特許第6453603号(P6453603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453603
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】給湯システム、及び、その運転制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   F24H4/02 P
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-205837(P2014-205837)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-75425(P2016-75425A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】505229472
【氏名又は名称】株式会社日本サーモエナー
(74)【代理人】
【識別番号】100114476
【弁理士】
【氏名又は名称】政木 良文
(72)【発明者】
【氏名】位田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】宮村 洋
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−065852(JP,A)
【文献】 特許第3737357(JP,B2)
【文献】 特開2005−188879(JP,A)
【文献】 特開2012−247116(JP,A)
【文献】 特開2013−137170(JP,A)
【文献】 特開2005−121283(JP,A)
【文献】 特開2005−147609(JP,A)
【文献】 特開2014−105945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/18−1/20
F24H 4/00−4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ給湯機、
熱交換器、
貯湯タンク、
前記ヒートポンプ給湯機の入口と前記熱交換器の一次側出口の間に設けられた第1管路、
前記ヒートポンプ給湯機の出口と前記熱交換器の一次側入口の間に設けられた第2管路、
前記熱交換器の二次側出口と前記貯湯タンクの上部入水口の間に設けられた第3管路、
前記熱交換器の二次側入口と前記貯湯タンクの下部出水口の間に設けられた第4管路、
前記熱交換器の一次側入口の水温として第1温度、及び、前記熱交換器の前記二次側出口の水温として第2温度を検出する温度センサの夫々、
前記第3管路又は前記第4管路上に介装された循環ポンプ、及び、
前記第1温度及び前記第2温度の検出値に基づき、前記貯湯タンクの前記下部出水口から、前記第4管路、前記熱交換器の二次側流路、及び前記第3管路を介して前記貯湯タンクの前記上部入水口に至る循環路の循環流量を調整する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ヒートポンプ給湯機のデフロスト運転が完了した後の所定期間において
前記第1温度の検出値が前記第2温度の検出値に対して前記第1設定温度差よりも小さな第2設定温度差以上高温のとき、前記第2温度が前記第1温度の変化に追随せず一定の第1調整温度を維持するように前記循環流量を制御する第1制御を実行し、
前記第1温度の検出値と前記第2温度の検出値の差が前記第1設定温度差よりも小さな第2設定温度差未満のとき、前記第2温度が前記第1温度よりも前記第2設定温度差だけ低温の第2調整温度以上を維持するように前記循環流量を制御する第3制御を実行することを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
ヒートポンプ給湯機、
熱交換器、
貯湯タンク、
前記ヒートポンプ給湯機の入口と前記熱交換器の一次側出口の間に設けられた第1管路、
前記ヒートポンプ給湯機の出口と前記熱交換器の一次側入口の間に設けられた第2管路、
前記熱交換器の二次側出口と前記貯湯タンクの上部入水口の間に設けられた第3管路、
前記熱交換器の二次側入口と前記貯湯タンクの下部出水口の間に設けられた第4管路、
前記熱交換器の一次側入口の水温として第1温度、及び、前記熱交換器の前記二次側出口の水温として第2温度を検出する温度センサの夫々、
前記第3管路又は前記第4管路上に介装された循環ポンプ
前記第1温度及び前記第2温度の検出値に基づき、前記貯湯タンクの前記下部出水口から、前記第4管路、前記熱交換器の二次側流路、及び前記第3管路を介して前記貯湯タンクの前記上部入水口に至る循環路の循環流量を調整する制御部、及び、
前記熱交換器の前記一次側出口の水温として第3温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、
前記ヒートポンプ給湯機のデフロスト運転が完了した後の所定期間において
、前記第2温度が前記第1温度の変化に追随せず一定の第1調整温度を維持するように前記循環流量を制御する第1制御を実行し、更に、
前記第3温度の検出値に基づき、前記第3温度の上昇速度が所定速度を超えないように前記循環流量を制御する第4制御を前記第1制御よりも優先させることを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
