(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油圧ポンプ装置と、この油圧ポンプ装置から圧油が供給され第1被駆動体を駆動する第1油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプ装置から圧油が供給され第2被駆動体を駆動する第2油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプ装置から前記第1油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する第1制御弁と、前記油圧ポンプ装置から前記第2油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する第2制御弁と、前記第1被駆動体の動作を指令する操作信号を出力し前記第1制御弁を切り換える第1操作装置と、前記第2被駆動体の動作を指令する操作信号を出力し前記第2制御弁を切り換える第2操作装置とを備え、
前記第1油圧アクチュエータは、前記第1操作装置が前記第1被駆動体の自重落下方向に操作されたときに、前記第1被駆動体の自重落下によりボトム側から圧油を排出しロッド側から圧油を吸入する油圧シリンダである作業機械の油圧駆動システムにおいて、
前記油圧シリンダのボトム側を前記油圧ポンプ装置と前記第2油圧アクチュエータとの間に接続する再生通路及び前記油圧シリンダのボトム側から排出される圧油の少なくとも一部を前記再生通路を介して前記油圧ポンプ装置と前記第2油圧アクチュエータの間に供給する再生制御弁を有する再生回路と、
前記油圧シリンダのボトム側を前記油圧シリンダのロッド側に接続する連通通路及び前記連通通路に配置され、前記第1操作装置の前記第1被駆動体の自重落下方向の操作信号に基づいて全開し、前記油圧シリンダのボトム側をロッド側に連通させることで前記油圧シリンダのボトム側の圧力を昇圧させる連通昇圧弁を有する昇圧回路と、
前記第1操作装置が前記第1被駆動体の自重落下方向に操作され、これと同時に前記第2操作装置が操作されたとき、前記油圧シリンダのボトム側の圧力が前記油圧ポンプ装置と前記第2油圧アクチュエータとの間の圧力よりも高い場合に前記再生制御弁を開弁して前記油圧シリンダのボトム側から前記油圧ポンプ装置と前記第2油圧アクチュエータとの間に供給される圧油の流量を制御する制御装置とを備え、
前記第1制御弁は、前記第1操作装置が前記第1被駆動体の自重落下方向に操作されたときにメータアウト通路がタンクに連通すると共に、メータイン通路が閉じるように構成され、
前記連通昇圧弁は、全開したときに前記油圧シリンダのボトム側とロッド側の圧力が同圧となるように最大開口面積が設定されており、
前記第1操作装置が前記第1被駆動体の自重落下方向に操作された場合に、前記第1制御弁が前記メータイン通路が閉じる方向に切り換えられると共に、前記連通昇圧弁が全開し、前記油圧シリンダのボトム側の圧力を前記油圧シリンダのボトム側とロッド側の受圧面積比に応じた倍率で昇圧させることを特徴とする油作業機械の油圧駆動システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態における油圧駆動システムを示す図である。
【0020】
図1において、本実施の形態の油圧駆動システムは、メインの油圧ポンプ1及びパイロットポンプ2を含むポンプ装置50と、油圧ポンプ1から圧油が供給され、第1被駆動体である油圧ショベルのブーム205(
図2参照)を駆動するブームシリンダ4(第1油圧アクチュエータ)と、油圧ポンプ1から圧油が供給され、第2被駆動体である油圧ショベルのアーム206(
図2参照)を駆動するアームシリンダ8(第2油圧アクチュエータ)と、油圧ポンプ1からブームシリンダ4に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御する制御弁3(第1制御弁)と、油圧ポンプ1からアームシリンダ8に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御する制御弁7(第2制御弁)と、ブームの動作指令を出力し制御弁3を切り換える第1操作装置5と、アームの動作指令を出力し制御弁7を切り換える第2操作装置6とを備えている。油圧ポンプ1は図示しない他のアクチュエータ(後述)にも圧油が供給されるように図示しない制御弁にも接続されているが、それらの回路部分は省略している。
【0021】
油圧ポンプ1は可変容量型であり、レギュレータ1aを備え、コントローラ15(後述)からの制御信号によってレギュレータ1aを制御することで油圧ポンプ1の傾転角(容量)が制御され、吐出流量が制御される。また、図示はしないが、レギュレータ1aは公知の如く、油圧ポンプ1の吐出圧が導かれ、油圧ポンプ1の吸収トルクが予め定めた最大トルクを超えないように油圧ポンプ1の傾転角(容量)を制限するトルク制御部を有している。油圧ポンプ1は圧油供給管路9a,10aを介してを介して制御弁3,7に接続され、油圧ポンプ1の吐出油は制御弁3,7に供給される。
【0022】
制御弁3,7は、それぞれ、ボトム側管路23,28又はロッド側管路24,29を介してブームシリンダ4及びアームシリンダ8のボトム側或いはロッド側に接続され、制御弁3,7の切換位置に応じて、油圧ポンプ1の吐出油は制御弁3,7からボトム側管路23,28又はロッド側管路24,29を介してブームシリンダ4及びアームシリンダ8のボトム側或いはロッド側に供給される。ブームシリンダ4から排出された圧油は、少なくともその一部が制御弁3からタンク管路9bを介してタンクに環流される。アームシリンダ8から排出された圧油は、その全てが制御弁7からタンク管路10を介してタンクに環流される。
【0023】
