特許第6453934号(P6453934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453934
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】新生児及び乳幼児におけるワクチン接種
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20190107BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 39/002 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   A61K39/00 Z
   A61K39/39
   A61K48/00
   A61K31/7105
   A61K39/12
   A61K39/02
   A61K39/00 K
   A61K39/002
   A61P31/00
【請求項の数】6
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2017-75169(P2017-75169)
(22)【出願日】2017年4月5日
(62)【分割の表示】特願2013-555790(P2013-555790)の分割
【原出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-149744(P2017-149744A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年4月24日
(31)【優先権主張番号】EP2011/001047
(32)【優先日】2011年3月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509014386
【氏名又は名称】キュアバック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】カール−ジョセフ・カレン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クランプス
(72)【発明者】
【氏名】マルギット・シュネー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ペトシュ
(72)【発明者】
【氏名】ローター・スティッツ
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/037539(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/099660(WO,A1)
【文献】 出口 安裕,インフルエンザワクチン 高齢者・ハイリスク者・医療介護従事者への接種,臨牀と研究,2004年12月,第81巻,12号,p.1938−1942
【文献】 大藤 さとこ ほか,インフルエンザワクチンの接種対象,日本公衆衛生雑誌,2007年 6月15日,第54巻,第6号,p.361−367
【文献】 菅谷 憲夫,インフルエンザワクチン,小児科診療,2004年,第67巻,第11号,p.1913−1918
【文献】 Fotin-Mleczek M, et al.,Messenger RNA-based vaccines with dual activity induce balanced TLR-7 dependent adaptive immune resp,Journal of Immunotherapy,2011年 1月,Vol.34, No.1,p.1-15
【文献】 Antohi S, et al.,The reactivity pattern of hemagglutinin-specific clonotypes from mice immunized as neonates or adult,International Immunology,1998年,Vol.10, No.4,p.663-668
【文献】 Bot A, et al.,Enhanced protection against influenza virus of mice immunized as newborns with a mixture of plasmids,Vaccine,1998年,Vol.16, No.17,p.1675-1682
【文献】 Bot A, et al.,Protective cellular immunity against influenza virus induced by plasmid inoculation of newborn mice,Developmental Immunology,1998年,Vol.5, No.3,p.197-210
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
A61K 48/00
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00−72
A61K 47/00−69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2歳以下の年齢を示す新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける感染症の予防における使用のための、少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのmRNAを含むワクチンであって、
前記予防が、前記新生児又は乳幼児への皮内投与を介したワクチン接種を含み、前記新生児又は乳幼児における免疫応答を誘発し、
前記少なくとも1つのmRNAのコード領域のG/C含有量は、野生型mRNAのコード領域のG/Cに比べて、少なくとも15%増加し
前記少なくとも1つのmRNAがカチオン性のペプチド又はタンパク質、カチオン性多糖類、カチオン性ポリマー、及びカチオン性脂質からなる群から選択されるカチオン性化合物を伴うことを特徴とするワクチン。
【請求項2】
新生児又は乳幼児における免疫応答の誘発が、Th1免疫応答を誘発することを含む請求項1に記載の使用のためのワクチン。
【請求項3】
新生児又は乳幼児が、1)男性又は女性、哺乳動物、又はヒトである、又は、2)2歳以下、1.5歳以下、1歳(12ヶ月)以下、9ヶ月以下、6ヶ月以下又は3ヶ月以下の年齢を示す、或いは1)及び2)の両方である請求項1又は2に記載の使用のためのワクチン。
【請求項4】
感染症、ウイルス性感染症、細菌性感染症及び原虫性感染症から選択される請求項1から3のいずれかに記載の使用のためのワクチン。
【請求項5】
抗原が、タンパク質抗原及びペプチド抗原、病原性抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原生生物抗原、並びに動物抗原から選択される請求項1から4のいずれかに記載の使用のためのワクチン。
【請求項6】
カチオン性化合物がカチオン性脂質である請求項1から5のいずれかに記載の使用のためのワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2歳以下、好ましくは1歳以下、より好ましくは9ヶ月以下又は更に6ヶ月以下の年齢を好ましくは示す新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける疾患の治療における使用のための、少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのmRNAを含むワクチンであって、前記治療が、新生児又は乳幼児のワクチン接種を含み、前記新生児又は乳幼児における免疫応答を引き起こすワクチンに関する。本発明は、更に、そのようなワクチン及びその成分を含むキット及び部品のキット、並びにそのようなワクチン又はキットを適用する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
新生児及び乳幼児における感染症及びアレルギーの診断、予防及び治療は、世界的に大きな関心を呼んでおり、ますます熱心に研究されているテーマである。これに関連して、新生児及び乳幼児の免疫系のメカニズムについての深い学識が非常に重要である。広く知られているように、免疫系の主な役割は、病原体に対して生命体を防御することであるが、そのような病原体に対する免疫系の応答は、全生涯にわたって等しい訳ではない。免疫系の応答は加齢に伴う変化を受けることが、更に知られている。同様に、新生児及び乳幼児の免疫系の応答は、成人のものとは等しくない。特に、T細胞及びB細胞の応答は、多くの面で異なっており、実際、胎児の免疫系の出生前の要件の必要性、及び出産時の外部条件への移行に寄与する。
【0003】
よく知られているように、身体の全ての器官系は、保護された子宮内の生活から外界の根本的に異なる環境への出産時の劇的な遷移を経る。この急性の移行の後、段階的な年齢依存の成熟が続く。非特許文献1により考察されているように、胎児及び新生児の免疫系は、通常、母体と胎児との接合部分におけるウイルス性及び細菌性の病原体を含む感染に対する防御、潜在的に有害な母親と胎児との間の同種免疫反応を誘導し得る炎症誘発/Tヘルパー1(Th1)細胞の極性化反応の回避、及び微生物による肌及び腸管への初期の定着を含む通常は無菌である子宮内環境の外界の外来抗原に富んだ環境への移行の仲介の3部からなる、生理的な要求と関連する。子宮内での限定的な抗原への暴露、及びよく示されている新生児の適応免疫の欠陥を考慮すると、新生児は、防御のためにかなりの程度まで自然免疫系に依存しなければならない。自然免疫系は、適応免疫応答を指示することができるので、Th1細胞極性化サイトカインに対する偏りを含む新生児の自然免疫の特徴的な機能発現が、新生児の適応免疫応答の特徴的パターンに寄与する。山程の証拠が、腫瘍壊死因子(TNF)及びインターロイキン−1β(IL−1β)を含む感染により誘発される炎症誘発/Th1細胞極性化サイトカインの産生が早期分娩及び早産と関連することを示している。特に、TNFの産生は、胎盤及び胎児細胞におけるアポトーシスの誘導を介して中絶を支援していると考えられる。自然流産を誘発する炎症性サイトカインの能力は、複数の哺乳動物種の母体及び胎児の免疫系のTH2細胞極性化サイトカインへの強い偏りの重要な理由のようである(上記の非特許文献2を参照)。
【0004】
Th1細胞関連サイトカインのこの産生障害のため、当初は新生児の自然免疫系は一般的に損なわれるか又は弱められると考えられいたが、新生児の単球及び抗原提示細胞(APC)による刺激により誘発される特定のサイトカイン(例えば、IL−6、IL−10及びIL−23)の生産は、実際には成人のそれを超えている(非特許文献3〜5を参照)。それにもかかわらず、Th1細胞極性化サイトカインに対する偏りが依然として現れ、これが新生児を微生物感染に対して影響を受け易いままにし、殆どのワクチンへの新生児の免疫応答の機能障害に寄与し、これによって、この影響を受け易い集団を防御する取組みを妨げている。出生後、年齢依存の免疫応答の成熟がある。知られているように、自然免疫を活性化することができる出産前及び出産後の環境微生物産物への暴露が、この成熟工程を加速させる可能性があり、暴露が時間をかけて繰り返し発生する場合は特に、TH2細胞の極性化の減少及びTH1細胞の極性化の増強の少なくともいずれかを行い、これによって衛生仮説に従って潜在的にアレルギー及びアトピーを減少させる(上記の非特許文献2を再度参照)。
【0005】
若年期、特に新生児における、T細胞により仲介される免疫応答は、非特許文献6により考察されている。そこに述べられているように、循環性の新生児のTリンパ球は、成人のナイーブT細胞とは根本的に異なっており、胸腺移出細胞の特性を有する。それらは、細胞分裂時に複製されずに希釈されるTCRα鎖再構成のエピソーマルDNA副産物である高濃度のT細胞受容体切除サークル(TREC)を含んでいる。成人ナイーブ細胞のように、殆どの新生児のTリンパ球は、CD45 RAアイソフォーム、並びに共刺激分子CD27及びCD28を発現する。成人ナイーブリンパ球とは対照的に、新生児のリンパ球は、CD38分子を発現する。加えて、高比率の循環性新生児T細胞は、循環しており、細胞の高代謝回転を示すアポトーシスに対する感受性の増加を示す。ナイーブTリンパ球の増殖はまた、胎児期においても検出することができ、5歳迄は持続し得る。若年期において観察される高い細胞代謝回転は、恐らくはT細胞レパートリーの樹立において中心的な役割を果たしている。それらの高い代謝回転にもかかわらず、T細胞は、高い構成的テロメラーゼ活性を介して長いテロメア配列を保持する。新生児のTリンパ球のインビトロでのアポトーシスは、IL−2受容体のγ鎖、即ちIL−2、IL−4、IL−7、及びIL−15を介したサイトカイン情報伝達によって妨げられ得る。これらのサイトカインの中でも、IL−7及びIL−15もまた、他の刺激がない場合は、新生児のTリンパ球の増殖を誘導する。IL−7は、T細胞受容体再構成に先立つ段階における胸腺細胞発生に関与する。IL−15は、CD4+ T細胞よりも優先的にCD8細胞の増殖を刺激する。IL−7とは対照的に、IL−15は、インビトロでCD8+ Tリンパ球の分化を誘導する(上記の非特許文献6を参照)。
【0006】
幾つかのメカニズムが、若年期におけるTヘルパー1(Th1)型の応答を制限する。子宮内において、Th1応答は、胎盤に有毒であり、トロホブラスト由来のIL−10及びプロゲステロンによって阻害される。出生時、Th1応答は、生涯における後年よりも大きさがまだ小さい。インビトロでは、新生児のCD4+ T細胞は、成人のナイーブT細胞よりも低いレベルのIFNγを生産し、IFNγプロモーター内のCpG部位及び非CpG部位が高メチル化される。準最適なCD28の共刺激の存在下、IL−12は、新生児のCD4 Tリンパ球によるIL−4及びIFNγの両方の産生を刺激するのに対して、成人の細胞は、同様の条件下でIL−4を産生しない。ポリクローナル又はスーパー抗原の活性化に応答して、出生後の胸腺細胞は、Th2サイトカイン産生CD4細胞へと成長する一方で、IFNγの産生を刺激するためにIL−12が必要である。対照的に、新生児のCD8+ T細胞は、同様のレベルのIFNγを産生し、ナイーブ成人細胞に匹敵するIFNγプロモーターのメチル化のパターンを有する。加えて、新生児のCD8 Tリンパ球は、IL−4産生細胞へと分化するプライミング時のIL−4の存在に厳密に依存している。Bリンパ球及びCD8+ T細胞の補助において重要な役割を果たしている分子であるCD40リガンド(CD154)を発現する新生児のCD4 Tリンパ球の能力は、依然として議論の余地がある(上記の非特許文献6も参照)。
【0007】
同時に、利用可能なデータは、ナイーブTリンパ球が、新生児におけるのと成人におけるのとでは異なってプログラムされていることを示す。要約すると、新生児のCD4+ T細胞のIFNγを産生する能力と新生児のDCのTh1応答を促進する能力とは、インビトロの研究においては成人と比べて低い。加えて、インビボでの多くのワクチン及び感染性病原体へのTh1応答は、若年の間は低い。しかしながら、成熟したTh1応答は、恐らくはより効率的なDCの活性化と関連して、新生児のBCGワクチン接種及び百日咳菌感染症等の特定の条件において発現し得る。従って、新生児が弱い又は寛容原性の応答しか発現しない無力なTリンパ球を有するという古典的なパラダイムは、再考する必要がある。成熟した細胞性免疫応答が若年期において発現され得るという所見は、適切な刺激条件下で新生児のTリンパ球が細胞内病原体と戦うよう指示され得ることを示唆している(上記の非特許文献6も参照)。
【0008】
T細胞応答の違いだけでなく、B細胞応答の違いもまた、成人と比較して新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける免疫防御に深刻な影響を示すように見える。肺炎球菌、インフルエンザ菌B(Hib)、及び髄膜炎菌等の被包性細菌に対する18ヶ月〜24ヶ月より若い年齢の小児の脆弱性は、殆どの細菌性多糖類へのT細胞非依存B細胞応答の生成の一般的な機能不全を反映すると、長い間考えられてきた(非特許文献7を参照)。しかしながら、新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける免疫系の未成熟もまた、T細胞依存性タンパク質抗原に対する抗体応答の大きさに直接的影響を有する。若年期におけるB細胞応答を形成するメカニズムは、早い年齢で投与されるワクチンに対する免疫応答の主な制限を再現するために開発された、新生児マウスの免疫化モデルを使用して研究が行われた(上記の非特許文献7を参照)。ヒトの末梢B細胞の比較では違いが少ないものの、新生児と成体マウスとの脾臓B細胞の間には多くの違いがある。具体的には、ヒト新生児B細胞は、共刺激分子CD40、CD80及びCD86を低レベルで発現し、これが、それらのT細胞により発現されるCD40リガンド(CD40L)及びインターロイキン−10(IL−10)への応答を減少させる。脾性辺縁帯の乳幼児B細胞は、CD21を低レベルで発現し、これがそれらの多糖−補体複合体に応答する能力を制限する。重要な共刺激受容体であるTACI(TNFRSF13Bとしても知られる、トランスメンブレンアクチベーター及びカルシウム調節サイクロフィリン配位子インタラクタ)の発現もまた、新生児マウス及び新生児ヒトB細胞の両方において、特に未熟児において減少している。加えて、若年期におけるB細胞応答は、多くの外部要因によって影響を受ける。母体起源の抗体は、エピトープ特異的にワクチン抗原に対して結合し、従って、乳幼児B細胞が免疫優勢ワクチンエピトープに接近するのを妨げる。更に、ヒト新生児及びマウス新生児は、低レベルの血清補体成分C3を有しており、これが抗原−C3d複合体へのそれらの応答を制限する。ヒトの脾臓は、新生児においては成人と比べて含まれる辺縁帯マクロファージ(粒子状抗原の捕捉を介する抗体応答の誘導に重要な役割を持っている)が少なく、細胞のサイトカインを産生する能力が異なっている。乳幼児マウスでは、B細胞応答は、B細胞介在リンホトキシン−αシグナル伝達に応答するFDC前駆体の機能不全に起因する濾胞樹状細胞(FDC)ネットワークの成熟の著しい遅延によって制限されている。抗原特異的B細胞を引き付けることによるFDCの核胚中心反応は、B細胞に対して高度に刺激性の免疫複合体の形で抗原を保持し、体細胞超変異及びクラススイッチ組換えに繋がるシグナルを提供する。FDCネットワークの未成熟は、従って、成体様B細胞、T細胞及びDCの活性化パターンを誘導する強力なアジュバントを使用する場合であっても、胚中心反応の誘導を遅延させ、かつその大きさを制限する。抗体応答の出生後成熟に加えて、インビボでの抗体持続性が重要な効果を示す。短い半減期を有する特異的抗体の長期的な維持は、抗体産生B細胞の持続性を必要とし、これは記憶B細胞のプールから継続的に製造することができるか、又は長寿命形質細胞として持続することができる。形質細胞に影響を与えない、抗体が仲介する記憶B細胞の枯渇は、形質細胞段階は記憶B細胞のプールから独立していることを示している。また、インビボでの抗体の持続性は環境要因によって影響され得ることが示されている。これは、若年期における抗体応答の制限された持続性が環境抗原の大きな負荷への暴露に起因し、これが骨髄における制限された一連の形質細胞の生存の場への接近の競合をもたらすという仮説を支持している(上記の非特許文献7を参照)。
【0009】
以前から知られているように、出生時のワクチンの単回投与は、特定の抗体を導き損ね兼ねないと同時に、その後の二次応答のプライミングを行い、これは新生児の分化経路が形質細胞よりむしろ記憶B細胞に向けて優先的であることを示す。幾つかの要因が、このB細胞分化パターンに貢献しているようである。抗原特異的なナイーブB細胞の運命、及びそれらの短寿命形質細胞、長命形質細胞又は記憶B細胞への分化は、初期B細胞の活性化シグナルによって制御される。中程度の親和性のB細胞は、二次リンパ器官において記憶B細胞として残るのに対して、高親和性のB細胞は、形質細胞のプールに積極的に補充される。従って、初期のB細胞受容体の親和性の減少、及び新生児ナイーブB細胞の親和性成熟の遅延の少なくともいずれかは、シグナルの強度を低下させて記憶B細胞の分化を支援している可能性がある。
【0010】
乳幼児B細胞によるCD21の制限された発現はまた、記憶B細胞の生成を支援して形質細胞の分化を障害しており、これは、CD40介在シグナル伝達、IL−21等のサイトカイン、及びB細胞活性化因子(TNFSF13Bとしても知られるBAFF)、及びAPRIL等のリガンドとの相互作用から支持される。驚くべきことに、付加的な活性化シグナルがDC及びT細胞活性化を増強するために提供されない限り、これらの形質細胞支援因子は全て、若年期では低レベルで発現される。更に、若年期のB細胞は、胚中心内の限られた資源を獲得するために競合しなければならず、これが抗体応答を障害する。形質細胞の分化は、このようにして、付加的なDC活性化シグナルを提供することによって若年期において「強制」される。従って、因子の組合せは、一定のパターンで長寿命形質細胞の代わりに記憶B細胞へ向けた若年期B細胞の優先的分化をもたらすものと思われる。重要なのは、記憶B細胞のプールが若年期に形成可能であることが示されているが、これは、その大きさ又は持続性が免疫学的に成熟した宿主において誘発されるものと同様であることの証拠と考えるべきではないということである。乳幼児期においてB型肝炎ウイルスに対してプライミングされた青年期又は若年成人において追加免疫ワクチンが記憶応答を誘発することができないという最近の所見は、乳幼児に誘発される記憶B細胞が一生に渡り続かないことを示唆している。これが乳幼児におけるより小さいB細胞のプール及び未だ未定義の恒常性因子の影響の少なくともいずれかを反映しているかどうかは、未だ決定されていない。要約すると、数多くのB細胞内因子及び外因性決定因子が、若年期における抗体を分泌する形質細胞の誘導及び持続性を制限するために協働していると同時に、記憶B細胞応答の優先的な誘導を支援していると思われる(上記の非特許文献7を参照)。
【0011】
T細胞応答に加えてB細胞応答における変化は、上述のように、病原体に対する免疫防御だけでなく、感染症と戦う場合の新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおけるワクチン接種方法、場合によってはアレルギー、自己免疫疾患、又は更なる疾患にも顕著な効果を示す。上記の制限の少なくとも幾つかを克服することができる可能性がある効率的なワクチンを提供するための多くの試みが行われている。
【0012】
ウイルス由来のインフルエンザワクチンに関連して命題となる不備を克服する1つの以前の取組みは、新生児及び成体のマウスに予防接種することで防御免疫応答をプライミングするための、インフルエンザウイルスの神経病原性株A/WSN/33に由来するヘマグルチニン(HA)を発現するネイキッドDNAプラスミド(pHA)の投与に言及している(非特許文献8を参照)。非特許文献8によって示されているように、新生児のDNA免疫付与後の抗原の少量投与への継続的な暴露は、耐性誘導よりもむしろ特定のB細胞及びTh細胞のプライミングに繋がる可能性がある。しかしながら、成体マウスのpHA免疫付与は、強く偏ったTh1応答をプライミングするのみであったが、一方で新生児においてそれはTh1/Th2混合の応答を誘導した。同じ研究グループの更なる非常に類似した取組みの1つは、インフルエンザウイルスの核タンパク質(NP)又はヘマグルチニン(HA)を発現するプラスミドの併用投与を対象としている。BALB/cマウスの新生児免疫付与に続いて、耐性よりもむしろB細胞、Th細胞、及びCTLのプライミングが行われる(非特許文献9を参照)。しかしながら、同種又は異種の菌株の致死的曝露に対する生存の観点での防御が完全であることは報告されていない。更に、NPを発現するプラスミドの場合、新生児の免疫付与により誘発される防御免疫が発現するのに、成体の免疫付与と比較してより長い時間を必要とする。非特許文献8及び非特許文献9のいずれも、新生児における良好なTh1応答を示していない。更に、いずれの論文においても、DNAワクチンが、出生後の最も初期の段階でインフルエンザウイルスへの幅広い体液性免疫応答及び細胞性免疫応答を生成するために効率的で安全な手段を表していることが強調されているが、その一方で、DNAは、ゲノムへの望まれない挿入に起因する危険を生じさせる。このようなDNA由来のワクチン接種は、機能遺伝子の妨害及び癌、又は抗DNA抗体の形成にすら繋がる可能性があり、それ故、今日では焦点がずれている。
【0013】
更なる取組みは、若年期のワクチン応答を最適化する免疫刺激剤の運搬システム及び管理の改善を対象としていた。非特許文8は、非常に若い時期の病原体に対するワクチン接種の試みから生じる問題、並びに、(i)迅速に適切なアイソタイプの強い抗体応答を誘導すること、(ii)乳幼児期を越えて延び持続された抗体応答を誘発すること、(iii)若年期の応答の優先的なTh2の極性化にもかかわらず、効率的なTh1応答及びCTL応答を誘導すること、(iv)母親由来抗体により介在されるワクチン応答の阻害を免れること、(v)若年期における許容可能な反応源性を示すこと、及び(vi)必要な注射回数を減らすために複数のワクチン抗原の単一製剤への取込みを許容すること(非特許文8を参照)に使用され得る選択的アジュバントの役割に着目している。非特許文献10は、とりわけ、粒子状物質、エマルジョン、リポソーム、ビロソーム、ミクロスフェア、生ワクチン、ベクター及びDNAワクチンの投与等の異なる抗原輸送システムだけでなく、MPL誘導体、QS21誘導体、MDP誘導体、サイトカイン、インターフェロン、及びオリゴデオキシヌクレオチド等の免疫刺激剤、並びに抗原提示システムと免疫刺激剤との組合せの使用について議論している。しかしながら、非特許文献10に同様に示されているように、これらの組合せの多くは、仮定に基づくものであり、効率的なTh1応答すら提供しておらず、或いは望ましくない副作用にすら繋がる可能性がある。
【0014】
同様に、非特許文献11は、未成熟な抗原提示細胞を活性化してDNAワクチンの新生児免疫原性を高めるための細菌のCpGモチーフの使用を示唆している。加えて、非特許文献11は、従来のワクチンを使用した後続の追加免疫との組合せを示唆している。それにもかかわらず、この論文で概説されている方法は、確証的なTh1応答に繋がるものではない。更に、該方法は、DNAワクチンの使用に基づいているが、上記で概説したように潜在的に危険であると見なすことができる。
【0015】
有望であるが非常に具体的な更なる方法は、特定の新規のアジュバントIC31の使用に依存している。当技術分野で知られているように、ヒトへの使用が承認されたアジュバントはごく僅かである。ヒトへの使用が承認された1つの主要なアジュバントは、例えば、アルミニウム塩由来のアジュバントであるミョウバンである。しかしながら、ヒトへの使用は承認されたものの、アルミニウム塩等は、他のワクチン接種方法においても同様に期待され得る効果である、初期のヒト臨床試験における季節性インフルエンザワクチンの免疫反応の十分な増強を提供できていない。更なるライセンスを取得したアジュバントのインフルエンザワクチンとしては、サブユニットワクチン製剤との組合せでMF59を含むFluad(登録商標)(Novartis Vaccines)、ビロソームワクチンInflexal(登録商標)V (Berna Biotech, a Crucell company)、及びInvivac(登録商標)(Solvay)が挙げられる。動物実験及びヒト臨床試験は、MF59アジュバントのインフルエンザワクチンとともに増加した抗体反応として定義するより高い免疫原性プロファイルを明らかにしたが、MF59は、1型によって引き起こされる細胞性免疫応答の誘導の強力なアジュバントではない。Fluad(登録商標)とは異なり、ビロソームワクチンは、リン脂質二重層中に機能性インフルエンザ表面タンパク質であるヘマグルチニン及びノイラミニダーゼを含む再構成されたインフルエンザウイルスエンベロープを表す。ビロソーム由来のインフルエンザワクチンの免疫原性及び局所寛容性は、幾つかの研究で示されている。しかしながら、ビロソーム製剤の開発は非常に複雑であり、物品のコストが高い。
【0016】
これに関連して、非特許文献12は、Ag85b−ESAT−6融合タンパク質と組み合わせた特定のアジュバントIC31の、新生児マウス及び成体マウスへの免疫付与のための使用を報告している。ミョウバンとは逆に、IC31Hは、両方の年齢層において、IL−2及びTNFαをIFNγとともに或いはIFNγなしに発現する多機能T細胞によって特徴付けられる、強いTh1及びTh17の応答を誘発した。流入領域リンパ節では、同様に少数のDCが、新生児又は成体の免疫付与に続くアジュバント及び抗原の少なくともいずれかを含んでいた。CD40、CD80、CD86及びIL−12p40の産生の発現は、アジュバントを有するDCの集団に集中しており、ここで、DCの標的化/活性化は、成体及び新生児において同様であった。これらのDC/T細胞応答は、抗酸菌BCGの感染後の細菌増殖の減少と同等の減少をもたらし、一方でミョウバンをアジュバントとして用いた場合には防御が観察されなかった。しかしながら、この具体例の他のワクチンへの拡張を許容するそれ以上のアジュバントは、非特許文献12には示されていない。
【0017】
上記を要約すると、存在する従来技術のワクチンのいずれも、新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける免疫応答を効果的に引き起こすことを許容せず、成人における免疫応答としても少なくとも類似した特徴を示す。特に、多くのワクチンは、新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける効率的なTh1免疫応答を提供することができない。従って、このような患者のためにワクチンを最適化するための差し迫った必要性が存在する。より正確には、従来技術に示される問題を有さず、又は少なくともかなりの程度までこれらの問題を軽減するワクチンが必要とされる。更に、新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおけるTh1免疫応答の誘導を許容し、好ましくは投与後にTh1免疫応答からTh2免疫応答へのシフトを招かないワクチンを提供することが大いに想定される。同様に、DNA由来のワクチンの投与は、起こり得るDNAのゲノムへの組込み、起こり得る遺伝子の妨害、及び抗DNA抗体の形成の理由で避けられるべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Ofer, NATURE REVIEWS | IMMUNOLOGY VOLUME 7 | MAY 2007 | 379
【非特許文献2】Levy,2007
【非特許文献3】Angelone, D. et al., Pediatr. Res. 60, 205−209 (2006)
【非特許文献4】Vanden Eijnden, S., Goriely, S., De Wit, D., Goldman, M. & Willems, F. Eur. J. Immunol. 36, 21−26, (2006)
【非特許文献5】Chelvarajan, R. L.等, J. Leukoc. Biol. 75, 982−994 (2004)
【非特許文献6】Marchant及びGoldmann, Clinical and Experimental Immunology, 2005, 14: 10−18
【非特許文献7】Claire−Anne Siegrist*及びRichard Aspinall, NATURE REVIEWS | IMMUNOLOGY VOLUME 9 | MARCH 2009 | 185
【非特許文献8】Bot等, 1997, International Immunology, Vol. 9, No. 11, pp. 1641−1650
