっている。すなわち、この回転数検出手段30は、旋回角度検出手段、および、距離検出手段の機能をそれぞれ有している。
【0020】
物体検出手段31は、本実施形態では、本体ケース15の前側半分を構成する可動的な円弧状の接触子であるバンパ35と、このバンパ35の移動によって動作されるスイッチ36とを有し、バンパ35と物体との接触を検出する接触センサである。すなわち、本実施形態の物体検出手段31は、本体ケース15に対して接触する(ゼロ距離に位置する)物体を検出するようになっている。
【0021】
バンパ35は、本体ケース15の径方向に沿って移動可能となっており、例えば図示しないばねなどの付勢手段によって、本体ケース15から突出する方向に付勢されている。なお、このバンパ35は、例えば本体ケース15の一側から前部を介して他側まで連続する半円弧状としてもよいし、本体ケース15の一側から前部を介して他側までの半円弧領域を複数に分割した円弧状としてもよい。このようにバンパ35を複数に分割して構成する場合には、左右対称な配置とすることが好ましく、例えば前部と左右両側との3箇所などに分割するものとする。
【0022】
スイッチ36は、物体との接触によって相対的に後退したバンパ35との接触により動作すなわちオンオフが切り換わるもので、少なくとも本体ケース15の両側にてバンパ35の背面側に対向して配置されている。そして、これらスイッチ36のいずれのオンオフが切り換わったにより、バンパ35の物体との接触、および、その接触位置(接触方向)を検出可能となっている。本実施形態では、物体検出手段31は、複数の領域が設定されており、例えば本体ケース15(バンパ35)の左右方向の中心位置を含む前側の左右略均等な所定角度範囲、例えば15°ずつすなわち左右30°に亘る前側領域31aと、この前側領域31aの右側に隣接し本体ケース15(バンパ35)の右側部に亘る右側の所定角度範囲、例えば75°の右側領域31bと、前側領域31aの左側に隣接し本体ケース15(バンパ35)の左側部に亘る左側の所定角度範囲、例えば75°の左側領域31cとのそれぞれのうち、どの領域が物体と接触したかを検出可能となっている。したがって、物体検出手段31は、本体ケース15の前側の複数(3つ)の方向の角度範囲の所定距離以内の物体の存否を検出するようになっており、本実施形態では、物体を検出可能な領域31a,31b,31cが左右対称に設定されている。
【0023】
検出手段32は、本体ケース15に対して所定距離に離間された位置の物体を検出する、換言すれば側部前方に位置する物体との距離を検出する例えば超音波センサ、あるいは赤外線センサなどの非接触センサである。すなわち、この検出手段32は、物体検出手段(測距手段)の機能を有している。この検出手段32は、本実施形態では、例えば物体検出手段31の右側領域31bおよび左側領域31cのそれぞれの中央部、すなわち、本体ケース15の前方に対して左右方向にそれぞれ52.5°の角度に傾斜した位置に配置されている。したがって、この検出手段32は、左右対称に配置されている。
【0024】
掃除部17は、例えば本体ケース15内に位置して塵埃を吸い込む電動送風機37と、吸込口22に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き上げる回転清掃体としての回転ブラシ38およびこの回転ブラシを回転駆動させるブラシモータ39と、本体ケース15の前側などの両側に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き集める旋回清掃部としての補助掃除手段であるサイドブラシ40およびこのサイドブラシ40を駆動させるサイドブラシモータ41と、塵埃を溜める集塵部42となどを備えている。なお、電動送風機37と、回転ブラシ38およびブラシモータ39と、サイドブラシ40およびサイドブラシモータ41とは、少なくともいずれかを備えていればよい。
【0025】
通信部18は、例えば充電装置などの外部装置に対して無線信号(赤外線信号)を送信する赤外線発光素子などの送信手段46を備えている。なお、この通信部18には、例えばアクセスポイントなどを介して例えば携帯端末などの外部装置との無線信号の送受信をする無線LANデバイスなどとを備えていてもよい。
【0026】
表示部19は、時刻や時間、あるいは電気掃除機11に関する各種情報などを表示するものであり、例えば本体ケース15の上部に配置されている。なお、この表示部19は、例えば使用者が各種設定を直接入力可能である入力操作手段の機能を兼ね備えるタッチパネルなどとしてもよい。
【0027】
制御手段20は、例えばCPUやタイマおよびカウンタなどを備えたマイコンであり、センサ部28による検出結果に基づいて、自律走行しつつ掃除部17により掃除をする掃除モードと、充電装置を探索して充電装置へと帰還する帰還モードと、充電装置を介して二次電池21を充電する充電モードと、動作待機中の待機モードとを有している。そして、掃除モード中には、複数、例えば3つの掃除走行モード、すなわち第1掃除走行モードないし第3掃除走行モードが設定されており、これらの掃除走行モードが所定時間毎に切り換わるようになっている。つまり、各掃除走行モードを、それぞれの掃除走行モードに対応して設定された所定時間行うと、次の掃除走行モードに切り換わるようになっており、掃除時間内において、例えば第1掃除走行モード、第2掃除走行モード、第3掃除走行モード、第1掃除走行モード…と繰り返すようになっている。
【0028】
