特許第6453642号(P6453642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453642
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】船外機及び船外機用操舵ロック装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/00 20060101AFI20190107BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   B63H20/00 100
   B63H25/42 B
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-258757(P2014-258757)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-117415(P2016-117415A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109945
【氏名又は名称】トーハツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一弘
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−30798(JP,U)
【文献】 実開昭47−22693(JP,U)
【文献】 特開昭61−33395(JP,A)
【文献】 特開昭60−45497(JP,A)
【文献】 特開2006−315493(JP,A)
【文献】 米国特許第5052321(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 20/00,25/42,
F16B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に固定されるブラケットと、該ブラケットに操舵軸を介して回動自在に支持された船外機本体とを備えて、船外機本体を操舵軸の回りに回動させることにより操舵を行う船外機であって、
前記船外機本体に固定されたガイドプレートと、ガイド機構を介して前記ガイドプレートに支持されて前記操舵をロックする際及び該ロックを解除する際に操作される操作部材と、先端部を前記ブラケット側に向けた状態で前記操作部材に対して固定されて前記操作部材とともに変位させられるロック部材とを具備し、
前記ガイド機構は、前記ガイドプレートに対して一定の位置関係を有する位置に設定された第1の位置と該第1の位置の下方又は上方に設定された第2の位置との間を上下に伸びる第1の移動経路に沿った変位と、前記第2の位置と該第2の位置よりも前記船外機本体側に寄った位置に設定された第3の位置との間を前記第1の移動経路が伸びる方向とは異なる方向に沿って伸びる第2の移動経路に沿った変位とを前記操作部材に許容するように構成され、
前記ガイドプレートと操作部材との間には、前記操作部材を前記第2の位置側から第1の位置側に付勢するバネが設けられ、
前記操作部材が前記第2の位置から前記第3の位置に向けて変位させられた際に前記操作部材とともに変位する前記ロック部材の先端部と係合して、該ロック部材を前記ブラケットに対して固定するロック部材係合部が前記ブラケット側に設けられていること、
を特徴とする船外機。
【請求項2】
前記第1の位置及び第2の位置は前記ガイドプレートよりも上方に設定されていて、前記第1の位置が前記第2の位置よりも上方に設定され、
上下方向に平行に伸びる複数のガイドロッドが設けられて該複数のガイドロッドの下端が前記ガイドプレートに固定され、
各ガイドロッドは、軸線方向に沿って均一な外径を有するガイド軸部と、前記ガイド軸部の下端よりも下方の位置に前記ガイド軸部の外径よりも小さい外径を持って形成された最小径部と、該最小径部と前記ガイド軸部の下端との間を接続するテーパ部とを有する形状に形成され、
前記操作部材は、先端部を前記船外機本体側に向けた状態で前記ガイドプレートと対向するように配置された板状部を有し、
前記操作部材の板状部には、該板状部の先端部寄りの位置で該板状部を貫通した状態で設けられて前記複数のガイドロッドのそれぞれのガイド軸部がスライド自在に嵌合される複数のガイド孔と、前記複数のガイド孔がそれぞれ設けられた位置よりも前記板状部の後端部側に寄った位置で前記複数のガイドロッドのそれぞれのテーパ部と相補的な形状を持って前記板状部を貫通した複数のテーパ孔と、前記複数のガイドロッドのそれぞれの最小径部のみを嵌合させ得る幅寸法を持って前記複数のガイド孔と該複数のガイド孔にそれぞれ対応する複数のテーパ孔との間を伸びていて前記複数のガイド孔と対応する複数のテーパ孔との間をそれぞれ接続する複数のガイド溝とが形成され、
前記複数のガイド溝は、前記第2の移動経路と平行な方向に伸びるように設けられ、
前記操作部材を前記バネの付勢力に抗して前記第1の位置から第2の位置まで変位させた状態から、前記操作部材の各ガイド溝に対応するガイドロッドの最小径部を嵌合させた状態で前記操作部材を前記第3の位置まで移動させて前記ロック部材の先端部を前記ロック部材係合部に係合させた際に、前記ガイドロッドのテーパ部が前記バネにより付勢された状態で前記操作部材のテーパ孔に嵌合して、前記操作部材が前記第3の位置に位置決め固定されるように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記船外機本体の直進方向に対する操舵角が設定された範囲にあるときに前記操作部材の第1の移動経路に沿った移動及び第2の移動経路に沿った移動を許容し、前記船外機本体の直進方向に対する操舵角前記設定された範囲を超えているときには前記操作部材に係合して該操作部材の少なくとも第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパ機構が設けられ
前記船外機本体の直進方向に対する操舵角が比較的小さいときにのみ、前記操作部材の第1の移動経路に沿った移動及び第2の移動経路に沿った移動が許容されて、操舵をロックするための操作が許容されるように前記設定された範囲が定められていること、
を特徴とする請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記ストッパ機構は、
後端部を船外機本体側に向け、先端部を前記操作部材側に向けた状態で配置されて前記ガイドロッドよりも船外機本体側に寄った位置で前記船外機本体のチルト軸と平行な方向に伸びる支持軸を介して前記ガイドプレートに回動自在に支持されたスイングレバーと、
前記スイングレバーの先端部を下方に変位させる方向に前記スイングレバーを付勢するバネと、
前記スイングレバーの先端部に設けられて、前記第1の位置から第2の位置まで移動した前記操作部材の板状部の先端に接して前記操作部材の前記第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパと、
前記スイングレバーの後端部に固定されていて、前記ブラケットの外面をカム面として該カム面と協働することにより前記スイングレバーの先端部に設けられたストッパを前記ガイドプレートの上方に設定された退避位置と該退避位置よりも更に上方に設定された作用位置との間で変位させるように、前記スイングレバーを前記船外機本体の操舵運動に連動して揺動させる従動子と、
を備え、
前記船外機本体の直進方向に対する操舵角が設定された範囲にあるときに前記従動子が前記ブラケットの上端に乗り上げた状態に保持されることにより、前記スイングレバーの先端部に設けられたストッパが前記退避位置に保持されて、該ストッパが退避位置に保持されているときに前記操作部材の第2の位置から第3の位置への変位が許容されて、操舵をロックするための操作が許容され、
前記船外機本体の直進方向に対する操舵角が前記設定された範囲を超えているときには前記従動子が前記ブラケットの上端から外れることにより前記スイングレバーの先端部に設けられたストッパが前記作用位置に保持されて、該ストッパが作用位置に保持されているときに前記操作部材の第2の位置から第3の位置への変位が禁止されて、操舵をロックするための操作が禁止されるように構成されていること、
を特徴とする請求項3に記載の船外機。
【請求項5】
前記ロック部材係合部は、前記船外機本体が直進方向に向いているときにのみ前記ロック部材の先端部と係合するように設けられている請求項1ないし4の何れかに記載の船外機。
【請求項6】
船体に固定されるブラケットに操舵軸を介して回動自在に支持された船外機本体を備えて、該船外機本体を回動させることにより操舵を行う船外機の操舵をロックする操舵ロック装置であって、
前記船外機本体に固定されたガイドプレートと、ガイド機構を介して前記ガイドプレートに支持されて前記操舵をロックする際及び該ロックを解除する際に操作される操作部材と、先端部を前記ブラケット側に向けた状態で前記操作部材に対して固定されて前記操作部材とともに変位させられるロック部材とを具備し、
前記ガイド機構は、前記ガイドプレートに対して一定の位置関係を有する位置に設定された第1の位置と該第1の位置の下方又は上方に設定された第2の位置との間を上下に伸びる第1の移動経路に沿った変位と、前記第2の位置と該第2の位置よりも前記船外機本体側に寄った位置に設定された第3の位置との間を前記第1の移動経路が伸びる方向とは異なる方向に沿って伸びる第2の移動経路に沿った変位とを前記操作部材に許容するように構成され、
