(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧力生値を測定する圧力センサと、前記圧力生値を平均化処理する平均処理化手段と、を更に有し、前記平均処理化手段から出力される値を前記圧力値として用いることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ装置。
ガスセンサから出力される内燃機関に設けられた流路内を流れるガスに含まれる特定ガス成分の濃度に応じた出力値、および、前記ガスの圧力である圧力値に基づいて特定成分濃度を算出するガスセンサを用いた濃度測定方法であって、
前回濃度を算出したタイミングと、今回濃度を算出するタイミングとの時間差あたりの前記圧力値の変化量から圧力変化速度を算出する圧力変化速度算出ステップと、
前記圧力変化速度が所定速度を超えるか否かを判定する圧力変化速度判定ステップと、
前記圧力変化速度が前記所定速度を超えたと判定された場合に、算出した前記圧力変化速度に基づいて前記出力値の補正量を算出する補正量算出ステップと、
算出した前記補正量を用いて前記ガスセンサの前記出力値を補正する出力補正ステップと、
前記時間差あたりの前記圧力値の変化量を算出する変化量算出ステップと、
前記圧力値の変化量が所定の変化量を超えるか否かを判定する変化量判定ステップと、を有し、
前記補正量算出ステップは、前記圧力変化速度が所定速度を超えたと判定された場合、かつ、前記圧力値の変化量が前記所定の変化量を超えたと判定された場合に、算出した前記圧力変化速度に基づいて前記出力値の補正量を算出することを特徴とするガスセンサを用いた濃度測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載された方法では、時間の経過に伴う圧力の変動が比較的小さい場合(静的な圧力変化の場合)には、ガスセンサの出力値から圧力の影響を除去しやすい。しかしながら、時間の経過に伴う圧力変動が比較的大きい場合(動的な圧力変化の場合)には、ガスセンサの出力値から圧力の影響を除去しきれず、特定ガス成分の濃度測定精度が大きく低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、圧力が動的に変化する場合にも測定精度の低下を抑制することができるガスセンサ装置、およびガスセンサを用いた濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のガスセンサ装置は、内燃機関に設けられた流路内を流れるガスに含まれる特定ガス成分の濃度に応じた出力値を出力するガスセンサと、前記ガスセンサから出力される出力値、および、前記ガスの圧力である圧力値に基づいて特定成分濃度を算出する演算部と、が設けられたガスセンサ装置であって、演算部は、所定期間あたりの前記圧力値の変化量から圧力変化速度を算出する圧力変化速度算出手段と、前記圧力変化速度が所定速度を超えるか否かを判定する圧力変化速度判定手段と、前記圧力変化速度が所定速度を超えたと判定した場合に、算出した前記圧力速度に基づいて、前記出力値の補正量を算出する補正値算出手段と、該補正量算出手段にて算出した前記補正量を用いて前記ガスセンサの前記出力値を補正する出力補正手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明のガスセンサを用いた濃度測定方法は、ガスセンサから出力される内燃機関に設けられた流路内を流れるガスに含まれる特定ガス成分の濃度に応じた出力値、および、前記ガスの圧力である圧力値に基づいて特定成分濃度を算出するガスセンサを用いた濃度測定方法であって、所定期間あたりの前記圧力値の変化量から圧力変化速度を算出する圧力変化速度算出ステップと、前記圧力変化速度が所定速度を超えるか否かを判定する圧力変化速度判定ステップと、前記圧力変化速度が所定速度を超えたと判定された場合に、算出した前記圧力変化速度に基づいて前記出力値の補正量を算出する補正量算出ステップと、算出した前記補正量を用いて前記ガスセンサの前記出力値を補正する出力補正ステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のガスセンサ装置、ガスセンサを用いた濃度測定方法によれば、圧力変化速度が所定速度を超えたときに、圧力変化速度に基づいて算出した補正量を用いてガスセンサの出力値を補正する。言い換えると、圧力が動的に変化する場合には、動的な変化の度合いに応じた補正量を用いてガスセンサの出力値を補正するため、圧力が動的に変化しても、求められる特定成分濃度の精度低下を抑制することができる。
【0012】
