特許第6453902号(P6453902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6453902歯の再石灰化およびホワイトニングのための表面反応炭酸カルシウム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453902
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】歯の再石灰化およびホワイトニングのための表面反応炭酸カルシウム
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20190107BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20190107BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61Q11/00
   C01F11/18 D
【請求項の数】26
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-559918(P2016-559918)
(86)(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公表番号】特表2017-515796(P2017-515796A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015054580
(87)【国際公開番号】WO2015150011
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年11月14日
(31)【優先権主張番号】14162818.0
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/972,532
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブッデ,ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード,ダニエル・イー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−530042(JP,A)
【文献】 特表2012−504577(JP,A)
【文献】 特表2012−522801(JP,A)
【文献】 特表2017−508812(JP,A)
【文献】 特開2013−067567(JP,A)
【文献】 特開2013−163656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯のホワイトニングに使用するための口腔ケア組成物。
【請求項2】
口腔ケア組成物は、組成物の総重量に基づいて、1から40重量%の表面反応炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項3】
口腔ケア組成物は、組成物の総重量に基づいて、1.5から35重量%の表面反応炭酸カルシウムを含む、請求項2に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項4】
口腔ケア組成物は、組成物の総重量に基づいて、2から30重量%の表面反応炭酸カルシウムを含む、請求項3に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項5】
口腔ケア組成物は、練り歯磨き、歯磨き粉または口内洗浄液である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項6】
表面反応炭酸カルシウムが天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素およびリン酸との反応生成物である、請求項5に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項7】
口腔ケア組成物はさらにフッ化物化合物を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項8】
フッ化物化合物は、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カリウム第一スズ、フルオロスズ酸ナトリウム、塩化フッ化第一スズ、フッ化アミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項9】
フッ化物化合物は、モノフルオロリン酸ナトリウムおよび/またはフッ化ナトリウムである、請求項8に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項10】
口腔ケア組成物はさらに、ヒドロキシルアパタイト、炭酸カルシウム、およびそれらとカゼインホスホリピドとの組み合わせ、過酸化水素、過酸化カルバミド、フッ化物化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される追加のホワイトニング剤を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項11】
ヒドロキシルアパタイトは、ナノ−ヒドロキシルアパタイトであり、炭酸カルシウムは、非晶質炭酸カルシウムである、請求項10に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項12】
口腔ケア組成物は、7.5から10の間のpHを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項13】
口腔ケア組成物は、8から9の間のpHを有する、請求項12に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの酸はリン酸である、請求項15に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項17】
表面反応炭酸カルシウムは15μm以下の体積メジアン粒径(d50)、および/または25μm以下の体積決定トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項18】
表面反応炭酸カルシウムは1から10μmの体積メジアン粒径(d50)、および/または7から22μmの体積決定トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である、請求項17に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項19】
表面反応炭酸カルシウムは2から8μmの体積メジアン粒径(d50)、および/または10から20μmの体積決定トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である、請求項18に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項20】
表面反応炭酸カルシウムは3から7μmの体積メジアン粒径(d50)、および/または15から18μmの体積決定トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である、請求項19に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項21】
表面反応炭酸カルシウムは窒素およびISO 9277に従ったBET法を用いて測定した、5m/gから200m/gの比表面積を有する粒子の形態である、請求項1から20のいずれか一項に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項22】
表面反応炭酸カルシウムは窒素およびISO 9277に従ったBET法を用いて測定した、20m/gから80m/gの比表面積を有する粒子の形態である、請求項21に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項23】
表面反応炭酸カルシウムは窒素およびISO 9277に従ったBET法を用いて測定した、30m/gから60m/gの比表面積を有する粒子の形態である、請求項22に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項24】
少なくとも1つの活性剤が表面反応炭酸カルシウムと会合している、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項25】
活性剤は少なくとも1つの追加の脱感作剤である、請求項24に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの追加の脱感作剤は、硝酸カリウム、グルタルアルデヒド、硝酸銀、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム六水和物、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、アルギニン、ヒドロキシルアパタイト、リンケイ酸カルシウムナトリウム、シュウ酸カリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、生物活性ガラス、およびそれらの混合物から選択される、請求項25に記載の使用のための口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の再石灰化およびホワイトニングのための新たな剤ならびにそのような剤を含む口腔ケア組成物ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
歯のエナメル質は人体で最も硬い物質であり、約96%のミネラルを含み、残りが水および有機材料から構成されている。エナメル質の主要なミネラルは、結晶性リン酸カルシウムである、ヒドロキシルアパタイトである。歯が口内に出てくる前に歯が歯肉内で発達している間、エナメル質は歯の上に形成される。
【0003】
しかし、その高いミネラル含有率によってエナメル質は、酸性飲料およびお菓子の消費によって特に引き起こされる脱灰過程に対し非常に脆弱になる。歯の再石灰化はある程度歯に対する損傷を修復するが、それを超えた損傷は体内で修復できず、最終的に継続的な脱灰過程により歯の腐食および虫歯がもたらされる。従って、ヒトの歯のエナメル質の維持および修復は歯科の主な関心事の1つである。
【0004】
