特許第6453795号(P6453795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453795
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   H02J1/00 306F
   H02J1/00 306G
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-43225(P2016-43225)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-163625(P2017-163625A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】青木 茂徳
(72)【発明者】
【氏名】北井 直樹
【審査官】 高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0143922(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/021064(WO,A1)
【文献】 特開2011−078223(JP,A)
【文献】 特表2011−505292(JP,A)
【文献】 特開2001−226077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R16/00−17/02,
B66C13/00−15/06,
B66C19/00−23/94,
E02F3/42−3/43,
E02F3/84−3/85,
E02F9/20−9/22,
H01M10/42−10/48,
H02J1/00−1/16,
H02J7/00−7/12,
H02J7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が印加され、複数のチャンネルを介して複数の機器に電力をそれぞれ分配して供給する電力分配器を備える制御装置であって、
前記制御装置の温度を測定する温度センサと、
前記機器ごとに異なる優先度が記憶される記憶部と、
前記温度センサが測定した温度に基づき前記制御装置が出力可能な最大出力電流を演算する最大電流演算部と、
前記最大電流演算部が演算する前記最大出力電流及び前記優先度に基づいて、前記複数の機器の少なくともいずれか一つの消費電力を制限する制限指令を演算する制限指令演算部とを備え、
前記制限指令演算部は、前記最大出力電流と前記電力分配器から複数の機器に供給する電流の合計値とを比較し、前記電力分配器から前記複数の機器に供給する電流の合計値が前記最大出力電流よりも大きいときは、前記優先度の高い機器の消費電流から順に積算していき、消費電流の積算値が前記最大出力電流を越える前記複数の機器に、前記最大出力電流を越える直前の前記消費電流の積算値を前記最大出力電流から減じた残りの電流を均等に供給する制限指令を演算し、
前記電力分配器は、前記制限指令演算部で演算される制限指令に基づいて、前記少なくともいずれか一つの機器のチャンネルに供給する電力を、前記制御装置の出力する電流が前記最大出力電流を越えないように制限することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
当該制御装置は建設機械に搭載され、
前記制限指令演算部は、オペレータにより決定される前記建設機械の動作に関する特性である動作モードに基づき、前記優先度を変更することを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源の状態に応じて機器の消費電力を調整するようにした制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、機種により使用される電磁弁やリレーの種類や数量が多様であるが、電磁弁やリレーに電力を供給する制御装置はコスト低減のために複数の車種で共通化されることが多い。想定されうる最高温度環境下で全車種の最大電流を出力することを前提に制御装置を製作すると、制御装置が過剰に大型で高コストになるため、対策が求められる。
