【実施例】
【0048】
(第1実施例)
次に、本発明の第1実施例について説明する。第1実施例では、下記一般式(2)で示されるN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサキス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−2,2’−[(4,4’−ジアゼンジイル)ビスフェノキシ]ビスエチルアンモニウム ジブロマイド(以下、「[(mee)
3NC
2AzoC
2N(mee)
3]
2+Br
2」という。)について説明する。
【0049】
【化2】
ここで、一般式(2)で示されるアゾベンゼン化合物[(mee)
3NC
2AzoC
2N(mee)
3]
2+Br
2の製造方法について説明する。
【0050】
【化3】
上記合成スキームで示されるように、[(mee)
3NC
2AzoC
2N(C
7H
15)
3]
2+Br
2は、4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン、1,2−ビス(4−((2−ブロモエチル)オキシ)フェニル)ジアゼンといった中間生成物を経て合成される。
【0051】
まず、4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンの合成について説明する。
【0052】
【化4】
1M塩酸水溶液150mlに4−アミノフェノール(M.W.109.13)9.57グラム(87.7mmol)を溶解させ、1000mlビーカーに加えた。この時、ビーカーを氷浴中に浸し、溶液の温度を5℃以下に保った。そこに、亜硝酸ナトリウム(M.W.69.01)6.10グラム(88.4mmol)を水30mlに溶かした溶液(5℃以下)を、氷浴中で撹拌しながら滴下した。更に、5℃以下に冷却したメタノールを300ml加えた。また、水酸化ナトリウム(M.W.39.9)6.65グラム(166.3mmol)とフェノール(M.W.94.11)8.25グラム(87.7mmol)をメタノール60mlに溶かした溶液(5℃以下)を先の溶液に加え、氷浴下で3時間撹拌した。室温で一晩撹拌した後、4N塩酸を加え、pHを4〜5に調節した。アセトンを減圧留去した後、生じた沈殿を濾別し、エタノール:水=3:2(v/v)混合溶媒150mlで再結晶した。得られた結晶を濾別した後、減圧乾燥し、紫色結晶7.59グラム(35.4mmol)を得た。
【0053】
得られた紫色結晶の1H−NMRスペクトル測定結果からすべてのプロトンが帰属された。これにより、4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼンの合成を確認した。
【0054】
次に、「5a」で示す1,2−ビス(4−((2−ブロモエチル)フェニル)ジアゼンの合成について説明する。
【0055】
【化5】
200mlナスフラスコに4,4’−ジヒドロキシアゾベンゼン(M.W.214.22)1.00グラム(4.65mmol)、炭酸カリウム(M.W.225.65)6.40グラム(46.5mmol)、CH
3CN15ml、1,2−ジブロモエタン(M.W.244.00)8.8グラム(46.5mmol)を加え、窒素置換した後にマイクロウェーブ合成装置を用いて150℃で3h撹拌を行った。反応後、反応溶液を水洗した後減圧留去し、得られた固体を再結晶(EtOAc:ジクロロメタン=1:1)により精製し、黄色固体810ミリグラムを得た。薄層クロマトグラフィー(TLC)により単一成分であることが確認されたため、これを次の反応に用いた。
【0056】
次に、[(mee)
3NC
2AzoC
2N(mee)
3]
2+Br
2の合成について説明する。
【0057】
【化6】
30mlバイアル管に「5a」で示す化合物(Mw:428.19)810ミリグラム(1.89mmol)、トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン(Mw:323.43)3.6ml(11.34mmol)、CH
3CN10mlを加え、窒素置換した後にマイクロウェーブ合成装置を用いて150℃で3h撹拌を行った。反応後、反応溶液を減圧留去した後に水に溶解させて不溶成分をろ過により取り除き、減圧留去したものをヘキサンで洗浄した。更にこれをジクロロメタンに溶解させ1M NaBr水溶液を用いて洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥後減圧留去して再度ヘキサンで洗浄することで、褐色の油状物質1.01gを得た。NMRおよび元素分析により、「5b」で示す[(mee)
3NC
2AzoC
2N(mee)
3]
2+Br
2の合成を確認した。
【0058】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例について説明する。第2実施例では、下記一般式(3)で示されるN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサエチル−2,2’−[(4,4’−ジアゼンジイル)ビスフェノキシ]ビスエチルアンモニウム ジブロマイド(以下、「[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+Br
2」という。)について説明する。
【0059】
【化7】
ここで、一般式(3)で示されるアゾベンゼン化合物[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+Br
2の製造方法について説明する。
【0060】
【化8】
30mlバイアル管に上記第1実施例で合成した1,2−ビス(4−((2−ブロモエチル)フェニル)ジアゼン(Mw:428.19)1.00g(2.34mmol)、トリエチルアミン(Mw:101.19)2.37g(23.4mmol)、CH
