特許第6453648号(P6453648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6453648成長ホルモン変異体および成長ホルモン受容体を標的化するオリゴヌクレオチドを含む併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453648
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】成長ホルモン変異体および成長ホルモン受容体を標的化するオリゴヌクレオチドを含む併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/27 20060101AFI20190107BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20190107BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20190107BHJP
【FI】
   A61K38/27ZNA
   A61K31/7088
   A61P43/00 105
   A61P43/00 121
   A61P35/00
   A61P5/00
   A61P27/02
   A61P3/10
   A61P13/12
   !C12N15/113 140Z
【請求項の数】21
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2014-555044(P2014-555044)
(86)(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公表番号】特表2015-506951(P2015-506951A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】AU2013000095
(87)【国際公開番号】WO2013113074
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】61/594,532
(32)【優先日】2012年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505303978
【氏名又は名称】アンチセンス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・タチャス
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−525106(JP,A)
【文献】 米国特許第05534617(US,A)
【文献】 特表2009−539803(JP,A)
【文献】 特表2007−524373(JP,A)
【文献】 特表平11−512298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7088
A61K 38/16−38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長ホルモン(GH)拮抗活性を有し、配列番号2に示される天然型GHアミノ酸配列と比較して、H18D、H21N、G120K、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、I179Tのアミノ酸置換を含む、有効量のヒトGH変異体、および、
少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基を含み、成長ホルモン受容体(GHR)の発現を阻害するように、ヒトGHRをコードする核酸を標的化する、15〜30個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチド
を含む、
インスリン様成長因子I(IGF−I)レベルの上昇によって引き起こされる、および/またはそれに関連付けられる疾患の治療または予防のための方法において使用するための組成物であって、
前記疾患が、先端巨大症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、または前立腺、骨髄腫、肺、乳、もしくは結腸癌等のIGF−I陽性癌であり、
前記方法が、それを必要とする対象に、前記オリゴヌクレオチドと組み合わせて前記成長ホルモン変異体を投与する工程を含み、
それにより前記対象における前記IGF−Iのレベルを低下させる、組成物。
【請求項2】
成長ホルモン(GH)拮抗活性を有し、配列番号2に示される天然型GHアミノ酸配列と比較して、H18D、H21N、G120K、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、I179Tのアミノ酸置換を含む、有効量のヒトGH変異体、および、
少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基を含み、成長ホルモン受容体(GHR)の発現を阻害するように、ヒトGHRをコードする核酸を標的化する、15〜30個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチド
を含む、
対象におけるインスリン様成長因子I(IGF−I)のレベルを低下させる方法において使用するための組成物であって、
前記方法が、それを必要とする対象に、前記オリゴヌクレオチドと組み合わせて前記成長ホルモン変異体を投与する工程を含み、
それにより前記対象における前記IGF−Iのレベルを低下させる、組成物。
【請求項3】
前記核酸が、配列番号4または配列番号5で示される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドが、DNAオリゴヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが、RNAオリゴヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドが、短干渉RNA(siRNA)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドが、キメラオリゴヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、60、61、62、63、64、65、66、68、69、70、71、72、73、74、75、76、78、79、80、または81の少なくとも8個の連続した核酸塩基部分を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、60、61、62、63、64、65、66、68、69、70、71、72、73、74、75、76、78、79、80、または81の核酸塩基配列から成る、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号6の核酸塩基配列から成る、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドが、ヒトGHRをコードする領域と特異的にハイブリッド形成し、前記領域が、翻訳開始コドン、終止コドン、コード領域、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、イントロン:エクソン接合部、またはエクソン:イントロン接合部を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記領域が、配列番号84〜154から選択される配列の少なくとも8個の連続した核酸塩基部分を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号4のヌクレオチド260〜339、332〜351、および344〜423から成る群から選択される配列番号4の領域に相補性である少なくとも8個の連続した核酸塩基部分を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが、ヒトGHRおよび/または成長ホルモン結合タンパク質(GHBP)の発現を少なくとも15%阻害する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの2′−O−メトキシエチル糖部分を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの5−メチルシトシンを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記オリゴヌクレオチドが20個の結合されたヌクレオシドから成り、前記オリゴヌクレオチドが配列番号6の核酸塩基から成り、前記オリゴヌクレオチドが、10デオキシヌクレオチドの領域の5’末端および3’末端の両方で5つの2′−O−(2−メトキシエチル)ヌクレオチドと隣接した前記10デオキシヌクレオチドの領域から成り、前記オリゴヌクレオチド中の各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合であり、前記オリゴヌクレオチド中の各シトシンが、5−メチルシトシンである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
インスリン様成長因子I(IGF−I)のレベルの上昇によって引き起こされる、および/またはそれに関連付けられる疾患の治療または予防のための薬物の製造における、成長ホルモン(GH)拮抗活性を有し、配列番号2に示される天然型GHアミノ酸配列と比較して、H18D、H21N、G120K、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、I179Tのアミノ酸置換を含む、有効量の成長ホルモン(GH)変異体、ならびに、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基を含み、ヒト成長ホルモン受容体(GHR)をコードする核酸を標的化する15〜30個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチドの使用であって、
前記疾患が、先端巨大症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、または前立腺、骨髄腫、肺、乳、もしくは結腸癌等のIGF−I陽性癌である、使用。
【請求項20】
対象におけるインスリン様成長因子I(IGF−I)のレベルを低下するための薬物の製造における、成長ホルモン(GH)拮抗活性を有し、配列番号2に示される天然型GHアミノ酸配列と比較して、H18D、H21N、G120K、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、I179Tのアミノ酸置換を含む、有効量の成長ホルモン(GH)変異体、ならびに、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基を含み、ヒト成長ホルモン受容体(GHR)をコードする核酸を標的化する15〜30個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項21】
前記ヒトGHRが請求項3に記載の特徴のうちのいずれか1つをさらに特徴とし、ならびに/または前記オリゴヌクレオチドが請求項4〜18に記載の特徴のうちのいずれか1つをさらに特徴とする、請求項19または20に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インスリン様成長因子I(IGF−I)のレベルの上昇によって引き起こされる、および/またはそれに関連付けられる疾患の治療または予防のための方法に関し、それは成長ホルモン受容体(GHR)を標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチドと組み合わせた拮抗活性を有する成長ホルモン(GH)変異体の投与に依存する。
【背景技術】
【0002】
下垂体によって放出される成長ホルモン(GH)は、身体およびその臓器の成長を制御するホルモンのカスケードのメンバーである。血流へのGHの分泌の後に、多くの細胞および臓器タイプ上での成長ホルモン受容体(GHR)への結合が続く。成長ホルモンシグナル伝達は、この相互作用によって伝えられる。成長ホルモンシグナル伝達は、肝臓、脂肪組織、腎臓、および他の臓器中で生成され、血流中に分泌される別のホルモンである、インスリン様成長因子I(IGF−I)の生成をもたらす。血清IGF−Iの約75%が、GH刺激作用に応答して肝臓で生成される。多くの障害は、血漿および/または組織中の上昇したGHレベルおよび/または上昇したIGF−Iレベルによって引き起こされるか、および/またはそれらに関連付けられ、先端巨大症、巨人症、網膜症、黄斑変性症、腎症、糖尿病、および癌が含まれる。これらおよび他の障害におけるGHおよびIGF−Iの役割は、よく知られている。多くのGH効果の媒介におけるIGF−Iの役割がよく知られており、この相互関係は、GH/IGF−I軸と称される。正常なフィードバックループにおいて、IGF−Iはまた、減少させるべき下垂体によるGHの生成を引き起こす。例えば、より効果的に、安全に、好都合に、および/または削減された費用で、対象におけるIGF−Iレベルを低下させる治療に対する必要性が存在する。
【0003】
拮抗活性を有するGH変異体であるソマバートは、患者における血清IGF−Iレベルを低下させるその能力に対して先端巨大症の治療において承認された。先端巨大症の治療に対する現在の慣習の概説に関しては、Guistina et al.,2011を参照されたい。簡潔に言うと、先端巨大症では、腫瘍を減量させ、かつ下垂体腫瘍のGH分泌を減少させるための外科手術が治療において最初に使用され、血清におけるIGF−Iの生成を減少させる。血清IGF−Iを減少させるため、ならびにいくつかの場合においては、GH放出をまた低下させるための薬物治療も使用される。すべての治療は、薬物単独療法か、またはその組み合わせが2つの異なる生物学的標的を対象とする併用療法を使用する。第一選択薬物治療はソマトスタチン(SST)アゴニストを用いるものであり、この治療は、最初は低用量で開始され、GHを低下させ、かつ患者の血清IGF−Iを正常化する用量に徐々に増大される。SSTアゴニスト治療が失敗した場合、ドーパミンアゴニストがSSTアゴニストと組み合わせて使用されるか、またはソマバートがSSTアゴニストと組み合わせて使用される、あるいは単独療法としてソマバートが使用される。ソマバートの用量は典型的に、初日に40mgの負荷量および10mgの1日用量で開始され、この1日用量は、血清IGF−Iの正常化まで最大30mgの認可された1日用量に徐々に増大される。ソマバートの認可された最大の1日用量には不足があり、臨床医は認可用量を超えて増量した。ソマバートは、しかしながら、法外に高価であり、不便な毎日(1日に1回または2回)の注射を必要とし、凍結乾燥された粉末であり、再構成を必要とし、注射部位反応および肝臓酵素の増大を引き起こす安全性の問題を有し、さらに望ましくないGHの増大を生み出す。このため、臨床医は典型的に、上述のものとは異なる併用療法において、ソマバートを使用しようとはしない。臨床医は、SSTを使用する第一選択療法が失敗した患者における、またはソマバート単独療法もしくはSSTとの組み合わせが失敗した患者における、新しいより効果的な単独療法を探し求めている。例えば、ソマバートを使用する併用療法は、異なる生物学的標的を対象とする薬物と、ならびにSSTアゴニストが腫瘍の大きさを減少させる可能性を有するため、典型的にSSTアゴニストとのみ考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ここで、拮抗活性を有する成長ホルモン(GH)変異体およびGHRを標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチドが、対象におけるインスリン様成長因子I(IGF−I)レベルを低下させるように相乗的に作用するという驚くべき発見をした。言い換えると、GHRへのGH変異体およびオリゴヌクレオチドの併用投与は、相加効果を上回って発現する。これは驚くべきことであり、具体的には、同じ標的への薬物を使用することにより予期される相乗作用がないと考えられ、標的への薬物の用量を増大し得るとも言える。したがって、本開示は、IGF−Iのレベルの上昇によって引き起こされる、および/またはそれに関連付けられる疾患の治療または予防のための方法を提供し、その方法は、それを必要とする対象に、GHRの発現を阻害するように、GHRをコードする核酸を標的化する8〜80個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチドと組み合わせてGH拮抗活性を有するGH変異体を投与することを含み、それにより対象におけるIGF−Iのレベルを低下させる。1つの実施形態において、血清/血漿IGF−Iのレベルが低下される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態において、本方法は、その対象のGHRおよび/またはIGF−Iレベル、例えば血清/血漿IGF−Iレベルの低下を必要とする対象を識別することをさらに含む。
【0006】
1つの実施形態において、疾患は、先端巨大症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、または前立腺、骨髄腫、肺、乳、もしくは結腸癌等のIGF−I陽性ならびに/またはIGF−Iおよび/もしくはGH応答性癌である。
【0007】
1つの実施形態において、GH変異体は、アミノ酸Gly120が欠失しているか、またはあるアミノ酸、例えば、Arg、Trp、Pro、Lys、またはLeuで置換されているヒトGH変異体である。1つの実施形態において、Gly120はLysで置換される。
【0008】
さらなる実施形態において、ヒトGH変異体は、以下の組のアミノ酸置換を含む:H18D、H21N、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、I179T。
【0009】
1つの実施形態において、核酸は、ヒトGHRをコードする。核酸は、配列番号4または配列番号5に示されるヌクレオチド配列を有し得る。
【0010】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、12〜50個の核酸塩基の長さである。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、15〜30個の核酸塩基の長さである。
【0011】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、DNAオリゴヌクレオチドである。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、RNAオリゴヌクレオチド、例えば短干渉RNA(siRNA)である。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、キメラオリゴヌクレオチドである。
