(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走査電極の組のうち1つ以上の組の電極が、DCオフセット電圧と重ねられる振動電圧を各々含む電圧波形をそれぞれ1つ以上発生させるよう作用し、前記DCオフセット電圧に対して前記振動電圧の振幅は、−25kVから+25Vの範囲内にあり、前記振動電圧の周波数は、100から2000Hzの範囲内にあり、前記DCオフセット電圧は−25kVから+25kVの範囲内にある、
請求項1に記載のイオンビーム走査組立体。
前記走査電極の組のうち1つ以上の組の電極が、DCオフセット電圧と重ねられる振動電圧を各々含む電圧波形をそれぞれ1つ以上発生させるよう構成され、前記振動電圧は、振動場を生成するよう構成され、前記DCオフセット電圧は、前記イオンビームを整形するよう構成される、
請求項1に記載のイオンビーム走査組立体。
【背景技術】
【0002】
半導体エレクトロニクス、太陽電池、及び他のテクノロジーにおける現代の製造は、シリコン及び他の種類の基板をドーピング又は他の改良をするために、イオン注入機システムに依存している。典型的なイオン注入機システムは、イオンビームを発生させ基板にそれを導くことでドーピングを行い、イオンはその表面下で停止する。様々な種類のイオン注入システムが、様々な応用に向けて開発されてきた。高電流イオン注入機システムは、半導体製造で広く使用される注入機システムの一種である。そのような注入機システムは、典型的には、25ミリアンペア(mA)までの電流を生成し、高ドーズ量の注入種を基板に効率良く導くために採用される。
【0003】
中電流イオン注入機システムは、1マイクロアンペアから約5mA、エネルギーにして2キロエレクトロンボルト(keV)から900keVの範囲の強度を有するイオンビームを生成するために開発された。これらの種類のイオン注入システムは、約1E13から5E14ほどの密度範囲で基板にドーパントを導入する際に特に有益となる。一般的に、中電流注入機システムは、ウェハーにわたってスポットビームを走査することで動作するように開発されている。特に、多くの応用に対して、イオン注入中、走査経路に沿って均一なイオンドーズ量又はビーム電流分布を得ることが望ましい。これを達成するための1つのアプローチは、1つの平面内でスポットビームを走査する一方で、その平面に垂直な方向にターゲットウェハーを移動させて、ターゲットウェハーの全表面を処理することである。イオンビームの走査は、通常の軌道からイオンビームを制御可能に偏向させるよう採用される静電スキャナーにより実現するこができ、イオンビームの進行方向に対して垂直な方向に電場を変化させることでより広範囲に及ぶ。スキャナーの場の強さがイオンビームの通常の経路からの総偏向を決定するので、イオンビームはスキャナー部の電場の強さを変化させることで走査可能である。
【0004】
図1aは、従来技術に従って配置されたイオン注入システム100を示す。図示した通り、イオン注入システム100は、注入用の正イオンを発生させるために典型的に用いられるイオン源102を有する。正イオンは、イオン源からの発生と加工される基板までの間に、偏向、加速、減速、整形、及び/又は走査されたイオンビームとして提供される。イオンビーム120は、
図1に中心線軌道(CRT)によって示されている。なお、イオンビームは有限の幅、高さ、及び形状を有しており、それらはイオン源102と基板112の間のビーム経路に沿って変化する可能性があることを、当業者は認識するであろう。
図1aはさらに、イオンビームを偏向させる質量アナライザー104、静電スキャナー106、コレクターマグネット108、及び基板112を操作できるエンドステーション110を示す。既知のシステムでは、静電スキャナー106は、イオンビーム120が静電スキャナー106を通過する際に、イオンビーム120の進行方向に対して一般的に垂直な電場を発生させる。
【0005】
図1bは、基板に注入するためにスポットビームを使用する、既知のシナリオを示す。示した例では、基板112は、シリコンウェハーのような円形のウェハーである。
図1bは、基板112上に投影されたイオンビーム120の断面を示す。既知のシステムでは、静電スキャナー106のようなスキャナーは、(示したデカルト座標系のX軸に平行に示している)方向122のような方向に沿ってイオンビームを走査することが典型的である一方で、基板112は、第一の方向に対して垂直な(Y軸に平行に示されている)第二の方向124に沿って独立に移動する。方向122に沿ったイオンビーム120の走査とともに、方向124に沿って基板を移動させる動作によって、イオンビーム120が、基板112全体をイオンにさらすことが可能となる。示した例では、イオンビーム120は、高さH