第1及び第2操作装置5,6は、それぞれ、操作レバー5a,6aとパイロット弁5b,6bとを有し、パイロット弁5b,6bは、それぞれ、パイロット管路5c,5d及びパイロット管路6c,6dを介して制御弁3の操作部3a,3b及び制御弁7の操作部7a,7bに接続されている。
【0024】
操作レバー5aがブーム上げ方向BU(図示左方向)に操作されると、パイロット弁5bは操作レバー5aの操作量に応じた操作パイロット圧Pbuを生成し、この操作パイロット圧Pbuはパイロット管路5cを介して制御弁3の操作部3aに伝えられ、制御弁3はブーム上げ方向(図示右側の位置)に切り換えられる。操作レバー5aがブーム下げ方向BD(図示右方向)に操作されると、パイロット弁5bは操作レバー5aの操作量に応じた操作パイロット圧Pbdを生成し、この操作パイロット圧Pbdはパイロット管路5dを介して制御弁3の操作部3bに伝えられ、制御弁3はブーム下げ方向(図示左側の位置)に切り換えられる。
【0025】
操作レバー6aがアームクラウド方向AC(図示右方向)に操作されると、パイロット弁6bは操作レバー6aの操作量に応じた操作パイロット圧Pacを生成し、この操作パイロット圧Pacはパイロット管路6cを介て制御弁7の操作部7aに伝えられ、制御弁7はアームクラウド方向(図示左側の位置)に切り換えられる。操作レバー6aがアームダンプ方向AD(図示左方向)に操作されると、パイロット弁6bは操作レバー6aの操作量に応じた操作パイロット圧Padを生成し、この操作パイロット圧Padはパイロット管路6dを介して制御弁7の操作部7bに伝えられ、操作弁7はアームダンプ方向(図示右側の位置)に切り換えられる。
【0026】
ブームシリンダ4のボトム側管路23とロッド側管路24との間、アームシリンダ8のボトム側管路28とロッド側管路29との間には、それぞれ、メイクアップ付きオーバーロードリリーフ弁20,22が接続されている。メイクアップ付きオーバーロードリリーフ弁20,22は、ボトム側管路23,28及びロッド側管路24,29の圧力が上がりすぎることにより油圧回路機器が損傷することを防ぐ機能と、ボトム側管路23,28及びロッド側管路24,29が負圧になることによりキャビテーションが発生することを低減する機能を有している。
【0027】
なお、本実施の形態は、ポンプ装置50が1つのメインポンプ(油圧ポンプ1)を含む場合のものであるが、ポンプ装置50は複数(例えば2つ)のメインポンプを含み、制御弁3,7に別々のメインポンプを接続し、ブームシリンダ4とアームシリンダ8に別々のメインポンプから圧油を供給するようにしてもよい。
【0028】
図1において、本実施の形態の油圧駆動システムは、メインの油圧ポンプ1及びパイロットポンプ2を含むポンプ装置50と、油圧ポンプ1から圧油が供給され、第1被駆動体である油圧ショベルのブーム205(
図2参照)を駆動するブームシリンダ4(第1油圧アクチュエータ)と、油圧ポンプ1から圧油が供給され、第2被駆動体である油圧ショベルのアーム206(
図2参照)を駆動するアームシリンダ8(第2油圧アクチュエータ)と、油圧ポンプ1からブームシリンダ4に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御する制御弁3(第1制御弁)と、油圧ポンプ1からアームシリンダ8に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御する制御弁7(第2制御弁)と、ブームの動作指令を出力し制御弁3を切り換える第1操作装置5と、アームの動作指令を出力し制御弁7を切り換える第2操作装置6とを備えている。油圧ポンプ1は図示しない他のアクチュエータ(後述)にも圧油が供給されるように図示しない制御弁に接続されているが、それらの回路部分は省略している。
【0029】
図2は、本実施の形態における油圧駆動システムが搭載される作業機械(建設機械)である油圧ショベルの外観を示す図である。
【0030】
油圧ショベルは下部走行体201と上部旋回体202とフロント作業機203を備えている。下部走行体201は左右のクローラ式走行装置201a,201a(片側のみ図示)を有し、左右の走行モータ201b,201b(片側のみ図示)により駆動される。上部旋回体202は下部走行体201上に旋回可能に搭載され、旋回モータ202aにより旋回駆動される。フロント作業機203は上部旋回体202の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体202にはキャビン(運転室)202bが備えられ、キャビン202b内には上記第1及び第2操作装置5,6や図示しない走行用の操作ペダル装置等の操作装置が配置されている。
【0031】
フロント作業機203はブーム205(第1被駆動体)、アーム206(第2被駆動体)、バケット207を有する多関節構造であり、ブーム205はブームシリンダ4の伸縮により上部旋回体202に対して上下方向に回動し、アーム206はアームシリンダ8の伸縮によりブーム205に対して上下及び前後方向に回動し、バケット207はバケットシリンダ208の伸縮によりアーム206に対して上下及び前後方向に回動する。
【0032】
図1では、左右の走行モータ201b,201b、旋回モータ202a、バケットシリンダ208等の油圧アクチュエータに係わる回路部分を省略して示している。
【0033】
ここで、ブームシリンダ4は、第1操作装置5の操作レバー5aがブーム下げ方向(第1被駆動体の自重落下方向)BDに操作されたときに、ブーム205を含むフロント作業機203の重量に基づく自重落下により、ボトム側から圧油を排出しロッド側から圧油を吸入する油圧シリンダである。
【0034】