【非特許文献9】Bot等, Vaccine, Vol. 16, No. 17, pp. 16751682, 1998
【非特許文献10】Jiri Kovarik及びClaire−Anne Siegrist, Immunology and Cell Biology (1998) 76, 222−236
【非特許文献11】Adrian Bot及びConstantin Bona, Microbes and Infection 4 (2002) 511−520
【非特許文献12】Kamath等, 2008, PLoS ONE 3(11): e3683. doi:10.1371/journal.pone.0003683
【発明の概要】
【0019】
本発明の根底にある目的は、より好ましくは以下に概説されるように、添付の請求項の主題によって解決される。
【0020】
第1の実施形態によれば、本発明の根底にある目的は、2歳以下、好ましくは1歳以下、より好ましくは9ヶ月以下又は6ヶ月以下の年齢を好ましくは示す新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける疾患の予防及び治療の少なくともいずれかにおける使用のための、少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのmRNAを含むワクチンであって、前記治療が、新生児又は早期の乳幼児のワクチン接種を含み、前記新生児又は乳幼児における免疫応答を誘発することを特徴とするワクチンによって解決される。
【0021】
理論に縛られることなく、RNAワクチンは、的確にアジュバント性と抗原の発現とを統合し、これによってウイルス感染の関連する側面を模倣する。これは、新生児又は乳幼児における高度なアジュバントの使用を必要とする他の不活性化された(死んだ)ワクチンと比較してそれらの効率を向上させ、取扱い性及び生産を簡素化する。RNAは、トール様受容体3、トール様受容体7、トール様受容体8、RIG−I、MDA5、PKR及び相乗的に作用して抗原特異的な適応できるB細胞応答及びT細胞応答の誘導を高める働きをし得る他のものなどの専用の免疫学的パターン認識受容体の範囲に対処することができる。重要なことには、トランスフェクトされた宿主細胞における抗原の合成により、mRNAワクチンは、宿主のMHCハプロタイプとは無関係に、直接的に抗原を細胞性抗原処理及び提示経路に導入し、MHC分子への接近を許可し、T細胞応答を誘発する。これは、B細胞を含む他の免疫応答と相乗的に作用し得るポリクローナルT細胞応答の誘導を可能にする。また、MHC結合エピトープの完全なスペクトルの提示は、新生児又は乳幼児における未成熟な免疫系による制限を回避し得る。また、抗原の内部生産は、積極的に免疫原性に影響を与える可能性がある正確な翻訳後修飾(例えば、タンパク質分解処理及びグリコシル化等)を確実にする。また、RNAワクチンは、それらを新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける使用に優れるようにする安全機能を示す。例えば、増加した弱毒化生ワクチンの反応源性は、一般的に、この関連性の高い標的集団における使用を妨げる。しかしながら、ワクチンベクターの数日中の短い持続性及び痕跡のない減衰を考慮すると、観察される良好な免疫原性は、予期せぬものであり、抗原の持続的発現への有効性に様々に関連したプラスミドDNAワクチンの要求と対照をなす。
【0022】
少なくとも1つの抗原をコードする本発明の第1の実施形態で定義する本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAは、好ましくは患者における抗原特異的な免疫応答を誘発するのに好適な、当業者に既知の任意の抗原から選択することができる。本発明によれば、「抗原」との用語は、免疫系によって認識され、例えば、適応免疫応答の一部としての抗体又は抗原特異的T細胞の形成により抗原特異的免疫応答を誘発することができる物質を指す。これに関連して、適応免疫応答の最初の工程は、ナイーブ抗原特異的T細胞、又は抗原提示細胞による抗原特異的免疫応答を誘導することができる異なる免疫細胞の活性化である。これは、ナイーブT細胞が継続的に通過するリンパ組織及び臓器で生じる。抗原提示細胞として機能することができる3種類の細胞は、樹状細胞、マクロファージ、及びB細胞である。これらの細胞の各々は、免疫応答を誘発する異なる機能を有する。組織の樹状細胞は、食作用及びマクロピノサイトーシスにより抗原を取り込み、例えば外来抗原との接触によって刺激されて局所リンパ組織へと移行し、成熟した樹状細胞に分化する。マクロファージは、細菌等の粒子状抗原を取り込み、感染因子又は他の適切な刺激によって誘導されてMHC分子を発現する。B細胞のそれらの受容体を介して可溶性タンパク質抗原と結合し吸収する特有の能力もまた、T細胞を誘導するために重要である。MHC分子上の抗原を提示することは、T細胞の活性化をもたらし、これがそれらの増殖及びアームドエフェクターT細胞(armed effector T cell)への分化を誘導する。エフェクターT細胞の最も重要な機能は、協働して細胞により仲介される免疫を作り出す、CD8+細胞傷害性T細胞により感染した細胞の致死及びTh1細胞によるマクロファージの活性化、並びにTH2細胞及びTh1細胞の両方によりB細胞を活性化して異なるクラスの抗体を生成することであって、これによって体液性免疫応答を駆動することである。抗原を直接的に認識して結合するのではなく、その代わりに、他の細胞の表面上のMHC分子に結合している例えば病原体のタンパク質等の短いペプチド断片を認識するそれらのT細胞受容体によって、T細胞は抗原を認識する。
【0023】
本発明に関連して、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる抗原は、典型的には、上記の定義に該当する任意の抗原、より好ましくはタンパク質及びペプチドの抗原を含む。本発明によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる抗原は、細胞外で生成される抗原、より典型的には、宿主生物(例えば、ヒト)自体に由来しない抗原(即ち、非自己抗原)、より正確に言えば、宿主生物の外部の宿主細胞に由来する抗原、例えば、病原性抗原、特にウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原生生物抗原、動物抗原(好ましくは、本明細書に開示される動物又は生物から選択される)、及びアレルギー抗原等であってもよい。本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる抗原は、更には、例えばタンパク質の分泌、分解、及び代謝等によって、細胞、組織又は身体内で生成される抗原であってもよい。そのような抗原としては、宿主生物由来(例えば、ヒト)自体に由来する抗原、例えば、腫瘍抗原、及び自己免疫自己抗原等の自己抗原(self−antigen)又は自己抗原(auto−antigen)等だけでなく、元々宿主生物外の宿主細胞に由来するものの、身体、組織又は細胞内で例えば(プロテアーゼ)分解及び代謝等により断片化又は分解される上記の(非自己)抗原が挙げられる。
【0024】
病原性抗原としては特に、例えばインフルエンザ由来の抗原、好ましくは、インフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザC又はトゴトウイルス由来の抗原、好ましくは、インフルエンザ抗原のヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)の少なくともいずれか、好ましくは、ヘマグルチニンのサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14又はH15由来のインフルエンザ抗原及びノイラミニダーゼのサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8又はN9由来のインフルエンザ抗原の少なくともいずれか、又は好ましくはインフルエンザAのサブタイプH1N1、H1N2、H2N2、H2N3、H3N1、H3N2、H3N3、H5N1、H5N2、H7N7又はH9N2、或いは任意の更なる組合せから選択されるもの、或いはマトリックスタンパク質1(M1)、イオンチャネルタンパク質M2(M2)や核タンパク質(NP)等から選択されるもの、或いは例えばFタンパク質やGタンパク質等を含む呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の抗原が挙げられる。
【0025】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる抗原の1つの更なるクラスとしては、アレルギー抗原が挙げられる。アレルギー抗原は、典型的にはヒトにおいてアレルギーを引き起こす、ヒト又は他の供給源に由来し得る抗原である。このようなアレルギー抗原は、例えば、動物、植物、菌類及び細菌等の異なる供給源に由来する抗原から選択され得る。これに関連するアレルゲンとしては、例えば、草、花粉、カビ、薬又は多数の環境要因等に由来する抗原も挙げられる。アレルギー抗原は、典型的には、タンパク質又はペプチド、及びそれらの断片、炭水化物、多糖類、糖類、脂質及びリン脂質等の化合物の異なるクラスに属する。本発明に関連して特に興味深いのは、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAにコードされている抗原、即ち、タンパク質抗原又はペプチド抗原及びそれらの断片又はエピトープ或いは核酸及びその断片、特にそのようなタンパク質抗原又はタンパク質抗原及びそれらの断片又はエピトープをコードする核酸及びそれらの断片である。
【0026】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる特に好ましい動物由来の抗原としては、これらに限定されないが、ダニ(例えばイエダニ)、蚊、ハチ(例えばミツバチ、マルハナバチ)、ゴキブリ、マダニ、ガ(例えばカイコガ)、ミジ、バグ(bug)、ノミ、狩蜂、毛虫、ミバエ、トノサマバッタ、バッタ(grasshopper)、アリ及びアブラムシ等の昆虫由来、小エビ(shrimp)、カニ、オキアミ、ロブスター、クルマエビ(prawn)、ザリガニ及び大きいエビ(scampi)等の甲殻類由来、アヒル、ガチョウ、カモメ、七面鳥、ダチョウ及びニワトリ等の鳥類由来、ウナギ、ニシン、コイ、タイ、タラ、オヒョウ、ナマズ、ベルーガ、サケ、ヒラメ、サバ、コウイカ及びパーチ等の魚類由来、ホタテガイ、タコ、アワビ、カタツムリ、ウェルク、イカ、ハマグリ及びイガイ類等の軟体動物由来、クモ由来、雌ウシ、ウサギ、ヒツジ、ライオン、ジャガー、ヒョウ、ラット、ブタ、バッファロー、イヌ、ロリス、ハムスター、モルモット、ダマジカ、ウマ、ネコ、マウス、オセロット、サーバル等の哺乳動物由来、クモ又はシミ等の節足動物由来、線虫等の蠕虫類由来、旋毛虫種又は回虫由来、カエル等の両生類由来、或いはホヤ等由来の抗原を含み得る。動物由来の抗原はまた、動物製品に含まれる抗原、好ましくは例えば牛乳、卵及び肉等の上記で定義された動物由来の動物製品に含まれる抗原であるが、任意のこれらの動物由来の任意の種類の排泄物又は沈着物由来の抗原を含んでいてもよい。
【0027】
最も好ましくは、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる特に好ましい動物由来の抗原としては、本明細書で定義する疾患、好ましくは本明細書で定義する感染性疾患又は自己免疫疾患、或いは本明細書で定義する任意の更なる疾患を引き起こすそのような動物由来の抗原を含んでいてもよい。
【0028】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる植物由来の抗原としては、これらに限定されないが、キウイ、パイナップル、ジャックフルーツ、パパイヤ、レモン、オレンジ、マンダリン、メロン、柿、イチゴ、レイシ、リンゴ、チェリーパラダイスアップル(cherry paradise apple)、マンゴー、パッションフルーツ、プラム、アプリコット、ネクタリン、西洋ナシ、パッションフルーツ、ラズベリー及びブドウ等の果物由来、ニンニク、タマネギ、リーキ、大豆、セロリ、カリフラワー、カブ、パプリカ、ヒヨコマメ、ウイキョウ、ズッキーニ、キュウリ、ニンジン、ヤム、マメ、エンドウ豆、オリーブ、トマト、ジャガイモ、レンズマメ、レタス、アボカド、パセリ、西洋わさび、チリモヤ、ビート、カボチャ及びホウレンソウ等の野菜由来、カラシナ、コリアンダー、サフラン、コショウ及びアニス等の香辛料由来、カラスムギ、ソバ、オオムギ、イネ、コムギ、トウモロコシ、アブラナ及びゴマ等の作物由来、カシュー、クルミ、バターナッツ、ピスタチオ、アーモンド、ハシバミの実、ピーナッツ、ブラジルナッツ、ペカン及びクリ等のナッツ類由来、ハンノキ、シデ、シーダー、カバノキ、ハシバミ、ブナ、トネリコ、イボタノキ、オーク、プラタナス、ヒノキ及びヤシ等の樹木由来、ブタクサ、カーネーション、レンギョウ、ヒマワリ、ルピナス、カモミール、ライラック及びトケイソウ等の花類由来、シバムギ、コモンベント、ブロムグラス、バミューダグラス、ハルガヤ、ホソムギ等の草類由来、又はケシ、ピレトリウム、オオバコ、タバコ、アスパラガス、ヨモギ及びコショウソウ等の他の植物由来等の抗原を含み得る。
【0029】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる菌類由来の抗原としては、これらに限定されないが、例えば、アルテルニア属(Alternia sp.)、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、 ビューベリア属(Beauveria sp.)、カンジダ属(Candida sp.)、クラドスポリウム属(Cladosporium sp.)、エンドチア属(Endothia sp.)、カルキュラリア属(Curcularia sp.)、エンベリシア属(Embellisia sp.)、エピコッカム属(Epicoccum sp.)、フザリウム属(Fusarium sp.)、マラセジア属(Malassezia sp.)、ペニシリウム属(Penicillum sp.)、プレオスポラ属(Pleospora sp.)及びサッカロマイセス属(Saccharomyces sp.)等に由来する抗原を含み得る。
【0030】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる細菌由来の抗原としては、これらに限定されないが、例えば、バチルス・テタニ(Bacillus tetani)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及びストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)等由来の抗原を含み得る。
【0031】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる抗原の1つの更なるクラスとしては、腫瘍抗原が挙げられる。「腫瘍抗原」は、好ましくは、(腫瘍)細胞の表面上に位置付けられる。腫瘍抗原はまた、通常の細胞と比較して腫瘍細胞において過剰発現されるタンパク質から選択されてもよい。更に、腫瘍抗原はまた、変性した細胞自体ではない(ではなかった)(又は元々それ自体ではない)が、想定される腫瘍と関連する細胞内で発現された抗原を含む。腫瘍供給血管又はその(再)形成と関連する抗原、特にそれらの新血管形成と関連した抗原、例えば、VEGF及びbFGFの等の成長因子もまた、本明細書に含まれる。腫瘍に関連する抗原は更に、細胞又は組織由来の抗原、特に腫瘍を埋め込む細胞又は組織由来の抗原を含む。更に、何らかの物質(通常は、タンパク質又はペプチド)が、癌疾患を患った(告知された、又は告知されていない)患者において発現され、前記患者の体液中でのそれらの物質の濃度増加が起こる。これらの物質もまた、「腫瘍抗原」として言及されるが、免疫応答誘導物質の厳格な意味における抗原ではない。腫瘍抗原のクラスは、更に腫瘍特異的抗原(TSA)と腫瘍関連抗原(TAA)とに分けられる。TSAは、腫瘍細胞のみから提示され、通常の「健康な」細胞からは提示されない。それらは、典型的には腫瘍特異的な変異に由来する。より多く見られるTAAは、通常は腫瘍細胞と健康な細胞との両方に提示される。これらの抗原は認識され、抗原提示細胞は細胞傷害性T細胞によって破壊され得る。加えて、腫瘍抗原はまた、例えば変異した受容体の形態で腫瘍の表面に発生し得る。この場合、それらは抗体によって認識され得る。本発明によれば、「癌疾患」及び「腫瘍疾患」との用語は本明細書中では同義的に使用される。
【0032】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる腫瘍抗原の例としては、これらに限定されないが、例えば、5T4、707−AP(707アラニンプロリン)、9D7、AFP(α−フェトプロテイン)、AlbZIP HPG1、α5β1−インテグリン、α5β6−インテグリン、α−メチルアシル−コエンザイムAラセマーゼ、ART−4(T細胞4により認識される腺がん抗原)、B7H4、BAGE−1(B抗原)、BCL−2、BING−4、CA 15−3/CA 27−29、CA 19−9、CA 72−4、CA125、カルレティキュリン、CAMEL(メラノーマのCTL−認識抗原)、CASP−8(カスパーゼ−8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD40、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原)、CLCA2(カルシウム活性化塩素チャネル−2)、CML28、コアクトシン(coactosin)様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX−2、CT−9/BRD6(ブロモドメイン精巣特異的タンパク質)、Cten(C末端−テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp−B(サイクロフィリンB)、CYPB1(シトクロムP450 1B1)、DAM−10/MAGE−B1(分化抗原メラノーマ10)、DAM−6/MAGE−B2(分化抗原メラノーマ6)、EGFR/Her1、EMMPRIN(腫瘍細胞結合型細胞外基質メタロプロテイナーゼ誘導因子/)、EpCam(上皮細胞接着分子)、EphA2(エフリンA型受容体2)、EphA3(エフリンA型受容体3)、ErbB3、EZH2(zesteホモログ2のエンハンサー)、FGF−5(線維芽細胞増殖因子−5)、FN(フィブロネクチン)、Fra−1(Fos関連抗原−1)、G250/CAIX(糖タンパク質250)、GAGE−1(G抗原1)、GAGE−2(G抗原2)、GAGE−3(G抗原3)、GAGE−4(G抗原4)、GAGE−5(G抗原5)、GAGE−6(G抗原6)、GAGE−7b(G抗原7b)、GAGE−8(G抗原8)、GDEP(前立腺に異なった形で発現する遺伝子)、GnT−V(N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV)、gp100(糖タンパク質100 kDa)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(ヘリカーゼ抗原)、HAST−2(ヒト印環腫瘍−2)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(ヒト上皮受容体−2/神経学的)、HERV−K−MEL、HNE(ヒト好中球エラスターゼ)、ホメオボックスNKX 3.1、HOM−TES−14/SCP−1、HOM−TES−85、HPV−E6、HPV−E7、HST−2、hTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、iCE (腸カルボキシルエステラーゼ)、IGF−1R、IL−13Ra2(インターロイキン13受容体α2鎖)、IL−2R、IL−5、未熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205、KK−LC−1(北九州肺癌抗原1)、KM−HN−1、LAGE−1(L抗原)、リビン(livin)、MAGE−A1(メラノーマ抗原−A1)、MAGE−A10(メラノーマ抗原−A10)、MAGE−A12(メラノーマ抗原−A12)、MAGE−A2(メラノーマ抗原−A2)、MAGE−A3(メラノーマ抗原−A3)、MAGE−A4(メラノーマ抗原−A4)、MAGE−A6(メラノーマ抗原−A6)、MAGE−A9(メラノーマ抗原−A9)、MAGE−B1(メラノーマ抗原−B1)、MAGE−B10(メラノーマ抗原−B10)、MAGE−B16(メラノーマ抗原−B16)、MAGE−B17(メラノーマ抗原−B17)、MAGE−B2(メラノーマ抗原−B2)、MAGE−B3(メラノーマ抗原−B3)、MAGE−B4(メラノーマ抗原−B4)、MAGE−B5(メラノーマ抗原−B5)、MAGE−B6(メラノーマ抗原−B6)、MAGE−C1(メラノーマ抗原−C1)、MAGE−C2(メラノーマ抗原−C2)、MAGE−C3(メラノーマ抗原−C3)、MAGE−D1(メラノーマ抗原−D1)、MAGE−D2(メラノーマ抗原−D2)、MAGE−D4(メラノーマ抗原−D4)、MAGE−E1(メラノーマ抗原−E1)、MAGE−E2(メラノーマ抗原−E2)、MAGE−F1(メラノーマ抗原−F1)、MAGE−H1(メラノーマ抗原−H1)、MAGEL2(MAGE−like 2)、マンマグロビンA、MART−1/Melan−A(T細胞−1によって認識されるメラノーマ抗原/メラノーマ抗原A)、MART−2(T細胞−2によって認識されるメラノーマ抗原)、基質タンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M−CSF(マクロファージコロニー刺激因子遺伝子)、メソテリン、MG50/PXDN、MMP 11(M期リンタンパク質11)、MN/CA IX−抗原、MRP−3(多剤耐性関連タンパク質3)、MUC1(ムチン1)、MUC2(ムチン2)、NA88−A(患者M88のNA cDNAクローン)、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ−V、Neo−PAP(Neo−ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP、NMP22、NPM/ALK(ヌクレオフォスミン/未分化リンパ腫キナーゼ融合タンパク質)、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、NY−ESO−1(ニューヨーク食道癌(esophageous)1)、NY−ESO−B、OA1(眼白子症1型タンパク質)、OFA−iLRP(腫瘍胎児抗原−未熟ラミニン受容体)、OGT(O−結合型N−アセチルグルコサミントランスフェラーゼ)、OS−9、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(タンパク質15)、p15、p190マイナーbcr−abl、p53、PAGE−4(前立腺GAGE−様タンパク質−4)、PAI−1(プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1)、PAI−2(プラスミノーゲン活性化因子阻害因子2)、PAP(前立腺acicホスファターゼ)、PART−1、PATE、PDEF、Pim−1−キナーゼ、Pin1(プロピルイソメラーゼ)、POTE、PRAME(メラノーマの選択的に発現した抗原)、プロステイン、プロテイナーゼ−3、PSA(前立腺特異的抗原)、PSCA、PSGR、PSM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE−1(腎性抗原)、RHAMM/CD168(ヒアルロン酸仲介運動性のための受容体)、RU1(腎臓ユビキタス(renal ubiquitous)1)、RU2(腎臓ユビキタス(renal ubiquitous)1)、S−100、SAGE(肉腫抗原)、SART−1(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1)、SART−2(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1)、SART−3(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1)、SCC(扁平上皮細胞癌抗原)、Sp17(精子タンパク質17)、SSX−1(滑膜肉腫X切断点1)、SSX−2/HOM−MEL−40(滑膜肉腫X切断点)、SSX−4 (滑膜肉腫X切断点4)、STAMP−1、STEAP(前立腺の6膜貫通上皮抗原)、サバイビン(surviving)、サバイビン−2B(イントロン2−保持サバイビン)、TA−90、TAG−72、TARP、TGFb(TGFβ)、TGFbRII(TGFβ受容体II)、TGM−4(前立腺特異的トランスグルタミナーゼ)、TRAG−3(タキソール耐性関連タンパク質3)、TRG(テスティン(testin)関連遺伝子)、TRP−1(チロシン関連タンパク質1)、TRP−2/6b(TRP−2/新規エクソン6b)、TRP−2/INT2(TRP−2/イントロン2)、Trp−p8、チロシナーゼ、UPA(ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮成長因子)、VEGFR−2/FLK−1(血管内皮成長因子受容体−2)、及びWT1(ウィルムス(Wilm’)腫瘍遺伝子)、を含む群から選択される抗原を含んでいてもよく、又は、例えば、これらに限定されないが、α−アクチニン−4/m、ARTC1/m、bcr/abl(切断点クラスター領域−エーベルソン融合タンパク質)、β−カテニン/m(β−カテニン)、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP−5/m、CASP−8/m、CDC27/m(細胞分裂周期27)、CDK4/m(サイクリン依存性キナーゼ4)、CDKN2A/m、CML66、COA−1/m、DEK−CAN(融合タンパク質)、EFTUD2/m、ELF2/m(延長因子2)、ETV6−AML1(Ets変異体遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子融合タンパク質)、FN1/m(フィブロネクチン1)、GPNMB/m、HLA−A0201−R170I(HLA−A2遺伝子のα2−ドメインのα−ヘリックスの残基170においてアルギニンがイソロイシンに置換されたもの)、HLA−A11/m、HLA−A2/m、HSP70−2M(変異した熱ショックタンパク質70−2)、KIAA0205/m、K−Ras/m、LDLR−FUT(LDR−フコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質)、MART2/m、ME1/m、MUM−1/m(メラノーマユビキタス変異1)、MUM−2/m(メラノーマユビキタス変異2)、MUM−3/m(メラノーマユビキタス変異3)、ミオシンクラスI/m、neo−PAP/m、NFYC/m、N−Ras/m、OGT/m、OS−9/m、p53/m、Pml/RARa(前骨髄球性白血病/レチノイン酸受容体α)、PRDX5/m、PTPRK/m(受容体型タンパク質チロシンホスファターゼカッパ)、RBAF600/m、SIRT2/m、SYT−SSX−1(シナプトタグミンI/滑膜肉腫X融合タンパク質)、SYT−SSX−2(シナプトタグミンI/滑膜肉腫X融合タンパク質)、TEL−AML1(転座Ets−ファミリー白血病/急性骨髄性白血病1融合タンパク質)、TGFbRII(TGFβ受容体II)、及びTPI/m(トリオースリン酸イソメラーゼ)を含む群から選択される癌疾患において発現される変異抗原を含んでいてもよい。しかしながら、特定の態様によれば、gp100、MAGE−A1、MAGE−A3、MART−1/メラン−A、サバイビン及びチロシナーゼの少なくともいずれかの抗原をコードするmRNA、より好ましくは、gp100、MAGE−A1、MAGE−A3、MART−1/メラン−A、サバイビン、及びチロシナーゼの少なくともいずれかの抗原をコードするmRNAであって、プロタミンと複合体を形成するか又はプロタミンにより安定化するmRNA(例えば、約80μgのmRNA及び128μgのプロタミンの割合)は、本願発明の範囲から除外され得る。好ましい態様において、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる腫瘍抗原は、5T4、707−AP、9D7、AFP、AlbZIP HPG1、α−5−β−1−インテグリン、α−5−β−6−インテグリン、α−アクチニン−4/m、α−メチルアシル−コエンザイムAラセマーゼ、ART−4、ARTC1/m、B7H4、BAGE−1、BCL−2、bcr/abl、β−カテニン/m、BING−4、BRCA1/m、BRCA2/m、CA 15−3/CA 27−29、CA 19−9、CA72−4、
CA125、カルレティキュリン、CAMEL、CASP−8/m、カテプシンB、カテプシンL、CD19、CD20、CD22、CD25、CDE30、CD33、CD40、CD52、CD55、CD56、CD80、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CEA、CLCA2、CML28、CML66、COA−1/m、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX−2、CT−9/BRD6、Cten、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp−B、CYPB1、DAM−10、DAM−6、DEK−CAN、EFTUD2/m、EGFR、ELF2/m、EMMPRIN、EpCam、EphA2、EphA3、ErbB3、ETV6−AML1、EZH2、FGF−5、FN、Frau−1、G250、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE7b、GAGE−8、GDEP、GnT−V、gp100、GPC3、GPNMB/m、HAGE、HAST−2、ヘプシン、Her2/neu、HERV−K−MEL、HLA−A0201−R17I、HLA−A11/m、HLA−A2/m、HNE、ホメオボックスNKX3.1、HOM−TES−14/SCP−1、HOM−TES−85、HPV−E6、HPV−E7、HSP70−2M、HST−2、hTERT、iCE、IGF−1R、IL−13Ra2、IL−2R、IL−5、未熟ラミニン受容体、カリクレイン−2、カリクレイン−4、Ki67、KIAA0205、KIAA0205/m、KK−LC−1、K−Ras/m、LAGE−A1、LDLR−FUT、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−B1、MAGE−B2、MAGE−B3、MAGE−B4、MAGE−B5、MAGE−B6、MAGE−B10、MAGE−B16、MAGE−B17、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−D1、MAGE−D2、MAGE−D4、MAGE−E1、MAGE−E2、MAGE−F1、MAGE−H1、MAGEL2、マンマグロビンA、MART−1/メラン−A、MART−2、MART−2/m、基質タンパク質22、MC1R、M−CSF、ME1/m、メソテリン、MG50/PXDN、MMP11、MN/CA IX−抗原、MRP−3、MUC−1、MUC−2、MUM−1/m、MUM−2/m、MUM−3/m、ミオシンクラスI/m、NA88−A、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ−V、Neo−PAP、Neo−PAP/m、NFYC/m、NGEP、NMP22、NPM/ALK、N−Ras/m、NSE、NY−ESO−1、NY−ESO−B、OA1、OFA−iLRP、OGT、OGT/m、OS−9、OS−9/m、オステオカルシン、オステオポンチン、p15、p190マイナーbcr−abl、p53、p53/m、PAGE−4、PAI−1、PAI−2、PART−1、PATE、PDEF、Pim−1−キナーゼ、Pin−1、Pml/PARα、POTE、PRAME、PRDX5/m、プロステイン、プロテイナーゼ−3、PSA、PSCA、PSGR、PSM、PSMA、PTPRK/m、RAGE−1、RBAF600/m、RHAMM/CD168、RU1、RU2、S−100、SAGE、SART−1、SART−2、SART−3、SCC、SIRT2/m、Sp17、SSX−1、SSX−2/HOM−MEL−40、SSX−4、STAMP−1、STEAP、サバイビン、サバイビン−2B、SYT−SSX−1、SYT−SSX−2、TA−90、TAG−72、TARP、TEL−AML1、TGFβ、TGFβRII、TGM−4、TPI/m、TRAG−3、TRG、TRP−1、TRP−2/6b、TRP/INT2、TRP−p8、チロシナーゼ、UPA、VEGF、VEGFR−2/FLK−1、及びWT1からなる群から選択される。