ヒドロキシルアパタイトおよびモノフルオロリン酸ナトリウムを含む練り歯磨きを使用する再石灰化研究がHornbyら、International Dental Journal 2009、59、325−331に開示されている。US2007/0183984A1号は、歯の石灰化または再石灰化のために口腔内でリン酸カルシウム塩および異なる溶解度を有する酸の組み合わせを含む口腔組成物に関する。
【0005】
エナメル質の典型的な色は淡黄色から灰色がかったまたは青味がかった白色まで変化する。エナメル質は半透明であるため、象牙質およびエナメル質の下のあらゆる材料の色が歯の外観に強く影響する。乳歯のエナメル質はより不透明な結晶形を有するので、永久歯上よりも白く見える。
【0006】
X線写真では、歯および周囲の歯周組織の異なる部分の石灰化の違いを指摘することができる。エナメル質は象牙質および歯髄の両方より高密度であり、より放射線不透過性であるため、エナメル質は象牙質または歯髄よりも明るく見える(参照:「Tooth enamel」、ウィキペディア、フリー百科事典、2014年3月6日)。
【0007】
ヒトが歳をとるにつれて、成人の歯は、多くの場合、歯のミネラル構造の変化によって暗くなる。また、歯は細菌色素、食料品およびカロテノイドまたはキサントノイドが豊富な野菜によって汚され得る。テトラサイクリンのような特定の抗菌剤は歯の汚れまたはエナメルの輝きの低下を引き起こす可能性があり、コーヒー、紅茶および赤ワインのような着色した液体の摂取または喫煙は歯を変色させ得る(「Tooth bleaching」、ウィキペディア、フリー百科事典、2014年2月5日)。
【0008】
歯をホワイトニングするための方法は、多くの場合、過酸化物のような攻撃的な酸化剤を用いる漂白工程を含み、固体組成物全体が長期間にわたって歯と接触したままであることを必要とする場合がある。代替として、カルシウム塩を用いる歯の再石灰化およびホワイトニングの両方を提供する歯磨剤組成物が提案された。
【0009】
WO2012/143220A1号は、カルシウム源および再生源カルシウム塩を含む、歯の再石灰化およびホワイトニングに適している組成物を記載する。水不溶性および/またはわずかに水溶性のカルシウム源および有機酸、またはその生理学的に許容される塩を含有する歯磨剤組成物がWO2013/034421A2号に記載されている。WO2012/031786A2号は、コアおよびコーティングを有する複合粒子活性を有する口腔ケア組成物であって、それによってコーティングがリン酸イオンと相互作用して、歯のエナメル質および/または象牙質に接着するのに適したカルシウムとリン酸塩との反応生成物を生成して歯の特徴を改善する組成物に関する。
【0010】
前述のことに鑑み、歯の再石灰化および/または歯のホワイトニングに有用である剤に対する継続的な必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0183984号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/143220号
【特許文献3】国際公開第2013/034421号
【特許文献4】国際公開第2012/031786号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Hornbyら、International Dental Journal 2009、59、325−331
【非特許文献2】「Tooth enamel」、ウィキペディア、フリー百科事典、2014年3月6日
【非特許文献3】「Tooth bleaching」、ウィキペディア、フリー百科事典、2014年2月5日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、歯を再石灰化し、ホワイトニングするのに適し、従来の口腔ケア組成物と適合性がある剤を提供することが本発明の目的である。また、使用に際し穏やかであり、適用が容易である再石灰化および/またはホワイトニング剤を提供することが望ましいであろう。また、必ずしも医院での処置を必要せず、日常的に、例えば、家庭で使用することができる再石灰化および/またはホワイトニング剤を提供することが望ましいであろう。
【0014】
酸の攻撃に対してより耐性である再石灰化および/またはホワイトニング剤を提供することも本発明の目的である。また、必ずしもナノサイズの範囲の粒径を有することを必要としない再石灰化および/またはホワイトニング剤を提供することが望ましいであろう。また、活性剤のための担体材料であるという付加的な利点を提供する再石灰化および/またはホワイトニング剤を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記および他の目的は、独立請求項において本明細書に定義される主題によって解決される。
【0016】
本発明の一態様によれば、歯の再石灰化および/またはホワイトニングに使用するための表面反応炭酸カルシウムが提供され、ここで該表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である。
【0017】
本発明の別の態様によれば、表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯の再石灰化および/またはホワイトニングに使用するための口腔ケア組成物が提供される。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、歯の再石灰化に使用するための表面反応炭酸カルシウムが提供され、ここで該表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である。
【0019】
本発明のさらに別の態様によれば、歯のエナメル質のホワイトニングに使用するための表面反応炭酸カルシウムが提供され、ここで該表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である。
【0020】
本発明の有利な実施形態は対応する従属請求項に定義される。
【0021】
一実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは少なくとも1つの酸はリン酸である。
【0022】
一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは15μm以下、好ましくは1から10μm、より好ましくは2から8μm、最も好ましくは3から7μmの体積メジアン粒径(d50)、および/または25μm以下、好ましくは7から22μm、より好ましくは10から20μm、最も好ましくは15から18μmの体積決定トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である。別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは窒素およびISO 9277に従ったBET法を用いて測定した、5m/gから200m/g、より好ましくは20m/gから80m/g、さらにより好ましくは30m/gから60m/gの比表面積を有する粒子の形態である。
【0023】
一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、好ましくは、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カリウム第一スズ、フルオロスズ酸ナトリウム、塩化フッ化第一スズ、フッ化アミンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるフッ化物化合物と組み合わせて使用され、より好ましくは、フッ化物化合物は、モノフルオロリン酸ナトリウムおよび/またはフッ化ナトリウムである。別の実施形態によれば、少なくとも1つの活性剤は表面反応炭酸カルシウムと会合しており、好ましくは活性剤は少なくとも1つの追加の脱感作剤であり、より好ましくは少なくとも1つの追加の脱感作剤は、硝酸カリウム、グルタルアルデヒド、硝酸銀、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム六水和物、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、アルギニン、ヒドロキシルアパタイト、リンケイ酸カルシウムナトリウム、シュウ酸カリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、生物活性ガラス、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程:(a)天然または合成の炭酸カルシウムの懸濁液を提供する工程、(b)20℃で0以下のpK値を有するか、20℃で0から2.5のpK値を有する少なくとも1つの酸を工程(a)の懸濁液に添加する工程、および(c)工程(b)の前、間または後に工程(a)の懸濁液を二酸化炭素で処理する工程を含む方法によって得られる。別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程:(A)天然または合成の炭酸カルシウムを提供する工程、(B)少なくとも1つの水溶性の酸を提供する工程、(C)ガス状のCOを提供する工程、(D)工程(A)の前記天然または合成の炭酸カルシウムを工程(B)の少なくとも1つの酸および工程(C)のCOと接触させる工程を含み、(i)工程B)の少なくとも1つの酸が、その最初に利用可能な水素のイオン化に関連する20℃で2.5より大きく7以下のpKを有し、対応するアニオンは、水溶性カルシウム塩を形成することのできるこの最初に利用可能な水素の損失上に形成されており、および(ii)少なくとも1つの酸を天然または合成の炭酸カルシウムと接触させた後に、水素含有塩の場合に最初に利用可能な水素のイオン化に関連する20℃で7より大きいpKを有し、その塩アニオンが水不溶性のカルシウム塩を形成することができる少なくとも1つの水溶性塩がさらに提供されることを特徴とする方法によって得られる。
【0025】
一実施形態によれば、口腔ケア組成物は、組成物の総重量に基づいて、1から40重量%、好ましくは1.5から35重量%、より好ましくは2から30重量%の表面反応炭酸カルシウムを含む。別の実施形態によれば、口腔ケア組成物は、練り歯磨き、歯磨き粉または口内洗浄液であり、好ましくは表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素およびリン酸との反応生成物である。
【0026】
