特許第6453710号(P6453710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453710
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】人工透析用水の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20190107BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20190107BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20190107BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20190107BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20190107BHJP
   C02F 1/469 20060101ALI20190107BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   G01N21/78 C
   G01N21/64 F
   B01D61/02
   B01D61/44 520
   C02F1/44 J
   C02F1/469
   A61M1/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-111166(P2015-111166)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-223932(P2016-223932A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】594152620
【氏名又は名称】ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】阿瀬 智暢
(72)【発明者】
【氏名】綿部 智一
(72)【発明者】
【氏名】新井 壮慶
(72)【発明者】
【氏名】中澤 了一
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋一
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−300840(JP,A)
【文献】 特開2014−091068(JP,A)
【文献】 特表2014−516791(JP,A)
【文献】 特開2010−279870(JP,A)
【文献】 特開2013−166139(JP,A)
【文献】 特開2014−113512(JP,A)
【文献】 特開2010−063370(JP,A)
【文献】 特開2010−279461(JP,A)
【文献】 米国特許第06323337(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0064465(US,A1)
【文献】 特開2014−171961(JP,A)
【文献】 User Guide,Quant-iT OliGreen ssDNA Reagent and Kit,Thermo Fisher Scientific Inc.,2015年 2月16日,MAN0001932, MP07582
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−21/83
A61M 1/00− 1/38
B01D 61/00−61/58
C02F 1/00− 1/78
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜装置を含む装置(ただし、電気再生式脱イオン装置は含まない)を使用して製造した人工透析用水中のオリゴDNAを、前記オリゴDNAの染料であるオリグリーン(登録商標)を含む試薬を用いた蛍光法により測定する、人工透析用水の品質管理方法。
【請求項2】
逆浸透膜装置と電気再生式脱イオン装置を含む装置を使用して製造した人工透析用水中のオリゴDNAを、前記オリゴDNAの染料であるオリグリーン(登録商標)を含む試薬を用いた蛍光法により測定する、人工透析用水の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析用水の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析液は、精製水(人工透析用水)と透析液原液を混合して製造されており、前記人工透析用水の製造装置および製造方法の発明が多数提案されている(特許文献1〜9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5449667号公報
【特許文献2】特許第5480534号公報
【特許文献3】特許第4440989号公報
【特許文献4】特許第5658908号公報
【特許文献5】特許第5357836号公報
【特許文献6】特開2013−166139号公報
【特許文献7】特開2014−91068号公報
【特許文献8】特開2014−113512号公報