1及び幅W
1を有するスポットビームである。
【0006】
図1bに示した通り、イオンビーム120が方向122に沿って走査される時、イオンビーム120は走査エリア126をカバーする。イオンビーム120のサイズ及び形状並びに基板112の形状によって、基板112の全所望領域がイオンビーム120に確実にさらされるためには、イオンビーム120が、図示した基板112の端128を越えて走査されるのが典型的である。例えば、
図1bに示されている通り、幅W
1と同等か又はよりいっそう大きい距離だけ端128を過ぎてイオンビーム120を走査する必要がある。このように、走査エリア126は、基板112の外側にあり、「無駄な」イオンドーズ量を表す、(明瞭のため、基板112の1つのサイドのみに沿って示されている)大きな領域130を有する。すなわち、領域130にあるイオンは、基板112の注入又は他の処理をするために使用されない。
【0007】
さらに、もしイオンビーム120の高さH
1が十分に大きくなければ、結果として注入ドーズ量の不均一が生じる可能性がある。高さH
1は、イオンビーム120を囲むように配置されるコレクターマグネットの磁極片のようなビームライン部品にイオンが衝突しない程度の大きさにするのが望ましい。しかしながら、もしH
1の値があまりに小さければ、基板112は、方向124に沿って移動する時に、不均一に注入される可能性がある。例えば、イオンビーム120は、基板が位置P1に位置する時、方向122内で振動して、基板112に当たる走査エリア126の一部に対応する基板112上のエリア内で注入される。その後、基板112は、方向124に沿って進むか走査され、静電スキャナー106の動作によって基板112にさらされた走査エリア126と同等のサイズの連続エリアが形成される。しかしながら、方向124に沿ったイオンビーム120の有限の広がり、すなわち高さH
1によって、方向122に沿ったイオンビーム120の走査でさらされた連続的なエリアのアンダーラップ又はオーバーラップが生じる可能性がある。
【0008】
そのようなイオン注入システムでの不均一性を改善するために、断面内でイオンビームのビームサイズ及び/又は形状を変えることが望ましい。例えば、ビームのスポットサイズを増大させるレンズのように、ビーム形状を変えるためにビームラインに付加的なレンズ部を追加できる。しかしながら、付加的なレンズ部の導入は、イオンビーム経路長を増加させ、イオン注入システムのフットプリントを変えることになり、一般的にはどちらも望ましくない。さらに、イオンビームを整形するためのレンズ部のような構成部品に直列した静電スキャナーの導入によって、電子がイオンビームから電離する領域が増加する。知られている通り、電子が(正)イオンビームから電離するか、又は除去されると必ず、イオンビームは広がりやすくなる。これは、イオンビーム内の正イオンの相互斥力によって起きる。イオンビームから電子が電離すると必ず、低エネルギー電子は、任意の様々なビームライン部品に印加された高い正ポテンシャルによってイオンビームの外に引き付けられ、加速される。ビーム拡張の結果、基板に効果的に適用できるビーム電流は減少する。
【0009】
必要なことは、中電流イオン注入システムのようなイオン注入システムでより均一なビームを形成するための改善方法及び装置である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで述べる実施形態は、イオン注入システムでイオンビームを処理するための装置及び方法を提供する。イオン注入システムの例は、ビームラインイオン注入システムを含む。本実施形態に包含されるイオン注入システムは、一般的なスポット形状である断面を有する「スポットイオンビーム」を発生させるシステムを含む。本実施形態では、ビームシェイパー部品(又はシステム)が、一組の走査電極を含む静電スキャナー部品に付加され、イオンビームを処理するイオンビーム走査組立体を形成することで、ビームシェイパー部品に対する付加的なフットプリントを必要とすることなくイオン注入装置の性能が改善される。
【0015】
図2は、本開示の実施形態に従ったイオン注入システム200を示す。イオン注入システム200は、イオン源102、
質量アナライザー104、コレクターマグネット108、及び
エンドステーション110を含む従来の構成部品を有する。様々な実施形態では、イオン注入システム100は、静電スキャナー部品によって走査されるスポットタイプのイオンビームを発生させ、スポットタイプのイオンビームの断面積よりも大きい基板にわたってイオン注入を提供する。
