(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハードコート積層体の断面図である。本実施形態に係るハードコート積層体1は、基材シート2と、基材シートの一方の主面側(
図1における上側)に積層されたハードコート層3とを備えて構成される。
【0022】
本実施形態に係るハードコート積層体1は、ハードコート層3の厚さが、25〜80μmであり、かつ、ハードコート層3の基材シート2側(基材シート2との界面側)における屈折率が、ハードコート層3の基材シート2側と反対側(ハードコート層3の表面側)における屈折率よりも0.005以上高く、したがってハードコート層3の屈折率が厚さ方向に傾斜しているものである。
【0023】
ハードコート層3の基材シート2側における屈折率が、ハードコート層3の基材シート2側と反対側における屈折率よりも0.005以上高く、そのようにハードコート層3の屈折率が厚さ方向に傾斜していると、ハードコート層3の基材シート2側における屈折率は基材シート2の屈折率に近くなって、ハードコート層3と基材シート2との界面における光の反射が抑制され、またハードコート層3の表面側における屈折率は空気の屈折率に近くなって、ハードコート層3の空気との界面(ハードコート層3の表面)における光の反射が抑制される。すなわち、本実施形態に係るハードコート積層体1によれば、単層のハードコート層3により光の反射を抑制することができる。
【0024】
なお、本明細書におけるハードコート層3の基材シート2側における屈折率は、ハードコート層3の基材シート2側の面(基材シート2との界面)における屈折率の測定値をいい、ハードコート層3の基材シート2側と反対側における屈折率は、ハードコート層3の基材シート2側と反対側の面(ハードコート層3の表面;空気との界面)における屈折率の測定値をいう。本明細書における屈折率の測定波長は405nm、測定温度は25℃とする。屈折率の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0025】
光の反射抑制の観点から、ハードコート層3の基材シート2側における屈折率は、ハードコート層3の基材シート2側と反対側における屈折率よりも、0.006以上高いことが好ましく、特に0.007以上高いことが好ましい。なお、この屈折率差の上限は、通常は0.1程度であり、好ましくは0.01程度である。
【0026】
ここで、ハードコート層3の屈折率は、1.35〜1.7の範囲であることが好ましく、特に1.35〜1.65の範囲であることが好ましく、さらには1.35〜1.6の範囲であることが好ましい。ハードコート層3の屈折率が上記の範囲内にあることで、光の反射をより効果的に抑制することができる。
【0027】
一方、ハードコート層3の厚さが25μm以上であることにより、上記のような屈折率の傾斜、ひいては光の反射の抑制が可能となる。また、ハードコート層3の厚さが25μm以上であることにより、ハードコート層3の表面硬度が高いものとなる。さらに、ハードコート層3の厚さが25μm以上であると、ハードコート層3の基材シート2との界面における反射光と、ハードコート層3の表面における反射光との干渉による干渉ムラの発生が抑制され、ハードコート積層体1が光透過性および美観に優れたものとなる。これは、ハードコート層3の厚さが厚いことで、上記2種類の反射光の波が重なる確率が低くなり、光の干渉が発生し難くなるからである。
【0028】
また、ハードコート層3の厚さが80μm以下であることにより、ハードコート積層体1が耐屈曲性に優れ取り扱いが容易になるほか、ハードコート積層体1が不要に厚くなったり、製造コストが増加したりするのを防止することができる。
【0029】
上記の観点から、ハードコート層3の厚さは、30〜80μmであることが好ましく、特に35〜80μmであることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係るハードコート積層体1は、上記の通り、光の反射を抑制することができる。これにより、ハードコート積層体1の全光線透過率は、好ましくは80〜96%となり、特に好ましくは85〜94%となり、さらに好ましくは86〜94%となり、光学用途として優れたものとなる。なお、本明細書における全光線透過率は、JIS K 7361に準拠して測定した値をいう。
【0031】
(1)基材シート
本実施形態に係るハードコート積層体1の基材シート2は、ハードコート積層体1の用途に応じて適宜選択すればよいが、ハードコート層3との親和性の良好な樹脂フィルムを用いることが好ましい。基材シート2に樹脂フィルムを用いることで、本実施形態に係るハードコート積層体1は耐屈曲性に優れたものとなり、巻取体の状態での運搬・保管や、巻取体から繰り出されての加工(例えば、ロール・トゥ・ロールでの加工等)等、ハードコート積層体1の取扱いが容易になる。また、樹脂フィルムとして透明樹脂フィルムを用いた場合には、本実施形態に係るハードコート積層体1を光学用途に用いることができるため、特に好ましい。
【0032】
かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルぺンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルム、ノルボルネン系重合体フィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、環状共役ジエン系重合体フィルム、ビニル脂環式炭化水素重合体フィルム等の樹脂フィルムまたはそれらの積層フィルムが挙げられる。中でも、ハードコート積層体1としたときに高い硬度が得られ易く、また透明性に優れる等の理由から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等が好ましい。