前記ガイドプレートと操作部材との間には、前記操作部材を前記第2の位置側から第1の位置側に付勢するバネが設けられ、
前記操作部材が前記第2の位置から前記第3の位置に向けて変位させられた際に前記操作部材とともに変位する前記ロック部材の先端部を係合させて、該ロック部材を前記ブラケットに対して固定するロック部材係合部が前記ブラケット側に設けられていること、
を特徴とする船外機用操舵ロック装置。
【請求項7】
前記第1の位置及び第2の位置は前記ガイドプレートよりも上方に設定されていて、前記第1の位置が前記第2の位置よりも上方に設定され、
上下方向に平行に伸びる複数のガイドロッドが設けられて該複数のガイドロッドの下端が前記ガイドプレートに固定され、
各ガイドロッドは、軸線方向に沿って均一な外径を有するガイド軸部と、前記ガイド軸部の下端よりも下方の位置に前記ガイド軸部の外径よりも小さい外径を持って形成された最小径部と、該最小径部と前記ガイド軸部の下端との間を接続するテーパ部とを有する形状に形成され、
前記操作部材は、先端部を前記船外機本体側に向けた状態で前記ガイドプレートと対向するように配置された板状部を有し、
前記操作部材の板状部には、該板状部の先端部寄りの位置で該板状部を貫通した状態で設けられて前記複数のガイドロッドのそれぞれのガイド軸部がスライド自在に嵌合される複数のガイド孔と、前記複数のガイド孔がそれぞれ設けられた位置よりも前記板状部の後端部側に寄った位置で前記複数のガイドロッドのそれぞれのテーパ部と相補的な形状を持って前記板状部を貫通した複数のテーパ孔と、前記複数のガイドロッドのそれぞれの最小径部のみを嵌合させ得る幅寸法を持って前記複数のガイド孔と該複数のガイド孔にそれぞれ対応する複数のテーパ孔との間を伸びていて前記複数のガイド孔と対応する複数のテーパ孔との間をそれぞれ接続する複数のガイド溝とが形成され、
前記複数のガイド溝は、前記第2の移動経路と平行な方向に伸びるように設けられ、
前記操作部材を前記バネの付勢力に抗して前記第1の位置から第2の位置まで変位させた状態から、前記操作部材の各ガイド溝に対応するガイドロッドの最小径部を嵌合させた状態で前記操作部材を前記第3の位置まで移動させて前記ロック部材の先端部を前記ロック部材係合部に係合させた際に、前記ガイドロッドのテーパ部が前記バネにより付勢された状態で前記操作部材のテーパ孔に嵌合して、前記操作部材が前記第3の位置に位置決め固定されるように構成されていること、
を特徴とする請求項6に記載の船外機用操舵ロック装置。
【請求項8】
前記船外機本体の直進方向に対する操舵角が設定された範囲にあるときに前記操作部材の第1の移動経路に沿った移動及び第2の移動経路に沿った移動を許容し、前記船外機本体の直進方向に対する操舵角前記設定された範囲を超えているときには前記操作部材に係合して該操作部材の少なくとも第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパ機構が設けられ、
前記船外機本体の直進方向に対する操舵角が比較的小さいときにのみ、前記操作部材の第1の移動経路に沿った移動及び第2の移動経路に沿った移動が許容されて、操舵をロックするための操作が許容されるように前記設定された範囲が定められていること、
を特徴とする請求項7に記載の船外機用操舵ロック装置。
【請求項9】
前記ストッパ機構は、
後端部を船外機本体側に向け、先端部を前記操作部材側に向けた状態で配置されて前記ガイドロッドよりも船外機本体側に寄った位置で前記船外機本体のチルト軸と平行な方向に伸びる支持軸を介して前記ガイドプレートに回動自在に支持されたスイングレバーと、
前記スイングレバーの先端部を下方に変位させる方向に前記スイングレバーを付勢するバネと、
前記スイングレバーの先端部に設けられて、前記第1の位置から第2の位置まで移動した前記操作部材の板状部の先端に接して前記操作部材の前記第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパと、
前記スイングレバーの後端部に固定されていて、前記ブラケットの外面をカム面として該カム面と協働することにより前記スイングレバーの先端部に設けられたストッパを前記ガイドプレートの上方に設定された退避位置と該退避位置よりも更に上方に設定された作用位置との間で変位させるように、前記スイングレバーを前記船外機本体の操舵運動に連動して揺動させる従動子と、
を備え、
前記船外機本体の直進方向に対する操舵角が設定された範囲にあるときに前記従動子が前記ブラケットの上端に乗り上げた状態に保持されることにより、前記スイングレバーの先端部に設けられたストッパが前記退避位置に保持されて、該ストッパが退避位置に保持されているときに前記操作部材の第2の位置から第3の位置への変位が許容されて、操舵をロックするための操作が許容され、
前記船外機本体の直進方向に対する操舵角が前記設定された範囲を超えているときには前記従動子が前記ブラケットの上端から外れることにより前記スイングレバーの先端部に設けられたストッパが前記作用位置に保持されて、該ストッパが作用位置に保持されているときに前記操作部材の第2の位置から第3の位置への変位が禁止されて、操舵をロックするための操作が禁止されるように構成されていること、
を特徴とする請求項8に記載の船外機用操舵ロック装置。
【請求項10】
前記ロック部材係合部は、前記船外機本体が直進方向に向いているときにのみ前記ロック部材の先端部と係合するように設けられている請求項6ないし9の何れかに記載の船外機用操舵ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵をロックする操舵ロック装置を備えた船外機、及び船外機の操舵をロックする必要がある場合に船外機に取り付ける操舵ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船外機は、船体のトランサムボードに固定されるブラケットと、該ブラケットに操舵軸を介して回動自在に支持された船外機本体とを備えていて、船外機本体を操舵軸の回りに回動させることにより操舵を行うように構成されている。
【0003】
船外機を取り付けた船舶においては、必要に応じて船外機の操舵をロックすることが必要になることがある。例えば、ヨットに船外機を補助推進装置として取り付ける場合、ヨットが港の中を航行している間は、小回りがきく船外機の操舵性能を利用するために、船外機を補助推進装置として動作させる場合も、そのエンジンを停止させておく場合も、船外機の舵が働くようにしておき、船が洋上に出た後は、船外機の舵がヨットの操船の邪魔になるのを防ぐために、船外機の操舵をロックするように(船外機本体が操舵軸の回りに回動することがないように)している。
【0004】
また大形のエンジンが取り付けられている船舶において、船外機が補助推進装置として取り付けられている場合には、船外機を使用しない場合に、船外機の舵が操船の邪魔になるのを防ぐために、船外機の操舵をロックすることがある。更に釣りを行う際に船体をゆっくりと推進させる(トローリングを行う)場合にも、操舵をロックすることが考えられる。
【0005】
船外機の操舵をロックする装置は、例えば、特許文献1や特許文献2に示されている。特許文献1に示された操舵ロック装置は、操舵軸を中心とした円弧に沿って伸びるように形成されてスイベルブラケット(操舵軸を支持するブラケット)に対して固定された円弧状の摩擦板と、この摩擦板を間に挟むように設けられてステアリングブラケット(操舵軸に対して固定されて、操舵ハンドルを支持するブラケット)に対して固定された一対の締付けパッドと、これら一対の締付けパッドを締付けるボルトと、該ボルトを操作する操作部材とを備えていて、ボルトにより締付けパッドを摩擦板に対して締め付けることにより、ステアリングブラケットをスイベルブラケットに対して固定して、船外機の操舵をロックするように構成されている。
【0006】
また特許文献2に示された操舵ロック装置は、スイベルブラケットに一端が固定されたリーフスプリングと、操舵ハンドルに取り付けられてリーフスプリングに向う方向と、リーフスプリングから離れる方向とに変位が可能な係合子とを備えていて、リーフスプリングの他端に設けられた孔に係合子を係合させることにより、操舵をロックするように構成されている。係合子をリーフスプリングの孔に係合させる動作は、操舵ハンドルに設けられた操作子を一方向にスライドさせることにより行わせるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−53088号公報
【特許文献2】特開昭58−145596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示された操舵ロック装置のように、摩擦板を締め付けパッドで締め付けることにより船外機本体の操舵を固定するようにした場合には、船外機本体に大きな外力が作用したときに、摩擦板と締め付けパッドとの間に滑りが生じて、船外機本体が動いてしまうことがあるため、操舵を確実にロックすることが難しい。また特許文献1に示された操舵ロック装置では、摩擦板を締め付けパッドで締め付ける際及び締め付けを解除する際にボルトを締め付けたり緩めたりする作業を行う必要があるため、操舵をロックする操作及び操舵ロックを解除する操作が面倒になるのを避けられない。またボルトを締め付ける力が不足すると操舵を完全にロックすることができない。
【0009】
特許文献2に示されたように、スイベルブラケットに固定されたリーフスプリングに設けられた孔に操舵ハンドルに取り付けられた係合子を係合させることにより、船外機本体の操舵を固定するようにした場合も、船外機に大きな外力が作用した際に、係合子がリーフスプリングの孔から外れて操舵のロックが解除されるため、操舵を確実にロックすることが難しい。