一実施形態によれば、口腔組成物はさらにフッ化物化合物を含み、好ましくはフッ化物化合物がフッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カリウム第一スズ、フルオロスズ酸ナトリウム、塩化フッ化第一スズ、フッ化アミンおよびそれらの混合からなる群から選択され、より好ましくは、フッ化物化合物はモノフルオロリン酸ナトリウムおよび/またはフッ化ナトリウムである。別の実施形態によれば、口腔ケア組成物はさらに、好ましくはヒドロキシルアパタイト、例えば、ナノ−ヒドロキシルアパタイト、炭酸カルシウム、例えば、非晶質炭酸カルシウム、およびそれらとカゼインホスホリピドとの組み合わせ、過酸化水素、過酸化カルバミド、フッ化物化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される追加の再石灰化および/またはホワイトニング剤を含む。さらに別の実施形態によれば、口腔ケア組成物は7.5から10の間、好ましくは8から9の間のpHを有する。
【0027】
本発明の目的に対し、以下の用語は以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0028】
本発明の目的に対し、「酸」はブレンステッド−ローリー酸として定義され、即ち、それはHイオンを提供するものである。「酸性塩」はHイオンを提供するもの、例えば、電気陽性の元素により部分的に中和される水素含有塩として定義される。「塩」は、アニオンおよびカチオンから形成された電気的に中性のイオン化合物として定義される。「部分的に結晶性の塩」は、XRD分析で本質的に離散回折パターンを示す塩として定義される。
【0029】
本発明に従って、pKは所与の酸中の所与のイオン化可能な水素に関連付けられた酸解離定数を表す記号であり、所与の温度で水中の平衡状態でのこの酸からこの水素の解離の自然度の指標である。このようなpK値は、Harris, D. C. 「Quantitative Chemical Analysis:第3版」、1991、W.H. Freeman & Co.(米国),ISBN 0−7167−2170−8等の参考書に見ることができる。
【0030】
本発明の意味における「重質炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰石、大理石、ドロマイト、または白亜等の天然源から得られ、例えば、サイクロンもしくは分級機による、粉砕、スクリーニングおよび/または分画のような湿式および/または乾式処理によって処理される炭酸カルシウムである。
【0031】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性、半乾燥または湿潤環境における二酸化炭素および石灰の反応後に沈殿させることによってまたは水中でカルシウムおよび炭酸イオン源の沈殿により得られた合成材料である。PCCはバテライト、カルサイトまたはアラゴナイト結晶形態であってもよい。
【0032】
本発明の目的に対し、「表面反応炭酸カルシウム」は、炭酸カルシウムおよび好ましくは炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面から延びる不溶性の少なくとも部分的に結晶性の非炭酸カルシウム塩を含む材料である。前記少なくとも部分的に結晶性の非炭酸カルシウム塩を形成するカルシウムイオンは、表面反応炭酸カルシウムのコアを形成するのにも役立つ出発炭酸カルシウム材料に主として由来する。このような塩は、OHアニオンおよび/または結晶水を含むことができる。
【0033】
本発明の意味において「水不溶性」材料は、脱イオン水と混合し、0.2μmの孔径を有するフィルターで、20℃で濾過して濾液を回収した場合に、100gの前記濾液を95から100℃で蒸発させた後に0.1g以下の固体材料が回収される材料として定義される。「水溶性」材料は、100gの前記濾液を95から100℃で蒸発させた後に0.1gを超える固体材料が回収される材料として定義される。
【0034】
本明細書全体にわたって、炭酸カルシウムおよび他の物質の「粒径」は、粒径の分布によって説明される。値dは、x重量%の粒子がd未満の直径を有する直径を表す。これは、d20値が全粒子の20重量%がより小さい粒径であり、d75値は全粒子の75重量%がより小さい粒径であることを意味する。従って、d50値は重量メジアン粒径であり、即ち、全粒子の50重量%がこの粒径よりも大きいまたは小さい。本発明の目的に対し、特に断りのない限り、粒径は重量メジアン粒径d50として特定される。重量メジアン粒径d50値を決定するためにセディグラフを使用することができる。本発明の目的に対し、表面反応カルシウムの「粒径」は体積決定粒度分布として説明される。体積決定粒度分布、例えば、表面反応炭酸カルシウムの体積メジアン粒径(d50)または体積決定トップカット粒径(d98)を決定するために、マルバーンマスターサイザー2000を使用することができる。全粒子の密度が等しい場合、重量決定粒度分布は、体積決定粒径に対応することができる。
【0035】
本発明の意味における炭酸カルシウムの「比表面積(SSA)」は、その質量で割った炭酸カルシウムの表面積として定義される。本明細書で使用される場合、比表面積はBET等温線(ISO 9277:2010)を用いる窒素ガス吸着により測定され、m/gで特定される。
【0036】
本発明の意味における「口腔ケア組成物」とは、口の中での使用および動物および/またはヒト用途のためであるが、特にヒトの口のための用途で使用するのに適した組成物を指す。
【0037】
本発明の目的に対し、用語「粘度」または「ブルックフィールド粘度」とは、ブルックフィールド粘度を指す。ブルックフィールド粘度は、この目的のために、適切なスピンドルを使用して、20℃±2℃で、100rpmでブルックフィールド(Type RVT)粘度計により測定され、mPa・sで特定される。
【0038】
本発明の意味における「懸濁液」または「スラリー」は、不溶性固体および水ならびに場合によりさらなる添加剤を含み、通常、大量の固体を含有し、そのためそれから懸濁液またはスラリーが形成される液体より粘性であり、より高密度を有することができる。
【0039】
「含む」という用語が本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、それは他の要素を排除するものではない。本発明の目的に対し、「からなる」という用語は、「含む」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下、あるグループが実施形態の少なくとも特定の数を含むように定義される場合、これはまた、好ましくは、これらの実施形態のみからなるグループを開示すると理解されるべきである。
【0040】
単数名詞を参照するときに不定冠詞または定冠詞、例えば、「a」、「an」または「the」が使用される場合、何かが具体的に述べられていない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0041】
「得ることができる」または「定義できる」および「得られた」または「定義された」等の用語は互換的に使用される。これは、例えば、文脈が明確に指示しない限り、用語「得られた」は、例えば、ある実施形態が、例えば、用語「得られた」に続く工程の順番によって得られなければならないことを示すものではないということを意味するが、そのような限定された理解は常に好ましい実施形態として用語「得られた」または「定義された」に含まれる。
【0042】
本発明によれば、表面反応炭酸カルシウムは歯の再石灰化および/またはボワイトニングに使用される。表面反応炭酸カルシウムは、天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施例1の調製した練り歯磨き試料に対する表面微小硬さ(SMH)測定の結果のプロットを示す。
図2】実施例1の調製した練り歯磨き試料に対し決定されたCIELAB L座標の値のグラフを示す。
図3】実施例1の調製した練り歯磨き試料に対し決定されたCIELAB b座標の値のグラフを示す。
図4】脱灰されたウシのエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
図5】脱灰されたウシのエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
図6】実施例1の本発明の練り歯磨き試料1で処理した再石灰化されたウシのエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
図7】実施例1の本発明の練り歯磨き試料1で処理した再石灰化されたウシのエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下では、本発明の表面反応炭酸カルシウムの詳細および好ましい実施形態がより詳細に記載される。これらの技術的な詳細および実施形態は、表面反応炭酸カルシウムを製造する本発明の方法ためだけでなく、表面反応炭酸カルシウムを含む本発明の組成物にもあてはまることが理解されるべきである。
【0045】
表面反応炭酸カルシウム
本発明によれば、表面反応炭酸カルシウムは、天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である。
【0046】
天然(または重質)炭酸カルシウム(GCC)は、石灰岩または白亜等の堆積岩から、または変成岩大理石の岩から採掘された炭酸カルシウムの天然に存在する形態であると理解される。炭酸カルシウムは、結晶多形の3つの種類、即ち、カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトとして主に存在することが知られている。カルサイト、即ち、最も一般的な結晶多形は、炭酸カルシウムの最も安定な結晶形態であると考えられる。アラゴナイトはあまり一般的ではなく、個別のまたはクラスター化された針斜方晶系の結晶構造を有する。バテライトは最も珍しい炭酸カルシウム多形であり、一般には不安定である。天然炭酸カルシウムは、ほぼ例外なく、三方晶系−菱面体晶であると言われ、炭酸カルシウム多形の最も安定なものを表すカルサイト多形である。本発明の意味において炭酸カルシウムの用語「源」は、それから炭酸カルシウムが得られる天然鉱物材料を指す。炭酸カルシウムの源は、炭酸マグネシウム、アルミノシリケート等のさらなる天然成分を含んでいてもよい。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、天然の炭酸カルシウムは、大理石、白亜、ドロマイト、石灰石およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、GCCは乾式粉砕することにより得られる。本発明の別の実施形態によれば、GCCは、湿式粉砕し、場合によりその後の乾燥により得られる。