【特許文献9】特許第5584321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、人工透析液に使用する人工透析用水の品質管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、逆浸透膜装置を含む装置(ただし、電気再生式脱イオン装置は含まない)を使用して製造した人工透析用水中のオリゴDNAを、オリグリーン試薬を用いた蛍光法により測定する、人工透析用水の品質管理方法を提供する。
【0006】
また本発明は、逆浸透膜装置と電気再生式脱イオン装置を含む装置を使用して製造した人工透析用水中のオリゴDNAを、オリグリーン試薬を用いた蛍光法により測定する、人工透析用水の品質管理方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の品質管理方法によれば、人工透析液に使用する人工透析用水中のオリゴDNA濃度を測定することで、安定して高品質の人工透析用水を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の品質管理方法を適用できる人工透析用水の製造フローを示した図。
図2】オリグリーン試薬を用いた蛍光法による、オリゴDAN濃度と蛍光強度との相関を示す検量線。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の人工透析用水の品質管理方法は、オリグリーン試薬を用いた蛍光法により人工透析用水中のオリゴDNAを測定することで、前記人工透析用水の品質管理をする方法である。
【0010】
本発明の品質管理方法を適用する人工透析用水は、
(I)逆浸透膜装置(RO装置)を含む装置(ただし、電気再生式脱イオン装置は含まない)を使用して製造した人工透析用水、または
(II)逆浸透膜装置と電気再生式脱イオン装置(EDI装置)を含む装置を使用して製造した人工透析用水である。
【0011】
前記(I)および(II)の人工透析用水は、例えば、特許文献1〜9に記載された発明を実施して製造することができるが、前記公報に記載の発明以外の公知の製造装置および製造方法で製造された人工透析用水でもよい。
特許文献9(特許第5584321号公報)には、(I)と(II)の両方の装置を使用した人工透析用水の製造方法が記載されている。
また、前記特許文献1〜9に記載された発明にも記載されているとおり、RO装置とEDI装置のほかにも、MF膜装置、NF膜装置、UF膜装置などの公知の膜分離装置、活性炭などの各種吸着剤を備えた装置、軟水化装置などを組み合わせることができる。
【0012】
人工透析用水中のオリゴDNA(1本鎖DNA;分子量1200〜5000)は、オリグリーン試薬キット(Quant-iT(Invitrogen社)を用いた蛍光法によって、実施例に記載の手順で測定する。
【0013】
本発明の人工透析用水の品質管理方法では、さらにエンドトキシン(ET)濃度と生菌数も測定することができる。
ET濃度と生菌数は、例えば、特許文献2(特許第5480534号公報)の実施例に記載されているET濃度測定装置(手動式)20:トキシノメータミニ(和光純薬(株)製)と生菌数測定装置:Panasonic バイオプローラ BP−2(パナソニック(株)製)を使用して測定することができる。
【実施例】
【0014】
実施例1
特開2014−91068号公報の実施例2と同様にして、図1に示す装置を使用して、医療用精製水(人工透析用水)の製造運転を実施した。
各装置の仕様は次の通りである。
【0015】
活性炭装置3:ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製ジュラコールMAC750SH
RO装置5:RO膜モジュール;ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製SV08−GP−DRA耐熱型
EDI装置9:ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製XL−500−S耐熱型
RO水タンク6:SUS316、250L
EDI水タンク10:SUS316、250L
UF装置7:UF膜モジュール;ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製FS10FC−FUST653
RO水タンク電気ヒーター6a:20kw
ラインヒーター4:10kw
熱交換器8:70000kcal
RO水製造水量:1000L/hr
【0016】
図1の装置を用いて医療用精製水の製造運転を実施した後で停止し、殺菌および冷却運転を行った。
RO水タンクヒーター6aの加熱とラインヒーター4の加熱を開始するとともに、第1循環ラインと第3循環ラインの二つの循環ラインによる循環運転を並行して実施した。
ヒーター6aとラインヒーター4による加温は、第3循環ラインのROモジュール出口の昇温速度が0.5〜2.5℃/分となるように制御しながら、20〜30℃のRO水タンク10内の水が80℃〜85℃の熱水になるまで約60分間かけて加温した。
その後、80〜85℃の熱水温度を保持しながら循環運転を30分間継続して、熱殺菌運転を実施した。
【0017】
熱水殺菌運転の終了後に、引き続き冷却運転を実施した。
冷却運転を行うため、RO水タンクヒーター6aの加熱及びラインヒーター4の加熱を停止し、次いで開閉弁73を開けて、ライン24を通して熱交換器8に冷却媒体として原水を供給した。
第1循環ラインと第3循環ラインの二つの循環ラインは、殺菌運転の場合と同様に並行して循環運転を継続した。