図2の例では、イオンビーム静電スキャナー/イオンビームシェイパー、又は単にイオンビーム走査組立体202は、磁気アナライザー104とコレクターマグネット108との間の位置でビームライン204に沿って設置される。イオンビーム走査組立体202は、イオン源102によって発生したイオンビーム206を受け、基板112に当たる前のコレクターマグネット108によってなされるように、さらに操作された走査及び整形ビームを生成するよう配置される。
【0016】
特に、磁気アナライザー104は、イオンビーム206から望まないイオンを除去できる。磁気アナライザー104は、イオンビーム206がイオン源102から発生する時に、イオンビーム206の荷電種を分離するよう既知の原理に従って動作する。分離は、イオンビーム206にある特定種の電荷に対する質量の比に従って行われるので、所望の質量/電荷比の荷電粒子(イオン)が磁気アナライザー104の出力から出射するように選択でき、イオンビーム206を元の方向とは異なる方向に向ける。このようにして、分析されたイオンビーム206aは、イオンビーム走査組立体202に対して向かっていく。
【0017】
以下で詳説するように、イオンビーム走査組立体202は、分析されたイオンビーム206aを操作し、形状、サイズ、及び/又は密度などを変えて、イオンビーム206の特徴を改善するように加工されたイオンビーム206bを生成する。様々な実施形態では、イオンビーム走査組立体202は、イオンビーム走査組立体202を通過する間に分析されたイオンビーム206aのイオンビームスポットサイズ、スポット形状、及び/又はイオン密度を修正する多重極静電レンズの動作と静電スキャナーの動作とを兼ね備える。以下の図に関して詳説する特定の実施形態では、イオンビーム走査組立体202は、静電スキャナーに重ねられる四重極静電レンズを構成する。言い換えると、四重極静電レンズ及び静電スキャナーの構成部品は、イオンビーム206が通過するビーム経路の同一部分に沿ってイオンビーム206を囲む。
【0018】
図3aは、本開示の実施形態に従った、イオンビーム走査組立体の実施形態の透視図を示す。
図3aでは、イオンビーム走査組立体300は、前方レンズ302及び後方レンズ308を含む四重極静電レンズシステム320を有する。前方レンズ302は、二組の対向する電極304、306及び314a、316aを有する一方で、後方レンズ308は、他の二組の対向する電極310、312及び314b、316bを有する。イオンビーム走査組立体300はまた、走査電極の組318のように具現化された静電スキャナー部品も含む。
図3aに示した実施形態では、走査電極の組318は、二組のプレート又は走査電極314a、316a及び314b、316bを有する。
図3aに示した通り、四重極静電レンズシステム320の電極304、306、314a、316a、310、312、
314b、316b及び走査電極の組318の走査電極314a、314b、316a、316bは、(示されていない)イオンビームを通して伝達する領域330を定めるよう相互に構成される。イオンビームが領域330を通過する時、イオンビームを整形及び走査するために、電極304、306、310、312及び314a、314b、316a、316bに一組の電圧が印加される。これらの電圧は、ビームエネルギー及びイオン種に基づいてビーム形状及びビーム偏向度を最適化するために調整される。
【0019】
図3aに付加的に示した通り、走査電極の組318の走査電極314a、314b、316a、316bは、AC信号として印加されるそれぞれの電圧源V
3、V
3’、V
4、及びV
4’に接続される。
図3b及び3cでさらに示す通り、各AC電圧V
3、V
3’、V
4、及びV
4’は、それぞれの電圧波形350、352、354、356を構成し、それらは振動電圧成分又は単に振動電圧VscanとDCオフセット電圧Voffsetから成る。振動電圧V
3scan、V
3’scan、V
4scan、V
4’scanは、それらのDCオフセット電圧V
3offset、V
3’offset、V
4offset、及びV
4’offsetに対してそれぞれ変動する。例えば、走査電極314a、314b、316a、316bに印加されるAC電圧V
3、V
3’、V
4、V
4’は、走査電極314a、316aに印加されるDCオフセット電圧V
3offset、V
3’offsetは同じ大きさ及び極性を有し、走査電極314b、316bに印加されるDCオフセット電圧V
4offset、V