【0049】
一般には、粉砕工程は、例えば、粉砕が二次体との衝撃から主に生じるような条件下で任意の従来の粉砕装置を用いて行うことができ、即ち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー(de−clumper)、ナイフカッターまたは当業者に知られた他のこのような機器の1つ以上の中で行うことができる。炭酸カルシウム含有鉱物材料が湿った炭酸カルシウム含有鉱物材料を含む場合、粉砕工程は自生粉砕が起こるような条件下で、および/または水平ボール粉砕および/または当業者に知られた他のこのような処理によって行うことができる。このようにして得られた湿式処理重質炭酸カルシウム含有鉱物材料は、周知の方法、例えば、凝集、濾過または乾燥前の強制蒸発によって洗浄し、脱水してもよい。乾燥後の工程は、噴霧乾燥のような単一の工程で行うか、または少なくとも2工程で行うことができる。このような鉱物材料は、不純物を除去するために選鉱工程(例えば、浮遊選鉱、漂白または磁気分離工程)を経ることが一般的である。
【0050】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境中で二酸化炭素および石灰の反応後の沈殿によって、または水中のカルシウムおよび炭酸イオン源の沈殿によって、または溶液からのカルシウムおよび炭酸イオン、例えば、CaClおよびNaCOの沈殿によって得られる合成材料である。PCCを製造するさらなる考えられる方法は石灰ソーダ法、またはPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベイ法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの主要結晶形態、即ち、カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトで存在し、これらの結晶形の各々に対し多くの異なる多形体(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体(S−PCC)、菱面体晶(R−PCC)のような典型的な晶癖を有する三方晶構造、六方晶形の角柱、卓面状、コロイド状(C−PCC)、立方体、角柱(P−PCC)を有する。アラゴナイトは双六方晶形の角柱状結晶の典型的な晶癖だけでなく、薄い細長い角柱状、湾曲した羽根付き、急なピラミッド型、チゼル状結晶、分岐ツリーおよびサンゴまたは虫のような形のものの多様な類別を有する斜方晶構造である。バテライトは六方晶系に属する。得られたPCCスラリーは、機械的に脱水し、乾燥させることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、合成炭酸カルシウムは、好ましくはアラゴナイト、バテライトまたはカルサイト鉱物結晶形またはそれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウムである。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、天然または合成の炭酸カルシウムは、二酸化炭素および少なくとも1つの酸による処理の前に粉砕される。粉砕工程は、当業者に知られている粉砕ミルのような任意の従来の粉砕装置を用いて行うことができる。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、天然または合成の炭酸カルシウムは、15μm以下、好ましくは1から10μm、より好ましくは2から8μm、最も好ましくは3から7μmの重量メジアン粒径d50を有する粒子の形態である。本発明のさらなる実施形態によれば、天然または合成の炭酸カルシウムは、25μm以下、好ましくは7から22μm、より好ましくは10から20μm、最も好ましくは15から18μmのトップカット粒径d98を有する粒子の形態である。
【0054】
好ましくは、本発明で使用される表面反応炭酸カルシウムは、20℃で測定して、6.0より大きい、好ましくはより6.5より大きい、より好ましくは7.0より大きい、さらにより好ましくは7.5より大きいpHを有する水性懸濁液として調製される。
【0055】
表面反応炭酸カルシウムの水性懸濁液を調製するための好ましい方法では、粉砕等によって細かく分割されたまたはされない天然または合成の炭酸カルシウムが水中に懸濁される。好ましくは、スラリーは、スラリーの重量に基づいて、1重量%から90重量%、より好ましくは3重量%から60重量%、さらにより好ましくは5重量%から40重量%の範囲内の天然または合成の炭酸カルシウムの含有率を有する。
【0056】
次の工程では、少なくとも1つの酸が天然または合成の炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加される。少なくとも1つの酸は、調製条件下でHイオンを生成する任意の強酸、中程度の強酸もしくは弱酸またはそれらの混合物であることができる。本発明によれば、少なくとも1つの酸は調製条件下でHイオンを生成する酸性塩であることもできる。
【0057】
一実施形態によれば、少なくとも1つの酸は20℃で0以下のpKを有する強酸である。別の実施形態によれば、少なくとも1つの酸は20℃で0から2.5のpK値を有する中程度の強酸である。20℃でのpKが0以下である場合、酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、またはそれらの混合物から選択される。20℃でのpKが0から2.5である場合、酸は、好ましくは、HSO、HPO、シュウ酸、またはそれらの混合物から選択される。少なくとも1つの酸は酸性塩、例えば、Li、NaまたはKのような対応するカチオンで少なくとも部分的に中和されたHSOもしくはHPO、またはLi、Na、K、Mg2+またはCa2+のような対応するカチオンで少なくとも部分的に中和されたHPO2−であってもよい。少なくとも1つの酸はまた、1つ以上の酸および1つ以上の酸性塩の混合物であってもよい。
【0058】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、20℃で測定したときに、最初に利用可能な水素のイオン化に関連する2.5より大きく7以下のpK値を有し、水溶性カルシウム塩を形成することができる、この最初に利用可能な水素の損失上に形成された対応するアニオンを有する弱酸である。好ましい実施形態によれば、弱酸は、20℃で2.6から5のpK値を有し、より好ましくは、弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
弱酸が使用される場合、天然または合成の炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に前記酸が添加された後に、水素含有塩の場合、20℃で測定したときに、最初に利用可能な水素のイオン化に関連する7より大きいpKを有し、そのアニオンが水不溶性カルシウム塩を形成することができる少なくとも1つの水溶性塩がさらに添加される。前記水溶性塩のカチオンは、好ましくはカリウム、ナトリウム、リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では前記カチオンはナトリウムである。アニオンの電荷に応じて、2つ以上の前記カチオンが電気的に中性のイオン性化合物を提供するために存在することができることは注目すべきである。前記水溶性塩のアニオンは、好ましくは、リン酸塩、リン酸二水素、リン酸一水素、シュウ酸塩、ケイ酸塩、それらの混合物および水和物からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、前記アニオンはリン酸塩、リン酸二水素、リン酸一水素、それらの混合物および水和物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態において、前記アニオンは、リン酸二水素、リン酸一水素、それらの混合物および水和物からなる群から選択される。水溶性塩の添加は、滴下で行ってもよいし、または1工程で行ってもよい。滴下添加の場合には、この添加は、好ましくは10分の時間内に行われる。1工程で前記塩を添加することがより好ましい。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、Li、NaまたはKのような対応するカチオンで少なくとも部分的に中和されたHPO、Li、Na、K、Mg2+またはCa2+のような対応するカチオンで少なくとも部分的に中和されたHPO2−、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、またはそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは少なくとも1つの酸はリン酸である。いかなる理論に拘束されることなく、本発明者らは、リン酸の使用は歯の再石灰化および/またはホワイトニングにおいて有益であり得ると考えている。
【0061】
少なくとも1つの酸は、濃縮液またはより希釈された溶液として懸濁液に添加することができる。好ましくは、天然または合成の炭酸カルシウムに対する少なくとも1つの酸のモル比は0.05から4、より好ましくは0.1から2である。
【0062】
代替として、天然または合成の炭酸カルシウムを懸濁する前に、少なくとも1つの酸を水に添加することもできる。
【0063】
本発明によれば、表面反応炭酸カルシウムは、天然または合成の炭酸カルシウムを二酸化炭素で処理することにより得られる。二酸化炭素は酸処理によってその場で形成することができ、および/または外部供給源から供給することができる。硫酸もしくは塩酸のような強酸またはリン酸のような中程度の強酸が天然または合成の炭酸カルシウムの酸処理に使用される場合、二酸化炭素は自動的に形成される。代替的にまたは付加的に、二酸化炭素は外部供給源から供給することができる。
【0064】
一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物であり、二酸化炭素は少なくとも1つの酸を天然または合成の炭酸カルシウムと接触させた結果としてその場で形成され、および/または外部供給源から供給される。
【0065】