その一方で、圧力変化速度が所定速度以下の場合には、圧力変化速度に基づいて算出した補正量を用いたガスセンサの出力値の補正は行われない。例えば、比較的早い周期で変動する圧力変化のような動的な圧力変化では、ガスセンサの出力値の補正が行われ、比較的遅い周期で変動する圧力変化のような静的な圧力変化では、ガスセンサの出力値の補正は行われない。そのため、圧力が動的に変化する場合にも測定精度の低下を抑制することができる。
【0013】
上記発明のガスセンサ装置において、演算部は、所定期間あたりの前記圧力値の変化量を算出する変化量算出手段と、前記圧力値の変化量が所定の変化量を超えるか否かを判定する圧力変化判定手段と、を更に有し、前記補正量算出手段は、前記圧力変化速度判定手段にて前記圧力変化速度が所定速度を超えたと判定した場合、かつ、前記圧力変化量判定手段にて前記圧力値の変化量が所定の変化量を超えたと判定した場合に、算出した前記圧力変化速度に基づいて、前記出力値の補正量を算出することが好ましい。
【0014】
上記発明のガスセンサを用いた濃度測定方法においては、前記所定期間あたりの前記圧力値の変化量を算出する変化量算出ステップと、前記圧力値の変化量が所定の変化量を超えるか否かを判定する変化量判定ステップと、を更に有し、前記補正量算出ステップは、前記圧力変化速度が所定速度を超えたと判定された場合、かつ、前記圧力値の変化量が所定の変化量を超えたと判定された場合に、算出した前記圧力変化速度に基づいて前記出力値の補正量を算出することが好ましい。
【0015】
このように、圧力値の変化量が所定の変化量を超えたときに、補正量を用いてガスセンサの出力値を補正することにより、求められる特定成分濃度の精度低下を抑制することができる。例えば、所定期間あたりの圧力値の変化量が所定の変化量以下のような静的な圧力変化では、ガスセンサの出力値の補正は行われず、所定期間あたりの圧力値の変化量が所定の変化量を超えるような動的な圧力変化では、ガスセンサの出力値の補正が行われる。そのため、圧力が動的に変化する場合にも測定精度の低下を抑制することができる。
【0016】
上記発明のガスセンサ装置においては、圧力生値を測定する圧力センサと、前記圧力生値を平均化処理する平均処理化手段と、を更に有し、前記平均処理化手段から出力される値を前記圧力値として用いることが好ましい。このように、平均化処理された圧力生値を圧力値として用いることにより、求められる特定成分濃度の精度低下を更に抑制しやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のガスセンサ装置、およびガスセンサを用いた濃度測定方法によれば、圧力変化速度が所定速度を超えたときに、圧力変化速度に基づいて算出した補正量を用いてガスセンサの出力値を補正する。言い換えると、圧力が動的に変化する場合には、動的な変化の度合いに応じた補正量を用いてガスセンサの出力値を補正するため、圧力が動的に変化しても、求められる特定成分濃度の精度低下を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
この発明の第1の実施形態に係るガスセンサ装置1について、
図1から
図8を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るガスセンサ装置1の概略構成を説明する模式図である。
【0020】
ガスセンサ装置1は、
図1に示すように、内燃機関40に吸入される吸気ガスに含まれる酸素の濃度を測定するものである。ガスセンサ装置1により測定された酸素濃度は内燃機関40の制御、例えば空燃比の制御に用いられるものである。また、排気ガスの吸気側への循環が生じている時の酸素濃度と排気ガスの吸気側への循環が生じていない時の酸素濃度との比であるEGR率の算出にも用いることができる。ガスセンサ装置1には、酸素センサ(ガスセンサ)10と、圧力センサ20と、エンジンコントロールユニット(演算部)30(以下「ECU30」と表記する。)と、が主に設けられている。
【0021】
なお、本実施形態では、本発明のガスセンサ装置1を、内燃機関40に吸入される吸気ガスに含まれる酸素濃度を測定する例に適用して説明するが、内燃機関40から排気される排気ガスに含まれる酸素濃度を測定する例に適用してもよく、特に限定するものではない。但し、吸気ガスにおいては、ガスの圧力変動が大きく、後述するセンサ素子の出力値とO
2濃度により誤差が生じやすい状況となるため、本発明のガスセンサ装置を用いることが有効となる。
【0022】