【0010】
ヨットに補助推進装置として取り付けられる船外機のように、定常航行時には利用されることがない船外機の操舵をロックする場合には、操船者の意に反して操舵のロックが解除されて、船外機の舵が操船の妨げになるのを防ぐために、操舵のロックを確実に行わせることが必要である。また船外機の操舵を効かせることが必要になった場合には簡単な操作で操舵のロックを解除し得るようにしておくことが望ましい。
【0011】
特許文献2に示された操舵ロック装置では、ボルトを締めたり緩めたりする操作を伴うことなく、操作子を操作するだけで、操舵をロックしたり操舵のロックを解除したりすることができる。しかしながら、特許文献2に示された操舵ロック装置では、操作子を直線方向にスライドさせるワンアクションの操作により、操舵のロックと操舵ロックの解除とを行うため、操作子に外力が作用した場合や、運転者が誤って操作子に触れたりした場合に、予期しない形で操舵がロックされたり、操舵のロックが外れたりするおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、操舵のロック及び操舵ロックの解除を、簡単な操作で、しかも誤操作が行われるおそれを生じさせることなく、確実に行うことができる操舵ロック装置を備えた船外機を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、操舵のロック及び操舵ロックの解除を、簡単な操作で、しかも誤操作が行われるおそれを生じさせることなく、確実に行うことができる船外機用操舵ロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、船体に固定されるブラケットと、該ブラケットに操舵軸を介して回動自在に支持された船外機本体とを備えて、船外機本体を操舵軸の回りに回動させることにより操舵を行う船外機を対象とする。本願明細書においては、前記の目的を達成するために、船外機に関して少なくとも以下に示す第1ないし第5の発明が開示される。
【0015】
第1の発明
第1の発明においては、船外機が、船外機本体に固定されたガイドプレートと、ガイド機構を介してガイドプレートに支持されて、操舵をロックする際及び該ロックを解除する際に操作される操作部材と、先端部をブラケット側に向けた状態で操作部材に対して固定されて操作部材とともに変位させられるロック部材とを備えている。
【0016】
上記ガイド機構は、ガイドプレートに対して一定の位置関係を有する位置に設定された第1の位置と該第1の位置の下方又は上方に設定された第2の位置との間を上下に伸びる第1の移動経路に沿った変位と、前記第2の位置と該第2の位置よりも船外機本体側に寄った位置に設定された第3の位置との間を前記第1の移動経路が伸びる方向とは異なる方向に沿って伸びる第2の移動経路に沿った変位とを操作部材に許容するように構成されている。
またガイドプレートと操作部材との間には、操作部材を第2の位置側から第1の位置側に付勢するバネが設けられ、操作部材が第2の位置から第3の位置に向けて変位させられた際に操作部材とともに変位するロック部材の先端部と係合して、該ロック部材をブラケットに対して固定するロック部材係合部がブラケット側に設けられている。
【0017】
上記ロック部材係合部は、ロック部材の先端と係合する(ロック部材の先端を受け入れたり、嵌合させたりしてロック部材の先端と機械的に結合する)ことができる孔、凹部又は溝部等により構成することができる。またロック部材の先端部側に凹部や溝を設けて、ブラケット側に設けるロック部材係合部を、該ロック部材の先端部の凹部や溝に嵌合する凸部とすることもできる。
【0018】
また第1の移動経路が延びる方向(上下方向)は、鉛直方向に限定されるものではなく、鉛直方向に対してある程度傾いた方向でもよい。
【0019】
上記のように、船外機本体を船体に固定するブラケットに固定されたガイドプレートにガイド機構を介して支持された操作部材にロック部材を固定して、該ロック部材の先端をブラケットに設けたロック部材係合部に係合させることにより、船外機本体の操舵をロックするように操舵ロック装置を構成すると、操舵を確実にロックすることができ、航行中に船外機本体に作用する外力により操舵のロックが外れるのを防ぐことができる。
【0020】
上記のように構成すると、操作部材を第1の位置から第2の位置に変位させた後、更に該操作部材を第3の位置に押し進める操作を行うことにより、船外機の操舵をロックすることができ、また操作部材を第3の位置から第2の位置まで戻した後、更に第1の位置に戻す操作を行うだけで、操舵のロックを解除することができるので、操舵をロックする操作及び操舵のロックを解除する操作を、ボルトを締めたり緩めたりする作業を伴うことなく、簡単に行わせることができる。
【0021】
また上記のように構成すると、操作部材を第1の位置から第2の位置まで変位させる操作と、操作部材を第2の位置から第3の位置まで変位させる操作との2アクションの操作を行わないと操舵をロックすることができず、操作部材を第3の位置から第2の位置に変位させる操作と、操作部材を第2の位置から第1の位置に変位させる操作との2アクションの操作を行わないと操舵ロックの解除行うことができないので、操船者により操舵ロック装置が誤操作されるのを防ぐことができるだけでなく、操作部材に外力が作用したときに誤って操舵がロックされたり、操舵のロックが外れたりするおそれを無くすことができる。
【0022】
第2の発明
第2の発明においては、第1の位置及び第2の位置がガイドプレートよりも上方に設定されていて、第1の位置が第2の位置よりも上方に設定さているとする。この場合、上下方向に平行に伸びる複数のガイドロッドが設けられて該複数のガイドロッドの下端がガイドプレートに固定される。各ガイドロッドは、軸線方向に沿って均一な外径を有するガイド軸部と、ガイド軸部の下端よりも下方の位置にガイド軸部の外径よりも小さい外径を持って形成された最小径部と、該最小径部とガイド軸部の下端との間を接続するテーパ部とを有する形状に形成されている。
また操作部材は、先端部を船外機本体側に向けた状態でガイドプレートと対向するように配置された板状部を有しており、該板状部には、該板状部の先端部寄りの位置で該板状部を貫通した状態で設けられて複数のガイドロッドのそれぞれのガイド軸部がスライド自在に嵌合される複数のガイド孔と、複数のガイド孔がそれぞれ設けられた位置よりも板状部の後端部側に寄った位置で複数のガイドロッドのそれぞれのテーパ部と相補的な形状を持って上記板状部を貫通した複数のテーパ孔と、複数のガイドロッドのそれぞれの最小径部のみを嵌合させ得る(テーパ部及びガイド軸部は嵌合させることができない)幅寸法を持って複数のガイド孔と該複数のガイド孔にそれぞれ対応する複数のテーパ孔との間を伸びていて複数のガイド孔と対応する複数のテーパ孔との間をそれぞれ接続する複数のガイド溝とが形成されている。
複数のガイド溝は、第2の移動経路と平行な方向に伸びるように設けられていて、操作部材をバネの付勢力に抗して第1の位置から第2の位置まで変位させた後、操作部材の各ガイド溝に対応するガイドロッドの最小径部を嵌合させた状態で操作部材を第3の位置まで移動させてロック部材の先端部をロック部材係合部に係合させた際に、ガイドロッドのテーパ部が前記バネにより付勢された状態で操作部材のテーパ孔に嵌合して、操作部材が第3の位置に位置決め固定されるように構成されている。
【0023】
上記のように構成しておくと、操作部材に設けた板状部を貫通した複数のガイドロッドを介して操作部材がガイドプレートに対して支持されるので、操作部材及び該操作部材に固定されたロック部材を船外機本体に対して強固に支持することができる。また操舵をロックした状態で、ガイドロッドのテーパ部がバネにより付勢された状態で操作部材のテーパ孔に嵌合して、操作部材を第3の位置に位置決め固定するので、操作部材に外力が作用した際に操作部材が動いて操舵のロックが外れるのを確実に防ぐことができる。
【0024】
第3の発明
第3の発明は、第2の発明に適用されるもので、本発明においては、上記船外機本体の直進方向に対する操舵角が設定された範囲にあるときに操作部材の第1の移動経路に沿った移動及び第2の移動経路に沿った移動を許容し、船外機本体の直進方向に対する操舵角設定された範囲を超えているときには操作部材に係合して該操作部材の少なくとも第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパ機構が設けられ、船外機本体の直進方向に対する操舵角が比較的小さいときにのみ、操作部材の第1の移動経路に沿った移動及び第2の移動経路に沿った移動が許容されて、操舵をロックするための操作が許容されるように前記設定された範囲が定められる。
【0025】
上記のようにストッパ機構を設けておくと、直進方向に対する操舵角が比較的小さいときにのみ、操作部材をロック部材と共に第3の位置に向けて変位させて操舵をロックすることができるため、操舵角が大きい状態(船外機のハンドルが大きく切られている状態)で操舵をロックするための操作が行われて、ロック部材が船外機のブラケットと干渉することにより操舵が妨げられる状態が生じるのを防ぐことができる。
【0026】
第4の発明