4’offsetは、同じ大きさ及び極性を有するように調整可能である。さらに、走査電極314a、316aに印加される振動電圧V
3scan、V
3’scanは、同じ振幅だが反対の位相角を有し、走査電極314b、316bに印加される振動電圧V
4scan、V
4’scanは、同じ振幅だが反対の位相角を有する。さらに、走査電極314a、316aに印加される振動電圧V
3scan、V
4scanは、同じ位相角を有し、走査電極314b、316bに印加される振動電圧V
3’scan、V
4’scanは同じ位相角を有する。このようにして、振動電場はX軸に沿って生成され、電場の方向及び大きさは時間とともに変化する。X軸は、領域330を通過するイオンビームの伝搬方向に対して垂直であるので、イオンビームは、一方では走査電極314a、314bに、他方では走査電極316a、316bに向かって交互方式にイオンビームを偏向する時間依存の偏向力を受ける。走査電極314a、314b、316a、316bに印加される振動電圧V
3scan、V
3’scan、V
4scan、V
4’scanは、ビームエネルギーに基づいたビーム偏向度を最適化するために、+/−200Vから+/−25kVの範囲内で調整可能である。いくつかの実施形態では、イオンビームはおよそ+/−10度の角度で偏向可能である一方、他の実施形態では、イオンビームはおよそ+/−20度までの角度で偏向可能である。
図2もまた参照すると、この偏向により、イオンビームは基板112の幅Wにわたって走査される。
【0020】
図3aでさらに示した通り、各電極304、306、310、312は、それぞれの電圧源(DC電圧発生器)V
1又はV
2に接続され、ポテンシャル(DC電圧)を受ける。電極304及び306に印加されるDC電圧V
1は、走査電極314a、316aに印加されるDCオフセット電圧、V3offset及びV3’offsetのように、同じ大きさだが反対の極性をV
1が有するように調整可能である。電極310及び312に印加されるDC電圧V
2は、走査電極314b、316bに印加されるDCオフセット電圧、V
4offset及びV
4’offsetのように、同じ大きさだが反対の極性をV
2が有するように調整可能である。電極304、306に印加されるDC電圧V
1の第一の組及び走査電極314a、316aに印加されるV3offset、V
3’offsetは、(示されていない)静電場を生成し、領域330内で第一の四重極静電レンズを形成できる。電極310、312に印加されるDC電圧V
2の第二の組及び走査電極314b、316bに印加されるV
4offset、V
4’offsetは、(示されていない)他の静電場を生成し、領域330内で第二の四重極静電レンズを形成できる。特に、
図3aの配置では、(示されていない)イオンビームの伝搬方向はZ軸に沿う。従って、第一及び第二の四重極静電レンズを有する四重極静電レンズシステム320は、イオンビームの伝搬方向に対して垂直な一組の電場を発生させるよう形成され、イオンビームが領域330を通過する時にそれを整形する。電極304、306に印加されるDC電圧V
1の第一の組及び走査電極314a、316aに印加されるV
3offset、V
3’offset並びに電極310、312に印加されるDC電圧V
2の第二の組及び走査電極314b、316bに印加されるV
4offset、V
4’offsetは、−20kVから+20kVの範囲内で協働して調整可能であり、ビームエネルギー及びイオン種に基づいてビーム形状を最適化する。
【0021】
イオンビームを走査することに加えて、イオンビーム走査組立体300は、四重極静電レンズシステム320によって生成される電場の動作によってイオンビームを整形する。従って、イオンビームがイオンビーム走査組立体300から出射する時、イオンビームは、イオンビーム走査組立体300に入射する前のイオンビームの形状、サイズ、及び/又はイオン密度に比べて異なる形状、サイズ、及びイオン密度を有する。
【0022】
図3dは、
図3aのイオンビーム走査組立体300の変形を示す。
図3dに示す通り、走査電極の組318の走査電極314b、316bはY軸に沿って見るとフレア状となり、走査電極314b、316bの間の間隔Dが、イオン源サイド334の間隔Dと比べて、走査電極の組318の基板サイド332に向かってより大きくなる。上述した通り、電圧源V
3はAC信号を発生し、それによって、一方では走査電極314a、316a間に、他方では316a、316b間に印加された電圧の極性が切り替わり、領域330を通過する(示されていない)イオンのビームが、方向336と338の間で方向が入れ替わる偏向場を受ける。この入れ替わりの偏向場によって、イオンのビームは大きく広がり、イオンビームの伝搬方向に対して+/−10度かそれ以上の角度範囲をたどる。