酸処理および二酸化炭素による処理は同時に行うことができ、これは強酸または中程度の強酸を用いる場合にあてはまる。例えば、20℃で0から2.5の範囲のpKを有する中程度の強酸を用いて最初に酸処理を行い、ここで二酸化炭素はその場で形成され、従って、二酸化炭素処理は、自動的に、酸処理と同時に行われ、外部供給源から供給される二酸化炭素によるさらなる処理が続くこともできる。
【0066】
好ましくは、懸濁液中のガス状二酸化炭素の濃度は、体積換算で、比(懸濁液の体積):(気体状COの体積)が1:0.05から1:20、さらにより好ましくは1:0.05から1:5であるようなものである。
【0067】
好ましい実施形態では、酸処理工程および/または二酸化炭素処理工程は、少なくとも一回、より好ましくは数回繰り返される。一実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも45分、より好ましくは少なくとも1時間の期間にわたって添加される。
【0068】
酸処理および二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定した水性懸濁液のpHは、当然、6.0より大きい、好ましくは6.5より大きい、より好ましくは7.0より大きい、さらにより好ましくは7.5より大きい値に到達し、それにより6.0より大きい、好ましくは6.5より大きい、より好ましくは7.0より大きい、さらにより好ましくは7.5より大きいpHを有する水性懸濁液として表面反応炭酸カルシウムが調製される。水性懸濁液が平衡に到達することが許容される場合、pHは7より大きい。6.0より大きいpHは水性懸濁液の撹拌が十分な時間、好ましくは1時間から10時間、より好ましくは1から5時間継続される場合、塩基を添加せずに調整することができる。
【0069】
あるいは、平衡(7より大きいpHで起こる)に達する前、水性懸濁液のpHは、二酸化炭素処理に続いて塩基を添加することにより、6より大きい値に増加させることができる。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような任意の従来の塩基を使用することができる。
【0070】
表面反応天然炭酸カルシウムの調製についてのさらなる詳細はWO00/39222A1号およびUS2004/0020410A1号に開示されており、表面反応天然炭酸カルシウムは紙の製造のための充填剤として記載されている。弱酸を用いる表面反応炭酸カルシウムの調製はEP2264108A1号に開示されている。表面反応炭酸カルシウムの調製および精製方法でのその使用はEP1974806A1号、EP1982759A1号およびEP1974807A1号に開示されている。活性剤の制御された放出のための担体としての表面反応炭酸カルシウムの使用はWO2010/037753A1号に開示されている。
【0071】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムが得られる。EP2070991A1号から詳細に分かるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムをHイオンおよび水性媒体中で可溶化され、水不溶性カルシウム塩を形成することができるアニオンと水性媒体中で接触させ、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することにより得られ、前記表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された前記アニオンの不溶性で少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を含む。
【0072】
前記可溶化されたカルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解時に自然に生成された可溶化されたカルシウムイオンに対する過剰の可溶化されたカルシウムイオンに対応し、前記Hイオンはもっぱらアニオンに対する対イオンの形で、即ち、酸または非カルシウム酸性塩の形態のアニオンの添加を介して、任意のさらなるカルシウムイオンまたはカルシウムイオン発生源の不存在下で提供される。
【0073】
前記過剰の可溶化されたカルシウムイオンは、好ましくは可溶性の中性または酸性カルシウム塩の添加によって、または可溶性の中性または酸性カルシウム塩をその場で生成する酸または中性もしくは酸性の非カルシウム塩の添加によって提供される。
【0074】
前記Hイオンは酸または前記アニオンの酸性塩の添加によって、または前記過剰の可溶化されたカルシウムイオンの全部または一部を提供するのに同時に役立つ酸または酸性塩の添加によって提供され得る。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程:
a) 天然または合成の炭酸カルシウムの懸濁液を提供する工程、
b) 20℃で0以下のpK値を有するか、または20℃で0から2.5のpK値を有する少なくとも1つの酸を工程a)の懸濁液に添加する工程、および
c) 工程b)の前、間または後に工程a)の懸濁液を二酸化炭素で処理する工程
を含む方法によって得られる。
【0076】
一実施形態によれば、20℃で0以下のpK値を有する少なくとも1つの酸は、工程a)の懸濁液に工程b)において添加される。別の実施形態によれば、20℃で0から2.5のpK値を有する少なくとも1つの酸は、工程a)の懸濁液に工程b)において添加される。
【0077】
工程c)において使用される二酸化炭素は、工程b)の酸処理によってその場で形成することができるか、および/または外部供給源から供給することができる。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程:
A) 天然または合成の炭酸カルシウムを提供する工程、
B) 少なくとも1つの水溶性の酸を提供する工程、
C) ガス状のCOを提供する工程、
D) 工程A)の前記天然または合成の炭酸カルシウムを工程B)の少なくとも1つの酸および工程C)のCOと接触させる工程
を含み、
i) 工程B)の少なくとも1つの酸が、その最初に利用可能な水素のイオン化に関連する20℃で2.5より大きく7以下のpKを有し、対応するアニオンは、水溶性カルシウム塩を形成することのできるこの最初に利用可能な水素の損失上に形成されており、および
ii) 少なくとも1つの酸を天然または合成の炭酸カルシウムと接触させた後に、水素含有塩の場合に最初に利用可能な水素のイオン化に関連する20℃で7より大きいpKを有し、その塩アニオンが水不溶性のカルシウム塩を形成することができる少なくとも1つの水溶性塩がさらに提供される
ことを特徴とする方法によって得られる。
【0079】
表面反応炭酸カルシウムは、必要に応じてさらに分散剤によって安定化される懸濁液中に維持することができる。当業者に知られた従来の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤はポリアクリル酸および/またはカルボキシメチルセルロースである。
【0080】
あるいは、上述の水性懸濁液は乾燥させることができ、これにより、顆粒または粉末の形態の固体(即ち、乾燥している、またはそれが流体形態でないようにほとんど水を含有しない)の表面反応天然または合成炭酸カルシウムを得る。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは窒素およびISO 9277に従ったBET法を用いて測定して、5m/gから200m/g、より好ましくは20m/gから80m/g、さらにより好ましくは30m/gから60m/gの比表面積を有する。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、15μm以下、好ましくは1から10μm、より好ましくは2から8μm、最も好ましくは3から7μmの体積メジアン粒径(d50)を有する粒子の形態である。本発明の別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは25μm以下、好ましくは7から22μm、より好ましくは10から20μm、最も好ましくは15から18μmの体積決定トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である。本発明の好ましい実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、15μm以下、好ましくは1から10μm、より好ましくは2から8μm、最も好ましくは3から7μmの体積メジアン粒径(d50)および25μm以下、好ましくは7から22μm、より好ましくは10から20μm、最も好ましくは15から18μmの体積決定トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である。体積メジアン粒径(d50)および体積決定トップカット粒径(d98)は、例えば、マルバーンマスターサイザー2000を使用することによってレーザー回折測定により決定することができる。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、天然または合成の炭酸カルシウムの表面に形成された少なくとも1つの酸のアニオンの不溶性で少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの酸のアニオンの不溶性で少なくとも部分的に結晶性の塩は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に天然または合成の炭酸カルシウムの表面を覆う。使用される少なくとも1つの酸に応じて、アニオンは、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩および/または塩化物であってもよい。
【0084】
好ましい一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウムと少なくとも1つの酸、好ましくはリン酸との反応生成物である。
【0085】
表面反応炭酸カルシウムは良好な充填容量を有し、口腔ケアにおける担体として使用することができる。例えば、表面反応炭酸カルシウムは活性剤と会合し、これを輸送することができる。会合は、好ましくは、表面反応炭酸カルシウム粒子の表面上への吸着であり、それは粒子の外表面もしくは内表面または粒子への吸収であり、これはそれらの多孔度により可能である。
【0086】