【0033】
特に好ましい態様によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる腫瘍抗原は、MAGE−A1(例えば、アクセッション番号M77481のMAGE−A1)、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A6(例えば、アクセッション番号NM_005363のMAGE−A6)、MAGE−C1、MAGE−C2、メラン−A(例えば、アクセッション番号NM_005511のメラン−A)、GP100(例えば、アクセッション番号M77348のGP100)、チロシナーゼ(例えば、例えば、アクセッション番号NM_000372のチロシナーゼ)、サバイビン(例えば、アクセッション番号AF077350のサバイビン)、CEA(例えば、アクセッション番号NM_004363のCEA)、Her−2/neu(例えば、アクセッション番号M11730のHer−2/neu)、WT1(例えば、アクセッション番号NM_000378のWT1)、PRAME(例えば、アクセッション番号NM_006115のPRAME)、EGFRI(上皮成長因子受容体1)(例えば、アクセッション番号AF288738のEGFRI(上皮成長因子受容体1))、MUC1、ムチン−1(例えば、アクセッション番号NM_002456のムチン−1)、SEC61G(例えば、アクセッション番号NM_014302のSEC61G)、hTERT(例えば、アクセッション番号NM_198253のhTERT)、5T4(例えば、アクセッション番号NM_006670の5T4)、NY−Eso−1(例えば、アクセッション番号NM_001327のNY−Eso1)、TRP−2(例えば、アクセッション番号NM_001922のTRP−2)、STEAP、PCA、PSA、及びPSMA等からなる群から選択される。
【0034】
特に好ましくは、抗原は、インフルエンザAウイルス(HA抗原、NA抗原、NP抗原、M2抗原、M1抗原)、インフルエンザBウイルス(HA抗原、NA抗原)、呼吸器合胞体ウイルス(F抗原、G抗原、M抗原、SH抗原)、パラインフルエンザウイルス(糖タンパク質抗原)、肺炎連鎖球菌(pPht抗原、PcsB抗原、StkP抗原)、ジフテリア菌、破傷風菌、麻疹、おたふく風邪、風疹、狂犬病ウイルス(G抗原、N抗原)、黄色ブドウ球菌(毒素抗原)、クロストリジウム ディフィシレ(毒素抗原)、ヒト型結核菌(急性抗原及び不活性抗原)、カンジダ アルビカンス、インフルエンザ菌B(HiB)、ポリオウイルス、肝炎Bウイルス(表面抗原及びコア抗原)、ヒトパピローマウイルス(L1、L2、E6、E7)、ヒト免疫不全ウイルス(gp120抗原、gag抗原、env抗原)、SARS CoV(スパイクタンパク質)、黄色ブドウ球菌(IsdA抗原、IsdB抗原、毒素抗原)、百日咳毒素、ポリオウイルス(VP1−4)、マラリア原虫(NANP抗原、CSPタンパク質抗原、ssp2抗原、ama1抗原、msp142抗原)、黄色ブドウ球菌(IsdA、IsdB、及び毒素)、百日咳菌(毒素)、ポリオウイルスVP1−4、マラリア原虫(NANP抗原、CSPタンパク質抗原、ssp2抗原、ama1抗原、msp142抗原)から選択される。
【0035】
本明細書で述べた本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる抗原は、本明細書に述べたような抗原、特にタンパク質抗原又はペプチド抗原の断片を更に含んでいてもよい。本発明に関連したそのような抗原の断片は、好ましくは約6〜約20の長さ、又はそれ以上の長さのアミノ酸を有する断片、例えば、好ましくは約8〜約10、例えば8、9又は10(又は、11又は12の長さのアミノ酸)の長さのアミノ酸を有するMHCクラスI分子により処理され提示された断片、或いは、好ましくは約13以上の長さのアミノ酸、例えば13、14、15、16、17、18、19又は20、又はそれ以上の長さのアミノ酸をを有するMHCクラスII分子により処理され提示された断片を含んでいてもよく、これらの断片は、アミノ酸配列の任意の部分から選択されてもよい。それら断片は、典型的には、ペプチド断片及びMHC分子からなる複合体の形態でT細胞によって認識される。つまり、上記断片は、それらの生来の形態では認識されない。
【0036】
本明細書で定義する抗原の断片はまた、それらの抗原のエピトープを含んでいてもよい。エピトープ(「抗原決定基」とも呼ばれる)は、典型的には、本明細書で定義する(生来の)タンパク質抗原又はペプチド抗原の該表面上に位置し、好ましくは5〜15アミノ酸、より好ましくは5〜12アミノ酸、更により好ましくは6〜9アミノ酸を有する、抗体によって(即ちそれらの生来の形態で)認識され得る断片である。
【0037】
更に特に好ましい態様によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる腫瘍抗原は、抗原の混合物、例えば、好ましくは本明細書で定義する疾患又は障害の治療のための(適応)免疫応答を誘発するための、活性(免疫刺激性)組成物又は部品のキット(好ましくは、キットの一部に各抗原が含まれている)を形成してもよい。この目的のために、本発明のワクチンは、各mRNAが本明細書に述べたような少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ又はそれを超える(好ましくは異なる)抗原をコードし得る、少なくとも1つのmRNAを含んでいてもよい。或いは、本発明のワクチンは、各mRNAが本明細書に述べたような少なくとも1つの抗原をコードする、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超える(好ましくは異なる)mRNAを含んでいてもよい。
【0038】
そのような本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる抗原の混合物は、例えば、例えば前立腺癌(PCa)の治療において、好ましくはネオアジュバント及びホルモン抵抗性前立腺癌の少なくともいずれか、及びそれらに関連する疾患又は障害の治療において使用されてもよい。この目的のために、本発明のワクチンは、各mRNAが本明細書に述べたような少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ又はそれを超える(好ましくは異なる)抗原をコードし得る、少なくとも1つのmRNAを含んでいてもよい。或いは、本発明のワクチンは、各mRNAが本明細書に述べたような少なくとも1つの抗原をコードする、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ又はそれを超える(好ましくは異なる)mRNAを含んでいてもよい。好ましくは、抗原は、PSA(前立腺特異的抗原)=KLK3(カリクレイン−3)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、及びSTEAP(前立腺の6膜貫通上皮抗原)の少なくともいずれかから選択される。
【0039】
更に、そのような本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAによってコードされる抗原の混合物は、例えば、好ましくは、肺扁平上皮癌、腺癌、及び大細胞肺癌の3種の主なサブタイプから選択される非小細胞肺癌(NSCLC)、又はそれらに関連する障害の治療に使用されてもよい。この目的のために、本発明のワクチンは、各mRNAが本明細書に述べたような少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11又は12の(好ましくは異なる)抗原をコードし得る、少なくとも1つのmRNAを含んでいてもよい。或いは、本発明のワクチンは、各mRNAが本明細書に述べたような少なくとも1つの抗原をコードする、少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11又は12の(好ましくは異なる)mRNAを含んでいてもよい。好ましくは、そのような抗原は、hTERT、WT1、MAGE−A2、5T4、MAGE−A3、MUC1、Her−2/neu、NY−ESO−1、CEA、サバイビン、MAGE−C1、及びMAGE−C2の少なくともいずれかから選択される。
【0040】
上記態様においては、各々の上記で定義した抗原は、1つの(モノシストロン性)mRNAによってコードされ得る。換言すれば、この場合、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAは、少なくとも2つ(3つ及び4つ等)の(モノシストロン性)mRNAであって、ここで、これらの少なくとも2つ(3つ及び4つ等)の(モノシストロン性)mRNAの各々が、例えば、ただ1つの(好ましくは異なる)抗原、好ましくは上記抗原の組合せの1つから選択されるmRNAを含み得る。
【0041】
特に好ましい態様によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAは、(少なくとも)1つの2シストロン性又はマルチシストロン性のmRNA、好ましくは、mRNA、即ち、例えば好ましくは上記の抗原の組合せの1つから選択される少なくとも2つの(好ましくは異なる)抗原の、2つ又はそれを超えるコード遺伝子を担持する(少なくとも)1つのmRNAを含んでいてもよい。例えば、(少なくとも)1つの2シストロン性又はマルチシストロン性のmRNAの少なくとも2つの(好ましくは異なる)抗原の、そのようなコード配列は、以下に定義するような少なくとも1つのIRES(内部リボソーム侵入部位)によって分離されていてもよい。よって、「少なくとも2つの(好ましくは異なる)抗原をコードする」との用語は、それに限定はされないが、(少なくとも)1つの(2シストロン性又はマルチシストロン性の)mRNAが、例えば、上記の群の抗原の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11又は12、或いはそれを超える(好ましくは異なる)抗原、又はそれらの断片、或いは変異体をコードし得ることを意味し得る。これに関連して、本明細書で定義する、所謂IRES(内部リボソーム侵入部位)配列は、単一のリボソーム結合部位として機能することができるが、それはまた、お互いに独立してリボソームによって翻訳される複数のタンパク質をコードする、本明細書で定義する2シストロン性又はマルチシストロン性のRNAを提供する働きをし得る。本発明に従って使用することができるIRES配列の例としては、ピコルナウイルス(例えばFMDV)、ペスチウイルス(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ブタコレラウイルス(CSFV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、又はコオロギ麻痺ウイルス(CrPV)由来のものである、
【0042】
更に特に好ましい態様によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAは、本明細書で定義する少なくとも1つのモノシストロン性mRNA、及び本明細書で定義する少なくとも1つの2シストロン性又はマルチシストロン性のRNA、好ましくはmRNAの混合物を含んでいてもよい。少なくとも1つのモノシストロン性RNA、及び少なくとも1つの2シストロン性又はマルチシストロン性のRNAの少なくともいずれかは、好ましくは異なる抗原、又はそれらの断片、或いは変異体をコードしており、該抗原は、好ましくは上記抗原の1つから選択され、より好ましくは上記組合せの1つである。しかしながら、少なくとも1つのモノシストロン性RNA、及び少なくとも1つの2シストロン性又はマルチシストロン性のRNAはまた、好ましくは、上記抗原の1つから選択される、好ましくは上記の組合せでの(部分的に)同一の抗原をコードし得る(但し、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAは、全体として少なくとも2つの(好ましくは異なる)本明細書に定義する抗原を提供する)。そのような態様は、それを必要とする患者への、例えば交互の、例えば時間依存の、1つ又は幾つかの本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAの投与に有利となり得る。そのようなワクチンの成分は、組成物の部分の(異なる部分の)キットに含まれ得るか、又は、例えば本発明に係り定義する同一の本発明のワクチンの組成物として別々に投与され得る。
【0043】
更に好ましい態様において、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる核酸)はまた、修飾された核酸の形態で生じ得る。
【0044】
第1の態様によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる核酸)は、インビボでの分解(例えば、エキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼ)に実質的に耐性がある「安定化された核酸」として提供されてもよい。
【0045】
これに関連して、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる核酸)は、バックボーン修飾、糖修飾又は塩基修飾を含んでいてもよい。本発明に関連したバックボーン修飾は、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる核酸)に含まれるヌクレオチドの骨格のリン酸塩が化学的に修飾された修飾である。本発明との関連した糖修飾は、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる核酸)のヌクレオチドの糖の化学的修飾である。更に、本発明に関連した塩基修飾は、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる核酸)のヌクレオチドの塩基部分の化学的修飾である。
【0046】
更なる態様によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる核酸)は、脂質修飾を含むことができる。そのような脂質修飾核酸は、典型的には、本明細書で定義する核酸、例えばmRNA又は任意の更なる核酸を含む。そのような本発明のワクチンの脂質修飾mRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる脂質修飾核酸)は、典型的には、更に核酸分子と共有結合した少なくとも1つのリンカー、及び各リンカーと共有結合した少なくとも1つの脂質を含む。或いは、本発明のワクチンの脂質修飾mRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる脂質修飾核酸)は、本明細書で定義する少なくとも1つの核酸分子、例えば、mRNA、又は任意の更なる核酸、及び核酸分子と(リンカーなしで)共有結合した少なくとも1つの(二官能性)脂質を含む。第3の代替例によれば、本発明のワクチンの脂質修飾mRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる脂質修飾核酸)は、本明細書で定義する核酸分子、例えば、mRNA、又は任意の更なる核酸、該核酸分子と共有結合した少なくとも1つのリンカー、及び該各リンカーと共有結合した少なくとも1つの脂質、そして更に該核酸分子と(リンカーなしで)共有結合した少なくとも1つの(二官能性)脂質を含む。
【0047】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA(又は本明細書で定義する任意の更なる核酸)は、mRNA(又は任意の更なる核酸分子)の分解を防止するために、様々な手法により同様に安定化させてもよい。当技術分野において、一般的なRNAの不安定性及び(高速)分解は、RNA由来の組成物の適用に深刻な問題を示すことが知られている。このRNAの不安定性は、典型的には、RNA分解酵素「RNAase」(リボヌクレアーゼ)によるものであり、そのようなリボヌクレアーゼとの組合せは、時として溶液中のRNAを完全に分解する。従って、細胞の細胞質におけるRNAの自然分解は、非常に精密に制御されており、RNaseの混入は、一般的に、前記組成物を使用する前に特別な処理、特にピロ炭酸ジエチル(DEPC)によって除去され得る。自然分解の多くのメカニズムが、これに関連して従来技術において知られており、同様に使用され得る。例えば、末端構造は、特にmRNAにおいては典型的に極めて重要である。一例として、天然のmRNAの5’末端には、通常所謂「キャップ構造」(修飾グアノシンヌクレオチド)があり、3’末端には、典型的には最大で200のアデノシンヌクレオチド(所謂ポリAテイル)の配列がある。
【0048】
別の態様によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAは、修飾されていてもよく、従って、mRNA、好ましくはそのコード領域のG/C含有量を修飾することによって安定化される。
【0049】
本発明の特に好ましい態様において、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAのコード領域のG/C含有量は、特定の野生型のコード配列、即ち未修飾mRNAのコード領域のG/C含有量と比較して修飾されており、特に増加させられている。mRNAのコードされたアミノ酸配列は、好ましくは、特定の野生型mRNAのコードされたアミノ酸配列と比較して修飾されていない。
【0050】
本発明のワクチンのうちの少なくとも1つのmRNAのG/C含有量の修飾は、翻訳される任意のmRNA領域の配列がそのmRNAの効率的な翻訳に重要であるという事実に基づいている。よって、組成物及び種々のヌクレオチドの配列が重要である。具体的には、増加したG(グアノシン)/C(シトシン)含有量を有する配列が、増加した(アデノシン)/U(ウラシル)含有量を有する配列よりも安定である。本発明によれば、コード配列又はmRNAのコドンは、それ故、翻訳されるアミノ酸配列は維持しながら、それらが増加したG/Cヌクレオチドの量を含むようにその野生型のコード配列又はmRNAと比較して変化させられる。幾つかのコドンが1つの同じアミノ酸をコードするという事実(所謂遺伝コードの縮重)に関して、安定性に最も有利なコドンを決定することができる(所謂代替コドンの使用)。
【0051】
好ましくは、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAのコード領域のG/C含有量は、野生型mRNAのコード領域のG/Cに比べて、少なくとも7%、より好ましくは少なくとも15%、特に好ましくは少なくとも20%増加している。特定の態様によれば、本明細書で定義するタンパク質又はペプチド又はそのフラグメント、或いはその変異体、又は野生型mRNA配列、又はコード配列をコードする領域における、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、95%、又は100%の置換可能なコドンが置換され、これによって前記配列のG/C含有量が増加する。
【0052】
これに関連して、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAの、特にタンパク質をコードする領域におけるG/C含有量を、野生型配列と比較して最大限(即ち、置換可能なコドンの100%)に増加させることが特に好ましい。
【0053】
本発明によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAの更に好ましい修飾は、特に核酸がmRNAであるか又はmRNAをコードするものの形態である場合には、翻訳効率は、細胞内のtRNAの出現の異なる頻度によっても決定されるという知見に基づいている。よって、所謂「希少コドン」が本発明のワクチンの少なくとも一つのmRNAにおいて増加した範囲に存在する場合、比較的「頻繁な」tRNAをコードするコドンが存在する場合よりも、対応する修飾mRNAは著しく乏しい程度にしか翻訳されない。
【0054】
好ましくは、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAのコード領域は、細胞内において比較的希少なtRNAをコードする野生型配列の少なくとも1つのコドンが、細胞内において比較的頻繁であり前記比較的希少なtRNAと同じアミノ酸を担持するtRNAをコードするコドンと交換されるように、野生型のmRNA又はコード配列の対応する領域と比較して修飾されている。この修飾によって、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAの配列は、特に核酸がmRNAであるか又はmRNAをコードするものの形態である場合には、頻繁に発生するtRNAが得られるコドンが挿入されるように修飾されている。言い換えると、本発明によれば、この修飾によって、細胞内において比較的希少なtRNAをコードする野生型配列の全てのコドンは、いずれの場合も、細胞内において比較的頻繁なtRNAをコードするコドンと交換することができ、いずれの場合も、前記比較的希少なtRNAと同じアミノ酸を担持する。
【0055】
どのtRNAが細胞内において比較的頻繁に発生するか、及び対照的にどのtRNAが細胞内において比較的希少に発生するかは、当業者に既知である(例えば、Akashi, Curr. Opin. Genet. Dev. 2001, 11(6): 660−666を参照)。特定のアミノ酸に対して最も頻繁に発生するtRNAを使用するコドン、例えば、(ヒト)細胞において最も頻繁に発生するtRNAを使用するGlyコドンが特に好ましい。
【0056】
本発明によれば、本発明のワクチンの修飾された少なくとも1つのmRNAにおける、増加した、特に最大化した配列G/C含有量を、前記mRNAのコード領域によりコードされるアミノ酸配列を修飾することなく、「頻繁な」コドンと接続することが特に好ましい。この好ましい態様は、本発明のワクチンの、特に効率的に翻訳されて安定化された(修飾された)少なくとも1つのmRNAの提供を許容する。
【0057】
本発明の更に好ましい態様によれば、本明細書で定義する本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA、又は本明細書で定義する任意の更なる核酸分子は、好ましくは、5’及び3’の少なくともいずれかの安定化配列を有する。5’及び3’の少なくともいずれかの非翻訳領域におけるこれらの安定化配列は、細胞質ゾル中での核酸の半減期を増加させる効果を有する。これらの安定化配列は、ウイルス、細菌及び真核生物で天然に生じる配列と100%の配列同一性を有することができるが、部分的に又は完全に合成することもできる。例えば、ホモサピエンス又はアフリカツメガエル由来の(α−)グロビン遺伝子の非翻訳配列(UTR)が、本発明において核酸を安定化するために使用することができる安定化配列の例として挙げられ得る。安定化配列の他の例は、(α−)グロビン、(I)型コラーゲン、15−リポキシゲナーゼ又はチロシンヒドロキシラーゼをコードする非常に安定なRNAの3’UTRに含まれる(Holcik等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997, 94: 2410〜2414を参照)、一般式(C/U)CCANCCC(U/A)PyUC(C/U)CC(配列番号:383)を有する。そのような安定化配列は、勿論、単独で、又はもう1つの安定化配列との組合せで、或いは当業者にとって既知の安定化配列との組合せでも使用することができる。
【0058】
それにもかかわらず、本明細書で定義する本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA又は任意の更なる核酸分子を用いて、置換、付加又は削除が好ましくは行われ、特に核酸がmRNAの形態である場合には、周知の部位特異的な突然変異誘発又はオリゴヌクレオチドライゲーション法で核酸分子の製造のためのDNAマトリックスを使用して行われる(例えば、Maniatis等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 3rd ed., Cold Spring Harbor, NY, 2001を参照)。このような工程において、本明細書で定義する本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAの調製のために、対応するDNA分子がインビトロで転写されてもよい。このDNAマトリックスは、好ましくは、調製される前記少なくとも1つのmRNAの所望の核酸配列が後に続くインビトロ転写のための好適なプロモーター、例えばT7プロモーター又はSP6プロモーター、及びインビトロ転写のための終結シグナルを含む。関心の少なくとも1つのmRNAのマトリックスを形成するDNA分子は、発酵性の増殖、及びその後の細菌中で複製可能なプラスミドの一部としての単離によって調製されてもよい。本発明に好適であるとして挙げられるプラスミドは、例えば、プラスミドpT7Ts(GenBankアクセッション番号U26404; Lai等, Development 1995, 121: 2349〜2360)、pGEM(商標登録)シリーズ、例えばpGEM(商標登録)−1(GenBankアクセッション番号X65300; Promegaより)及びpSP64(GenBankアクセッション番号X65327)である(Griffin及びGriffin (ed.), PCR Technology: Current Innovation, CRC Press, Boca Raton, FL, 2001の中の、Mezei及びStorts, Purification of PCR Productsも参照)。
【0059】
本発明に係り使用される、本明細書で定義する核酸分子、例えば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA、又は本明細書で定義する任意の更なる核酸分子は、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAに対して上記概説したように修飾されてもよい。
【0060】
加えて、本発明に係り使用される、本明細書で定義する核酸分子、例えば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNA、又は本明細書で定義する任意の更なる核酸分子は、例えば、固相合成だけでなく、インビトロ転写反応等のインビトロの方法等の合成方法を含む当技術分野で既知の任意の方法を使用して調製されてもよい。
【0061】
本発明の1つの好ましい態様によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAは、少なくとも1つのmRNAのトランスフェクション効率を高めるための任意の更なる賦形剤、トランスフェクション剤、又は複合体形成剤と伴うことなく、裸で投与されてもよい。
【0062】
本発明の更に好ましい態様において、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAは、少なくとも1つのmRNAのトランスフェクション効率を高めるための任意の更なる賦形剤、トランスフェクション剤、又は複合体形成剤を伴う。トランスフェクション効率を増大させるのに好適な、これに関連した特に好ましい薬剤は、プロタミン、ヌクレオリン(nucleoline)、スペルミン又はスペルミジンを含むカチオン性又はポリカチオン性の化合物、或いは、ポリ−L−リジン(PLL)、ポリアルギニン、塩基性ポリペプチド、HIV結合ペプチド、HIV−1 Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、ペネトラチン、VP22由来又は類似のペプチド、ペストウイルスのErns、HSV、VP22(単純ヘルペス)、MAP、KALA又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリンに富むペプチド、アルギニンに富むペプチド、リジンに富むペプチド、MPGペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、カルシトニンペプチド、アンテナペディア由来ペプチド(特にショウジョウバエアンテナペディア由来)、pAntp、pIsl、FGF、ラクトフェリン、トランスポータン、ブフォリン2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、又はヒストンを含む細胞透過性ペプチド(CPP)等の他のカチオン性のペプチド又はタンパク質である。加えて、好ましいカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質又はペプチドは、以下の合計式を有する以下のタンパク質又はペプチドから選択されてもよい。
(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)
ここで、l+m+n+o+x=8〜15であり、l、m、n又はoは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15から選択される任意の数であり(但し、Arg、Lys、His及びOrnがオリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも50%を表す)、Xaaは、Arg、Lys、His又はOrnを除くネイティブの(=天然に存在する)又は非ネイティブのアミノ酸から選択される任意のアミノ酸であってもよく、xは、0、1、2、3又は4から選択される任意の数であってもよい(但し、Xaaの総含有量がオリゴペプチドの全アミノ酸の50%を超えない)。