前記熱交換器の前記一次側出口の水温として第3温度を検出する温度センサを更に備え、
前記所定期間において、前記制御部は、
前記第3温度の検出値に基づき、前記第3温度の上昇速度が所定速度を超えないように前記循環流量を制御する第4制御を前記第1及び第3制御よりも優先させることを特徴とする請求項1に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記所定期間の経過後、前記制御部は、
前記第1温度と前記第2温度の差が一定の第1設定温度差を維持するように前記循環流量を制御する第2制御を実行することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の給湯システム。
【請求項5】
1つの前記ヒートポンプ給湯機と1つの前記熱交換器からなる組を複数備え、
前記組の夫々の前記熱交換器の前記二次側出口が、共通の前記貯湯タンクの前記上部入水口に接続されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の給湯システム。
【請求項6】
ヒートポンプ給湯機、
熱交換器、
貯湯タンク、
前記ヒートポンプ給湯機の入口と前記熱交換器の一次側出口の間に設けられた第1管路、
前記ヒートポンプ給湯機の出口と前記熱交換器の一次側入口の間に設けられた第2管路、
前記熱交換器の二次側出口と前記貯湯タンクの上部入水口の間に設けられた第3管路、
前記熱交換器の二次側入口と前記貯湯タンクの下部出水口の間に設けられた第4管路、
前記熱交換器の一次側入口の水温として第1温度、及び、前記熱交換器の前記二次側出口の水温として第2温度を検出する温度センサの夫々、及び、
前記第3管路又は前記第4管路上に介装された循環ポンプ、を備えてなる給湯システムの運転制御方法であって、
前記ヒートポンプ給湯機のデフロスト運転が完了した後の所定期間において、
前記第2温度が前記第1温度の変化に追随せず一定の第1調整温度を維持するように、前記貯湯タンクの前記下部出水口から、前記第4管路、前記熱交換器の二次側流路、及び前記第3管路を介して前記貯湯タンクの前記上部入水口に至る循環路の循環流量を調整する第1制御を実行し、更に、
前記熱交換器の前記一次側出口の水温として第3温度を検出する温度センサを用い、前記第3温度の上昇速度が所定速度を超えないように前記循環流量を調整する制御を前記第1制御より優先させることを特徴とする給湯システムの運転制御方法。
【請求項7】
前記所定期間の経過後は、
前記第1温度と前記第2温度の差が一定の所定の第1設定温度差を維持するように、前記循環流量を調整する第2制御を実行することを特徴とする請求項6に記載の給湯システムの運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水を貯湯して給湯負荷に供給する貯湯タンクにヒートポンプ給湯機を接続し、その間に熱交換器を配置した給湯システム、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ給湯機(以降において、適宜「HP」と称する)は夜間に貯湯タンクに湯を貯めておき、翌朝使用するのに利用されることが多い。また、ヒートポンプ給湯機を直接貯湯タンクと接続するのではなく、ヒートポンプ給湯機と貯湯タンクの間に熱交換器を介したシステムがある。蓄熱温度を高くした方が貯湯タンクの容量を小さくできるため、熱交換器を使用したシステムであっても、できるだけ高い湯温を維持できる設備と制御が求められる。
【0003】
例えば、ヒートポンプ給湯機と熱交換器を設置したシステムとして、下記の特許文献1に示すものが挙げられる。
【0004】
小規模施設向けの給湯システムの概略構成を模式的に図5に示す。ヒートポンプ給湯機11、熱交換器12、及び貯湯タンク15を1:1:1に設置し、HP出口温度(熱交換器の一次側流路13の入口温度)T3と熱交換器の二次側流路14の出口温度T4の差(T3−T4)が一定温度を維持するように二次側の循環流量を制御する。これにより、HP入口温度(熱交換器の一次側流路13の出口温度)を常に低く保つことができ、高いCOP(Coefficient of Performance:成績係数)を維持できる。
【0005】
この給湯システムにおいて、ヒートポンプ給湯機11は、一般的に冬期(着霜期)の場合60分に1回程度デフロスト運転が行われる。デフロスト運転中は加熱能力が0になり、デフロスト運転完了後定常運転になるまでの約5〜20分の間は、加熱能力及び出口温度T3ともに低下する。もっとも、デフロスト運転中にHP内蔵の循環ポンプ18が停止せずに低速運転するものがあるが、二次側の循環ポンプ17を停止すれば貯湯タンク内の蓄熱温度(T1、T2)は低下しない。しかし、デフロスト運転完了後約5〜20分の間はHP出口温度T3の低下に追随して二次側出口温度T4も低下し、貯湯タンクの蓄熱温度の低下を引き起こす。このため、貯湯タンクの容量は当該蓄熱温度の低下を考慮の上で決定される。
【0006】