特許文献1には、所定の温度以上を検出すると負荷電流を強制的に低下させる電流低下回路を備える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−284737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、特定の機器への電力出力を維持しつつ、総電力出力の制限を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、制御装置は、電源電圧が印加され、複数のチャンネルを介して複数の機器に電力をそれぞれ分配して供給する電力分配器を備える制御装置であって、前記制御装置の温度を測定する温度センサと、前記機器ごとに異なる優先度が記憶される記憶部と、前記温度センサが測定した温度に基づき前記制御装置が出力可能な最大出力電流を演算する最大電流演算部と、前記最大電流演算部が演算する前記最大出力電流及び前記優先度に基づいて、前記複数の機器の少なくともいずれか一つの消費電力を制限する制限指令を演算する制限指令演算部とを備え、前記制限指令演算部は、前記最大出力電流と前記電力分配器から複数の機器に供給する電流の合計値とを比較し、前記電力分配器から前記複数の機器に供給する電流の合計値が前記最大出力電流よりも大きいときは、前記優先度の高い機器の消費電流から順に積算していき、消費電流の積算値が前記最大出力電流を越える前記複数の機器に、前記最大出力電流を越える直前の前記消費電流の積算値を前記最大出力電流から減じた残りの電流を均等に供給する制限指令を演算し、前記電力分配器は、前記制限指令演算部で演算される制限指令に基づいて、前記少なくともいずれか一つの機器のチャンネルに供給する電力を、前記制御装置の出力する電流が前記最大出力電流を越えないように制限する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電流出力を機器ごとに制限するので、特定の機器への電力出力を維持しつつ、総電力出力の制限を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】油圧ショベル100の側面図
図2】制御装置10の構成、および制御装置10に接続される機器を示すブロック図
図3】最大電流特性情報12bを可視化した図
図4】制御装置10の動作に伴う情報の流れおよび電力の流れを示す図
図5】電力制御部122の動作を表すフローチャート
図6】消費電流情報12cの一例を示す図
図7】優先度情報13aの一例を示す図
図8図5のステップS306、S307における処理例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、図1図8を参照して、本発明にかかる制御装置の第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明にかかる制御装置を備える油圧ショベル100の側面図である。図1に示すように、油圧ショベル100は、走行体101と、走行体101上に旋回可能に搭載された旋回体102とを備える。走行体101は、左右一対のクローラを走行モータによって駆動することにより走行する。
【0009】
旋回体102の前部左側には運転室107が設けられ、運転室107の後部にはエンジン室108が設けられている。運転室107には、オペレータが操作を行う操作部、および電磁弁などに動作指令を行う制御装置などが収容されている。エンジン室108には、エンジン、エンジンの排気を浄化するディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel particulate filter、DPF)、DPFの捕集能力を回復させるDPF再生装置、オルタネータ、および油圧機器等が収容されている。エンジン室の後部には、作業時の機体のバランスをとるためのカウンタウエイト109が取り付けられている。旋回体102の前部右側にはフロント作業装置103が設けられている。
【0010】
フロント作業装置103は、複数のフロント部材、すなわちブーム104、アーム105、およびバケット106を備える。ブーム104は、基端部が旋回体102の前部に回動可能に取り付けられている。アーム105は、その一端がブーム104の先端に回動可能に取り付けられている。ブーム104およびアーム105は、ブームシリンダ104aおよびアームシリンダ105aによってそれぞれ駆動されて起伏する。バケット106は、アーム105の先端において、アーム105に対して上下方向に回動可能に取り付けられ、バケットシリンダ106aによって駆動される。
【0011】
図2は、運転室107に収容される制御装置10の構成、および制御装置10に接続される機器を示すブロック図である。制御装置10には、出力機器20として、ブーム電磁弁21、アーム電磁弁22、バケット電磁弁23、リリーフ圧調整回路24、アーム再生電磁弁25、掘削再生電磁弁26、緊急停止弁27、DPF再生電磁弁28、アタッチメントリリーフ電磁弁29が接続され、入力機器として、電源32、操作レバー33、モードスイッチ34、およびパワーディギングスイッチ35が接続されている。