これに関連して特に好ましいカチオン性ペプチドは、例えば、Arg、Arg、Arg、H、R、H、YSSRSSY、(RKH)、及びY(RKH)R等である。トランスフェクション剤として使用することができる更に好ましいカチオン性又はポリカチオン性の化合物としては、例えばキトサン及びポリブレン等のカチオン性多糖類、例えばポリエチレンイミン(PEI)等のカチオン性ポリマー、例えばDOTMA([1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)、DMRIE、ジC14−アミジン、DOTIM、SAINT、DC−Chol、BGTC、CTAP、DOPC、DODAP、DOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)、DOSPA、DODAB、DOIC、DMEPC、DOGS(ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン)、DIMRI(Dジミリスト−オキシプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド)、DOTAP(ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン、DC−6−14(O,O−ジテトラデカノイル−N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド)、CLIP1(RAC−[(2,3−ジオクタデシルオキシプロピル)(2−ヒドロキシエチル)]−ジメチルアンモニウムクロリド)、CLIP6(rac−[2(2,3−ジヘキサデシルオキシプロピル−オキシメチルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム)、CLIP9(rac−[2(2,3−ジヘキサデシルオキシプロピル−オキシスクシニルオキシ)エチル]−トリメチルアンモニウム及びオリゴフェクタミン等のカチオン性脂質、或いは、例えば、β−アミノ酸ポリマー又は逆向きポリアミド等の修飾ポリアミノ酸、PVP(ポリ(N−エチル−4−ビニルピリジニウムブロミド))等の修飾ポリエチレン、pDMAEMA(ポリ(ジメチルアミノエチルメチルアクリレート))等の修飾アクリレート、pAMAM(ポリ(アミドアミン))等の修飾アミドアミン、ジアミン末端修飾1,4−ブタンジオールジアクリレート−co−5−アミノ−1−ペンタノールポリマー等の修飾ポリβ−アミノエステル(PBAE)、ポリプロピルアミンデンドリマー又はpAMAM系デンドリマー等のデンドリマー、PEI(ポリ(エチレンイミン))及びポリ(プロピレンイミン)等のポリイミン、ポリアリルアミン、シクロデキストリン系ポリマー、デキストラン系ポリマー及びキトサン等の糖骨格系ポリマー、PMOXA−PDMS共重合体等のシラン骨格系ポリマー、1以上のカチオン性ブロック(例えば、上述のカチオン性ポリマーから選択される)の組合せからなるブロックポリマー、及び1以上の親水性ブロック又は疎水性ブロック(例えば、ポリエチレングリコール)の組合せからなるブロックポリマー等のカチオン性又はポリカチオン性のポリマー等が挙げられ得る。
【0063】
少なくとも1つの抗原をコードする本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAはまた、ジスルフィド架橋したカチオン性成分によって形成されたポリマー担体と複合体を形成してもよい。「カチオン性成分」との用語は、典型的には、約1〜9、好ましくは9以下の、8以下、7以下のpH値、最も好ましくは例えば7.3〜7.4の生理学的pH値の正電荷を有する荷電分子(カチオン)を指す。従って、本発明に係るカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーは、生理学的条件下、好ましくは特にインビボの細胞の生理食塩条件下で正電荷を有する。「カチオン性」の定義は、「ポリカチオン性」成分にも言及され得る。
【0064】
これに関連して、ジスルフィド架橋によって本発明のワクチンのポリマー担体の基礎を形成するカチオン性成分は、典型的には、この目的のための任意の好適なカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、本発明に係り定義する核酸を複合体化可能であり、これによって好ましくは核酸を凝縮させる特定の任意のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーから選択される。カチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーは、好ましくは直鎖状分子であるが、分岐状のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーを使用してもよい。
【0065】
本発明の少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得る、ポリマー担体の各々のカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質、ペプチド又はポリマーは、少なくとも1つの−SH部分、最も好ましくは少なくとも1つのシステイン残基、又は本明細書で言及するポリマー担体のカチオン性成分としての少なくとも1つの更なるカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質、ペプチド又はポリマーとの縮合によってジスルフィド結合を形成可能な−SH部分を提示する任意の更なる化学基を含む。
【0066】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために用いられ得る、各々のカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質、ペプチド又はポリマー、或いは任意の他のポリマー担体の成分は、好ましくはその隣接する成分(カチオン性のタンパク質、ペプチド、ポリマー又は他の成分)にジスルフィド架橋を介して連結される。好ましくは、ジスルフィド架橋は、少なくとも1つのカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質、ペプチド又はポリマーと、少なくとも1つの更なるカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質、ペプチド又はポリマー、或いはポリマー担体の他の成分との間の(可逆の)ジスルフィド結合(−S−S−)である。ジスルフィド架橋は、典型的には、特にカチオン性成分のポリマー担体の成分の−SH部分の縮合によって形成される。そのような−SH部分は、ジスルフィド架橋をする前のカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質、ペプチド又はポリマー、或いは任意の他のポリマー担体の成分の構造の一部であってもよく、又はジスルフィド架橋の前に以下に定義する修飾によって追加されてもよい。これに関連して、ジスルフィド結合を提供するために必要なポリマー担体の1つの成分に隣接する硫黄は、成分そのものによって、例えば本明細書で定義する−SH部分によって提供されてもよく、又は成分を修飾して−SH部分を提示することによって提供されてもよい。これらの−SH基は、典型的には、例えば、システイン、又は−SH部分を担持する成分の任意の更なる(修飾された)アミノ酸を介して各々の成分によって提供される。カチオン性成分又はポリマー担体の任意の更なる成分がペプチド又はタンパク質である場合には、−SH部分は、少なくとも1つのシステイン残基によって提供されることが好ましい。或いは、各々のポリマー担体の成分が少なくとも1つのそのような−SH部分を担持するように、ポリマー担体の成分が、好ましくは−SH部分を担持する化合物との化学反応を介して−SH部分によって修飾されていてもよい。そのような−SH部分を担持する化合物は、例えば、(追加の)システイン、又は任意の更なる(修飾)アミノ酸又は−SH部分を担持するポリマー担体の成分の化合物であってもよい。そのような化合物はまた、本明細書で定義する成分に−SH部分を導入することを許容する任意の非アミノ化合物又は部分であってもよい。そのような非アミノ化合物は、例えば、3−チオプロピオン酸又は2−イミノチオラン(トラウト試薬)の結合により、アミド生成(例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミン等)により、マイケル付加(例えば、マレインイミド部分、α,β−不飽和カルボニル等)により、クリック化学(例えば、アジド又はアルキン)により、アルケン/アルキンメタセシス(例えば、アルケン又はアルキン)、イミン又はヒドラゾン形成(アルデヒド又はケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アミン)、複合体形成反応(アビジン、ビオチン、プロテインG)、又はS型置換反応を許容する化合物(例えば、ハロゲン化アルカン、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩)又は更なる成分の連結に利用できる他の化学的部分による化合物の化学反応又は結合を介して、本発明に係るポリマー担体の成分に連結されていてもよい。場合によっては、−SH部分は、成分への化学結合の間は保護基によって覆われていてもよい。そのような保護基は、当技術分野において既知であり、化学的結合の後に除去されてもよい。いずれの場合も、例えば、システイン、又は任意の更なる(修飾された)アミノ酸又は化合物の−SH部分は、ポリマー担体の成分の任意の位置において末端又は内部に存在していてもよい。本明細書で定義するように、ポリマー担体の各々の成分は、典型的には、少なくとも1つの−SH基を提示するが、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の−SH部分を含んでいてもよい。カチオン性成分の結合に加え、−SH部分は、本明細書で定義する本発明のワクチンのポリマー担体の更なる成分、特にアミノ酸成分、例えば、抗原エピトープ、抗原、抗体、細胞透過性ペプチド(例えば、TAT)、及びリガンド等を連結するのに使用されてもよい。
【0067】
上記で定義するように、本発明のワクチンの複合少なくとも1つのmRNAを複合体化するのに使用され得るポリマー担体は、ジスルフィド架橋したカチオン性(又はポリカチオン性)成分により形成されてもよい。
【0068】
1つの第1の代替例によれば、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体の少なくとも1つのカチオン性(又はポリカチオン性)成分は、カチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質から選択され得る。そのようなカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、好ましくは、約3〜100のアミノ酸長、好ましくは約3〜50のアミノ酸長、より好ましくは約3〜25、例えば、約3〜10、5〜15、10〜20、又は15〜25のアミノ酸長である。代替的に又は付加的に、そのようなカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、約0.5kDa〜約100kDa、好ましくは約10kDa〜約50kDa、更により好ましくは約10kDa〜約30kDaの分子量を含む、約0.01kDa〜100kDaの分子量を提示してもよい。
【0069】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体のカチオン性成分が、カチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質を含む特定の場合には、ポリマー担体が完全にカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質からなる場合は、カチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質、或いは全てのポリマー担体のカチオン特性は、そのカチオン性アミノ酸の含有量により決定され得る。好ましくは、カチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質、及びポリマー担体の少なくともいずれか中のカチオン性アミノ酸の含有量は、少なくとも10%、20%又は30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%又は70%であるが、少なくとも80%、90%、或いは更に95%、96%、97%、98%、99%又は100%もまた好ましく、最も好ましくは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%であり、又は、約10%〜90%の範囲であってもよく、より好ましくは約15%〜75%の範囲、更により好ましくは20%〜50%の範囲、例えば、20%、30%、40%又は50%、又は、任意の2種の前述の値によって形成される範囲である(但し、カチオン性又はカチオン性のペプチド又はタンパク質中、或いは全てのポリマー担体中の、全アミノ酸、例えばカチオン性アミノ酸、親油性アミノ酸、親水性アミノ酸、芳香族性アミノ酸、及び更なるアミノ酸の含有量は、ポリマー担体がカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質である場合には、100%とする)。
【0070】
好ましくは、少なくとも1つの−SH部分を含むか、又は少なくとも1つの−SH部分を含むように追加修飾された、ポリマー担体のそのようなカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、これらに限定はされないが、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン又はスペルミジン、オリゴ−又はポリ−L−リジン(PLL)、塩基性ポリペプチド、オリゴ又はポリアルギニン等のカチオン性のペプチド又はタンパク質、細胞透過性ペプチド(CPP)、トランスポータン又はMPGペプチド等のキメラCPP、HIV結合ペプチド、Tat、HIV−1 Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、例えばペネトラチン、アンテナペディア由来ペプチド(特にショウジョウバエアンテナペディア由来)、pAntp及びpIsl等のペネトラチンファミリーのメンバー、並びに、例えばブフォリン2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、MAP、PpTG20、ロリゴマー、FGF、ラクトフェリン、ヒストン、VP22由来又は類似のペプチド、ペストウイルスのErns、HSV、VP22(単純ヘルペス)、MAP、KALA又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリンに富むペプチド、アルギニンに富むペプチド、リジンに富むペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、及びカルシトニンペプチド等の抗菌剤由来のCPPから選択される。
【0071】
代替的に又は付加的に、少なくとも1つの−SH基を含むか、又は少なくとも1つの−SH部分を含むように追加修飾された、ポリマー担体のそのようなカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、これらに限定はされないが、以下の合計式(I)を有する以下のカチオン性ペプチドから選択される。
【0072】
{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)
【0073】
ここで、l+m+n+o+x=3〜100であり、l、m、n又はoは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90及び91〜100から選択される任意の数であり(但し、Arg(アルギニン)、Lys(リジン)、His(ヒスチジン)及びOrn(オルニチン)の総含有量がオリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも10%を占める)、Xaaは、Arg、Lys、His又はOrnを除くネイティブの(天然の)又は非ネイティブのアミノ酸から選択され、xは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80及び81〜90から選択される任意の数である(但し、Xaaの総含有量がオリゴペプチドの全アミノ酸の90%を超えない)。Arg、Lys、His、Orn 及びXaaのいずれのアミノ酸がペプチドのどの場所に配置されてもよい。これに関連して、7アミノ酸〜30アミノ酸の範囲のカチオン性のペプチド又はタンパク質が特に好ましい。この式の更に好ましいペプチドは、例えば、Arg、Arg、Arg、Arg12、HisArg、ArgHis、HisArgHis、HisArgHis、HisArgHis、HisArgHis、TyrSerArgSerTyr、(ArgLysHis)及びTyr(ArgLysHis)Arg等のオリゴアルギニンである。
【0074】
特定の好ましい実施形態によれば、上記の実験的合計式(I)を有するポリマー担体のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、これらに限定はされないが、以下の式の下位群の少なくとも1つを含む。
【0075】
Arg、Arg、Arg、Arg10、Arg11、Arg12、Arg13、Arg14、Arg15−30、Lys、Lys、Lys、Lys10、Lys11、Lys12、Lys13、Lys14、Lys15−30、His、His、His、His10、His11、His12、His13、His14、His15−30、Orn、Orn、Orn、Orn10、Orn11、Orn12、Orn13、Orn14、Orn15−30
【0076】
更なる特に好ましい実施形態では、上記の実験的合計式(I)を有し、少なくとも1つの−SH部分を含むか、又は少なくとも1つの−SH部分を含むように追加修飾された、ポリマー担体のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、これらに限定はされないが、以下の式の下位群の少なくとも1つを含む。以下の式は(実験式(I)と同様に)、何らのアミノ酸順序を規定していないが、各々のペプチドの成分としてのアミノ酸(の数)を排他的に規定することによって、実験式を反映するように意図されている。従って、一例として、実験式Arg(7−29)Lysは、この式に該当するペプチドが7〜19のアルギニン残基、及び1つのLys残基を如何なる順序あれ含むことを意味することを意図している。ペプチドが7つArg残基と1つのLys残基とを含む場合は、7つのArg残基と1つのLys残基とを有する全て変異型が包含される。Lys残基はそれ故、例えば7つのArg及び1つのLys残基からなる8アミノ酸長の配列のどこにでも配置することができる。下位群は、好ましくは以下を含む。
【0077】
Arg(4−29)Lys、Arg(4−29)His、Arg(4−29Orn、Lys(4−29)His、Lys(4−29)Orn、His(4−29)Orn、Arg(3−28)Lys、Arg(3−28)His、Arg(3−28)Orn、Lys(3−28)His、Lys(3−28)Orn、His(3−28)Orn、Arg(2−27)Lys、Arg(2−27)His、Arg(2−27)Orn、Lys(2−27)His、Lys(2−27)Orn、His(2−27)Orn、Arg(1−26)Lys、Arg(1−26)His、Arg(1−26)Orn、Lys(1−26)His、Lys(1−26)Orn、His(1−26)Orn
【0078】
Arg(3−28)LysHis、Arg(3−28)LysOrn、Arg(3−28)HisOrn、ArgLys(3−28)His、ArgLys(3−28)Orn、Lys(3−28)HisOrn、ArgLysHis(3−28)、ArgHis(3−28)Orn、LysHis(3−28)Orn
【0079】
Arg(2−27)LysHis、Arg(2−27)LysHis、Arg(2−27)LysOrn、Arg(2−27)LysOrn、Arg(2−27)HisOrn、Arg(2−27)HisOrn、ArgLys(2−27)His、ArgLys(2−27)His、ArgLys(2−27)Orn、ArgLys(2−27)Orn、Lys(2−27)HisOrn、Lys(2−27)HisOrn、ArgLysHis(2−27)、ArgLysHis(2−27)、ArgHis(2−27)Orn、ArgHis(2−27)Orn、LysHis(2−27)Orn、LysHis(2−27)Orn
【0080】
Arg(1−26)LysHis、Arg(1−26)LysHis、Arg(1−26)LysHis、Arg(1−26)LysOrn、Arg(1−26)LysOrn、Arg(1−26)LysOrn、Arg(1−26)HisOrn、Arg(1−26)HisOrn、Arg(1−26)HisOrn、ArgLys(1−26)His、ArgLys(1−26)His、ArgLys(1−26)His、ArgLys(1−26)Orn、ArgLys(1−26)Orn、ArgLys(1−26)Orn、Lys(1−26)HisOrn、Lys(1−26)HisOrn、Lys(1−26)HisOrn、ArgLysHis(1−26)、ArgLysHis(1−26)、ArgLysHis(1−26)、ArgHis(1−26)Orn、ArgHis(1−26)Orn、ArgHis(1−26)Orn、LysHis(1−26)Orn、LysHis(1−26)Orn、LysHis(1−26)Orn
【0081】
Arg(2−27)LysHisOrn、ArgLys(2−27)HisOrn、ArgLysHis(2−27)Orn、ArgLysHisOrn(2−27)
【0082】
Arg(1−26)LysHisOrn、Arg(1−26)LysHisOrn、Arg(1−26)LysHisOrn、ArgLys(1−26)HisOrn、ArgLys(1−26)HisOrn、ArgLys(1−26)HisOrn、ArgLysHis(1−26)Orn、ArgLysHis(1−26)Orn、ArgLysHis(1−26)Orn、ArgLysHisOrn(1−26)、ArgLysHisOrn(1−26)、ArgLysHisOrn(1−26)
【0083】
更なる特定の好ましい実施形態では、上記の実験的合計式(I)を有し、少なくとも1つの−SH部分を含むか、又は少なくとも1つの−SH部分を含むように追加修飾された、ポリマー担体のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、これらに限定はされないが、一般式Arg(Rとも称する)、Arg(Rとも称する)、及びArg12(R12とも称する)からなる下位群から選択される。
【0084】
1つの更なる特定の好ましい実施形態では、ポリマー担体のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、上記の式{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)}(式(I))に従って定義され、少なくとも1つの−SH部分を含むか、又は少なくとも1つの−SH部分を含むように追加修飾されている場合には、これらに限定はされないが、次の下位式(Ia)から選択される。
【0085】
{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa’)(Cys)} 式(Ia)
【0086】
ここで、(Arg)、(Lys)、(His)、(Orn)及びxは、本明細書に定義するものであり、Xaa’は、Arg、Lys、His、Orn又はCysを除くネイティブの(天然の)又は非ネイティブのアミノ酸から選択され、yは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80及び81〜90から選択される任意の数である(但し、Arg(アルギニン)、Lys(リジン)、His(ヒスチジン)及びOrn(オルニチン)の総含有量がオリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも10%を占める)。
【0087】
この実施形態は、例えば上記の実験式(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)(式(I))に従って定義する場合に、ポリマー担体のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質が、カチオン性成分としてのカチオン性又はポリカチオン性のペプチドがポリマー担体の他の成分とジスルフィド結合を形成可能な少なくとも1つのシステインを担持するように、上記の意味における−SH部分として、少なくとも1つのシステインを含むか、又は少なくとも1つのシステインで修飾されていることを特徴とする状況に適用され得る。
【0088】
別の特定の好ましい実施形態では、ポリマー担体のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、上記の式{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)}(式(I))に従って定義する場合には、これらに限定はされないが、次の下位式(Ib)から選択される。
【0089】
Cys {(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)} Cys 式(Ib)
【0090】
ここで、実験式{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)}(式(I))は、本明細書で定義するものであり、(半経験的な実験)式(I)に従ったアミノ酸配列の中核部を形成し、Cys及びCysは、(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)の近位又は末端にあるシステインである。例示的な実施例は、2つのCysが隣接して配置された上記のいずれかの配列、及び以下の配列を含むことができる。
【0091】
CysArgCys Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:1)
CysArgCys Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:2)
CysArgCys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:3)
CysArg10Cys Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:4)
CysArg11Cys Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:5)
CysArg12Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:6)
CysArg13Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:7)
CysArg14Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:8)
CysArg15Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:9)
CysArg16Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:10)
CysArg17Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:11)
CysArg18Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:12)
CysArg19Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Cys (配列番号:13)
CysArg20Cys: Cys−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg−Arg Cys (配列番号:14)
【0092】
この実施形態は、例えば上記の実験式(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)(式(I))に従って定義する場合に、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質が、本発明のポリマー担体のカチオン性又はポリカチオン性のペプチドがポリマー担体の他の成分とジスルフィド結合を形成可能な少なくとも2つの(末端の)システインを担持するように、上記の意味における−SH部分としての少なくとも2つのシステインで修飾されていることを特徴とする状況に適用され得る。
【0093】
第2の代替例によれば、ポリマー担体の少なくとも1つのカチオン性(又はポリカチオン性)成分は、例えば、これに関連して好適な任意の(非ペプチド性の)カチオン性又はポリカチオン性のポリマーから選択され得る(但し、この(非ペプチド性の)カチオン性又はポリカチオン性のポリマーは、カチオン性又はポリカチオン性のポリマーと本明細書に定義するポリマー担体の他の成分とのジスルフィド結合を提供する、少なくとも1つの−SH部分を提示するか、又はそれを提示するように修飾されている)。従って、同様に本明細書で定義するように、ポリマー担体は、同一又は異なるカチオン性又はポリカチオン性のポリマーを含んでいてもよい。
【0094】
ポリマー担体のカチオン性成分が(非ペプチド性の)カチオン性又はポリカチオン性のポリマーを含む特定の場合には、(非ペプチド性の)カチオン性又はポリカチオン性のポリマーのカチオン特性は、カチオン性ポリマーの成分の全体の電荷と比較した場合のカチオン性の電荷量により決定され得る。好ましくは、(生理学的)pHでのカチオン性ポリマーにおけるカチオン性の電荷量は、少なくとも10%、20%又は30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%又は70%であるが、少なくとも80%、90%、或いは更に95%、96%、97%、98%、99%又は100%もまた好ましく、最も好ましくは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%であり、又は、約10%〜90%の範囲であってもよく、より好ましくは約30%〜100%の範囲、更に好ましくは50%〜100%の範囲、例えば、50%、60%、70%、80%、90%又は100%、又は、任意の2種の前述の値によって形成される範囲である(但し、全ての電荷量、例えば、全体のカチオン性ポリマーにおける本明細書で定義する(生理学的)pHでの正及び負の電荷を100%とする)。
【0095】
好ましくは、ポリマー担体の(非ペプチド性)カチオン性成分は、典型的には0.1kDa又は0.5kDaの分子量、好ましくは約1kDa〜約75kDa、より好ましくは約5kDa〜約50kDa、更により好ましくは約5kDa〜約30kDaの分子量、又は、約10kDa〜約50kDa、更により好ましくは約10kDa〜約0kDaの分子量を示すカチオン性又はポリカチオン性のポリマーを表す。加えて、(非ペプチド性)のカチオン性又はポリカチオン性のポリマーは、典型的には、本明細書に定義するポリマー担体の他のカチオン性成分又は他の成分との縮合によってジスルフィド結合を形成可能な少なくとも1つの−SH部分を提示する。
【0096】
上記に関連して、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体の(非ペプチド性の)カチオン性成分は、アクリレート、pDMAEMA(ポリ(ジメチルアミノエチルメチルアクリレート))等の修飾アクリレート、キトサン、アジリジン、又は2−エチル−2−オキサゾリン(オリゴエチレンイミン又は修飾オリゴエチレンイミンを形成する)、ビスアクリレートとオリゴβアミノエステル又はポリアミドアミンを形成するアミンとの反応により得られるポリマー、或いは、ポリエステル及びポリカーボネート等の他のポリマーから選択され得る。これらの(非ペプチド性の)カチオン性又はポリカチオン性のポリマーの各分子は、典型的には、少なくとも1つの−SH部分を提示してもよく、ここで、これらの少なくとも−SHは、例えば、イミノチオラン、3−チオプロピオン酸、或いは、システイン又は任意の更なる(修飾)アミノ酸等の−SH部分含有アミノ酸の導入等の化学修飾によって、前記(非ペプチド性の)カチオン性又はポリカチオン性のポリマーに導入されてもよい。そのような−SH部分は、好ましくは上記で既に定義したものである。