3CN10mlを加え、窒素置換した後にマイクロウェーブ合成装置を用いて150℃で6h撹拌を行った。反応後、反応溶液を減圧留去した後水に溶解させて不溶成分をろ過により取り除き、濾液を濃縮しアセトンと水を用いて再結晶を行い、橙色固体1.21gを得た。NMRおよび元素分析により、「6」で示す[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+Br
2の合成を確認した。また、[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+Br
2の単結晶構造解析から、
図4に示す計算から求めた粉末X線回折像、
図5に示す結晶構造情報、
図6に示す構成元素の座標を確認した。
【0061】
次に、本第2実施例の[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+Br
2(以下、本第2実施例において「アゾベンゼン化合物」と略す)のトランス体に紫外光を照射する前後の吸光スペクトルと、本第2実施例のアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射する前後の吸光スペクトルを測定した結果を、
図7に基づいて説明する。吸光スペクトルは、光路長1cmのセルを用いて25μMメタノール溶液中25℃で測定した。
【0062】
図7の実線はアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射する前の吸光スペクトルを示し、
図7の一点鎖線はアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射してから10分経過後の吸光スペクトルを示している。本第2実施例では、照射する紫外光の波長を365nmとしている。
図7の実線に示すように、紫外光を照射する前の吸光スペクトルでは、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する351nm付近で吸光度の大きなピークが出現している。そして、
図7の一点鎖線に示すように、紫外光を照射してから10分経過後の吸光スペクトルでは、351nm付近の吸光度が減少し、アゾベンゼン化合物のシス体に由来する450nm付近の吸光度が増大している。この吸光スペクトルの変化から、本第2実施例のアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射することで、シス体に変化することが明らかである。
【0063】
また、
図7の破線はアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射してから10分経過後の吸光スペクトルを示している。本第2実施例では、照射する可視光の波長を480nmとしている。上述のように、
図7の一点鎖線に示すように、可視光を照射する前の吸光スペクトルでは、アゾベンゼン化合物のシス体に由来する450nm付近で吸光度の小さなピークが出現している。そして、
図7の破線に示すように、可視光を照射してから10分経過後の吸光スペクトルでは、450nm付近で吸光度が減少し、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する351nm付近の吸光度が増大している。この吸光スペクトルの変化から、本第2実施例のアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射することで、トランス体に変化することが明らかである。
【0064】
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例について説明する。第3実施例では、下記一般式(4)で示されるN,N,N,N’,N’,N’−ヘキサエチル−2,2’−[(4,4’−ジアゼンジイル)ビスフェノキシ]ビスエチルアンモニウム ビス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド](以下、「[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+TFSA
2」という。)について説明する。
【0065】
【化9】
ここで、一般式(4)で示されるアゾベンゼン化合物[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+TFSA
2の製造方法について説明する。
【0066】
【化10】
上記第2実施例で合成した「6」で示す[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+Br
2(M.W.630.5)189ミリグラム(0.3mmol)を水10mlに溶解し、そこへ リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(M.W.287.08)258.4ミリグラム(0.9mmol)を水10mlに溶解させたものを滴下した。これを3時間室温で撹拌し、黄色の沈殿物を得た。反応終了後減圧濾過し、水を用いて洗浄を行い、黄色固体294ミリグラムを得た。NMRスペクトル測定結果により、「7」で示す[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+TFSA
2の合成を確認した。また、[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+TFSA
2の単結晶構造解析から、
図8に示す結晶構造情報、
図9に示す構成元素の座標を確認した。
【0067】
次に、本第3実施例の[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+TFSA
2(以下、本第3実施例において「アゾベンゼン化合物」と略す)に紫外光および可視光を照射する前後の吸光スペクトルの変化を、
図10に基づいて説明する。
【0068】