第4の発明は、第3の発明に適用される。本発明においては、上記ストッパ機構が、後端部を船外機本体側に向け、先端部を操作部材側に向けた状態で配置されてガイドロッドよりも船外機本体側に寄った位置で船外機本体のチルト軸と平行な方向に伸びる支持軸を介してガイドプレートに回動自在に支持されたスイングレバーと、スイングレバーの先端部を下方に変位させる方向に該スイングレバーを付勢するバネと、スイングレバーの先端部に設けられて、前記第1の位置から第2の位置まで移動した前記操作部材の板状部の先端に接して前記操作部材の前記第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパと、スイングレバーの後端部に固定されていて、ブラケットの外面をカム面として該カム面と協働することによりスイングレバーの先端部に設けられたストッパをガイドプレートの上方に設定された退避位置と該退避位置よりも更に上方に設定された作用位置との間で変位させるように、スイングレバーを船外機本体の操舵運動に連動して揺動させる従動子とを備えて、船外機本体の直進方向に対する操舵角が設定された範囲にあるときに従動子がブラケットの上端に乗り上げた状態に保持されることによりスイングレバーの先端部に設けられたストッパが退避位置に保持されて、該ストッパが退避位置に保持されているときに操作部材の第2の位置から第3の位置への変位が許容されて、操舵をロックするための操作が許容され、船外機本体の直進方向に対する操舵角が前記設定された範囲を超えているときには前記従動子がブラケットの上端から外れることによりスイングレバーの先端部に設けられたストッパが前記作用位置に保持されて、該ストッパが作用位置に保持されているときに前記操作部材の第2の位置から第3の位置への変位が禁止されて、操舵をロックするための操作が禁止されるように構成されている。
【0027】
第5の発明
第5の発明は、第1の発明ないし第4の発明の何れかに適用されるもので、本発明においては、上記ロック部材係合部を、船外機本体が直進方向に向いているときにのみロック部材の先端部を係合させることができるように設ける。
【0028】
本発明はまた、船体に固定されるブラケットに操舵軸を介して回動自在に支持された船外機本体を備えて、該船外機本体を回動させることにより操舵を行う船外機の操舵をロックする操舵ロック装置を対象とする。本明細書においては、前記の目的を達成するために、操舵ロック装置に関して少なくとの第6ないし第10の発明が開示される。
【0029】
第6の発明
本発明に係る操舵ロック装置は、船外機本体に固定されたガイドプレートと、ガイド機構を介してガイドプレートに支持されて、操舵をロックする際及び該ロックを解除する際に操作される操作部材と、先端部をブラケット側に向けた状態で後端部が操作部材に固定されて操作部材とともに変位させられるロック部材とを備えている。
上記ガイド機構は、ガイドプレートに対して一定の位置関係を有する位置に設定された第1の位置と該第1の位置の下方又は上方に設定された第2の位置との間を上下に伸びる第1の移動経路に沿った変位と、第2の位置と該第2の位置よりも船外機本体側に寄った位置に設定された第3の位置との間を上記第1の移動経路が伸びる方向とは異なる方向に沿って伸びる第2の移動経路に沿った変位とを操作部材に許容するように構成される。
またガイドプレートと操作部材との間には、操作部材を第2の位置側から第1の位置側に付勢するバネが設けられ、操作部材が第2の位置から第3の位置に向けて変位させられた際に前記操作部材とともに変位する前記ロック部材の先端部と係合して該ロック部材を前記ブラケットに対して固定するロック部材係合部がブラケット側に設けられる。
【0030】
第7ないし第10の発明
本願に開示された第7ないし第10の発明に係る操舵ロック装置の構成は、既に述べた第2の発明ないし第5の発明に係る船外機でそれぞれ用いられた操舵ロック装置の構成と同様であるので、第7ないし第10の発明に係る操舵ロック装置の構成についいての説明は省略する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、船外機本体を船体に固定するブラケットに固定されたガイドプレートにガイド機構を介して支持された操作部材にロック部材を固定して、該ロック部材の先端をブラケットに設けたロック部材係合部に係合させることにより、船外機本体の操舵をロックするように操舵ロック装置を構成したので、操舵を確実にロックすることができ、航行中に操舵のロックが外れるのを防ぐことができる。
【0032】
本発明によればまた、操作部材を第1の位置から第2の位置に変位させた後、該操作部材を第3の位置に変位させる操作を行うことにより、船外機の操舵をロックすることができ、操作部材を第3の位置から第2の位置を経て第1の位置に戻す操作を行うだけで、操舵のロックを解除することができるので、操舵をロックする操作及び操舵のロックを解除する操作を、ボルトを締めたり緩めたりする作業を伴うことなく、簡単に行うことができる。
【0033】
本発明によれば、操作部材を第1の位置から第2の位置まで変位させる操作と、操作部材を更に第2の位置から第3の位置まで変位させる操作との2アクションの操作を行わないと操舵をロックすることができず、また操作部材を第3の位置から第2の位置に変位させる操作と、操作部材を第2の位置から第1の位置に変位させる操作との2アクションの操作を行わないと操舵ロックの解除行うことができないので、操船者により操舵ロック装置が誤操作されるのを防ぐことができるだけでなく、操作部材に外力が作用したときに誤操作が行われるおそれを無くすことができる。
【0034】
また本明細書に開示された第2の発明又は第7の発明によれば、操作部材に設けた板状部を貫通した複数のガイドロッドを介して操作部材がガイドプレートに対して支持されるので、操作部材及び該操作部材に固定されたロック部材を船外機本体に対して確実に支持することができる。更に、操舵をロックした状態で、ガイドロッドのテーパ部がバネにより付勢された状態で操作部材の板状部のテーパ孔に嵌合して、操作部材を第3の位置に位置決め固定するので、操作部材に外力が作用した際に操作部材が動いて操舵のロックが外れるのを確実に防ぐことができる。
【0035】
本明細書に開示された第3の発明又は第8の発明によれば、船外機本体の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲にあるときに操作部材の第1の移動経路に沿った移動及び第2の移動経路に沿った移動を許容し、船外機本体の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲を超えているときには操作部材に係合して該操作部材の少なくとも第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパ機構が設けられているため、操舵角が比較的小さく、船外機本体がほぼ直進方向に向いているときにのみ、操作部材をロック部材と共に第3の位置に向けて変位させて操舵をロックすることができる。そのため、操舵角が大きい状態で操舵をロックするための操作が行われて、ロック部材が船外機のブラケットと干渉することにより操舵が妨げられる状態が生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係る船外機の要部の外観を示す側面図である。
図2図1に示した船外機の正面図である。
図3】本実施形態で用いる操舵ロック装置の要部の構造を示したもので、(A)及び(B)はそれぞれ操作部材が第1の位置にあるときの状態を示す上面図及び縦断面図である。
図4】本実施形態で用いる操舵ロック装置の要部の構造を示したもので、(A)及び(B)はそれぞれ船外機本体の直進方向に対する傾斜角が設定角度以下になっている状態で操作部材を下方に押して第2の位置まで下降させた後、操作部材を下方に押しながら更に第3の位置まで変位させる途中の状態を示す上面図及び縦断面図である。
図5】本実施形態で用いる操舵ロック装置の要部の構造を示したもので、(A)及び(B)はそれぞれ船外機本体の直進方向に対する傾斜角が設定角度以下になっている状態で操作部材を下方に押しながら第2の位置を経て第3の位置まで変位させた後、操作部材を下方に押す力を除去したときの状態を示す上面図及び縦断面図である。
図6】本実施形態で用いる操舵ロック装置の要部の構造を示したもので、(A)及び(B)はそれぞれ船外機本体の直進方向に対する傾斜角が設定角度を超えている状態で操作部材を下方に押して第2の位置まで下降させたときの状態を示す上面図及び縦断面図である。
図7】本実施形態で用いる操舵ロック装置において、操作部材を第2の位置を経て第3の位置まで変位させたときの、ガイドロッドと操作部材に設けられたテーパ孔との関係を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係る船外機の外観を示している。これらの図において、1はヨットの船体2に取り付けられた船外機である。船外機1は、船体2の後端部に設けられたトランサムボード2aに取り付けられるブラケット3と、ブラケット3に支持された船外機本体4とからなっている。
【0038】
ブラケット3は、船体の幅方向に間隔をあけて配置された一対のクランプブラケット301,301と、クランプブラケット301,301の間に配置されて両クランプブラケットに固定されたスイベルブラケット302とからなっていて、クランプブラケット301,301がトランサムボード2aに着脱可能に取り付けられることにより船体2に固定される。クランプブラケット301,301とスイベルブラケット302とは、船体の幅方向に伸びるチルト軸5と、チルト軸5の両端に設けられたネジに螺合されたナットとにより締結されていて、スイベルブラケット302がチルト軸5を中心にしてチルト(傾斜)し得るようになっている。