酸素センサ10および圧力センサ20は、内燃機関40の吸入配管41であって、排気再循環配管43(以下、「EGR配管43」と表記する。)との合流点よりも内燃機関40側、言い換えると下流側に配置されている。また、吸入配管41における酸素センサ10および圧力センサ20の配置位置よりも上流側には、吸入配管41を流れる空気の流量を調節する吸気弁44が設けられている。なお、酸素センサ10および圧力センサ20の配置は、酸素センサ10が上流側に配置されていてもよいし、圧力センサ20が上流側に配置されていてもよく、特に限定するものではない。
【0023】
なお、EGR配管43は、排気配管42と吸入配管41とをつなぐ配管であり、排気配管42を流れる排気ガスの一部を吸入配管41に導くもの、言い換えると排気ガスを再循環させるものである。EGR配管43には、排気ガスの再循環量を調節する調節弁45が設けられている。
【0024】
酸素センサ10は、吸入配管41の内部を流れる吸気ガスに含まれる酸素濃度を測定するセンサであり、酸素濃度に応じた出力値の1つである電流Ipを出力するものである。電流Ipの値は、吸気ガスに含まれる酸素濃度に応じて変化すると共に、吸入配管41を流れる吸気ガスの圧力にも応じて変化する。言い換えると、電流Ipは、酸素濃度の関数であるとともに、吸気ガス圧力の関数でもある。なお、酸素センサ10としては、上述の特性を有する公知のセンサであればよく、特にその形式等を限定するものではない。
【0025】
圧力センサ20は、吸入配管41の内部を流れる吸気ガスの圧力を測定するセンサであり、吸気ガスの圧力に応じた測定信号を出力するものである。なお、圧力センサ20としては、公知の圧力センサを用いることができ、特に限定するものではない。
【0026】
ECU30は、酸素センサ10の出力値および圧力センサ20の圧力値に基づいて、吸入配管41の内部を流れる吸気ガスの酸素濃度を演算により求めるものであり、少なくとも、求められた酸素濃度に基づいて内燃機関40の運転状態を制御するものである。
【0027】
またECU30は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUやRAM等を、圧力変化速度算出手段31、圧力変化速度判定手段32、補正量算出手段33、および出力補正手段34として少なくとも機能させるものである。なお、ECU30における酸素濃度の算出方法、具体的には、圧力変化算出手段31、圧力変化速度判定手段32、補正量算出手段33、および出力補正手段34における演算内容については後述する。
【0028】
次に、上記の構成からなるガスセンサ装置1における酸素濃度の算出方法について説明する。
図2および
図3は、
図1のECU30における酸素濃度の算出方法を説明するフローチャートである。なお、本実施形態では、ガスセンサ装置1における酸素濃度の算出は、任意の時間間隔をあけて繰り返し行われる例に適用して説明する。
【0029】
ガスセンサ装置1における酸素濃度の算出処理が開始されると、ECU30は、
図2に示すように、酸素濃度の算出を開始する(S10)。するとECU30は、
図3に示すように、酸素センサ10から出力される出力値(電流Ip)、および、圧力センサ20から出力される測定信号である圧力に係る電気信号を取得する処理を実行する(S111)。圧力に係る電気信号は、ECU30において予め記憶されているテーブルなどに基づいて、吸入配管41の内部を流れる吸気ガスの圧力値Pに変換される。
【0030】
次にECU30は、下記の式(1)に基づいて、仮O
2濃度(特許請求の範囲の「仮特定成分濃度」に相当する。)を算出する処理を実行する(S112)。仮O
2濃度は、フィックの法則から導かれる式(1)に、電流Ipの値および吸気ガスの圧力値Pを代入して得られる酸素濃度の値である。
【0031】
【数1】
ここで、Ipは酸素センサ10から出力された出力値であり、Pは圧力センサ20により測定された圧力値である。なお、A、Bは2つの圧力値に対して算出される仮特定成分濃度が近似可能な定数であり、具体的には、Aは下記の式(2)により定まる定数、Bは下記の式(3)により定まる定数である。
【0032】
【数2】
ここで、Lは酸素センサ10の拡散孔の長さ(m)、Rは気体定数(8.314JK
−1mol
−1)、Sは酸素センサ10の拡散孔の断面積(m
2)、Fはファラデー定数(9.6485×10
4Cmol
−1)、Tは酸素センサ10の拡散孔を通過する時のガスの温度(K)である。
【0033】
なお、上述の係数Aおよび係数Bは、上述の式(2)および式(3)に基づいて求めてもよいし、予めO
2濃度および圧力が判っているガスの酸素濃度を測定して、実験的に求めてもよく、特に限定するものではない。
【0034】
仮O