図1に戻り、本発明の油圧駆動システムは、上述した構成要素に加えて、ブームシリンダ4のボトム側管路23から分岐し、ボトム側管路23をアームシリンダ8側の圧油供給管路10aに接続する再生通路27及び再生通路27に配置され、圧油の流量を調整可能であり、ブームシリンダ4のボトム側から排出される圧油の少なくとも一部をアームシリンダ8側の圧油供給管路10aに供給する再生制御弁11を有する再生回路35と、ブームシリンダ4のボトム側管路23及びロッド側管路24からそれぞれ分岐し、ボトム側管路23及びロッド側管路24とを接続する連通通路26及び連通通路26に配置され、第1操作装置5のブーム下げ方向BDの操作パイロット圧Pbd(操作信号)に基づいて開弁し、ブームシリンダ4のボトム側の排出油の一部をブームシリンダ4のロッド側に再生して供給するとともに、ブームシリンダ4のボトム側をロッド側に連通させることでブームシリンダ4のボトム側の圧力(ボトム側管路23の圧力)を昇圧させる連通昇圧弁12を有する昇圧回路36と、電磁比例弁13,17と、圧力センサ14,19,21,41と、再生コントローラ16と、車体コントローラ42とを備えている。
【0035】
連通昇圧弁12は操作部12aを有し、第1操作装置5のブーム下げ方向BDの操作パイロット圧Pbdが操作部12aに伝えられることにより開弁する。
【0036】
図3は、連通昇圧弁12の開口面積特性を示す図である。第1操作装置5の操作レバー5aがブーム下げ方向BDに操作され、操作パイロット圧Pbd(レバー操作信号)が増大するとき、連通昇圧弁12の開口面積が速やかに最大開口面積Amaxまで増大しかつ流量の増加が滑らかでショックを生じさせないように開口面積特性が設定されている。また、連通昇圧弁12は、全開したときにブームシリンダ4のボトム側管路23とロッド側管路24の圧力が概略同圧となるように、全開したときの最大開口面積Amaxが十分広く設定されている。これによりブームシリンダ4のボトム側管路23の圧力をブームシリンダ4のボトム側とロッド側の受圧面積比に応じた倍率で昇圧させることが可能となる。
【0037】
連通昇圧弁12の昇圧原理は次のようである。
【0038】
連通昇圧弁12の開弁前と開弁後のそれぞれにおいて、ブームシリンダ4がブームを支持しているときの力の釣り合いを考える。そのときのブームシリンダ4に関連するパラメータを以下のようにシンボルで表す。
【0039】
W:ブームシリンダ4が支持するブーム等の負荷の大きさ(荷重)
Pb1:連通昇圧弁12の開弁前のブームシリンダ4のボトム側圧力
Pr1:連通昇圧弁12の開弁前のブームシリンダ4のロッド側圧力
Pb2:連通昇圧弁12の開弁後のブームシリンダ4のボトム側圧力
Pr2:連通昇圧弁12の開弁後のブームシリンダ4のロッド側圧力
Ab:ブームシリンダ4のボトム側受圧面積
Ar:ブームシリンダ4のロッド側受圧面積
k:ブームシリンダ4のボトム側受圧面積に対するロッド側受圧面積の比(受圧面積比Ar/Ab)
また、ブームシリンダ4が負荷を支持するとき、連通昇圧弁12の開弁前のブームシリンダ4のロッド側圧力Pr1は概略タンク圧であり、このタンク圧を0と仮定する。連通昇圧弁12の開弁後は、上述した如く、ロッド側圧力Pr2はボトム側圧力Pb2に等しくなる(Pr2≒Pb2)。
【0040】
連通昇圧弁12の開弁前の負荷Wとブームシリンダ4との力の釣り合いは以下の式で表される。
【0041】
W=Pb1×Ab ・・・(1)
また、連通昇圧弁12の開弁後の負荷Wとブームシリンダ4との力の釣り合いは以下の式で表される。
【0042】
W=Pb2×Ab−Pr2×Ar=Pb2×Ab−Pb2×k×Ab
=Pb2×Ab(1−k) ・・・(2)
(2)式を変形し、(1)式のWを代入すると、次のようになる。
【0043】
Pb2=W/Ab(1−k)
=(Pb1×Ab)/(Ab(1−k))
=Pb1/(1−k) ・・・(3)
(3)式より、連通昇圧弁12の開弁後のブームシリンダ4のボトム側圧力Pb2は連通昇圧弁12の開弁前のブームシリンダ4のボトム側圧力Pb1の1/(1−k)倍に昇圧される。
【0044】
本実施の形態では、ブームシリンダ4のボトム側に対するロッド側の受圧面積比kは1/2である。この場合、連通昇圧弁12が開弁することでブームシリンダ4のボトム側管路23の圧力を約2倍まで昇圧させることができる。また、制御弁3のメータアウトの開口面積は、ブームシリンダ4の下げ動作時にブームシリンダ4のボトム側管路23の圧力が約2倍まで昇圧することを想定して開口面積が設定されている。
【0045】
圧力センサ14はパイロット管路5dに接続され、第1操作装置5のブーム下げ方向BDの操作パイロット圧Pbdを検出し、圧力センサ19はブームシリンダ4のボトム側管路23に接続され、ブームシリンダ4のボトム側の圧力Pbを検出し、圧力センサ21はアームシリンダ8側の圧油供給管路10aに接続され、油圧ポンプ1の吐出圧Ppを検出する。圧力センサ41は、第2操作装置6のパイロット管路6c,6dに接続されたシャトル弁43に接続され、第2操作装置6のアームクラウド方向の操作パイロット圧Pacとアームダンプ方向の操作パイロット圧Padの高圧側の圧力Paを第2操作装置6の操作パイロット圧として検出する。
【0046】
車体コントローラ42は種々の機能を有しており、その機能の1つとして、第2操作装置6の操作パイロット圧を検出する圧力センサ41からの検出信号141と、第1操作装置5及び図示しないその他の操作装置の操作パイロット圧を検出する圧力センサからの検出信号を入力し、各アクチュエータを駆動するのに必要な圧油の流量をポンプ要求流量として算出する。車体コントローラ42は、ブーム下げとアームの駆動を同時に行う場合、ブームシリンダ4のロッド側に供給される圧油はブームシリンダ4のボトム側からの排出油で賄うことを前提としているため、アームシリンダ8を駆動するのに必要な圧油の流量をポンプ要求流量として算出する。車体コントローラ42は算出したポンプ要求流量をポンプ要求流量信号104として再生コントローラ25に出力する。