【0039】
船外機本体4は、アッパーケーシング401aと、アッパーケーシング401aの下端に上端が接続されたロアーケーシング(図示せず。)とからなるケーシング401を備えていて、アッパーケーシング401aの上端に図示の軸線O−Oに沿って延びる中空の操舵軸(図示せず。)の下端が固定されている。この操舵軸は、スイベルブラケット302に一体に設けられた軸支持部302a内に回転自在に支持されていて、操舵軸の上端に固定されたエンジンベースにエンジン(図示せず。)が支持されている。操舵軸の上端には、エンジンベース付近を覆うボトムカウル402と、エンジンベースに固定されたエンジンを覆うトップカウル403とが取り付けられている。
【0040】
アッパーケーシング401aの下端に接続された図示しないロアーケーシング内にはプロペラを支持したプロペラ軸と変速機とが収容され、中空の操舵軸内とケーシング401内とを上下に伸びるドライブシャフトと、ロアーケーシング内に設けられた変速機とを通してエンジンの回転がプロペラ軸に伝達される。
【0041】
船外機本体4は、スイベルブラケット302の軸支持部302aに支持された操舵軸を中心にしてブラケット3に対して左右に回動することができ、この船外機本体の回動により操舵を行わせることができる。図示の例では、ボトムカウル402に操舵ハンドル7が取り付けられ、この操舵ハンドル7を操作することにより、船外機本体4の向きを変えて操舵を行うようになっている。
【0042】
クランプブラケット301の下部にはチルト軸5の軸心部を中心とした円弧に沿って並ぶ複数の貫通孔hが設けられ、これらの孔の中から選択した孔に挿入したピン8をスイベルブラケット302に設けられた孔(図示せず。)に挿入することにより、船外機本体4のチルト角を適宜に調整し得るようになっている。なお図1及び図2において9は、変速機を切り換える際に操作されるシフトレバーである。
【0043】
スイベルブラケット302の上端部のチルト軸5が貫通している部分には、スイベルブラケットの前面側に開口した開口部302b(図2参照)が設けられている。この開口部は、操舵をロックする際に後記するロック部材の先端を係合させるロック部材係合部として用いられる。
【0044】
本実施形態に係る船外機は、例えば、ヨットの船体に補助推進装置として取り付けられる。ヨットに船外機が取り付けられる場合、船が洋上に出た後に、船外機の操舵を直進状態にロックすることが行われる。本実施形態に係る船外機においては、船外機の操舵をロックすることを可能にするために操舵ロック装置10が設けられている。
【0045】
図3ないし図7を参照して、本実施形態で用いる操舵ロック装置10について説明する。本実施形態で用いる操舵ロック装置10は、船外機本体に固定されたガイドプレート11と、ガイド機構12を介してガイドプレート11に支持されて、操舵をロックする際及び操舵のロックを解除する際に操作される操作部材13と、先端部をブラケット3側に向けた状態で操作部材13に固定されて操作部材13とともに変位させられるロック部材13Aとを備えている。ロック部材13Aは、操作部材と別体であってもよいが、本実施形態では、ロック部材13Aが操作部材13に一体に設けられている。本実施形態では、操舵ロックを行う必要がないときに操作部材13の無用な操作が行われるのを防ぐためのストッパ機構を構成するスイングレバー22が設けられている。以下各部について詳細に説明する。
【0046】
ガイドプレート
ガイドプレート11は、操舵軸の軸線O−Oと直交する板面を有する主板部11aと、この主板部の前端から下方に傾斜して伸びる傾斜板部11bとを有している。本実施形態では、船外機を運搬する際等に船外機本体4に手をかけるために、船外機本体4のアッパーケーシングの上端に、前方に張り出した把手部401b(図1参照)が設けられ、この把手部の上面に形成された平坦面の上にガイドプレート11の主板部11aを載せて、該主板部11aを把手部401bにボルト止めすることにより、ガイドプレート11が船外機本体4に着脱可能な状態で固定されている。
【0047】
ガイドプレート11の主板部11aは、傾斜板部11bに隣接する第1の板状部11a1と、第1の板状部11a1の傾斜板部11bと反対側の端部に隣接する位置に、第1の板状部11a1よりも狭い幅寸法を持って形成された第2の板状部11a2と、第2の板状部11a2の第1の板状部11a1と反対側の端部に隣接する位置に第2の板状部11a2よりも更に狭い幅寸法を持って形成された第3の板状部11a3とを有する形状に形成されている。
【0048】
ガイドプレートの主板部11aの第1の板状部11a1ないし第3の板状部11a3は、それぞれの幅方向の中心を一致させた状態で設けられ、第1の板状部11a1と第2の板状部11a2との間の境界部は、第1の板状部11a1側から第2の板状部11a2側に向かうに従って徐々に幅寸法が狭くなっていくように形成されている。また第3の板状部11a3の先端寄りの部分の幅方向の両端には、同じ切り込み深さを有する切り欠き部11c ,11cが互いに整合する位置に位置させた状態で形成されている。ガイドプレート11の主板部11aの第1の板状部11a1には、該第1の板状部を貫通した矩形状ないしは正方形状の窓部11dが、該第1の板状部11a1の幅方向の中央部に位置させた状態で設けられている。本実施形態では、ガイドプレート11の主板部11aの第3の板状部11a3側の端部(船の前進方向に向いたガイドプレートの端部)をガイドプレートの先端部とする。
【0049】
ガイドプレート11の傾斜板部11bは、主板部の第1の板状部11a1と同じ幅寸法を有するように形成されていて、傾斜板部11bの主板部11aと反対側の端部(ガイドプレートの後端部)寄りの部分には、主板部11aと反対側に開口した切り欠き部11b1が、傾斜板部11bの幅方向の中央部に位置させた状態で形成されている。切り欠き部11b1が形成されることにより、傾斜板部11bの主板部と反対側の端部寄りの部分の幅方向の両端に、切り欠き部11b1を間にしてガイドプレートの幅方向に相対する一対の板状の脚部11b2,11b2が形成されている。
【0050】
板状の脚部11b2,11b2の先端を丸めることにより筒状の軸支持部11b3,11b3が形成され、これらの軸支持部の内側に、チルト軸5と平行な方向(ガイドプレートの幅方向)に伸びる支持軸20の両端が嵌合されて保持されている。図示の例では、支持軸20が、先端部寄りの部分にのみネジ部を有するボルトからなっていて、支持軸20を構成するボルトの先端のネジ部に螺合されたナット21が締め付けられることにより、支持軸20がガイドプレート11の脚部11b2,11b2に固定されている。
【0051】
スイングレバー
ガイドプレート11の傾斜板部11bの下側には、スイングレバー22が配置されている。スイングレバー22は、ガイドプレート11の傾斜板部11bの下方をガイドプレートの後端部から前端部側に向かうに従って斜め上方に向かうように傾斜した状態で設けられて、一端が支持軸20に回転自在に結合された帯板状の第1の部分22aと、第1の部分22aの他端からガイドプレート11側に折れ曲がって、ガイドプレートの窓部11d内を通して、ガイドプレート11の上面側に起立した第2の部分22bと、第2の部分22bの第1の部分22aと反対側の端部から船外機本体と反対側に折れ曲がって伸びるように設けられて、ガイドプレート11の主板部11aとほぼ平行に配置された第3の部分22cと、第3の部分22cの第2の部分22bと反対側の端部から上方に起立したストッパ22dとを一体に有している。後述するように、ストッパ22dは、操作部材13の操作を禁止する必要があるときに、操作部材13の変位を阻止するために用いられる。なお図において、22eは、スイングレバー22を補強するリブである。
【0052】
本実施形態では、スイングレバー22の第1の部分22aの一端及びスイングレバー22のストッパ22dが設けられた側の端部をそれぞれスイングレバー22の後端部及び先端部とする。
図示の例では、スイングレバー22の第1の部分22aの一端に軸嵌合孔を有する軸結合部22fが一体に形成されていて、この軸結合部22fの軸嵌合孔内に支持軸20を嵌合させることにより、スイングレバー22の後端部が支持軸20に回転自在に結合されている。これにより、スイングレバー22がガイドプレート11に回動自在に支持されている。
【0053】
図3に示されているように、支持軸20には、スイングレバー22の後端部の両側にそれぞれ位置させて、ヘリカルスプリング23,23が嵌合され、これらのヘリカルスプリングの一端及び他端がそれぞれガイドプレート11の後端部に設けられた脚部11b2,11b2及びスイングレバー22の軸結合部22fに固定されることにより、スイングレバーの22の先端部(ストッパ22d)を上方に回動変位させる方向にスイングレバー22が付勢されている。
【0054】
スイングレバー22の後端部には、ブラケット3の外面をカム面として、該カム面と協働することによりスイングレバー22を回動させる従動子22gが固定されている。従動子22gは、ヘリカルスプリング23,23の付勢力により押圧された状態でブラケット3の上端部に接触させられていて、スイングレバー22の先端部(ストッパ22d)をガイドプレートの上方に設定された退避位置と該退避位置よりも更に上方に設定された作用位置との間で変位させるように、スイングレバー22を船外機本体4の操舵運動に連動して揺動させる。
【0055】
