(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453887
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ターボ機械のコンプレッサ用のノイズリフレクタ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/66 20060101AFI20190110BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20190110BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20190110BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
F04D29/66 G
F02B39/00 G
F02B39/00 T
F04D29/42 M
F04D29/44 Q
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-540571(P2016-540571)
(86)(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公表番号】特表2017-500484(P2017-500484A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2014002665
(87)【国際公開番号】WO2015090486
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年6月16日
【審判番号】不服2017-18377(P2017-18377/J1)
【審判請求日】2017年12月11日
(31)【優先権主張番号】102013021191.3
(32)【優先日】2013年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】チェブリ,エリアス
(72)【発明者】
【氏名】クリワー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ザウター,シモン
(72)【発明者】
【氏名】バーニー,デレク エー.
(72)【発明者】
【氏名】レフラー,パウル
(72)【発明者】
【氏名】トレイザー,ヘルムート
【合議体】
【審判長】
久保 竜一
【審判官】
佐々木 芳枝
【審判官】
山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102011109704(DE,A1)
【文献】
特開2012−215200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 29/42
F04D 29/44
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手延在方向を有する少なくとも1つのポジティブロック要素(18)を備え、該ポジティブロック要素を用いてポジティブロック結合を形成してコンプレッサのハウジング部品に固定可能となる、排気ガスターボチャージャのコンプレッサ用のノイズリフレクタ(10)であって、
前記ポジティブロック要素(18)の前記長手延在方向が軸方向に延びており、
前記ノイズリフレクタ(10)が、該ノイズリフレクタ(10)の円周方向に延びる別の長手延在方向を有する少なくとも1つの別のポジティブロック要素(20)を備え、該ポジティブロック要素を用いて別のポジティブロック結合を形成して前記コンプレッサの前記ハウジング部品に固定可能となり、
前記ポジティブロック要素(18)が凸面体に形成され、前記ハウジング部品の凹面体に形成された対応するくぼみと相互作用して前記ポジティブロック結合を形成可能であり、かつ
前記別のポジティブロック要素(20)が凸面体に形成され、前記ハウジング部品の凹面体に形成された対応する別のくぼみと相互作用して前記別のポジティブロック結合を形成可能である
ことを特徴とするノイズリフレクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のノイズリフレクタ(10)を有する排気ガスターボチャージャ用のコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の、ターボ機械、特に排気ガスターボチャージャのコンプレッサ用のノイズリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械、特に内燃機関の排気ガスターボチャージャのコンプレッサ用のそのようなノイズリフレクタは、特許文献1から公知である。ノイズリフレクタは、コンプレッサのノイズを低減するためのガイド要素である。ガイド要素、言い換えるとノイズリフレクタは、例えばノイズリングとして形成され、少なくとも実質的に軸方向に延びる少なくとも1つの第1の長手領域と、第1の長手領域と連続し、かつ第1の長手領域から径内方向に延びている少なくとも1つの第2の長手領域とを備えている。更にノイズリフレクタは、少なくとも1つのポジティブロック要素を備え、このポジティブロック要素を用いてノイズリフレクタは、ポジティブロック結合を形成してコンプレッサハウジングに固定される。この場合、ポジティブロック要素は第1の長手領域に配置される。ポジティブロック結合はラッチ結合の形式の機械的ロックであり、このポジティブロック結合を用いてノイズリフレクタはハウジング部品に固定される、又は固定可能となる。
【0003】