第1掃除走行モードは、物体(障害物)が少ない領域(オープンスペース)を効率よく走行するモードであり、電気掃除機11(本体ケース15)が部屋の中を物体に対して所定距離以内に接近する(物体に衝突する)毎に向きを変えつつ直進する、ランダムバウンド走行モードとも呼び得るものである。この第1掃除走行モードは、電気掃除機11(本体ケース15)を直進させるとともに、物体検出手段31により物理的な物体(障害物)Pを所定距離以内に検出(電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))との接触を検出)したり、検出手段32により物体(障害物)Pを所定距離以内に検出したりすると、接触を検出した場合には物体Pから離れるために僅かに後退した後に、所定の旋回角度だけ旋回(超信地旋回)して走行方向をランダムに変え、さらに直進させるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御するものである(図10(a)中の矢印S1に示す)。なお、以下、直進とは、直線に沿って進行するものだけでなく、直線に近似した円弧などに沿って進行する、実質的な直進も含むものとする。
【0029】
第2掃除走行モードは、例えば塵埃が溜まりやすい壁などの障害物の近傍や、掃除領域の隅などをサイドブラシ40(掃除部17)によって効果的に掃除するためのもので、電気掃除機11(本体ケース15)を直線状に走行(直進)させるとともに、物体検出手段31あるいは検出手段32により物体を検出したときに、この検出した物体の方向に対応した角度、本体ケース15を旋回させることでこの本体ケース15の側部を物体に向けるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する第1走行モードと、本体ケース15が物体検出手段31あるいは検出手段32により検出した物体に沿いつつ湾曲状に走行するようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する第2走行モードとを備えている(図10(b)中の矢印S2に示す)。
【0030】
第1走行モードは、例えば塵埃が溜まりやすい家具の脚などの周囲に電気掃除機11(本体ケース15)を入り込ませるためのもので、物体検出手段31あるいは検出手段32により検出した物体が壁であるか壁でないかを簡易的に判断し、壁である場合には壁に沿って電気掃除機11(本体ケース15)が直線状に走行し、壁でない場合には電気掃除機11(本体ケース15)が物体を周回するように回り込むモードである。また、第2走行モードは、第1走行モードによって入り込んだ狭所などから脱出するための、狭所脱出走行モードとも呼び得るものである。
【0031】
第3掃除走行モードは、例えば塵埃が溜まりやすい壁などの障害物の近傍や、掃除領域の隅などをサイドブラシ40(掃除部17)によって効果的に掃除するためのもので、電気掃除機11(本体ケース15)が物体検出手段31あるいは検出手段32により検出した物体である障害物(壁)などの領域の外縁に対して略一定の所定距離を維持しながら略平行に走行する、壁沿い走行モードとも呼び得るものである。この第3掃除走行モードは、検出手段32により側方の障害物(壁)を検出しつつこの障害物に沿って略直線状に走行させるとともに、物体検出手段31により前方に物体を検出すると、その位置で所定角度だけ旋回(超信地旋回)して電気掃除機11(本体ケース15)の側部すなわち検出手段32を物体に向けるように方向を変え、さらに壁に沿って直線状に走行させるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御するものである(図10(c)中の矢印S3に示す)。なお、本実施形態では、第3掃除走行モードは、以下、電気掃除機11(本体ケース15)の右側に壁を臨みながら、換言すれば電気掃除機11(本体ケース15)の右側を物体である障害物(壁)に沿わせながら走行する、いわゆる右手沿いのモードとするが、動作を左右反転した左手沿いのモードとしてもよいし、これら右手沿いのモードと左手沿いのモードとを所定条件に基づいて、例えば所定時間(10分など)が経過する毎に第3掃除走行モードの右手沿いと左手沿いとを切り換えるようにしてもよい。
【0032】
また、二次電池21は、例えば本体ケース15の下面の後部の両側に露出する接続部としての充電端子48,48と電気的に接続されており、これら充電端子48,48が充電装置側の充電用端子と電気的および機械的に接続されることで、充電装置を介して充電されるようになっている。
【0033】
次に、上記一実施形態の動作を説明する。
【0034】
一般に、電気掃除機11は、掃除をする掃除作業と、充電装置によって二次電池21を充電する充電作業とに大別される。そして、掃除作業は、充電装置から電気掃除機11が離脱する離脱動作、この離脱動作の後掃除部17によって掃除をする掃除動作、この掃除動作の後あるいは掃除動作の最中に充電装置の探索をする探索動作、この探索動作により検出した充電装置に向かって電気掃除機11が走行する接近(アプローチ)動作、および、充電装置に接近した電気掃除機11が充電装置と接続(ドッキング)する接続動作などにより構成されている。
【0035】
(掃除作業)
まず、掃除作業の概要を図12に示すフローチャートも参照しながら説明すると、電気掃除機11は、例えば予め設定された掃除開始時刻となったときなど、掃除の開始のタイミングで、制御手段20が待機モードから掃除モードに切り換わり、掃除部17および走行部16などを駆動させ、充電装置から例えば直線状に離脱する(離脱動作(ステップ1))。
【0036】
次いで、制御手段20は、センサ部28からの検出に対応して駆動輪25,25(モータ26,26)を駆動させることで、物体(障害物)や段差などを回避しながら電気掃除機11(本体ケース15)を、各掃除走行モードを切り換えて床面上を走行させつつ、掃除部17によって床面の塵埃を掃除して捕集する(掃除動作(ステップ2))。