【0033】
また、上記基材シート2においては、その表面に設けられる層(ハードコート層3や、後述するカール抑制層、粘着剤層等)との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、プライマー処理、酸化法、凹凸化法等により表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材シート2の種類に応じて適宜選ばれる。一例として、プライマー処理により易接着層を形成した樹脂フィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
【0034】
基材シート2の厚さは、通常は50〜300μm程度であることが好ましい。本実施形態のように基材シート2の片面だけに厚いハードコート層3が設けられる場合、当該ハードコート層3の硬化収縮により、ハードコート積層体1がカールすることがある。かかるカールを抑制するためには、基材シート2に剛性を付与すべく、基材シート2の厚さを、50μm以上とすることが好ましく、特に75μm以上とすることが好ましく、さらには100μm以上とすることが好ましい。また、基材シート2の厚さをこのように厚くすることにより、ハードコート積層体1の表面硬度が向上するという効果も得られる。一方、基材シート2の厚さが厚過ぎると、ハードコート積層体1の耐屈曲性が低下し、巻取体としての取扱いが困難になる場合があるため、基材シート2の厚さは、300μm以下とすることが好ましく、250μm以下とすることがより好ましく、215μm以下とすることが特に好ましく、200μm以下とすることがさらに好ましい。
【0035】
(2)ハードコート層
本実施形態に係るハードコート積層体1のハードコート層3は、基材シート2の一方の主面側(
図1における上側)に積層され、ハードコート積層体1に高い表面硬度を付与する。
【0036】
本実施形態に係るハードコート積層体1のハードコート層3は、紫外線硬化性成分および光重合開始剤を含有する組成物(以下「ハードコート層用組成物」ということがある。)を硬化させた材料からなることが好ましい。紫外線硬化性成分および光重合開始剤を含有するハードコート層用組成物の層(以下「組成物層」ということがある。)と基材シート2との積層体に対して、組成物層側から紫外線を照射すると、組成物層における光源に近い側では光重合開始剤の消費量が多く、組成物層が硬化したハードコート層3における基材シート2の反対側での光重合開始剤の残存量が少なくなり、組成物層における光源から遠い側では光重合開始剤の消費量が少なく、組成物層が硬化したハードコート層3における基材シート2側での光重合開始剤の残存量が多くなる。光重合開始剤の屈折率は、一般的に紫外線硬化性成分の屈折率よりも高いため、ハードコート層3の光源に近い側では屈折率が低くなり、光源から遠い側では屈折率が高くなる。このように、上記ハードコート層用組成物を紫外線硬化させることにより、ハードコート層3の屈折率を厚さ方向に傾斜させることができる。
【0037】
(2−1)紫外線硬化性成分
紫外線硬化性成分としては、紫外線の照射により硬化して所望の硬度を発揮し、かつ光重合開始剤との関係で前述した傾斜屈折率を達成できるものであれば特に限定されない。
【0038】
具体的な紫外線硬化性成分としては、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系プレポリマー、紫外線硬化性ポリマー等が挙げられるが、中でも多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーであることが好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系プレポリマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0039】
多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
一方、(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。
【0041】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0042】
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。
【0043】
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0044】
ポリオールアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0045】
以上のプレポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