2濃度が算出されると、ECU30は、次に係数Cを算出する計算式を決定する処理を実行する(S113)。係数Cは、仮O
2濃度からO
2濃度(特許請求の範囲の「特定成分濃度」に相当する。)を求める下記の式(4)の補正項に含まれる係数である(式(5)参照)。
【0035】
【数3】
係数Cは、圧力センサ20により測定された吸気ガスの圧力に応じて異なる計算式に基づいて算出される。本実施形態では、所定の圧力値P
T未満の場合には、下記の式(6)が計算式として選択され、圧力値P
T以上の場合には、下記の式(7)が計算式として選択される例に適用して説明する。
【0036】
【数4】
xは圧力センサ20により測定された吸気ガスの圧力である。
【0037】
ここで、aは仮O
2濃度の値に基づいて定まる係数であり、具体的には
図4(a)に示すように、仮O
2濃度の値が高くなる伴い値が小さくなる係数である。bは仮O
2濃度の値に基づいて定まる係数であり、具体的には
図4(b)に示すように、仮O
2濃度の値が高くなる伴い値が大きくなる係数である。cは仮O
2濃度の値に基づいて定まる係数であり、具体的には
図4(c)に示すように、仮O
2濃度の値が高くなる伴い値が小さくなる係数である。
【0038】
dは仮O
2濃度の値に基づいて定まる係数であり、具体的には
図5(a)に示すように、仮O
2濃度の値によって変化する係数である。eは仮O
2濃度の値に基づいて定まる係数であり、具体的には
図5(b)に示すように、仮O
2濃度の値が高くなる伴い値が小さくなる係数である。
【0039】
算出手段31において係数Cを算出する計算式が選定されると、次に、係数Cを算出する処理が算出手段31によって実行される(S114)。
例えば、圧力センサ20により測定された吸気ガス圧力が圧力値P
T未満の場合には、算出手段31は上記の式(6)を計算式として選択し、算出された仮O
2濃度に対応する係数a,b,cの値、および、圧力センサ20により測定された吸気ガス圧力に基づいて係数Cの値を算出する処理を実行する。
【0040】
係数Cの値が算出されると、補正項の値である補正値を演算で求める処理が算出手段31によって実行される(S115)。具体的には、上述の式(5)、算出された仮O
2濃度、および、S114において算出された係数Cの値に基づいて、補正項の値が演算により求められる。
【0041】
そして、上述の式(4)、算出された仮O
2濃度、および、S115において算出された補正項の値に基づいて、O
2濃度(特定成分濃度)の算出処理が算出手段31により実行される(S116)。
【0042】
ECU30におけるO
2濃度の算出処理が終了すると、
図2に戻り、ECU30は今回の圧力値Pの取得処理を行う(S20)。圧力値Pは、S20の処理を行うタイミングで、圧力センサ20から出力される圧力に係る電気信号を取得し、圧力に係る電気信号を予め記憶されているテーブルなどに基づいて圧力値Pに変換してもよいし、上述のS111などにおいて取得した圧力値PをECU30のRAM等に記憶させておき、記憶させた圧力値Pを取得してもよい。
【0043】
次いで、ECU30の圧力変化速度算出手段31は圧力変化速度を求める算出処理を行う(S30:圧力変化速度算出ステップ)。圧力変化速度の算出方法としては、次の方法を例示することができる。まず、前回のO
2濃度を算出する際に取得した前回の圧力値P0をECU30のRAM等から取得し、S20で取得した今回の圧力値Pとの圧力差を求める。そして、この圧力差を、前回のO
2濃度を算出したタイミングと、今回のO
2濃度を算出するタイミングとの時間差(所定期間)で除算することにより圧力変化速度が求められる。なお、圧力変化速度を求める算出方法は、上述の方法に限られるものではなく、その他の種々の方法を用いることができる。
【0044】
圧力変化速度の値が求められると、圧力変化速度判定手段32は、求めた圧力変化速度と圧力変化速度の閾値Tha(所定速度)との対比を行い、求めた圧力変化速度が閾値Thaを超えるか否かを判定する処理を行う(S40:圧力変化速度判定ステップ)。
【0045】
圧力変化速度が閾値Thaを超えると判定された場合(YESの場合)には、補正量算出手段33は、補正量を求める演算処理を行う(S50:補正量算出ステップ)。補正量は、S10において求めたO
2濃度の補正に用いられるものである。S10において求めたO
2濃度に含まれる誤差は、圧力変化速度と相関があるため、補正量を算出する方法としては、圧力変化速度に補正係数Cfを乗算する方法を例示することができる。
【0046】
補正量が求められると、出力補正手段34は、真O
2濃度を求める演算処理を行う(S60:出力補正ステップ)。真O