これに対し、中・大規模施設向けの給湯システムの概略構成を模式的に図6に示す。図6は、図5のヒートポンプ給湯機11(11a、11b)と熱交換器12(12a、12b)の組を複数組(ここでは、2組)、夫々、共通の貯湯タンク15に接続したもので、夫々がHP出口温度T3と二次側出口温度T4の差(T3−T4)が一定温度を維持するように制御される。デフロスト運転はHPの運転状況に応じて個別に行われ、対象となる熱交換器の二次側循環ポンプを停止すれば、タンク蓄熱温度(T1、T2)は低下しない。しかし、図5と同様、デフロスト運転完了後の所定期間は二次側出口温度T4が低下し、貯湯タンクの蓄熱温度の低下を引き起こす。ここで、デフロスト運転の回数はヒートポンプ給湯機の設置台数に関係なく、各ヒートポンプ給湯機に対して同じであるので、蓄熱温度低下の影響はヒートポンプ給湯機の設置台数に比例して増大する。このため、ヒートポンプ給湯機の設置台数増加に伴い、貯湯タンクに低温の湯量が増えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-65852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、デフロスト運転完了後の所定期間はHP出口温度T3が低下しているため、熱交換器の二次側出口温度T4が低下し、貯湯タンクに低温の湯量が増えることになる。HP出口温度T3と二次側出口温度T4の差が一定温度を維持するように二次側の循環流量を制御する方法では、HP出口温度T3の低下に伴って二次側出口温度T4の低下は避けらない。
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑み、ヒートポンプ給湯機と熱交換器を備えた給湯システムにおいて、冬期のデフロスト運転が必要な場合においても、二次側出口温度T4の低下を最小限に制御することが可能な給湯システム及びその運転制御方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る給湯システムは、
ヒートポンプ給湯機、
熱交換器、
貯湯タンク、
前記ヒートポンプ給湯機の入口と前記熱交換器の一次側出口の間に設けられた第1管路、
前記ヒートポンプ給湯機の出口と前記熱交換器の一次側入口の間に設けられた第2管路、
前記熱交換器の二次側出口と前記貯湯タンクの上部入水口の間に設けられた第3管路、
前記熱交換器の二次側入口と前記貯湯タンクの下部出水口の間に設けられた第4管路、
前記熱交換器の一次側入口の水温として第1温度、及び、前記熱交換器の前記二次側出口の水温として第2温度を検出する温度センサの夫々、
前記第3管路又は前記第4管路上に介装された循環ポンプ、及び、
前記第1温度及び前記第2温度の検出値に基づき、前記貯湯タンクの前記下部出水口から、前記第4管路、前記熱交換器の二次側流路、及び前記第3管路を介して前記貯湯タンクの前記上部入水口に至る循環路の循環流量を調整する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ヒートポンプ給湯機のデフロスト運転が完了した後の所定期間、前記第2温度が前記第1温度の変化に追随せず一定の第1調整温度を維持するように前記循環流量を制御する第1制御を実行することを特徴とする。
【0011】
上記特徴の本発明に係る給湯システムは、更に、
前記所定期間の経過後、前記制御部は、
前記第1温度と前記第2温度の差が一定の第1設定温度差を維持するように前記循環流量を制御する第2制御を実行することが好ましい。
【0012】
上記特徴の本発明に係る給湯システムは、更に、
前記所定期間において、前記制御部は、
前記第1温度の検出値が前記第2温度の検出値に対して前記第1設定温度差よりも小さな第2設定温度差以上高温のとき、前記第1制御を実行し、
前記第1温度の検出値と前記第2温度の検出値の差が前記第1設定温度差よりも小さな第2設定温度差未満のとき、前記第2温度が前記第1温度よりも前記第2設定温度差だけ低温の第2調整温度以上を維持するように前記循環流量を制御する第3制御を実行することが好ましい。
【0013】
上記特徴の本発明に係る給湯システムは、更に、
前記熱交換器の前記一次側出口の水温として第3温度を検出する温度センサを更に備え、
前記所定期間において、前記制御部は、
前記第3温度の検出値に基づき、前記第3温度の上昇速度が所定速度を超えないように前記循環流量を制御する第4制御を前記第1及び第3制御よりも優先させることが好ましい。
【0014】
上記特徴の本発明に係る給湯システムは、更に、
1つの前記ヒートポンプ給湯機と1つの前記熱交換器からなる組を複数備え、
前記組の夫々の前記熱交換器の前記二次側出口が、共通の前記貯湯タンクの前記上部入水口に接続される構成とすることが好ましい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る給湯システムの運転制御方法は、
ヒートポンプ給湯機、
熱交換器、
貯湯タンク、
前記ヒートポンプ給湯機の入口と前記熱交換器の一次側出口の間に設けられた第1管路、
前記ヒートポンプ給湯機の出口と前記熱交換器の一次側入口の間に設けられた第2管路、
前記熱交換器の二次側出口と前記貯湯タンクの上部入水口の間に設けられた第3管路、
前記熱交換器の二次側入口と前記貯湯タンクの下部出水口の間に設けられた第4管路、
前記熱交換器の一次側入口の水温として第1温度、及び、前記熱交換器の前記二次側出口の水温として第2温度を検出する温度センサの夫々、及び、