【0037】
さらに、制御手段20は、この掃除動作中に、例えば電気掃除機11(本体ケース15)の移動距離や塵埃量によって掃除している領域の広さや複雑さを推定し、この推定した領域の広さや複雑さに基づいて、掃除時間T1を算出する(ステップ3)。そして、掃除を実施している掃除実施時間T2が、ステップ3で算出した掃除時間T1以上となったかどうかを制御手段20が判断する(ステップ4)。このステップ4において、掃除実施時間T2が掃除時間T1以上でないと判断したときにはステップ2に戻る。また、このステップ4において、掃除実施時間T2が掃除時間T1以上であると判断した場合には、電気掃除機11は、制御手段20が帰還モードに切り換わり、この制御手段20により駆動輪25,25(モータ26,26)を駆動させて走行しながら充電装置を探索する(探索動作(ステップ5))。この探索動作では、電気掃除機11は、充電装置の信号出力手段から発信されている無線信号を受信手段により受信するかどうかを検出する。
【0038】
そして、探索動作によって探索して検出した充電装置に向かうように電気掃除機11(本体ケース15)を走行させた後、所定距離まで近づくと、充電端子48,48を充電装置に向けて、無線信号(誘導信号)に沿って直線状に充電装置へと接近する(接近動作(ステップ6))。この後、充電端子48,48を充電用端子と接続(ドッキング)する(接続動作(ステップ7))。そして、電気掃除機11と充電装置との接続が終了すると、制御手段20は、掃除部17および走行部16などを停止させて掃除作業を終了する。
【0039】
上記の掃除動作中の各掃除走行モードについて説明する。
【0040】
図13に示すフローチャートも参照しながら説明すると、第1掃除走行モード時には、制御手段20は、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御し、電気掃除機11(本体ケース15)を所定距離直進させる(ステップ11)。次いで、制御手段20は、物体検出手段31により物体を所定距離以内に検出(電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))との接触を検出)したかどうかを判断する(ステップ12)。このステップ12において、物体検出手段31により物体を検出した(本体ケース15(バンパ35)が物体と接触(衝突)した)と判断した場合には、制御手段20は、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御し、電気掃除機11(本体ケース15)を所定の小さい距離後退させ(ステップ13)、後述するステップ15に進む。この後退は、物体検出手段31が接触センサであるので、後述する旋回の際に本体ケース15(バンパ35)が物体に対して擦らないようにするためのものであり、本体ケース15(バンパ35)を物体から僅かに離間させることができれば充分である。一方、ステップ12において、物体検出手段31により物体を検出していない(本体ケース15(バンパ35)が物体と接触(衝突)していない)と判断した場合には、制御手段20は、検出手段32により物体を所定距離以内に検出したかどうかを判断する(ステップ14)。このステップ14において、検出手段32により物体を検出していないと判断した場合には、ステップ11に戻る。また、このステップ14において、検出手段32により物体を検出したと判断した場合には、ステップ15に進む。
【0041】
ステップ15において、制御手段20は、第1掃除走行モードを所定時間実施したかどうかを判断する。このステップ15において、第1掃除走行モードを所定時間以上実施したと判断した場合には、制御手段20は第1掃除走行モードを終了し、他の掃除走行モードに移行する。また、ステップ15において、第1掃除走行モードを所定時間以上実施していない(所定時間未満である)と判断した場合には、制御手段20は、電気掃除機11(本体ケース15)の旋回角度および旋回方向を決定する(ステップ16)。
【0042】
ここで、物体検出手段31によって物体を検出した場合(ステップ12およびステップ13を経由した場合)には、旋回角度は、90°に対して、所定の逃げ角を加算するとともに、物体検出手段31の左右方向の同時反応角度範囲を加算、または減算することで算出される最低旋回角度に対して、所定の角度範囲の乱数を加算して求める。具体的に、本実施形態では、逃げ角は例えば5°、同時反応角度範囲は前側領域31aの左右への角度である例えば15°、所定の角度範囲は例えば0°〜30°に設定されている。そして、物体検出手段31の右側領域31bまたは左側領域31cが物体を検出したとき(例えば図2(a)では左側領域31cが物体を検出したときを示す)には、同時反応角度範囲を減算して旋回方向を物体から離反する方向、すなわち右側領域31bが物体を検出したときは反時計回り方向(左回り)、左側領域31cが物体を検出したときは時計回り方向(右回り)に設定する。また、物体検出手段31の前側領域31aが物体を検出したとき(例えば図2(b)に示す)には、同時反応角度範囲を加算するとともに、旋回方向を乱数で時計回り方向または反時計回り方向に決める。これにより、電気掃除機11(本体ケース15)が物体近傍で方向を変えて直進したときに同じ物体を再度検出する(同じ物体と再接触(再衝突)する、すなわち二度当たりする)ことを確実に防止している。
【0043】