紫外線硬化性ポリマーとしては、例えば、側鎖に紫外線硬化性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下「紫外線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)」という。)を使用することができる。紫外線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものが好ましい。
【0047】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とを含有する。
【0048】
アクリル系共重合体(a1)が構成単位として含有する官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであり、好ましくはヒドロキシル基含有不飽和化合物またはカルボキシル基含有不飽和化合物が用いられる。
【0049】
このような官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシル基含有アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0050】
アクリル系共重合体(a1)が構成単位として含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0051】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%、特に好ましくは70〜90質量%の割合で含有してなる。
【0052】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にも少量(例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下)の割合で、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0053】
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がカルボキシル基の場合、置換基としてはアジリジニル基、エポキシ基またはオキサゾリン基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましい。このような置換基は、不飽和基含有化合物(a2)1分子毎に一つずつ含まれている。
【0054】
また不飽和基含有化合物(a2)には、紫外線硬化性の不飽和基(炭素−炭素二重結合)が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0055】
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常20〜100当量、好ましくは40〜100当量、特に好ましくは60〜100当量の割合で用いられる。
【0056】
紫外線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、アクリル系共重合体(a1)と、不飽和基含有化合物(a2)とを、有機溶媒中にて常法で反応させることにより得られる。紫外線硬化性(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜100,000であることが好ましく、特に20,000〜80,000であることが好ましく、さらには30,000〜60,000であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0057】
本実施形態のハードコート層3を構成する紫外線硬化性成分は、硬化後のガラス転移点が130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、ガラス転移点が観測されないものであることが特に好ましい。タッチパネル等の製造においては、ハードコート積層体1が加熱される工程が含まれることがあり、この場合ハードコート積層体1の熱収縮が問題になるが、ガラス転移点が上記の条件を満たす紫外線硬化性成分を用いることにより、ハードコート層3が耐熱性においても優れたものとなり、ハードコート積層体1に優れた耐熱性を付与することができる。
【0058】
なお、本実施形態のハードコート層3にて紫外線硬化性成分を2種以上使用する場合、それらの紫外線硬化性成分は、互いに相溶性に優れたものであることが好ましい。これにより、ハードコート層3を形成する条件に関して、特に正確な制御を必要とすることなく、屈折率が傾斜したハードコート層3を容易に形成することができる。
【0059】
(2−2)光重合開始剤
光重合開始剤としては、使用する紫外線硬化性成分の光重合開始剤として機能し、かつ前述した傾斜屈折率を達成できるものであれば特に限定されないが、中でもリン系光重合開始剤を使用することが好ましい。リン系光重合開始剤によれば、ハードコート層3中における屈折率差が生じ易い。すなわち、ハードコート層3の基材シート2側における屈折率と、ハードコート層3の基材シート2側と反対側における屈折率との差を、0.005以上にすることが可能である。
【0060】
リン系光重合開始剤は、分子内にリンを含有する化合物であり、紫外線に暴露されると、重合開始能を有するラジカルを発生する。このリン系光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド系化合物が好ましく、さらには分子内にCO−PO結合を有する化合物が好ましい。また、リン系光重合開始剤の分子量は、好ましくは100〜2000、特に好ましくは200〜1000である。