制御装置1には出力機器20への電力供給を制御する電力分配器17が設けられている。ブーム電磁弁21、アーム電磁弁22、バケット電磁弁23、リリーフ圧調整回路24、アーム再生電磁弁25、掘削再生電磁弁26、緊急停止弁27、DPF再生電磁弁28、アタッチメントリリーフ電磁弁29である出力機器20のそれぞれはチャンネル17a〜17iを介して電力分配部17から電力が供給される。
【0012】
電源32は、エンジン31の駆動力を用いて発電するオルタネータ、発電した電力を整流する整流器、およびバッテリーから構成され、直流電力を制御装置10に供給する。
操作レバー33は、オペレータにより操作され、ブーム104、アーム105、および、バケット106の操作目標値を制御装置10に出力する。
モードスイッチ34は、オペレータにより操作され、油圧ショベル100の動作に関する特性として、パワーモードとエコモードのいずれかの動作モードを制御装置10に出力する。パワーモードとは高出力を重視するモードであり、エコモードとは燃料効率を重視するモードである。制御装置10は、入力される動作モードに応じて、操作レバー33の操作量に対するブーム104、アーム105、および、バケット106の動作の特性、たとえば動作速度を変化させる。
パワーディギングスイッチ35は、オペレータにより操作され、一時的に掘削力を増加させるパワーディギング指令を制御装置10に出力する。制御装置10は、パワーディギング指令が入力されると、後述するリリーフ圧調整回路24にフロント駆動回路のリリーフ圧力を増加させ掘削力を増加させる。
【0013】
(出力機器20の構成)
出力機器20は、機能により、流量制御を行うブーム電磁弁21、アーム電磁弁22、バケット電磁弁23、性能に関わる動作を行うリリーフ圧調整回路24、燃費に関わる動作を行うアーム再生電磁弁25および掘削再生電磁弁26、安全・環境にかかわる動作を行う緊急停止弁27、DPF再生電磁弁28、およびアタッチメントリリーフ電磁弁29に分類される。このような分類をグループ化と呼びグループ毎に電力制限を行うことができる。
【0014】
ブーム電磁弁21、アーム電磁弁22、バケット電磁弁23はそれぞれ、ブームシリンダ104a、アームシリンダ105a、バケットシリンダ106aに導入される圧油の流量を制御する。
リリーフ圧調整回路24は、図示しない電磁式可変リリーフ弁を有し、油圧ショベルのフロント駆動回路のリリーフ圧を増減させる。リリーフ圧調整回路24にリリーフ圧を変更する指令が入力されると、ブームシリンダ104a、アームシリンダ105a、バケットシリンダ106aに供給される圧油の圧力が増減して掘削力が増減される。
なお、制御装置10からリリーフ圧を増加する/しないの二者択一の指令が出力される場合、リリーフ圧は通常の値と昇圧した値のいずれかに制御される。
【0015】
アーム再生電磁弁25は、制御装置10からの動作指令により連通位置(A)と遮断位置(B)とに切換えられる。アーム再生電磁弁25が連通位置(A)を保持しているときには、アームシリンダ105aのロッド側油室とボトム側油室のうち一方の油室から排出された圧油がタンクに戻る。一方、アーム再生電磁弁25が遮断位置(B)に切換えられたときには、アームシリンダ105aのロッド側油室とボトム側油室のうち一方の油室から排出された圧油は、タンクに戻ることなく他方の油室に供給(再生)される。そのため、アーム105を下げる際にアーム再生電磁弁25を遮断位置(B)に切り替えると、アームシリンダ105aに圧油を供給することなく、アーム105およびバケット106の自重によりアーム105を下げることができるのでエネルギーの節約となる。
【0016】
掘削再生電磁弁26は、制御装置10からの動作指令により連通位置(A)と遮断位置(B)とに切換えられる。掘削再生電磁弁26が遮断位置(B)を保持しているときには、ブームシリンダ104aとアームシリンダ105aとは回路的に遮断されている。ブーム104を上げる際に掘削再生電磁弁26が連通位置(A)に切り替えると、ブームシリンダ104aのロッド側油室から排出された圧油が、アームシリンダ105aのボトム側油室に供給される。これによりアームシリンダ105aが伸長するので、掘削に要するエネルギーの節約となる。
【0017】
緊急停止弁27は、ブームシリンダ104a、アームシリンダ105a、およびバケットシリンダ106aへの圧油の供給を停止させる電磁弁である。緊急停止弁27を動作させると、操作レバー33への入力に関わらず、ブーム104、アーム105、および、バケット106の動作が停止する。