また、物体検出手段31により物体を検出せず(バンパ35が物体と接触せず)、検出手段32によって物体を検出した場合(ステップ14を経由した場合)には(図3(a))、電気掃除機11(本体ケース15)を物体に対して平行化する、すなわちこの物体を検出した側の検出手段32を物体に向ける、換言すれば電気掃除機11(本体ケース15)の前方向を物体に対して平行な方向に向けるように旋回角度および旋回方向を設定する(図3(b))とともに、さらに追加旋回角度を設定する(図3(c))。この追加旋回角度は、例えば最小逃げ角に所定の角度範囲の乱数を加算して設定する。これにより、旋回角度にランダム性を付与するとともに、上記の二度当たりを防止している。
【0044】
なお、旋回角度は、第1掃除走行モードにおいて移動性を確保するとともに、掃除している領域の広さを最大直進距離に基づいて制御手段20が推定できるように、物体からの離脱角度が鋭角となるように設定することが好ましい。
【0045】
そして、ステップ16で決定した旋回角度および旋回方向に電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させ(ステップ17)、ステップ11に戻る。
【0046】
次に、図14に示すフローチャートも参照しながら説明すると、第2掃除走行モード時には、制御手段20は、まず、第1走行モードで電気掃除機11(本体ケース15)を所定距離走行させる。すなわち、制御手段20は、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御して、電気掃除機11(本体ケース15)を所定距離直進させる(ステップ21)。次いで、制御手段20は、物体検出手段31により物体Pを所定距離以内に検出(電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))との接触を検出)したかどうかを判断する(ステップ22)。このステップ22において、物体検出手段31により物体Pを検出した(本体ケース15(バンパ35)が物体Pと接触(衝突)した(例えば図1(a)))と判断した場合には、制御手段20は、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御し、電気掃除機11(本体ケース15)を所定の小さい距離後退させ(ステップ23、図1(b))、後述するステップ24に進む。この後退は、上記のステップ13と同様の趣旨である。一方、ステップ22において、物体検出手段31により物体Pを検出していない(本体ケース15(バンパ35)が物体Pと接触(衝突)していない)と判断した場合には、ステップ21に戻る。
【0047】
ステップ24において、制御手段20は、物体Pの検出タイミングを記憶するとともに、この物体Pの検出タイミングが前回の検出タイミングから所定時間、例えば4000ms未満であったかどうかを判断する。そして、このステップ24において、所定時間未満であると判断した場合には、制御手段20は、物体検出カウンタObCを1加算し(ステップ25)、この物体検出カウンタObCが所定値(例えば5)以上となったかどうかを判断する(ステップ26)。そして、物体検出カウンタObCが所定値以上となったと判断した場合には、物体検出カウンタObCを0にリセットするとともに、第2走行モードに切り換わる(ステップ27)。一方、ステップ26において、物体検出カウンタObCが所定値以上となっていない(所定値未満である)と判断した場合には、後述するステップ29に進む。すなわち、ステップ24ないしステップ27において、制御手段20は、物体検出手段31によって所定時間以内に物体Pを検出することが所定回数以上連続したかどうかを判断し、物体検出手段31によって所定時間以内に物体Pを検出することが所定回数以上連続したと判断したときには、電気掃除機11(本体ケース15)が狭所に入り込んだものと判断し、第2走行モードに切り換わるように制御している。
【0048】
一方、ステップ24において、物体Pの検出タイミングが前回の検出タイミングから所定時間、例えば4000ms未満でない(4000ms以上である)と判断した場合には、物体検出カウンタObCをリセットし(ステップ28)、ステップ29に進む。
【0049】
ステップ29において、制御手段20は、第2掃除走行モードを所定時間実施したかどうかを判断する。このステップ29において、第2掃除走行モードを所定時間以上実施したと判断した場合には、制御手段20は第2掃除走行モードを終了し、他の掃除走行モードに移行する。また、ステップ29において、第2掃除走行モードを所定時間以上実施していない(所定時間未満である)と判断した場合には、制御手段20は、以下のステップ30ないしステップ34の処理によって電気掃除機11(本体ケース15)の旋回角度および旋回方向を決定する。
【0050】
まず、制御手段20は、ステップ22で物体検出手段31がどの領域で物体Pを検出したか、換言すれば、電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))が物体Pに対してどの角度で接触(衝突)したかを判断する。例えば制御手段20は、前側領域31aが物体Pと接触したかどうかを判断する(ステップ30)。このステップ30において、前側領域31aが物体Pと接触したと判断した場合には、制御手段20は、旋回角度を例えば75°(右側領域31bおよび左側領域31cの角度範囲)に設定するとともに、旋回方向を時計回り方向または反時計回り方向にランダムに設定し(ステップ31)、以下のステップ35に進む。また、このステップ30において、前側領域31aが物体Pと接触していないと判断した場合には、制御手段20は、左側領域31cが物体Pと接触したかどうかを判断する(ステップ32)。