この点に関しては、表面反応炭酸カルシウムの内部および細孔間の構造のために、この材料は、同様の比表面積を有する一般的な材料と比べて、経時にわたり予め吸着/吸収された材料を送達する優れた剤であると考えられている。
【0087】
表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定から計算された5体積%から50体積%、好ましくは20体積%から50体積%、より好ましくは30体積%から50体積%の範囲内の粒子内多孔度を有する。二峰性微分細孔径分布曲線から、ピーク間の最下点は、粒子内および粒子間の細孔容積を分離することができる直径を示す。この直径よりも大きい直径での細孔容積は、粒子間の細孔に関連した細孔容積である。総細孔容積マイナスこの粒子間細孔容積は、Transport in Porous Media (2006) 63: 239−259に記載されているように、好ましくは固体材料の体積の割合として、粒子内多孔度を算出することが可能な粒子内部細孔容積を与える。
【0088】
表面反応炭酸カルシウムの多孔度および材料を送達するための剤としてのその使用に対するさらなる詳細は、WO2010/037753A1号に見出すことができる。
【0089】
従って、一般に、表面反応炭酸カルシウムの内部および/または粒子間の細孔に嵌合する任意の剤は、本発明の表面炭酸カルシウムによって輸送されるのに適している。例えば、薬学的活性剤、生物学的活性剤、殺菌剤、防腐剤、例えば、トリクロサン、香味剤、消泡剤等の界面活性剤、または追加の脱感作剤を含む群から選択されるもののような活性剤を使用することができる。一実施形態によれば、少なくとも1つの活性剤は、表面反応炭酸カルシウムと会合している。好ましい実施形態によれば、活性剤は、好ましくは、硝酸カリウム、グルタルアルデヒド、硝酸銀、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム六水和物、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、アルギニン、ヒドロキシルアパタイト、リンケイ酸カルシウムナトリウム、シュウ酸カリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、生物活性ガラス、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の脱感作剤である。また、ヒドロキシアパタイトとも呼ばれるヒドロキシルアパタイトは、式Ca(PO(OH)とのカルシウムアパタイトの天然に存在する鉱物形態である。例示的な実施形態によれば、ヒドロキシルアパタイトはまた、ナノ−ヒドロキシルアパタイトとも呼ばれるナノサイズのハイドロキシアパタイトである。
【0090】
口腔ケア組成物
本発明に従って使用するための口腔ケア組成物は表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは、天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、組成物は、組成物の総重量に基づいて、1から40重量%、好ましくは1.5から35重量%、より好ましくは2から30重量%の表面反応炭酸カルシウムを含む。
【0092】
表面反応炭酸カルシウムは1種のみの表面反応炭酸カルシウムからなることができ、または2種以上の表面反応炭酸カルシウムの混合物であることができる。本発明の口腔ケア組成物は、唯一の再石灰化および/またはホワイトニング剤として表面反応炭酸カルシウムを含有してもよい。あるいは、本発明の口腔ケア組成物は、少なくとも1つの追加の再石灰化および/またはホワイトニング剤と組み合わせて表面反応炭酸カルシウムを含有してもよい。
【0093】
一実施形態によれば、口腔ケア組成物は追加の再石灰化剤を含む。好ましくは、追加の再石灰化剤は、ヒドロキシルアパタイト、例えば、ナノ−ヒドロキシルアパタイト、炭酸カルシウム、例えば、非晶質炭酸カルシウム、およびそれらとカゼインホスホリピドとの組み合わせならびにそれらの混合物からなる群から選択される。非晶質炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムの非晶質で最も安定でない多形であり、いくつかの特殊な有機体は別としてそれは天然に見出されていない。
【0094】
別の実施形態によれば、口腔ケア組成物は、少なくとも1つの追加のホワイトニング剤を含む。追加のホワイトニング剤は、漂白剤、研磨剤、または再石灰化剤であることができ、好ましくは、過酸化水素、過酸化カルバミド、ヒドロキシルアパタイト、炭酸カルシウム、フッ化物化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの追加の再石灰化および/またはホワイトニング剤は、ヒドロキシルアパタイト、例えば、ナノ−ヒドロキシルアパタイト、炭酸カルシウム、例えば、非晶質炭酸カルシウム、およびそれらとカゼインホスホリピドとの組み合わせ、過酸化水素、過酸化カルバミド、フッ化物化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0096】
一実施形態によれば、追加の再石灰化および/またはホワイトニング剤は、10nmから100μm、好ましくは0.1から50μm、より好ましくは1から20μm、最も好ましくは2から10μmの重量メジアン粒径d50を有する。
【0097】
少なくとも1つの追加の再石灰化および/またはホワイトニング剤は、組成物の総重量に基づいて1から20重量%、好ましくは1.5から15重量%、より好ましくは2から10重量%の量で口腔ケア組成物中に存在することができる。
【0098】
一実施形態によれば、本発明の口腔ケア組成物は、組成物の総重量に基づいて1から40重量%の表面反応炭酸カルシウムおよび1から20重量%の追加の再石灰化および/またはホワイトニング剤を含む。
【0099】
本発明の口腔ケア組成物は、例えば、練り歯磨き、歯磨き粉、ワニス、接着ゲル、セメント、樹脂、スプレー、泡、バルム、マウスストリップ(mouthstrip)または頬接着パッチで行われる組成物、チュアブル錠、チュアブルトローチ、チュアブルガム、トローチ剤、飲料、または口内洗浄液であることができる。本発明の一実施形態によれば、口腔ケア組成物は、練り歯磨き、歯磨き粉または口内洗浄液であり、好ましくは練り歯磨きである。
【0100】
好ましい実施形態によれば、口腔ケア組成物は、練り歯磨き、歯磨き粉、または口内洗浄液であり、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素およびリン酸との反応生成物である。別の好ましい実施形態によれば、口腔ケア組成物は、練り歯磨き、歯磨き粉、または口内洗浄液であり、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素およびリン酸との反応生成物であり、表面反応炭酸カルシウムは15μm以下、好ましくは1から10μm、より好ましくは2から8μm、最も好ましくは3から7μmの体積メジアン粒径(d50)、および/または25μm以下、好ましくは7から22μm、より好ましくは10から20、最も好ましくは15から18μmの体積決定トップカット粒径(d98)を有する粒子の形態である。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、口腔ケア組成物は、7.5から10の間、好ましくは、8から9の間のpHを有する。
【0102】
表面反応炭酸カルシウムは、フッ化物化合物と組み合わせて使用することができる。本発明者らは、驚くべきことに、表面反応炭酸カルシウムおよびフッ化物化合物の組み合わせにより改善された歯の再石灰化および/またはホワイトニングがもたらされることを見出した。
【0103】
好ましい実施形態によれば、口腔組成物はさらにフッ化物化合物を含む。フッ化物化合物は、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カリウム第一スズ、フルオロスズ酸ナトリウム、塩化フッ化第一スズ、フッ化アミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、フッ化物化合物は、モノフルオロリン酸ナトリウムおよび/またはフッ化ナトリウムである。良好な結果は、口腔ケア組成物中に300から2000ppmの範囲、好ましくは約1450ppmの利用可能なフッ化物イオンを提供するフッ化物化合物の量を用いて達成することができる。
【0104】
一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムを含む、歯の再石灰化および/またはホワイトニングに使用するための口腔ケア組成物、好ましくは、練り歯磨き、歯磨き粉、口内洗浄液であって、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸、好ましくはリン酸との反応生成物であって、口腔組成物は、さらに、好ましくは、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カリウム第一スズ、フルオロスズ酸ナトリウム、塩化フッ化第一スズ、フッ化アミンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはモノフルオロリン酸ナトリウムおよび/またはフッ化ナトリウムから選択されるフッ化物化合物を含む。
【0105】
表面反応炭酸カルシウム、任意の追加の再石灰化および/またはホワイトニング剤、ならびに任意のフッ化物化合物に加えて、口腔ケア組成物はさらに、生体接着性ポリマー、界面活性剤、バインダー、保湿剤、脱感作剤、香味剤、甘味剤および/または水を含んでいてもよい。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、口腔ケア組成物は生体接着性ポリマーを含む。生体接着性ポリマーは、歯または歯の表面への表面反応炭酸カルシウムの付着を促進し、長期間、例えば、1時間、3時間、5時間、10時間、24時間歯または歯の表面上に残る任意のポリマーを含むことができる。特定の実施形態では、生体接着性ポリマーは、口腔ケア組成物が、例えば、水または唾液で湿らされたときにより接着性になることができる。他の実施形態では、生体接着性ポリマーは、組成物が適用される歯または歯の表面上での活性成分の保持を強化する材料または材料の組み合わせである。このような生体接着性ポリマーとしては、例えば、親水性有機ポリマー、疎水性有機ポリマー、シリコーンゴム、シリカ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態によれば、生体接着性ポリマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、PEG/PPGコポリマー、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、シェラック、ポリエチレンオキシド、メタクリレート、アクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム、ポリラクチド、シリコーン樹脂、シリコーン接着剤、キトサン、乳タンパク質(カゼイン)、アメロゲニン、エステルガム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0107】