【0023】
図3dは、いくつかの変形のうち二組の電極304、306、314a、316a及び310、312、315b、316bを構成するイオンビーム走査組立体300を示すが、イオンビーム走査組立体300は、既知の静電スキャナーや四重極静電レンズのように、一組の電極又は三組以上の電極を含む可能性もある。様々な実施形態では、走査電極の組318及び四重極静電レンズシステム320によって発生する電場によって、領域330を通過するイオンビームの断面が変化し、イオン源サイド334でのイオンビームの断面形状は、基板サイド332での断面形状とは異なる。
【0024】
図4a及び
図4bは、本実施形態と一致するイオンビームを加工(処理)するための1つのシナリオをまとめて示す。
図4bは、
図4aに示したものと同じシナリオに対するイオンビーム走査組立体300の背面図を示す。
図4c及び4dは、
図4a及び4bにそれぞれ示したイオンビーム走査組立体の構成要素に対応する、例示的な波形420、422をそれぞれ示す。特に、波形420、422は各々、
図3b及び3cに関して上述したように、振動電圧Vscan及びDCオフセット電圧Voffsetから成る。
図4aでは、イオンビーム走査組立体300の正面図が、イオンビームの進行方向下流に向かって見るように示されている。イオンビーム402は、それがイオン源サイド334でイオンビーム走査組立体300に入射する時の断面で示されている。
図4aに示した通り、イオンビーム402は、高さH
2及び幅W
2によって特徴付けられるスポットビームである。イオンビーム402がイオンビーム走査組立体300に入射すると、イオンビーム402は、様々な電極304、306、310、312、314a、314b、316a、316bによって発生する電場(E)を受ける。走査電極314a、314b、316a、316bは、AC電圧が印加され、示したデカルト座標系のX軸に対して平行な方向404に沿った振動電場を発生する。
図4aはイオンビーム402の1つの位置のみを示すが、走査電極314a、314b、316a、316bによって生成された振動電場によって、イオンビーム402がイオンビーム走査組立体300を通過する時に、ビームの位置は時間とともに変化する。
【0025】
いくつかの実施形態では、イオンビーム走査組立体300は、イオンビームを加工するために使用され、2keVから900keVのイオンエネルギーで基板までイオンビームが到達する。いくつかのケースでは、走査電極314a、314b、316a、316bに印加される電圧の絶対値は、200Vから35kVの範囲内にある。実施形態は、この状況に限定されない。
図4aに示した例では、一方では走査電極314a、314bに、他方では316a、316bに印加される変動電圧は、+10kVのDCオフセット電圧と重ねられる。走査電極314a、314b、316a、316bに印加されるピーク電圧の絶対値は、+10kVのオフセット電圧に対して25kVであり、いくつかのケースではおよそ+/−10度の角度範囲でイオンビーム402を偏向できる。
図4c及び4dに示した通り、
図4a及び4bでは+/−25kVが振動電圧となり、+10kVのオフセット電圧に対して25kV変動し、−/+25kVが、+/−25kVに対して反対の位相角を有する振動電圧となる点に注意すべきである。
【0026】
図4aは、−10kVの静的なDC電圧が、走査電極314a、316aと結合する電極304、306に印加され、四重極静電レンズシステム320の前方レンズ302を形成する例をさらに示す。走査電極314a、316aの+10kVのDCオフセット電圧と結合して、電極304、306に対する負の電圧印加によって、イオンビーム402へ力を働かせる一組の電場が生じ、方向404に対して垂直な方向406に沿ってイオンビーム402を広げやすくなる。このようにして、イオンビーム402がイオンビーム走査組立体300を通過することで、イオンビーム402の断面形状が変化する。
【0027】
図4bは、
図4aに示したものと同じシナリオに対する、イオンビーム402の進行方向とは反対にある上流に向いて見たイオンビーム走査組立体300の背面図を示す。示した例では、−10kVの静電圧が、走査電極314b、316bと結合する電極310、312に印加され、四重極静電レンズシステム320の後方レンズ308を形成する。走査電極314b、316bの+10kVのDCオフセット電圧と結合して、電極310、312に対する負の電圧印加によって、イオンビーム402へ力をさらに働かせる他の電場の組が生じ、方向404に対して垂直な方向406に沿ってイオンビーム402を引き伸ばしやすくなる。このようにして、