そして、このステップ32において、左側領域31cが物体Pと接触したと判断した場合(図1(a))には、制御手段20は、旋回角度を例えば30°(前側領域31aの角度範囲)に設定するとともに、旋回方向を時計回り方向(右回り方向)に設定し(ステップ33)し、以下のステップ35に進む。さらに、ステップ32において、左側領域31cが物体Pと接触していないと判断した場合には、制御手段20は、右側領域31bが物体Pと接触したものと判断し、旋回角度を例えば30°(前側領域31aの角度範囲)に設定するとともに、旋回方向を反時計回り方向(左回り方向)に設定し(ステップ34)、これらステップ30ないしステップ34で決定した旋回角度および旋回方向に電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する(ステップ35、図1(c))。すなわち、制御手段20は、旋回角度および旋回方向を、物体検出手段31により検出した物体Pの方向の角度範囲(各領域31a,31b,31cの角度範囲)に対応して設定された角度、電気掃除機11(本体ケース15)を旋回(超信地旋回)させることでこの電気掃除機11(本体ケース15)の側部を物体Pに向けるように設定する。
【0051】
次いで、制御手段20は、物体P側に位置する検出手段32が近傍の所定距離以内、例えば50mm以下の距離に物体Pを検出したかどうかを判断する(ステップ36)。このステップ36において、検出手段32が近傍の所定距離以内に物体Pを検出していないと判断した場合には、物体Pが壁などの長手状に連続するものである可能性が低いと判断し、後述のステップ41に進む。また、検出手段32が近傍の所定距離以内に物体Pを検出したと判断した場合には、以下のステップ37に進む。
【0052】
すなわち、ステップ35の旋回の時点では、電気掃除機11(本体ケース15)はまだ完全に物体Pに対して側部を向けた状態(物体Pと平行な状態)となっていない。そこで、この状態から、制御手段20は、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御してさらに電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させ(ステップ37、図1(d))、予め設定された最小旋回角度と最大旋回角度との間の角度旋回するうちに検出手段32により所定距離以内に物体Pを検出したかどうか、換言すれば、電気掃除機11(本体ケース15)の前側が物体Pに対して略平行となったかどうかを判断する(ステップ38)。ここで、最小旋回角度とは、ステップ35の状態から、この最小旋回角度まで電気掃除機11(本体ケース15)が旋回する間、検出手段32による物体Pの検出(物体Pとの距離の検出)を無効にするための角度であり、最大旋回角度は、電気掃除機11(本体ケース15)がそれ以上旋回しないようにするための上限となる角度である。本実施形態では、最小旋回角度は例えば0°に設定され、最大旋回角度は30°に設定されている。
【0053】
そして、ステップ38において、制御手段20は、最小旋回角度と最大旋回角度との間の角度旋回するうちに検出手段32により所定距離以内に物体Pを検出したと判断した場合には、図1(e)に示すような、長手状に連続する壁などの物体P1に対して電気掃除機11(本体ケース15)の側部が沿った状態となった(平行化に成功した)、換言すれば、物体P1が連続する壁状のものであると判断し、この物体P1に沿って電気掃除機11(本体ケース15)を所定距離走行させる(壁沿い走行、ステップ39)。このステップ39の走行では、検出手段32により物体P1との距離を所定値、例えば10mmに保ちつつ、所定距離、例えば350mm走行するように制御手段20がモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する(図1(f))。
【0054】
この後、制御手段20は、物体検出手段31および検出手段32により周囲の物体を検出した結果と乱数とによって、電気掃除機11(本体ケース15)の旋回角度および旋回方向を決定し、電気掃除機11(本体ケース15)を物体P1から離脱する方向に旋回させるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御し(ステップ40)、ステップ21に戻る。
【0055】
一方、ステップ38において、最小旋回角度と最大旋回角度との間の角度旋回するうちに検出手段32により所定距離以内に物体Pを検出していないと判断した場合には、図1(g)に示すような、連続しない家具の脚などの、周回(迂回)可能な物体P2に対して側部を向けようとしている、換言すれば、物体P2が壁状のものでないと判断し、この物体P2に沿って所定距離直進させるとともにこの物体P2を回り込むように電気掃除機11(本体ケース15)を旋回走行させる(狭所侵入走行、ステップ41)。このステップ41の旋回走行は、旋回半径を本体ケース15の半径+所定値(例えば10mm)とし、旋回角度を90°に設定するとともに、ステップ35での旋回方向とは反対の方向を旋回方向として旋回走行するように制御手段20がモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する(図1(h))。なお、この旋回走行において、物体検出手段31が物体との接触を検出したときには、制御手段20は、旋回をその時点で中止し、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御して、電気掃除機11(本体ケース15)を所定の小さい距離後退させる。この後退は、上記のステップ13と同様の趣旨である。