【0061】
このようなリン系光重合開始剤としては、特に下記一般式(I)にて示される化合物が好ましく用いられる。
【化1】
【0062】
式(I)中、R
1は、置換基を有していてもよい芳香族基であり、好ましくはジメチルフェニル、トリメチルフェニル、トリメトキシフェニル、ジメトキシフェニル、フェニル等である。また、R
2、R
3はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキル基、アルコキシ基または芳香族アシル基である。
【0063】
置換基を有していてもよいフェニル基としては、好ましくはジメチルフェニル、トリメチルフェニル、トリメトキシフェニル、ジメトキシフェニル、フェニル等が挙げられ、特に好ましくはフェニル基が挙げられる。また、置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは2−メチルプロピル、2,4,6−トリメチルペンチル等が挙げられ、特に好ましくは2,4,6−トリメチルペンチル基が挙げられる。
【0064】
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、エトキシ基が特に好ましい。さらに、置換基を有していてもよい芳香族アシル基としては、好ましくはR
1CO−基(R
1は上記と同じ)が挙げられる。
【0065】
したがって、特に好ましいリン系光重合開始剤としては、
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキサイド
【化2】
・ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド
【化3】
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド
【化4】
・ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド
【化5】
等が挙げられる。これらのリン系光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。
【0066】
ハードコート層用組成物中におけるリン系光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化性成分100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、特に0.05〜5質量部であることが好ましく、さらには0.1〜3質量部であることが好ましい。
【0067】
ハードコート層用組成物は、上記リン系光重合開始剤とともに、他の光重合開始剤を含有してもよい。他の光重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等が挙げられる。具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン―1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが例示できる。
【0068】
ハードコート層用組成物中における上記他の光重合開始剤の含有量は、リン系光重合開始剤の作用を阻害することなく、使用する紫外線硬化性成分の光重合開始剤として機能する量であれば、特に限定されない。通常は、紫外線硬化性成分100質量部に対して、0.001〜2質量部であることが好ましく、特に0.01〜1.5質量部であることが好ましい。
【0069】
(2−3)フッ素系添加剤/シリコーン系添加剤
本実施形態のハードコート層3を構成するハードコート層用組成物は、フッ素系添加剤および/またはシリコーン系添加剤を含有することが好ましい。ハードコート層3における光の反射は、基材シート2との界面における反射よりも空気との界面における反射の方が問題になることが多いが、ハードコート層用組成物がフッ素系添加剤および/またはシリコーン系添加剤を含有することにより、形成されるハードコート層3の屈折率が全体的に低くなり、ハードコート層3の表面側における屈折率が空気の屈折率により近くなって、ハードコート層3の表面における光の反射が効果的に抑制される。
【0070】
フッ素系添加剤としては、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等を好ましく用いることができる。フッ素系添加剤の市販品としては、DIC株式会社製のMEGAFACシリーズ、住友スリーエム株式会社製のFCシリーズ、ネオス社製のフタージェントシリーズ等が挙げられる。
【0071】
シリコーン系添加剤としては、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンとの共重合体等を好ましく用いることができる。シリコーン系添加剤の市販品としては、FZ−2118、FZ−77、FZ−2161(商品名;東レ・ダウコーニング株式会社製)等、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(商品名;信越化学工業株式会社製)等、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4453、TSF4460(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−348、BYK−377、BYK−378、BYK−UV3500、BYK−3510、BYK−3570(商品名;ビックケミー・ジャパン株式会社製)等のポリエーテル変性シリコーンオイル(ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル)等が挙げられる。