図10に示すように、紫外光を照射する前の吸光スペクトルでは、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する353nm付近で吸光度の大きなピークが出現している。そして、紫外光(365nm±10nm)を照射してから10分経過後の吸光スペクトルでは、353nm付近の吸光度が減少し、アゾベンゼン化合物のシス体に由来する309nm付近および444nm付近の吸光度が増大している。この吸光スペクトルの変化から、本第3実施例のアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射することで、シス体に変化することが明らかである。
【0069】
また、可視光(450nm〜490nm)を照射してから10分経過後の吸光スペクトルでは、309nm付近および444nm付近で吸光度が減少し、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する353nm付近の吸光度が増大している。この吸光スペクトルの変化から、本第3実施例のアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射することで、トランス体に変化することが明らかである。
【0070】
次に、本第3実施例のアゾベンゼン化合物をX線回折で測定した結果を
図11に基づいて説明する。
図11(a)は本第3実施例のアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射する前のX線回折パターンを示している。
図11(a)に示すX線回折パターンでは、複数の明確なピークが観測され、アゾベンゼン化合物が結晶状態となっていることが示されている。また、
図11(b)は本第3実施例のアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射した後のX線回折パターンを示している。
図11(b)に示すX線回折パターンでは、明確なピークが観測されず、結晶状態のアゾベンゼン化合物が液体状態となったことが示されている。また、
図11(c)は本第3実施例のアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射した後のX線回折パターンを示している。
図11(c)に示すX線回折パターンでは、
図11(a)と同様、複数の明確なピークが観測され、液体状態のアゾベンゼン化合物が結晶状態となったことが示されている。
【0071】
次に、本第3実施例のアゾベンゼン化合物を偏光顕微鏡(POM)のクロスニコル条件で観察した結果を
図12〜
図14に基づいて説明する。
図12に示すアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射する前のPOM画像では、アゾベンゼン化合物が結晶状態となっていることが示されている。また、
図13に示すアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射した後のPOM画像では、中央部分に暗視野が観測され、結晶状態のアゾベンゼン化合物において紫外光が照射された部位が液体状態となったことが示されている。また、
図14に示すアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射した後のPOM画像では、
図13で暗視野として観測された部位が、可視光を照射することによって再度結晶化したことが確認できる。
【0072】
(第4実施例)
次に、本発明の第4実施例について説明する。第4実施例では、下記一般式(5)で示される4,4’−((ジアゼン−1,2−ジイルビス(4,1−フェニレン))ビス(オキシ))ビス(N,N,N−トリエチルブタン−1−アミニウム)ビス((ペンタフルオロスルホニル)アミド(以下、「[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+PFSA
2」という。)について説明する。
【0073】
【化11】
ここで、一般式(5)で示されるアゾベンゼン化合物[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+PFSA
2の製造方法について説明する。
【0074】
【化12】
リチウム ビス((ペンタフルオロエチル)スルホニル)アミド(LiPFSA,MW.387.71,キシダ化学)348.4ミリグラム(0.9mmol)を純水10mlに溶解し、そこへ上記第2実施例で合成した「6」で示す[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+Br
2(M.W.630.5)189ミリグラム(0.3mmol)を純水10mlに溶解させたものを滴下した。この懸濁液が均一になるまでアセトンを加え、3日間静置することで黄色の結晶を得た。反応終了後減圧濾過し、純水を用いて洗浄を行い、黄色固体343ミリグラムを得た。単結晶X線構造解析および元素分析により、目的物の合成を確認した。
【0075】
次に、本第4実施例の[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+PFSA
2(以下、本第4実施例において「アゾベンゼン化合物」と略す)に紫外光および可視光を照射する前後の吸光スペクトルの変化を、
図15に基づいて説明する。
【0076】
図15に示すように、結晶状態のアゾベンゼン化合物に紫外光を照射する前の吸光スペクトルでは、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する350nm付近で吸光度の大きなピークが出現している。そして、結晶状態のアゾベンゼン化合物(トランス体)に紫外光を照射すると、融解するとともに吸光スペクトルが変化した。具体的には、アゾベンゼン化合物のトランス体に由来する350nm付近の吸光度が減少し、シス体に由来する309nm付近および442nm付近の吸光度が増大した。この吸光スペクトルの変化から、本第4実施例のアゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射することで、シス体に変化することが明らかである。
【0077】