【0047】
再生コントローラ15は、圧力センサ14,19,21からの検出信号114,119,121と車体コントローラ42からのポンプ要求流量信号104を入力し、それらの信号に基づいて所定の演算処理を行い、電磁比例弁13,17とレギュレータ1aに制御指令を出力する。
【0048】
電磁比例弁13,17はコントローラ15からの制御指令により動作する。このとき電磁比例弁13は第1操作装置5のパイロット弁5bによって生成されたブーム下げ方向BDの操作パイロット圧Pbdを所望の圧力に減圧して制御弁3の操作部3bに出力し、制御弁3のストロークを制御することで制御弁3の開度(開口面積)を制御する。電磁比例弁17はパイロットポンプ2から供給された圧油を所望の圧力に変換して再生制御弁11の操作部11aに出力し、再生制御弁11のストロークを制御することで開度(開口面積)を制御する。レギュレータ1aはコントローラ15からの制御指令により動作し、油圧ポンプ1の傾転角(容量)を制御し吐出流量を制御する。
【0049】
次に、ブーム下げとアームの駆動を同時に行う場合の動作の概要について説明する。なお、原理としてはアームダンプをする場合とクラウドする場合で同様のため、アームダンプ動作を例に説明する。
【0050】
第1操作装置5の操作レバー5aがブーム下げ方向BDに操作され、同時に第2操作装置6の操作レバー6aがアームダンプ方向ADに操作された場合、第1操作装置5のパイロット弁5bから発生した操作パイロット圧Pbdは電磁比例弁13を介して制御弁3の操作部3bと連通昇圧弁12の操作部12aに入力される。それにより制御弁3は図示左側の位置に切換られ、ボトム管路23がタンク管路9bと連通することにより、ブームシリンダ4のボトム側から圧油がタンクに排出され、ブームシリンダ4が縮小動作(ブーム下げ動作)を行う。さらに連通昇圧弁12が図示下側の連通位置に切換られることにより、ブームシリンダ4のボトム側管路23をロッド側管路24に連通し、ブームシリンダ4のボトム側の排出油の一部をブームシリンダ4のロッド側に供給するとともに、ブームシリンダ4のボトム側の圧力を約2倍まで昇圧させる。制御弁3のメータアウトの開口面積は、ボトム側の圧力が約2倍まで昇圧することを前提に設定しているため、特別な制御が必要なく、制御弁3を操作パイロット圧Pbdに応じて切換操作してメータアウトの開度(開口面積)を制御することにより、ブームシリンダ4をオペレータの望む良好な操作速度で動作させることができる。
【0051】
第2操作装置6のパイロット弁6bから発生した操作パイロット圧Padは制御弁7の操作部7bに入力される。それにより制御弁7は切換られ、ボトム管路28がタンク管路10bと連通しかつロッド管路29が圧油供給管路10aと連通することにより、アームシリンダ8のボトム側の圧油はタンクに排出され、油圧ポンプ1からの吐出油がアームシリンダ8のロッド側に供給されることにより、アームシリンダ8は縮小動作を行う。
【0052】
車体コントローラ42には第2操作装置6の操作パイロット圧Paを検出する圧力センサ41からの検出信号141が入力され、アームシリンダ8を駆動するのに必要なポンプ要求流量が算出される。
【0053】
再生コントローラ15には圧力センサ14,19,21からの検出信号114,119,121と車体コントローラ42からのポンプ要求流量信号104が入力され、後述する制御ロジックによって、電磁比例弁13,17と油圧ポンプ1のレギュレータ1aに制御指令を出力する。
【0054】
電磁比例弁17は制御指令に応じた制御圧力を生成し、この制御圧力により再生制御弁11は制御され、ブームシリンダ4のボトム側から排出された圧油の一部或いは全部が再生制御弁11を介しアームシリンダ28に再生して供給される。
【0055】
電磁比例弁13は、制御指令に応じてパイロット弁5bの操作パイロット圧Pbdを減圧し、ブームシリンダ4を目標速度に保つよう制御弁3の開度を制御する。
【0056】
油圧ポンプ1のレギュレータ1aは制御指令に基づいて油圧ポンプ1の傾転角を制御し、アームシリンダ8の目標速度を保つよう適切にポンプ流量を制御する。
【0057】
次に、再生コントローラ15の制御機能について説明する。
【0058】
再生コントローラ15は、概略、以下の3つの機能を有している。
【0059】
まず、再生コントローラ15は、第1操作装置5がブーム205(第1被駆動体)の自重落下方向であるブーム下げ方向BDに操作され、これと同時に第2操作装置6が操作されたとき、ブームシリンダ4のボトム側の圧力が油圧ポンプ1とアームシリンダ8との間の圧油供給管路10aの圧力より高い場合に再生制御弁11を開弁してブームシリンダ4のボトム側から圧油供給管路10aに供給される圧油の流量を制御する(第1機能)。
【0060】
また、再生コントローラ15は、第1操作装置5のブーム下げ方向BDの操作量と、ブームシリンダ4のボトム側の圧力と、油圧ポンプ1とアームシリンダ8との間の圧油供給管路10aの圧力とに基づいて(ブームシリンダ4のボトム側から排出される流量のうちブームシリンダ4のロッド側と圧油供給管路10aのいずれにも供給されない流量を算出し、この流量をタンクに戻すよう)制御弁3(排出絞り弁)を制御する(第2機能)。
【0061】
この第2機能において、再生コントローラ15は、第1操作装置5のブーム下げ方向BDの操作信号である操作パイロット圧Pbdに基づいてブームシリンダ4のボトム側から排出されるべき目標ボトム流量を算出するとともに、アームシリンダ8の制御弁7が要求する再生可能流量を算出し、目標ボトム流量と再生可能流量のうち、小さい方を目標再生流量として設定し、目標ボトム流量から目標再生流量を差し引いて目標排出流量を算出し、アームシリンダ8側に再生される圧油の流量が目標再生流量に一致するよう再生制御弁11を制御し、タンクに戻される流量が目標排出流量に一致するよう制御弁3(排出絞り弁)を制御する。