2濃度は、S10において求めたO
2濃度から、S50で求めた補正量を減算することにより求められる。このようにすることにより、S10において求めたO
2濃度に含まれる動圧に依存した誤差を補正したより精度の高い真O
2濃度を求めることができる。
【0047】
その一方で、S40の処理において、圧力変化速度が閾値Tha以下であると判定された場合(NOの場合)には、出力補正手段34は、S10で求めたO
2濃度を、真O
2濃度とする処理を行う(S70)。つまり、S10で求めたO
2濃度に動圧に依存した誤差が含まれない、または、含まれていてもその影響が小さい場合には、補正を行うことなくS10で求めたO
2濃度を、真O
2濃度とする。
【0048】
上述のように補正された真O
2濃度が求められると、出力補正手段34は、今回のO
2濃度を算出する際に取得した圧力値Pを、前回のO
2濃度を算出する際に取得した圧力値P0として記憶する処理を行う(S80)。その後ECU30は、再びS10に戻り、上述の演算処理を繰り返し行う。
【0049】
次に、上記の構成からなるガスセンサ装置1を用いた酸素濃度を測定した実験結果について
図6から
図8を参照しながら説明する。ガスセンサ装置1を用いた酸素濃度を測定する実験は、
図6に示す実験装置70を用いて行われる。
【0050】
実験装置70は、酸素を所定濃度で含むガスが蓄えられたボンベ71と、ボンベ71から供給されたガスの圧力を調整するレギュレータ72と、ガスの流量を調整するマスフローコントローラ73と、ガスセンサ装置1が取り付けられるチャンバ74と、タイマ76と接続された二方弁75と、から主に構成されている。
【0051】
チャンバ74には、
図7に示すようにガスセンサ装置1の酸素センサ10および圧力センサ20が取り付けられている。本実験装置70で用いられたチャンバ74の容積は360cc(360ml)であり、チャンバ74の直径は35mmである。また、本実験装置70で用いられた二方弁75はガスの流路を開閉するものであり、タイマ76によって流路を開にする期間を制御するものである例に適用して説明する。
【0052】
実験は、室温状況の下、ガスの流速を40L/min〜6L/minとし、ガスの圧力を100kPaから200kPaに変化させ、その後、100kPaに戻すという手順で行われている。
図9(a)は、横軸を時間、縦軸をガスの圧力および測定されたO
2濃度の誤差としたグラフである。
【0053】
図8(a)に示すように、ガスの圧力が100kPaから200kPaに上昇した際、補正前のO
2濃度は、圧力変化の影響により大きく上昇しているのに対し、補正後のO
2濃度は大きな影響を受けていないことが分かる。また、ガスの圧力が200kPaから100kPaに減少した際、補正前のO
2濃度は、圧力変化の影響により大きく低下しているのに対し、補正後のO
2濃度は大きな影響を受けていないことが分かる。
【0054】
図8(b)は、横軸が圧力変化速度、縦軸を測定されたO
2濃度の誤差としたグラフである。
図8(b)に示すように、ガスの圧力変化速度(kPa/s)が大きくなるに伴い、測定されたO
2濃度の誤差は大きくなる。誤差は、圧力変化速度を変数とする一次関数とほぼ等しい変化を示している。そのため、本実施形態では、S10において求めたO
2濃度の補正に用いられる補正量を、圧力変化速度に補正係数Cfを乗算する方法で求める例に適用して説明している。この補正係数Cfは、上述の一次関数の傾きにも相当するものである。なお、上述の一次関数の傾き、言い換えると補正係数Cfは、酸素センサ10の種類によって異なるものであり、さらには、同じ種類の酸素センサ10であっても個体によっても異なるものである。
【0055】
上記の構成のガスセンサ装置1によれば、圧力変化速度が閾値Thaを超えたときに、圧力変化速度に基づいて算出した補正量を用いて酸素センサ10の出力値を補正する。言い換えると、圧力が動的に変化する場合には、動的な変化の度合いに応じた補正量を用いて酸素センサ10の出力値を補正するため、圧力が動的に変化しても、求められるO
2濃度の精度低下を抑制することができる。
【0056】
その一方で、圧力変化速度が閾値Tha以下の場合には、圧力変化速度に基づいて算出した補正量を用いた酸素センサ10の出力値の補正は行われない。例えば、比較的早い周期で変動する圧力変化のような動的な圧力変化では、酸素センサ10の出力値の補正が行われ、比較的遅い周期で変動する圧力変化のような静的な圧力変化では、酸素センサ10の出力値の補正は行われない。そのため、圧力が動的に変化する場合にも測定精度の低下を抑制することができる。
【0057】