前記第3管路又は前記第4管路上に介装された循環ポンプ、を備えてなる給湯システムの運転制御方法であって、
前記ヒートポンプ給湯機のデフロスト運転が完了した後の所定期間において、
前記第2温度が前記第1温度の変化に追随せず一定の第1調整温度を維持するように、前記貯湯タンクの前記下部出水口から、前記第4管路、前記熱交換器の二次側流路、及び前記第3管路を介して前記貯湯タンクの前記上部入水口に至る循環路の循環流量を調整する第1制御を実行することを特徴とする。
【0016】
上記特徴の本発明に係る給湯システムの運転制御方法は、更に、
前記所定期間の経過後は、
前記第1温度と前記第2温度の差が一定の所定の第1設定温度差を維持するように、前記循環流量を調整する第2制御を実行することが好ましい。
【0017】
上記特徴の本発明に係る給湯システムの運転制御方法は、更に、
前記熱交換器の前記一次側出口の水温として第3温度を検出する温度センサを用い、
前記所定期間において、前記第3温度の上昇速度が所定速度を超えないように前記循環流量を調整する制御を前記第1制御より優先させることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記特徴の給湯システム又はその運転制御方法によれば、ヒートポンプ給湯機がデフロスト運転完了後から定常運転に移行する所定期間の間は、熱交換器の二次側出口の水温(第2温度:T4)が、熱交換器の一次側入口の水温(第1温度:T3)の変化に追随せず一定の温度を維持するように、二次側流路の循環流量を制御する。これによって、冬期のデフロスト運転が必要な場合においても、デフロスト運転後の一次側入口温度T3の低下に伴う二次側出口温度T4の低下を最小限に制御し、貯湯タンクの蓄熱温度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る給湯システムの一実施形態における概略構成を模式的に示すシステム構成図
図2】本発明に係る給湯システムの一実施形態における運転制御方法を示すフローチャート
図3】本発明に係る給湯システムの一実施形態における運転制御方法を示すフローチャート
図4】本発明に係る給湯システムの一実施形態における概略構成を模式的に示すシステム構成図
図5】従来の給湯システムの概略構成の一例を簡略的に示すシステム構成図
図6】従来の給湯システムの概略構成の一例を簡略的に示すシステム構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る給湯システム、及び、その運転制御方法(以下、適宜「本発明方法」と称す)の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。本実施形態では、図5に示す従来構成の給湯システムと同じ構成要素及び同じ部位には、本発明の理解の容易のために同じ符号を付して説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る給湯システム1の一実施形態における概略構成を模式的に示すシステム構成図である。図中において、湯水の流れる配管を簡単のため実線で示し、給湯システムの制御のための制御信号線を点線で示している。図1に示すように、給湯システム1は、ヒートポンプ給湯機11、熱交換器12、貯湯タンク15、及び、制御部20を備える。
【0022】
ヒートポンプ給湯機11は、ヒートポンプ回路の冷媒として例えばCOを採用したCOヒートポンプで構成され、熱交換器12の一次側出口から管路(第1管路)31を介してヒートポンプ給湯機11の入水口に供給される低温水をヒートポンプ回路の凝縮器からの放熱と熱交換して加熱し、ヒートポンプ給湯機11の出水口において温水を供給する。この温水は、管路(第2管路)32を通って熱交換器12の一次側入口に提供される。
【0023】
熱交換器12は、一次側流路13と二次側流路14を備え、前述の通り、ヒートポンプ給湯機11で加熱された温水が、管路32を通って一次側流路13の入口(一次側入口)に供給される。一方、二次側流路14の出口(二次側出口)は、電動弁16を介し、管路(第3管路)33を通って貯湯タンクの上部入水口21と接続され、貯湯タンクの下部出水口24が、管路(第4管路)34を通り、管路34上に介装された循環ポンプ17を介して二次側流路14の入口(二次側入口)と接続される。これにより、二次側流路14に供給される冷水は、一次側流路13に供給される温水との熱交換によって加熱され、熱交換により加熱された温水が貯湯タンク15の上部入水口21に供給される。
【0024】
貯湯タンク15は、熱交換器12の二次側出口より供給された温水を貯え、給湯負荷が生じた場合に、その上部に設けられた出水口22から温水を提供する。貯湯タンク15の壁部には、貯湯タンク15内に水が流入する入水口、及び、貯湯タンク15内から水が流出する出水口が、夫々設けられている。具体的には、入水口21と出水口22が上部に、入水口23と出水口24が下部に、夫々設けられている。ヒートポンプ給湯機11が稼働中であるとき、下部出水口24からの冷水は、循環ポンプ17によって熱交換器12の二次側入口に供給され、一次側流路13との熱交換により加熱されて上部入水口21に供給される。
【0025】