【0062】
更に、再生コントローラ15は、再生制御弁11を開弁してブームシリンダ4のボトム側から油圧ポンプ1とアームシリンダ8との間の圧油供給管路10aに圧油を供給するとき、ブームシリンダ4のボトム側から圧油供給管路10aに供給される再生流量分、油圧ポンプ1の容量を減少させるよう制御する(第3機能)。
【0063】
図4は、上記3つの機能を実行する再生コントローラ15の制御ロジックを示すブロック図である。
【0064】
図4に示すように、再生コントローラ15は、加算器105、ポンプ最小流量設定部106、関数発生器109、最小値選択器111、加算器112、出力変換部115、加算器123、出力変換部124、出力変換部126、ゲイン発生器131、関数発生器132、積算器133、加算器130を有している。
【0065】
図4において、検出信号114は第1操作装置5の操作レバー5aのブーム下げ方向の操作パイロット圧Pbdを圧力センサ14により検出した信号(レバー操作信号)であり、検出信号119はブームシリンダ4のボトム側の圧力(ボトム側管路23の圧力)を圧力センサ19により検出した信号(ボトム圧信号)であり、検出信号121は油圧ポンプ1の吐出圧(圧油供給管路10aの圧力)を圧力センサ21により検出した信号(ポンプ圧信号)である。
【0066】
関数発生器109にはレバー操作信号114とボトム圧信号119が入力され、目標ボトム流量が算出される。関数発生器109における目標ボトム流量の算出特性は、レバー操作信号114(操作パイロット圧Pbd)に比例して目標ボトム流量が増加し、ボトム圧信号119(ブームシリンダ4のボトム側の圧力)が増加するに従って目標ボトム流量のレバー操作信号114に対する増加割合が増大する(傾きが急となる)ように設定されている。
【0067】
関数発生器109の出力はゲイン発生器131に入力される。ゲイン発生器131では、ブームシリンダ4のボトム側管路23に排出される戻り油のうち、ロッド側管路24に送られず、制御弁3及び/又は再生制御弁11に流れる流量を算出する。連通昇圧弁12を開くことにより、ブームシリンダ4のボトム側から排出される流量の面積比倍がブームシリンダ4のロッド側に流れる。すなわち、上述したようにブームシリンダ4のボトム側受圧面積Abに対するロッド側受圧面積Arの受圧面積比Ar/Abをkとすると、ゲイン発生器131のゲインは(1−k)となる。
【0068】
一方、車体コントローラ42から出力されたポンプ要求流量信号104とポンプ最小流量設定部106に予め設定した油圧ポンプ1の最小流量が加算器105に入力され、ポンプ要求流量からポンプ最小流量を差し引くことで再生可能流量が演算される。ここで、油圧ポンプ1は、アクチュエータ駆動開始時の応答性の改善やアクチュエータ非駆動時の潤滑性確保の目的などから、全ての操作レバーが中立位置にある場合でも、最小傾転角に保たれ、最小流量を吐出するようになっており、最小流量設定部106にはその最小流量が設定されている。
【0069】
ゲイン発生器131から出力される目標ボトム流量と加算器105から出力される再生可能流量が最小値選択器111に入力され、入力された値の小さい方を選択し、目標再生流量として出力する。
【0070】
加算器130にはボトム圧信号119及びポンプ圧信号121が入力され、ボトム圧信号119とポンプ圧信号121の偏差(ブームシリンダ4のボトム側の圧力と油圧ポンプ1の吐出圧との差圧)が求められ、この偏差(差圧)が関数発生器132に入力される。関数発生器132は加算器130で求められた偏差(差圧)が予め定めた閾値以上である場合は再生可能であることを意味する1を出力し、閾値未満である場合は再生不能であることを意味する0を出力する。閾値としては、ブームシリンダ4のボトム側の圧力が油圧ポンプ1の吐出圧よりも高く再生可能であるかどうかを判定できるようにするため、ゼロに近い小さめの値が設定されている。
【0071】
積算器133では、最小値選択部111において決定された目標再生流量と関数発生器132の出力が入力され、関数発生器132が1を出力する場合は、最小値選択部111において決定された目標再生流量を出力し、関数発生器132が0を出力する場合はゼロの目標再生流量を出力する。
【0072】
加算器130により算出されたボトム圧信号119とポンプ圧信号121の偏差(差圧)と積算器133により算出された目標再生流量とが出力変換部115に入力され、オリフィスの式より再生制御弁11の目標開口面積が演算され、電磁弁指令117として電磁比例弁17に出力される。
【0073】
ここで、ブームシリンダ4のボトム側の圧力よりも油圧ポンプ1の吐出圧の方が高く再生不能な場合には、関数発生器132が0を出力して積算器133が0の目標再生流量を出力することで、出力変換部115は再生制御弁11を動作させないように電磁比例弁17に電磁弁指令117を送る。また、ブームシリンダ4のボトム側の圧力が油圧ポンプ1の吐出圧よりも高く再生可能な場合には、関数発生器132が1を出力して積算器133が最小値選択部111において決定された目標再生流量を出力することで、出力変換部115は再生制御弁11を開弁し目標再生流量が得られるよう電磁比例弁17に電磁弁指令117を送る(第1機能)。
【0074】
積算器133により算出された目標再生流量とゲイン発生器131から出力された目標ボトム流量が加算器112に入力され、目標ボトム流量から目標再生流量を差し引くことで目標排出流量が算出される。算出された目標排出流量とボトム圧信号119が出力変換部124に入力され、オリフィスの式より制御弁3のメータアウトの絞り開度を演算し、電磁弁指令113として電磁比例弁13に出力される。これによりブームシリンダ4のボトム側から排出される流量のうちブームシリンダ4のロッド側と圧油供給管路10aのいずれにも供給されない流量がタンクに戻されるよう制御弁3(排出絞り弁)が制御される(第2機能)。