なお、上述の実施形態では、補正を行う前の酸素濃度の算出に際して、フィックの法則を用いて酸素濃度を算出する例に適用して説明したが、フィックの法則を用いないで酸素濃度を算出する例に適用してもよく、算出方法を特に限定するものではない。
【0058】
また、上述の実施形態では、酸素センサ10から出力される出力値である電流Ipに対して処理を施すことなく
、圧力センサ20から出力された圧力生値のままでO
2濃度の算出に用いる例に適用して説明したが、平均化処理を行うことにより
、高周波成分を取り除いた後の圧力値を用いてO
2濃度を算出してもよい。
【0059】
例えば、
図9に示すように、ECU30に高周波成分を取り除く平均処理化手段38としての機能を持たせてもよいし、酸素センサ10に平均処理化手段38としての機能を発揮する回路を組み込
んでもよい。
【0060】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について
図10および
図11を参照して説明する。本実施形態のガスセンサ装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、酸素濃度の算出方法が異なっている。よって、本実施形態においては、
図10および
図11を用いて酸素濃度の算出方法についてのみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0061】
本実施形態のガスセンサ装置1における酸素濃度の算出方法について
図10の模式図、および
図11のフローチャートを参照しながら説明する。なお、S10の酸素濃度を算出する処理から、圧力変化速度と閾値Thaとの対比を行うS40までの処理は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0062】
S40の判定において、圧力変化速度が閾値Thaを超えると判定された場合(YESの場合)には、ECU30に持たせた変化量算出手段36は、圧力値の変化量を算出する処理を行う(S41:変化量算出ステップ)。圧力値の変化量を算出する方法としては、次の方法を例示することができる。まず、前回のO
2濃度を算出する際に取得した前回の圧力値P0を出力補正手段34のRAM等から取得し、S20で取得した今回の圧力値Pとの差を取ることにより変化量が求められる。なお、圧力変化速度を求める算出方法は、上述の方法に限られるものではなく、その他の種々の方法を用いることができる。
【0063】
圧力値の変化量が求められると、ECU30に持たせた圧力変化量判定手段37は、求めた圧力値の変化量と閾値Thb(所定の変化量)との対比を行い、求めた圧力値の変化量が閾値Thbを超えるか否かを判定する処理を行う(S42:変化量判定ステップ)。
【0064】
圧力値の変化量が閾値Thbを超えると判定された場合(YESの場合)には、出力補正手段34は、補正量を求める演算処理を行う(S50)。その一方で、圧力値の変化量が閾値Thb以下と判定された場合(NOの場合)には、出力補正手段34は、S10で求めたO
2濃度を、真O
2濃度とする処理を行う(S70)。以降の処理内容は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0065】
上記の構成のガスセンサ装置1によれば、圧力値の変化量が閾値Thbを超えたときに、補正量を用いて酸素センサ10の出力値を補正することにより、求められるO
2濃度の精度低下を抑制することができる。例えば、圧力値の変化量が閾値Thb以下のような静的な圧力変化では、酸素センサ10の出力値の補正は行われず、圧力値の変化量が閾値Thbを超えるような動的な圧力変化では、酸素センサ10の出力値の補正が行われる。そのため、圧力が動的に変化する場合にも測定精度の低下を抑制することができる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、圧力変化速度の算出(S30)および圧力変化速度と閾値Thaとの対比(S40)の処理を先に行い、その後に、圧力値の変化量の算出(S41)および圧力値の変化量と閾値Thbとの対比(S42)の処理を行う例に適用して説明したが、この順序に限定するものではなく、圧力値の変化量の算出(S41)および圧力値の変化量と閾値Thbとの対比(S42)の処理を先に行ってもよい。
【0067】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明を上記の実施形態に適用したものに限られることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。