【0012】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、GHRをコードする核酸と少なくとも70%の相補性を有する。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、GHRをコードする核酸と少なくとも80%の相補性を有する。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、GHRをコードする核酸と少なくとも90%の相補性を有する。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、GHRをコードする核酸と少なくとも95%の相補性、例えば、96%、97%、98%、または99%の相補性を有する。
【0013】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、60、61、62、63、64、65、66、68、69、70、71、72、73、74、75、76、78、79、80、または81の少なくとも8個の連続した核酸塩基部分を含む。
【0014】
別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、24、25、26、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、60、61、62、63、64、65、66、68、69、70、71、72、73、74、75、76、78、79、80、または81の核酸塩基配列から成る。
【0015】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号6の核酸塩基配列から成る。
【0016】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、GHRをコードする領域と特異的にハイブリッド形成し、その領域は、翻訳開始コドン、終止コドン、コード領域、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、イントロン:エクソン接合部、またはエクソン:イントロン接合部を含む。1つの実施形態において、その領域は、配列番号84〜154から選択される配列の少なくとも8個の連続した核酸塩基部分を含む。
【0017】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列番号4のヌクレオチド260〜339、332〜351、および344〜423から成る群から選択される配列番号4の領域に相補性である少なくとも8個の連続した核酸塩基部分を含む。
【0018】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、GHRおよび/または成長ホルモン結合タンパク質(GHBP)の発現を少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45%阻害する。
【0019】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合、糖部分、または核酸塩基を含む。オリゴヌクレオチドは、例えば、少なくとも1つの2′−O−メトキシエチル糖部分および/または少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合および/または少なくとも1つの5−メチルシトシンを含み得る。
【0020】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、20個の結合されたヌクレオシドから成り、オリゴヌクレオチドは配列番号6の核酸塩基から成り、オリゴヌクレオチドは、10デオキシヌクレオチドの領域の5’末端および3’末端の両方で5つの2′−O−(2−メトキシエチル)ヌクレオチドと隣接した10デオキシヌクレオチドの領域から成り、オリゴヌクレオチド中の各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合であり、オリゴヌクレオチド中の各シトシンは5−メチルシトシンである。
【0021】
本開示はまた、対象におけるIGF−Iのレベルを低下させる方法も提供し、本方法は、GHRの発現を阻害するように、GHRをコードする核酸を標的化する8〜80個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチドと組み合わせてGH拮抗活性を有するGH変異体を投与することを含み、それにより対象におけるIGF−Iのレベルを低下させる。1つの実施形態において、血清/血漿IGF−Iのレベルが低下される。
【0022】
1つの実施形態において、本方法は、その対象のGHRおよび/またはIGF−Iレベル、例えば血清/血漿IGF−Iレベルの低下を必要とする対象を識別することをさらに含む。
【0023】
GH変異体、GHR、およびオリゴヌクレオチドは、上記特徴のうちのいずれか1つをさらに特徴とし得る。
【0024】
本開示はまた、IGF−Iのレベルの上昇によって引き起こされる、および/またはそれに関連付けられる疾患の治療または予防のための薬物の製造における、GH変異体およびGHRをコードする核酸を標的化する8〜80個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチドの使用を提供する。1つの実施形態において、血清/血漿IGF−Iのレベルが低下される。
【0025】
1つの実施形態において、疾患は、先端巨大症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、または前立腺、骨髄腫、肺、乳、もしくは結腸癌等のIGF−I陽性癌である。
【0026】
GH変異体、GHR、およびオリゴヌクレオチドは、上記特徴のうちのいずれか1つをさらに特徴とし得る。
【0027】
本開示はまた、対象におけるIGF−Iのレベルを低下させるための薬物の製造における、GH変異体およびGHRをコードする核酸を標的化する8〜80個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチドの使用も提供する。
【0028】
GH変異体、GHR、およびオリゴヌクレオチドは、上記特徴のうちのいずれか1つをさらに特徴とし得る。
【0029】
本開示はまた、IGF−Iのレベルの上昇によって引き起こされる、および/またはそれに関連付けられる疾患の治療または予防のための、GH変異体およびGHRをコードする核酸を標的化する8〜80個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチドを含む組成物も提供する。
【0030】
GH変異体、GHR、およびオリゴヌクレオチドは、上記特徴のうちのいずれか1つをさらに特徴とし得る。
【0031】
本開示はまた、対象におけるIGF−Iのレベルを低下させるためのGH変異体およびGHRをコードする核酸を標的化する8〜80個の核酸塩基の長さのオリゴヌクレオチドを含む組成物も提供する。
【0032】
GH変異体、GHR、およびオリゴヌクレオチドは、上記特徴のうちのいずれか1つをさらに特徴とし得る。
【0033】
別途具体的定めのない限り、本明細書におけるいずれの実施形態も、任意の他の実施形態に対して準用するように受け取られるものとする。
【0034】
本発明は、これ以降、次の非限定的な実施例を用いて、および添付の図を参照して記載される。
【0035】
配列表の要点
配列番号1 野生型ヒト成長ホルモン(hGH)ヌクレオチド配列
配列番号2 野生型hGHポリペプチド配列
配列番号3 ソマバートポリペプチド配列
配列番号4 ヒト成長ホルモン受容体(hGHR)cDNA配列
配列番号5 hGHR遺伝子配列
配列番号6〜83 hGHRを標的化するオリゴヌクレオチド
配列番号84〜154 hGHRの標的配列
【発明を実施するための形態】
【0036】
一般的な技法および選択された定義
別途具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、(例えば、アンチセンス技術、組み換え技術、細胞培養、分子遺伝子学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生物化学の)当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有しなければならない。
【0037】
別途指示されない限り、本開示において利用される組み換えタンパク質、細胞培養、および免疫学的技法は、当業者によく知られた標準手順である。そのような技法は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1−4,IRL Press(1995および1996),F.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience(1988、現在までのすべての改訂を含む),E.Harlow and D.Lane(editors),Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory(1988),and J.E.Coligan et al.(editors),Current Protocols in Immunology,John Wiley and Sons(現在までのすべての改訂を含む)等のソースにおいて、文献全体にわたって記載および説明される。
【0038】
「および/または」という用語、例えば、「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味するように理解されるものとし、両方の意味またはいずれかの意味に対する明示的な支持を提供するように受け取られるものとする。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「約」または「およそ」は、概して、所与の値または範囲の20%以内、より好ましくは10%以内、およびさらにより好ましくは5%以内を意味するものとする。
【0040】
本明細書全体にわたって、「含む(comprise)」という語、または「comprises」もしくは「comprising」等の変型は、指定の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群の包含を暗示するが、任意の他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群の除外を意味しないことが理解されるであろう。
【0041】
本明細書全体を通じて、別途具体的定めのない限り、または文脈上そうでないとする要求がない限り、単一のステップ、主題の組成物、ステップの群または組成物の群への言及は、1つおよび複数の(すなわち1つ以上の)それらのステップ、組成物、ステップの群または組成物の群を包含するように受け取られるものとする。
【0042】
IGF−I陽性疾患の治療および予防
本発明は、インスリン様成長因子I(IGF−I)のレベルの上昇によって引き起こされる、および/またはそれに関連付けられる疾患、障害、または状態の予防および/または治療に有用な方法を提供する。本明細書に使用される場合、「治療」という用語は、疾患、障害、または状態の変化または改善をもたらすための薬学的組成物を投与することを指す。本明細書に使用される場合、「予防」という用語は、疾患、障害、または状態の少なくとも1つの症状の発達を止めるか、または妨げるための薬学的組成物を投与することを指す。治療に対して標的とされる対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。本明細書に使用される場合、「インスリン様成長因子I(IGF−I)のレベルの上昇」とは、年齢および性別で調整される正常範囲を超えるレベル、またはその範囲内、例えば、正常範囲の上限を含む。
【0043】
方法は、対象に対するGH拮抗活性を有する成長ホルモン(GH)変異体および成長ホルモン受容体(GHR)を標的化するオリゴヌクレオチドの投与を含む。本「対象」は、任意の哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。理論に制限されるものではないが、オリゴヌクレオチドはその対象におけるGHR発現を阻害するように作用する一方、GH変異体はGHRへのGH結合を防ぐように作用し、それにより対象における(GHシグナル伝達に応答して生成される)IGF−Iのレベルを低下させる。インスリン様成長因子Iは、細胞の広範囲で強力な分裂促進効果を有する増殖に重要であり、アポトーシスを制御する細胞生存において重要な広範に分布するポリペプチドである。
【0044】
理論に制限されるものではないが、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNAレベルでGHR発現を阻害する一方、GH変異体は、フィードバック阻害によってGHR RNAを増加し得る。1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドはまた、成長ホルモン結合タンパク質(GHBP)発現を減少させるように作用する。GHBPは、(例えば、マウスおよびラットにおける)mRNA転写物の選択的mRNAスプライシング、または(例えば、ヒト、ウシ、およびブタにおける)GHRのタンパク分解性切断によって派生する、GH受容体の溶解性の細胞外部分である。
【0045】
1つの実施形態において、治療は、先端巨大症の1つ以上の症状の発生を低減させるか、または防ぐ、例えば、先端巨大症における上昇した血清IGF−Iレベルを正常レベルに低下させる、または軟部組織膨化、内臓の拡大、四肢同様の顎の過成長、手足の拡大、声が低音化、皮膚の肥厚化、不快な体臭、関節軟骨の問題、高リン酸血症、末梢神経障害、高血圧、糖尿病、心疾患、および癌を低減させる。
【0046】
別の実施形態において、治療は、網膜症の1つ以上の症状、例えば、新生血管形成の減少および/または目の浮腫、霧視、複視、もしくは乱視、または読字困難、視覚内の浮遊物もしくは斑点、視力損失または視野にわたる影もしくは覆い、目の痛み、圧力、もしくは持続性充血の発生を低下させるか、または防ぐ。
【0047】
別の実施形態において、治療は、糖尿病性腎症の1つ以上の症状、例えば、糸球体濾過、微量アルブミン尿、タンパク尿、腎傷害、下肢における膨化、悪心および嘔吐、不快感、疲労、頭痛、掻痒、頻繁な吃逆、意図しない重量減少、顔の膨化、体液蓄積による意図しない重量増加、ならびに高血圧の発生を低減させるか、または防ぐ。
【0048】
別の実施形態において、治療は、腫瘍または癌(前立腺、骨髄腫、肺、乳、もしくは結腸癌等)の大きさおよび/もしくは成長を低下させるか、ならびに/または腫瘍もしくは癌(前立腺癌等)の進行をアンドロゲン応答性/依存性からアンドロゲン非応答性/非依存性に遅らせる。腫瘍もしくは癌の大きさおよび/または成長は、例えば、腫瘍/癌細胞の増殖速度を低下させること、腫瘍/癌細胞のアポトーシス速度を上昇させること、腫瘍/癌細胞シグナル伝達を修飾すること、化学感作(chemosensitization)、ならびに/または腫瘍/癌細胞の接着、固定、転移、および/もしくは細胞、例えば前立腺細胞の形質転換を阻害することによって、低下され得る。治療は、年齢および性別で調整されるにように、例えば、正常範囲の上限のIGF−Iレベルをより低いレベルに、および/または第1四分位数から第2四分位数、第3もしくは第4四分位数に、および/または第2四分位数から第3もしくは第4四分位数に低下させ得る。治療は、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびGH変異体が組織中で作用し得るように、IGF−Iの内分泌、自己分泌、またはパラ分泌レベルを低下させ得る。
【0049】
成長ホルモン拮抗活性を有する成長ホルモン変異体
本開示の方法は、GH拮抗活性を有する成長ホルモン(GH)変異体の使用に依存する。1つの実施形態において、GH変異体は、ヒトおよびウシ成長ホルモン等の哺乳類成長ホルモンが挙げられるが、これらに限定されない脊椎動物GHに対する配列および/または二次構造における類似性を有するペプチドまたはタンパク質である。
【0050】
GHは、脳下垂体前葉の成長ホルモン分泌細胞によって合成および分泌される。GH遺伝子は、217−アミノ酸前駆体タンパク質をコードする5エクソンおよび4イントロンから成る。アミノ末端シグナルペプチドは、タンパク質分解によって取り除かれ、22kDaの分子質量の発達単鎖191−アミノ酸ポリペプチドを得る。ヒト(h)GHおよび他の哺乳類種からのGHの3次元構造は、X線結晶解析によって確立された(Ultsch et al.,1991;Ultsch et al.,1993;de Vos et al.,1992)。そのタンパク質は、逆平行のバンドルに一緒にまとめられる非らせん鎖の一続きによって一緒に結合される20〜30個のアミノ酸残基を有する4つのαへリックスから成る(Ultsch et al.,1994)。その4つのαヘリックスバンドルGHは、2つの同一でない結合表面を持つが、規則正しい配列中で類似の受容体結合部位に結合し、最初の結合部位が高親和性を持つ(部位1)ことが示されている(国際公開第92/21029号)。部位2結合は、2つのサイトカイン相同性モジュールの下において「二量体形成領域」に関与するさらなる受容体間の相互作用によって安定化される(Cunningham et al.,1991;de Vos et al.,1992;Chen et al.,1997)。
【0051】
1つの実施形態において、GH変異体は、脊椎動物GHの第3のαヘリックスと少なくとも約50%のアミノ酸配列相同性を有するαヘリックスを含む。野生型GHの他のαヘリックスは、これがGHアンタゴニスト活性の消失を伴わずにできる場合、取り除かれ得る。「アンタゴニスト」という用語の使用は、機能的意味におけるものであり、本開示を作用の特定の機序を有する化合物に制限するとは意図されない。好適なGH変異体は、米国第5,350,836号および米国第5,849,535号において記述される。
【0052】
変異体GH配列表記法は、GH変異体中の実際のアミノ酸置換を明らかにする。変異体において、置換は、(一文字コードにおける)野生型残基を示す一文字、野生型配列におけるアミノ酸位置を示す数、および置換されたアミノ酸残基を示す2つ目の文字によって示される。例えば、G120Kは、120位のグリシンがリジンで置換された変異を示す。複数の変異種が、コンマで分けられる一連の単一変異種で示される。
【0053】
1つの実施形態において、成長ホルモン変異体は、hGH変異体である。野生型hGHのDNA(配列番号1)およびアミノ酸(配列番号2)配列が報告されている(Goeddel et al.,1979;Gray et al.,1985)。
【0054】
1つの実施形態において、hGH変異体は、アミノ酸Gly120における変異を含む。Gly120は、欠失しているか、またはあるアミノ酸で置換され得る。1つの実施形態において、そのアミノ酸は、Arg、Trp、Pro、Lys、およびLeuから成る群から選択される。ある好ましい実施形態において、アミノ酸は、Lysである。この変異は、部位2結合を破壊する。この変異を含むhGH変異体は、hGHアンタゴニストとして作用する。
【0055】
さらなる実施形態において、hGH変異体は、以下の組のアミノ酸置換を含む:H18D、H21N、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、I179T。これらの置換は、部位1でのhGH受容体に対する結合親和性を上昇させる。この組のアミノ酸置換を含むhGH変異体は、部位2におけるhGHRへの結合を破壊するさらなる修飾がない場合は、hGHアゴニストとして作用する。