本実施形態では、船外機本体4の直進方向に対する傾斜角(操舵角)が設定された範囲にある間、従動子22gがブラケット3の上端面に接した状態を保持してスイングレバー22の先端部(ストッパ22d)を、ガイドプレートの上方に設定された退避位置(図5(B)に示す位置)に配置する。また船外機本体4の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲を超えたときに、従動子22gがブラケット3の上端面から外れて、スプリング23,23の付勢力によりスイングレバー22を図3(B)において反時計方向(スイングレバー22の先端部のストッパ部22dを上方に変位させる方向)に回動させることにより、ストッパ22dを作用位置(図6(B)に示す位置)に変位させる。このスイングレバーの動作により、船外機本体の直進方向に対する傾斜角(操舵角)が設定された範囲にあるときに操舵をロックするための操作部材の操作を許容し、船外機本体4の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲を超えている間、操舵をロックするための操作部材の操作を禁止する。これらの動作の詳細については、操作部材13の構成について説明した後で、改めて説明する。
【0056】
操作部材
操作部材13は、ガイドプレート11の主板部11aの第1の板状部11a1の幅寸法よりも僅かに大きい幅寸法W1と、一定の高さ寸法Hとを有して、ガイドプレート11の第3の板状部11a3側の端部に配置された操作部材本体13aと、操作部材本体13aの中間部から船外機本体側に突出した状態で設けられて、先端部を船外機本体4側に向けた状態でガイドプレート11の主板部11aの上方に、該主板部と対向した状態で配置された板状部13bとを有して、板状部13bがガイド機構12を介してガイドプレート11に支持されている。
【0057】
操作部材本体13aは、先端を船外機本体側に向けた状態で、ガイドプレート11の主板部11aの第3の板状部11a3の下面に対向するように配置された基板部13a1と、基板部13a1の後端部から起立した起立壁部13a2と、起立壁部13a2の上端に一体に設けられた頭部13a3とを有している。この操作部材とともに変位するようにロック部材13Aが設けられている。
【0058】
ロック部材
ロック部材13Aは、ガイドプレート11の傾斜板部11bの幅寸法よりも小さい幅寸法を持って、ガイドプレート11の下方で、該ガイドプレートの主板部11aと平行に伸びるように設けられて、一端を船外機のブラケット3側に向けた状態で配置された第1の部分13A1と、第1の部分13A1よりも大きな幅寸法を持って第1の部分13A1の他端から斜めに立ち上がった第2の部分13A2と、第2の部分13A2の第1の部分13A1と反対側の端部に一端が連続するように設けられて、ガイドプレート11の主板部11aと平行な方向に伸びる第3の部分13A3と、第3の部分13A3の他端から上方に立ち上がった第4の部分13A4とを一体に有する形状に形成されていて、第4の部分13A4の第3の部分13A3と反対側の端部が、操作部材本体13aの基板部13a1の先端に一体化されている。本実施形態では、ロック部材13Aの第1の部分13A1の一端を、ロック部材の先端とする。
【0059】
本実施形態で用いる操作部材13及びロック部材13Aは、FRP等の樹脂や、アルミニウム等の金属により、一体成形品として製造される。操作部材およびロック部材の軽量化を図るため、各部の厚みが必要最小限の大きさに設定されるとともに、要部がリブrにより補強されて、必要な強度が確保されている。
【0060】
操作部材をガイドするガイド機構
操作部材本体13aの起立壁部13a2には、ガイドプレート11の主板部11aの第3の板状部11a3が嵌合される開口部13cが形成されている。図3(B),図4(B)、図5(B)及び図6(B)においては、それぞれの図を右側から見た場合に見える開口部13cの輪郭形状を、それぞれの図の右端に隣接する位置に示してある。これらの図に示されているように、開口部13cは、ガイドプレート11の主板部の第3の板状部11a3の先端寄りの切り欠き部11c,11cが設けられた部分の幅寸法よりも僅かに大きい幅寸法を持って上下に伸びるガイド部13c1と、ガイドプレートの主板部11aの第3の板状部11a3の切り欠き部11c,11c以外の幅広部分を通過させ得る大きさの幅寸法を持ってガイド部13c1の上端に連続する広幅部13c2とを有する形状に形成されている。
【0061】
上記開口部13cとともにガイド機構12を構成するため、上下方向に平行に伸びる3本のガイドロッド31〜33がそれぞれの中心軸線を二等辺三角形の頂点に位置させた状態で設けられて、これらのガイドロッドの下端がガイドプレート11の主板部11aに固定されている。3本のガイドロッド31〜33のうち、2本のガイドロッド31及び32は、それぞれの下端をガイドプレート11の主板部の第1の板状部11a1の幅方向の両端の、第2の板状部11a2寄りの部分に固定することによりガイドプレート11に取り付けられ、残りのガイドロッド33は、その下端をガイドプレート11の主板部11aの、第2の板状部11a2の幅方向の中央部の第3の板状部11a3寄りの部分に固定することによりガイドプレート11に取り付けられている。
【0062】
本実施形態では、ガイドロッド31〜33の下端に他の部分よりも小さい外径を有する小径部が形成されて、この小径部の外周にネジが刻設されることにより、ガイドロッド31〜33のそれぞれの下端に雄ネジ部が形成されている。ガイドプレート11の幅方向の両端に配置されるガイドロッド31及び32は、それぞれの下端に設けられた雄ネジ部を、ガイドプレート11の主板部の第1の板状部11a1と船外機本体4の把手部401bとに設けられた孔を貫通させた状態で設けられていて、それぞれの雄ネジ部に螺合させたナット35を締め付けることにより、ガイドプレート11と把手部401bとを共締めした状態でガイドプレート11及び把手部401bに固定されている。本実施形態では、ガイドロッド31及び32のそれぞれの下端に設けられた雄ネジ部と、これらの雄ネジ部に螺合されたナット35とが、ガイドロッド31及び32をガイドプレート11に締結する手段と、ガイドプレート11を船外機本体に締結する手段とを兼ねている。
【0063】
また他のガイドロッド33は、その下端の雄ネジ部を、ガイドプレートの主板部11aの第2の板状部11a2に形成された孔を貫通させた状態で設けられていて、ガイドプレートの主板部11aの第2の板状部11a2を貫通したガイドロッド33の雄ネジ部にナット36を螺合させて締め付けることにより、ガイドロッド33の下端がガイドプレート11に固定されている。
【0064】
ガイドロッド31〜33のそれぞれのガイドプレート11より上方に位置する部分は、それぞれの軸線方向に沿って均一な外径を有するガイド軸部S1と、ガイド軸部S1の下端よりも下方の位置にガイド軸部の外径よりも小さい外径を持って形成された最小径部S2と、該最小径部と前記ガイド軸部の下端との間を接続するテーパ部S3(図4(B),図5(B),図6(B)参照)とを有する形状に形成されている。ガイドロッド31〜33のそれぞれの上端には、操作部材13が第1の位置にあるときに、その板状部13bに接して操作部材を第1の位置に位置決めする頭部31a〜33aが形成されている。
【0065】
操作部材13の板状部13bには、該板状部の先端部寄りの位置で該板状部を貫通した状態で設けられて3本のガイドロッド31〜33のそれぞれのガイド軸部をスライド自在に嵌合させる3つのガイド孔41a〜43aと、これらのガイド孔41a〜43aがそれぞれ設けられた位置よりも板状部13bの後端部側に寄った位置でガイドロッド31〜33のそれぞれのテーパ部S3と相補的な形状を持って板状部11bを貫通した3つのテーパ孔41b〜43bと、ガイドロッド31〜33のそれぞれの最小径部S2のみを嵌合させ得る幅寸法を持ってガイド孔41a〜43aと、これらのガイド孔41a〜43aにそれぞれ対応するテーパ孔41b〜43bとの間を伸びてガイド孔41a〜43aと対応するテーパ孔41b〜43bとの間をそれぞれ接続するガイド溝41c〜43cとが形成されている。
【0066】
操作部材13は、それぞれの板状部13bに設けられたガイド孔41a〜43aにガイドロッド31ないし33を嵌合させ、かつ操作部材本体に設けられた開口部13cのガイド部13c1の縁部をガイドプレート11の主板部の第3の板状部11a3の先端に設けられた切り欠き部11c,11cに嵌合させた状態で配置される。ガイドロッド31ないし33のそれぞれには、ガイドプレート11の主板部11aと操作部材13の板状部13bとの間に介在して、操作部材13をガイドプレート11から離れる側に付勢するコイルバネ51が嵌合されている。
【0067】
本実施形態では、図3(B)に示すように操作部材13の板状部13bをガイドロッド31〜33の頭部31a〜33aに突き当てた状態にしたときに、操作部材本体13aの基板部13a1がガイドプレート11の主板部の第3の板状部11a3の下面に接した状態になり、操作部材13をバネ51〜53の付勢力に抗して下方に変位させて図4(B)に示されているように、操作部材本体に設けられた開口部13cの上端をガイドプレート11の主板部の第3の板状部11a3の上面に突き当てた状態にしたときに、操作部材13の板状部13bに設けられたガイド溝41c〜43cがガイドロッド31〜33の中間部に設けられた最小径部S2に整合する位置(ガイドロッド31〜33の最小径部S2がガイド溝41c〜43cに嵌合し得る状態になる位置)に配置されるように、ガイドロッド31〜33の長さと、ガイドロッド31〜33の頭部31a〜33aとガイドロッド31〜33のそれぞれの最小径部S2との間の距離と、操作部材本体13aに設けられた開口部13cの寸法とが設定されている。