DPF再生電磁弁28は、油圧ショベル100が停止している際にDPF再生装置を動作させるための電磁弁であり、油圧回路に油圧ショベル100が動作している場合と同様の油圧負荷を発生させる。
アタッチメントリリーフ電磁弁29は、油圧ショベル100に取り付けられたアタッチメントに適した許容圧力以下となるようにリリーフ圧を調整する電磁弁である。
【0018】
(制御装置の構成)
制御装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、温度センサ14、信号生成部15、および電力分配部17を備える。以下では、CPU11、ROM12、およびRAM13をまとめて算出部10Aと呼ぶ。
ROM12には、プログラム12a、最大電流特性情報12b、および消費電流情報12cが格納される。
プログラム12aにより実行される機能を機能ブロックとして表したものが、後述する制御演算部121と電力制御部122である。
【0019】
最大電流特性情報12bは、制御装置10に関する特性であって、制御装置10の温度と、その温度条件下で制御装置10が出力可能な最大の出力電流の関係を示す情報である。最大電流特性情報12bは、ルックアップテーブルまたは関数により表現される。
図3は、最大電流特性情報12bを可視化した図である。横軸は制御装置10の温度を表し、縦軸は最大出力電流を表す。図3に示すように、制御装置10は温度上昇とともに出力可能な電流が減少し、温度tmaxに達すると出力可能な電流がゼロになる。すなわち、制御装置10が出力可能な電流の最大値は制御装置10の温度に依存する。
【0020】
RAM13には、優先度情報13a、およびプログラム12aによる計算過程の情報が記憶される。優先度情報13aとは、出力機器20を構成する各機器について、いずれの機器の動作を優先するかを示す情報である。この実施の形態では、各種モードごとに優先度が設定されている。
温度センサ14は、制御装置10の温度を測定して電力制御部122に出力する。
信号生成部15は、制御演算部121が出力する動作指令と電力制御部122が出力する制限指令とに基づき、出力機器20へ供給する電流が制限指令に含まれる最大電流値を超えないように電力分配部17へ動作指令および制限指令を出力する。
【0021】
信号生成部15は、出力機器20のそれぞれの識別子とそれぞれの出力機器20が接続されるチャンネルが関連付けられた不図示のチャンネル−機器対応表を備える。信号生成部15は、電力制御部122から機器の識別子、および最大電流値を受信すると、その機器への電力供給を受信した最大電流値以下に一時的に制限し、その後制限を終了する旨を受信するとその機器への電力供給の制限を終了する。
電力分配部17は、信号生成部15が出力する動作指令および制限指令に基づき、それぞれの出力機器20へ動作指令信号、たとえば100−1000mAの電流を出力する。
【0022】
(制御装置の動作の説明)
図4は、制御装置10の動作に伴う情報および電力の流れを示す図である。図4では、算出部10Aにより実行される機能を制御演算部121と電力制御部122と信号生成部15の3つの機能ブロックとして表している。電力制御部122は、最大電流演算部122Aと制限指令演算部122Bとを備える。
制御演算部121は、モードスイッチ34の設定に基づき優先度情報13aを変更する。たとえばモードスイッチ34がパワーモードに設定されている場合は、燃料消費を抑制する装置への給電よりも出力を増加させる装置への給電が優先されるように優先度が設定される。
ROM12に予めそれぞれの動作モードに対応する優先度情報が格納され、制御演算部121は優先度情報13aを作成する代わりに、電力制御部122が読み込む優先度情報を指定するように構成してもよい。
【0023】
制御演算部121は、操作レバー33、モードスイッチ34、およびパワーディギングスイッチ35からの入力に基づき演算を行い、出力機器20への動作指令を算出する。そして、算出した動作指令を信号生成部15に出力するとともに、動作指令を出力する対象の出力機器20の識別子を電力制御部122に出力する。
信号生成部15は、制御演算部121から入力された動作指令に基づき、電力分配部を介して動作指令信号を生成し出力機器20に出力する。
【0024】