【0056】
1つの実施形態において、hGH変異体は、G120アミノ酸欠失または置換、およびアミノ酸置換H18D、H21N、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、I179Tを含む。1つの実施形態において、hGH変異体は、以下の組のアミノ酸置換を含む:H18D、H21N、G120K、R167N、K168A、D171S、K172R、E174S、I179T。1つの実施形態において、hGH変異体は、そこにいくつかのポリエチレングリコール(PEG)ポリマーが共有結合的に結合される191アミノ酸残基を有するタンパク質である、ソマバート(登録商標)(注射用ペグビソマント)(配列番号3)である(van der Lely et al.,2001)。
【0057】
変異導入
GHをコードするDNA配列は、1つ以上の選択されたコドンで変異される。変異は、GHをコードするDNAにおける1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、または挿入として定義され、GHの野生型配列と比較してGHのアミノ酸配列における変化をもたらす。好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸は、タンパク質の1つ以上の領域において任意の他のアミノ酸で置換される。
【0058】
部位特異性変異導入(Carter et al.,1986;Zoller et al.,1987)、カセット変異導入(Wells et al.,1985)、制限選択変異導入(Wells et al.,1986)、または他の既知の技術が、アミノ酸配列における変化をコードする変異体DNAを生成するために、GH DNA上で実践され得る。
【0059】
オリゴヌクレオチド媒介変異導入は、GHの置換、欠失、または挿入変異体の調製のための好ましい方法である。その技術は、Zoller et al.,1987によって記述されるように当該技術分野でよく知られている。簡潔に言うと、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドは、単鎖形態のGHの野生型DNA配列を含むDNA鋳型とハイブリッド形成される。ハイブリッド形成後、DNAポリメラーゼを使用してこの鋳型の完全な第2相補鎖を合成し、このため、オリゴヌクレオチドプライマーが組み込まれ、GH DNA中の選択された変化をコードする。
【0060】
概して、長さが少なくとも25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが使用される。より小さいオリゴヌクレオチドが用いられ得るが、最適なオリゴヌクレオチドは、変異(複数可)をコードしているヌクレオチド(複数可)の両側に、鋳型に完全に相補的である12〜15ヌクレオチドを有する。これにより、オリゴヌクレオチドが単鎖DNA鋳型分子に適切にハイブリッド形成することが確実になる。このオリゴヌクレオチドは、Crea et al.,1978で記述されるもの等の当該技術分野で既知の方法を用いて容易に合成される。
【0061】
このDNA鋳型は、バクテリオファージM13ベクター(市販のM13mp18およびM13mp19ベクターが好適である)から導かれるベクター、またはVieiraおよびMessing、1987が記載しているような単鎖ファージ複製起点を含有するベクターによってのみ生成されることができる。このため、変異されるべきDNAは、単鎖の鋳型を生成するために、これらベクターのうちの1つに挿入されなければならない。単鎖の鋳型の生成は、上記のSambrookらの4.21〜4.41節に記載されている。
【0062】
野生型DNA配列を変化させるために、このオリゴヌクレオチドを好適なハイブリッド形成条件の下で単鎖の鋳型とハイブリッド形成させる。次いで、DNA重合酵素、通常はDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを加え、このオリゴヌクレオチドを合成のためのプライマーとして用いて鋳型の相補鎖を合成する。このようにして、DNAの一方の鎖が変異形をコードし、他方の鎖(最初の鋳型)が野生型GHをコードしているヘテロ二重鎖分子が形成される。次いで、このヘテロ二重鎖分子を好適な宿主細胞、通常は大腸菌JM101等の原核生物に形質転換する。この細胞を増殖させた後、アガロースプレートに蒔き、32−リン酸で放射標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてスクリーニングして、変異したDNAを含有する細菌コロニーを同定する。
【0063】
すぐ上に記載した方法を、DNAの両方の鎖が変異(複数可)を含むホモ二重鎖分子が作製されるように修飾することができる。この修飾は次のようである:単鎖のオリゴヌクレオチドを上記のように単鎖DNAの鋳型にアニールさせる。3つのデオキシリボヌクレオチド、すなわちデオキシリボアデノシン(dATP)、デオキシリボグアノシン(dGTP)およびデオキシリボチミジン(dTTP)の混合物を、dCTP−(aS)と呼ばれる修飾されたチオ−デオキシリボシトシンと組み合わせる。この混合物を鋳型−オリゴヌクレオチドの複合体に加える。この混合物にDNAポリメラーゼを加えると、変異した塩基(複数可)を除いて鋳型と同一のDNAの鎖が生成される。さらに、この新たなDNAの鎖はdCTPの代わりにdCTP−(AS)を含有しており、これがこの鎖を制限エンドヌクレアーゼ消化から保護するように働く。二本鎖のヘテロ二重鎖の鋳型鎖に適切な制限酵素で切れ目を入れた後、この鋳型鎖を、変異誘発されるべき部位(複数可)を含む領域を越えてExoIIIヌクレアーゼまたは別の適切なヌクレアーゼで消化することができる。次いで、この反応を停止させて一部だけが単鎖である分子を残す。次いで、4種すべてのデオキシリボヌクレオチド三リン酸、ATP、およびDNAリガーゼの存在下にDNAポリメラーゼを用いて、完全な二本鎖DNAホモ二重鎖が形成される。次いで、このホモ二重鎖分子を、上述のように大腸菌JM101等の好適な宿主細胞に形質転換することができる。
【0064】
1つを越える置換すべきアミノ酸を有する変異種は、いくつかの方法の1つにおいて生成され得る。これらアミノ酸がポリペプチド鎖中に互いに近接して存在している場合、所望のアミノ酸置換のすべてをコードしている1つのオリゴヌクレオチドを用いて同時に変異させることができる。しかしながら、アミノ酸が互いにある程度の距離を置いて存在しているときには(約10以上のアミノ酸によって隔てられている)、所望の変化のすべてをコードしている単一のオリゴヌクレオチドを生成するのはより困難である。これに代えて、2種類の代替方法のいずれかを用いることができる。
【0065】
第1の方法では、独立したオリゴヌクレオチドを置換されるべきアミノ酸のそれぞれに対して生成する。次いで、そのオリゴヌクレオチドを単鎖の鋳型DNAに同時にアニールさせると、この鋳型から合成されるDNAの第2の鎖は所望のアミノ酸置換のすべてをコードする。この代替方法は、所望の変異種を生成するための変異導入の2つ以上のラウンドを含む。第1のラウンドは単一変異種について説明したものと同じであり、野生型DNAを鋳型に使用し、第1の所望のアミノ酸置換(複数可)をコードするオリゴヌクレオチドをこの鋳型にアニールさせ、次いでヘテロ二重鎖DNA分子を生成する。変異導入の第2のラウンドは、変異導入の第1のラウンドにおいて生成された変異DNAを鋳型として用いる。このため、この鋳型は既に1つ以上の変異を含んでいる。次いで、さらなる所望のアミノ酸置換(複数可)をコードするオリゴヌクレオチドをこの鋳型にアニールさせると、得られるDNAの鎖は、変異導入の第1および第2のラウンドの両方に由来する変異をコードしている。この得られたDNAを、変異導入の第3のラウンドにおける鋳型等として用いることができる。
【0066】
カセット変異導入もまた、GHをコードするDNAの置換、欠失、および挿入変異体を調製するための好ましい方法である。この方法は、Wells et al.,1985によって記述されるものに基づいている。出発材料は、変異させようとするGH DNAを含むプラスミド(または、他のベクター)である。変異させようとするGH DNA中のヌクレオチド(複数可)は確認されており、最適には、確認された変異部位(複数可)の両側に唯一の制限エンドヌクレアーゼ部位が存在しているが、しかしながら、これは必須要件ではない。そのような制限部位が存在していない場合、上記のオリゴヌクレオチド媒介の変異導入法を用いてこれら部位を生成し、GH DNA中の好適な位置に導入することができる。プラスミド中に制限部位を導入した後、プラスミドをこれら部位のところで切断して直線化する。この制限部位の間のDNAの配列をコードしているが、所望の変異(複数可)を含んでいる二本鎖オリゴヌクレオチドを定法により合成する。この2本の鎖は別々に合成され、次いで標準技術を用いて一緒にハイブリッド形成される。この二本鎖のオリゴヌクレオチドは、カセットと称される。このカセットは直線化したプラスミドの両末端に適合する3′および5′末端を有するように設計され、それがプラスミドに直接連結できるようにする。ここで、このプラスミドはGHの変異DNA配列を含むことになる。
【0067】
当然、所望のGH変異体のインビトロでの化学合成等の他の方法を用いて、GH変異体を生成することができる(Barany et al.,The Peptides,E.Gross and J.Meienhofer(editors),Academic Press,New York(1979)Volume 2,pp.3−254)。
【0068】
GH変異体の生成
GH変異体は、標準組換え技術によって好都合に生成することができる。より具体的には、GH変異体は、ベクター−宿主細胞系を用いて発現することができる。
【0069】
GH DNAを適切なプラスミドまたはベクターに挿入することができ、その後、それを使用して宿主細胞を形質転換する。原核生物は、GH変異体を生成するDNA配列の発現に適している。例えば、大腸菌K12系294(ATCC No.31446)、同様に、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC No.31537)、大腸菌c600およびc600hfl、ならびに大腸菌W3110(F、γ、原栄養、ATCC No.27325)、バチルス・スブチリス、およびサルモネラ・チフィリウムまたはセラチア・マルセセンス等の他の腸内細菌、ならびに種々のシュードモナス種等の桿菌が使用され得る。好ましい原核生物は、大腸菌W3110(ATCC 27325)である。原核生物の細胞内で発現されるとき、GHは典型的に、N末端メチオニンまたはホルミルメチオニンを含有し、グリコシル化されていない。培地または周辺質内に細胞外に発現されるとき、GHはN末端メチオニンを含まない。これらの例は勿論、制限ではなく例示として意図される。
【0070】
原核生物に加えて、酵母培養物、または多細胞生物に由来の細胞等の真核生物が使用されてもよい。原理上は、任意のそのような細胞培養が有効である。しかしながら、脊椎動物細胞における関心対象が最も優れており、培養における脊椎動物細胞の繁殖は、繰り返し可能な手順となっている。そのような有用な宿主細胞株の例には、VERO、HeLa、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、W138、BHK、COS−7、およびMDCK細胞株がある。
【0071】
一般に、宿主細胞に適合する種に由来する複製および制御配列を含むプラスミドベクターが使用される。そのベクターは、通常、複製部位と、形質転換された細胞において表現型選択を提供できるタンパク質をコードする配列と、を保有する。例えば、大腸菌は、大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322を用いて形質転換され得る(Mandel et al.,1970)。プラスミドpBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン抵抗のための遺伝子を含有し、ゆえに選択の容易な方法を提供する。1つの好ましいベクターは、pBO475である。このベクターはファージおよび大腸菌の複製起点を含み、それはベクターがそのような宿主間で往復することを可能し、それにより変異導入および発現を促進する。「発現ベクター」とは、好適な宿主においてそのDNAの発現を引き起こすことができる好適な制御配列に動作可能に結合されるDNA配列を含むDNA構築物を指す。そのような制御配列には、転写を引き起こすプロモーター、そのような転写を制御する任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終止を制御する配列が挙げられる。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、または単純に潜在的なゲノム挿入断片であり得る。一旦好適な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムから独立して複製し、機能することができるか、またはいくつかの実例においては、そのゲノム自体に組み込まれる。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、現在のところ、プラスミドが最も一般的にベクターの形態で使用されるため、時々交換可能に使用される。しかしながら、同等の機能果たすもの、および当該技術分野で既知であるか、または既知となる発現ベクターの他の形態の使用が、本開示の範囲内に含まれる。
【0072】
2つのDNAまたはポリペプチド領域間の関係を説明する際、「動作可能に結合される」とは、それらが互いに機能的に関連することを単純に意味する。例えば、プレ配列は、シグナル配列として機能する場合ペプチドに動作可能に結合され、タンパク質の成熟形態の分泌に関与し、ほぼ確実にシグナル配列の切断に関与する。プロモーターは、配列の転写を制御する場合、コード配列に動作可能に結合され、リボソーム結合部位は、翻訳を許容するように位置する場合、コード配列に動作可能に結合される。
【0073】
GH変異体発現ベクターを含む宿主細胞は、細胞成長およびGH変異体の発現に適した条件下で培養される。具体的には、培養培地は、用いられる宿主細胞に適切な栄養素および成長因子を含む。選択された宿主細胞の成長に必要な栄養素および成長因子は、多くの場合、当業者によってよく知られているか、または経験的に容易に決定され得る。例えば、哺乳類宿主細胞の好適な培養状態は、Mammalian Cell Culture,J.P.Mather(editor),Plenum Press(1984)and Barnes and Sato,1980に記載される。
【0074】
加えて、培養状態は、転写、翻訳、および細胞内コンパートメント間のタンパク質輸送を可能にしなければならない。これらのプロセスに影響する要因はよく知られており、例えば、DNA/RNAコピー数;RNAを安定化する因子;培養培地中に存在する栄養素、栄養補助剤、および転写誘導因子またはリプレッサー;培養中の温度、pH、および浸透圧;ならびに細胞密度が挙げられる。特定のベクター−宿主細胞系において発現を促進するためのこれらの要因の調節は、当業者の技術水準内である。
【0075】
GH変異体の生成において用いられる細胞培養手順は、タンパク質の大または小規模生成のためのいくつかのよく知られた手順のうちのいずれかであり得る。これらには、流動床バイオリアクター、中空糸バイオリアクター、ローラーボトル培養システム、および撹拌層バイオリアクターシステムの使用が挙げられるが、これらに限定されない。GH変異体は、例えば、バッチ、フェッドバッチ、または連続式工程において生成され得る。
【0076】
上述のように生成された組換えタンパク質の回収方法はよく知られており、用いられる発現系に応じて異なる。例えば、典型的にそうであるように、発現ベクターがシグナル配列を含む場合、GH変異体は、培養培地または周辺質から回収される。好都合に、変異体は、完全に処理されたタンパク質(すなわち、分泌シグナル配列を欠乏している)として、細胞周辺腔に分泌される。しかしながら、GH変異体はまた、細胞内で発現され、細胞可溶化物から回収され得る。
【0077】
GH変異体は、宿主細胞または培養培地の成分から変異体を分離することができる任意の方法によって培養培地または細胞可溶化物から精製され得る。典型的に、GH変異体は、所望に応じてGH変異体のペグ化に、または診断上のまたは治療上の使用に干渉し得る宿主細胞および/または培養培地成分から分離される。
【0078】
最初のステップとして、培養培地または細胞可溶化物を通常遠心分離するか、または濾過し、細胞残屑を除去する。次いで、上清は典型的に、さらなる精製用に調製物を整えるために、所望の量に濃縮されるか、もしくは希釈されるか、あるいは好適な緩衝剤中に透析濾過される(diafiltered)。GH変異体のさらなる精製は典型的に、未処置の形態からGH変異体の脱アミドされた、および切り抜かれた(clipped)形態を分離することを含む。
【0079】
本実施形態の1つの変形において、GH変異体は、(1)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)を用いて、N末端もしくはアミノ酸配列間の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(2)クーマシーブルー染色を用いて、非還元もしくは還元条件下のSDS−PAGEで均一に、精製される。
【0080】
以下の例となる手順のいずれかがGH変異体の精製に用いられ得る:親和クロマトグラフィー;陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、DEAE SEPHAROSEを使用する);シリカ上でのクロマトグラフィー;逆相HPLC;ゲル濾過(例えば、SEPHADEX G−75を使用する);疎水性相互作用クロマトグラフィー;金属キレートクロマトグラフィー;限外濾過/透析濾過;エタノール沈殿;硫酸アンモニウム沈殿;クロマトフォーカシング;および置換クロマトグラフィー。
【0081】
抱合体
本開示の方法に有用なGH変異体は、1つ以上の化学基に共有結合的に付加され得る(以下「抱合される」)。そのような抱合は、非修飾GH変異体を上回る実際の分子量を有するGH変異抱合体を生成する。本明細書に使用される場合、「実際の分子量」という用語は、質量分析(例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析)によって測定される分子量を指す。hGH変異抱合体の実際の分子量は通常、少なくとも約30kDa;好ましくは、約35kDa〜約55kDaの範囲内;およびより好ましくは、約40kDa〜約50kDaの範囲内である。概して、hGH変異抱合体の実際の分子量は、100kDaを超えない。
【0082】
GH変異抱合体での使用に適した化学基は、好ましくは著しく毒性または免疫原性ではない、すなわち、GH変異抱合体で観察される任意の毒性または免疫原性は、対応する非修飾GH変異体で観察される任意の毒性または免疫原性を著しく上回らない(すなわち、50%未満)。典型的には、非修飾GH変異体に関連付けられる毒性および/または免疫原性を低下させる化学基が選択される。加えて、化学基は、非修飾GH変異体の貯蔵および使用に適した条件下で、保管および使用され得るGH変異抱合体を生成するように好都合に選択される。例となる化学基には、例えば、糖タンパク質上に天然に存在する炭水化物等の炭水化物、およびポリオール等の非タンパク質系ポリマーが挙げられる。