これにより、給湯システム1内に、ヒートポンプ給湯機11、管路32、熱交換器12の一次側流路13、及び、管路31からなる一次側循環路と、貯湯タンク15、管路34、熱交換器12の二次側流路14、及び、管路33からなる二次側循環路が形成され、これら2つの循環路中の水は混合されることがない構成である。
【0026】
さらに、貯湯タンク15には、貯湯タンク15内の上下方向の所定の位置における水温を検知する温度センサ35、36が設けられている。
【0027】
水は、温度が高くなるにつれ上方に移動する性質、所謂対流性を有する。貯湯タンク15は、下部に設けられた入水口23から低温水が供給され、上部に設けられた入水口21からは高温水が供給されるため、貯湯タンク15に貯湯される温水は、上方ほど高温となる水温分布を示すこととなる。
【0028】
また、管路32上の熱交換器12の一次側入口側に、一次側流路13に流入する水の水温を検知する温度センサ37、管路33上の熱交換器12の二次側出口側に、二次側流路14から流出する水の水温を検知する温度センサ38、管路31上の熱交換器12の一次側出口側に、一次側流路13から流出する水の水温を検知する温度センサ39が、夫々、設けられている。
【0029】
制御部20は、温度センサ35〜39の検出温度に基づいて、給湯システム1の運転を制御する。特に、制御部20は、温度センサ37〜39の検出温度に基づいて、電動弁16又は循環ポンプ17を制御し、デフロスト運転時及びデフロスト運転後の所定期間において、貯湯タンク11の上部入水口21に低温水が供給されるのを抑制する。なお、このときの電動弁16又は循環ポンプ17の制御方法については、後述する。
【0030】
また、制御部20は、ヒートポンプ給湯機11の稼働及び停止を制御する。一方で、本実施形態では、ヒートポンプ給湯機11は、一旦ヒートポンプ給湯機が稼働すると、制御部20からの制御から独立して、基本的に設定された出水温(ここでは、70℃)となるように自動的に出水温度制御がされるように構成されている。ここで、ヒートポンプ給湯機11の出水温度制御は、内蔵の循環ポンプ18による流量制御及び圧縮機の出力調整により行われる。
【0031】
なお、上記管路31〜34上には、夫々、開閉弁(2方弁)、逆止弁、減圧弁、定流量弁、安全弁、自動空気抜き弁等、適宜必要なものが介装されるものとし、図示を省略する。
【0032】
以下に、給湯システム1の運転制御について、詳細に説明する。
【0033】
先ず、通常運転時の動作を説明する。本実施形態において、給湯システム1の運転制御は、温度センサ35〜39の検出温度に基づいて行われる。ここで、温度センサ35〜39の検出温度を夫々T1〜T5とする。温度センサ35〜39の検出温度に基づきほぼリアルタイムで運転制御が実行される。
【0034】
〈通常運転時の動作〉
給湯負荷が発生すると、下部入水口23を介して冷水が貯湯タンク15に補給される。この結果、貯湯タンク内の湯の温度は低下し、温度センサ35、36の検出温度が低下する。このうち、貯湯タンク15の上側に設けられた温度センサ35の検出温度T1が所定温度(例えば、35℃)未満に低下すると、ヒートポンプ給湯機11を稼働させ、循環ポンプ17を稼働させて、熱交換器12を介して熱交換された加熱されたお湯(ここでは、60℃)を上部入水口21から補給する。これにより、貯湯タンク内の湯温が上昇し、貯湯タンク15の下側に設けられた温度センサ36の検出温度T2が所定温度(例えば、50℃)以上になるまで、ヒートポンプ給湯機11及び循環ポンプを稼働させる。これにより、貯湯タンクは上部から温度センサ36の位置まで、ほぼ設定温度(ここでは、60℃)の湯で満たされる。このときの貯湯タンクに補給される湯の温度である、熱交換器12の二次側出口の水温を、第1調整温度と呼ぶことにする。
【0035】
このとき、制御部20は、温度センサ37が検出する熱交換器12の一次側入口の検出温度T3と、温度センサ38が検出する熱交換器12の二次側出口の検出温度T4との差T3−T4が一定の所定の第1設定温度差ΔT1(例えば、10℃程度)を維持するように、電動弁16の開度を制御し、熱交換器の二次側流路に流れ込む流量を制御する。
【0036】
ここで、一次側流路13に流れる温水の単位時間当たりの流量をf1、二次側流路14に流れる温水の単位時間当たりの流量をf2とする。また、図1に示されていないが、熱交換器12の二次側入口側の管路34上における水温をT6とする。熱交換器12の一次側流路13にて放出される単位時間当たりの熱量と、二次側流路14にて吸収される単位時間当たりの熱量Qが等しいことから、下記の数1が近似的に成立する。ここで、Cは流体の比熱とする。
【0037】
[数1]
Q=C(T3−T5)f1=C(T4−T6)f2
【0038】
数1より、T3、T5、及びf1が変化しないとすれば、f2を減らすことで、T4が上昇し、f2を増やすことで、T4が低下する。したがって、例えば、検出温度T4がT3−ΔT1よりも低いときは電動弁16を絞り、T3−T4がΔT1に一致するまで段階的に流量f2を減らす制御を行い、検出温度T4がT3−ΔT1よりも高いときは電動弁16を開き、T3−T4がΔT1に一致するまで段階的にf2を増やす制御を行うことで、T3−T4を一定の温度差ΔT1に維持制御できる。
【0039】