熱交換器8による冷却は、第2循環ラインのROモジュール出口の降温速度が1.0〜3.0℃/分となるように制御しながら、80〜85℃の熱水が20℃〜30℃になるまで約30分間かけて冷却した。
【0018】
上記の殺菌運転及び冷却運転を週に1回の頻度で実施しながら、精製水の製造運転を行った。
熱水殺菌を一度実施した後に精製水の製造運転を継続し、次の熱水殺菌を実施する前に原水(水道水)、RO膜モジュールの透過水およびEDI処理脱塩水をサンプリングして、それらのDNA濃度を測定した。
【0019】
<オリゴDNAの測定方法>
(試薬)
下記の試薬1〜4を備えたオリグリーン試薬キット(Quant-iT(Invitrogen社)を使用した。
試薬1:Quant iT OliGreen ssDNA Reagent (Component A) solution in DMSO
試薬2:20X TE (Component B)
試薬3:Oligonucleotide standard (Component C)
試薬4:DEPC-Treated Double-Distilled Water (Maxim Biotech)
【0020】
(検量線の作成)
(1)試薬2と試薬4からTEバッファーを調製した。
(2)試薬4とTEバッファーを用いて,200 ng/mL オリゴDNA溶液を調製した。
(3)200 ng/mL オリゴDNA溶液とTEバッファーを用いて,検量線用の各種濃度のオリゴDNA溶液を調製した。
(4)試薬1とTEバッファーを用いて,Quant-iT OliGreen ssDNA(蛍光発色液)溶液を調製した。
(5)蛍光分析装置のマイクロプレートの各スロットに検量線用の各種濃度のオリゴDNAを各100μL投入した。
蛍光分析装置は、蛍光マイクロプレートリーダーSPECTRA MAX GEMINI XPS(モレキュラーデバイスジャパン(株)製)を使用した。
(6)マイクロプレートの各スロットにQuant-iT OliGreen ssDNA(蛍光発色液)溶液を100μL投入した。
(7)各スロットの最終的な検量線用オリゴDNA溶液は、表1に示した濃度になった。
(8)マイクロプレートを3分間遮光静置した。
(9)マイクロプレートを蛍光分析装置に導入し、Excitation:520nm,Emission:520nmの条件で各スロットの蛍光分析を行った。
(10)分析結果から作成された検量線を図2に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
図2の横軸はオリゴDNA濃度(ng/ml)を示し、縦軸の蛍光強度は、蛍光分析装置蛍光マイクロプレートリーダーを使用して測定した値である(測定誤差は±0.2%)。
複数の検量線作成用試料液のオリゴDNA濃度と蛍光強度は、直線を示しており、検量線として信頼できるものである。
定量測定可能範囲は、1.25ng/ml<オリゴDNA濃度<100ng/mlの範囲である。
【0023】
(サンプル水のオリゴDAN濃度測定)
(1)各サンプル水1gを微量遠心濃縮機(PV-1200 和研薬(株)製)にセットし,2000rpmにて3時間減圧濃縮した。
各サンプル水の濃縮倍率は、次のとおりであった。
原水(水道水):12.2倍
RO膜モジュールの透過水:12.1倍
EDI処理脱塩水:8.9倍
(2)検量線用の各種濃度のオリゴDNA溶液の代わりに濃縮したサンプル水を使用する以外は、検量線の作成と同じ方法(同じ測定タイミング)で、蛍光分析を行った。
(3)分析結果と濃縮倍率から,各サンプル水中のオリゴDNA濃度を算出した。
結果を表2に示す。
なお、サンプル水の約10倍の濃縮操作をすることで、定量測定の下限界値は、0.125ng/mlと判断できる。
【0024】
【表2】
【0025】
表2から明らかなとおり、EDI装置の出口(人工透析用水となるEDI処理水を採取できる)のサンプル水はオリゴDNA濃度が低く、人工透析用水を人工透析液の製造用として供給するという判断をすることができる。
また、オリゴDNA濃度が高い場合には、人工透析用水の製造を中断して、EDI水タンク内のEDI処理水を再処理したり、製造フロー内を殺菌処理したりするという判断ができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の人工透析用水の品質管理方法を適用することで、病院などの人工透析をする医療施設において安全性の高い人工透析液を安定して使用できるようになる。
【符号の説明】
【0027】
1 プレフィルター
2 軟水化装置
3 吸着装置(活性炭装置)
4 ラインヒーター
5 逆浸透膜処理装置(RO装置)
6 RO水タンク
6a ヒーター6a
7 限外濾過膜装置(UF装置)
8 熱交換器
9 EDI装置
10 EDI水タンク
11 第1原水ライン
12 第2原水ライン
13 第3原水ライン
14 前処理水ライン
16a、16b 濃縮水ライン
17 第1RO水ライン
18 第1取水ライン
19 第2取水ライン
20 第3取水ライン
21 入水ライン21
22 出水ライン
23,24 ライン
25 原水の排水ライン
31 第2RO水ライン
32 EDI水ライン
33 濃縮水ライン
34 開閉弁を備えた連通管
50 人工透析液の調製装置
61 原水ポンプ
62 RO装置ポンプ
63 取水ポンプ(UF装置ポンプ)
64 濃縮水循環ポンプ
65 送液ポンプ(EDI供給ポンプ)
71〜77 開閉弁
図1
図2