【0083】
ポリオールは、例えば、国際公開第93/00109号に記載されるようにリジン残基を含む1つ以上のアミノ酸残基においてGH変異体分子に抱合され得る。用いられるポリオールは、任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであってもよく、直鎖または分岐鎖を有し得る。好適なポリオールには、1つ以上のヒドロキシル位で、1〜4個の炭素を有するアルキル基等の化学基で置換されるものが挙げられる。典型的に、ポリオールは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)等のポリ(アルキレングリコール)であり、このため、説明を容易にするために、残りの考察は、用いられるポリオールがPEGであり、ポリオールのGH変異体への抱合の過程が「ペグ化」と呼ばれる、例となる実施形態に関する。しかしながら、当業者は、例えば、ポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマー等の他のポリオールが、PEGに関して本明細書に記載の抱合の技術を使用して、用いられ得ることを認識する。
【0084】
PEGの平均分子量は、約500〜約30,000Da;好ましくは、約1,000〜約25,000Da;およびより好ましくは、約4,000〜約20,000Daの範囲であり得る。1つの実施形態において、ペグ化は、約5,000Daの平均分子量を有するPEG(以下「PEG(5000)」)を用いて行われる。反応条件は、PEG(5000)の約4〜約6個の分子に抱合されるGH変異体分子の生成を最大化するように調整される。別の実施形態において、ペグ化は、約20,000Daの平均分子量を有するPEG(以下「PEG(20,000)」)の分子を1個の分子に抱合されるGH分子の生成を最大化するように調整された条件下で、PEG(20,000)を用いて行われる。本実施形態のある変形において、それぞれ約10,000Daの2本の鎖を有する分岐鎖PEGが用いられる。
【0085】
市販の、本方法での使用に適したPEG調製物は、平均分子量に従って売られる不均質調製物である。例えば、PEG(5000)調製物は典型的に、分子量が若干(通常±500Da)異なる分子を含む。
【0086】
生理的に活性な非免疫原性組成物を生成するための、いくつかのホルモンおよび酵素のPEGおよびポリプロピレングリコールへの抱合を開示する、タンパク質をペグ化する様々な方法が記載されてきた(例えば、米国第4,179,337号を参照されたい)。概して、少なくとも1つの末端ヒドロシキ基を有するPEGは、末端反応基を有する活性化PEGを形成するように結合剤と反応する。この反応基は、次いで、共有結合を形成するようにタンパク質のα−およびε−アミンと反応し得る。好都合に、PEG分子の他の終端は、メトキシ基等の非反応性化学基で「遮断」され、タンパク質分子のPEG架橋複合体の形成を抑えることができる。
【0087】
GH変異体のペグ化のため、活性化PEGは、部位1結合活性を破壊しない条件下で変異体と反応することができるものである。さらに、抱合体に毒性の連結基を導入する活性化PEGは通常避けられる。
【0088】
好適な活性化PEGは、いくつかの従来の反応によって生成され得る。例えば、PEG(M−NHS−PEG)のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、Buckmann and Merr,1981の方法に従って、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN−ヒドロシキスクシンイミド(NHS)との反応によってPEG−モノメチルエーテルから調製され得る。
【0089】
加えて、PEG末端ヒドロシキ基は、例えば、臭化チオニルとの反応によってアミノ基に転換され、PEG−Brを形成することができ、その後、PEG−NHを形成する過剰なアンモニアとのアミノリシスが続く。PEG−NHは、次いで、ウッドウォードの試薬K等の標準カップリング試薬を使用して対象となるタンパク質に抱合される。さらに、PEG末端−CHOH基は、例えば、MnOでの酸化によってアルデヒド基に転換され得る。そのアルデヒド基は、シアノ水素化ホウ素等の試薬を用いた還元性のアルキル化によってタンパク質に抱合される。
【0090】
代替として、本発明の方法における使用に適した活性化PEGは購入することができる。
【0091】
GH変異体のペグ化度を調節して、対応する非ペグ化GH変異体と比べて望ましく上昇したインビボ半減期を提供することができる。ペグ化GH変異体の半減期は、典型的には、ペグ化度が上昇するのに応じて徐々に増加すると考えられている。より高いペグ化度では、ペグ化GH変異体の半減期の上昇は、部位1親和性の減少を示す部位1結合の解離定数(Kd)の上昇によって、部分的に相殺されると考えられている。この親和性の減少は、対応する効力の減少を伴い、50%の最大効果(EC50)を必要とする抱合体の濃度の上昇に反映されると考えられている。部位1結合がGH変異体のGHアンタゴニスト活性に必須であるため、上昇したペグ化はGH変異体の効力を減少させる。しかしながら、ペグ化GH変異体のインビボ効果が、対応する非ペグ化GH変異体で観察されるものに相当するか、またはより優れていると考えられるように、半減期の上昇は概して効力の減少を相殺する。したがって、当業者は、非ペグ化タンパク質と比較して望ましく上昇した半減期を有するが、インビボで有効である十分な効力を保持する抱合体を生成するための、GH変異体に対する好適なペグ化度を容易に決定することができる。
【0092】
通常は、半減期は、少なくとも約5倍、好ましくは、少なくとも約10倍、より好ましくは、少なくとも約50倍、さらにより好ましくは、少なくとも約100倍上昇される。加えて、ペグ化の度合いおよび部位は、Spencer et al.,1988に記載されるもの等の平衡結合アッセイで測定される、典型的に約400nM以下のKdで、好ましくは150nM以下のKdで、さらにより好ましくは100nM以下のKdで、PEG−GH変異抱合体が部位1においてGHRに結合することが可能である。
【0093】
タンパク質のペグ化の度合いおよび部位は、(1)ペグ化部位の数および反応性(すなわち、第一級アミン)、ならびに(2)ペグ化反応条件によって決定される。例えば、野生型hGHは、理論上は活性化PEGとの反応に使用可能な10個の第一級アミンを含む:N末端フェニルアラニンのα−アミノ基および9のリジンのε−アミノ基。しかしながら、hGHおよびhGH変異体における第一級アミンのいくつかは比較的非反応性であるため、標準的なペグ化反応は典型的に完全に満たないペグ化をもたらす(例えば、野生型hGHの1分子当たり7から8PEG)。
【0094】
タンパク質のペグ化の部位もまた、様々な第一級アミンの反応性によっていくらか限定される。例えば、所与のhGH変異体の部位1ホルモン−受容体結合界面における潜在的なリジンは、PEGに対して比較的非反応性であり得る。このため、変異体分子当たり約4から6のPEGを有するそのような適度にペグ化されたhGH変異体は、この結合界面における潜在的なペグ化部位の存在にもかかわらず、部位1でGH受容体に結合する能力を保持し得る。1つの実施形態において、hGH変異体は、1位のフェニルアラニンと、38、120、140、および158位でPEGに抱合されるリジンとを含む。
【0095】
標準的な変異導入技術を使用して、タンパク質中のリジンの数を変化させることができる。このため、アミノ酸置換がリジンを導入するか、または置き換える限り、本開示のGH変異体は、野生型GHを上回るか、または下回る数の潜在的なペグ化部位を含み得る。1つの実施形態において、hGH変異体は、9の潜在的なペグ化部位(Phe1、Lys38、Lys41、Lys70、Lys115、Lys120、Lys140、Lys145、Lys158)を含む。
【0096】
さらに、リジンを導入するか、または置き換えるアミノ酸置換は、潜在的なペグ化部位の位置を変化させる。例えば、G120のリジンでの置換は、部位2にさらなる潜在的なペグ化部位を提供し、これは、ペグ化されるとこの部位における任意の残りの結合を損なうことが予期される。
【0097】
活性化PEGおよびタンパク質の相対濃度、ならびにpH等の反応条件を調整することにより、ペグ化の度合いおよび部位を操作することもできる。所望のペグ化度に好適な条件は、経験的に決定され得る。
【0098】
治療的製剤で使用するためペグ化GH変異体を含む組成物は不均質または均質であり得、すなわち、複数、または単一のペグ化GH変異体を含む。典型的に、本組成物は、ペグ化GH変異体の1または2つの形態の少なくとも70%、好ましくは1または2つの形態の少なくとも80%、さらにより好ましくは、1または2つの形態の少なくとも90%を含む。
【0099】
成長ホルモン受容体へのアンチセンス化合物
本開示の方法は、成長ホルモン(GH)シグナル伝達またはGH/インスリン様成長因子−I(IGF−I)軸、特にGHRおよび/またはIGF−Iの発現を調節する、成長ホルモン受容体(GHR)へのアンチセンス化合物の使用に依存する。好ましくは、アンチセンス化合物は、オリゴヌクレオチドである。しかしながら、オリゴヌクレオチド模倣体が挙げられるが、これらに限定されない他のオリゴマーアンチセンス化合物が企図される。
【0100】
その標的核酸でのアンチセンス化合物のハイブリッド形成は概して、「アンチセンス」と称される。その標的核酸でのアンチセンス化合物のハイブリッド形成は、標的核酸の機能を阻害する。そのような「アンチセンス阻害」は、典型的に、標的核酸が切断されるか、分解されるか、またはさもなければ操作不可能にされるような、標的核酸へのアンチセンス化合物の水素結合に基づくハイブリッド形成に基づく。干渉される標的DNAの機能には、複製および転写が挙げられる。複製および転写は、例えば、内因性細胞鋳型、ベクター、プラスミド構築物、または他のものに由来し得る。干渉されるRNAの機能は、タンパク質の翻訳の部位へのRNAの転位、RNA合成の部位から遠い細胞内の部位へのRNAの転位、RNAからのタンパク質の翻訳、1つ以上のRNA種を得るためのRNAのスプライシング、およびそのRNAに関与し得るか、またはそのRNAよって促進され得るRNAに関与する触媒活性または複合体形成等の機能を含み得る。
【0101】
本明細書に使用される場合、「ハイブリッド形成」とは、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸の相補的塩基の対合を意味する。塩基対合は典型的に、相補的ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基(核酸塩基)間のワトソンクリック、フーグスティーン、または逆フーグスティーン水素結合であり得る、水素結合に関与する。グアニン(G)およびシトシン(C)は、3水素結合の形成によって対になる相補的核酸塩基の例である。アデニン(A)およびチミン(T)は、2水素結合の形成によって対になる相補的核酸塩基の例である。ハイブリッド形成は、様々な環境下で生じ得る。
【0102】
「ヌクレオシド」は、塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は通常は複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の最も一般的な2つの分類はプリンとピリミジンである。「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドの糖部分に共有結合的に結合したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドでは、リン酸基は糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分のいずれかに結合することができる。
【0103】
「特異的にハイブリッド形成が可能」および「相補的な」とは、安定した、特定の結合がアンチセンス化合物と標的核酸との間で生じるような、十分な程度の相補性を示すために使用される用語である。アンチセンス化合物は、特異的にハイブリッド形成が可能であるその標的核酸配列に100%相補的である必要がないことが理解される。標的核酸に対するアンチセンス化合物の結合が標的核酸の発現に干渉する場合、アンチセンス化合物は特異的にハイブリッド形成が可能であり、特異的結合が所望される条件下、例えば、治療的処置の場合の生理的条件下で、非標的配列に対するアンチセンス化合物の非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性がある。
【0104】
本明細書で使用される場合、「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」または「ストリンジェントな条件」という用語は、アンチセンス化合物が、その標的配列に対してハイブリッド形成するが、他の配列には最小数である条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、状況によって異なる。アンチセンス化合物が標的配列に対してハイブリッド形成するストリンジェントな条件は、アンチセンス化合物の性質および組成物、ならびにそれが研究されるアッセイによって決定される。
【0105】
本明細書に使用される場合、「相補的である」とは、アンチセンス化合物の核酸塩基と標的核酸との間の正確な対合のための能力を指す。例えば、アンチセンス化合物の所定位置における核酸塩基が、標的核酸の所定位置における核酸塩基と水素結合できる場合、次にアンチセンス化合物と標的核酸との間の水素結合の位置は、相補的位置であると考えられる。アンチセンス化合物は、介在するか、または隣接するセグメントがハイブリッド形成事象に関与しないように、1つ以上のセグメントにわたってハイブリッド形成する場合がある(例えば、ループ構造またはヘアピン構造)。1つの実施形態において、アンチセンス化合物は、標的核酸内の標的領域に対して少なくとも70%の配列相補性を含む。例えば、20核酸塩基のうちの18個が、標的核酸内の標的領域に対して相補的であり、したがって特異的にハイブリッド形成する、アンチセンス化合物は、90%の相補性を表す。この例において、残りの非相補的核酸塩基は、相補的核酸塩基と集合または散在されてもよく、互いに、または相補的核酸塩基に隣接する必要はない。そのように、標的核酸と完全に相補的である2つの領域が両側に位置する、4個の非相補的核酸塩基を有する、18個の核酸塩基の長さのアンチセンス化合物は、標的核酸と全体で77.8%の相補性を有し、したがって、本開示の範囲内にある。標的核酸の領域とのアンチセンスの相補性パーセントは、当該技術分野において既知のBLASTプログラム(基本的局所配列検索ツール)およびPowerBLASTプログラムを使用して日常的に決定され得る(Altschul et al.,1990、Zhang and Madden,1997)。
【0106】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本開示は、成長ホルモン受容体(GHR)の発現を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの用途を提供する。
【0107】
本明細書に使用される場合「阻害する」とは、GHR発現における任意の測定可能な減少(例えば、10%、20%、50%、90%、または100%)を意味する。
【0108】
本明細書に使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、RNAもしくはDNAのオリゴマーまたはポリマー、またはその模倣体、キメラ、類似体、および相同体を指す。この用語は、自然発生する核酸塩基類、糖類、および共有ヌクレオシド間(骨格)結合から成るオリゴヌクレオチド、ならびに同様に機能する非自然発生部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。そのような修飾または置換オリゴヌクレオチドは、所望の特性、例えば、増強された細胞取り込み、標的核酸に対して増強された親和性、およびヌクレアーゼ存在下での増加した安定性等によって、しばしば天然型よりも望ましい。
【0109】
オリゴヌクレオチドを形成する際に、リン酸基は、互いに隣接するヌクレオシドを共有結合して、線形ポリマー化合物を形成する。順に、この線形ポリマー化合物のそれぞれの末端をさらに接合して、環状化合物を形成することができるが、一般に線形化合物が好ましい。加えて、線形化合物は内部の核酸塩基相補性を有してよく、したがって、完全または部分的に二本鎖の化合物を生成するような方法で折り畳んでもよい。オリゴヌクレオチドに関して、リン酸基は、一般にオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格を形成するものと称される。RNAおよびDNAの通常の結合または骨格は、3´〜5´ホスホジエステル結合である。
【0110】
本開示の方法において有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドには、例えば、リボザイム、siRNA、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、選択的スプライサー、プライマー、プローブ、および標的核酸の少なくとも一部分をハイブリッド形成する他のオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0111】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、単鎖、二本鎖、環状、またはヘアピンの形態で投与されてもよく、内部もしくは末端バルジまたはループ等の構造要素を含有し得る。一旦投与されると、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸の修飾に影響する、1つ以上の酵素または構造タンパク質の作用を引き出し得る。
【0112】
そのような酵素の1つの非限定的な例は、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである、RNAse Hである。「DNA様」の単鎖のアンチセンス化合物が、RNAse Hを引き出すことは、当該技術分野において既知である。したがって、RNase Hの活性は、RNA標的の切断をもたらし、それによって遺伝子発現のオリゴヌクレオチド媒介性阻害の効率を著しく増強させる。同様の役割は、酵素のRNaseIIIおよびリボヌクレアーゼLファミリーにおけるリボヌクレアーゼのような他のリボヌクレアーゼにおいても仮定されている。
【0113】
二本鎖RNA(dsRNA)分子の導入は、遺伝子またはその関連遺伝子生成物の機能の強力かつ特異的なアンチセンス媒介性の減少を誘発することが示された。この現象は、植物および動物の両方で生じ、ウイルス性防御およびトランスポゾンサイレンシングとの進化的関連を有すると考えられる。
【0114】