一方、熱交換器において交換される熱量Qは、一般に、総括伝熱係数をK、伝熱面積をAとして、下記の数2で表すことができる。ここで、ΔTLMTDは対数平均温度差と呼ばれる。
【0040】
[数2]
Q=K・A・ΔTLMTD
ΔTLMTD=(ΔT−ΔT)/ln(ΔT/ΔT
ΔT=T3−T4、 ΔT=T5−T6
【0041】
総括伝熱係数Kは、熱交換器の形状、流体物性及び流量により決定される比例係数であるが、本発明の場合は、流量が大きく変化しない限り一定であると考えてよい。T3、T6は既知として、上記数1、数2からT4、T5を算出できる。
【0042】
〈デフロスト運転時の動作〉
冬期(着霜期)では、約60分に一度、5分間程度デフロスト運転が行われる。なお、デフロスト運転の頻度、時間は外気温や湿度により異なる。この期間中ヒートポンプ給湯機11の加熱能力は0になる。このとき、ヒートポンプ給湯機11内蔵の循環ポンプ18は停止又は低流量で運転している。制御部20は、循環ポンプ17を停止させる。これにより熱交換器の二次側出口の流量は0になり、貯湯タンクの蓄熱温度は低下しない。
【0043】
〈デフロスト運転後の動作〉
デフロスト運転完了後は、熱交換器12の一次側入口の温度T3が低下(例えば、70℃→55℃まで)している。このため、制御部20は、定常運転になるまでの所定期間(例えば、20分)は、二次側出口との温度差T3−T4に拘らず、二次側出口温度T4の維持を優先させる制御を行う。
【0044】
数1より、検出温度T4が目標温度TA(ここでは、60℃)より低いときは電動弁16を絞って、段階的に流量f2を減らす制御を行い、検出温度T4が当該目標温度TAよりも高いときは電動弁16を開いて、高いときは段階的にf2を増やす制御を行うことで、T4を所定の目標温度に向かって制御できる。或いは、管路31又は32上に別途設けられた流量計又はヒートポンプ給湯機11から流量f1を取得し、管路36上にT6を検出する温度センサを別に設けることで、数1から直接、T4を目標温度に設定するために最適な流量f2を設定できる。
なお、検出温度T3が目標温度TAよりも低下している場合は、後述するように、目標温度TAをT3より所定の温度差ΔT2だけ低い温度に設定し、流量f2の制御を行うことができる。
【0045】
しかしながら、一次側入口温度T3が低下しているにも拘らず二次側出口温度T4を一定に維持することで、温度差T3−T4(=ΔT)は減少することになる。交換熱量Qは変化しないとした場合、対数平均温度差ΔTLMTDが同じとなるように、温度差T5−T6(=ΔT)が増加する。したがって、T6は変化しないとして、T5が上昇する。
【0046】
この結果、温度差T3−T4に追随せずT4を一定に制御する本発明の運転制御方法では、温度差T3−T4を一定に制御する方法よりも一次側出口温度T5が上昇し、T3−T5の温度差が小さくなる。この結果、ヒートポンプ給湯機11の成績係数(COP)は、通常運転時と比べて低下する。
【0047】
また、上述の通り、ヒートポンプ給湯機11はHP出口温度(熱交換器12の一次側入口温度T3に略等しい)が一定になるように制御しようとし、HP入口温度(熱交換器12の一次側出口温度T5に略等しい)の変化に伴い、自動で流量f1の調整及び圧縮機の出力調整が行われる。しかし、T5の上昇速度が速いと、圧縮機の出力はそれに合わせて急激に変化することになり、圧縮機の負担が大きく寿命に影響する。従って、一次側出口温度T5の上昇速度は、ヒートポンプ給湯機の能力に応じて一定速度以下(例えば、1℃/分以内)に抑えることが好ましい。
【0048】
そこで、ヒートポンプ給湯機11を保護するため、T4の維持よりもT5の上昇速度を抑えることを優先させることとし、T5の上昇速度が基準値を超えるとf2を増加させるようにして、上昇速度を一定以下に抑えるように制御するのが好ましい。
【0049】
さらに、T4を一定温度に維持する場合における温度差T3−T4は、通常運転時の温度差ΔT1より小さな第2設定温度差ΔT2以上が維持されるように、一定温度に維持すべき温度TAを設定するとよい。好ましくは、ΔT2はΔT1の50%程度以上であり、例えばΔT1=10℃であれば、T3−T4が5℃以上の温度差を維持するようにTAを設定するとよい。したがって、T3が通常運転時の二次側出口温度(第1調整温度)よりもΔT2以上高い場合、TAは当該第1調整温度に設定されるが、T3と第1調整温度との温度差がΔT2未満になるまでT3が低下した場合、当該第1調整温度より低温のT3−ΔT2(第2調整温度)にTAは再設定される。換言すると、第1調整温度と第2調整温度のうち低い方にT4を一定温度に維持すべき目標温度TAを設定するとよい。
【0050】
この結果、デフロスト運転後にヒートポンプ給湯機11の出口温度T3が通常運転時よりΔT1−ΔT2以上低下した場合や、T5の上昇速度が速い場合には、T4が第1調整温度より低下し、貯湯タンクに通常運転時より低温の湯が流入することがある。しかしながら、T3−T4に基づく制御ではなく、二次側出口温度T4に基づく制御を行うことにより、湯温の低下は最低限に抑制される。これにより、ヒートポンプ給湯機11を安定運転させながら、二次側出口温度T4の低下を抑えることが可能になる。
【0051】
図2及び図3に、給湯システム1の運転制御方法を示すフローチャートを示す。