ノイズ低減はノイズリフレクタを用いて、特に反射及びコンプレッサのコンプレッサインペラにより発生する音波の干渉によって実現される。音波は、反射及び干渉によりコンプレッサインペラ入口領域に部分的に伝わるのみであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2011 109 704 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ハウジング部品から独立して形成されたノイズリフレクタのハウジング部品への特に強固な取付けを実現する、冒頭で言及した種類のノイズリフレクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1に記載の特徴を有するノイズリフレクタにより解決される。本発明の目的にかなった意義のある発展形態を伴う有利な実施形態は従属請求項に提示される。
【0007】
ハウジング部品へのノイズリフレクタの特に強固な取付けを実現する、請求項1の前段に記載された種類のノイズリフレクタを提供するため、本発明により、ポジティブロック要素の長手延在方向がノイズリフレクタの軸方向に延びるように、それによりコンプレッサの軸方向に延びるように設けられる。ポジティブロック要素のこの実施形態により、とくに大きな軸方向引き抜き力及び非常に高いねじれ耐性を実現でき、ノイズリフレクタはポジティブロック結合を介してハウジング部品と強固に結合され、その結果、軸方向でハウジング部品に特に不動に固定されるだけではなく、ハウジング部品に対するねじれに抗して特に確実に保持される。言い換えるとポジティブロック要素によってハウジング部品に対するノイズリフレクタの特に強固な位置固定が実現できる。ポジティブロック要素を用いて、極めて低い製造コスト及び取付けコストを実現するとともに、ノイズリフレクタのハウジング部品への特に安定した取付けが実現される。すなわちノイズリフレクタは特に容易にハウジング部品に取り付け可能である。
【0008】
このため、ポジティブロック要素のうちの1つとハウジング部品に設けられた別のポジティブロック要素とがポジティブロック結合を形成して少なくとも部分的に嵌合するように、ポジティブロック要素は別のポジティブロック要素と相互作用する。
【0009】
ポジティブロック結合によって機械的ロックが特にラッチ結合の形式で生じ、このラッチ結合は特に容易に製造され、したがって短時間に安価に製造される。このために例えばノイズリフレクタは簡単な方法で、2つのポジティブロック要素が相互の作用結合に至るまで、軸方向にハウジング部品内へと挿入され、すなわち相互作用する。
【0010】
好適にはノイズリフレクタのポジティブロック要素は、凸面体、すなわち外側に膨らむように形成され、ハウジング部品の凹面体に形成された対応するくぼみと相互作用してポジティブロック結合を形成可能に設けられる。言い換えると、ハウジング部品に設けられた別のポジティブロック要素は凹面形状のくぼみとして形成され、ノイズリフレクタに設けられたポジティブロック要素は少なくとも部分的にこのくぼみに嵌合可能である。これにより容易かつ短時間に安価な方法でラッチ結合の形式で機械的ロックを実現でき、このラッチ結合を用いてノイズリフレクタをハウジング部品に特に強固に保持できる。
【0011】
更にこれにより、ノイズリフレクタの特に大きな半径方向張力が実現できるため、熱の影響や振動によってノイズリフレクタがハウジング部品から外れるリスクを特に低く保つことができる。更にポジティブロック結合を少なくとも実質的に隙間なく形成できることで、ハウジング部品に対するノイズリフレクタの関連ノイズ及びそれから生じる例えばガタ打ちノイズなどのノイズを抑止可能となる。
【0012】
本発明に基づくノイズリフレクタを有するターボ機械のコンプレッサ、特に内燃機関の排気ガスターボチャージャのコンプレッサも本発明に含まれる。ポジティブロック要素を用いてノイズリフレクタとコンプレッサのハウジング部品との間に特に強固なポジティブロック結合を生成することができるため、ノイズリフレクタがハウジング部品から外れるリスク及び内燃機関の吸い込みヘッドが制御不能に動くリスクを特に低く保つことができる。
【0013】
本発明のその他の利点、特徴、及び詳細は、好適な実施形態及び図面を参照した以下の説明によって明らかになる。前述の説明で記載した特徴、特徴の組み合わせ、及び以下の図の説明で記載し、及び/又は単一の図面のみで示す特徴、及び特徴の組み合わせは、本発明の範囲を逸脱せずに、それぞれ示す組み合わせだけではなく、他の組み合わせで、又は単独でも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】図面は、単一の図において、内燃機関ターボチャージャ形状のターボ機械のコンプレッサ用のノイズリフレクタの軸方向に延び、したがってコンプレッサの軸方向に延びている長手延在方向に備えられた少なくとも1つのポジティブロック要素を有し、このポジティブロック要素を用いてポジティブロック結合を形成してコンプレッサのハウジング部品に固定可能となる前記ノイズリフレクタの概略斜視側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図はターボ機械のコンプレッサ用のノイズリング10の形状をしたノイズリフレクタを示す概略斜視側面図である。ターボ機械は、内燃機関の排気ガスターボチャージャとして形成される。レシプロ式内燃機関として形成された内燃機関はこの場合、自動車、特に乗用車の運転のために利用される。
【0016】
不図示の排気ガスターボチャージャは、内燃機関の排気ガスが通過可能な排気管に配置されたタービンを含む。タービンは第1のハウジング部品として、タービンホイールが配置されたタービンハウジングを含む。タービンホイールは内燃機関の排気ガスにより運転可能であり、排気ガスターボチャージャの軸に回転不能に結合される。
【0017】