【0056】
次いで、制御手段20は、ステップ41の旋回走行角度の実績を累積し(ステップ42)、この累積した角度が所定角度、例えば90°以上となったかどうかを判断する(ステップ43)。そして、このステップ43において、累積した角度が所定角度(90°)以上でない(所定角度未満である)と判断した場合には、ステップ30に戻る。また、このステップ43において、累積した角度が所定角度(90°)以上であると判断した場合には、累積した角度を0°に初期化し(ステップ44)、ステップ21に戻る。すなわち、本実施形態では、90°以上旋回走行できれば、物体P2を回り込むように周回できたものと判断する。
【0057】
また、第2走行モードは、例えば図11(a)に示すような、家具の脚などの、互いに離間配置された複数の物体Pの間、図11(b)に示すような、壁などの物体Pによって三方が囲まれた狭い幅の袋小路、あるいは、図11(c)に示すような、壁などの物体Pによって周囲が囲まれた狭い領域などに電気掃除機11(本体ケース15)が入り込んだときの脱出用として用いられる。この第2走行モードとしては、電気掃除機11(本体ケース15)の右側に物体Pを臨む、いわゆる右手沿いの場合と、動作を左右反転した左手沿いの場合とが考えられ、少なくともいずれか一方を用いたり、所定条件に基づいてこれらの場合を切り換えたりすることが可能であるが、説明をより明確にするために、右手沿いの場合を例に挙げて説明する。図15に示すフローチャートも参照すると、この第2走行モードにおいて、制御手段20は、まずこの第2走行モードを所定時間、例えば20秒実施したかどうかを判断する(ステップ51)。このステップ51において、第2走行モードを所定時間以上実施したと判断した場合には、制御手段20は第2走行モードを終了し、第1走行モード、あるいは他の掃除走行モードに移行する。また、ステップ51において、第2走行モードを所定時間以上実施していない(所定時間未満である)と判断した場合には、物体Pを回り込むように電気掃除機11(本体ケース15)を旋回走行させる(ステップ52)。このステップ52の旋回走行は、旋回半径を本体ケース15の半径+所定値(例えば10mm)とし、旋回角度を360°に設定するとともに、時計回り方向(右回り方向)を旋回方向として旋回走行するように制御手段20がモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する(図4(a))。そして、制御手段20は、物体検出手段31により物体Pを検出したかどうか、換言すれば電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))が物体Pと接触(衝突)したかどうかを判断する(ステップ53)。このステップ53において、物体検出手段31により物体Pを検出したと判断した場合(図4(b))には、制御手段20は、旋回をその時点で中止し、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御して、電気掃除機11(本体ケース15)を所定の小さい距離後退させ(ステップ54)、ステップ55に進む。この後退は、上記のステップ13と同様の趣旨である。
【0058】
制御手段20は、ステップ52の旋回走行角度の実績が所定角度、例えば100°以上となったかどうかを判断する(ステップ55)。そして、このステップ55において、角度の実績が所定角度(100°)以上でない(所定角度未満である)と判断した場合には、制御手段20は、以下のステップ56ないしステップ60の処理によって電気掃除機11(本体ケース15)の旋回角度を決定する。
【0059】
まず、制御手段20は、ステップ52の旋回走行を中止した時点で、物体検出手段31がどの領域で物体Pを検出したか、換言すれば、電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))が物体に対してどの角度で接触(衝突)したかを判断する。例えば制御手段20は、前側領域31aが物体Pと接触したかどうかを判断する(ステップ56)。このステップ56において、前側領域31aが物体Pと接触したと判断した場合には、制御手段20は、旋回角度を例えば75°(右側領域31bおよび左側領域31cの角度範囲)に設定し(ステップ57)、以下のステップ61に進む。また、このステップ56において、前側領域31aが物体Pと接触していないと判断した場合には、制御手段20は、左側領域31cが物体Pと接触したかどうかを判断する(ステップ58)。そして、このステップ58において、左側領域31cが物体Pと接触したと判断した場合には、制御手段20は、旋回角度を例えば105°(前側領域31aの角度範囲)に設定し(ステップ59)、以下のステップ61に進む。さらに、ステップ58において、左側領域31cが物体Pと接触していないと判断した場合には、制御手段20は、右側領域31bが物体Pと接触したものと判断し、旋回角度を例えば20°(前側領域31aの角度範囲)に設定し(ステップ60)、これらステップ56ないしステップ60で決定した旋回角度で時計回り方向(左回り方向)に電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する(ステップ61)。すなわち、物体検出手段31により検出した物体Pに対して、この物体Pの方向に対応した角度、電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する、換言すれば電気掃除機11(本体ケース15)と物体Pとの位置関係に応じて旋回角度をそれぞれ設定することで、電気掃除機11(本体ケース15)の側部が物体Pに向くようになる。したがって、この第2走行モードにより、電気掃除機11(本体ケース15)は物体検出手段31により検出した物体Pに沿いつつ湾曲状(円弧状)に走行するように制御手段20によって制御される(図4(c))。