【0052】
図2のステップS101において、制御部20は、温度センサ35の検出温度を参照し、T1が所定温度(ここでば、35℃)未満に低下しているか否かを判定する。T1が所定温度未満の場合(ステップS101でYES分岐)、ステップS102に進む。
【0053】
ステップS102において、ヒートポンプ給湯機11を稼働させ、ステップS103において、二次側の循環ポンプ17の運転を開始する。
【0054】
ステップS104では、ヒートポンプ給湯機11が、デフロスト運転完了から所定期間(ここでは、20分)経過しているか否かを判定する。デフロスト運転完了後の経過時間が所定期間以内の場合(ステップS104でYES分枝)、図3のステップS109に進む。一方、デフロスト運転完了から既に所定期間が経過している場合(ステップS104でNO分岐)は、ステップS105に進む。
【0055】
ステップS105では、通常運転時の制御動作として、制御部20が、温度センサ37の検出温度T3と温度センサ38の検出温度T4との差T3−T4が一定の所定の温度差ΔT1(例えば、10℃)を維持するように、二次側流路14に流れ込む流量f2を調整する制御を行う。
【0056】
ステップS105の後、ステップS106において、制御部20は、温度センサ36の検出温度を参照し、T2が所定温度(ここでば、50℃)を超えたか否かを判定する。T2が所定温度を超えた場合(ステップS106でYES分岐)、ステップS107に進む。一方、T2が所定温度以下の場合(ステップS106でNO分岐)、ステップS104に戻る。
【0057】
ステップS107において、ヒートポンプ給湯機11の運転を停止し、ステップS108において、二次側の循環ポンプ17を停止し、ステップS101に戻る。
【0058】
一方、デフロスト運転完了後の経過時間が所定期間以内の場合(ステップS104でYES分枝)には、図3のステップS109において、制御部20が、温度センサ38の検出温度T4が一定の設定温度TAを維持するように、二次側流路14に流れ込む流量を調整する制御を行う。ここでの設定温度TAは、基本的に、通常運転時(ステップS105)における二次出口温度(第1調整温度。ここでは、60℃)と同じとするが、前述の通り、T3−T4の温度差が前述の第2設定温度差ΔT2以上を維持するよう、T3と第1調整温度との温度差がΔT2未満の場合は第1調整温度よりも低い第2調整温度に設定されることがある。
【0059】
ステップS109の後、ステップS110において、制御部20は、ヒートポンプ給湯機11の入口側温度T5の変化速度を検出し、T5の上昇速度が基準値を超えていないかを判定する。T5の上昇速度が基準値を超えている場合(ステップS110でYES分枝)、ステップS111に進み、二次側流路14に流れ込む流量f2を増大させる制御を行い、その後、図2のステップS106に進む。一方、T5が上昇していない場合、或いはT5の上昇速度が基準値以下である場合(ステップS110でNO分枝)は、ステップS111を実行することなく、図2のステップS106へ進む。
【0060】
図4に本発明の給湯システムの他の構成例を示す。図4に示す給湯システム2では、ヒートポンプ給湯機11aと熱交換器12aの組、及びヒートポンプ給湯機11bと熱交換器12bの組を複数組(ここでは、2組)備え、各組の二次側流路14a、14bが、夫々、管路40、41によって共通の貯湯タンク15に接続されている。制御部20は、温度センサ37a〜39aの検出温度に基づいて管路33a上に介装された電磁弁16aの開度を制御し、二次側流路14aの流量を調整し、温度センサ37b〜39bの検出温度に基づいて管路33b上に介装された電磁弁16bの開度を制御し、二次側流路14bの流量を調整する。図2及び図3に示すフローに従って運転が制御される場合、夫々のヒートポンプ給湯機は、温度センサ31の検出温度T1が所定温度より低下することで(デフロスト運転中の場合は、当該デフロスト運転の完了を待って)運転を開始し、温度センサ32の検出温度T2がより高温の別の設定温度より上昇すると、全てのヒートポンプ給湯機の運転を停止する。しかしながら、夫々のヒートポンプ給湯機でデフロスト運転が行われる期間が一致しなくてもよいように、流量調整の制御は、T3−T4を維持する制御と、T4を一定に維持する制御の何れかが、夫々のヒートポンプ給湯機のデフロスト運転完了のタイミングに応じて、夫々の組で独立して行われることになる。
【0061】
図4のようなヒートポンプ給湯機を複数備える構成の場合、夫々のデフロスト運転のタイミングがずれ、少なくとも何れかの組において二次側出口温度T4が低下する虞のある期間が増加するが、上述した給湯システムの運転制御を行うことで、貯湯タンクに低温の湯が供給されるのを抑制し、貯湯タンクの蓄熱温度の低下を抑制することができる。
【0062】
以上、本発明の給湯システム1及び2では、ヒートポンプ給湯機11がデフロスト運転完了後から定常運転に移行する所定期間の間、熱交換器12の二次側出口温度T4が、一次側入口温度T3の変化に追随せず一定の温度を維持するように、二次側流路14の循環流量を制御することによって、デフロスト運転後の一次側入口温度T3の低下に伴う二次側出口温度T4の低下を最小限に制御し、貯湯タンクの蓄熱温度の低下を抑制できる。また、一次側入口温度T3が低下しても短時間で設定温度に戻すことができるので、蓄熱温度を高くでき、小さな貯湯タンク容量に対して蓄熱量の大きなシステムを実現可能となる。