電力制御部122には、動作指令の対象となる出力機器20の識別子が制御演算部121から入力され、温度センサ14から制御装置10の温度が入力される。電力制御部122は、ROM12から読み込んだ消費電流情報12cと、動作指令の対象となる出力機器20の識別子とを用いて、出力機器20が消費する合計電流を算出する。次に電力制御部122の最大電流演算部122Aは、ROM12から読み込んだ最大電流特性情報12bと、温度センサ14が検出した制御装置10の温度とを用いて、現在出力可能な最大の電流を演算する。そして電力制御部122は、現在出力可能な最大電流と積算した消費合計電流とを比較し、積算した消費合計電流が現在出力可能な最大電流を上回っていればさらに以下の計算を行う。
【0025】
すなわち電力制御部122の制限指令演算部122Bは、RAM13に保存される優先度情報13aを読み込み、動作指令の対象となる出力機器20の消費電流を優先度が高い機器から順に積算し、積算値が現在出力可能な最大の電流を超えると判断された直前に選択された機器を特定する。そして制限指令演算部122Bは、その特定された機器、および動作指令の対象となる出力機器20であってその特定された機器よりも優先度が低い機器を電力供給を制限する機器とする。換言すると、電力分配器17が電流を供給する機器について優先度の高い機器の消費電流から順に積算していき、積算した値が最大出力電流を越える機器への電力供給を制限する。また、電力供給を制限する機器に供給可能な最大電流を演算する。電力制御部122の制限指令演算部122Bは、信号生成部15に制限指令を出力する。制限指令は、制限する機器を特定する情報と、特定された機器へ供給する最大電流値の情報を含む。
【0026】
(フローチャート)
図5を参照して、電力制御部122の動作をフローチャートを用いて説明する。
電力制御部122は、制御装置10から動作指令を出力する機器の名称が入力されると図5に示す処理を開始する。以下に説明する各ステップの実行主体は制御装置10のCPU11である。
ステップS301では、ROM12から消費電流情報12cを読み込み、制御装置10から入力された識別子に対応する機器が動作に必要な消費電流の合計値を算出する。次にステップS302に進む。
【0027】
ステップS302では、温度センサ14から制御装置10の温度を読み込み、ステップS303に進む。
ステップS303では、ROM12から最大電流特性情報12bを読み込み、ステップS302において読み込んだ温度に対応する最大出力電流を算出し、ステップS304に進む。
【0028】
ステップS304では、ステップS303において算出した最大出力電流が、ステップS301において算出した合計電流以上であるか否かを判断する。最大出力電流が合計電流以上であると判断する場合、すなわち、消費電流合計値が制御装置10が出力可能な電流、すなわち最大出力電流未満である場合はステップS304が肯定判断されてステップS305に進む。最大出力電流が消費電流合計値以上であると判断する場合、すなわち制御装置10が出力可能な電流が不足すると判断する場合はステップS306に進む。
ステップS305では、出力制限を解除する旨の出力信号を生成し、ステップS309に進む。
【0029】
ステップS306では、RAM13から優先度情報13aを読み込み、制御装置10から受信した識別子に対応する機器のうち優先度が高い機器から電流を割り当て、最大出力電流の範囲内で動作に必要な電流が得られない機器、すなわち制限対象機器を決定する。
ステップS307では、ステップS306において決定した制限対象機器について、許容する最大の出力電流である許容電流を算出する。許容電流は制限対象機器が1つの場合は、最大出力電流と制限対象機器以外の機器の消費電力の和との差である。許容電流は制限対象機器が2つ以上の場合はたとえば、制限対象機器のうち最も優先度が高い機器に残りの電流を全て割り当てて他の制限対象機器の許容電流をゼロとしてもよいし、制限対象機器で電流を均等に分配してもよい。
ステップS308では、ステップS306において決定した制限対象機器、およびステップS307において決定した制限対象機器の許容電流値のそれぞれを示す信号を生成しステップS309に進む。
ステップS309では、ステップS305またはステップS308において生成した信号を信号生成部15に出力し、一連の動作を終了する。
【0030】
なお、電力制御部122による電流制限処理は概ね次の通りである。
たとえば、電力制御部122が制御演算部から出力機器A、B,C,Dに対応する識別子を受信し、これらの消費電流がそれぞれ0.5A,0.5A,0.5A,1Aであり合計値が2.5A、制御装置10が出力可能な電流(最大出力電流)が2Aである場合を一例として説明する。消費電流合計値2.5A>最大出力電流2Aであり、優先順位の高い出力機器から消費電流を積算し、積算値が2Aを越えるときの出力機器を判別する。上記一例では、出力機器A,B,Cの消費電流合計値は1.5Aであり、出力機器Dの消費電流1Aを加算したときに最大出力電流2Aを越える。したがって、出力機器Dについて電流制限を行うべく、制限電流を(2A−1.5A)=0.5Aとして求め、出力機器Dの消費電流を0.5A以下に制限する。