【0097】
ポリマー担体に関連して、ジスルフィド架橋により本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体の基礎を形成するカチオン性成分は、互いに同一であっても異なっていてもよい。本発明のポリマー担体が、カチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーと、任意に、本明細書に記載するようにジスルフィド結合によって架橋された本明細書で定義するような更なる成分との混合物を含むことも特に好ましい。
【0098】
これに関連して、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得る本発明のポリマー担体は、異なる(短い)カチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、或いは他の成分の所望の特性を組み合わせることを許容する。ポリマー担体は、例えば、アジュバント治療のための核酸の効率的なトランスフェクションの目的のため、遺伝子ノックダウンのための遺伝子治療の目的のため、又は他の方法のために、特にインビトロにおける異なる細胞株への核酸の効率的なトランスフェクションのみならず、特にインビボにおけるトランスフェクションを示すために、活性を失うことなく、核酸を効率的に凝縮することを許容する。ポリマー担体は、更に細胞への毒性がなく、その核酸カーゴ(cargo)の効率的な放出を提供し、凍結乾燥の間安定であり、免疫刺激剤又はアジュバントとして適用可能である。これに関連して、本発明のポリマー担体の成分は、誘導されたサイトカインパターンを決定することができるような方法で変化させることができる。
【0099】
具体的には、ジスルフィド結合したカチオン性成分によって形成されたポリマー担体は、例えば、ポリマー担体に、同一又は異なるカチオン性のペプチド又はポリマーをカチオン性成分として導入し、及び任意に他の成分を追加することによって、そのペプチド又はポリマー含有量を大幅に変化させ、これによってその生物物理学的/生化学的特性、特に、ポリマー担体のカチオン特性を、極めて簡単かつ迅速に調節することを許容する。非常に小さい非毒性のモノマー単位からなるにもかかわらず、ポリマー担体は、核酸カーゴ及び複合体の安定性として、mRNAの強い縮合を提供する長いカチオン性結合配列を形成する。細胞質ゾルの還元条件下(例えば細胞質GSH)では、複合体は、急速にその(カチオン性)成分へと分解され、これは更に分解される(例えばオリゴペプチド)。これは、細胞質ゾル中の核酸カーゴの熟議を支持する。より高分子のオリゴペプチド又はポリマー、例えば高分子ポリアルギニンで知られているように、細胞質ゾルにおける小さなオリゴペプチド又はポリマーへの分解に起因する毒性は観察されない。
【0100】
従って、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体は、任意に本明細書で定義する更なる成分とともに、上記のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又は(非ペプチド性の)ポリマーから選択される異なる(短い)カチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマーを含んでいてもよい。
【0101】
加えて、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体、より好ましくは、ジスルフィド架橋を介してポリマー担体の基礎を形成する少なくとも1つの異なる(短い)カチオン性又はポリカチオン性のペプチド又は(非ペプチド性の)ポリマーは、好ましくは、ジスルフィド架橋の前に少なくとも1つの更なる成分によって修飾されていてもよい。或いは、そのようなポリマー担体は、少なくとも1つの更なる成分によって修飾されていてもよい。それはまた、典型的には、ジスルフィド架橋を介して上記で定義した他の(短い)カチオン性又はポリカチオン性のペプチドとともにポリマー担体のジスルフィドを形成する、少なくとも1つの更なる成分を任意的に含んでいてもよい。
【0102】
上記で定義するカチオン性又はポリカチオン性のペプチド或いは(非ペプチド性の)ポリマーの修飾を許容するために、ポリマー担体の各成分はまた、(好ましくは既にジスルフィド架橋の前に)少なくとも1つの更なる官能基を含んでいてもよく、これは本明細書で定義するような更なる成分の連結を許容する。そのような官能基は、例えば、アミド生成(例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミン等)により、マイケル付加(例えば、マレインイミド部分、α,β−不飽和カルボニル等)により、クリック化学(例えば、アジド又はアルキン)により、アルケン/アルキンメタセシス(例えば、アルケン又はアルキン)、イミン又はヒドラゾン形成(アルデヒド又はケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アミン)、複合体形成反応(アビジン、ビオチン、プロテインG)、又はS型置換反応を許容する化合物(例えば、ハロゲン化アルカン、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩)又は更なる成分の連結に利用できる他の化学的部分により、例えば本明細書で定義する官能基等の更なる成分の連結を許容する官能基から選択され得る。
【0103】
特に好ましい実施形態では、ポリマー担体に含まれ得る、及び本発明のワクチンの少なくとも1つのワクチンを複合体化するために使用され得るか又は異なる(短い)カチオン性又はポリカチオン性のペプチド又は(非ペプチド性の)ポリマーを修飾するために使用され得る、ポリマー担体の基礎又は本明細書で定義するポリマー担体の生物物理学的/生化学的特性を形成する更なる成分は、アミノ酸成分(AA)である。本発明によれば、アミノ酸成分(AA)は、好ましくは、約1〜100の範囲、好ましくは約1〜50の範囲、より好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15〜20を含む数から選択される数のアミノ酸を含むか、又は、任意の2種の前述の値によって形成される範囲から選択され得る。これに関連して、アミノ酸成分(AA)のアミノ酸は、互いに独立して選択することができる。例えば、ポリマー担体中に2つ以上の(AA)成分が存在する場合、それらは互いに同一であってもよく、又は互いに異なっていてもよい。
【0104】
アミノ酸成分(AA)は、ジスルフィド結合を介してこの成分(AA)を本明細書で定義するポリマー担体に導入することを許容する、−SH含有部分を含んでいてもよく、又は−SH含有部分が(例えば、末端に)隣接して配置されていてもよい。−SH含有部分がシステインを表す場合には、アミノ酸成分(AA)はまた、−Cys−(AA)−Cys−として解されてもよく、ここで、Cysはシステインを表し、ジスルフィド結合のために必要な−SH部分を提供する。−SH含有部分はまた、上記のようなカチオン性成分又はいずれかのその成分のためのいずれかの修飾又は反応を使用して、アミノ酸成分(AA)に導入してもよい。
【0105】
更に、例えば、アミノ酸成分(AA)が2つの更なる成分の間のリンカーとして(例えば、2つのカチオン性ポリマーのリンカーとして)使用される場合には、アミノ酸成分(AA)は、ジスルフィド結合を介して2つの官能基を結合することを許容するために、例えば、式HS−(AA)−SHで表される形態で2つの−SH基(又はそれ以上)によって提供されてもよい。この場合、1つの−SH部分は、好ましくは最初の工程において当技術分野で既知の保護基を用いて保護され、式HS−(AA)−S−保護基のアミノ酸成分(AA)を導く。次いで、アミノ酸成分(AA)は、保護されていない−SH部分を介して第1のジスルフィド結合を形成するために、ポリマー担体の更なる成分に結合されてもよい。保護された−SH部分が、次いで、典型的に脱保護され、ポリマー担体の更なる成分の更なる遊離−SH部分に結合されて第2のジスルフィド結合を形成する。
【0106】
或いは、アミノ酸成分(AA)は、ポリマー担体の他の成分について既に上述した他の官能基に備えられていてもよく、これは、ポリマー担体の任意の成分へのアミノ酸成分(AA)の結合を許容する。
【0107】
よって、本発明によれば、アミノ酸成分(AA)は、ジスルフィド結合を用いて又は用いずに本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体の更なる成分に結合されてもよい。ジスルフィド結合を用いることのない結合は、上記のいずれかの反応によって、好ましくはアミノ酸成分(AA)を本明細書で定義するアミド化学を使用してポリマー担体の他の成分へと結合することによって行われてもよい。要望又は必要に応じて、アミノ酸成分(AA)の他方の末端、例えばN末端又はC末端は、他の成分、例えばリガンドLを連結するために使用されてもよい。この目的のために、アミノ酸成分(AA)の他の末端は、好ましくは、例えばクリック化学を介して他の成分を付加するために使用され得る例えばアルキン種(上記参照)等の更なる官能基を含むか又はそれを含むように修飾されている。リガンドが酸に不安定な結合を介して結合されている場合、該結合は好ましくはエンドソーム内で切断され、ポリマー担体がその表面にアミノ酸成分(AA)を提示する。
【0108】
アミノ酸成分(AA)は、例えば、全てが好ましくは本明細書で定義するカチオン性成分の間のリンカーとして、例えば、1つのカチオン性ペプチドと更なるカチオン性ペプチドとの間のリンカーとして、1つのカチオン性ポリマーと更なるカチオン性ポリマーとの間のリンカーとして、上記で定義する本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体の更なる成分として存在してもよく、又は、例えば、アミノ酸成分(AA)をポリマー担体又はその成分に例えば側鎖やSH部分を介して、又は本明細書で定義する更なる部分を介して結合することによる、ポリマー担体の追加の成分として存在してもよく、ここで、アミノ酸成分(AA)は、好ましくはそれに応じて修飾されている。
【0109】
更なる特に好ましい代替例によれば、アミノ酸成分(AA)は、ポリマー担体、特に上記で定義するポリマー担体中のカチオン性成分の含有量を修飾するために使用されてもよい。
【0110】
これに関連して、好ましくは、ポリマー担体中のカチオン性成分の含有量は、少なくとも10%、20%又は30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%又は70%であるが、少なくとも80%、90%、或いは更に95%、96%、97%、98%、99%又は100%もまた好ましく、最も好ましくは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%であり、又は、約30%〜100%の範囲であってもよく、より好ましくは約50%〜100%の範囲、更により好ましくは70%〜100%の範囲、例えば、70%、80%、90%又は100%、又は、任意の2種の前述の値によって形成される範囲である(但し、全アミノ酸の含有量を100%とする)。
【0111】
本発明に関連して、アミノ酸成分(AA)は、次の選択肢から選択され得る。
【0112】
第1の代替例によれば、アミノ酸成分(AA)は、芳香族アミノ酸成分(AA)であってもよい。芳香族アミノ酸、又はアミノ酸の芳香族酸成分(AA)としての配列の、本発明のポリマー担体への組込みは、ポリマー担体分子のカチオン性帯電配列によるそのリン酸骨格への結合とは対照的に、芳香族アミノ酸の核酸カーゴの塩基との相互作用による、ポリマー担体の核酸への異なる(第2の)結合を可能にする。この相互作用は、例えば、インターカレーションにより、又は副溝(minor groove)結合又は主溝(major groove)結合により生じ得る。この種の相互作用は、インビボの細胞外マトリックスにおいて主に見られるアニオン性複合体化パートナー(例えば、ヘパリン、ヒアルロン酸)によって脱圧密化する傾向はなく、また塩の影響も受けにくい。
【0113】
この目的のために、芳香族アミノ酸成分(AA)中のアミノ酸は、例えばTrp、Tyr、又はPheから選択される同一又は異なる芳香族アミノ酸から選択され得る。或いは、アミノ酸(又は全芳香族アミノ酸成分(AA))は、以下のペプチドの組合せTrp−Tyr、Tyr−Trp、Trp−Trp、Tyr−Tyr、Trp−Tyr−Trp、Tyr−Trp−Tyr、Trp−Trp−Trp、Tyr−Tyr−Tyr、Trp−Tyr−Trp−Tyr、Tyr−Trp−Tyr−Trp、Trp−Trp−Trp−Trp、Phe−Tyr、Tyr−Phe、Phe−Phe、Phe−Tyr−Phe、Tyr−Phe−Tyr、Phe−Phe−Phe、Phe−Tyr−Phe−Tyr、Tyr−Phe−Tyr−Phe、Phe−Phe−Phe−Phe、Phe−Trp、Trp−Phe、Phe−Phe、Phe−Trp−Phe、Trp−Phe−Trp、Phe−Trp−Phe−Trp、Trp−Phe−Trp−Phe、又はTyr−Tyr−Tyr−Tyr等(配列番号:15〜42)から選択され得る。そのようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれ以上の回数繰り返してもよい。これらのペプチドの組合せはまた、適切に互いに組み合わせてもよい。
【0114】
加えて、芳香族アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含んでもよく、又は−SH含有部分が隣接して配置されてもよく、これが、ジスルフィド結合を介して、この成分を上記で定義するポリマー担体の更なる部分、例えばリンカーとして導入するこを許容する。そのような−SH含有部分は、本明細書で定義する1つの成分を本明細書で定義する更なる成分に連結するのに好適な、本明細書で定義する任意の部分であってもよい。一例として、そのような−SH含有部分は、システインであってもよい。そして、例えば、芳香族アミノ酸成分(AA)は、例えばペプチドの組合せCys−Tyr−Cys、Cys−Trp−Cys、Cys−Trp−Tyr−Cys、Cys−Tyr−Trp−Cys、Cys−Trp−Trp−Cys、Cys−Tyr−Tyr−Cys、Cys−Trp−Tyr−Trp−Cys、Cys−Tyr−Trp−Tyr−Cys、Cys−Trp−Trp−Trp−Cys、Cys−Tyr−Tyr−Tyr−Cys、Cys−Trp−Tyr−Trp−Tyr−Cys、Cys−Tyr−Trp−Tyr−Trp−Cys、Cys−Trp−Trp−Trp−Trp−Cys、Cys−Tyr−Tyr−Tyr−Tyr−Cys、Cys−Phe−Cys、Cys−Phe−Tyr−Cys、Cys−Tyr−Phe−Cys、Cys−Phe−Phe−Cys、Cys−Tyr−Tyr−Cys、Cys−Phe−Tyr−Phe−Cys、Cys−Tyr−Phe−Tyr−Cys、Cys−Phe−Phe−Phe−Cys、Cys−Tyr−Tyr−Tyr−Cys、Cys−Phe−Tyr−Phe−Tyr−Cys、Cys−Tyr−Phe−Tyr−Phe−Cys、又はCys−Phe−Phe−Phe−Phe−Cys、Cys−Phe−Trp−Cys、Cys−Trp−Phe−Cys、Cys−Phe−Phe−Cys、Cys−Phe−Trp−Phe−Cys、Cys−Trp−Phe−Trp−Cys、Cys−Phe−Trp−Phe−Trp−Cys、Cys−Trp−Phe−Trp−Phe−Cys等から選択され得る。上記の各Cysはまた、本明細書で定義する遊離−SH部分を担持する任意の修飾されたペプチド又は化合物によって置き換えられてもよい(配列番号:43〜75)。そのようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれ以上の回数繰り返してもよい。これらのペプチドの組合せはまた、適切に互いに組み合わせてもよい。
【0115】
加えて、芳香族アミノ酸成分(AA)は、芳香族アミノ酸成分(AA)中のTrp、Tyr及びPheの長い配列の構造ブレーカーとして機能し得る、少なくとも1つのプロリン、好ましくは2つ、3つ又はそれを超えるプロリンを含むか、又は表してもよい。
【0116】
第2の代替例によれば、アミノ酸成分(AA)は、親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸成分(AA)であってもよい。親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸、又はアミノ親水性(及び好ましくは非荷電極性)酸成分(AA)としての配列の、本発明のポリマー担体への組込みは、核酸カーゴへのより柔軟性のある結合を可能にする。これは、核酸カーゴのより効果的な圧密化をもたらし、よってヌクレアーゼ及び望まれない脱圧密化に対するより良好な保護をもたらす。それはまた、要望又は必要に応じて、全担体を通して減少したカチオン電荷を示する(長い)ポリマー担体の提供を許容し、これに関連して調節された結合特性を向上させる。
【0117】
この目的のために、親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸成分(AA)中のアミノ酸は、例えばThr、Ser、Asn又はGlnから選択される同一又は異なる親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸から選択され得る。或いは、アミノ酸(又は全親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸(AA))は、以下のペプチドの組合せSer−Thr、Thr−Ser、Ser−Ser、Thr−Thr、Ser−Thr−Ser、Thr−Ser−Thr、Ser−Ser−Ser、Thr−Thr−Thr、Ser−Thr−Ser−Thr、Thr−Ser−Thr−Ser、Ser−Ser−Ser−Ser、Thr−Thr−Thr−Thr、Gln−Asn、Asn−Gln、Gln−Gln、Asn−Asn、Gln−Asn−Gln、Asn−Gln−Asn、Gln−Gln−Gln、Asn−Asn−Asn、Gln−Asn−Gln−Asn、Asn−Gln−Asn−Gln、Gln−Gln−Gln−Gln、Asn−Asn−Asn−Asn、Ser−Asn、Asn−Ser、Ser−Ser、Asn−Asn、Ser−Asn−Ser、Asn−Ser−Asn、Ser−Ser−Ser、Asn−Asn−Asn、Ser−Asn−Ser−Asn、Asn−Ser−Asn−Ser、Ser−Ser−Ser−Ser、又はAsn−Asn−Asn−Asn等(配列番号:76〜111)から選択され得る。そのようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれ以上の回数繰り返してもよい。これらのペプチドの組合せはまた、適切に互いに組み合わせてもよい。
【0118】
加えて、親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含んでもよく、又は−SH含有部分が隣接して配置されてもよく、これが、ジスルフィド結合を介して、この成分を上記で定義するポリマー担体の更なる部分、例えばリンカーとして導入するこを許容する。そのような−SH含有部分は、本明細書で定義する1つの成分を本明細書で定義する更なる成分に連結するのに好適な、本明細書で定義する任意の部分であってもよい。一例として、そのような−SH含有部分は、システインであってもよい。そして、例えば、親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸成分(AA)は、例えばペプチドの組合せCys−Thr−Cys、Cys−Ser−Cys、Cys−Ser−Thr−Cys、Cys−Thr−Ser−Cys、Cys−Ser−Ser−Cys、Cys−Thr−Thr−Cys、Cys−Ser−Thr−Ser−Cys、Cys−Thr−Ser−Thr−Cys、Cys−Ser−Ser−Ser−Cys、Cys−Thr−Thr−Thr−Cys、Cys−Ser−Thr−Ser−Thr−Cys、Cys−Thr−Ser−Thr−Ser−Cys、Cys−Ser−Ser−Ser−Ser−Cys、Cys−Thr−Thr−Thr−Thr−Cys、Cys−Asn−Cys、Cys−Gln−Cys、Cys−Gln−Asn−Cys、Cys−Asn−Gln−Cys、Cys−Gln−Gln−Cys、Cys−Asn−Asn−Cys、Cys−Gln−Asn−Gln−Cys、Cys−Asn−Gln−Asn−Cys、Cys−Gln−Gln−Gln−Cys、Cys−Asn−Asn−Asn−Cys、Cys−Gln−Asn−Gln−Asn−Cys、Cys−Asn−Gln−Asn−Gln−Cys、Cys−Gln−Gln−Gln−Gln−Cys、Cys−Asn−Asn−Asn−Asn−Cys、Cys−Asn−Cys、Cys−Ser−Cys、Cys−Ser−Asn−Cys、Cys−Asn−Ser−Cys、Cys−Ser−Ser−Cys、Cys−Asn−Asn−Cys、Cys−Ser−Asn−Ser−Cys、Cys−Asn−Ser−Asn−Cys、Cys−Ser−Ser−Ser−Cys、Cys−Asn−Asn−Asn−Cys、Cys−Ser−Asn−Ser−Asn−Cys、Cys−Asn−Ser−Asn−Ser−Cys、Cys−Ser−Ser−Ser−Ser−Cys、又はCys−Asn−Asn−Asn−Asn−Cys等から選択され得る。上記の各Cysはまた、本明細書で定義する遊離−SH部分を担持する任意の修飾されたペプチド又は化合物によって置き換えられてもよい。(配列番号:112〜153)そのようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15又はそれ以上の回数繰り返してもよい。これらのペプチドの組合せはまた、適切に互いに組み合わせてもよい。
【0119】
加えて、親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸成分(AA)は、親水性(及び好ましくは非荷電極性)アミノ酸成分(AA)中のSer、Thr及びAsnの長い配列の構造ブレーカーとして機能し得る、少なくとも1つのプロリン、好ましくは2つ、3つ又はそれを超えるプロリンを含んでもよい。
【0120】
第3の代替例によれば、アミノ酸成分(AA)は、親油性アミノ酸成分(AA)であってもよい。親油性アミノ酸、又はアミノ親油性酸成分(AA)としての配列の、本発明のポリマー担体への組込みは、複合体を形成する際の核酸カーゴ及びポリマー担体の少なくともいずれか、及びその核酸カーゴのより強い圧密化を可能にする。これは、特にポリマー担体の1以上のポリマー鎖、特に親油性アミノ酸成分(AA)及び核酸カーゴの親油性部分の相互作用に起因する。この相互作用は、好ましくは、ポリマー担体とその核酸カーゴとの間の複合体に付加的な安定性を追加する。この安定化は、異なるポリマー鎖の間の一種の非共有結合とは何等かの形で比較され得る。特に水性環境では、この相互作用は典型的に強く、顕著な効果を提供する。
【0121】
この目的のために、親油性アミノ酸成分(AA)中のアミノ酸は、例えばLeu、Val、Ile、Ala、及びMetから選択される同一又は異なる親油性アミノ酸から選択され得る。或いは、アミノ酸(又は全親油性アミノ酸成分(AA))は、以下のペプチドの組合せLeu−Val、Val−Leu、Leu−Leu、Val−Val、Leu−Val−Leu、Val−Leu−Val、Leu−Leu−Leu、Val−Val−Val、Leu−Val−Leu−Val、Val−Leu−Val−Leu、Leu−Leu−Leu−Leu、Val−Val−Val−Val、Ile−Ala、Ala−Ile、Ile−Ile、Ala−Ala、Ile−Ala−Ile、Ala−Ile−Ala、Ile−Ile−Ile、Ala−Ala−Ala、Ile−Ala−Ile−Ala、Ala−Ile−Ala−Ile、Ile−Ile−Ile−Ile、Ala−Ala−Ala−Ala、Met−Ala、Ala−Met、Met−Met、Ala−Ala、Met−Ala−Met、Ala−Met−Ala、Met−Met−Met、Ala−Ala−Ala、Met−Ala−Met−Ala、Ala−Met−Ala−Met、又はMet−Met−Met−Met等(配列番号:154〜188)から選択され得る。そのようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15又はそれ以上の回数繰り返してもよい。これらのペプチドの組合せはまた、適切に互いに組み合わせてもよい。
【0122】
加えて、親油性アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含んでもよく、又は−SH含有部分が隣接して配置されてもよく、これが、ジスルフィド結合を介して、この成分を上記で定義するポリマー担体の更なる部分、例えばリンカーとして導入するこを許容する。そのような−SH含有部分は、本明細書で定義する1つの成分を本明細書で定義する更なる成分に連結するのに好適な、本明細書で定義する任意の部分であってもよい。一例として、そのような−SH含有部分は、システインであってもよい。そして、例えば、親油性アミノ酸成分(AA)は、例えばペプチドの組合せCys−Val−Cys、Cys−Leu−Cys、Cys−Leu−Val−Cys、Cys−Val−Leu−Cys、Cys−Leu−Leu−Cys、Cys−Val−Val−Cys、Cys−Leu−Val−Leu−Cys、Cys−Val−Leu−Val−Cys、Cys−Leu−Leu−Leu−Cys、Cys−Val−Val−Val−Cys、Cys−Leu−Val−Leu−Val−Cys、Cys−Val−Leu−Val−Leu−Cys、Cys−Leu−Leu−Leu−Leu−Cys、Cys−Val−Val−Val−Val−Cys、Cys−Ala−Cys、Cys−Ile−Cys、Cys−Ile−Ala−Cys、Cys−Ala−Ile−Cys、Cys−Ile−Ile−Cys、Cys−Ala−Ala−Cys、Cys−Ile−Ala−Ile−Cys、Cys−Ala−Ile−Ala−Cys、Cys−Ile−Ile−Ile−Cys、Cys−Ala−Ala−Ala−Cys、Cys−Ile−Ala−Ile−Ala−Cys、Cys−Ala−Ile−Ala−Ile−Cys、Cys−Ile−Ile−Ile−Ile−Cys、又はCys−Ala−Ala−Ala−Ala−Cys、Cys−Met−Cys、Cys−Met−Ala−Cys、Cys−Ala−Met−Cys、Cys−Met−Met−Cys、Cys−Ala−Ala−Cys、Cys−Met−Ala−Met−Cys、Cys−Ala−Met−Ala−Cys、Cys−Met−Met−Met−Cys、Cys−Ala−Ala−Ala−Cys、Cys−Met−Ala−Met−Ala−Cys、Cys−Ala−Met−Ala−Met−Cys、Cys−Met−Met−Met−Met−Cys、又はCys−Ala−Ala−Ala−Ala−Cys等から選択され得る。上記の各Cysはまた、本明細書で定義する遊離−SH部分を担持する任意の修飾されたペプチド又は化合物によって置き換えられてもよい(配列番号:189〜229)。そのようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15又はそれ以上の回数繰り返してもよい。これらのペプチドの組合せはまた、適切に互いに組み合わせてもよい。
【0123】
加えて、親油性アミノ酸成分(AA)は、親油性アミノ酸成分(AA)中のLeu、Val、Ile、Ala及びMetの長い配列の構造ブレーカーとして機能し得る、少なくとも1つのプロリン、好ましくは2つ、3つ又はそれを超えるプロリンを含んでもよい。
【0124】
最後に、第4の代替例によれば、アミノ酸成分(AA)は、弱塩基性アミノ酸成分(AA)であってもよい。弱塩基性アミノ酸、又は弱塩基性アミノ酸成分(AA)としての配列の、本発明のポリマー担体への組込みは、プロトンスポンジとして機能し、エンドソームエスケープ(エンドソーム放出とも呼ばれる)を促進し得る(プロトンスポンジ効果)。そのような弱塩基性アミノ酸成分(AA)の取込みは、好ましくはトランスフェクション効率を向上させる。
【0125】
この目的のために、弱塩基性アミノ酸成分(AA)中のアミノ酸は、例えばヒスチジン又はアスパラギン酸塩(アスパラギン酸)から選択される同一又は異なる弱いアミノ酸から選択され得る。或いは、弱塩基性アミノ酸(又は全弱塩基性アミノ酸成分(AA))は、以下のペプチドの組合せAsp−His、His−Asp、Asp−Asp、His−His、Asp−His−Asp、His−Asp−His、Asp−Asp−Asp、His−His−His、Asp−His−Asp−His、His−Asp−His−Asp、Asp−Asp−Asp−Asp、又はHis−His−His−His等(配列番号:230〜241)から選択され得る。そのようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15又はそれ以上の回数繰り返してもよい。これらのペプチドの組合せはまた、適切に互いに組み合わせてもよい。
【0126】
加えて、弱塩基性アミノ酸成分(AA)は、−SH含有部分を含んでもよく、又は−SH含有部分が隣接して配置されてもよく、これが、ジスルフィド結合を介して、この成分を上記で定義するポリマー担体の更なる部分、例えばリンカーとして導入するこを許容する。そのような−SH含有部分は、本明細書で定義する1つの成分を本明細書で定義する更なる成分に連結するのに好適な、本明細書で定義する任意の部分であってもよい。一例として、そのような−SH含有部分は、システインであってもよい。そして、例えば、弱塩基性アミノ酸成分(AA)は、例えばペプチドの組合せCys−His−Cys、Cys−Asp−Cys、Cys−Asp−His−Cys、Cys−His−Asp−Cys、Cys−Asp−Asp−Cys、Cys−His−His−Cys、Cys−Asp−His−Asp−Cys、Cys−His−Asp−His−Cys、Cys−Asp−Asp−Asp−Cys、Cys−His−His−His−Cys、Cys−Asp−His−Asp−His−Cys、Cys−His−Asp−His−Asp−Cys、Cys−Asp−Asp−Asp−Asp−Cys、又はCys−His−His−His−His−Cys等から選択され得る。上記の各Cysはまた、本明細書で定義する遊離−SH部分を担持する任意の修飾されたペプチド又は化合物によって置き換えられてもよい(配列番号:242〜255)。そのようなペプチドの組合せは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15又はそれ以上の回数繰り返してもよい。これらのペプチドの組合せはまた、適切に互いに組み合わせてもよい。
【0127】
加えて、弱塩基性アミノ酸成分(AA)は、弱塩基性アミノ酸成分(AA)中のヒスチジン又はアスパラギン酸塩(アスパラギン酸)の長い配列の構造ブレーカーとして機能し得る、少なくとも1つのプロリン、好ましくは2つ、3つ又はそれを超えるプロリンを含んでいてもよい。
【0128】