また、液体状態のアゾベンゼン化合物(シス体)に可視光を照射すると、液体状態のまま吸光スペクトルが変化した。具体的には、アゾベンゼン化合物のシス体に由来する309nm付近および442nm付近で吸光度が減少し、トランス体に由来する358nm付近の吸光度が増大した。この吸光スペクトルの変化から、本第4実施例のアゾベンゼン化合物のシス体に可視光を照射することで、トランス体に変化することが明らかである。
【0078】
なお、アゾベンゼン化合物のシス体(液体状態)に可視光を照射して得られた液体状態のトランス体を一晩静置することで、結晶化が生じることを確認した。
【0079】
次に、本第4実施例のアゾベンゼン化合物を光学顕微鏡で観察した結果および偏光顕微鏡(POM)のクロスニコル条件で観察した結果を
図16〜
図21に基づいて説明する。
図16、
図18、
図20が光学顕微鏡で観察した明視野像であり、
図17、
図19、
図21が偏光顕微鏡で観察したPOM画像である。
【0080】
まず、アゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射する前の明視野像(
図16)およびPOM画像(
図17)では、アゾベンゼン化合物が結晶状態となっていることが示されている。また、アゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光(365nm±10nm)を照射した後の明視野像(
図18)およびPOM画像(
図19)では、結晶状態のアゾベンゼン化合物が紫外光を照射されることで液体状態となったことが示されている。また、アゾベンゼン化合物のシス体(液体状態)に可視光を照射してから一晩静置した後の明視野像(
図20)およびPOM画像(
図21)では、
図18および
図19で液体状態として観測されたアゾベンゼン化合物が再度結晶化したことが確認できる。
【0081】
(第5実施例)
次に、本発明の第5実施例について説明する。第5実施例では、下記一般式(6)で示される4,4’−((ジアゼン−1,2−ジイルビス(4,1−フェニレン))ビス(オキシ))ビス(N,N,N−トリエチルブタン−1−アミニウム)1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ジスルホンアミド(以下、「[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+CPFSA
2」という。)について説明する。
【0082】
【化13】
ここで、一般式(6)で示されるアゾベンゼン化合物[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+CPFSA
2の製造方法について説明する。
【0083】
【化14】
リチウム 1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ジスルホンアミド(LiCPFSA,MW.287.08,東京化成)269.2ミリグラム(0.9mmol)を純水10mlに溶解し、そこへ上記第2実施例で合成した「6」で示す[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+Br
2(MW.630.5)189 ミリグラム(0.3mmol)を純水10mlに溶解させたものを滴下した。この懸濁液が均一になるまでメタノールを加え、4日間静置することで黄色の結晶を得た。反応終了後減圧濾過し、純水を用いて洗浄を行い、黄色固体273ミリグラムを得た。単結晶X線構造解析および元素分析により、目的物の合成を確認した。
【0084】
次に、本第5実施例の[(C
2H
5)
3NC
2AzoC
2N(C
2H
5)
3]
2+CPFSA
2(以下、本第5実施例において「アゾベンゼン化合物」と略す)を光学顕微鏡で観察した結果および偏光顕微鏡(POM)のクロスニコル条件で観察した結果を
図22〜
図27に基づいて説明する。
図22、
図24、
図26が光学顕微鏡で観察した明視野像であり、
図23、
図25、
図27が偏光顕微鏡で観察したPOM画像である。
【0085】
まず、アゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光を照射する前の明視野像(
図22)およびPOM画像(
図23)では、アゾベンゼン化合物が結晶状態となっていることが示されている。また、アゾベンゼン化合物のトランス体に紫外光(365nm±10nm)を照射した後の明視野像(
図24)およびPOM画像(
図25)では、結晶状態のアゾベンゼン化合物が紫外光を照射されることで液体状態となったことが示されている。
【0086】
本第5実施例のアゾベンゼン化合物においても、液体状態のアゾベンゼン化合物(シス体)に可視光を照射することで得られた液体状態のトランス体を一晩静置することで、結晶化が生じることを確認した。
【0087】
アゾベンゼン化合物のシス体(液体状態)のシス体に可視光を照射してから一晩静置した後の明視野像(
図26)およびPOM画像(
図27)では、
図24および
図25で液体状態として観測されたアゾベンゼン化合物が再度結晶化したことが確認できる。
【0088】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0089】
例えば、上記実施形態では、本発明のアゾベンゼン化合物をヒートポンプシステムの熱媒体として用いた例について説明したが、アゾベンゼン化合物をヒートポンプシステムの熱媒体以外の用途に用いてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、アゾベンゼン化合物を熱媒体として用いたヒートポンプシステムを室内暖房に用いた例について説明したが、これに限定されることなく、低温側と高温側とが存在する環境下において、低温側で吸熱して高温側で放熱する構成であれば、アゾベンゼン化合物を熱媒体として用いたヒートポンプシステムを他の用途にも用いることができる。
【0091】
また、上記実施形態では、アゾベンゼン化合物をマイクロカプセルに封入して使用した例について説明したが、これに限らず、異なる態様でアゾベンゼン化合物を使用してもよい。