【0031】
(制御装置の動作例)
図6図8を用いて電力制御部122の動作例を説明する。
図6は消費電流情報12cの一例を示す図であり、図7は優先度情報13aの一例を示す図である。なお、数値が大きいほど優先度が高いものと定義している。前述のとおり、消費電流情報12cには出力機器20のそれぞれについて動作に必要な電流が記載されている。図6に示す例では、たとえばブーム電磁弁21の動作には0.5Aが必要であり、アーム電磁弁22の動作には0.4Aが必要であることが記載されている。前述のとおり、優先度情報13aにはいずれの機器の動作を優先するかを示す情報が記載されている。図7(a)はモードスイッチ34がエコモードに設定されている場合に制御演算部121により作成される優先度情報13aを表しており、図7(b)はモードスイッチ34がパワーモードに設定されている場合に制御演算部121により作成される優先度情報13aを表している。図7(a)と図7(b)はともに、機器の機能に基づきグループ化されて優先度が設定されている。図7(a)と図7(b)とでは、性能に関わる動作を行うリリーフ圧調整回路24の優先度と、燃費に関わる動作を行うアーム再生電磁弁25および掘削再生電磁弁26の優先度が入れ替わっている。
【0032】
以下では、現在の制御装置10の温度に対応する最大出力電流が0.6Aであり、モードスイッチ34がエコモードに設定され、制御演算部121は電力制御部122に以下の機器の識別子を出力することとする。すなわち、アーム電磁弁22、リリーフ圧調整回路24、アーム再生電磁弁25、およびDPF再生電磁弁28の名称が電力制御部122に出力される。
この場合、電力制御部122は以下の処理を行う。
【0033】
電力制御部122は、ROM12から消費電流情報12cを読み込み、アーム電磁弁22、リリーフ圧調整回路24、アーム再生電磁弁25、およびDPF再生電磁弁28が動作に必要な消費電流の合計値を算出する(ステップS301)。消費電流情報12cが図5の例のとおりであると、消費電流の合計値は1.1Aである。
次に電力制御部122は、温度センサ14から温度を読み込み(ステップS302)、最大電流特性情報12bを参照して最大出力電流を算出する(ステップS303)。この最大出力電流は、前述のとおり0.6Aである。
次に電力制御部122は、最大出力電流よりも消費電流の合計電流の方が大きいことから(ステップS304:NO)、以下に説明する図8に示すように制限対象機器と制限電流を決定する(ステップS306、S307)。
【0034】
図8は、図5のステップS306、S307における処理例を示す図である。図8のA−B列は、図7(a)に示した優先度情報13aを優先度が高い順に並べたものである。図8のB−C列は、図6に示した消費電流情報12cを並べ替えたものである。図8のC列は、本動作例において制御演算部121から動作指令の対象として入力された機器を示すものである。図8のE列は、動作指令の対象である機器の消費電流を上から累計したものである。すなわち、「DPF再生電磁弁」の行における累計電流「0.2」Aは、DPF再生電磁弁28のみの消費電流であり、「アーム再生電磁弁」の行における累計電流「0.4」Aは、DPF再生電磁弁28とアーム再生電磁弁25の消費電流の累計である。「リリーフ圧調整回路」の行における累計電流は「0.7」A、「アーム電磁弁」の行における累計電流は「1.1」Aである。図8のF列は制限電流を示す。E列の「リリーフ圧調整回路」の行、および「アーム電磁弁」の行の累計電流は最大出力電流である0.6Aを超えるので、「リリーフ圧調整回路」と「アーム電磁弁」はそれぞれ制限対象機器として決定される。これらの制限電流は、たとえば優先度が高い「リリーフ圧調整回路」は残りの電流、すなわち(0.6A−0.4A)=0.2Aに設定され、「アーム電磁弁」はゼロAに設定される。
次に電力制御部122は、リリーフ圧調整回路24およびアーム電磁弁22が制限対象機器であることを示す信号、およびそれぞれの制限電流を示す信号を生成し(ステップS307、S308)、信号生成部15に出力する(ステップS309)。