【0060】
一方、ステップ55において、角度の実績が所定角度(100°)以上であると判断した場合、および、ステップ53において、物体検出手段31により物体Pを検出していないと判断した場合には、ステップ52の旋回走行にて設定された旋回角度である360°の旋回が行われたことになるため、制御手段20は、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御して、電気掃除機11(本体ケース15)を所定角度、例えば30°旋回(超信地旋回)させ(ステップ62、図5(a))、さらに電気掃除機11(本体ケース15)を所定距離直進させる(ステップ63、図5(b))。そして、制御手段20は、物体検出手段31により物体Pを検出したかどうかを判断する(ステップ64)。このステップ64において、物体検出手段31により物体を検出していないと判断した場合には、ステップ63に戻る。また、このステップ64において、物体検出手段31により物体Pを検出したと判断したときには、制御手段20は、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御して、電気掃除機11(本体ケース15)を所定の小さい距離後退させる(ステップ65)。この後退は、上記のステップ13と同様の趣旨である。そして、制御手段20は、電気掃除機11(本体ケース15)が直進した距離が所定距離、例えば500mm以上であるかどうかを判断する(ステップ66)。このステップ66において、電気掃除機11(本体ケース15)が直進した距離が所定距離以上であると判断した場合には、電気掃除機11(本体ケース15)が狭所からの脱出に成功したものと判断し、第2走行モードを終了するとともに、第1走行モード、あるいは他の掃除走行モードに移行する。また、ステップ66において、電気掃除機11(本体ケース15)が直進した距離が所定距離以上でない(所定距離未満である)と判断した場合には、ステップ51に戻る。なお、第2走行モードの左手沿いの場合には、ステップ52、ステップ61およびステップ62の旋回方向が反時計回り方向(左回り方向)となり、ステップ58の判断が右側領域31bとなるだけで、他は同様である。
【0061】
さらに、第3掃除走行モード時には、制御手段20は、モータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御し、電気掃除機11(本体ケース15)を壁などの掃除領域の外縁の物体に沿って直進させる。このとき、制御手段20は、検出手段32によって電気掃除機11(本体ケース15)の側方の物体との距離が所定距離、例えば10mmに維持させるように制御する。そして、物体検出手段31により物体を所定距離以内に検出(電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))との接触を検出)した場合には、制御手段20はモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御して電気掃除機11(本体ケース15)を旋回(超信地旋回)させ、前側を物体に対して略平行となるようにしてさらに直進させる。さらに、第3掃除走行モードを所定時間実施した場合には、他の掃除走行モードに切り換わる。
【0062】
これら第1掃除走行モードないし第3掃除走行モードを用いることで、領域内の床面全体を略隙間なく掃除できる。
【0063】
本実施形態では、狭所に入り込んだときの脱出用として用いられる第2掃除走行モードの第2走行モードは、第2掃除走行モードでのみ用いているが、第1掃除走行モードおよび第3掃除走行モードにおいても、第2掃除走行モードの第1走行モードから第2走行モードに移行するための判断条件と同様の判断および制御を組み込み、第2掃除走行モードの第2走行モードと同様の走行モードを実行することにより、狭所から短時間で脱出することができ、狭所に滞留することによる掃除時間のロスを削減できる。
【0064】
(充電作業)
充電装置に電気掃除機11が接続された後、所定のタイミング、例えば予め設定された充電開始時刻となったとき、あるいは電気掃除機11が充電装置に接続されてから所定時間が経過したときなどに、制御手段20は充電モードに移行し、充電装置から二次電池21の充電を開始する。そして、二次電池21の電圧が所定の使用可能電圧まで上昇したと判断すると、充電作業を終了し、制御手段20が待機モードとなる。
【0065】
以上説明した一実施形態によれば、制御手段20は、第1走行モードあるいは第2走行モードにおいて、物体検出手段31により物体を検出したときに、この検出した物体の方向に対応した角度、具体的には、物体検出手段31により検出した電気掃除機11(本体ケース15)の前側の複数の方向の角度範囲(各領域31a,31b,31cの角度範囲)に対応して設定された角度、電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させることで電気掃除機11(の本体ケースの側部を物体に向けるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御するので、物体を効果的に回避しつつ、狭所をより効率よく掃除できる。
【0066】