【0072】
ハードコート層用組成物中におけるフッ素系添加剤およびシリコーン系添加剤の含有量(両者とも含有する場合には、それらの合計量)は、0.01〜10質量%であることが好ましく、特に0.05〜5質量%であることが好ましく、さらには0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0073】
(2−4)無機フィラー
本実施形態のハードコート層3を構成するハードコート層用組成物は、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することで、本実施形態のハードコート層3に高い表面硬度が付与される。
【0074】
好ましい無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、ベーマイト、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、ベーマイト、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が好ましく、硬度および光透過性の観点から、シリカが特に好ましい。
【0075】
また、無機フィラーは、表面修飾されていることが好ましい。このような特に好ましい無機フィラーとして、反応性シリカを例示することができる。
【0076】
本明細書において「反応性シリカ」とは、紫外線硬化性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子をいう。上記紫外線硬化性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子(反応性シリカ)は、例えば、通常、平均粒径0.5〜500nm程度、好ましくは平均粒径1〜200nmのシリカ微粒子表面のシラノール基に、当該シラノール基と反応し得る官能基である(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、得ることができる。
【0077】
シラノール基と反応し得る官能基を有する紫外線硬化性不飽和基含有有機化合物としては、例えば一般式(II)
【化6】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2はハロゲン原子、
【化7】
で示される基である。)
で表される化合物等が好ましく用いられる。
【0078】
このような化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−イミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル酸誘導体を用いることができる。これらの(メタ)アクリル酸誘導体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
このような反応性シリカ(紫外線硬化性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子)と、前述した多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーとを含有する有機無機ハイブリッド材料としては、例えば商品名「オプスターZ7530」、「オプスターZ7524」、「オプスターTU4086」、「オプスターZ7537」(以上、JSR社製)等を使用することができる。
【0080】
本実施形態において用いる無機フィラーは、平均粒径が1〜200nmであることが好ましく、10〜200nmであることが特に好ましく、20〜200nmであることがさらに好ましい。無機フィラーの平均粒径が1nm以上であることで、ハードコート層用組成物を硬化させたハードコート層3が、より高い表面硬度を有するものとなる。また、無機フィラーの平均粒径が200nm以下であると、得られるハードコート層3において光の散乱が発生しにくくなり、ハードコート層3の透明性が高くなる。そのため、このようなハードコート層3と、基材シート2として前述した透明樹脂フィルムとを併用することで、本実施形態に係るハードコート積層体1が透明性の高いものとなり、光学用途に特に好適に用いることができる。なお、無機フィラーの平均粒径は、ゼータ電位測定法によって測定したものとする。
【0081】
本実施形態のハードコート層3における無機フィラーの含有量は、ハードコート層3に対して0〜85体積%(85体積%以下)であることが好ましく、30〜85体積%であることがより好ましく、40〜80体積%であることが特に好ましく、45〜70体積%であることがさらに好ましい。無機フィラーを含有する場合には、その含有量が30体積%以上であることで、ハードコート層3に付与される表面硬度がより高いものとなる。一方、無機フィラーの含有量が85体積%以下であることで、ハードコート層用組成物を用いた層形成が容易になる。
【0082】
なお、本明細書における無機フィラーの含有量は、次のようにして求めるものとする。JIS 7250−1に従い有機成分を燃焼し、得られる灰分から無機フィラーの質量%を求め、さらにJIS Z8807に従い無機フィラーの真密度を求める。その後、耐熱層3の密度をJIS Z8807から求め、無機フィラーの質量%、無機フィラーの真密度及び耐熱層3の密度の測定値から、無機フィラーの体積%を求める。