【0063】
また、一次側出口温度(HP入口温度)T5の上昇速度を基準値以下に制御できるので、ヒートポンプ給湯機の冷媒圧力の急変や出湯温度の急変がない安定した運転が可能となる。
【0064】
〈別実施形態〉
以下に、別実施形態について説明する。
【0065】
〈1〉本発明の給湯システムの運転制御は、貯湯タンクより二次側に燃焼式温水器が設けられたハイブリッド給湯システムの運転制御にも適用可能である。当該ハイブリッド給湯システムの場合、貯湯タンクの蓄熱温度よりもヒートポンプ給湯機のCOPを優先した制御を求められることがあるが、本制御方法はヒートポンプ給湯機の入口温度T5及びその上昇速度の基準値を自由に調整可能なため、COPを優先した制御に切り替えも可能である。
【0066】
つまり、図3のステップS110において、一次側出口温度(HP入口温度)T5の上昇速度の基準値を低く設定することで、T5の上昇を抑制し、T3−T5の低下を抑制して、ヒートポンプ給湯機を効率優先で稼働させることができる。一方、入口温度T5の上昇速度の基準値を低く設定することで、T4を設定温度に維持できず、貯湯タンクの蓄熱温度が低下する可能性が高くなるが、燃焼式温水器を介して温水を再加熱することにより、低温の温水が給湯負荷に供給されることは防止される。本発明の給湯システムの運転制御を適用することで、ハイブリッド給湯システムは、ヒートポンプ給湯機のデフロスト運転が必要な冬期においてもヒートポンプ給湯機を高効率で稼働させつつ、且つ、燃焼式温水器による湯の再加熱に必要な燃料消費を最適化して、システム全体としてより省エネルギーが可能である。
【0067】
〈2〉上記実施形態では、熱交換器12(12a、12b)の二次側流路14(14a、14b)の流量制御を電動弁16(16a、16b)の開度の比例制御により行うとしたが、循環ポンプ17(17a、17b)に供給される交流電力のインバータ制御により吐出量を調整するものとしてもよい。また、電動弁16と循環ポンプ17の両方の制御により行ってもよい。
【0068】
〈3〉上記実施形態において、循環ポンプ17は熱交換器12の二次側流路14より上流の管路34上に、電動弁16は二次側流路14より下流の管路33上に介装されているが、夫々、循環ポンプ17を管路33上に、電動弁16を管路34上に介装することもできる。
【0069】
〈4〉また、熱交換器12については、図1に示す対向流型のもののほか、並行流型のものを使用してもよい。
【0070】
〈5〉また、上記実施形態において、ヒートポンプ給湯機11の稼働、停止制御については、温度センサ35の検出温度T1に基づいてヒートポンプ給湯機が稼働し、温度センサ36の検出温度T2に基づいてヒートポンプ給湯機が停止する制御を行う構成となっているが、本発明はこれに限られるものではなく、稼働、停止夫々において、他の制御条件を設定してもよい。
【0071】
一方、上記実施形態の運転制御方法を用いる場合、温度センサ35、36については、夫々、貯湯タンク15内の湯温T1が所定温度(例えば、35℃)未満か否か、或いはT2が所定温度(例えば、50℃)を超えているか否かを判断するために用いられるものであるので、実際の温度を検出する必要はなく、例えばサーモスタットのような、所定温度を境にオンオフが切り替わるスイッチで代用することができる。
【0072】
〈6〉更に、上記実施形態では、貯湯タンク11として一槽式のものを想定したが、複数の貯湯タンクを直列に接続した多槽式であっても良い。この場合、貯湯タンクの水温分布は、各タンク内で上下方向に形成されるだけでなく、各タンクの配列順にも形成されるため、温度センサ35は、配列順で中間に存在するタンクに設け、温度センサ36は、最も管路34に近いタンクに設けることができる。
【0073】
〈7〉また、上記実施形態において、給湯システムの運転制御で説明した温度設定は一例であり、本発明はこれに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る給湯システム及びその運転制御方法は、ヒートポンプ給湯機で加熱した温水を給湯負荷に供給する給湯システムであって、ヒートポンプ給湯機と温水を貯湯する貯湯タンクの間に熱交換器を配した給湯システムの運転制御に利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1、2: 本発明に係る給湯システム
11(11a、11b): ヒートポンプ給湯機
12(12a、12b): 熱交換器
13(13a、13b): 一次側流路
14(14a、14b): 二次側流路
15: 貯湯タンク
21: 上部入水口
22: 上部出水口
23: 下部入水口
24: 下部出水口
16(16a、16b): 電動弁
17(17a、17b): 循環ポンプ
18: ヒートポンプ給湯機内蔵の循環ポンプ
20: 制御部
31〜34、31a、13b、32a、32b、33a、33b、34a、34b、40、41: 管路
35〜39、37a、37b、38a、38b、39a、39b: 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6