dsRNAが動物において遺伝子サイレンシングをもたらすという最初の証拠は、1995年に線虫シノラブディスエレガンスの研究から得られた(Guo and Kempheus,1995)。Montgomeryら(1998)は、dsRNAの一次干渉効果が転写後であることを示した。以降、二本鎖RNA(dsRNA)への暴露によってもたらされる、シノラブディスエレガンスにおいて明らかになった転写後アンチセンス機序は、RNA干渉(RNAi)と指定されている。この用語は、内因性標的mRNAレベルの配列特異的減少をもたらす、dsRNAの導入を伴うアンチセンス媒介性遺伝子サイレンシングを意味するように一般化された(Fire et al.,1998)。それが実際に、RNAiの強力な誘導因子である、dsRNAのアンチセンス極性の単鎖RNAオリゴマーであることが示された(Tijsterman et al.,2002)。
【0115】
当該技術分野において通常の技術を有する者であれば、過度の実験なしに、本開示の方法に有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドを同定することができる。
【0116】
修飾ヌクレオシド間結合(骨格)
本開示の方法において有用なアンチセンス化合物は、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドを含む。修飾骨格を有するオリゴヌクレオチドには、骨格にリン原子を保持するもの、および骨格にリン原子を有しないものを含む。
【0117】
リン原子をその中に含む修飾オリゴヌクレオチド骨格には、例えば、通常の3′−5′結合を有する、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび他のアルキルホスホン酸塩(3′−アルキレンホスホン酸塩、5′−アルキレンホスホン酸塩、およびキラルホスホン酸塩を含む)、ホスフィン酸塩、ホスホロアミド酸(3′−アミノホスホロアミド酸およびアミノアルキルホスホロアミド酸を含む)、チオノホスホロアミド酸、チオノアルキルホスホン酸塩、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスホン酸塩、およびボラノホスホン酸塩、これらの2′−5′結合類似体、ならびに、その中の1つ以上のヌクレオチド間結合が、3′から3′、5′から5′、または2′から2′への結合である、逆の極性を有するものが挙げられる。
【0118】
逆の極性を有するオリゴヌクレオチドは、3′最末端ヌクレオチド間結合において、単一の3′から3′への結合、つまり、脱塩基であり得る単一の逆のヌクレオシド残基(核酸塩基が欠失しているか、またはその場所にヒドロキシル基を有する)を含む。様々な塩、混合塩、および遊離酸の形もまた含まれる。
【0119】
上記リン含有結合の調製法を教示する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国第3,687,808号、米国第4,469,863号、米国第4,476,301号、米国第5,023,243号、米国第5,177,196号、米国第5,188,897号、米国第5,264,423号、米国第5,276,019号、米国第5,278,302号、米国第5,286,717号、米国第5,321,131号、米国第5,399,676号、米国第5,405,939号、米国第5,453,496号、米国第5,455,233号、米国第5,466,677号、米国第5,476,925号、米国第5,519,126号、米国第5,536,821号、米国第5,541,306号、米国第5,550,111号、米国第5,563,253号、米国第5,571,799号、米国第5,587,361号、米国第5,194,599号、米国第5,565,555号、米国第5,527,899号、米国第5,721,218号、米国第5,672,697号、および米国第5,625,050号が挙げられる。
【0120】
リン原子をその中に含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格には、例えば、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルが混合されたヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子の、もしくは複素環式のヌクレオシド間結合によって形成される骨格が挙げられる。これらは、(一部がヌクレオシドの糖部分から形成された)モルホリノ結合を有するもの、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、リボアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファミン酸骨格、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格、スルホン酸塩およびスルホンアミド骨格、アミド骨格、および混合されたN、O、S、およびCH成分部分を有する他のものを含む。
【0121】
上記オリゴヌクレオチドの調製法を教示する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国第5,034,506号、米国第5,166,315号、米国第5,185,444号、米国第5,214,134号、米国第5,216,141号、米国第5,235,033号、米国第5,264,562号、米国第5,264,564号、米国第5,405,938号、米国第5,434,257号、米国第5,466,677号、米国第5,470,967号、米国第5,489,677号、米国第5,541,307号、米国第5,561,225号、米国第5,596,086号、米国第5,602,240号、米国第5,610,289号、米国第5,602,240号、米国第5,608,046号、米国第5,610,289号、米国第5,618,704号、米国第5,623,070号、米国第5,663,312号、米国第5,633,360号、米国第5,677,437号、米国第5,792,608号、米国第5,646,269号、および米国第5,677,439号が挙げられる。
【0122】
修飾糖およびヌクレオシド間結合
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物には、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合の両方(すなわち、骨格)が、新規の基と置き換えられる、オリゴヌクレオチド模倣体を含む。核酸塩基単位は、標的核酸とのハイブリッド形成のために維持される。
【0123】
優れたハイブリッド形成特性を有することが示されたオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格と置き換えられる。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合される。PNA化合物の調製法を教示する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国第5,539,082号、米国第5,714,331号、および米国第5,719,262号が挙げられる。PNA化合物に関するさらなる教示は、Nielsen et al.,1991において見出すことができる。
【0124】
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物はまたホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド、およびヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオチド、例えば、米国第5,489,677号の−CH−NH−O−CH−、−CH−N(CH)−O−CH−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる]、−CH−O−N(CH)−CH−、−CH−N(CH)−N(CH)−CH−、および−O−N(CH)−CH−CH−[ここで、天然ホスホジエステル骨格は、−O−P−O−CH−と表される]、ならびに米国第5,602,240号のアミド骨格も含む。
【0125】
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物はまた、米国第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも含む。
【0126】
修飾された糖
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物は、1つ以上の置換された糖部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。
【0127】
例には、以下のOH;F;O−、S−、もしくはN−アルキル;O−、S−、もしくはN−アルケニル;O−、S−、もしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキルうちの1つを2′位に含むオリゴヌクレオチドが挙げられ、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換された、または置換されていないCからC10のアルキル、またはCからC10のアルケニルおよびアルキニルであり得る。
【0128】
1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、以下のO[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH、およびO(CHON[(CHCHのうちの1つを2′位に含み、nおよびmは、1から約10である。
【0129】
修飾オリゴヌクレオチドのさらなる例としては、以下のCからC10の低級アルキル、置換された低級の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルもしくはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換されたシリル、RNA切断基、レポーター基、挿入剤、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を向上させるための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を向上させるための基、および同様の特性を有する他の置換基のうちの1つを2′位に含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0130】
1つの実施形態において、修飾は、2′−メトキシエトキシ(2′−O−CHCHOCH(2′−O−(2−メトキシエチル)または2′−MOEとしても知られる)(Martin et al.,1995)、つまり、アルコキシアルコキシ基を含む。さらなる実施形態において、修飾は、2′−ジメチルアミノオキシエトキシ、つまり、O(CHON(CH基(2′−DMAOEとしても知られる)、または2′−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野において、2′−O−ジメチル−アミノ−エトキシ−エチルまたは2′−DMAEOEとしても知られる)、つまり、2′−O−CH−O−CH−N(CHを含む。
【0131】
他の修飾は、2′−メトキシ(2′−O−CH)、2′−アミノプロポキシ(2′−OCHCHCHNH)、2′−アリル(2′−CH−CH=CH)、2′−O−アリル(2′−O−CH−CH=CH)および2′−フルオロ(2′−F)を含む。2′−修飾は、アラビノ(上)位またはリボ(下)位であってよい。1つの実施形態において、2′−アラビノ修飾は2′−Fである。
【0132】
同様の修飾は、オリゴヌクレオチドの他の位置、特に3′末端ヌクレオチド上または2′−5′結合オリゴヌクレオチド内の糖の3′位、および5′末端ヌクレオチドの5′位において行われてもよい。
【0133】
オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりに、シクロブチル部分等の糖の模倣体を有してもよい。
【0134】
そのような修飾された糖の構造の調製法を教示する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国第4,981,957号、米国第5,118,800号、米国第5,319,080号、米国第5,359,044号、米国第5,393,878号、米国第5,446,137号、米国第5,466,786号、米国第5,514,785号、米国第5,519,134号、米国第5,567,811号、米国第5,576,427号、米国第5,591,722号、米国第5,597,909号、米国第5,610,300号、米国第5,627,053号、米国第5,639,873号、米国第5,646,265号、米国第5,658,873号、米国第5,670,633号、米国第5,792,747号、および米国第5,700,920号が挙げられる。
【0135】
糖のさらなる修飾には、2′−ヒドロキシル基が、糖環の3′または4′炭素原子に結合され、それによって二環式糖部分を形成する、ロックされた核酸(LNA)が挙げられる。1つの実施形態において、結合は、2′酸素原子および4′炭素原子を架橋するメチレン(−CH−)基であり、nは1または2である。LNAおよびその調製法は、国際公開第98/39352号および国際公開第99/14226号に記載されている。
【0136】
天然および修飾核酸塩基
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物は、核酸塩基修飾または置換を有するオリゴヌクレオチドを含む。本明細書に使用される場合、「非修飾」または「天然」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。
【0137】
修飾核酸塩基には、他の合成および天然核酸塩基、例えば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ハイポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチルならびにアデニンおよびグアニンの他のアルキル誘導体、2−プロピルならびにアデニンおよびグアニンの他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニル(−C≡C−CH)ウラシルおよびシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシン、およびチミン、5−ウラシル(疑似ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが挙げられる。
【0138】
さらなる修飾核酸塩基には、フェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、例えば、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)等のG−クランプ、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3′,2′:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)等の三環式ピリミジンが挙げられる。
【0139】
修飾核酸塩基にはまた、プリンまたはピリミジン塩基が、他の複素環、例えば7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジン、および2−ピリドンで置き換えられたものが挙げられ得る。さらなる核酸塩基には、米国第3,687,808号に開示されたもの、J.I.Kroschwitz(editor),The Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,pages 858−859,John Wiley and Sons(1990)に開示されたもの、Englisch et al.(1991)によって開示されたもの、およびY.S.Sanghvi,Chapter 15:Antisense Research and Applications,pages 289−302,S.T.Crooke,B.Lebleu(editors),CRC Press,1993によって開示されたものが挙げられる。
【0140】
これらの核酸塩基のいくつかは、オリゴヌクレオチドの結合親和性を増大させるのに、特に有用である。これらには、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシル、および5−プロピニルシトシンを含む5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、ならびにN−2、N−6、およびO−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増大させることを示した。1つの実施形態において、これらの核酸塩基置換は、2′−O−メトキシエチル糖修飾と併用される。
【0141】
上記修飾核酸塩基のいくつか、ならびに他の修飾核酸塩基の調製法を教示する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国第3,687,808号、米国第4,845,205号、米国第5,130,302号、米国第5,134,066号、米国第5,175,273号、米国第5,367,066号、米国第5,432,272号、米国第5,457,187号、米国第5,459,255号、米国第5,484,908号、米国第5,502,177号、米国第5,525,711号、米国第5,552,540号、米国第5,587,469号、米国第5,594,121号、米国第5,596,091号、米国第5,614,617号、米国第5,645,985号、米国第5,830,653号、米国第5,763,588号、米国第6,005,096号、米国第5,681,941号、および米国第5,750,692号が挙げられる。
【0142】
抱合体
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物は、1つ以上の部分または群に抱合され、アンチセンス化合物の活性、細胞分布、または細胞取り込みを増強する。
【0143】
これらの部分または群は、第一級もしくは二級ヒドロキシル基等の官能基に共有結合され得る。
【0144】
例となる部分または群には、挿入剤、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する群、およびオリゴマーの薬物動態特性を増強する群が挙げられる。典型的な抱合体群には、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および染料が挙げられる。
【0145】
薬力学的特性を増強する部分または群には、取り込みを向上させ、分解への抵抗力を増強し、および/または標的核酸との配列特異的なハイブリッド形成を強化する群が挙げられる。
【0146】
薬物動態特性を増強する部分または群には、アンチセンス化合物の取り込み、分布、代謝、または分泌を向上させる群が挙げられる。
【0147】
代表的な部分または群は、PCT/US92/09196号および米国第6,287,860号に開示される。
【0148】
部分または群には、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分等の脂質部分が挙げられる。
【0149】