【0083】
(2−5)その他の成分
本実施形態のハードコート層3を構成するハードコート層用組成物は、前述した成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、有機系充填材、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
【0084】
(2−6)ハードコート層の物性
ハードコート層3のJIS K5600−5−4に準拠して測定される鉛筆硬度は、4H以上であることが好ましく、5H以上であることが特に好ましく、6H以上であることがさらに好ましい。ハードコート層3がかかる条件を満たすハードコート積層体1は、高い表面硬度を有し、耐擦傷性に優れたものとなる。厚さが25μm以上であるハードコート層3によれば、上記の鉛筆硬度が達成可能である。
【0085】
(3)ハードコート積層体の製造方法
本実施形態に係るハードコート積層体1は、次の方法によって好ましく製造することができる。本方法では、一例として、紫外線硬化性成分および光重合開始剤を含有するハードコート層用組成物を使用するものとする。
【0086】
まず、基材シート2の一方の主面に、ハードコート層用組成物からなる組成物層を形成する。このとき、ハードコート層用組成物を基材シート2の一方の主面に直接塗布し、組成物層を形成してもよいし、ハードコート層用組成物をカバーシートに塗布した後、そのカバーシート付きの組成物層を基材シート2の一方の主面に貼合してもよい。
【0087】
カバーシートとしては、上記で樹脂フィルムとして例示したものを使用することができる。また、それら樹脂フィルムの片面または両面が剥離剤によって剥離処理された剥離シートを使用することもできる。
【0088】
組成物層は、ハードコート層用組成物と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、これを基材シート2またはカバーシートに塗布し、乾燥させることにより形成される。塗布剤の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、マイヤーバー法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。乾燥は、例えば80〜150℃で30秒〜5分程度加熱することによって行うことができる。
【0089】
次に、上記組成物層が酸素から遮断された状態にて、基材シート2とは反対側から紫外線を照射することにより、当該組成物層を硬化させてハードコート層3とする。上記組成物層を酸素から遮断するには、上記組成物層にカバーシートが付いている場合には、当該カバーシートをそのまま付けた状態とし、上記組成物層にカバーシートが付いていない場合には、新たにカバーシートを上記組成物層に積層するか、基材シート2および組成物層の積層体を、酸素濃度の低い雰囲気下、好ましくは窒素雰囲気下におくことが好ましい。
【0090】
上記組成物層が酸素から遮断された状態にするにあたり、製造方法の容易さ、コスト等の観点から、カバーシートを使用することが好ましい。すなわち、基材シート2の一方の主面に組成物層が積層され、組成物層の基材シート2側とは反対側にカバーシートが積層された積層体を作製することが好ましく、特に、ハードコート層用組成物をカバーシートに塗布し、そのカバーシート付きの組成物層を基材シート2の一方の主面に貼合することが好ましい。この場合、カバーシート側から紫外線を照射する。
【0091】
上記のようにして紫外線を照射すると、酸素による硬化阻害を受けることなく、組成物層における光源に近い側(ハードコート層3における基材シート2とは反対側(ハードコート層3の表面側))では光重合開始剤の消費量が多く、光重合開始剤の残存量が少なくなって屈折率が低くなり、組成物層における光源から遠い側(ハードコート層3における基材シート2側)では光重合開始剤の消費量が少なく、光重合開始剤の残存量が多くなって屈折率が高くなり、得られるハードコート層3の屈折率が厚さ方向に傾斜する。
【0092】
紫外線照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度50〜1000mW/cm
2、光量50〜1000mJ/cm
2程度が好ましい。
【0093】
(4)ハードコート積層体の用途
本実施形態に係るハードコート積層体1の用途は、表面硬度と光の反射防止性との両立が要求される用途に好ましく使用できる。本実施形態に係るハードコート積層体1は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OELD)、さらにはタッチパネル等の各種ディスプレイの表層として好ましく使用することができる。
【0094】
(5)他の実施形態−1
上記ハードコート積層体1における基材シート2の他方の主面側(ハードコート層3が積層された面とは反対側の面側)には、
図2に示すように、硬化収縮するカール抑制層4が積層されてもよい(
図2に示すハードコート積層体の符号を「1A」と記す)。このようなカール抑制層4が積層されることで、当該カール抑制層4の硬化収縮によりハードコート層3の硬化収縮を相殺し、ハードコート積層体1Aのカールを抑制することができる。
【0095】