【0068】
操作部材13は、ガイドロッド31〜33がガイド孔41a〜43aに嵌合した状態にあるときに、図3(B)に示したようにその板状部13bがガイドロッド31〜33の上端の頭部31a〜33aに当たった状態になる位置(第1の位置)と、図4(B)に示すように操作部材13の板状部13bに設けられたガイド溝41c〜43cがガイドロッド31〜33のそれぞれの中間部に設けられた最小径部S2に整合した状態になる位置(第1の位置の下方に設定された第2の位置)との間を上下に伸びる第1の移動経路に沿って変位することができる。
【0069】
操作部材13が第2の位置に達した状態では、ガイドプレートの主板部の第3の板状部11a3が操作部材13の開口部13cの広幅部13c2に整合した状態になり、かつガイド溝41c〜43cにガイドロッド31〜33の最小径部S2を嵌合させ得る状態になるため、操作部材13をブラケット3側に押すことにより、該操作部材をブラケット側にスライド変位させることができるようになる。操作部材13は、上記第2の位置と、図6(A),(B)及び図7に示すように、該操作部材の板状部13bに設けられたテーパ孔41b〜43bにガイドロッド31〜33のテーパ部S3が整合した状態になる位置(第3の位置)との間を、第2の位置と第3の位置との間を横方向に伸びる第2の移動経路に沿って変位することができる。また、操作部材13が第3の位置に達した状態(図7に示した状態)で操作部材13から手を離すと、バネ51の付勢力により操作部材13の板状部13bが僅かに上方に変位して、板状部13bに設けられたテーパ孔41b〜43bにそれぞれガイドロッド31〜33のテーパ部S3が嵌合する。テーパ孔41b〜43bとガイドロッド31〜33のテーパ部S3との嵌合により、操作部材13が第3の位置に保持される。
【0070】
本実施形態では、ガイドプレート11に固定されたガイドロッド31〜33と、操作部材13の板状部に設けられたガイド孔41a〜43a,テーパ孔41b〜43b及びガイド溝41c〜43cと、操作部材13に設けられた開口部13cと、この開口部に嵌合したガイドプレート11の主板部の第3の板状部11a3とにより、操作部13をガイドするガイド機構12が構成されている。このガイド機構12は、操作部材13を機械的に拘束しつつガイドプレート11の上方に設定された第1の位置(図3(B)に示された位置)と該第1の位置の下方に設定された第2の位置(図4(B)に示された位置)との間を上下に伸びる第1の移動経路に沿った変位と、第2の位置と該第2の位置よりも船外機本体4側に寄った位置に設定された第3の位置(図6(B)に示された位置)との間を横方向に伸びる第2の移動経路に沿った変位とを操作部材13に許容するように構成されている。
【0071】
ストッパ機構
また前述のように、本実施形態では、船外機本体4の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲にある間、スイングレバー22の後端部に取り付けられた従動子22gがブラケット3の上端面に接した状態を保持してスイングレバー22の先端に設けられたストッパ22dを、ガイドプレートの上方に設定された退避位置(図5(B)に示す位置)に位置させた状態に保持する。このようにストッパ22dが退避位置にあるときに、ストッパ22dが、第2の位置にある操作部材13の板状部13bよりも下方に配置された状態になるように、上記退避位置が設定されているため、船外機本体4の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲にあるときには、操作部材13の第2の位置から第3の位置への変位が許容される。
【0072】
これに対し、船外機本体4の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲を超えたときには、従動子22gがブラケット3の上端面から外れて、スプリング23,23の付勢力によりスイングレバー22を図3(B)において反時計方向に回動させることにより、スイングレバー22の先端に設けられたストッパ22dを作用位置に変位させる。このように、ストッパ22dが作用位置にあるときには、図6(B)に示すように、第2の位置にある操作部材13の板状部13bの先端の前方にストッパ22dが配置された状態になるため、操作部材13の第2の位置から第3の位置への変位が禁止される。
【0073】
本実施形態では、後端部を船外機本体4側に向け、先端部を操作部材13側に向けた状態で配置されてガイドロッド31〜33よりも船外機本体4側に寄った位置で船外機本体のチルト軸5と平行な方向に伸びる支持軸20を介してガイドプレート11に回動自在に支持されたスイングレバー22と、スイングレバー22の先端部を下方に変位させる方向にスイングレバー22を付勢するバネ23,23と、スイングレバー22の後端部に固定されていて、ブラケット3の外面をカム面として該カム面と協働することによりスイングレバー22の先端部をガイドプレート11の上方に設定された退避位置と該退避位置よりも更に上方に設定された作用位置との間で変位させるように、スイングレバー22を船外機本体の操舵運動に連動して揺動させる従動子22gと、スイングレバー22の先端部に設けられて、第1の位置から第2の位置まで移動した操作部材13の板状部13bの先端に接して操作部材13の第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパ22dとにより、船外機本体の直進方向に対する傾斜角(操舵角)が設定された範囲にあるときに操作部材の第2の位置から第3の位置への変位を許容し、船外機本体の直進方向に対する傾斜角(操舵角)が設定された範囲を超えているときに、操作部材の第2の位置から第3の位置への変位を禁止するストッパ機構が構成されている。
【0074】
ロック部材とロック部材係合部との関係
操作部材13の第2の位置から第3の位置への変位が許容されているときに、第2の位置まで押し下げた操作部材13をブラケット3側に押すと、操作部材13がブラケット寄りに設定された第3の位置に向けて変位し、操作部材13の下端に固定されたロック部材13Aが操作部材13と共にブラケット3側に変位する。本実施形態では、ロック部材13Aの第1の部分13A1の先端部の幅寸法W2(図3(A)参照)が、スイベルブラケット301に設けられた開口部302bの幅寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。またスイベルブラケット302の開口部302bは、その幅方向の中心が、操舵軸の中心軸線O−Oと船外機本体の下部に設けられたプロペラ軸(図示せず。)の中心軸線とを含む垂直面上に位置するように設けられ、ロック部材13Aは、その第1の部分13A1の先端部の幅方向の中心が上記垂直面上に位置するように設けられている。従って、ロック部材13Aの先端部は、船外機本体4が直進方向に向いているときにのみ、スイベルブラケット302の開口部302b内に受入れられる。スイベルブラケット302に設けられた開口部302bにより、ロック部材13Aの先端部と係合して、該ロック部材をブラケット3に対して固定するロック部材係合部が構成されている。
【0075】
上記ガイドプレート11と、ガイド機構12と、操作部材13及びロック部材13Aと、スイングレバー22と、スイベルブラケット302に設けられた開口部302b(ロック部材係合部)とにより操舵ロック装置10が構成されている。
【0076】
操舵ロック装置の動作
上記操舵ロック装置10の操作の仕方及び動作は下記の通りである。
操舵のロックを解除している状態では、図3に示されているように、操作部材13が第1の位置にあり、ロック部材13Aの先端はスイベルブラケット302の開口部302bから離脱した状態にある。このとき、操作部材13に設けられた開口部13c内に先端部が嵌合された、ガイドプレート11の主板部11aの第3の板状部11a3は、開口部13cの下端に接した状態(図3(B)参照)にある。この状態では、船外機本体4を操舵軸の回りに回動させることができるため、船の操舵を支障なく行わせることができる。
【0077】
船外機がヨットに補助推進装置として取り付けられる場合、ヨットが洋上に出た後に船外機の操舵を直進状態にロックする必要がある。船外機の操舵をロックする際には、先ず操作部材13の頭部13aを手で下方に押して、操作部材13を第2の位置まで押し下げる。このとき、船外機本体の直進方向に対する傾斜角が設定角度以下であると、図4(B)に示すように、ストッパ22dが操作部材13の板状部13bの下方に位置した状態にあるため、ストッパ22dは、操作部材13の第2の位置から第3の位置への変位を妨げることがない。この状態で船外機本体を直進方向に向けた状態で操作部材13を第2の位置から第3の位置に向けて変位させて、ロック部材13Aの先端部をスイベルブラケット302の開口部302b内に挿入することにより船外機の操舵をロックする。操作部材13を第3の位置まで変位させた後、操作部材13から手を離すと、バネ51の付勢力により操作部材13の板状部13bが僅かに上方に変位して、図5(B)に示したように操作部材の板状部13bに設けられたテーパ孔41b〜43bがガイドロッド31〜33のテーパ部S3に嵌合した状態になるため、操作部材13に外力が働いて、操舵のロックが外れるおそれはない。
【0078】