好適な界面活性剤は、一般に、広いpH範囲にわたるアニオン性有機合成界面活性剤である。口腔ケア組成物の総重量に基づいて約0.5から5重量%の範囲で使用されるそのような界面活性剤の代表は、硫酸C10−C18アルキル、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸のスルホン化モノグリセリド、例えば、ソジウムモノグリセリドスルホネート、タウリンの脂肪酸アミド、例えば、ソジウムN−メチル−N−パルミトイルタウリド、およびイセチオン酸の脂肪酸エステルの水溶性塩、ならびに脂肪族アシルアミド、例えば、ソジウムN−ラウロイルサルコシネートである。しかし、コカミドプロピルベタインのような天然の供給源から得られる界面活性剤を使用することもできる。
【0108】
所望の稠度を提供するための適切なバインダーまたは増粘剤は、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ソジウムカルボキシメチルセルロース、カラヤゴム、アラビアゴム、トラガカントゴム、キサンタンガムもしくはセルロースガム等の天然ガム、コロイド状ケイ酸塩、または微粉シリカである。一般に、口腔ケア組成物の総重量に基づいて0.5から5重量%を使用することができる。
【0109】
脱感作剤は、硝酸カリウム、グルタルアルデヒド、硝酸銀、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム六水和物、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、アルギニン、ヒドロキシルアパタイト、リンケイ酸カルシウムナトリウム、シュウ酸カリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、生物活性ガラス、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0110】
当業者に知られた種々の保湿剤、例えば、グリセリン、ソルビトールおよび他の多価アルコールは、口腔ケア組成物の総重量に基づいて20から40重量%の量で使用することができる。適切な香味剤の例としては、ウィンターグリーン油、スペアミント油、ペパーミント油、クローブ油、サッサフラス油等が挙げられる。サッカリン、アスパルテーム、デキストロース、またはレブロースは、口腔ケア組成物の総重量に基づいて、例えば、0.01から1重量%の量で甘味剤として使用することができる。安息香酸ナトリウムのような防腐剤は、口腔ケア組成物の総重量に基づいて、0.01から1重量%の量で存在することができる。二酸化チタンのような着色剤は、口腔ケア組成物の総重量に基づいて、例えば、0.01から1.5重量%の量で口腔ケア組成物に添加することができる。
【0111】
また、本発明の口腔ケア組成物は、シリカ、沈降シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、メタリン酸塩、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、ベントナイト、カオリン、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、ヒドロキシルアパタイト、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含んでいてもよい。この材料は口腔ケア組成物の総重量に基づいて1から40重量%の量で存在することができる。一実施形態によれば、口腔ケア組成物は、重質炭酸カルシウムおよび/または沈降シリカから選択される材料を含む。別の実施形態によれば、口腔ケア組成物は、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、シリカ、ヒドロキシルアパタイト、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、口腔ケア組成物は表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは、天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物であり、炭酸カルシウムは好ましくは重質炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムである。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、口腔ケア組成物は練り歯磨きである。練り歯磨きは、以下の工程を含む方法によって製造することができる。
I) 水および保湿剤、場合により増粘剤、防腐剤、フッ化物、および甘味料の少なくとも1つの混合物を提供する工程、
II) 表面反応炭酸カルシウム、および場合により着色剤を工程I)の混合物に添加する工程であって、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である工程、
III) 工程II)の混合物に界面活性剤を添加する工程、および
IV) 場合により工程III)の混合物に香味剤を添加する工程。
【0113】
しかし、本発明の練り歯磨きは、当業者に知られた任意の他の方法によって製造することもできる。
【0114】
治療および化粧品用途
表面反応炭酸カルシウムを歯の再石灰化および/またはホワイトニングに用いることができることがわかった。本発明の一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯の再石灰化に使用するための表面反応炭酸カルシウムが提供される。本発明の別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯のエナメル質のホワイトニングに使用するための表面反応炭酸カルシウムが提供される。本発明のさらに別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯の再石灰化およびホワイトニングに使用するための表面反応炭酸カルシウムが提供される。
【0115】
本発明のさらなる態様によれば、表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯の再石灰化および/またはホワイトニングに使用するための口腔ケア組成物が提供される。一実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯の再石灰化に使用するための口腔ケア組成物が提供される。別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯のエナメル質のホワイトニングに使用するための口腔ケア組成物が提供される。さらに別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯の再石灰化およびホワイトニングに使用するための口腔ケア組成物が提供される。
【0116】
本発明の発明者は、驚くべきことに、表面反応炭酸カルシウムが歯の再石灰化および/またはホワイトニングにおいて有用であることを見出した。表面反応炭酸カルシウムはいくつかの点で従来の炭酸カルシウムとは異なる。例えば、従来の炭酸カルシウムとは異なり、表面反応炭酸カルシウムは、多孔質の板状または層状表面構造を有する。いかなる理論に拘束されないが、例えば、患者の歯に表面反応炭酸カルシウムを適用する間、表面反応炭酸カルシウムは粉々になり、それによって多孔質の板状または層状表面構造の要素が表面反応炭酸カルシウムの表面から切断されると考えられる。前記切断された多孔質の板状または層状表面構造要素は、歯のエナメル質への改善された付着性を提供することができる。
【0117】
また、表面処理によって、表面反応炭酸カルシウムは酸に対してより耐性になる。従って、表面反応炭酸カルシウムは、例えば、清涼飲料等の酸性飲料または酢ベースのドレッシングがかけられたサラダ等の酸性の料理の消費の間の酸性条件下でより安定である。本発明の表面反応炭酸カルシウムの別の利点は、それがマイクロメートルの粒径範囲で使用することができ、このためナノサイズの粒子の使用を避けることができることである。
【0118】
また、驚くべきことに、表面反応炭酸カルシウムは、歯の表面の平滑化のために有用であることが本発明者らによって見出された。いかなる理論にも拘束されないが、表面反応炭酸カルシウムの破損によって発生する切断された多孔質の板状または層状表面構造要素は、エナメル質表面に付着し、表面欠陥を密封し、それによりエナメル質表面をより滑らかにすると考えられる。さらに、滑らかな表面は細菌および汚れの付着を予防または低減でき、ひいては口臭および虫歯のリスクを低減することができると考えられる。
【0119】
1つのさらなる態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯の表面の平滑化に使用するための表面反応炭酸カルシウムが提供される。さらに別の態様によれば、表面反応炭酸カルシウムを含み、表面反応炭酸カルシウムは天然または合成の炭酸カルシウムと二酸化炭素および少なくとも1つの酸との反応生成物である、歯の表面の平滑化に使用するための口腔ケア組成物が提供される。
【0120】
本発明の表面反応炭酸カルシウムおよび/またはこれを含む口腔組成物は専門的な通院治療または在宅治療で使用することができる。
【0121】