【0075】
車体コントローラ42から出力されたポンプ要求流量信号104と積算器133により算出された目標再生流量とが加算器123に入力され、ポンプ要求流量から目標再生流量を差し引くことで目標ポンプ流量が算出される。加算器123より出力された目標ポンプ流量は出力変換部126により油圧ポンプ1の傾転指令101に変換され、レギュレータ1aに出力される。これにより油圧ポンプ1は、ブームシリンダ4のボトム側から圧油供給管路10aに供給される再生流量分、容量を減少させるよう制御される(第3機能)。
【0076】
次に、再生コントローラ15の動作について説明する。
【0077】
第1操作装置5の操作レバー5aをブーム下げ方向BDに操作することにより、圧力センサ14により検出された操作パイロット圧Pbdの信号はレバー操作信号114としてコントローラ15に入力される。また、圧力センサ19,21により検出されたブームシリンダ4のボトム側の圧力、油圧ポンプ1の吐出圧の各信号はボトム圧信号119、ポンプ圧信号121として再生コントローラ15に入力される。
【0078】
レバー操作信号114とボトム圧信号119が関数発生器109に入力され、目標ボトム流量を算出し、ゲイン発生器131により制御弁3と再生制御弁11に流れる流量が演算される。
【0079】
一方、第2操作装置6の操作レバー6aをアームダンプ方向ADに操作することにより、圧力センサ41により検出された操作パイロット圧Padの信号141は車体コントローラ42に入力され、アームシリンダ8を駆動するのに必要なポンプ要求流量が算出される。このポンプ要求流量はポンプ要求流量信号104として再生コントローラ15に送られ、再生コントローラ15では、ポンプ要求流量からポンプ最小流量を差し引いて再生可能流量を算出し、算出された再生可能流量と目標ボトム流量が最小値選択器111に入力され、入力された値の小さい方を選択して目標再生流量として出力する。
【0080】
加算器130、関数発生器132及び積算器133によって、ボトム圧信号119の圧力(ブームシリンダ4のボトム側の圧力)がポンプ圧信号121の圧力(油圧ポンプ1の吐出圧)よりも高いかどうかが判定され、ボトム圧信号119の圧力の方が高い場合(再生可能な場合)には、最小値選択部111において決定された目標再生流量が出力され、ポンプ圧信号119の圧力の方が高い場合(再生不能な場合)には積算器133から0の目標再生流量が出力される。
【0081】
演算された目標再生流量とボトム圧信号119、ポンプ圧信号121が出力変換部115に入力され、オリフィスの式に基づいて再生制御弁11の開口面積を算出し、電磁弁指令117として電磁比例弁17に出力される(機能1)。
【0082】
このことにより、ブームシリンダ4から排出される圧油の少なくとも一部が再生制御弁11を介して目標通りの流量に制御され、アームシリンダ8側に再生される。そしてこのとき、連通昇圧弁12が開弁し、ブームシリンダ4のボトム側の圧力が約2倍まで昇圧しているため、ブームシリンダ4のボトム側からアームシリンダ8側に再生される圧油のエネルギーが増加し、更なる省エネルギー化が可能となる。
【0083】
目標ボトム流量と目標再生流量の差を加算器112で演算して目標排出流量を求め、求められた目標排出流量とボトム圧信号119が出力変換部124に入力され、オリフィスの式を用いて、制御弁3のメータアウトの開口面積を算出し、電磁比例弁13に電磁弁指令113として出力される(第2機能)。
【0084】
このことにより制御弁3は適切な開度に制御され、流量をアームシリンダ8側に再生しながらブームシリンダ4の目標速度を確保することができる。
【0085】
さらに、目標再生流量は再生可能流量と共に加算器123に入力され、目標ポンプ流量を算出する。算出された目標ポンプ流量は出力変換部126に入力され、油圧ポンプ1の傾転角を制御する(第3機能)。
【0086】
このことによりアームシリンダ8は第2操作装置6の操作信号(操作パイロット圧Pad)に応じた所望の速度に制御されるとともに、再生流量分油圧ポンプ1の吐出流量を低減することにより、油圧ポンプ1を駆動するエンジンの燃費を低減し、省エネルギー化を図ることが可能となる。
<第2の実施の形態>
図5は本発明の第2の実施の形態における油圧駆動システムを示す図である。なお、
図1と同様の箇所については説明を割愛する。
【0087】
図5において、本実施の形態の油圧駆動システムは、
図1に示した第1の実施の形態における再生制御弁11に代えて再生制御弁44を有する再生回路35Aを備えている。再生制御弁44は、ボトム側管路23と再生通路27との分岐部に配置され、ブームシリンダ4のボトム側からの排出油をタンク側(制御弁3側)と再生通路27側とに流すことができるようタンク側通路(第1絞り)と再生側通路(第2絞り)とを有している。再生制御弁44のストロークは電磁比例弁17によって制御される。
【0088】
図6は再生制御弁44の開口面積特性を示す図である。
図5の横軸は再生制御弁44のスプールストロークを示し、縦軸は開口面積を示している。
【0089】
図6において、スプールストロークが最小の場合(ノーマル位置にある場合)は、タンク側通路が開いており開口面積は最大であり、再生側通路が閉じ開口面積はゼロである。ストロークを徐々に増やしてゆくと、タンク側通路の開口面積が徐々に減少し、再生側通路が開いて開口面積が徐々に増加してゆく。ストロークを更に増加させると、タンク側通路が閉じ(開口面積がゼロとなり)、再生側通路の開口面積は更に増加してゆく。このように構成されている結果、スプールストロークが最小の場合は、ブームシリンダ4のボトム側から排出された圧油は再生されることなく、全量が制御弁3側に流入し、ストロークを徐々に右に動かしていくと、ブームシリンダ4のボトム側から排出された圧油の一部が再生通路27に流入する。また、ストロークを調整することにより、タンク側と再生側通路の開口面積を変化させることができ、再生流量を制御することができる。