コンプレッサは第2のハウジングとして、コンプレッサインペラが配置されたコンプレッサハウジングを含む。コンプレッサインペラは空気を圧縮するために利用され、同様に軸と回転不能に結合され、それによりコンプレッサインペラがタービンホイールの軸を介して運転可能となることで、排気ガスに含まれるエネルギーが空気を圧縮するために利用可能となる。空気が内燃機関の燃焼室、特にシリンダ形状の燃焼室に導入されることで、内燃機関の特に効率的な運転が実現可能である。このときコンプレッサの運転中に発生するノイズを低減するため、又は特に小さく保つため、コンプレッサは、コンプレッサインペラ入口領域に配置されたノイズリング10を含む。ノイズリング10は、コンプレッサインペラに流入する空気の伝達又は誘導のためにガイド要素を構成し、この場合、ノイズリング10を用いて規定の意図的な空気の導入が、ノイズ放出を特に低く保つようにもたらされる。
【0018】
ノイズリング10は、それぞれタブ14を備えた第1の長手領域12を有する。ノイズリング10がコンプレッサハウジングに固定された状態では、第1の長手領域12は少なくとも実質的にコンプレッサの軸方向に延び、この場合、コンプレッサの軸方向はノイズリング10の軸方向と一致する。更にノイズリング10は、第1の長手領域12に連続し、かつ第1の長手領域12から径内方向に延びている少なくとも1つの第2の長手領域16を含む。
【0019】
ノイズリング10を用いて生じる効果的なノイズ低減は、特に反射及びコンプレッサインペラにより発生する音波の干渉によって実現され、それにより音波はコンプレッサインペラ入口領域、特に空気が通過可能な流路に少なくとも部分的に広がるのみであろう。
【0020】
ノイズリング10は、図において18と参照された第1のポジティブロック要素として、少なくとも1つの第1のポジティブロック要素を含む。ポジティブロック要素18に関する以下の説明は、そのまま他の第1のポジティブロック要素にも転用できる。ポジティブロック要素18は、ノイズリング10の軸方向に延び、ノイズリング10がコンプレッサハウジングに固定した状態に関して、コンプレッサの軸方向に延びる長手延在方向を有する。この場合、ポジティブロック要素18は凸面状に、言い換えると凸面状湾曲部として形成され、凹面状に形成されたコンプレッサハウジングの対応するくぼみとの相互作用でポジティブロック結合を形成することが可能である。
【0021】
第1のポジティブロック要素はノイズリング10の円周方向に少なくとも実質的に均一に配分されて配置される。ここでは、3つの第1のポジティブロック要素が対を成して互いに120度離れるように設けられる。別の形態としては、ノイズリング10がより多数の第1のポジティブロック要素を備えるようにしてもよく、第1のポジティブロック要素は好適にはノイズリング10の円周方向で均一に配分されて配置される。
【0022】
図から明らかなように、ノイズリング10は更に複数の別のポジティブロック要素20を備えている。それぞれの別のポジティブロック要素20は、ノイズリング10の円周方向に延びる別の長手延在方向を有している。したがってそれぞれの別の長手延在方向は、それぞれの第1のポジティブロック要素18のそれぞれの第1の長手伸長方向と、少なくとも実質的に90度の角度を成す。言い換えると第1のポジティブロック要素は別のポジティブロック要素に対して少なくとも実質的に90度に配置される。
【0023】
別のポジティブロック要素20も凸面状に、言い換えると凸面状湾曲部として形成され、凹面状に形成されたコンプレッサハウジングのそれぞれ対応する別のくぼみとの相互作用でそれぞれ別のポジティブロック結合を形成することが可能である。
【0024】
図から明らかなように、第1のポジティブロック要素18だけではなく第2のポジティブロック要素20もそれぞれのタブ14に、したがって第1の長手領域12に配置される。
【0025】
それぞれのポジティブロック結合がラッチ結合の形式の機械的ロックとして形成されることにより、ノイズリング10は特に容易に短時間で安価な方法でコンプレッサハウジングに取り付け可能となる。そのためにノイズリング10は、例えば軸方向にコンプレッサハウジング内へと差し込まれる。この場合、ノイズリング10は、ノイズリング10に備えられたポジティブロック要素がコンプレッサハウジングに備えられた対応するくぼみに少なくとも部分的に嵌合するように、第1のポジティブロック要素18及び別のポジティブロック要素20が対応するそれぞれのくぼみと相互作用するまで、コンプレッサハウジング内に差し込まれる。
【0026】
ポジティブロック要素を用いてノイズリング10のコンプレッサハウジングへの特に強固な保持が実現することで、ノイズリング10は特に安定した取付けを伴ってコンプレッサハウジングに固定される。この場合、第1のポジティブロック要素18は特に、コンプレッサハウジングに対して円周方向へのノイズリング10の動きを制限又は抑止し、このとき別のポジティブロック要素20は特に、コンプレッサハウジングに対して軸方向へのノイズリング10の動きを制限又は抑止する。特にポジティブロック要素18,20を用いてノイズリング10とコンプレッサハウジングとの間で少なくとも実質的に隙間がない結合が実現されることで、相対的な動き及びその動きの結果生じるガタ打ちノイズを抑止できる。
【0027】
更に、ノイズリング10がコンプレッサハウジングから外れるリスクや、内燃機関の吸気管内で制御されずに動き回るリスクを特に低く保つことができる。特に別のポジティブロック要素20に追加して設けられた第1のポジティブロック要素18が、特に大きな半径方向張力と、それによって排気ガスターボチャージャへのノイズリング10の強固な保持とを確保することで、安定した取付けが実現可能である。したがってノイズリング10は特に高い機械的剛性を有してコンプレッサハウジングに保持でき、軸方向だけではなく円周方向への相対的な動きに対しても固定できる。
【符号の説明】
【0028】
10 ノイズリング
12 第1の長手領域
14 タブ
16 第2の長手領域
18 第1のポジティブロック要素
20 第2のポジティブロック要素