図4bに示した通り、イオンビーム402がイオンビーム走査組立体300から出射する時、イオンビーム402は、
図4aに示したイオンビーム走査組立体300に入射する時の形状に比べて方向406に沿って長くなる。このように、イオンビーム402は、(入射)イオンビーム402のH
2よりも大きな高さH
3で出射する。
【0028】
図4a、4bの実施形態によってもたらされる1つの利点は、基板の連続エリアがイオンビーム402でさらされる時に、イオンビーム402の増大した高さH
3によってより均一なイオンドーズ量が得られる点である。しかしながら、アングルコレクターの磁極片のようなイオン注入システムの下流にある構成部品にイオンビーム402の一部が衝突するような大きさ以下で高さH
3を維持するように、イオンビーム走査組立体300に印加する電圧を設定する必要がある点に注意すべきである。
図4eは、
図4a、4bの実施形態を用いて基板112を加工する1つの例を示す。イオンビーム402が、走査電極314a、314b、316a、316bを用いて静電的に走査される一方で、基板が方向406に沿って異なる2つの位置に配置される時に形成される2つのイオン照射エリア410、412が示されている。このように、基板112は、2つのイオン照射エリア410、412を形成するために、2つの異なる位置の間で位置を変えることが可能である。
図4eに示した通り、オーバーラップ領域414は、イオン照射エリア410、412の間に存在する。イオンビーム402は、増大した高さH
3を有するので、オーバーラップ領域414(又はアンダーラップ領域)の制御は、四重極静電レンズシステム320がないケースであって、ビーム高さがH
2だけになるケースに比べてより良くなる。これにより、基板112の全体にわたって、より均一なイオンドーズ量を与えることができる。さらに、四重極静電レンズシステム320は、走査電極の組318によって占有される部分と同じイオンビーム402のビーム経路部分に沿って配置されるので、それによりイオンビーム走査組立体は、イオンビーム走査組立体300を収容したイオン注入システムに対してより大きなフットプリントを必要としない。
【0029】
基板でのイオンドーズ量の均一性を改善することに加えて、更なる実施形態では、イオンビーム走査組立体300は、イオン注入過程に対するビーム電流利用率を増大させるために使用される。ここで用いた「ビーム電流利用率」という言葉は、イオンビーム電流の割合、すなわち基板まで到達するイオンビームのイオンの割合のことである。
図5a及び
図5bは、本実施形態と一致するイオンビームを加工(処理)するための更なるシナリオをまとめて示す。
図5aには、イオンビーム走査組立体300の正面図が示され、一方で、
図5bには、イオンビーム走査組立体300の背面図が示される。
図5c及び5dは、
図5a及び5bにそれぞれ示したイオンビーム走査組立体の構成要素に対応する、例示的な波形522、524をそれぞれ示す。特に、波形522、524は各々、
図3b及び3cに関して上述したように、振動電圧Vscan及びDCオフセット電圧Voffsetから成る。
【0030】
図5aのシナリオでは、イオンビーム502は、イオンビーム走査組立体300に入射する前のイオンビーム402と同じ大きさの高さH
2及び幅W
2を有するように示したスポットビームである。
図4aのシナリオと同様に、
図5aに示した例では、走査電極314a、316aに印加される変動電圧は、−20kVのDCオフセット電圧と重ねられる。走査電極314a、316aに印加されるピーク電圧の絶対値は、−20kVのオフセット電圧に対して25kVであり、いくつかのケースではおよそ+/−10度の角度範囲でイオンビーム402を偏向できる。
図5cに示した通り、
図5aでは+/−25kVが振動電圧となり、−20kVのオフセット電圧に対して25kV変動し、−/+25kVが、+/−25kVに対して反対の位相角を有する振動電圧となる点に注意すべきである。
【0031】
しかしながら、
図4a、4bのケースとは異なり、
図5a、5bのシナリオでは、後方レンズ308に印加される電圧に比べて、異なる電圧が前方レンズ302に印加される。特に、
図5aでは、+20kVの静電圧が、走査電極314a、316aと結合する電極304、306に印加され、四重極静電レンズシステム320の前方レンズ302を形成する。走査電極314a、316aの−20kVのDCオフセット電圧と結合して、電極304、306に対する正の電圧印加によって、イオンビーム502へ力を働かせる一組の電場が生じ、方向404に沿ってイオンビーム502を圧縮しやすくなる。このようにして、イオンビーム502がイオンビーム走査組立体300を通過することで、イオンビーム502の断面形状がさらに変化する。