【0090】
すなわち、第1操作装置5のレバー操作量が大きい場合は、再生制御弁44のストロークを大きくし再生側通路の開口面積を大きくすることで、再生流量を多く流すように制御する。このときのブームシリンダ4のボトム側の排出油が、再生しない場合と同等となるように、再生制御弁44の開口面積特性を調整するとよい。
【0092】
ブーム下げとアームダンプの動作において、ブームシリンダ4のボトム側の圧力がアームシリンダ8のロッド側の圧力よりも低い場合は、再生制御弁44をノーマル位置にすることにより、ブームシリンダ4のボトム側の排出油は、全て制御弁3のメータアウト通路を通り、タンクに排出される。これにより通常のブーム下げ動作が行われる。
【0093】
ブーム下げとアームダンプの動作において、ブームシリンダ4のボトム側の圧力がアームシリンダ8のロッド側の圧力よりも高い場合は、再生制御弁44をノーマル位置から切換えることにより、ブームシリンダ4のボトム側の排出油がアームシリンダ8のロッド側に再生され、再生流量分、油圧ポンプ1の吐出流量を低減することにより、油圧ポンプ1の出力を抑え、油圧ポンプ1を駆動するエンジンの燃費を低減し、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0094】
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて、タンク側に排出される流量と再生される流量をそれぞれ独立して細かく制御できない代わりに、電磁弁が一つだけで良いことから簡易的な構成で済み、コストの低減が図れ、搭載性も向上する。
【0095】
また、通常、ブーム下げ及びアームダンプ動作は、主に砂利積み動作及び水平引き動作において良く行われ、ブームシリンダ4のボトム側の圧力がアームシリンダ8のロッド側の圧力よりも高く再生可能な場合は、第1及び第2操作装置5,6のレバー操作量がある程度一定になっていることが多い。このことから、砂利積み動作及び水平引き動作を分析することにより、最適な再生制御弁44の開口面積特性を設定することが可能となり、単純な構成で第1の実施の形態とほぼ同等の省エネルギー効果を達成することが可能となる。
【0096】
また、本実施の形態の油圧駆動システムは、
図1に示した第1の実施の形態における再生コントローラ15に代えて再生コントローラ15Aを備えている。
【0097】
コントローラ15Aは、コントローラ15が有する前述した第1〜第3機能を有している。また、コントローラ15Aは、第1操作装置5のブーム下げ方向BDの操作量と、ブームシリンダ4のボトム側の圧力と、油圧ポンプ1とアームシリンダ8との間の圧油供給管路10aの圧力とに基づいて再生制御弁44を制御する(第4機能)。
【0098】
図7は、第2の実施の形態における再生コントローラ15Aの制御ロジックを示すブロック図である。なお、
図2と同様の制御要素については説明を割愛する。
【0099】
図7に示すように、再生コントローラ15Aは、
図4の第1の実施の形態における
関数発生器109、最小値選択器111、加算器112、加算器123、出力変換部124、ゲイン発生器131、積算器133に代えて、関数発生器141,142,144、積算器145,146,147,148、加算器149を有している。
【0100】
関数発生器141は、第1操作装置5のレバー操作量信号114に応じて再生制御弁44の再生側通路の開口面積を算出するものであり、
図6に示した再生制御弁44の再生側通路の開口面積特性と同じ特性が設定されている。
【0101】
関数発生器142は、レバー操作量信号114に応じて油圧ポンプ1の低減流量(以下ポンプ低減流量という)を求めるものである。関数発生器142は、関数発生器141で設定した開口面積特性に応じて設定するのが良い。すなわち、関数発生器141で算出される開口面積が広いほど、再生流量が多くなることから、関数発生器141で算出される開口面積に応じてポンプ低減流量も多く設定する必要がある。本実施の形態では、関数発生器142は、関数発生器141の開口面積特性と同じ特性が設定されている。
【0102】
加算器130は、第1の実施の形態で説明したように、ボトム圧信号119とポンプ圧信号121の偏差(ブームシリンダ4のボトム側の圧力と油圧ポンプ1の吐出圧との差圧)を算出し、この偏差(差圧)が関数発生器132に入力される。関数発生器132は加算器130で求められた偏差(差圧)が予め定めた閾値以上である場合は再生可能であることを意味する1を出力し、閾値未満である場合は再生不能であることを意味する0を出力する。閾値としては、ブームシリンダ4のボトム側の圧力が油圧ポンプ1の吐出圧よりも高く再生可能であるかどうかを判定できるようにするため、ゼロに近い小さめの値が設定されている。
【0103】
積算器145は、関数発生器141で算出された開口面積と関数発生器132で算出された値を入力し、関数発生器132が1を出力する場合(差圧が閾値以上である場合)は、再生可能と判断し、関数発生器141で算出された開口面積を出力し、関数発生器132が0を出力する場合(差圧が閾値より小さい場合)は、再生不可能と判断し、再生側通路の開口面積として0を出力する。
【0104】
積算器146は、関数発生器142で算出されたポンプ低減流量と関数発生器132で算出された値を入力し、関数発生器145と同様に、関数発生器132が1を出力する場合(差圧が閾値以上である場合)は、再生可能と判断し、関数発生器142で算出されたポンプ低減流量を出力し、関数発生器132が0を出力する場合(差圧が閾値より小さい場合)は、再生不可能と判断し、ポンプ低減流量として0を出力する。