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物はまた、活性原薬に抱合されてもよい。
【0150】
オリゴヌクレオチド薬物抱合体およびその調製法は、米国第09/334,130号に記載されている。
【0151】
そのような抱合体の調製法を教示する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国第4,828,979号、米国第4,948,882号、米国第5,218,105号、米国第5,525,465号、米国第5,541,313号、米国第5,545,730号、米国第5,552,538号、米国第5,578,717号、米国第5,580,731号、米国第5,580,731号、米国第5,591,584号、米国第5,109,124号、米国第5,118,802号、米国第5,138,045号、米国第5,414,077号、米国第5,486,603号、米国第5,512,439号、米国第5,578,718号、米国第5,608,046号、米国第4,587,044号、米国第4,605,735号、米国第4,667,025号、米国第4,762,779号、米国第4,789,737号、米国第4,824,941号、米国第4,835,263号、米国第4,876,335号、米国第4,904,582号、米国第4,958,013号、米国第5,082,830号、米国第5,112,963号、米国第5,214,136号、米国第5,082,830号、米国第5,112,963号、米国第5,214,136号、米国第5,245,022号、米国第5,254,469号、米国第5,258,506号、米国第5,262,536号、米国第5,272,250号、米国第5,292,873号、米国第5,317,098号、米国第5,371,241号、米国第5,391,723号、米国第5,416,203号、米国第5,451,463号、米国第5,510,475号、米国第5,512,667号、米国第5,514,785号、米国第5,565,552号、米国第5,567,810号、米国第5,574,142号、米国第5,585,481号、米国第5,587,371号、米国第5,595,726号、米国第5,597,696号、米国第5,599,923号、米国第5,599,928号、および米国第5,688,941号が挙げられる。
【0152】
キメラ化合物
当業者によって理解されるように、所与の化合物のすべての位置が均一に修飾される必要はなく、実際に前述の修飾のうちの2つ以上が単一のオリゴヌクレオチド内に、またオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドにさえ、組み込まれ得る。
【0153】
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物は、キメラオリゴヌクレオチドを含む。「キメラオリゴヌクレオチド」は、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位から成る2つ以上の化学的に異なる領域、つまり、オリゴヌクレオチド化合物の場合における、ヌクレオチドを含む。これらのオリゴヌクレオチドは典型的に、ヌクレアーゼ分解への増大した耐性、増大した細胞取り込み、増大した安定性、および/または標的核酸に対する増大した結合親和性をオリゴヌクレオチドに付加するようにオリゴヌクレオチドが修飾された、少なくとも一つの領域を含む。オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素の基質として働くことができる。例として、RNAseHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがって、RNase Hの活性は、RNA標的の切断を生じ、その結果、遺伝子発現のオリゴヌクレオチドに媒介性阻害の有効性を大いに高める。RNA:RNAハイブリッドの切断は、同様に、細胞およびウイルスのRNAの両方を切断するRNAseL等のエンドリボヌクレアーゼの作用を通じて達成され得る。RNA標的の切断は、通常通り、ゲル電気泳動、および必要に応じて、当該技術分野において既知の、関連する核酸ハイブリダイゼーション法によって検出され得る。
【0154】
本開示の方法に有用なキメラアンチセンス化合物は、2つ以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、および/またはオリゴヌクレオチド模倣体の複合構造として形成され得る。そのような化合物は、当該技術分野において、ハイブリッドまたはギャップマーとも称されている。
【0155】
そのようなハイブリッド構造の調製法を教示する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国第5,013,830号、米国第5,149,797号、米国第5,220,007号、米国第5,256,775号、米国第5,366,878号、米国第5,403,711号、米国第5,491,133号、米国第5,565,350号、米国第5,623,065号、米国第5,652,355号、米国第5,652,356号、および米国第5,700,922号が挙げられる。
【0156】
例となるオリゴヌクレオチド
1つの実施形態において、本アンチセンス化合物は、GHR mRNAにハイブリッド形成するように設計された第2世代のホスホロチオエート骨格2’−MOE−修飾キメラオリゴヌクレオチドギャップマーである。
【0157】
例となるオリゴヌクレオチドは、表1に示される。「標的部位」は、そこにオリゴヌクレオチドが結合する、特定の標的配列上の第1(5′最末端)のヌクレオチドの番号を示す。「% Inhib」は、定量的リアルタイムPCRによるhGHRmRNAレベルの阻害効果を示す。データは、MCF7細胞がアンチセンスオリゴヌクレオチドで治療された3つの実験からの平均である。
【0158】
表1 2’−MOEウイングおよびデオキシギャップを有するキメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドによるヒト成長ホルモン受容体mRNAレベルの阻害
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0159】
表1におけるすべてのオリゴヌクレオチドは、両側(5′および3′方向)に5ヌクレオチドの「ウイング」が隣接する10の2′−デオキシヌクレオチドから成る中央の「ギャップ」領域から構成される20ヌクレオチド長のキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)である。ウイングは2′−メトキシエチル(2′−MOE)ヌクレオチドから構成される。ヌクレオシド間(骨格)結合は、オリゴヌクレオチド全体にわたってホスホロチオエート(P=S)である。すべてのウラシルは、5−メチルウラシル(MeU)である。典型的に、オリゴヌクレオチドは、5−メチルウラシルではなく、2−メトキシエチル修飾チミジンを用いて合成される。すべてのピリミジンは、C5メチル化される(すなわち、U、T、Cは、C5メチル化されている)。
【0160】
オリゴヌクレオチドは、固相合成および下流処理の2つの異なる操作に分割され得る、複数ステップのプロセスによって合成されてもよい。第1の操作では、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列がコンピュータ制御固相合成器によって組み立てられる。続く下流処理では、オリゴヌクレオチド原薬を得るための、脱保護ステップ、調製逆相クロマトグラフ精製、単離および乾燥を含む。オリゴヌクレオチドの化学合成は、ホスホルアミダイト結合化学に続いて酸化硫化を利用し、伸長オリゴマーへの活性化したモノマーの連続結合を含み、その3′−末端は、固相支持体に共有結合される。
【0161】
脱トリチル反応(反応a)
固相合成のそれぞれの周期が、支持体に結合したオリゴヌクレオチドの5′末端ヌクレオシドの酸不安定な5′−O−4,4′−ジメトキシトリチル(DMT)保護基の除去から始まる。これは、酸溶液による処置によって達成される(例えば、トルエン中のジクロロ酢酸(DCA))。脱トリチル反応に続いて、次の反応の準備において、アセトニトリルで洗浄することによって、過剰な試薬を支持体から除去する。
【0162】
結合(反応b)
鎖の伸長が、活性化因子(例えば、1H−テトラゾール)の存在下で、支持体に結合したオリゴヌクレオチドの5′−ヒドロキシル基と、特定の塩基位置(例えば、塩基2の場合:MOE−MeCアミダイト)に対応するホスホルアミダイトの溶液との反応によって達成される。これは、流入するヌクレオチドシントンと支持体に結合したオリゴヌクレオチド鎖との間に亜リン酸トリエステルの形成をもたらす。結合反応後、次の反応の準備において、アセトニトリルで洗浄することによって、過剰な試薬を支持体から除去する。
【0163】
硫化(反応c)
新たに形成された亜リン酸トリエステル結合が、硫酸転移試薬(例えば、フェニルアセチルジスルフィド)の溶液で処理することによって、対応する[O,O,O)−トリアルキルホスホロチオエートトリエステルに変換される。硫化に続いて、次の反応の準備において、アセトニトリルで洗浄することによって、過剰な試薬を支持体から除去する。
【0164】
キャッピング(反応d)
任意の指定周期において使用可能なごく一部の5′−ヒドロシキ基は伸長できない。続く周期のいずれかにおけるこれらの基の結合は、所望の生成物から分離することが困難な処理関連不純物(「DMT−オン(n−l)−mer」の形成をもたらす。これらの不純物の形成を回避し、精製を促進するために、「キャッピング試薬」(例えば、無水酢酸およびN−メチルイミダゾール/アセトニトリル/ピリジン)は、反応容器の中に導入されて、キャップ配列を生じる。得られた失敗配列(「DMT−オフショートマー」)は、逆相HPLC精製によって所望の生成物から分離される。キャッピング反応後、次の反応の準備において、アセトニトリルで洗浄することによって、過剰な試薬を支持体から除去する。
【0165】
適切な保護ヌクレオシドホスホルアミダイトを使用するこの基本的な4ステップ周期の繰り返しによって、全保護オリゴヌクレオチド配列のアセンブリを可能にする。
【0166】
骨格脱保護(反応e)
プロセスのアセンブリ部分の完了に続いて、(O,O,O)−トリアルキルホスホロチオエートトリエステルヌクレオチド間結合を保護するシアノエチル基をアセトニトリル中のトリエチルアミン(TEA)溶液で処理することによって除去する。このステップの間に生成された試薬およびアクリロニトリルは、カラムをアセトニトリルで洗浄することによって除去される。
【0167】
支持体および塩基脱保護からの切断(反応f)
環外アミノ基の脱保護および支持体からの粗生成物の切断が、含水水酸化アンモニウムで培養することによって達成される(反応f)。5′−O−DMT保護された粗生成物の精製は、逆相HPLCによって達成される。逆相HPLCステップは、DMT−オフ失敗配列を除去する。溶出プロファイルは、UV吸収分光法によって監視される。DMT−オンオリゴヌクレオチド生成物を含む画分を収集し、分析する。
【0168】
酸性脱保護(反応g)
5′−O−DMT保護されたオリゴヌクレオチドを含有する逆相HPLC画分は貯蔵され、沈殿タンクに移される。いくつかの合成の精製から得られる生成物は、プロセスのこの段階で組み合わせられる。精製されたDMT−オンオリゴヌクレオチドは、酸(例えば、酢酸)で処理され、5′末端に結合されたDMT基を除去する。定めた時間の酸暴露および中和後に、オリゴヌクレオチド原薬を単離し、乾燥する。
【0169】
最終の酸性脱保護ステップに続いて、溶液は、水酸化ナトリウム水溶液の添加によって中和され、オリゴヌクレオチド原薬は、エタノールを添加することによって溶液から沈殿される。沈殿した物質を反応容器の底に定着させ、容器を傾けてエタノール上清を移す。沈殿した物質を精製水に再溶解し、溶液のpHをpH7.2〜7.3の間に調整する。沈殿ステップを繰り返す。沈殿した物質を水に溶解し、0.45ミクロンフィルターを通して溶液を濾過して、使い捨てのポリプロピレンのトレイに移した後、凍結乾燥機の中に置く。溶液を−50℃に冷却する。一次乾燥を25℃で37時間行う。温度を300℃まで上昇させ、二次乾燥ステップを5.5時間行う。凍結乾燥プロセスの完了に続いて、原薬を高密度ポリエチレンのボトルに移し、−200℃で保管した。
【0170】
標的核酸
特定の核酸に対するアンチセンス化合物の「標的化」は、複数のステップのプロセスであり得る。このプロセスは通常、その機能が変調される標的核酸の同定から始まる。本開示において、標的核酸は、成長ホルモン受容体(GHR)をコードする。「標的核酸」という用語は、GHRをコードするDNA、そのようなDNAから転写されるRNA(プレmRNAおよびmRNA、またはそれらの部分を含む)、およびさらにそのようなRNAに由来するcDNAを包含する。
【0171】
成長ホルモン受容体をコードするcDNAは、多くの種からクローン化されてきた。受容体は、細胞外ホルモン結合領域(エクソン2〜7)、単一の膜貫通領域(エクソン8)、および細胞内領域(エクソン9〜10)から成る。ヒトおよびマウス転写物の両方における、遺伝子の代替の第1のエクソンである、複数の代替の5’非翻訳領域もまた存在する。成長ホルモン受容体は内在性キナーゼドメインを有さないが、細胞内領域は、シグナル伝達プロセスにおける主要な役割を果たす。成長ホルモン結合タンパク質(GHBP)として知られる受容体の切断型は、GHRの膜貫通および細胞内領域を欠乏しており、血清内に分泌される。切断型タンパク質は、動物種に応じて、2つの異なるプロセスのうちの1つによって生成される。マウスおよびラットにおいて、GHR前駆体メッセンジャーRNAの選択的スプライシングは、膜貫通および細胞内領域を(エクソン8Aでコードされている)非常に短い親水性の尾部で置き換える。(特に)ヒト、ウシ、およびブタにおいて、選択的RNAスプライシングがないことは明らかであるが、代わりにGHBPがGHRのタンパク質分解によって生成される。GHBPは、循環成長ホルモン(GH)のレベルを調節するようにみえる。
【0172】
1つの実施形態において、GHRは、NM_000163.4(配列番号4)またはNG_011688(4852−302955)(配列番号5)において示されるヌクレオチド配列を有するヒトGHR(hGHR)である。
【0173】
標的化プロセスは、通常、アンチセンス相互作用が生じるように、標的核酸内の少なくとも1つの標的領域、セグメント、または部位の特定も含み、所望の効果、例えば、発現の阻害が生じるようにする。本明細書に使用される場合、「領域」という用語は、少なくとも1つの同定可能な構造、機能、または特徴を有する標的核酸の一部分として定義される。標的核酸の領域内にセグメントがある。「セグメント」は、標的核酸内の領域のより小さい、または下位の部分として定義される。本明細書に使用される場合、「部位」は、標的核酸内の位置を意味する。
【0174】
「翻訳開始コドン」は典型的に、5′−AUG(転写mRNA分子において、対応するDNA分子では5′−ATG)であるため、翻訳開始コドンは、「AUGコドン」、「開始コドン」、または「AUG開始コドン」とも称される。少数の遺伝子が、RNA配列5′−GUG、5′−UUG、または5′−CUGを有する翻訳開始コドンを有し、5′−AUA、5′−ACG、および5′−CUGは、インビボで機能することを示した。したがって、「翻訳開始コドン」および「開始コドン」という用語は、それぞれの例における開始アミノ酸が、典型的にメチオニン(真核細胞において)またはホルミルメチオニン(原核細胞において)であるとしても、多くのコドン配列を包含し得る。真核細胞および原核細胞遺伝子が2つ以上の選択的開始コドンを有し得ることも当該技術分野において知られており、それらのいずれか1つが、特定の細胞型もしくは組織において、または特定の条件下で、翻訳開始に選好的に利用されてもよい。本明細書に使用される場合、「開始コドン」および「翻訳開始コドン」という用語は、そのようなコドンの配列(複数可)に関わらず、例えば、GHRをコードする遺伝子から転写されるmRNAの翻訳を開始するようにインビボで使用されるコドン(複数可)を指す。
【0175】
「停止コドン」とも称される「翻訳終止コドン」は、3つのRNA配列:5′−UAA、5′−UAG、および5′−UGA(対応するDNA分子において、それぞれ5′−TAA、5′−TAG、および5′−TGA)のうちの1つを有し得る。本明細書に使用される場合、「翻訳終止コドン」および「停止コドン」という用語は、そのようなコドンの配列(複数可)に関わらず、GHRをコードする遺伝子から転写されたmRNAの翻訳を終了するようにインビボで使用される、コドン(複数可)を指す。
【0176】
「開始コドン領域」および「翻訳開始コドン領域」という用語は、翻訳開始コドンからいずれかの方向(すなわち、5′または3′)に約25〜約50個の連続ヌクレオチドを包含する、mRNAまたは遺伝子の一部分を指す。同様に、「停止コドン領域」および「翻訳終止コドン領域」という用語は、翻訳終止コドンからいずれかの方向(すなわち、5′または3′)に約25〜約50個の連続ヌクレオチドを包含する、mRNAまたは遺伝子の一部分を指す。したがって、「開始コドン領域」または「翻訳開始コドン領域」および「停止コドン領域」または「翻訳終止コドン領域」とは、本アンチセンス化合物によって効果的に標的化され得るすべての領域である。
【0177】
翻訳開始コドンと翻訳終止コドンとの間の領域を指すことが当該技術分野において既知である、「オープンリーディングフレーム」(ORF)または「コード領域」もまた、効果的に標的化され得る領域である。1つの実施形態において、遺伝子のORFの翻訳開始または終止コドンを包含する遺伝子内領域が標的化される。
【0178】
他の標的領域は、翻訳開始コドンから5′方向のmRNAの部分を指すことが当該技術分野において知られており、したがって、mRNAの5′キャップ部位と翻訳開始コドンとの間にヌクレオチド(または遺伝子上で対応するヌクレオチド)を含む5′未翻訳領域(5′UTR)と、翻訳終止コドンから3′方向のmRNAの部分を指すことが当該技術分野において知られており、したがって、翻訳終止コドンとmRNAの3′末端との間にヌクレオチド(または遺伝子上で対応するヌクレオチド)を含む3′未翻訳領域(3′UTR)と、を含む。mRNAの5′キャップ部位は、5′−5′三リン酸結合を介してmRNAの5′−最末端残基に結合されたN7−メチル化グアノシン残基を含む。mRNAの5′キャップ領域は、5′キャップ構造自体、ならびにキャップ部位に隣接する最初の50ヌクレオチドを含むと考えられる。1つの実施形態において、5′キャップ領域が標的化される。
【0179】
いくつかの真核mRNA転写物は、直接翻訳されるが、多くは「イントロン」として知られる1つ以上の領域を含み、それが翻訳される前に転写物から切除される。残りの(およびしたがって翻訳された)領域は、「エクソン」として知られ、一緒にスプライスされて、連続したmRNA配列を形成する。異なる遺伝子源から2つ(以上)のmRNAをスプライシングするプロセスを介して産生されるmRNA転写物は「融合転写物」として知られる。1つの実施形態において、イントロン、またはスプライス部位、つまりイントロン−エクソン接合部もしくはエクソン−イントロン接合部、あるいは再配列または欠失のための異常な融合接合部が標的化される。
【0180】
選択的RNA転写物は、DNAの同じゲノム領域から生成され得る。これらの選択的転写物は、概して「変異体」として知られる。