カール抑制層4を構成する材料としては、ハードコート層3と同程度の硬化収縮率を有するものが好ましい。カール抑制層4は、硬化性成分を含有する組成物(以下、これを「カール抑制層用組成物」ということがある。)を硬化させた材料からなることが好ましく、ハードコート層3が無機フィラーを含有する場合には、カール抑制層用組成物も無機フィラーを含有することが好ましい。
【0096】
カール抑制層用組成物の硬化性成分としては、ハードコート層用組成物の紫外線硬化性成分として例示したものの他、熱硬化性成分を使用することができる。ただし、製造工程の簡略化の観点から、硬化性成分として紫外線硬化性成分を使用することが好ましく、また、カールの抑制の観点から、ハードコート層3と同程度の硬化収縮率を有する硬化性成分を使用することが好ましい。
【0097】
カール抑制層用組成物に用いる無機フィラーとしては、ハードコート層用組成物の無機フィラーとして例示したものを使用することができ、ハードコート層用組成物で用いるものと同様のものとすることが好ましい。また、カール抑制層用組成物における無機フィラーの含有量は、ハードコート層用組成物と同程度にすることが好ましい。これらにより、カール抑制層4の硬化収縮とハードコート層3の硬化収縮とが同程度になり、ハードコート積層体1Aのカールがより効果的に抑制される。
【0098】
カール抑制層用組成物は、ハードコート層用組成物と同様に、光重合開始剤、フッ素系添加剤および/またはシリコーン系添加剤、その他の添加剤等を含有してもよい。これらの成分としては、前述したハードコート層用組成物で例示したものを使用することができる。
【0099】
本実施形態のハードコート積層体1Aにおいて、ハードコート層3の厚さに対するカール抑制層4の厚さの比は、0.2〜2であることが好ましく、特に0.2〜1であることが好ましく、さらには0.3〜0.8であることが好ましい。ハードコート層3の厚さに対するカール抑制層4の厚さの比が上記の範囲内にあることで、本実施形態に係るハードコート積層体1Aのカールが効果的に抑制される。
【0100】
カール抑制層4の厚さは、4〜100μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましく、20〜50μmであることが特に好ましく、25〜50μmであることがさらに好ましい。カール抑制層4の厚さが上記範囲にあることで、ハードコート層3の厚さに対するカール抑制層4の厚さの比が前述した条件を満たしやすくなり、本実施形態に係るハードコート積層体1Aのカールがより効果的に抑制される。
【0101】
本実施形態に係るハードコート積層体1Aは、基本的には前述したハードコート積層体1と同様にして製造することができる。ただし、ハードコート層3およびカール抑制層4の硬化は、同時に行ってもよいし、ハードコート層3(またはカール抑制層4)の組成物層を形成して硬化させた後、カール抑制層4(またはハードコート層3)の組成物層を形成して硬化させてもよい。
【0102】
(6)他の実施形態−2
ハードコート積層体1における基材シート2の他方の主面側(ハードコート層3が積層された面とは反対側の面側)には、
図3に示すように、粘着剤層5が積層されてもよい(
図3に示すハードコート積層体の符号を「1B」と記す)。このような粘着剤層5が積層されることで、ハードコート積層体1Bを所望の被着体に簡易に貼付することができる。なお、同様に、ハードコート積層体1Aにおけるカール抑制層4の基材シート2側とは反対側に、粘着剤層が積層されてもよい。
【0103】
粘着剤層5を構成する粘着剤としては特に限定されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤など公知の粘着剤を使用することができる。粘着剤層5の厚さは、特に限定されないが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
【0104】
本実施形態に係るハードコート積層体1Bは、基本的には前述したハードコート積層体1と同様にして製造することができる。粘着剤層5は、常法によって形成すればよい。
【0105】
なお、粘着剤層5の露出面(基材シート2側とは反対側の面)には、剥離シートが積層されていてもよい。
【0106】
(7)他の実施形態−3
本実施形態に係るハードコート積層体1には、他の層、例えば、粘接着剤層、バリア層、導電層、低反射層、易印刷層、防汚層などが積層されてもよい。
【0107】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0108】
例えば、ハードコート積層体1,1A,1Bにおける基材シート2と、ハードコート層3、カール抑制層4または粘着剤層5との間には、他の層が介在してもよい。
【実施例】
【0109】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0110】
〔実施例1〕
紫外線硬化性成分および無機フィラーを含有する組成物(JSR社製,商品名「オプスターZ7530」,紫外線硬化性成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、無機フィラーとして反応性シリカを含有,無機フィラーの含有量:49体積%,光重合開始剤:3質量%,固形分濃度:73質量%,溶媒:メチルエチルケトン)100質量部(固形分換算;以下同じ)と、リン系光重合開始剤であるジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキサイド(BASF社製,商品名「ルシリンTPO」)1質量部とを攪拌混合して、ハードコート層用組成物を得た。