【0105】
ポンプ要求流量信号104とポンプ最小流量設定部106に予め設定した油圧ポンプ1の最小流量が加算器105に入力され、ポンプ要求流量からポンプ最小流量を差し引くことで再生可能流量が演算される。
【0106】
再生可能流量は関数発生器144に入力され、関数発生器144は、再生可能流量が予め定めた閾値以上である場合は再生可能であることを意味する1を出力し、閾値未満である場合は再生不能であることを意味する0を出力する。再生可能流量が少ない場合は、制御弁7のメータインの開口が閉じ気味であり、再生制御弁44の再生側通路の開口面積を開いても、アームシリンダ8のロッド側へは圧油がほとんど流れない。逆に再生流量可能が十分多い場合は、制御弁8のメータインの開口が開いており、再生流量を十分流すことが可能である。そのため関数発生器144では、再生可能かどうかの判断を行っており、閾値としてはそのような判断を可能とする小さめの値が設定されている。
【0107】
積算器147では、積算器145の出力と関数発生器144の出力が入力され、関数発生器144が1を出力する場合は、関数発生器145の出力(関数発生器132が1を出力している場合は関数発生器141で算出された開口面積)を出力し、関数発生器144が0を出力する場合はゼロの開口面積を出力する。
【0108】
積算器148では、積算器146の出力と関数発生器144の出力が入力され、関数発生器147と同様に、関数発生器144が1を出力する場合は、関数発生器146の出力(関数発生器132が1を出力している場合は関数発生器142で算出されたポンプ低減流量)を出力し、関数発生器144が0を出力する場合はゼロのポンプ低減流量を出力する。
【0109】
積算器147の出力は出力変換部115に入力され、電磁弁指令117として電磁比例弁17に出力され、再生制御弁44のストローク(開口面積)が制御される。
【0110】
車体コントローラ42から出力されたポンプ要求流量信号104と積算器148の出力(ポンプ低減流量)とが加算器149に入力され、加算器149において、ポンプ要求流量からポンプ低減流量を差し引くことで目標ポンプ流量が算出される。この目標ポンプ流量は出力変換部126により油圧ポンプ1の傾転指令101に変換され、レギュレータ1aに出力される。これにより油圧ポンプ1は、ブームシリンダ4のボトム側から圧油供給管路10aに供給される再生流量分、容量を減少させるよう制御される。
【0111】
以上の制御ロジックにより、レバー操作信号114が入力されると、関数発生器141及び関数発生器142から、それぞれ、再生制御弁44の再生側通路の開口面積とポンプ低減流量が出力される。また、ボトム圧信号119とポンプ圧信号121から加算器130によりブームシリンダ4のボトム側の圧力と油圧ポンプ1の吐出圧との差圧が算出され、再生可/不可の判断を関数発生器132で行う。
【0112】
同様に、ポンプ要求流量信号104を加算器105に入力し、ポンプ要求流量からポンプ最小流量を減じた値を再生可能流量として算出し、再生可/不可の判断を関数発生器144で行う。
【0113】
演算された差圧及び再生可能流量に対してそれぞれ再生可能と判断された場合は、関数発生器141から出力された再生側通路の開口面積が出力変換部115によって電磁弁指令117に変換され、電磁比例弁17に出力され再生制御弁44のストロークが制御される。
【0114】
このことにより再生制御弁44はレバー操作信号114に応じた開口面積に設定され、ブームシリンダ4のボトム側の排出油がアームシリンダ8のロッドに再生される。
【0115】
また、関数発生器142から出力されたポンプ低減流量は、加算器149によって、ポンプ要求流量信号104の流量からポンプ低減流量を減じた値として算出され、出力変換部126によって傾転指令101として出力される。
【0116】
このことにより油圧ポンプ1は再生流量分、吐出流量を低減することができ、油圧ポンプ1を駆動するエンジンの燃費の低減し、省エネルギー化を図ることができる。
【0117】
さらに、本実施の形態では、ブームシリンダ4のボトム側から排出される流量の一部をアームシリンダ8側に再生する制御と、残りの流量をタンクに戻す制御の両方を1つのバルブ(再生制御弁44)で行えるようになり、バルブを電気的に制御するための電磁弁(電磁比例弁17)が1つで済むことから、油圧駆動システムを簡易的な構成で実現可能であり、コスト低減、さらに搭載性を向上させることが可能となる。
【0118】
<その他>
以上において、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、本発明を油圧ショベルに適用した場合について説明したが、本発明は、第1操作装置が第1被駆動体の自重落下方向に操作されたときに、第1被駆動体の自重落下によりボトム側から圧油を排出しロッド側から圧油を吸入する油圧シリンダを備える作業機械であれば、油圧クレーン、ホイールローダ等、その他の作業機械にも適用することができる。
【0119】
また、上記実施の形態では、ブーム用の制御弁3のメータアウト絞りを排出絞り弁として用い、ブームシリンダ4のボトム側から排出される流量のうちブームシリンダ4のロッド側とアームアクチュエータ8側のいずれにも供給されない流量をタンクに戻したが、制御弁3とは別に専用の排出絞り弁を設け、この排出絞り弁からタンクに戻してもよい。
【0120】
また、上記実施の形態では、連通通路26をボトム側管路23とロッド側管路24間に接続し、この連通通路26に連通昇圧弁12を配置したが、連通通路26を制御弁3の内部通路として形成しかつ連通昇圧弁12を制御弁3内に配置してもよい。
【0121】
更に、上記実施の形態では、再生コントローラ15と車体コントローラ42の2つのコントローラを用いたが、これらの2つのコントローラを1つのコントローラに纏めてもよい。