【0032】
図5bは、
図5aに示したものと同じシナリオに対するイオンビーム走査組立体300の背面図を示す。示した例では、走査電極314b、316bに印加される変動電圧は、+20kVのDCオフセット電圧と重ねられ、−20kVの静電圧が、走査電極314b、316bと結合する電極310、312に印加され、
図4bの状況と同様に後方レンズ308を形成する。走査電極314a、316aの+20kVのDCオフセット電圧と結合して、電極310、312に対する負の電圧印加によって、イオンビーム
502に対して力が働き、方向404に対して垂直な方向406に沿ってイオンビーム502を引き伸ばしやすくなる。このようにして、
図5bに示した通り、イオンビーム502がイオンビーム走査組立体300から出射する時、イオンビーム502は、
図5aに示したイオンビーム走査組立体300に入射する時の形状と比べて方向406に沿って長くなり、かつ、方向404に対して圧縮される。このように、イオンビーム502は、(入射)イオンビーム502のH
2よりも大きな高さH
3及び(入射)イオンビーム502の幅W
2よりも小さな幅W
3で出射する。さらに、走査電極314b及び316bに印加されるピーク電圧の絶対値は、+20kVのオフセット電圧に対して25kVであり、いくつかのケースではおよそ+/−10度の角度範囲でイオンビーム402を偏向できる。
図5bでは+/−25kVが振動電圧となり、+20kVのオフセット電圧に対して25kV変動し、−/+25kVが、+/−25kVに対して反対の位相角を有する振動電圧となる点に注意すべきである。
【0033】
図5eは、
図5a、5bの実施形態を用いて基板112を加工する1つの例を示し、
図5a、5bの実施形態によってもたらされる利点、すなわち増大したビーム電流利用率を示す。特に、高さH
3及び幅W
3によって特徴付けられる断面形状を有する
図5bのイオンビーム502は、基板112に当たるように示されている。イオンビーム502は、走査電極314、316を用いて静電的に走査され、照射エリア510を形成する。
図5eに示した通り、照射エリア510は、基板112を区切る照射エリア510の一部を表す照射基板エリア512を含む。照射エリア510は、イオンが基板112に衝突しない照射エリア510の一部を表すオフ基板エリア514a、514bをさらに含む。照射エリア510に対する照射基板エリア512の比は、ビーム電流利用率の測定とみなすことができる。イオンビーム502は、
図5a、5bに示した四重極静電レンズシステム320の動作なしにイオンビーム502の幅W
2よりも狭い幅W
3を有するので、基板112の端518、520を越えてさらにイオンビーム502を走査する必要はなく、イオンビーム幅がW
2である状況(例えば、オフ基板エリア416、418がより大きい
図4cを参照)に比べて、基板112への全体照射が保証される。従って、
図5a、5bのシナリオでは、ビーム電流利用率は高まる。
【0034】
本実施形態によってもたらされる上述した利点に加えて、走査レンズ部品及び四重極レンズ部品の共同配置により、イオンビームを操作するためのシステムがコンパクトになり、構成部品が共同配置ではない構成に比べて、イオンビーム経路に沿った電子が電離する領域の長さを減らす。言い換えると、スキャナー及び四重極部品は電子を引き付け、それによって、通過するイオンビームから電子を剥ぎ取るので、コンパクトなシステムでのそれらの共同配置によって、仮にスキャナー部品及び四重極レンズ部品がビームラインに沿って直列方式で配置された場合の電子が電離する可能性のあるイオンビームの長さが減る。
【0035】
本開示は、ここで述べた所定の実施形態による範囲に限定されるものではない。事実、ここで述べた実施形態に加えて、他の様々な本開示の実施形態及び本開示に対する修正が、先の記述及び付随した図から当業者にとっては明白であろう。このように、そのような他の実施形態及び修正は本開示の範囲内にあるものとする。さらに、特定の目的のために、特定の環境で、特定の実施という面で本開示がここでは述べられているが、その有用性はそれに限定されるものではなく、本開示はいくつもの目的のために、いくつもの環境で、有利な方法で実施されることを当業者は認識するだろう。従って、以下で明示する請求項は、ここで述べた本開示の全範囲及び精神に鑑みて解釈されるべきである。