第5の代替例によれば、アミノ酸成分(AA)は、シグナルペプチド又はシグナル配列、局在化シグナル又は局在化配列、核局在化シグナル又は核局在化配列(NLS)、抗体、細胞透過性ペプチド(例えば、TAT)等であってもよい。好ましくは、そのようなアミノ酸成分(AA)は、ポリマー担体又はポリマー担体の別の成分に(可逆の)ジスルフィド結合を介して結合している。これに関連して、シグナルペプチド又はシグナル配列、局在化シグナル又は局在化配列、核局在化シグナル又は核局在化配列(NLS)、抗体、細胞透過性ペプチド(例えば、TAT)等は、加えて少なくとも1つの−SH部分を含む。これに関連して、シグナルペプチド、局在化シグナル又は局在化配列、又は核局在シグナル又は核局在化配列(NLS)は、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を特定の標的細胞(例えば、幹細胞又は抗原提示細胞)へと導くために使用され得る、好ましくは、特定の標的への、例えば細胞への、核への、エンドソーム区画へのポリマー担体の輸送局在化を許容する、ミトコンドリアのマトリックスへの配列、細胞膜への局在化配列、ゴルジ装置、核、細胞質及び細胞骨格等への局在化配列である。そのようなシグナルペプチド、局在化シグナル又は局在化配列、又は核局在化シグナルは、任意の本明細書で定義する核酸、好ましくはRNA又はDNA、より好ましくはshRNA又はpDNAの例えば核への輸送のために使用され得る。これらに限定されないが、そのようなシグナルペプチド、局在化シグナル又は局在化配列、又は核局在化シグナルは、例えば、小胞体への局在化配列を含み得る。特定の局在化シグナル又は局在化配列、又は核酸局在化シグナルとしては、例えば、KDEL(配列番号:256)、DDEL(配列番号:257)、DEEL(配列番号:258)、QEDL(配列番号:259)、RDEL(配列番号:260)及びGQNLSTSN(配列番号:261)、PKKKRKV(配列番号:262)、PQKKIKS(配列番号:263)、QPKKP(配列番号:264)、RKKR(配列番号:265)、RKKRRQRRRAHQ(配列番号:266)、RQARRNRRRRWRERQR(配列番号:267)、MPLTRRRPAASQALAPPTP(配列番号:268)、GAALTILV(配列番号:269)及びGAALTLLG(配列番号:270)を含む核局在化配列、MDDQRDLISNNEQLP(配列番号:271)を含むエンドソーム区画への局在化配列、MLFNLRXXLNNAAFRHGHNFMVRNFRCGQPLX(配列番号:272)を含むミトコンドリアのマトリックスへの局在化配列、GCVCSSNP(配列番号:273)、GQTVTTPL(配列番号:274)、GQELSQHE(配列番号:275)、GNSPSYNP(配列番号:276)、GVSGSKGQ(配列番号:277)、GQTITTPL(配列番号:278)、GQTLTTPL(配列番号:279)、GQIFSRSA(配列番号:280)、GQIHGLSP(配列番号:281)、GARASVLS(配列番号:282)及びGCTLSAEE(配列番号:283)等の細胞膜への局在化配列、GAQVSSQK(配列番号:284)及びGAQLSRNT(配列番号:285)を含む小胞体及び核への局在化配列、GNAAAAKK(配列番号:286)を含むゴルジ装置、核、細胞質及び細胞骨格への局在化配列、GNEASYPL(配列番号:287)を含む細胞質及び細胞骨格への局在化配列、及びGSSKSKPK(配列番号:288)を含む細胞膜及び細胞骨格への局在化配列等が挙げられ得る。本明細書で定義する分泌シグナルペプチド配列の例としては、これらに限定はされないが、古典MHC分子又は非古典MHC分子(例えば、MHC I分子及びMHC II分子のシグナル配列、例えばMHCクラスI分子HLA−A0201のシグナル配列)、本明細書で定義するサイトカイン又は免疫グロブリンのシグナル配列、本明細書で定義する免疫グロブリン又は抗体の不変鎖のシグナル配列、Lamp1、タパシン(Tapasin)、Erp57、カルレティキュリン、カルネキシン、及び更なる膜結合タンパク質のシグナル配列、又は小胞体(ER)又はエンドソーム−リソソーム区画に関連するタンパク質のシグナル配列が挙げられる。特に好ましくは、MHCクラスI分子HLA−A0201のシグナル配列が本発明に係り使用され得る。そのような付加的な成分は、例えば、本明細書で定義するカチオン性ポリマー又はポリマー担体の任意の他の成分に結合されてもよい。好ましくは、このシグナルペプチド、局在化シグナル又は局在化配列、又は核局在シグナル又は核局在化配列(NLS)は、ポリマー担体又はポリマー担体の他の成分に(可逆の)ジスルフィド結合を介して結合される。この目的のために、(AA)成分は、本明細書で定義する少なくとも1つの−SH部分を付加的に含む。ポリマー担体のいずれかの成分への結合はまた、酸に不安定な結合を用いて、好ましくは、低いpH値、例えば本明細書で定義する生理学的pH値において付加的な成分の切断又は放出を許容するポリマー担体の成分の任意の側鎖を介して行われてもよい。
【0129】
加えて、別の代替例によれば、アミノ酸成分(AA)は、それに応じてポリマー担体の機能を調節し得る機能性ペプチド又は機能性タンパク質であってもよい。アミノ酸成分(AA)としてのそのような機能性ペプチド又は機能性タンパク質は、好ましくは、例えば治療効果のあるタンパク質として以下で定義するような本明細書で定義する任意のペプチド又はタンパク質を含んでいてもよい。1つの代替例によれば、そのような更なる機能性ペプチド又は機能性タンパク質は、輸送のための所謂細胞透過性ペプチド(CPP)又はカチオン性ペプチドを含んでいてもよい。特に好ましいのは、エンドソーム内のpH介在の構造変化を誘導し、リポソームの脂質層に挿入することによりエンドソームからポリマー担体(核酸との複合体)の改善された放出をもたらすCPPである。輸送のためのこれらの細胞透過性ペプチド(CPP)又はカチオン性ペプチドとしては、これらに限定はされないが、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン又はスペルミジン、オリゴ−又はポリ−L−リジン(PLL)、塩基性ポリペプチド、オリゴ又はポリアルギニン、細胞透過性ペプチド(CPP)、トランスポータン又はMPGペプチド等のキメラCPP、HIV結合ペプチド、Tat、HIV−1 Tat (HIV)、Tat由来ペプチド、例えばペネトラチン、アンテナペディア由来ペプチド(特にショウジョウバエアンテナペディア由来)、pAntp及びpIsl等のペネトラチンファミリーのメンバー、並びに、例えばブフォリン2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、MAP、KALA、PpTG20、ロリゴマー、FGF、ラクトフェリン、ヒストン、VP22由来又は類似のペプチド、ペストウイルスのErns、HSV、VP22(単純ヘルペス)、MAP、KALA又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリンに富むペプチド、アルギニンに富むペプチド、リジンに富むペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、及びカルシトニンペプチド等の抗菌剤由来のCPPが挙げられ得る。そのようなアミノ酸成分(AA)はまた、本明細書で定義する任意のポリマー担体に結合していてもよい。好ましくは、それは、(可逆の)ジスルフィド結合を介してポリマー担体又はポリマー担体の別の成分に結合している。上記の目的のために、アミノ酸成分(AA)は、好ましくは少なくとも1つの本明細書で定義する−SH部分を含む。ポリマー担体のいずれかの成分への結合はまた、SH部分又は酸に不安定な結合を用いて、好ましくは、低いpH値、例えば本明細書で定義する生理学的pH値において付加的な成分を切断又は放出することを許容するポリマー担体の成分の任意の側鎖を介して行われてもよい。
【0130】
最後の代替例によれば、アミノ酸成分(AA)は、細胞内の任意の有益な機能を実行することが可能な任意のペプチド又はタンパク質からなっていてもよい。特に好ましいものは、例えば、腫瘍抗原、病原性抗原(動物抗原、ウイルス抗原、原生動物抗原、細菌抗原、アレルギー性抗原)、自己免疫抗原、又はアレルゲン由来、抗体由来、免疫刺激性のタンパク質又はペプチド由来、抗原特異的T細胞受容体由来、又はコードする核酸のための以下に定義する特定の(治療)用途に適した任意の他のタンパク質又はペプチド由来の更なる抗原等の抗原由来の治療効果のあるタンパク質又はペプチドから選択されるペプチド又はタンパク質である。特に好ましいのは、本明細書で定義する抗原由来のペプチドエピトープである。
【0131】
本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得るポリマー担体は、上述のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、又は例えば(AA)等の更なる成分の少なくとも1つを含んでいてもよく、ここで、上記のいずれの代替物は、互いに組み合わせてもよく、またそれらの−SH部分を介した縮重合反応でそれらを重合することによって形成されてもよい。
【0132】
別の態様では、本発明のワクチン又はその単一成分の少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得る、例えば、上述のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又は更なる成分、例えば(AA)のポリマー担体は、更に、リガンド、好ましくは炭水化物、より好ましくは糖、更により好ましくはマンノースで修飾されていてもよい。好ましくは、このリガンドは、(可逆の)ジスルフィド結合を介して、又はマイケル付加を介して、ポリマー担体又はポリマー担体の成分に結合している。リガンドがジスルフィド結合によって結合されている場合には、リガンドは、更に少なくとも1つの−SH−部分を含む。これらのリガンドは、本発明のポリマー担体カーゴ複合体を特定の標的細胞(例えば、肝細胞又は抗原提示細胞)へと導くために使用され得る。これに関連して、樹状細胞が特にワクチン接種又はアジュバント目的の標的である場合には、マンノースが特にリガンドとして好ましい。
【0133】
1つの特定の態様によれば、本発明のポリマー担体全体は、第1段階における、(少なくとも1つの)上述のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、或いは更なる成分、例えば(AA)の、それらの−SH部分を介した縮重合、及び第2段階での核酸のそのようなポリマー担体への複合体化によって形成される。ポリマー担体は、このように、多数の少なくとも1つ又はそれ以上の同一又は異なる上記で定義するカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、或いは更なる成分、例えば(AA)を含んでいてもよく、その数は、好ましくは上記の範囲に決定される。
【0134】
1つの代替的な特定の態様では、本発明のワクチンの少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用され得る本発明のポリマー担体は、それらの−SH部分を介して少なくとも1つの上述のカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、或いは更なる成分、例えば(AA)を縮重合させ、同時に少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのmRNAを(その場で作製された)ポリマー担体に複合体化させることによって形成される。同様に、ポリマー担体は、このようにして、ここで少なくとも1つ又はそれ以上の同一又は異なる上記で定義するカチオン性又はポリカチオン性のペプチド、タンパク質又はポリマー、或いは更なる成分、例えば(AA)を含んでいてもよく、その数は、好ましくは上記の範囲に決定される。
【0135】
更なる代替的な態様によれば、本発明のポリマー担体は、以下一般式(VI)のポリマー担体分子から選択されてもよい。
【0136】
L−P−S−[S−P−S]−S−P−L 式(VI)
ここで、P及びPは、互いに異なるか又は同一であり、直鎖状又は分枝状の親水性ポリマー鎖を表し、各々のP及びPは、成分Pとの縮合により、或いは、(AA)、(AA)又は[(AA)(そのような成分がP及びP又はP及びPの間のリンカーとして使用される場合)、及び更なる成分(例えば、(AA)、(AA)、[(AA)又はL)の少なくともいずれかとの縮合によりジスルフィド結合を形成可能な、少なくとも1つの−SH部分を提示し、前記直鎖状又は分枝状の親水性ポリマー鎖は、互いに独立して、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ−N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン、ポリ(ヒドロキシアルキルL−アスパラギン)、ポリ(2−(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン)、ヒドロキシエチルデンプン、又はポリ(ヒドロキシアルキルL−グルタミン)から選択され、ここで、前記親水性ポリマー鎖は、約1kDa〜約100kDa、好ましくは約2kDa〜約25kDa、より好ましくは約2kDa〜約10kDa、例えば約5kDa〜約25kDa又は5kDa〜約10kDaの分子量を示し、
は、例えば本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質、であり、好ましくは約3〜100アミノ酸長を有し、より好ましくは約3〜約50アミノ酸長を有し、更により好ましくは約3〜約25アミノ酸長、例えば約3〜10アミノ酸長、5〜15アミノ酸長、10〜20アミノ酸長又は15〜25アミノ酸長、より好ましくは約5〜20アミノ酸長、及び更により好ましくは約10〜約20アミノ酸長を有するか、又は、
は、典型的には、約1kDa〜約20kDa、更に好ましくは約1.5kDa〜約10kDaの分子量を含む約0.5kDa〜約30kDaの分子量を有するか、又は、約10kDa〜約50kDa、更に好ましくは約10kDa〜約30kDaの分子量を含む約0.5kDa〜約100kDaの分子量を有する、例えば本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性のポリマーであり、各Pは、更なる成分P、又は成分P及び成分Pの少なくともいずれかと、或いは代替的に更なる成分(例えば、(AA)、(AA)、又は[(AA))との縮合によりジスルフィド結合を形成可能な少なくとも2つの−SH部分を提示し、
−S−S−は、(可逆の)ジスルフィド結合(読み易くするために括弧は省略されている)であり、ここで、Sは、好ましくは、硫黄、又は(可逆の)ジスルフィド結合を形成した−SH担持部分を表す。前記(可逆の)ジスルフィド結合は、好ましくは、成分P及びP、P及びP、又はP及びP、或いは任意的に本明細書で定義する更なる成分(例えば、L、(AA)、(AA)、[(AA)等)のいずれかの−SH部分の縮合により形成され、前記−SH部分は、これらの成分の構造の一部であるか、又は以下で定義する修飾によって付加されてもよく、
Lは、存在してもしなくてもよい任意的なリガンドであり、互いに独立して、RGD、トランスフェリン、葉酸、シグナルペプチド又はシグナル配列、局在化シグナル又は局在化配列、核酸局在化シグナル又は核酸局在化配列(NLS)、抗体、細胞透過性ペプチド(例えば、TAT、又はKALA)、受容体のリガンド(例えば、サイトカイン、ホルモン、成長因子等)、小分子(例えば、マンノース、ガラクトース、又は合成リガンド等の炭水化物)、小分子アゴニスト、受容体の阻害剤又はアンタゴニスト(例えば、RGDペプチド模倣薬類似体)等から選択され、
nは、典型的には、例えば、約4〜9、4〜10、3〜20、4〜20、5〜20又は10〜20の範囲、約3〜15、4〜15又は10〜15の範囲、或いは約6〜11又は7〜10の範囲をを含む、約1〜50の範囲、好ましくは約1、2又は3〜30の範囲、より好ましくは約1、2、3、4又は5〜25の範囲、約1、2、3、4又は5〜20の範囲、約1、2、3、4又は5〜15の範囲、又は約1、2、3、4又は5〜10の範囲から選択される整数である。最も好ましくは、nは、約1、2、3、4又は5〜10の範囲、より好ましくは約1、2、3又は4〜9の範囲、約1、2、3又は4〜8の範囲、又は約1、2又は3〜7の範囲である。
【0137】
上記で定義するように、リガンド(L)は、一般式(VI)の本発明のポリマー担体分子において、例えば、本発明の担体ポリマー及びその全ての「カーゴ」(本発明のアジュバント成分及び抗原の少なくともいずれか、又はワクチン組成物)の特定の細胞への方向付けのために任意的に使用されてもよい。それらは、互いに独立して、RGD、トランスフェリン、葉酸、シグナルペプチド又はシグナル配列、局在化シグナル又は局在化配列、核酸局在化シグナル又は核酸局在化配列(NLS)、抗体、細胞透過性ペプチド(CPP)(例えば、TAT、KALA)、受容体のリガンド(例えば、サイトカイン、ホルモン、成長因子等)、小分子(例えば、マンノース、ガラクトース、又は合成リガンド等の炭水化物)、小分子アゴニスト、受容体の阻害剤又はアンタゴニスト(例えば、RGDペプチド模倣薬類似体)、又は以下に更に定義するような分子等から選択され得る。特に好ましいのは、エンドソーム内のpH介在の構造変化を誘導し、リポソームの脂質層に挿入することによりエンドソームから本発明のポリマー担体(核酸との複合体)の改善された放出をもたらす細胞透過性ペプチド(CPP)である。輸送のための所謂CPP又はカチオン性ペプチドとしては、これらに限定はされないが、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン又はスペルミジン、ポリ−L−リジン(PLL)、塩基性ポリペプチド、ポリアルギニン、細胞透過性ペプチド(CPP)、トランスポータン又はMPGペプチド等のキメラCPP、HIV結合ペプチド、Tat、HIV−1 Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、オリゴアルギニン、例えばペネトラチン、アンテナペディア由来ペプチド(特にショウジョウバエアンテナペディア由来)、pAntp及びpIsl等のペネトラチンファミリーのメンバー、並びに、例えばブフォリン2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、MAP、PpTG20、プロリンに富むペプチド、ロリゴマー、アルギニンに富むペプチド、カルシトニンペプチド、FGF、ラクトフェリン、ポリ−L−リジン、ポリアルギニン、ヒストン、VP22由来又は類似のペプチド、ペストウイルスのErns、HSV、VP22(単純ヘルペス)、MAP、KALA又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリンに富むペプチド、アルギニンに富むペプチド、リジンに富むペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、及びカルシトニンペプチド等の抗菌剤由来のCPPが挙げられ得る。これに関連して特に好ましいのは、マンノース受容体をそれらの細胞膜上に担持する抗原提示細胞を標的とする、リガンドとしてのマンノースである。本発明の第1の実施形態の更なる好ましい態様では、肝細胞を標的とするために任意のリガンドとしてのガラクトースを使用することができる。そのようなリガンドは、以下に定義するような可逆のジスルフィド結合により、又は他の可能な化学的付加、例えばアミド形成(例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミン等)より、マイケル付加(例えば、マレインイミド部分、α,β不飽和カルボニル等)により、クリック化学(例えば、アジド又はアルキン)により、イミン又はヒドラゾン形成(アルデヒド又はケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アミン)、複合体形成反応(アビジン、ビオチン、プロテインG)、又はS型置換反応を許容する化合物(例えば、ハロゲン化アルカン、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩)又は更なる成分の連結に利用できる他の化学的部分により、成分P及び成分Pの少なくともいずれかに取り付けられてもよい。
【0138】
本発明の式(VI)に関連して、P及びPは、少なくとも1つの−SH部分を含む直鎖状又は分枝状の親水性ポリマー鎖を表し、各々のP及びPは、互いに独立して、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ−N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン、ポリ(ヒドロキシアルキルL−アスパラギン)、又はポリ(ヒドロキシアルキルL−グルタミン)から選択される。P及びPは、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、各々の親水性ポリマーP及びPは、約1kDa〜約100kDa、好ましくは約1kDa〜約75kDa、より好ましくは約5kDa〜約50kDa、更により好ましくは約5kDa〜約25kDaの分子量を示す。加えて、各々の親水性ポリマーP及びPは、典型的には、少なくとも1つの−SH部分を含み、ここで、任意的に例えばL、及び(AA)又は(AA)の少なくともいずれか等の更なる成分とともに、以下に定義するようなP及びP、又はP及びPの間のリンカーとして使用される場合には、例えば、2つ以上の−SH部分が含まれている場合には、前記少なくとも1つの−SH部分は、成分P、又は成分(AA)又は成分(AA)との反応によってジスルフィド結合を形成可能である。S、P及びPのいずれかは本明細書で定義するものである、上記一般式(VI)中の以下の下位式「P−S−S−P」及び「P−S−S−P」(読み易くするために括弧は省略されている)は、典型的には、親水性ポリマーP及びPの1つの−SH部分が、上記一般式(VI)の成分Pの1つの−SH部分と縮合し、両方の−SH部分の硫黄が式(VI)中に定義するジスルフィド結合−S−S−を形成する場合を表している。これらの−SH部分は、典型的には、例えば、内部システイン、又は−SH部分を担持する任意の更なる(修飾)アミノ酸又はアミノ化合物を介して、各々の親水性ポリマーP及びPによって提供される。従って、下位式「P−S−S−P」及び「P−S−S−P」はまた、−SH部分がシステインによって提供される場合には、「P−Cys−Cys−P」及び「P−Cys−Cys−P」として記載されてもよく、ここで、Cys−Cysの表現は、ペプチド結合ではなくジスルフィド結合を介して連結された2つのシステインを表す。この場合、これらの式における「−S−S−」の表現はまた、「−S−Cys」、「−Cys−S」又は「−Cys−Cys−」として記載されてもよい。これに関連して、「−Cys−Cys−」の表現は、ペプチド結合ではなく、それらの−SH部分を介してジスルフィド結合を形成する2つのシステインの結合を表す。従って、「−Cys−Cys−」の表現はまた、一般的に「−(Cys−S)−(S−Cys)−」として理解されてもよく、ここで、特定の場合には、Sはシステインの−SH部分の硫黄を指す。同様に、「−S−Cys」及び「−Cys−S」の表現は、−SH含有部分とシステインとの間のジスルフィド結合を指し、これらは、「−S−(S−Cys)」及び「−(Cys−S)−S」として記載されてもよい。或いは、親水性ポリマーP及びPは、各々の親水性ポリマーP及びPが少なくとも1つのそのような−SH部分を担持するように、好ましくは、−SH部分を担持する化合物との化学反応を介して、−SH部分で修飾されていてもよい。そのような−SH部分を担持する化合物は、例えば、(付加的な)システイン、又は−SH部分を担持する任意の更なる(修飾)アミノ酸であってもよい。そのような化合物はまた、本明細書で定義する親水性ポリマーP及びPへの−SH部分を含む、またはその導入を許容する非アミノ化合物又は非アミノ部分であってもよい。そのような非アミノ化合物は、例えば、3−チオプロピオン酸又はチオイモラン(thioimolane)の結合により、アミド生成(例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミン等)により、マイケル付加(例えば、マレインイミド部分、α,β−不飽和カルボニル等)により、クリック化学(例えば、アジド又はアルキン)により、アルケン/アルキンメタセシス(例えば、アルケン又はアルキン)、イミン又はヒドラゾン形成(アルデヒド又はケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アミン)、錯体形成反応(アビジン、ビオチン、プロテインG)、又はS型置換反応を許容する化合物(例えば、ハロゲン化アルカン、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩)又は更なる成分の連結に利用できる他の化学的部分による化合物の化学反応又は結合を介して、本発明に係るポリマー担体の式(VI)の親水性ポリマーP及びPに連結されていてもよい。これに関連して特に好ましいPEG誘導体は、α−メトキシ−ω−メルカプトポリ(エチレングリコール)である。それぞれの場合において、例えばシステイン又は任意の更なる(修飾)アミノ酸又は化合物のSH部分は、親水性ポリマーP及びPの任意の位置の末端又は内部に存在していてもよい。本明細書で定義するように、各々の親水性ポリマーP及びPは、典型的には、好ましくは1つの末端における少なくとも1つの−SH部分を提示するが、2つ又はそれ以上の−SH部分を含んでいてもよく、これらは、本明細書で定義する更なる成分、好ましくは、更なる機能性ペプチド又はタンパク質、例えばリガンド、アミノ酸成分(AA)又は(AA)、抗体、細胞透過性ペプチド又はエンハンサーペプチド(例えば、TAT、KALA)等を追加で付加するために使用されてもよい。
【0139】
1つの好ましい代替例によれば、そのような更なる機能性ペプチド又は機能性タンパク質は、輸送のための所謂細胞透過性ペプチド(CPP)又はカチオン性ペプチドを含んでいてもよい。特に好ましいのは、エンドソーム内のpH介在の構造変化を誘導し、リポソームの脂質層に挿入することによりエンドソームから本発明のポリマー担体(核酸との複合体)の改善された放出をもたらすCPPである。輸送のための所謂細胞透過性ペプチド(CPP)又はカチオン性ペプチドとしては、これらに限定はされないが、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン又はスペルミジン、ポリ−L−リジン(PLL)、塩基性ポリペプチド、ポリアルギニン、細胞透過性ペプチド(CPP)、トランスポータン又はMPGペプチド等のキメラCPP、HIV結合ペプチド、Tat、HIV−1 Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、オリゴアルギニン、例えばペネトラチン、アンテナペディア由来ペプチド(特にショウジョウバエアンテナペディア由来)、pAntp及びpIsl等のペネトラチンファミリーのメンバー、並びに、例えばブフォリン2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、MAP、PpTG20、プロリンに富むペプチド、ロリゴマー、アルギニンに富むペプチド、カルシトニンペプチド、FGF、ラクトフェリン、ポリ−L−リジン、ポリアルギニン、ヒストン、VP22由来又は類似のペプチド、ペストウイルスのErns、HSV、VP22(単純ヘルペス)、MAP、KALA又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリンに富むペプチド、アルギニンに富むペプチド、リジンに富むペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、及びカルシトニンペプチド等の抗菌剤由来のCPPが挙げられ得る。
【0140】
本発明の第1の実施形態の更に好ましい態様によれば、本発明に係り使用されるポリマー担体の式(VI)の各々の親水性ポリマーP及びPは、例えば、本明細書で定義する更なる成分の連結を許容する少なくとも1つの更なる官能基、例えば、例えばアミド形成(例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミン等)より、マイケル付加(例えば、マレインイミド部分、α,β不飽和カルボニル等)により、クリック化学(例えば、アジド又はアルキン)により、イミン又はヒドラゾン形成(アルデヒド又はケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アミン)、複合体形成反応(アビジン、ビオチン、プロテインG)、又はS型置換反応を許容する化合物(例えば、ハロゲン化アルカン、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩)又は更なる成分の連結に利用できる他の化学的部分により更なる成分の連結を許容する上記で定義するリガンド又は官能基を含んでいてもよい。更なる機能性部分は、本明細書で定義するアミノ酸成分(AA)又は(AA)を含んでいてもよく、ここで、(AA)は好ましくは上記で定義するアミノ酸成分である。上記に関連して、xは、好ましくは、約1〜100の範囲、好ましくは約1〜50の範囲、より好ましくは1〜30、更により好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15〜30を含む数から、例えば約1〜30の範囲から、約1〜15の範囲から、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15を含む数から選択されるか、又は、任意の2種の前述の値によって形成される範囲から選択され得る。より好ましくは、xは1である。そのようなアミノ酸成分(AA)又は(AA)は、上記式(VI)に係る本発明のポリマー担体のあらゆる部分に含まれていてもよく、従って、式(VI)に係る本発明のポリマー担体の全ての成分に連結されていてもよい。アミノ酸成分(AA)又は(AA)は、リガンド、又は本発明のポリマー担体の式(VI)中の反復成分[S−P−S]の一部として存在することが特に好ましい。
【0141】
本発明のポリマー担体の全体の式(VI)に関連して、好ましくは以下のように定義することができる。
【0142】
L−P−S−[Cys−P−Cys]−S−P−L 式(VI)
【0143】
ここで、L、P、P、P及びnは、本明細書に定義するものであり、Sは、硫黄であり、それぞれのCysは、ジスルフィド結合のための−SH部分を提供する。
【0144】
特定の態様によれば、上記で定義した式(VI)に係る本発明のポリマー担体は、上記で定義した少なくとも1つのアミノ酸成分(AA)又は(AA)を含んでいてもよい。そのようなアミノ酸成分(AA)又は(AA)は、上記式(VI)に係る本発明のポリマー担体の全ての部分に含まれていてもよく、それ故、式(VI)に係る本発明のポリマー担体の全ての成分に連結されていてもよい。アミノ酸成分(AA)又は(AA)は、リガンド、又は本発明のポリマー担体の式(VI)中の反復成分[S−P−S]の一部として存在することが特に好ましい。アミノ酸成分(AA)又は(AA)は、好ましくは、ジスルフィド結合を介してこの成分(AA)又は(AA)を本明細書で定義する式(VI)に係るポリマー担体に導入することを許容する、少なくとも1つの−SH含有部分を含んでいるか、又は−SH含有部分が(例えば、末端に)隣接して配置されている。そのような−SH含有部分は、任意の−SH含有部分(又は、言うまでもなくジスルフィド結合の1つの硫黄である)は、例えばシステイン残基である。−SH含有部分がシステインを表している特定の場合においては、アミノ酸成分(AA)はまた、−Cys−(AA)−又は−Cys−(AA)−Cys−であり、ここで、Cysは、システインを表しており、ジスルフィド結合のために必要な−SH部分を提供する。−SH含有部分はまた、成分P1、P2又はP3のための上記で示したような修正又は反応のいずれかを使用して、アミノ酸成分(AA)に導入されてもよい。アミノ酸成分(AA)が式(VI)に係る本発明のポリマー担体の2つの成分に連結されている特定の場合には、(AA)又は(AA)が、好ましくはその末端において、少なくとも2つの−SH部分、例えば少なくとも2つのシステインを含んでいることが好ましい。(AA)又は(AA)がそれぞれの成分[S−P−S]の一部であることが特に好ましい。或いは、(AA)又は(AA)が、任意の可能な化学的付加反応によって本明細書で定義する式(VI)に係る本発明のポリマー担体に導入されている。従って、アミノ酸成分(AA)又は(AA)は、それを本明細書で定義する更なる成分、例えば、成分P1又はP3、P2、L、又は更なるアミノ酸成分(AA)又は(AA)等に取り付けることを許容する、少なくとも1つの更なる官能基を含む。そのような官能基は、例えば、アミド形成(例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミン等)より、マイケル付加(例えば、マレインイミド部分、α,β不飽和カルボニル等)により、クリック化学(例えば、アジド又はアルキン)により、イミン又はヒドラゾン形成(アルデヒド又はケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アミン)、複合体形成反応(アビジン、ビオチン、プロテインG)、又はS型置換反応を許容する化合物(例えば、ハロゲン化アルカン、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩)又は更なる成分の連結に利用できる他の化学的部分により、例えば本明細書で定義する官能基等の更なる成分の連結を許容する官能基から選択され得る。