船外機の操舵のロックを解除する際には、第3の位置にあって図5(B)の状態にある操作部材13の頭部を下方に押して、テーパ孔41b〜43bとガイドロッド31〜33のテーパ部S3との嵌合を解除することにより、操作部材13の第2の位置側への変位を可能にする。その後、操作部材13を第2の位置まで変位させて、ガイドロッド31〜33のガイド軸部S1をガイド孔41a〜43aに嵌合させ得る状態にする。この操作の過程でロック部材13Aの先端がスイベルブラケット302の開口部302b(ロック部材係合部)から離脱して船外機のロックが解除される。操作部材13を第2の位置まで戻した後、バネ51の付勢力により操作部材13を図3(B)に示した第1の位置に復帰させる。
【0079】
船外機本体4の直進方向に対する傾斜角が設定角度を超えているときには、図6(B)に示すように、ストッパ22dが作用位置にあって、第2の位置まで押し下げられた操作部材13の板状部13bの先端の前方にストッパ22dが配置された状態にあるため、操作部材13を第2の位置から第3の位置に向けて変位させることができない。船外機の操舵角が大きい状態でも操舵をロックする操作を行うことができるようになっていると、ハンドルを大きく切った状態で操舵をロックする操作が行われたときに、ロック部材13Aの先端がスイベルブラケット302と干渉して、適切な操舵を行うことができなくなるおそれがある。これに対し、上記の実施形態のように、操舵角が大きいときに操舵をロックする操作を行うことができないようにしておくと、このような不具合が生じるのを防ぐことができる。またハンドルを大きく切った状態で操舵をロックする操作が行われたときに,ロック部材13Aの先端がロック部材係合部302bから外れた位置でスイベルブラケットに接触することにより、スイベルブラケット302の表面に傷がつく等のトラブルが生じるのを防ぐこともできる。
【0080】
他の実施形態1
上記の実施形態では、操作部材の第1の位置を第2の位置よりも上方に設定しているが、第1の位置は、ガイドプレートに対して一定の位置関係を有する位置に設定されればよく、第1の位置を第2の位置の下方に設定するようしても良い。また上記の実施形態では、第1の位置及び第2の位置をガイドプレートの上方に設定しているが、第1の位置及び第2の位置をガイドプレートの下方に設定するようにしても良い。
【0081】
操作部材の第1の位置を第2の位置の下方に設定した場合には、操作部材を第1の位置から第2の位置に引っ張り上げる操作と、操作部材を第2の位置から第3の位置へ押し進める操作との2アクションの操作により操舵をロックし、操作部材を第3の位置から第2の位置に戻す操作と、第2の位置から第1の位置に下降させる操作との2アクションの操作により、操舵のロックを解除することになる。
【0082】
他の実施形態2
上記の実施形態では、操舵角が設定角度以下のときにのみ操舵をロックするための操作を可能にするために、船外機本体4の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲にあるときに操作部材の第1の移動経路に沿った移動及び第2の移動経路に沿った移動を許容し、船外機本体の直進方向に対する傾斜角が設定された範囲を超えているときには操作部材に係合して該操作部材の少なくとも第2の移動経路に沿った移動を阻止するストッパ機構を設けているが、このストッパ機構は省略することもできる。
【0083】
他の実施形態3
上記の実施形態では、スイベルブラケット302に設けた開口部302bをロック部材係合部として、このロック部材係合部にロック部材13Aの先端を係合させることにより、船外機の操舵をロックするようにしたが、ロック部材係合部とロック部材13Aの先端部とは、ブラケット3とロック部材との間に相対的な変位が生じるのを阻止するように、互いに係合し合う(相互に何らかの係わり合い持つ)ようになっていればよく、両者の係合構造は上記の実施形態で示したものに限定されない。例えば、ロック部材13Aの先端に凹部又は溝を設けて、この凹部又は溝にスイベルブラケット側に設けた突起を嵌合させることにより、操舵をロックする構造にしてもよい。
【0084】
他の実施形態4
上記の実施形態では、ガイドロッドを3本設けているが、ガイドロッドは複数本設けられていればよく、本発明は、ガイドロッドを3本設ける場合に限定されない。
【0085】
他の実施形態5
また操作部材をガイドするガイド機構は、操作部材を機械的に拘束しつつ、ガイドプレートに対して一定の位置関係を有する位置に設定された第1の位置と該第1の位置の下方又は上方に設定された第2の位置との間を上下に伸びる第1の移動経路に沿った変位と、第2の位置と該第2の位置よりも船外機本体側に寄った位置に設定された第3の位置との間を第1の移動経路が伸びる方向とは異なる方向に沿って伸びる第2の移動経路に沿った変位とを操作部材に許容するように構成されていればよく、その構造は上記の実施形態で示したものに限定されない。
【0086】
例えば、上記の実施形態において、ガイドプレートの主板部の幅方向の中央に位置する1本のガイドロッド33に対してのみガイド孔43aとテーパ孔43bとこれらの孔の間を接続するガイド溝43cとを操作部材の板状部13bに設けるとともに、これらに嵌合するガイド軸部S1、最小径部S2及びテーパ部S3をガイドロッド33に設け、他のガイドロッド31及び32としては、それぞれの全長に亘って均一な外径を有するものを用いて、両ガイドロッド31及び32を、第2の位置から第3の位置まで均一な幅を持って伸びる溝(操作部材の板状部13bに設けた溝)に嵌合させる構造にしてもよい。
【0087】
またガイドプレートの主板部の幅方向の両端に配置された2本のガイドロッド31及び32と、これらのガイドロッドを嵌合させるために操作部材の板状部に設けるガイド孔、テーパ孔及びガイド溝を、上記実施形態でも用いたものと同様に構成し、ガイドプレートの幅方向の中央に配置されるガイドロッド33としては、その全長に亘って均一な外径を有するロッドを用いて、このロッド33を操作部材の板状部13bに設けたガイド溝に嵌合させる構造としてもよい。
【0088】
他の実施形態6
上記の実施形態では、ガイドプレート11をブラケット3にボルト止めするようにしたが、ガイドプレート11をブラケット3に固定する方法な任意であり、上記実施形態で示したものに限定されない。例えば船外機本体に設けられている把手部401bにボルトを通すための孔が設けられていない場合には、把手部401bの端部に嵌合した状態で該把手部に対して固定されるクランプ具をガイドプレート11に取り付けて、このクランプ具を介してガイドプレートを船外機本体に固定することにより、操舵ロック装置を船外機本体に取り付けるように構成することもできる。
【0089】
他の実施形態7
上記の実施形態では、船外機本体を直進方向に向けた状態でのみ操舵をロックし得るようにしたが、船外機本体の回動方向に並ぶ複数のロック部材固定部をブラケット側に設けて、ロック部材の先端をこれらのロック部材固定部の中から選択した一つのロック部材固定部に係合させることにより、船外機本体を複数の方向に向けた状態で操舵をロックし得るように構成することもできる。この場合ストッパ機構は省略される。
【0090】
他の実施形態8
上記の実施形態では、操舵ロック装置10が船外機1に取り付けられた状態で示されているが、本発明に係る操舵ロック装置10は、既設の船外機に取り付けるために単体として提供することもできる。その場合、船外機の機種毎にブラケットに適合する(取付が可能な)ガイドプレートをオプションとして用意しておいたり、ガイドプレートを取り付ける個所(上記の実施形態ではブラケットの把手部)とガイドプレートとの間に介在させるアダプタを用意しておいたり、ロック部材を操作部材に着脱可能な状態で固定する構造にして、種々の型式の船外機に適合するロック部材を用意しておいたりすることにより、種々の型式の船外機に適応する操舵ロック装置を、大部分の部品を共用して提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 船外機
2 船体
3 ブラケット
301 クランプブラケット
302 スイベルブラケット
302a スイベルブラケットの軸支持部
302b スイベルブラケットに設けられた開口部(ロック部材係合部)
4 船外機本体
401 ケーシング
401a アッパーケーシング
402 ボトムカウル
403 トップカウル
5 チルト軸
7 操作ハンドル
10 操舵ロック装置
11 ガイドプレート
11a ガイドプレートの主板部
11a1 主板部の第1の板状部
11a2 主板部の第2の板状部
11a3 主板部の第3の板状部
11b 傾斜板部
11b1 切り欠き部
11b2 脚部
11b3 軸支持部
11c 切り欠き部
11d 窓部
12 ガイド機構
13 操作部材
13a 操作部材本体
13a1 操作部材本体の基板部
13a2 起立壁部
13a3 頭部
13b 操作部材の板状部
13c 開口部
13c1 ガイド部
13c2 広幅部
13A ロック部材
13A1 ロック部材の第1の部分
13A2 ロック部材の第2の部分
13A3 ロック部材の第3の部分
13A4 ロック部材の第4の部分
20 支持軸
21 ナット
22 スイングレバー
22a スイングレバーの第1の部分
22b スイングレバーの第2の部分
22c スイングレバーの第3の部分
22d ストッパ
22e 補強用リブ
31〜33 ガイドロッド
41a〜43a ガイド孔
41b〜43b テーパ孔
41c〜43c ガイド溝
S1 ガイドロッドのガイド軸部
S2 ガイドロッドの最小径部
S3 ガイドロッドのテーパ部
51 コイルバネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7