【0035】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)制御装置10は、複数のチャンネルを介して複数の機器に電力をそれぞれ分配して供給する電力分配器17を備える。制御装置10は、制御装置10の温度を測定する温度センサ14と、温度センサ14が測定した温度に基づき制御装置10が出力可能な最大出力電流を演算する最大電流演算部122Aと、最大電流演算部122Aが算出する最大出力電流に基づいて、複数の機器の少なくともいずれか一つの消費電力を制限する制限指令を演算する制限指令演算部122Bとを備える。信号生成部15は、電力制御部122の制限指令演算部122Bで演算される制限指令に基づいて、少なくともいずれか一つの機器のチャネルに供給する電力を、制御装置10の出力する電流が最大出力電流を越えないように制限する。
制御装置10は、電流出力を機器ごとに制限するので、特定の機器への電力出力を維持しつつ、総電力出力の制限を行うことができる。
【0036】
(2)複数の機器の中で共通する機能を有する機器同士をそれぞれひとつのグループとし、制限指令演算部122Bが演算する制限指令により、信号生成部15はグループごとに消費電力を制限する。あるいは、複数のチャネルの中で共通する機能を有する複数の機器に電力を供給するチャネル同士をそれぞれ一つのグループとし、電力制御部122が演算する制限指令により、信号生成部15はグループごとに消費電力を制限する。すなわち電力制御部122は、チャンネルが接続される機器の機能に基づきグループ化されたチャンネルごとに出力を制限する。
そのため、機能的に関連する機器への電力供給の制限を連動させることができる。
【0037】
(3)機器ごとに優先度が記憶される記憶部、すなわちRAM13をさらに備える。制限指令演算部122Bは、優先度に基づき、信号生成部15から複数の機器に供給する電力を制限するチャンネルを決定する。
そのため、電力供給を制限する機器の順番を優先度により設定することができる。
【0038】
(4)制限指令演算部122Bは、最大出力電流と信号生成部15から複数の機器に供給する電流の合計値とを比較し、信号生成部15から複数の機器に供給する電流の合計値が最大出力電流よりも大きいときは、信号生成部15が電流を供給する機器について優先度の高い機器の消費電流から順に積算していき、積算した値が最大出力電流を越える機器の消費電流を、制御装置10の出力する電流が最大出力電流を越えないように制限する制限指令を演算する。
(5)制御装置10は油圧ショベル100に搭載される。演算部、すなわち電力制御部122は、オペレータにより決定される建設機械の動作に関する特性である動作モードに基づき、優先度を変更する。
そのため、オペレータによる決定をより尊重した油圧ショベル100の動作が可能となる。
【0039】
(変形例)
上述した第1の実施の形態を以下のように変形してもよい。
(1)第1の実施の形態では、出力機器20の優先度は、出力機器20の機能に基づきグループ化して優先度を設定したが、機能に基づくグループ化を行わず出力機器20のそれぞれに異なる優先度を設定してもよい。
(2)電力制限部122は、制限対象機器の許容電流値を一律にゼロAとしてもよい。すなわち、図5のステップS307に示した許容電流値の算出を省略し、電力分配部17に送信する制限指令を制限対象機器を特定する情報のみから構成してもよい。
(3)電力制限部122は、バルブ位置の保持など待機電力を必要とする機器には、電力制御部122からその機器の識別子を受信しても、待機電力に相当する分の電力の供給を維持してもよい。この場合は、図5のステップS304において、電力制御部122が算出する最大出力電流から各機器の待機電力に相当する電流の合計を減じた値と、ステップS301において算出した合計電流との比較を行う。
(4)制御装置10は消費電流情報12cを備えず、制御装置10の出力電流を常時監視することで代用してもよい。すなわち制御装置10は、図5におけるステップS301の代わりに、制御装置10の出力電流値を測定し、ステップS304において、合計電流の代わりに、測定した出力電流を比較してもよい。さらにこの場合は、最大出力電流そのものと比較してもよいし、最大出力電流に基づく値、たとえば最大出力電流の95%と比較を行ってもよい。
【0040】
上述した実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 … 制御装置
13a … 優先度情報
14 … 温度センサ
17 … 電力分配部(電力出力部)
17a〜17i … チャンネル
20 … 出力機器(機器)
100 … 油圧ショベル(建設機械)
122A … 最大電流演算部
122B … 制限指令演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8