【0145】
式(VI)のポリマー担体中のアミノ酸成分(AA)又は(AA)はまた、混合された反復アミノ酸成分[(AA)として存在してもよく、ここで、アミノ酸成分(AA)又は(AA)の数は、更に整数zで定義する。これに関連して、zは、約1〜30の範囲から、好ましくは約1〜15の範囲、より好ましくは1〜10又は1〜5の範囲から選択されてもよく、更により好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15から選択される数から選択されるか、又は、任意の2種の前述の値によって形成される範囲から選択され得る。
【0146】
特定の特に好ましい代替例によれば、アミノ酸成分(AA)又は(AA)は、好ましくはS−(AA)−S又は[S−(AA)−S]と記載され、成分P、特に上記式(VI)のポリマー担体の反復成分[S−P−S]中の成分S−P−Sの内容物を修飾するのに使用され得る。式(VI)に係る全体のポリマー担体に関連して、これは例えば次式(VIa)で表され得る。
【0147】
L−P−S−{[S−P−S][S−(AA)−S]}−S−P−L 式(VIa)
【0148】
ここで、x、S、L、AA、P、P及びPは、好ましくは本明細書で定義するものである。上記式(VIa)において、単一成分[S−P−S]及び[S−(AA)−S]のいずれが、下位式{[S−P−S][S−(AA)−S]}においてどのような順番で存在してもよい。下位式{[S−P−S][S−(AA)−S]}における単一成分[S−P−S]及び[S−(AA)−S]の数は、整数a及びbにより決定され、ここで、a+b=nである。nは、整数であり、式(VI)に対して上記のように定義する。
【0149】
aは、整数であり、典型的には、整数bとは独立に、約1〜50の範囲から、好ましくは約1、2又は3〜30の範囲から、より好ましくは約1、2、3、4又は5〜25の範囲、又は約1、2、3、4又は5〜20の範囲、又は約1、2、3、4又は5〜15の範囲、又は約1、2、3、4又は5〜10の範囲から選択され、例えば、約3〜20、4〜20、5〜20又は10〜20の範囲、又は、約3〜15、4〜15、5〜15又は10〜15の範囲、又は約6〜11又は7〜10の範囲を含む。最も好ましくは、aは、約1、2、3、4又は5〜10の範囲、より好ましくは約1、2、3又は4〜9の範囲、約1、2、3又は4〜8の範囲、又は約1、2又は3〜7の範囲である。
【0150】
bは、整数であり、典型的には、整数aとは独立に、約0〜50又は1〜50の範囲から、好ましくは約1、2又は3〜30の範囲から、より好ましくは約1、2、3、4又は5〜25の範囲、又は約1、2、3、4又は5〜20の範囲、又は約1、2、3、4又は5〜15の範囲、又は約1、2、3、4又は5〜10の範囲から選択され、例えば、約3〜20、4〜20、5〜20又は10〜20の範囲、又は、約3〜15、4〜15、5〜15又は10〜15の範囲、又は約6〜11又は7〜10の範囲を含む。最も好ましくは、bは、約1、2、3、4又は5〜10の範囲、より好ましくは約1、2、3又は4〜9の範囲、約1、2、3又は4〜8の範囲、又は約1、2又は3〜7の範囲である。
【0151】
好ましい一態様によれば、上記で定義する少なくとも1つの抗原をコードする本発明のワクチンのmRNAは、好ましくは本明細書で定義する、カチオン性又はポリカチオン性の化合物、及びポリマー担体の少なくともいずれかとともに製剤化されてもよい。
【0152】
更に好ましい態様によれば、上記で定義する少なくとも1つの抗原をコードする本発明のワクチンのmRNAは、(アジュバント)成分とともに製剤化されてもよい。特に好ましい態様によれば、上記で定義する少なくとも1つの抗原をコードする本発明のワクチンのmRNAは、a)本明細書で定義する、カチオン性又はポリカチオン性の化合物、及びポリマー担体の少なくともいずれかと複合体を形成した、少なくとも1つの免疫刺激性核酸を含む、又はこれらからなる(アジュバント)成分と、b)好ましくは本発明のワクチンに対して本明細書で定義する抗原をコードする、少なくとも1つの遊離mRNAとを含むように製剤化される。
【0153】
上記に関連して、アジュバント成分における少なくとも1つの免疫刺激性核酸を複合体化するために使用される、カチオン性又はポリカチオン性の化合物、及びポリマー担体の少なくともいずれかは、上記のカチオン性又はポリカチオン性の化合物、及びポリマー担体の少なくともいずれかから選択されてもよい。
【0154】
更に、アジュバント成分ための上記で定義する免疫刺激性核酸は、好ましくは、少なくとも1つの抗原をコードする、本発明のワクチンに対して本明細書で定義するmRNAから選択され得る。或いは、そのような免疫刺激性核酸は、本明細書で定義する免疫刺激性核酸、好ましくは本明細書で定義する免疫刺激性RNA(isRNA)から選択され得る。
【0155】
これに関連して、本明細書中で使用される免疫刺激性核酸は、好ましくは、TLR受容体に結合することが知られている免疫刺激性核酸から選択される。そのような免疫刺激性核酸は、好ましくは自然免疫応答を誘導する(免疫刺激性)CpG核酸、特に、CpG−RNA又はCpG−DNAの形態とすることができる。本願発明に係り使用されるCpG−RNA又はCpG−DNAは、一本鎖のCpG−DNA(ssCpG−DNA)、二本鎖のCpG−DNA(dsDNA)、一本鎖のCpG−RNA(ssCpG−RNA)、又は二本鎖のCpG−RNA(dsCpG−RNA)とすることができる。本発明に係り使用されるCpG核酸は、好ましくはCpG−RNAの形態であり、より好ましくは一本鎖のCpG−RNA(ssCpG−RNA)の形態である。また好ましくは、そのようなCpG核酸は、上述の長さを有する。好ましくは、CpGモチーフはメチル化されていない。
【0156】
更に、本明細書中で使用される免疫刺激性核酸は、好ましくは免疫刺激性RNA(isRNA)から選択され、これが好ましくは自然免疫応答を引き起こす。好ましくは、免疫刺激性RNAは、一本鎖、二本鎖、又は部分的に二本鎖のRNAであり、より好ましくは一本鎖のRNA及び環状又は直鎖状RNAの少なくともいずれかであり、より好ましくは直鎖状RNAである。より好ましくは、免疫刺激性RNAは、(直鎖状)一本鎖RNAであってもよい。更により好ましくは、免疫刺激性RNAは、(長い)(直鎖状)(一本鎖)非コードRNAであってもよい。これに関連して、isRNAが、インビボで転写されたRNAの場合はその5’末端に三リン酸塩を担持することが特に好ましい。免疫刺激性RNAは、本明細書で定義する短いRNAオリゴヌクレオチドとして存在してもよい。本明細書で使用する免疫刺激性RNAは、更に、自然に見られる、又は合成的に作製される任意のクラスのRNA分子から選択されてもよく、これが自然免疫応答を誘導することができ、抗原によって誘導される適応免疫応答を支援し得る。これに関連して、免疫応答は様々な方法で起こり得る。適切な(適応)免疫反応のための実質的な要因は、異なるT細胞亜集団の刺激である。Tリンパ球は、典型的には、免疫系が細胞内(Th1)病原体及び細胞外(Th2)病原体(例えば、抗原)を破壊することができる、Tヘルパー1(Th1)細胞及びTヘルパー2(Th2)細胞の2つの亜集団に分けられる。2つのTh細胞集団は、それらによって生産されるエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンが異なっている。よって、Th細胞は、マクロファージ及び細胞傷害性T細胞の活性化による細胞免疫応答を支援する。Th2細胞は、一方で、B細胞の形質細胞への転換の刺激、及び(例えば、抗原に対する)抗体の形成によって、体液性免疫応答を促進する。Th1/Th2比は、それ故、適応免疫応答の誘導及び維持において非常に重要である。本発明に関連して、(適応)免疫応答のTh1/Th2比は、好ましくは、細胞応答(Th1応答)に向いた方向に変えられ、細胞免疫応答がこれによって誘導される。一例によれば、適応免疫応答を支援し得る自然免疫系は、トール様受容体(TLR)のリガンドによって活性化され得る。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、哺乳類における自然免疫において重要な役割を果たす、高度に保存されたパターン認識受容体(PRR)ポリペプチドのファミリーである。現在、TLR1〜TL13として指定された少なくとも13のファミリーメンバー(トール様受容体:TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12又はTLR13)が同定されている。更に、多数の特定のTLRリガンドが同定されている。例えば、非メチル化細菌DNA及びその合成類似体(CpG DNA)が、TLR9のリガンドであることが見出されている(Hemmi H等(2000)Nature 408:740−5;Bauer S等(2001)Proc Natl.Acad.Sci.USA 98,9237−42)。更に、特定のTLRのためのリガンドは特定の核酸分子を含み、特定の種類のRNAは配列非依存的又は配列依存的に免疫刺激性であることが報告されており、ここで、これらの様々な免疫刺激性RNAは、例えば、TLR3、TLR7又はTLR8、或いはRIG−I及びMDA−5等の細胞内受容体を刺激し得る。
【0157】
好ましくは、免疫刺激性核酸、好ましくは本明細書中で使用する免疫刺激性RNA(isRNA)は、免疫刺激性であることが知られている、これらに限定はされないが、好ましくはヒトのファミリーのメンバーTLR1〜TLR10、又はマウスのファミリーのメンバーTLR1〜TLR10から選択され、より好ましくは(ヒトの)ファミリーのメンバーTLR1〜TLR10から、更により好ましくはTLR7及びTLR8から選択されるTLRのリガンド、RNAのための細胞内受容体(RIG−I又はMDA−5等)のためのリガンドを表す、又はコードする、或いはその両方を行うRNA配列を含む、任意のRNA(例えば、Meylan,E.,Tschopp,J.(2006)トール様受容体及びRNAヘリカーゼ:抗ウイルス応答を引き起こす2つの平行な方法 Mol.Cell 22,561−569を参照)、又は任意の他の免疫刺激性RNA配列を含み得る。更に、本発明のワクチンの更なる化合物として使用される免疫刺激性RNA分子(のクラス)は、免疫応答を誘発することができる任意の他のRNAを含んでいてもよい。これらに限定はされないが、そのような免疫刺激性RNAは、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、及びウイルスRNA(vRNA)を含み得る。そのような免疫刺激性RNAは、1000〜5000、500〜5000、5〜5000、又は5〜1000、5〜500、5〜250、5〜100、5〜50、又は5〜30のアミノ酸長を含んでいてもよい。
【0158】
特に好ましい態様では、免疫刺激性核酸配列、特に本明細書中で使用するisRNAは、次の式(I)又は式(II)のアミノ酸からなるか、又はそれを含み得る。
【0159】
式(I)
ここで、Gは、グアノシン、ウラシル、又はグアノシンの類似体若しくはウラシルの類似体であり、Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、又は上記ヌクレオチドの類似体であり、lは、1〜40の整数であり、
ここで、
l=1である場合、Gは、グアノシン又はその類似体であり、
l>1である場合、ヌクレオチドの少なくとも50%がグアノシン又はその類似体であり、
ここで、
m=3である場合、 Xは、ウラシル又はその類似体であり、
m>3である場合、少なくとも3連続のウラシル又はウラシルの類似体が生じ、
nは、1〜40の整数であり、
ここで、
n=1である場合、Gは、グアノシン又はその類似体であり、
n>1である場合、ヌクレオチドの少なくとも50%がグアノシン又はその類似体である。
【0160】
式(II)
ここで、
Cは、シトシン、ウラシル、又はシトシンの類似体若しくはウラシルの類似体であり、Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン又は上記ヌクレオチドの類似体であり、lは、1〜40の整数であり、
ここで、
l=1である場合、Cは、シトシン又はその類似体であり、
l>1である場合、ヌクレオチドの少なくとも50%がシトシン又はその類似体であり、
mは、整数であり、少なくとも3であり、
ここで、
m=3である場合、Xは、ウラシル又はその類似体であり、
m>3である場合、少なくとも3連続のウラシル又はウラシルの類似体が生じ、
nは、1〜40の整数であり、
ここで、
n=1である場合、Cは、シトシン又はその類似体であり、
n>1である場合、ヌクレオチドの少なくとも50%がシトシン又はその類似体である。
【0161】
免疫刺激性核酸配列として用いることができる式(I)又は式(II)の核酸、特にisRNAは、約5〜100(但し、特定の実施形態では、例えば200ヌクレオチド等、100ヌクレオチドより長くてもよい)、5ヌクレオチド〜90ヌクレオチド、又は5ヌクレオチド〜80ヌクレオチドの典型的な長さ、好ましくは約5ヌクレオチド〜70ヌクレオチドの長さ、より好ましくは約8ヌクレオチド〜60ヌクレオチドの長さ、より好ましくは約15ヌクレオチド〜60ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチド〜60ヌクレオチド、最も好ましくは30ヌクレオチド〜60ヌクレオチドの長さの比較的短い核酸分子であってもよい。式(I)又は式(II)の核酸が、例えば100ヌクレオチドの最大長を有する場合、mは、典型的には98以下となる。式(I)の核酸におけるヌクレオチドの数Gは、l又はnによって定義する。l又はnは、互いに独立して、それぞれ、1〜40の整数であり、ここで、l又はnが1である場合、Gは、グアノシン又はその類似体であり、l又はnが1より大きい場合、少なくとも50%のヌクレオチドがグアノシン又はその類似体である。例えば、何らの限定を意味しないが、l又はnが4である場合、G又はGは、例えば、GUGU、GGUU、UGUG、UUGG、GUUG、GGGU、GGUG、GUGG、UGGG、又はGGGG等とすることができ、l又はnが5である場合、G又はGは、例えば、GGGUU、GGUGU、GUGGU、UGGGU、UGGUG、UGUGG、UUGGG、GUGUG、GGGGU、GGGUG、GGUGG、GUGGG、UGGGG、又はGGGGG等とすることができる。本発明に係る式(I)の核酸中のXに隣接するヌクレオチドは、好ましくはウラシルではない。同様に、本発明に係る式(II)の核酸におけるヌクレオチドの数Cは、l又はnによって定義する。l及びnは、互いに独立して、それぞれ、1〜40の整数であり、ここで、l又はnが1である場合、Cは、シトシン又はその類似体であり、l又はnが1より大きい場合、少なくとも50%のヌクレオチドがシトシン又はその類似体である。例えば、何らの限定を意味しないが、l又はnが4である場合、C又はCは、例えば、CUCU、CCUU、UCUC、UUCC、CUUC、CCCU、CCUC、CUCC、UCCC又はCCCC等とすることができ、l又はnが5である場合、C又はCは、例えば、CCCUU、CCUCU、CUCCU、UCCCU、UCCUC、UCUCC、UUCCC、CUCUC、CCCCU、CCCUC、CCUCC、CUCCC、UCCCC、又はCCCCC等とすることができる。本発明に係る式(II)の核酸中のXに隣接するヌクレオチドは、好ましくはウラシルではない。好ましくは、式(I)について、l又はnが1より大きい場合、少なくとも60%、70%、80%、90%又は更に100%のヌクレオチドが、上記で定義するグアノシン又はその類似体である。フランキング配列G及びGの少なくともいずれかにおける100%までの残りのヌクレオチド(グアノシンがヌクレオチドの100%未満を構成する場合)は、本明細書で定義するウラシル又はその類似体である。また好ましくは、l及びnは、互いに独立して、それぞれ、2〜30の整数、より好ましくは、2〜20の整数、更により好ましくは2〜15の整数である。l又はnの下限は、必要に応じて変化させることができ、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10である。この定義は、式(II)にも同様に適用される。
【0162】
特に好ましい実施形態では、免疫刺激性核酸配列、特にisRNAとして用いられ得る、上記の式(I)又は式(II)のいずれかに記載の核酸は、
【0163】
GGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:289)、
GGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号:290)、
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号:291)、
GUGUGUGUGUGUUUUUUUUUUUUUUUUGUGUGUGUGUGU(配列番号:292)、
GGUUGGUUGGUUUUUUUUUUUUUUUUUGGUUGGUUGGUU(配列番号:293)、
GGGGGGGGGUUUGGGGGGGG(配列番号:294)、
GGGGGGGGUUUUGGGGGGGG(配列番号:295)、
GGGGGGGUUUUUUGGGGGGG(配列番号:296)、
GGGGGGGUUUUUUUGGGGGG(配列番号:297)、
GGGGGGUUUUUUUUGGGGGG(配列番号:298)、
GGGGGGUUUUUUUUUGGGGG(配列番号:299)、
GGGGGGUUUUUUUUUUGGGG(配列番号:300)、
GGGGGUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号:301)、
GGGGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:302)、
GGGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:303)、
GGGGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号:304)、
GGUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号:305)、
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号:306)、
GGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGG(配列番号:307)、
GGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGG(配列番号:308)、
GGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGG(配列番号:309)、
GGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGG(配列番号:310)、
GGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号:311)、
GGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号:312)、
GGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号:313)、
GGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号:314)、
GGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号:315)、
GGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号:316)、
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:317)、
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:318)、
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号:319)、
GGGGGGGGGGGUUUGGGGGGGGGG(配列番号:320)、
GGGGGGGGGGUUUUGGGGGGGGGG(配列番号:321)、
GGGGGGGGGUUUUUUGGGGGGGGG(配列番号:322)、
GGGGGGGGGUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号:323)、
GGGGGGGGUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号:324)、
GGGGGGGGUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号:325)、
GGGGGGGGUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号:326)、
GGGGGGGUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号:327)、
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号:328)、
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号:329)、
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号:330)、
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号:331)、
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:332)、
GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUG(配列番号:333)、
GGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号:334)、
GGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:335)、
GGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:336)、
GGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGG(配列番号:337)、
GGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGG(配列番号:338)、
GGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGG(配列番号:339)、
GGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGG(配列番号:340)、
GGGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGGG(配列番号:341)、
GGUUUGG(配列番号:342)、
GGUUUUGG(配列番号:343)、
GGUUUUUGG(配列番号:344)、
GGUUUUUUGG(配列番号:345)、
GGUUUUUUUGG(配列番号:346)、
GGUUUUUUUUGG(配列番号:347)、
GGUUUUUUUUUGG(配列番号:348)、
GGUUUUUUUUUUGG(配列番号:349)、
GGUUUUUUUUUUUGG(配列番号:350)、
GGUUUUUUUUUUUUGG(配列番号:351)、
GGUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号:352)、
GGUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号:353)、
GGUUUUUUUUUUUUUUUGG(配列番号:354)、
GGGUUUGGG(配列番号:355)、
GGGUUUUGGG(配列番号:356)、
GGGUUUUUGGG(配列番号:357)、
GGGUUUUUUGGG(配列番号:358)、
GGGUUUUUUUGGG(配列番号:359)、
GGGUUUUUUUUGGG(配列番号:360)、
GGGUUUUUUUUUGGG(配列番号:361)、
GGGUUUUUUUUUUGGG(配列番号:362)、
GGGUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:363)、
GGGUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:364)、
GGGUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:365)、
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:366)、
GGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(配列番号:367)、
GGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGGUUUGGG(配列番号:368)、
GGUUUUUUUUUUUUUUUGGG(短くGUに富む、配列番号:369)、又は、
【0164】
CCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCC(配列番号:370)、
CCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCCUUUCCC(配列番号:371)、
CCCUUUUUUUUUUUUUUUCCCCCCUUUUUUUUUUUUUUUCCC(配列番号:372)、
の配列のいずれかからなる、又はこれら配列のいずれかを含む配列から選択されてもよく、
【0165】
或いは、これらの配列のいずれかと、少なくとも60%、70%、80%、90%又は更に95%の配列同一性を有する配列から選択されてもよい。
【0166】
更なる特に好ましい実施形態では、免疫刺激性核酸配列、特に本明細書中で使用されるisRNAは、式(III)又は式(IV)の核酸からなっていてもよく、又は式(III)又は式(IV)の核酸を含んでいてもよい。
【0167】
(N 式(III)
【0168】
ここで、
Gは、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、又はグアノシン(グアニン)の類似体若しくはウリジン(ウラシル)の類似体、好ましくはグアノシン(グアニン)又はその類似体であり、
Xは、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、アデノシン(アデニン)、チミジン(チミン)、シチジン(シトシン)、又はこれらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の類似体、好ましくはウリジン(ウラシル)又はその類似体であり、
Nは、約4〜50、好ましくは約4〜40核酸、より好ましくは約4〜30核酸又は4〜20核酸の長さを有する核酸配列であり、それぞれのNは、独立して、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、アデノシン(アデニン)、チミジン(チミン)、シチジン(シトシン)、又はこれらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の類似体から選択され、
aは、1〜20、好ましくは1〜15、最も好ましくは1〜10の整数であり、
lは、1〜40の整数であり、
ここで、
l=1である場合、Gは、グアノシン(グアニン)又はその類似体であり、
l>1である場合、これらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の少なくとも50%がグアノシン(グアニン)又はその類似体であり、
mは、整数であり、少なくとも3であり、
ここで、
m=3である場合、Xは、ウリジン(ウラシル)又はその類似体であり、
m>3である場合、少なくとも3連続のウリジン(ウラシル)又はウリジン(ウラシル)の類似体が存在し、
nは、1〜40の整数であり、
ここで、
n=1である場合、Gは、グアノシン(グアニン)又はその類似体であり、
n>1である場合、こられのヌクレオチド(ヌクレオシド)の少なくとも50%がグアノシン(グアニン)又はその類似体であり、
u及びvは、互いに独立して、0〜50の整数であり、
好ましくは、ここで、u=0かつv≧1である場合、又はv=0かつu≧1である場合であり、
ここで、式(III)の核酸分子は、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも150ヌクレオチド、更により好ましくは200ヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも250ヌクレオチドの長さを有する。
【0169】
(N 式(IV)
【0170】
ここで、
Cは、シチジン(シトシン)、ウリジン(ウラシル)、又はシチジン(シトシン)の類似体若しくはウリジン(ウラシル)の類似体、好ましくはシチジン(シトシン)又はその類似体であり、
Xは、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、アデノシン(アデニン)、チミジン(チミン)、シチジン(シトシン)、又は上述のヌクレオチド(ヌクレオシド)の類似体、好ましくはウリジン(ウラシル)又はその類似体であり、
Nは、それぞれ、互いに独立して、約4〜50、好ましくは約4〜40核酸、より好ましくは約4〜30核酸又は4〜20核酸の長さを有する核酸配列であり、それぞれのNは、独立して、グアノシン(グアニン)、ウリジン(ウラシル)、アデノシン(アデニン)、チミジン(チミン)、シチジン(シトシン)、又はこれらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の類似体から選択され、
aは、1〜20、好ましくは1〜15、最も好ましくは1〜10の整数であり、
lは、1〜40の整数であり、
ここで、