具体的に、制御手段20は、第1走行モードにおいて、物体検出手段31により物体P2を検出したときに、この検出した物体P2の方向に対応した角度、電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させることでこの電気掃除機11(本体ケース15)の側部を物体P2に向けるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御した状態で、検出手段32により物体P2を検出しない場合(図1(g))には、連続しない家具の脚などの、周回(迂回)可能な物体P2であると判断し、電気掃除機11(本体ケース15)を所定距離直進させた後、物体検出手段31により検出した物体P2側に旋回走行させる(図1(h))ようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御するので、物体検出手段31と検出手段32との検出を積極的に活用して、物体P2が配置された狭所に電気掃除機11(本体ケース15)を効果的(高確率)に入り込ませることができ、狭所の床面を効果的に掃除できる。
【0067】
また、制御手段20は、第1走行モードにおいて、物体検出手段31により物体P1を検出したときに、この検出した物体P1の方向に対応した角度、電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させることでこの電気掃除機11(本体ケース15)の側部を物体P1に向けるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御した状態で、検出手段32により物体P1を検出した場合(図1(e))には、連続する壁などの物体P1であると判断し、物体P1に沿って電気掃除機11(本体ケース15)を直進させるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御するので、壁などの物体P1の近傍の床面を効果的に掃除できる。
【0068】
さらに、制御手段20は、電気掃除機11(本体ケース15)を直進させるとともに物体検出手段31により物体を検出したときに電気掃除機11(本体ケース15)の側部を物体に向けるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する第1走行モード時に、物体検出手段31により物体を所定時間内に検出することが所定回数以上連続したときに、脱出することが容易でない狭所に入り込んだものと判断して、電気掃除機11(本体ケース15)が物体検出手段32により検出した物体に沿いつつ湾曲状に走行するようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御する第2走行モードに切り換わることで、物体検出手段31の検出を積極的に活用して、狭所からの脱出の可能性をより向上できる。
【0069】
そして、制御手段20は、第2走行モード時に電気掃除機11(本体ケース15)が所定角度(100°)以上旋回したと判断したときには、電気掃除機11(本体ケース15)を反対方向に旋回させた後、直進させるようにモータ26,26(駆動輪25,25)の動作を制御するので、第2走行モードでの旋回によって脱出したと想定される狭所に電気掃除機11(本体ケース15)が再度入り込まないようにできる。
【0070】
したがって、電気掃除機11は、掃除動作中に物体に対して方向を転換する一連の動作中に物体検出手段31と検出手段32との検出に基づいて物体の形状を高確率に判断し、それら物体の形状に対応した走行制御を行うため、これら物体検出手段31と検出手段32との検出をそれぞれ積極的に活用して、無駄な動きや複雑な制御を行うことなく、スムーズな物体の迂回および周回や、狭所への入り込みおよび狭所からの脱出が可能となり、狭所を高確率で効果的に(短時間で)掃除できる。
【0071】
また、物体検出手段31は、物体との接触により物体を検出する接触センサとすることで、物体、および、この物体と電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))との距離を、それぞれより精度よく検出できるとともに、物体検出手段31により物体を検出したときに、一旦後退して物体から物体検出手段31(バンパ35)を離間させることで、この検出した物体の方向に対応した角度、電気掃除機11(本体ケース15)を旋回させて電気掃除機11(本体ケース15)の側部を物体に向ける際に、物体検出手段31(バンパ35)が物体を擦らないようにすることができ、物体や電気掃除機11(本体ケース15(バンパ35))の傷付きをより確実に防止できる。
【0072】
なお、上記一実施形態において、物体検出手段31としては、例えば超音波センサあるいは赤外線センサなどの非接触型の測距センサを用い、所定距離以内に位置する物体を接触することなく検出するようにしてもよい。
【0073】
また、検出手段32は、左右対称に配置したが、例えば第2走行モード、あるいは第3掃除走行モードにおいて、右手沿い、あるいは左手沿いのモードだけとする場合には、その方向にのみあれば、上記の一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
さらに、掃除動作は、充電装置から開始する他に、掃除領域中の任意の位置を開始位置とすることができる。
【0075】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
11 電気掃除機
15 本体ケース
17 掃除部
20 制御手段
25 駆動輪
31 物体検出手段
32 物体検出手段の機能を有する検出手段
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