一実施形態によれば、歯の再石灰化およびホワイトニングに使用するための表面反応炭酸カルシウムは、患者の少なくとも1つの歯に少なくとも1日1回、好ましくは1日2回、より好ましくは1日3回、表面反応炭酸カルシウムの治療有効量を投与する工程を含む方法で使用される。表面反応炭酸カルシウムの「治療有効」量は、(毒性、刺激、またはアレルギー反応のような)過度の副作用なしに、活性剤が投与されるヒト被験者において所望の治療または予防効果を有するのに十分な量であり、この発明の方法において使用されたときに妥当な利益/リスク比に見合ったものである。具体的な有効量は、治療される特定の条件、被検者の健康状態、併用療法の性質(もしあれば)、特定の剤形、用いられる口腔ケア組成物、および所望の投与計画のような要因によって変化するであろう。
【0122】
一実施形態によれば、歯の再石灰化および/またはホワイトニングに使用するための口腔組成物は、有効量の時間患者の少なくとも1つの歯に組成物を適用する工程を含む方法で使用され、好ましくは、組成物は少なくとも1つの歯の上に少なくとも1分、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも12時間または少なくとも24時間残る。
【0123】
本発明の表面反応炭酸カルシウムまたは本発明の表面反応炭酸カルシウムを含む口腔用組成物は、任意の酸化ホワイトニング化合物の非存在下でも歯のホワイトニングのために有効であり得る。本発明の好ましい実施形態によれば、口腔ケア組成物は、酸化ホワイトニング化合物を含有しない。
【0124】
一実施形態によれば、本発明の表面反応炭酸カルシウムまたは本発明の表面反応炭酸カルシウムを含む口腔組成物は、組成物を個人の少なくとも1つの歯に有効量の時間適用する工程を含む、歯をホワイトニングするための化粧方法で使用され、好ましくは、組成物は、少なくとも1つの歯に少なくとも1分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも12時間または少なくとも24時間残る。
【0125】
本発明の範囲および関心は、以下の図面および本発明の特定の実施形態を例示することを意図しており、非限定的である実施例に基づいてより深く理解されるであろう。
【0126】
図1は、実施例1の調製した練り歯磨き試料に対する表面微小硬さ(SMH)測定の結果のプロットを示す。
【0127】
図2は、実施例1の調製した練り歯磨き試料に対し決定されたCIELAB L*座標の値のグラフを示す。
【0128】
図3は、実施例1の調製した練り歯磨き試料に対し決定されたCIELAB b*座標の値のグラフを示す。
【0129】
図4は、脱灰されたウシのエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
【0130】
図5は、脱灰されたウシのエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
【0131】
図6は、実施例1の本発明の練り歯磨き試料1で処理した再石灰化されたウシのエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
【0132】
図7は、実施例1の本発明の練り歯磨き試料1で処理した再石灰化されたウシのエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示す。
【実施例】
【0133】
1. 測定方法
以下では、実施例で実施された測定方法を記載する。
【0134】
粒度分布
非表面反応炭酸カルシウム粒子、例えば、重質炭酸カルシウムの粒度分布は、マイクロメリティックス社、米国からのセディグラフ5100を用いて測定した。方法および機器は当業者に知られており、一般に充填剤および顔料の粒径を決定するために使用される。測定は、0.1重量%のNaを含む水溶液中で行った。試料を、高速攪拌機および超音速を用いて分散させた。分散した試料を測定するために、さらなる分散剤は添加しなかった。
【0135】
表面反応炭酸カルシウムの体積メジアン粒径(d50)は、マルバーンマスターサイザー2000レーザー回折システム(マルバーン・インスツルメンツPlc、英国)を用いて決定した。
【0136】
比表面積(SSA)
比表面積は、30分間250℃で加熱することによる試料の調整後、窒素を使用してISO 9277に従ってBET法により測定する。測定の前に、試料をブフナー漏斗内でろ過し、脱イオン水ですすぎ、オーブン中で90から100℃で一晩乾燥させる。続いて、ドライケーキを乳鉢でよく粉砕し、得られた粉末を一定重量になるまで130℃で湿度秤に配置する。
【0137】
走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真
調製したウシのエナメル質試料を、Sigma VP電界放射型走査電子顕微鏡(カール・ツァイスAG、ドイツ)および約50Paのチャンバー圧を有する可変圧力二次電子検出器(VPSE)によって調べた。
【0138】
2. 材料
MCC:重質炭酸カルシウムおよびリン酸に基づく表面反応炭酸カルシウム(d50=6.54μm、d98=16.8μm、SSA=25.1m/g)。重質炭酸カルシウムはフランスのオルゴンから得られたものであり(d50=3μm、d98=12μm)、オムヤAG、スイスから市販されている。
【0139】
GCC:イタリアのアベンツァ−カッラーラから得られ(d50=5μm、d98=30μm)、オムヤAG、スイスから市販されている天然重質炭酸カルシウム。
【0140】
3. 実施例
[実施例1]練り歯磨き組成物
以下の表1にまとめた成分および量を用いて以下の手順に従って練り歯磨き試料1から4を調製した。
【0141】
工程A:水およびソルビトールをビーカー中で混合した。キサンタンガム、安息香酸ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(phoskadent Na211、BKジュリーニ、ドイツ)およびサッカリンナトリウムを混合し、得られた混合物をビーカーに添加した。
【0142】
工程B:それぞれMCCまたはGCC、および二酸化チタンを水で濡らし、その後工程Aの混合物に添加した。滑らかな混合物が得られるまで混合物を均質化した。
【0143】
工程C:シリカSorbosil TC15(PQコーポレーション、米国)を均質化条件下で工程Bの混合物に添加し、それにより混合物を強く温めた。混合物が室温に冷却されるまで混合物を撹拌した。
【0144】
工程D:界面活性剤ラウリル硫酸ナトリウムを25%溶液の形で、工程Cの混合物にゆっくり撹拌しながら添加した。
【0145】
工程E:0.8重量%(2.4g)のスペアミントフレーバーを工程Dの混合物に添加した。
【0146】
【表1】
【0147】
[実施例2]再石灰化研究
次のようにウシのエナメル質試料を調製した。
【0148】
ウシのエナメル質ブロック(4mm×4mm)を切断し、平面に平行に粗研磨し、手で磨いた。ヌープ圧子を有するMicroMet 5103硬さ試験機ならびに50gの荷重、10秒のインデント時間およびブロック当たり5つのインデントを有するMicroMet MHTソフトウェア(ビューラー社、米国)を使用して、平均基線表面微小硬さ(SMH)値を決定した。
【0149】
37℃、pH4.6で、1:1の8%メチルセルロース/乳酸ゲル系中で、ウシのエナメル質試料を14日間脱灰した。脱灰後、各試料のSMHを測定した。試料を10ブロックのセルに層状にし、実施例1の4つの練り歯磨き試料の各々に対し1つのセルを提供した。また、市販の非フッ化物シリカ練り歯磨き試料(Boots UK社、英国、から市販されているBoots Smile 非フッ化物フレッシュミント練り歯磨き)をさらなるセル上の試料5として試験し、磨滅をカバーするためにさらに3つのセルを使用した。
【0150】
試料を5UI/mlのホスファターゼを含む3:1の水対練り歯磨きスラリーを用いる5分の処理、酸性緩衝液(50mMの酢酸、1.50mMの塩化カルシウム二水和物、0.90mMのオルトリン酸二水素カリウム、130mMの塩化カリウム、pH5.0)を用いる30分の処理、および中性緩衝液(20mMのHEPES、1.50mMの塩化カルシウム二水和物、0.90mMのオルトリン酸二水素カリウム、130mMの塩化カリウム、pH7.0)を用いる10分の処理に供した。このサイクルを8日間毎日6回繰り返した。
【0151】
そのサイクルが完了した後、試料を中性緩衝液に一晩放置した。pHサイクリングの前および後に試料のSMH分析によって有効性を評価した。10個の測定値を1つの試料当たりに取り、再石灰化をSMHの変化として表した。脱灰後および再石灰化後のSMH基線測定での全てのブロックのCIELAB座標Lを、CR321コニカミノルタ色彩色差計(コニカミノルタ株式会社、日本)を使用して記録した。また、試料の表面構造を、シグマVP電界放出走査型電子顕微鏡(カール・ツァイスAG、ドイツ)および約50Paのチャンバー圧を有する可変圧力二次電子検出器(VPSE)によって調べた。
【0152】
再石灰化研究の結果を図1から7に示す。
【0153】
フッ素化練り歯磨き試料(試料1および3)の両方が非フッ化物対照配合物よりも大幅に大きい程度まで再石灰化を促進したことは、図1に示す表面微小硬さ(SMH)測定の結果から収集することができる。
【0154】
CIELAB座標の測定によって、脱灰後全ての試験された試料のL*値が増加すること(post demin:脱灰後;post remin:再石灰化後)が明らかになった。これはエナメル質の脱灰によって引き起こされ、そこではいわゆる白斑病変が発現される。練り歯磨きの試料(フッ化物なしのGCC)を除き、全ての試験された試料のL*値(輝度の3乗)が再石灰化した後に減少し(図2参照)、これは再石灰化の証拠である。
【0155】
図3に示すb座標の測定によって、全てのエナメル質試料は負のb値を有していること(post demin:脱灰後;post remin:再石灰化後)が明らかになった。負のb値は、記録された画像が青色の外観を有している(これは全てのエナメル質試料が通常、非常に明るい白色として知覚される青白い色を呈していることを意味する)ことを意味する。表面反応炭酸カルシウムを含み、フッ化物を含まない練り歯磨き(試料2)によって再石灰化したエナメル質試料は、最も負のb値、ひいては最高のホワイトニング効果を示した。
【0156】
図4および図5は脱灰後のエナメル質試料の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真を示し、図6および図7は練り歯磨き試料1で処理したエナメル質試料のSEM顕微鏡写真を示す。エナメル質表面のクラックおよび凹凸が図4および5ではっきりと見える一方、図6および7は本発明の練り歯磨きを用いて再石灰化した後にエナメル質表面がより滑らかであり、より平らに見えることを証拠だてる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7