【0181】
「プレmRNA変異体」は、それらの開始または停止位置のいずれかにおいて、同じゲノムDNAから生成される他の転写物とは異なる、同じゲノムDNAから生成された転写物であり、イントロンおよびエクソン配列の両方を含む。スプライシング中に1つ以上のエクソンもしくはイントロン領域、またはそれらの部分を切除するとき、プレmRNA変異体は、より小さい「mRNA変異体」を生成する。したがって、mRNA変異体は処理されたプレmRNA変異体であり、それぞれ固有のプレmRNA変異体は、スプライシングの結果として、固有のmRNA変異体を常に生成しなければならない。これらのmRNA変異体はまた、「選択的スプライス変異体」としても知られている。プレmRNA変異体のスプライシングが生じない場合、その時、プレmRNA変異体は、mRNA変異体と同一である。
【0182】
マウス、ラット、およびサルにおいて、GHRの溶解性の短縮形態であるGHBPは、GHR一次転写物の選択的スプライシングによって生成される。いくつかの実施形態において、転写物の標的領域がGHR転写物および短いGHBP転写物の両方に存在することが好ましい場合がある。他の実施形態において、mRNAの標的領域が、より長いGHR転写物にのみ存在することが好ましい場合がある。(特に)ヒト、ウシ、およびブタにおいて、選択的RNAスプライシングがないことは明らかであるが、代わりにより短いGHBPがGHRのタンパク質分解によって生成される。本発明の文脈において、「GHRをコードする核酸」とは、GHBPをコードする核酸を含むことが理解されよう。
【0183】
変異体は、転写を開始または停止させる選択的シグナルの使用によって、つまり、選択的開始コドンまたは停止コドンの使用によって生成され得る。選択的開始コドンを使用するプレmRNAまたはmRNAに由来する変異体は、プレmRNAまたはmRNAの「選択的開始変異体」として知られる。選択的停止コドンを使用する転写物は、そのプレmRNAまたはmRNAの「選択的停止変異体」として知られる。選択的停止変異体の一つの具体的な型は、「ポリA変異体」であり、そこで生成される複数の転写物は、転写機構によって「ポリA停止シグナル」のうちの1つの選択的な選別の結果であり、それにより固有のポリA部位で停止する転写物を生成する。1つの実施形態において、プレmRNAまたはmRNA変異体が標的化される。ヒトGHRは、国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/guide/および他のウェブサイトhttp://www.uniprot.org/uniprot/P10912#PRO_0000010958によって同定され得る、いくつかの転写変異体を有する。これらの転写物のさらなる選択的配列および天然変異体配列が存在する。
【0184】
そこにアンチセンス化合物がハイブリッド形成する標的核酸の位置は、「標的セグメント」と称される。本明細書に使用される場合、「標的セグメント」という用語は、そこにアンチセンス化合物が標的化される標的領域の少なくとも8個の核酸塩基部分として定義される。理論に縛られるものではないが、現在、これらの標的セグメントは、ハイブリッド形成のためにアクセス可能な標的核酸の部分を表すと考えられている。
【0185】
一旦1つ以上の標的領域、セグメント、または部位が同定されると、標的セグメントに対して十分に相補的なアンチセンス化合物、つまり所望の効果を得るために十分に良好にハイブリッド形成し、十分な特異性を有するアンチセンス化合物が選択される。
【0186】
さらなる実施形態において、本明細書で同定される標的セグメントは、GHR遺伝子の発現(およびしたがってGHRの発現)を調節する追加の化合物のスクリーニングに用いられてもよい。「修飾因子」は、GHRをコードする核酸分子の発現を減少または増加させ、好適な標的セグメントに対して相補的である少なくとも8核酸塩基部分を含む、化合物である。
【0187】
スクリーニング方法は、GHRをコードする核酸の標的セグメントを1つ以上の候補修飾因子と接触させるステップと、GHRをコードする核酸の発現を減少または増加させる1つ以上の候補修飾因子を選択するステップと、を含む。一旦、1つまたは複数の候補修飾因子がGHRをコードする核酸の発現を調節(例えば、減少または増加のいずれか)できることが示されると、次いで修飾因子は、GHRの機能に関するさらなる調査研究において、あるいは調査、診断、もしくは治療薬として使用するために用いられ得る。
【0188】
標的セグメントはまた、そのそれぞれの相補的なアンチセンス化合物と組み合わせて、安定化された二本鎖(二重鎖)オリゴヌクレオチドを形成してもよい。
【0189】
そのような二本鎖のオリゴヌクレオチド部分は、当該技術分野において、標的発現を調節し、翻訳ならびにアンチセンス機序を介してRNAプロセシングを制御することが示された。さらに、二本鎖部分は、化学修飾に供され得る(Fire et al.,1998、Timmons and Fire,1998、Timmons et al.,2001、Tabara et al.,1998、Montgomery et al.,1998、Tuschl et al.,1999、Elbashir et al.,2001a、Elbashir et al.,2001b)。例えば、そのような二本鎖部分は、標的に対する二重鎖のアンチセンス鎖の古典的なハイブリッド形成によって、標的を阻害し、それによって標的の酵素分解を誘起することが示された(Tijsterman et al.,2002)。
【0190】
例となる標的核酸
例となる標的配列は、表2に示される。
【0191】
表2 成長ホルモン受容体中で同定される好ましい標的配列の配列および位置
【表2-1】
【表2-2】
【0192】
組成物/製剤
本開示の方法に有用なアンチセンス化合物は、他の分子、分子構造、または化合物の混合物と混合、被包、抱合、またはさもなければ関連付けられ、例えば、取り込み、分布、および/または吸収を補助するためのリポソーム、受容体標的分子、経口、直腸、局所、または他の製剤を生じ得る。
【0193】
そのような取り込み、分布、および/または吸収を補助する製剤の調製法を教示する代表的な米国特許には、これらに限定されるものではないが、米国第5,108,921号、米国第5,354,844号、米国第5,416,016号、米国第5,459,127号、米国第5,521,291号、米国第5,543,158号、米国第5,547,932号、米国第5,583,020号、米国第5,591,721号、米国第4,426,330号、米国第4,534,899号、米国第5,013,556号、米国第5,108,921号、米国第5,213,804号、米国第5,227,170号、米国第5,264,221号、米国第5,356,633号、米国第5,395,619号、米国第5,416,016号、米国第5,417,978号、米国第5,462,854号、米国第5,469,854号、米国第5,512,295号、米国第5,527,528号、米国第5,534,259号、米国第5,543,152号、米国第5,556,948号、米国第5,580,575号、および米国第5,595,756号が挙げられる。
【0194】
アンチセンス化合物は、薬学的に許容される担体中で投与され得る。「薬学的に許容される担体」という用語は、対象、特に哺乳動物、およびより具体的にはヒトに投与されるとき、アレルギー、毒性、または他の有害反応を生じない分子実体を指す。薬学的に許容される担体は、固体または液体であり得る。薬学的に許容される担体の有用な例には、本開示の活性剤の活性に影響しない希釈剤、溶媒、界面活性剤、賦形剤、懸濁剤、緩衝剤、潤滑剤、アジュバント、媒体、乳化剤、吸収剤、分散媒質、コーティング剤、安定剤、保護コロイド、接着剤、増粘剤、チキソトロピー剤、浸透剤、封鎖剤、等張剤、および吸収遅延剤が挙げられるが、これらに限定されない
【0195】
アンチセンス化合物は、薬学的に許容される塩、エステル、もしくはエステルの塩、または投与時に生物活性代謝物を(直接または間接的に)提供することができる任意の他の化合物であり得る。
【0196】
本明細書に使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、投与時に親化合物の所望の生物活性を保持し、望ましくない毒物学的効果を付与しない、アンチセンス化合物の生理学的および薬学的に許容される塩を指す。薬学的に許容される塩およびその使用の好適な例は、米国第6,287,860号においてさらに記載される。
【0197】
アンチセンス化合物は、プロドラッグもしくはプロドラッグの薬学的に許容される塩、または他の生物学的同等物であり得る。
【0198】
本明細書に使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、内因性酵素もしくは他の化学物質の作用、および/または状態によって、投与されると活性化状態(すなわち、薬剤)に変換される不活性化状態で調製される治療薬を指す。具体的には、アンチセンス化合物のプロドラッグ形態は、国際公開第93/24510号、国際公開第94/26764号、および米国第5,770,713号において開示される方法に従って、SATE[(Sアセチル−2−チオエチル)リン酸塩]誘導体として調製される。
【0199】
治療的投与のための成長ホルモン(GH)変異体の製剤は、所望の純度を有するGH変異体を任意に薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,A.Oslo,A(editor)(1980))と混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で貯蔵用に調製される。非経口製剤が、単位投与注入形態(溶液、懸濁物、またはエマルジョン)のGH変異体と薬学的に許容される担体を混合することによって、調製され得る。薬学的に許容される担体は、用いられる投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、製剤の他の成分に適合する。例えば、製剤は好ましくは、酸化剤およびポリペプチドに有害であると知られている他の化合物を含まない。好適な担体には、リン酸塩、ホウ酸塩、HEPES、クエン酸塩、および他の有機酸を含有する緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;亜鉛、コバルト、もしくは銅等の二価金属イオン;マンニトールまたはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;および/またはツイーン、プルロニック、もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0200】
加えて、GH変異体がグリシン、マンニトール、およびリン酸塩緩衝剤等の緩衝剤を含む組成物中に含まれる国際公開第89/09614号に示されるGH製剤が用いられてもよい。この製剤の一例は、0.68g/L グリシン、18.0g/L マンニトール、5mM リン酸ナトリウム、pH7.4である。代替として、GH変異体は液体製剤中に含まれてもよく、必ずしもマンニトールまたはグリシンを含有せず、ポリソルベートまたはポロクサマー等の0.1〜5%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含む。この製剤の一例は、5mg/ml GH変異体、8.77mg/ml NaCl、2.5mg/ml フェノール、2.0mg/ml ポリソルベート20、および10mM クエン酸ナトリウム、pH6.0である。
【0201】
GH変異体はまた、持続放出系によって好適に投与される。持続放出組成物の好適な例には、造形品、例えば、フィルムもしくはマイクロカプセルの形態の半透性のポリマーマトリクスが挙げられる。持続放出マトリクスには、ポリ乳酸(米国第3,773,919号;欧州第58,481号)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタミン酸塩のコポリマー(Sidman et al.,1983)、ポリ(2−ヒドロシキエチルメタクリル酸塩)(Langer et al.,1981;Langer,1982)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,1982)、またはポリ−D−(−)−3−ヒドロシキ酪酸(欧州第133,988号)が挙げられる。持続放出GH変異体組成物はまた、リポソーム封入のGH変異体を含む。GH変異体を含むリポソームは、当該技術分野で既知の方法で調製される(DE第3,218,121号;Epstein et al.,1985;Hwang et al.,1980;欧州第52,322号;欧州第36,676号;欧州第88,046号;欧州第143,949号;欧州第142,641号;日本国第83−118008号;米国第4,485,045号;米国第4,544,545号;および欧州第102,324号を参照されたい)。通常、リポソームは、その脂質含有量が約30モルパーセントコレステロールを上回る小さい(約200〜800オングストローム)単層型のものであり、その選択される比率はGH変異体療法に最適に調整される。
【0202】
GH変異体はまた、局所投与用に製剤化され得る。好適な製剤は、投与の部位に応じて異なり、当該技術分野で知られているものと変わりはない。例えば、GHは、眼への投与用に平衡塩類溶液中に製剤化されてもよい。
【0203】
治療的投与のためのGH変異体製剤は、滅菌されている。滅菌は、滅菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)を通した濾過によって容易に達成される。治療的GH変異体組成物は概して、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。GH変異体は、通常、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液として、または再構成するための凍結乾燥製剤として貯蔵される。凍結乾燥製剤化の一例として、5mlのバイアルに、滅菌濾過した0.5%(w/v)GH変異体水溶液2mlを充填し、その得られた混合物を凍結乾燥する。
【0204】
凍結乾燥したGH変異体を、注射用の静菌水等を用いて再構成することにより注入溶液を調製する。
【0205】
ペグ化GH変異体の製剤化は、概して、GH変異体に関して上述されたように行われる。
【0206】
投与
本開示の方法は、対象におけるインスリン様成長因子I(IGF−I)レベルを低下させる、拮抗活性を有する成長ホルモン(GH)変異体と成長ホルモン受容体(GHR)を標的化するオリゴヌクレオチドとの併用の予想外の相乗作用に依存する。
【0207】
本開示の特定の実施形態において、GH変異体およびオリゴヌクレオチドは同時に投与される。GH変異体およびオリゴヌクレオチドは、両成分の混合物を含む組成物の形態で投与され得る。代替として、GH変異体およびオリゴヌクレオチドは、別々の組成物において投与され得る。
【0208】
1つの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、全身的に投与される。本明細書に使用される場合、「全身性投与」とは、経腸または非経口のいずれかの投与経路である。
【0209】
本明細書に使用される場合、「経腸」とは、胃腸管のすべての部分を含む投与の任意の形態を指し、例えば、錠剤、カプセル、もしくはドロップ形態でのアンチセンスオリゴヌクレオチドの経口投与;胃栄養管、十二指腸栄養管、もしくは胃瘻造設術;ならびに、例えば、坐薬もしくは浣腸形態でのアンチセンス化合物の直腸投与を含む。
【0210】
本明細書に使用される場合、「非経口」とは、注射または注入による投与を含む。例としては、静脈内(静脈の中)、動脈内(動脈の中)、筋肉内(筋肉の内)、心臓内(心臓の中)、皮下(皮膚の下)、骨内注入(骨髄の中)、皮内(皮膚自体の中)、髄腔内(脊柱管の中)、腹腔内(腹腔の中に注入または注射)、膀胱内(膀胱の中に注入)、経皮(正常な皮膚を通じて拡散)、経粘膜(粘膜を通じて拡散)、吸入が挙げられる。
【0211】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、単回用量として、あるいは定期的に、例えば、毎日、2日、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日毎に1回、週1回、週2回、週3回、または2週間毎、3週間毎、もしくは4週間毎に、反復用量として投与され得る。
【0212】
本治療において使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、治療される特定の状態、個々の患者の臨床状態、オリゴヌクレオチドの送達の部位、投与方法、投与のスケジュール、ならびに施術者に知らされている他の要因を考慮して、適正な医療行為と一致する方法で製剤化され、投与される。本明細書における目的のためのオリゴヌクレオチドの「有効量」は、したがってそのような状態によって決定される。本文脈における「有効量」は、投与の条件下で、GHR発現を阻害するのに十分なアンチセンスオリゴヌクレオチドの任意の用量を指す。
【0213】
例として、25〜3400、より好ましくは50〜1600mgオリゴヌクレオチドの用量が、対象に投与され得る。150〜400mgの用量、例えば250mgの用量が、ヒトにおいて特に企図される。1つの実施形態において、1日当たり250mgの用量が、3週間にわたって6回、1、3、5、7、14、および21日目に投与される。別の実施形態において、250mgの用量が週1回または2週に1回投与される。
【0214】
GH変異体は、例えば、(例えば、浸透圧ポンプ等のミニポンプを使用して)連続注入によって、または例えば、静脈内もしくは皮下の方法を使用する注射によって、投与され得る。1つの実施形態において、GH変異体は、皮下に投与される。投与はまた、単一ボーラスとして、または徐放出デポー製剤によるものであり得る。
【0215】
本治療において使用されるGH変異体組成物は、治療される特定の状態、個々の患者の臨床状態、GH変異体組成物の送達の部位、投与方法、投与のスケジュール、ならびに施術者に知らされている他の要因を考慮して、適正な医療行為と一致する方法で製剤化され、投与される。本明細書における目的のためのGH変異体の「有効量」(反作用、例えば先端巨大症へのアンタゴニスト有効量を含む)は、したがってそのような状態によって決定される。本文脈における「有効量」は、投与の条件下で、GH結合を拮抗するのに十分なGH変異体の任意の用量を指す。
【0216】
一般命題として、1用量当たりの非経口で投与されるGH変異体の総薬学的有効量は、患者の体重の約1μg/kg/日〜約100mg/kg/日の範囲であるが、上で述べたように、これは治療的裁量の対象である。通常、この用量は約0.01〜約10mg/kg/日であり、より通常に、ヒトに対しては約0.01〜約1μg/kg/日である。連続的に与えられる場合、GH変異体は典型的に、1日当たり1〜4回の注射よって、または例えば、ミニポンプを使用する連続皮下注入のいずれかによって、約1μg/kg/時間〜約50μg/kg/時間の投薬速度で投与される。静脈内用バッグ溶液がまた用いられてもよい。適切な用量の選択における主要な要因は、例えば、血清GH、血清インスリン様成長因子I(IGF−I)、および腫瘍成長等の低下によって、アンタゴニストに対して測定される、得られた結果である。