【0111】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面がシリコーン系剥離剤で剥離処理された剥離シート(カバーシートに該当;リンテック社製,商品名「PLR382050*」)の剥離処理面に、上記ハードコート層用組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターにて塗布したのち、100℃で90秒間加熱乾燥させて、ハードコート層用組成物の組成物層を形成した。
【0112】
ラミネーターを使用して、上記ハードコート層用組成物の組成物層に、基材シートであるPETフィルム(東洋紡社製,商品名「コスモシャインPET50A−4100」,厚さ:50μm)を貼り合せた。そして、得られた積層体の剥離シート(カバーシート)側から紫外線を照射して(照度:300mW/cm
2,光量:1300mJ/cm
2)、ハードコート層用組成物の組成物層を硬化させてハードコート層(厚さ:25μm)を形成した。このようにして、剥離シート(カバーシート)/ハードコート層/基材シートからなる積層体、すなわちハードコート層の外側に剥離シート(カバーシート)が積層された状態のハードコート積層体を得た。
【0113】
〔実施例2〕
ハードコート層の厚さを50μmに変更し、基材シートをPETフィルム(東洋紡社製,商品名「コスモシャインPET125A−4300」,厚さ:125μm)に変更する以外、実施例1と同様にしてハードコート積層体を製造した。
【0114】
〔実施例3〕
紫外線硬化性成分であるウレタンアクリレートと多官能アクリレートとの混合物(荒川化学工業社製,商品名「ビームセット575CB」,光重合開始剤含有)100質量部と、光反応型フッ素・シリコーン系添加剤(ネオス社製,商品名「フタージェント601AD」)5質量部と、リン系光重合開始剤であるジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド(BASF社製,商品名「ダロキュアTPO」)1質量部とを攪拌混合して、ハードコート層用組成物を得た。
【0115】
ハードコート層の形成に上記ハードコート層用組成物を使用するとともに、ハードコート層の厚さを30μmに変更し、基材シートをPETフィルム(東洋紡社製,商品名「コスモシャインPET188A−4300」,厚さ:188μm)に変更する以外、実施例1と同様にしてハードコート積層体を製造した。
【0116】
〔比較例1〕
ハードコート層の厚さを10μmに変更する以外、実施例3と同様にしてハードコート積層体を製造した。
【0117】
〔試験例1〕(屈折率の測定)
実施例および比較例で得られたハードコート積層体から剥離シート(カバーシート)を剥離した。そのハードコート積層体におけるハードコート層の基材シート側における屈折率と、ハードコート層の基材シート側と反対側(表面側)における屈折率とを、測定波長405nm、測定温度25℃の条件で、プリズムカプラ(メトリコン社製)を使用して測定した。ここで、ハードコート層の基材シート側における屈折率としては、ハードコート層の基材シートとの界面の屈折率を測定し、ハードコート層の表面側における屈折率としては、ハードコート層の空気との界面の屈折率を測定した。
【0118】
また、上記のようにして測定した、ハードコート層の基材シート側における屈折率から、ハードコート層の表面側における屈折率を差し引いた値(屈折率差)を算出した。結果を表1に示す。
【0119】
〔試験例2〕(全光線透過率の測定)
実施例および比較例で得られたハードコート積層体から剥離シート(カバーシート)を剥離した。そのハードコート積層体の全光線透過率(%)を、ヘイズメーター(日本電色工業製,NDH5000)を使用し、JIS K 7361に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0120】
〔試験例3〕(干渉ムラの評価)
実施例および比較例で得られたハードコート積層体から剥離シート(カバーシート)を剥離した。そのハードコート積層体をハードコート層側から目視して、干渉ムラの有無を確認した。その結果、干渉ムラが見られなかったものを良好(○)、干渉ムラが見られたものを不良(×)と評価した。結果を表1に示す。
【0121】
〔試験例4〕(鉛筆硬度の測定)
実施例および比較例で得られたハードコート積層体から剥離シート(カバーシート)を剥離した。そのハードコート積層体を、ハードコート層を露出させてガラス板上に固定した。当該ハードコート層の表面(露出面)について、JIS K 5600−5−4に準じ、鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製,製品名「No.553−M」)を用いて、鉛筆硬度を測定した。引っかき速度は、1mm/秒とした。結果を表1に示す。また、鉛筆硬度が4H以上のものを良好(○)、3H以下のものを不良(×)として評価した。結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
表1から明らかなように、実施例で得られたハードコート積層体は、ハードコート層の基材シート側における屈折率が、ハードコート層の表面側における屈折率よりも0.005以上大きく、したがって全光線透過率が大きく、また干渉ムラの発生もなく、表面硬度も高かった。