【0217】
一般に、ペグ化GH変異体は、上述の投与経路のうちのいずれかによって投与され得る。しかしながら、現在、ペグ化GH変異体は非ペグ化GH変異体ほど頻繁に投与される必要がないと考えられている。非ペグ化GHおよびGH変異体は典型的に、少なくとも1週間に3回、およびしばしば毎日投与される。これらのタンパク質のペグ化形態は、3日間毎に約1回〜1か月に約1回、またはより典型的に、6〜7日毎に約1回〜2週間毎に1回、投与され得る。しかしながら、ペグ化GH変異体ソマバートは典型的に、5〜80mgの範囲の用量で毎日、またはより典型的には、初日の40mgの負荷量の後、1日当たり10〜30mg投与される。30mg/日のソマバートは、先端巨大症に対して承認された1日用量のレジメンの最高値である。一部の先端巨大症患者において、および癌において、より高い1日用量が望まれる。
【0218】
GH変異体は、単回用量として、あるいは定期的に、例えば、毎日、2日、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日毎に1回、週1回、週2回、週3回、または2週間毎、3週間毎、もしくは4週間毎に反復用量として投与され得る。
【0219】
本開示の1つの実施形態において、GH変異体はソマバートであり、オリゴヌクレオチドはATL1103(配列番号)であり、それらの化合物は順次投与される。1つの実施形態において、ATL1103オリゴヌクレオチドが1、3、5、7、14、および21日目に250mg/日の用量で、ならびにその後(5〜12週において)は週に1回、最初に投与され、続いてGH変異体ソマバートが30mg/日で同じ日に投与される。代替として、ATL1103オリゴヌクレオチドは、週1回または2回(8〜12週において)250mgの用量で、週1回または2回または3回の30mgのソマバート用量と一緒に投与されてもよい。
【0220】
5〜12週の後、治療は、所望の標的IGF−Iレベルを達成するために、同じか、または増加もしく低下した用量のソマバートを用いて、および同じか、または増加もしく低下した用量のATL1103を用いて、ならびに同じか、または増加もしく低下した投薬頻度で、継続され得る(周期2)。5〜12週間後のソマバート用量の修正は、約5〜10mgの増加であってもよく、約1〜4週間監視し、IGF−Iレベルを評価する。5〜12週間後のATL1103用量の修正は、約25または50mgの増加であってもよく、約1〜8週間監視し、IGF−Iレベルを評価する。標的IGF−I正規化が達成される場合、周期2が継続されてもよく、または患者毎の一患者におけるIGF−I正規化を達成するために、新たな周期が、投薬のさらなる最適化のために開始される。
【0221】
別の実施形態において、癌または網膜症治療のために21日治療周期が反復され得る。ATL1103オリゴヌクレオチドが1、3、5、7、14、および21日目に250mg/日の用量で最初に投与され、続いてGH変異体ソマバートが30mg/日で同じ日に投与される。代替として、反復周期において、ATL1103オリゴヌクレオチド投薬は週1回または2回、250mgで、同じ日に週1回もしくは2回、30mgのソマバート用量、または、同じ日に週1回、80mgのソマバートと一緒に行われてもよい。代替として、治療は異なる日であってもよい。
【0222】
5〜12週の後、治療は、所望の標的IGF−Iレベルおよび癌または網膜症における治療成果を達成するために、同じか、または増加もしく低下した用量のソマバートを用いて、および同じか、または増加もしく低下した用量のATL1103を用いて継続され(周期2)、同じか、または増加もしく低下した投薬頻度で管理され得る。5〜12週間後のソマバート用量の修正は、約5〜10mgの増加であってもよく、約1〜4週間監視し、IGF−Iレベルを評価する。5〜12週間後のATL1103用量の修正は、約25または50mgの増加であってもよく、約1〜8週間監視し、IGF−Iレベルを評価する。標的IGF−I正規化が達成される場合、周期2が継続されてもよく、または患者毎の一患者におけるIGF−I正規化を達成するために、新たな周期が、投薬のさらなる最適化のために開始される。
【0223】
別の実施形態において、ATL1103薬物は、100、200、250、300、350、もしくは400mg/日の用量で週1回または2回投薬され得、ソマバートは、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、もしくは80mg/日で毎日、1日おき、または週1回または2回投薬され得る。
【0224】
別の実施形態において、患者が、最初にATL1103、次いでソマバートである、週1回の代替投薬レジメンにあるように、ATL1103オリゴヌクレオチドが上記の用量のうちの1つで1週おきに1回最初に投与され、続いてGH変異体ソマバートが、代替の週に投与される。同様の実施形態において、患者は、数日おいて、または1日おいて最初にATL1103、次いでソマバートである、週2回の投薬レジメンにある。ソマバートが最初に与えられてもよく、次いでATL1103の投薬が続いてもよい。ソマバートおよびATL1103を混合物中で組み合わせ、同じ日に与えてもよい。例えば、事前充填注射器の溶液中のATL1103を凍結乾燥されたソマバートに添加し、ソマバートを溶液中に再構成し、ATL1103およびソマバートの混合物を対象に投与してもよい。
【0225】
実施例
GHR標的化薬物ATL1103の第1相試験。
第1相試験の第一目的は、ATL1103の安全性、認容性、薬物動態(pK)を評価することであった。
【0226】
第1相試験は、18〜45歳の健常な成人男性対象におけるATL1103の単回漸増用量および複数回用量の無作為化プラセボ対照二重盲検試験であった。試験の単回漸増投与ステージにおいて、24対象に、25mgで開始し、75、250、および400mgに漸増するか、またはプラセボの単一の注射である、4つの用量レベルのATL1103を投与した。複数回用量ステージは、1、3、5、7、14、および21日目に投与された、250mgのATL1103の6回の皮下投与を受けた8対象、ならびにプラセボを受けた4対象の12対象において行われた。35日目まで対象を監視した。
【0227】
重要なことに、本試験において重篤な有害事象は報告されなかった。複数回用量群において2対象が安全性とは関係のない理由により、試験から離脱した。すべての有害事象は、「軽度〜中度」と報告された。注射部位反応が、本試験において報告された全有害事象の大半を示した。複数回用量ステージにおいて有害事象として報告された肝臓酵素ALTの上昇が1つ存在した。重要なことには、この対象におけるALTレベルは投薬期の間に正常に戻り、本安全性パラメーター上の薬物の残留または累積効果がなかったことを示唆する。
【0228】
本試験の第二目的は、試験対象の血中のIGF−IレベルにおけるATL1103の薬力学効果のデータを得ることであった。上昇した血清IGF−Iのレベルの正常への低下は、成長障害である先端巨大症の治療における治療上のエンドポイントであり、IGF−Iの効果の低下は、糖尿病性網膜症、腎症、および特定の形態の癌の治療における潜在的役割を有する。
【0229】
統計解析計画において定義されるように、血清IGF−I上のATL1103の効果をIGF−Iレベル対ベースライン(起点)における変化として評価し、治療(ATL1103)を受けた対象について判定した。IGF−Iの投薬前ベースラインレベルを投薬の開始前に記録し、次いで、監視期間の終了まで週間隔で測定した。この治療群は14日目から28日目にIGF−Iレベルにおける低下の傾向を示し、21日目に有意な効果(p=0.034 片側t検定)を有し、IGF−Iレベル対ベースラインにおいて平均7%の低下を有した。
【0230】
本試験の他の試験的目的では、成長ホルモン結合タンパク質(GHBP)、インスリン様成長因子結合タンパク質3(IGFBP−3)、インスリン様成長因子結合タンパク質複合体の酸不安定サブユニット(ALS)、および成長ホルモン(GH)のレベルにおける、ならびにインビボ分裂促進性およびアポトーシス性パラメーターの薬物の作用機序およびより広範囲な薬理学的特性を調査した。
【0231】
特に、ATL1103は、21日目に16%(p=0.007)および最後の投与から1週間後の28日目に19%(p<0.05)のGHBPの減少における著しい効果を有した。循環GHBPはGHRからの切断によって生成されるため、循環GHBPレベルの減少はGHR発現が減少されることを示す。ATL1103はまた、IGFBP−3およびALSも著しく減少させ、その両方は、IGF−I上でのその効果およびそれらがGHによって制御されるという事実と一致する。GHレベルにおける効果はなかった。具体的な試験詳細および結果は表3〜6に要約される。
【0232】
表3 ATL1103第1相臨床試験の概要
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0233】
表4 薬物動態パラメーター(平均±標準偏差)の概要
【表4】
【0234】
表5 ステージBにおけるATL1103で治療された対象の血清IGF−Iレベル
【表5】
【0235】
表6 ステージBにおけるATL1103対象の試験的PDアセスメント
【表6】
【0236】
実施例2: 血清IGF−Iの減少を必要とする対象におけるものを含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与。
ATL1103は、1日当たり250mgで、3週間にわたって6回、1、3、5、7、14、および21日目に皮下投与されるものである。
【0237】
ソマバートは、1日目または24日目に開始して7日間、1日当たり20mgで皮下に投薬される。
【0238】
理論に制限されるものではないが、ATL1103は、各投与の後、血液から除去され、その長い組織半減期により肝臓および他の臓器中に蓄積する。ATL1103は、肝実質細胞および他の肝細胞ならびに他の臓器の細胞表面上でGHRタンパク質を減少するように働き、細胞表面GHRタンパク質から切断される血中GHR(GHBP)の結果として得られる溶解型を減少させる。
【0239】
対照群: 健常者または血清IGF−Iの減少を必要とする対象に、ソマバートは同様の7または24日の期間に単独で投与されるものであり、またはATL1103は同様の21日の期間に投与されるものである。
【0240】
薬力学および薬理作用効果は、同様のアッセイならびに、例えば血清IGF−IおよびGHに有用である追加のアッセイを用いて実施例1に記載のように評価される。
【0241】
治療は、所望の標的血清IGF−Iレベル、および任意にGHレベルを実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0242】
実施例3: 先端巨大症の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与。
15先端巨大症患者の群に、ATL1103を実施例1に記載のように、およびさらなる6週間、週1回投与で、ならびに24日目に開始して6週間、(i)30mgのソマバートを週1回、または(ii)80mgのソマバートを週1回のいずれかで投薬する。
【0243】
対照群: ATL1103またはソマバートは、それぞれ同様の9週の期間または6週の期間に単独で、先端巨大症の患者に投与されるものである。血清IGF−Iが16%および31%減少され、患者の12.5%および26.7%が、それぞれ30および80mgの用量で6週間、ソマバートを単独で投与されたとき、血清IGF−Iレベルに対して正規化されたことが以前に示された。ソマバートの週1回投与は、先端巨大症患者へ毎日投与し、多数の先端巨大症患者の血清IGF−Iを正規化するために中断された。
【0244】
治療は、所望の標的血清IGF−Iレベルを実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0245】
実施例4: 先端巨大症の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与。
15先端巨大症患者の群に、13週間、200mgのATL1103を週1回投与で、および13週間、ATL1103と同じ日に(i)30mgのソマバートを週1回、または(ii)80mgのソマバートを週1回のいずれかで投薬する。
【0246】
対照群: ATL1103またはソマバートは、同様の13週の期間に単独で先端巨大症の患者に投与されるものである。
【0247】
治療は、所望の標的血清IGF−Iレベルを実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0248】
実施例5: 先端巨大症の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与
15先端巨大症患者の群に、13週間、200mgのATL1103を週1回または2回投与で、ならびに13週間、ATL1103と同じ日に(i)30mgのソマバートを週1回、または(ii)30mgのソマバートを週2回のいずれかで投薬する。
【0249】
対照群: ATL1103またはソマバートは、同様の13週の期間に単独で先端巨大症の患者に投与されるものである。
【0250】
治療は、所望の標的血清IGF−Iレベルを実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0251】
実施例6: 糖尿病性網膜症の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与
糖尿病性網膜症を有する15患者の群に、13週間、200mgのATL1103を週1回または2回投与で、ならびに13週間、ATL1103と同じ日に(i)30mgのソマバートを週1回、または(ii)30mgのソマバートを週2回のいずれかで投薬する。
【0252】
対照群: ATL1103またはソマバートは、同様の13週の期間に単独で糖尿病性網膜症患者に投与されるものである。
【0253】
治療は、所望の標的IGF−Iレベルおよび任意にGHレベル、ならびに網膜症における結果を実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0254】
実施例7: 癌の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与。
増加したIGF−Iに関連付けられる癌を有する15患者の群に、13週間、200mgのATL1103を週1回または2回投与で、ならびに13週間、(i)30mgのソマバートを週1回、もしくは(ii)30mgのソマバートを週2回、または(iii)80mgを週1回、もしくは(iv)80mgのソマバートを週2回のいずれかで投薬する。
【0255】
対照群: ATL1103またはソマバートは、患者標準的薬剤で同様の13週の期間に癌患者に単独で投与されるものである。
【0256】
治療は、所望の標的IGF−Iレベルおよび任意にGHレベル、ならびに癌における結果を実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0257】
実施例8: 先端巨大症の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与
ソマバートは、先端巨大症患者が、その治療に現在使用されている用量、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50mg/日、またはそれ以上で皮下投与される。
【0258】
ATL1103は、1日当たり250mgで、3週間にわたって6回、1、3、5、7、14、および21日目に皮下投与されるものである。
【0259】
薬力学および薬理作用効果は、同様のアッセイならびに、例えば血清IGF−IおよびGHに有用である追加のアッセイを用いて実施例1に記載のように評価される。
【0260】
治療は、所望の標的血清IGF−I、および任意に、GHレベルを実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0261】
実施例9: 先端巨大症の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与。
ソマバートは、先端巨大症患者が、その治療に現在使用されている用量、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50mg/日、またはそれ以上で皮下投与される。
【0262】
ATL1103は、100、150、200、250、300、350、または400mgで、3週間にわたって週1回または2回、あるいは約1200〜1800mgの累積用量まで、皮下投与される。
【0263】
薬力学および薬理作用効果は、同様のアッセイならびに、例えば血清IGF−IおよびGHに有用である追加のアッセイを用いて実施例1に記載のように評価される。
【0264】
治療は、所望の標的血清IGF−I、および任意に、GHレベルを実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0265】
実施例10:先端巨大症の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびソマバートの同時投与
ソマバートは、先端巨大症患者が、その治療に現在使用されている用量、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50mg/日、またはそれ以上で皮下投与される。
【0266】
ATL1103は、100、150、200、250、300、350、または400mgで、4週間にわたって週1回または2回、または6週間にわたって週1回または2回、または8週間にわたって週1回または2回、または12週間にわたって週1回または2回、皮下投与される。
【0267】
薬力学および薬理作用効果は、同様のアッセイならびに、例えば血清IGF−IおよびGHに有用である追加のアッセイを用いて実施例1に記載のように評価される。
【0268】
治療は、所望の標的血清IGF−I、および任意に、GHレベルを実現するために、同じか、または増加もしくは低下した用量のソマバート、および同じか、または増加もしくは低下した用量のATL1103を用いて継続され、同じか、または増加もしくは低下した投与頻度で投与される。
【0269】
当業者であれば、広範に説明される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変形および/または修正が特定の実施形態に示されるように本発明に加えられてもよいことを理解する。したがって、本実施形態は、あらゆる点で説明するものであり、限定するものと見なされるべきではない。
【0270】
本明細書で論じられ、かつ/または参照されるすべての出版物は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0271】
本明細書に包含される文献、行為、材料、デバイス、品物等のいずれの考察も、単に本発明に前後関係を提供するためである。本出願のそれぞれの特許請求の主張の優先日前に存在したため、これらの事柄のいずれかもしくはすべてが先行技術の基礎の一部を形成するか、または本発明の関連分野で共通の一般的知識であったと承認するもと見なされるべきではない。
【0272】
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]