l=1である場合、Cは、シチジン(シトシン)又はその類似体であり、
l>1である場合、これらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の少なくとも50%がシチジン(シトシン)又はその類似体であり、
mは、整数であり、少なくとも3であり、
ここで、
m=3である場合、Xは、ウリジン(ウラシル)又はその類似体であり、
m>3である場合、少なくとも3連続のウリジン(ウラシル)又はウリジン(ウラシル)の類似体が存在し、
nは、1〜40の整数であり、
ここで、
n=1である場合、Cは、シチジン(シトシン)又はその類似体であり、
n>1である場合、これらのヌクレオチド(ヌクレオシド)の少なくとも50%がシチジン(シトシン)又はその類似体であり、
u及びvは、互いに独立して、0〜50の整数であり、
好ましくは、ここで、u=0かつv≧1である場合、又はv=0かつu≧1である場合であり、
ここで、本発明の係る式(IV)の核酸分子は、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも150ヌクレオチド、更により好ましくは200ヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも250ヌクレオチドの長さを有する。
【0171】
いずれの式(I)及び式(II)中の上記の定義、例えば、要素N(即ち、N及びN)及びX(X)、特に、上記で定義するコア構造だけでなく、整数a、l、m、n、u及びvについての定義は、式(III)及び式(IV)の要素についても同様に対応して適用される。式(IV)中の隣接する要素N及びNの定義は、式(IV)中のN及びNに対する上記の定義と同じである。
【0172】
極めて特に好ましい実施形態によれば、免疫刺激性核酸配列、特にisRNAとして用いられ得る式(IV)に係る本発明の核酸分子は、例えば、以下の配列のいずれかから選択されてもよい。
【0173】
UAGCGAAGCUCUUGGACCUAGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUGCGUUCCUAGAAGUACACG(配列番号:373)
【0174】
UAGCGAAGCUCUUGGACCUAGGUUUUUUUUUUUUUUUGGGUGCGUUCCUAGAAGUACACG AUCGCUUCGA GAACCUGGAUCCAAAAAAAAAAAAAAACCCACGCAAGGAUCUUCAUGUGC(配列番号:374)
【0175】
GGGAGAAAGCUCAAGCUUGGAGCAAUGCCCGCACAUUGAGGAAACCGAGUUGCAUAUCUCAGAGUAUUGGCCCCCGUGUAGGUUAUUCUUGACAGACAGUGGAGCUUAUUCACUCCCAGGAUCCGAGUCGCAUACUACGGUACUGGUGACAGACCUAGGUCGUCAGUUGACCAGUCCGCCACUAGACGUGAGUCCGUCAAAGCAGUUAGAUGUUACACUCUAUUAGAUC(配列番号:375)
【0176】
GGGAGAAAGCUCAAGCUUGGAGCAAUGCCCGCACAUUGAGGAAACCGAGUUGCAUAUCUCAGAGUAUUGGCCCCCGUGUAGGUUAUUCUUGACAGACAGUGGAGCUUAUUCACUCCCAGGAUCCGAGUCGCAUACUACGGUACUGGUGACAGACCUAGGUCGUCAGUUGACCAGUCCGCCACUAGACGUGAGUCCGUCAAAGCAGUUAGAUGUUACACUCUAUUAGAUCUCGGAUUACAGCUGGAAGGAGCAGGAGUAGUGUUCUUGCUCUAAGUACCGAGUGUGCCCAAUACCCGAUCAGCUUAUUAACGAACGGCUCCUCCUCUUAGACUGCAGCGUAAGUGCGGAAUCUGGGGAUCAAAUUACUGACUGCCUGGAUUACCCUCGGACAUAUAACCUUGUAGCACGCUGUUGCUGUAUAGGUGACCAACGCCCACUCGAGUAGACCAGCUCUCUUAGUCCGGACAAUGAUAGGAGGCGCGGUCAAUCUACUUCUGGCUAGUUAAGAAUAGGCUGCACCGACCUCUAUAAGUAGCGUGUCCUCUAG(配列番号:376)
【0177】
GGGAGAAAGCUCAAGCUUGGAGCAAUGCCCGCACAUUGAGGAAACCGAGUUGCAUAUCUCAGAGUAUUGGCCCCCGUGUAGGUUAUUCUUGACAGACAGUGGAGCUUAUUCACUCCCAGGAUCCGAGUCGCAUACUACGGUACUGGUGACAGACCUAGGUCGUCAGUUGACCAGUCCGCCACUAGACGUGAGUCCGUCAAAGCAGUUAGAUGUUACACUCUAUUAGAUCUCGGAUUACAGCUGGAAGGAGCAGGAGUAGUGUUCUUGCUCUAAGUACCGAGUGUGCCCAAUACCCGAUCAGCUUAUUAACGAACGGCUCCUCCUCUUAGACUGCAGCGUAAGUGCGGAAUCUGGGGAUCAAAUUACUGACUGCCUGGAUUACCCUCGGACAUAUAACCUUGUAGCACGCUGUUGCUGUAUAGGUGACCAACGCCCACUCGAGUAGACCAGCUCUCUUAGUCCGGACAAUGAUAGGAGGCGCGGUCAAUCUACUUCUGGCUAGUUAAGAAUAGGCUGCACCGACCUCUAUAAGUAGCGUGUCCUCUAGAGCUACGCAGGUUCGCAAUAAAAGCGUUGAUUAGUGUGCAUAGAACAGACCUCUUAUUCGGUGAAACGCCAGAAUGCUAAAUUCCAAUAACUCUUCCCAAAACGCGUACGGCCGAAGACGCGCGCUUAUCUUGUGUACGUUCUCGCACAUGGAAGAAUCAGCGGGCAUGGUGGUAGGGCAAUAGGGGAGCUGGGUAGCAGCGAAAAAGGGCCCCUGCGCACGUAGCUUCGCUGUUCGUCUGAAACAACCCGGCAUCCGUUGUAGCGAUCCCGUUAUCAGUGUUAUUCUUGUGCGCACUAAGAUUCAUGGUGUAGUCGACAAUAACAGCGUCUUGGCAGAUUCUGGUCACGUGCCCUAUGCCCGGGCUUGUGCCUCUCAGGUGCACAGCGAUACUUAAAGCCUUCAAGGUACUCGACGUGGGUACCGAUUCGUGACACUUCCUAAGAUUAUUCCACUGUGUUAGCCCCGCACCGCCGACCUAAACUGGUCCAAUGUAUACGCAUUCGCUGAGCGGAUCGAUAAUAAAAGCUUGAAUU(配列番号:377)
【0178】
GGGAGAAAGCUCAAGCUUAUCCAAGUAGGCUGGUCACCUGUACAACGUAGCCGGUAUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGACCGUCUCAAGGUCCAAGUUAGUCUGCCUAUAAAGGUGCGGAUCCACAGCUGAUGAAAGACUUGUGCGGUACGGUUAAUCUCCCCUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUAGUAAAUGCGUCUACUGAAUCCAGCGAUGAUGCUGGCCCAGAUC(配列番号:378)
【0179】
GGGAGAAAGCUCAAGCUUAUCCAAGUAGGCUGGUCACCUGUACAACGUAGCCGGUAUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGACCGUCUCAAGGUCCAAGUUAGUCUGCCUAUAAAGGUGCGGAUCCACAGCUGAUGAAAGACUUGUGCGGUACGGUUAAUCUCCCCUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUAGUAAAUGCGUCUACUGAAUCCAGCGAUGAUGCUGGCCCAGAUCUUCGACCACAAGUGCAUAUAGUAGUCAUCGAGGGUCGCCUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGCCCAGUUCUGAGACUUCGCUAGAGACUACAGUUACAGCUGCAGUAGUAACCACUGCGGCUAUUGCAGGAAAUCCCGUUCAGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUCCGCUCACUAUGAUUAAGAACCAGGUGGAGUGUCACUGCUCUCGAGGUCUCACGAGAGCGCUCGAUACAGUCCUUGGAAGAAUCUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGUGCGACGAUCACAGAGAACUUCUAUUCAUGCAGGUCUGCUCUA(R 722配列番号:379)
【0180】
GGGAGAAAGCUCAAGCUUAUCCAAGUAGGCUGGUCACCUGUACAACGUAGCCGGUAUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGACCGUCUCAAGGUCCAAGUUAGUCUGCCUAUAAAGGUGCGGAUCCACAGCUGAUGAAAGACUUGUGCGGUACGGUUAAUCUCCCCUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUAGUAAAUGCGUCUACUGAAUCCAGCGAUGAUGCUGGCCCAGAUCUUCGACCACAAGUGCAUAUAGUAGUCAUCGAGGGUCGCCUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGGCCCAGUUCUGAGACUUCGCUAGAGACUACAGUUACAGCUGCAGUAGUAACCACUGCGGCUAUUGCAGGAAAUCCCGUUCAGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUCCGCUCACUAUGAUUAAGAACCAGGUGGAGUGUCACUGCUCUCGAGGUCUCACGAGAGCGCUCGAUACAGUCCUUGGAAGAAUCUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGUGCGACGAUCACAGAGAACUUCUAUUCAUGCAGGUCUGCUCUAGAACGAACUGACCUGACGCCUGAACUUAUGAGCGUGCGUAUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUCCUCCCAACAAAUGUCGAUCAAUAGCUGGGCUGUUGGAGACGCGUCAGCAAAUGCCGUGGCUCCAUAGGACGUGUAGACUUCUAUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUCCCGGGACCACAAAUAAUAUUCUUGCUUGGUUGGGCGCAAGGGCCCCGUAUCAGGUCAUAAACGGGUACAUGUUGCACAGGCUCCUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUCGCUGAGUUAUUCCGGUCUCAAAAGACGGCAGACGUCAGUCGACAACACGGUCUAAAGCAGUGCUACAAUCUGCCGUGUUCGUGUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGUGAACCUACACGGCGUGCACUGUAGUUCGCAAUUCAUAGGGUACCGGCUCAGAGUUAUGCCUUGGUUGAAAACUGCCCAGCAUACUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUCAUAUUCCCAUGCUAAGCAAGGGAUGCCGCGAGUCAUGUUAAGCUUGAAUU(配列番号:380)
【0181】
別の極めて特に好ましい実施形態によれば、式(V)に係る核酸分子は、例えば、以下の配列のいずれかから選択されてもよい。
【0182】
UAGCGAAGCUCUUGGACCUACCUUUUUUUUUUUUUUCCCUGCGUUCCUAGAAGUACACG(配列番号:381)、又は
【0183】
UAGCGAAGCUCUUGGACCUACCUUUUUUUUUUUUUUUCCCUGCGUUCCUA GAAGUACACGAUCGCUUCGAGAACCUGGAUGGAAAAAAAAAAAAAAAGGGACGCAAGGAUCUUCAUGUGC(配列番号:382)
【0184】
或いは、これらの配列のいずれかと、少なくとも60%、70%、80%、90%、又は更に95%の配列同一性を有する配列から選択されてもよい。
【0185】
最後に、本発明のワクチンにおけるmRNAと共に使用され得る、所謂「(アジュバント)成分」は、好ましくは、(アジュバント)成分の少なくとも一つの(m)RNAを、好ましくは本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性の化合物、及びポリマー担体の少なくともいずれかと特定の比で複合体化して安定な複合体を形成することによって、最初のステップにより調製される。これに関連して、(m)RNAを複合体化した後の(アジュバント)成分中に、遊離のカチオン性又はポリカチオン性の化合物又はポリマー担体は、全く残存していないか、又は無視できる程に少ない量で残存することが、非常に好ましい。従って、(アジュバント)成分中の(m)RNAと、カチオン性又はポリカチオン性の化合物及びポリマー担体の少なくともいずれかとの比は、典型的には、(m)RNAが完全に複合体化されて組成物中に遊離のカチオン性又はポリカチオン性の化合物又はポリマー担体が全く残存していないか、又は無視できる程に少ない量で残存する範囲に選択される。好ましくは、(アジュバント)成分の比、即ち、(m)RNAの、好ましくは本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性の化合物及びポリマー担体の少なくともいずれかに対する比は、約6:1(w/w)〜約0.25:1(w/w)、より好ましくは約5:1(w/w)〜約0.5:1(w/w)、更により好ましくは約4:1(w/w)〜約1:1(w/w)、又は約3:1(w/w)〜約1:1(w/w)の範囲から選択され、最も好ましくは約3:1(w/w)〜約2:1(w/w)の比である。或いは、(アジュバント)成分中の、(m)RNAの、好ましくは本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性の化合物及びポリマー担体の少なくともいずれかに対する比はまた、(アジュバント)成分の複合体全体の窒素/リン酸比(N/P比)に基づき算出され得る。本発明に関連して、好ましくは、複合体中のカチオン性又はポリカチオン性の化合物は、カチオン性又はポリカチオン性であるか、又は、カチオン性又はポリカチオン性のタンパク質又はペプチド、及びポリマー担体の少なくともいずれかが、上記で定義するものである場合は、N/P比は、(m)RNAに対する、複合体中の好ましくは本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性の化合物及びポリマー担体の少なくともいずれかの比((m)RNA:複合体中の好ましくは本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性の化合物及びポリマー担体の少なくともいずれか)に関して、好ましくは、約0.1〜10の範囲、好ましくは約0.3−4の範囲、最も好ましくは約0.5〜2又は0.7〜2の範囲であり、最も好ましくは、約0.7〜1.5程度の範囲である。そのような比、特に重量比及びN/P比の少なくともいずれかは、本明細書で定義する少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのmRNAの、該少なくとも1つのmRNAを複合体化するために使用される、本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性のポリマー又はポリマー担体に対する比にも適用され得る。
【0186】
更に好ましい態様によれば、上記で定義する少なくとも1つの抗原をコードする本発明のワクチンのmRNAは、上記で定義する(アジュバント)成分と共に製剤化されてもよく、ここで、本発明のワクチンは、a)好ましくは本明細書で定義する、カチオン性又はポリカチオン性の化合物、及びポリマー担体の少なくともいずれかと複合体を形成する少なくとも1つの(m)RNA、及びb)好ましくは本明細書で定義する、抗原をコードする少なくとも1つの遊離mRNAを含んでいてもよい。この製剤は、好ましくは上記で定義する。更に、a)及びb)の全体の製剤は、加えて、(アジュバント)成分及び抗原の結合されたパッケージングを許容するために担体分子と共にパッケージ化されていてもよい。そのような担体分子は、a)及びb)の全体の製剤の、パッケージ化、及び好ましくは本明細書で定義する患者の細胞や組織等への輸送に好適な任意のポリマーから選択されてもよく、例えば、本明細書で定義するカチオン性又はポリカチオン性のポリマーから、又はこの目的のために好適な任意の更なるポリマー、例えば上記のポリマー担体から選択されてもよい。
【0187】
上記で定義された、本発明のワクチン組成物全体の全ての成分、好ましくはカチオン性又はポリカチオン性の化合物、少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのmRNA、及び担体分子の少なくともいずれかと複合体化され、本発明のワクチンに製剤化された、少なくとも1つの免疫刺激性核酸配列を含むか、又はこれらからなるアジュバントの比は、これら成分全ての窒素/リン酸比(N/P比)に基づき算出され得る。本発明に関連して、N/P比は、核酸の、本発明のワクチンに含まれるカチオン性又はポリカチオン性のペプチドに対する比(核酸:本発明のワクチンに含まれるカチオン性又はポリカチオン性のペプチド)に関して、好ましくは約0.01〜4、0.01〜2、0.1〜2又は0.1〜1.5の範囲であり、最も好ましくは約0.1〜1の範囲である。そのようなN/P比は、好ましくは、インビボでの良好なトランスフェクション特性を提供し、細胞膜へと輸送され通過するように設計されている。好ましくは、この目的のために、本明細書で使用されるカチオン性又はポリカチオン性の化合物及びポリマー担体の少なくともいずれかは、ペプチド配列に基づいている。
【0188】
本発明の更に好ましい態様において、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体及び賦形剤の少なくともいずれかを含んでいてもよい。本発明に関連して、薬学的に許容される担体は、典型的には、本発明のワクチンの成分を含む組成物の液体又は非液体の基礎を含む。組成物が液体形態で提供される場合、担体は、典型的には発熱物質を含まない水、等張食塩水、又は緩衝(水性)溶液、例えば、リン酸塩やクエン酸塩等で緩衝化した溶液である。注射緩衝液は、特定の基準媒体を基準にして高張、等張、又は低張であってもよく、例えば、該緩衝液は、基準媒体を基準にしてより高い、同一の又はより低い塩の含有量を有していてもよく、ここで、好ましくは、前述の塩のそのような濃度が使用されてもよく、これは浸透性又は他の濃度効果に起因する細胞の損傷には繋がらない。基準媒体は、例えば、血液、リンパ液、細胞質液、又は他の体液等の、「インビボ」の方法において生じる液体、又は、例えば、一般的な緩衝液又は液体等の「インビトロ」の方法における基準媒体として使用され得る液体である。そのような一般的な緩衝液又は液体は、当業者に知られている。乳酸リンゲル液は、液体基礎として特に好適である。
【0189】
但し、1つ以上の相溶性のある固体又は液体のフィラー又は希釈剤、又は治療される患者への投与に好適なカプセル化化合物を、本発明のワクチンに同様に使用してもよい。本明細書で用いられる「相溶性のある(compatible)」との用語は、典型的な使用条件において本発明のワクチンの薬剤有効性を実質的に減少させる相互作用が実質的に生じないように、本発明のワクチンのこれらの構成成分が、本発明のワクチンの構成要素と混合可能であることを意味している。
【0190】
特定の態様によれば、本発明のワクチンは、アジュバントを含んでいてもよい。これに関連して、アジュバントは、自然免疫系の免疫応答、即ち非特異的免疫応答を開始又は増大させるのに好適な任意の化合物として理解されてもよい。言い換えれば、投与された場合、ワクチンは、好ましくは任意的にその中に含まれるアジュバントに起因する自然免疫応答を誘発する。好ましくは、そのようなアジュバントは、当業者に公知であり、本発明の場合に好適な、即ち、哺乳類における自然免疫応答の誘導を支援するアジュバント、例えば、上記で定義するアジュバントタンパク質又は以下に定義するアジュバントから選択され得る。
【0191】
一態様によれば、そのようなアジュバントは、上記で定義する(アジュバント)成分から選択され得る。
【0192】
1つの更なる態様によれば、そのようなアジュバントは、当業者に公知であり、本発明の場合に好適な、即ち、哺乳類における自然免疫応答の誘導を支援するアジュバント、及び本発明のワクチンの構成要素の貯蔵及び搬送に好適なアジュバントの少なくともいずれかから選択され得る。アジュバントとして貯蔵及び搬送の適切なものは、上記で定義するカチオン性又はポリカチオン性の化合物である。同様に、アジュバントは、これらに限定はされないが、上記で定義するカチオン性又はポリカチオン性の化合物、キトサン、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック、ミョウバン溶液、水酸化アルミニウム、ADJUMER(登録商標)(ポリホスファゼン)、リン酸アルミニウムゲル、藻類由来のグルカン、アルガミュリン(algammulin)、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)、高タンパク質吸着性水酸化アルミニウムゲル、低粘度水酸化アルミニウムゲル、AF又はSPT(スクアレン(5%)、Tween80(0.2%)、Pluronic L121(1.25%)、及びpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水のエマルジョン)、AVRIDINE(登録商標)(プロパンジアミン)、BAY R1005(登録商標)((N−(2−デオキシ−2−L−ロイシルアミノ−b−D−グルコピラノシル)−N−オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセテート)、CALCITRIOL(登録商標)(1α,25−ジヒドロキシビタミンD3)、リン酸カルシウムゲル、CAP(登録商標)(リン酸カルシウムナノ粒子)、コレラホロトキシン、コレラ毒素A1−プロテインA−D断片融合タンパク質、コレラ毒素のBサブユニット、CRL 1005(ブロックコポリマーP1205)、サイトカイン含有リポソーム、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)、DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール)、DOC/ミョウバン複合体(デオキシコール酸ナトリウム塩)、フロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、ガンマイヌリン、Gerbuアジュバント(以下の混合物:i)N−アセチルグルコサミニル−(Pl−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D35 グルタミン(GMDP)、ii)ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド(DDA)、iii)亜鉛L−プロリン塩複合体(ZnPro−8))、GM−CSF、GMDP(N−アセチルグルコサミニル−(b1−4)−N−アセチルムラミル−L47 アラニル−D−イソグルタミン)、イミキモド(imiquimod)(1−(2−メチプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン)、ImmTher(登録商標)(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート)、DRV類(脱水−再水和小胞から調製した免疫リポソーム)、インターフェロン−γ、インターロイキン−1β、インターロイキン−2、インターロイキン−7、インターロイキン−12、ISCOMS(登録商標)、ISCOPREP 7.0.3.(登録商標)、リポソーム、LOXORIBINE(登録商標)(7−アリル−8−オキソグアノシン)、LT5 経口アジュバント(大腸菌(E.coli)不安定内毒素プロトキシン)、任意の組成物の微小球体及び微小粒子、MF59(商標登録)、(スクアレン水エマルジョン)、MONTANIDE ISA 51(登録商標)(精製不完全フロイントアジュバント)、MONTANIDE ISA 720(登録商標)(代謝可能油アジュバント)、MPL(登録商標)(3−Q−デスアシル−4’−モノホスホリル脂質A)、MTP−PE及びMTP−PEリポソーム((N−アセチル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ))−エチルアミド、一ナトリウム塩)、MURAMETIDE(登録商標)(Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3)、MURAPALMITINE(登録商標)及びDMURAPALMITINE(登録商標)(Nac−Mur−L−Thr−D−イソGln−sn−グリセロールジパルミトイル)、NAGO(ノイラミニダーゼ−ガラクトースオキシダーゼ)、任意の組成物のナノスフェア又はナノ粒子、NISV類(非イオン性界面活性剤小胞)、PLEURAN(登録商標)(β−グルカン)、PLGA、PGA及びPLA(乳酸及びグリコール酸のホモポリマー及びコポリマー、ミクロスフェア/ナノスフェア)、PLURONIC L121(登録商標)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PODDS(登録商標)(プロテイノイドミクロスフェア)、ポリエチレンカルバメート誘導体、ポリrA:ポリrU(ポリアデニル酸−ポリウリジル酸複合体)、ポリソルベート80(Tween 80)、渦巻き型タンパク質(Protein Cochleates)(Avanti Polar Lipids, Inc.、アラバマ州アラバスター)、STIMULON(登録商標)(QS−21)、Quil−A(Quil−A サポニン)、S−28463(4−アミノ−オテック−ジメチル−2−エトキシメチル−lH−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール)、SAF−1(登録商標)(Syntex アジュバント配合物)、センダイプロテオリポソーム及びセンダイ含有脂質マトリックス、Span−85(トリオレイン酸ソルビタン)、Specol(Marcol 52、Span 85及びTween 85のエマルジョン)、スクアレン又はRobane(登録商標)(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサン及び2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22テトラコサヘキサン)、ステアリルチロシン(オクタデシルチロシンヒドロクロリド)、Theramid(登録商標)(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド)、スレオニル−MDP(Termurtide(登録商標)又は[thr1]−MDP、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン)、Ty粒子(Ty−VLP又はウイルス様粒子)、Pam3Cysを含むWalter−Reedリポソーム(水酸化アルミニウムに吸着させた脂質Aを含有するリポソーム)、特に、Adju−phos、Alhydrogel及びRehydragel等のアルミニウム塩、CFA、SAF、IFA、MF59、Provax、TiterMax、Montanide及びVaxfectinを含むエマルジョン、Optivax(CRL1005)、L121及びPoloaxmer4010を含むコポリマー、Stealthを含むリポソーム、BIORALを含む渦巻き型のもの、QS21、Quil A、Iscomatrix及びISCOMを含む植物由来のアジュバント、Tomatineを含む同時刺激に好適なアジュバント、PLG、PMM及びInulinを含むバイオポリマー、Romurtide、DETOX、MPL、CWS、マンノース、CpG核酸配列、CpG7909、ヒトTLR1−10のリガンド、マウスTLR1−13のリガンド、ISS−1018、35 IC31、イミダゾキノリン類、Ampligen、Ribi529、IMOxine、IRIV類、VLP類、コレラ毒素、易熱性毒素、Pam3Cys、Flagellin、GPIアンカー、LNFPIII/Lewis X、抗菌ペプチド、UC−1V150、RSV融合タンパク質及びcdiGMPを含む微生物由来のペプチド、並びにCGRP神経ペプチドを含むアンタゴニストとして好適なアジュバントからなる群から選択されてもよい。
【0193】
特に好ましくは、アジュバントは、GM−CSF、IL−12、IFNγ、本明細書で定義する免疫刺激性RNA配列、及びCpG DNA等の、ナイーブT細胞のTh1型免疫応答又は成熟の誘導を支援するアジュバントから選択されてもよい。
【0194】
本発明のワクチンは、更に、免疫グロブリン、好ましくは、IgG、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、ポリクローナル血清又は血清等から選択される更なる免疫療法薬を含有してもよい。好ましくは、そのような更なる免疫療法薬は、ペプチド/タンパク質として提供され得るか、又は、核酸、好ましくはDNA又はRNA、より好ましくはmRNAによってコードされ得る。そのような免疫刺激剤は、本発明の組成物又はワクチン組成物のmRNAコード化された抗原によって引き起こされる活性ワクチン接種に加えて不活性ワクチンの提供を許容する。
【0195】
本発明のワクチンは、更に、必要に応じて、その免疫原性又は免疫刺激能を高めるために、一つ以上の補助物質を含むことができる。本発明のワクチン、及びワクチン中に任意的に含まれるか又は阻害剤を用いて製剤化され得る補助物質の相互作用は、好ましくはそれによって達成される。補助物質の様々な種類に応じて、この点において様々な機構を考慮することができる。例えば、樹状細胞(DC)の成熟を許容する化合物、例えば、リポ多糖、TNF−α、又はCD40リガンドが、好適な補助物質の第1のクラスを形成する。一般的に、「危険信号」(LPS、GP96等)又はGM−CFS等のサイトカインの形で免疫系に影響を与える任意の薬剤を補助物質として使用することが可能であり、これが、標的化した形で免疫応答が増進及び影響を受けることを許容する。特に好ましい補助物質は、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、IFNα、IFNβ、IFNγ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、LT−β又はTNF−α等の、自然免疫応答を更に促進する、モノカイン、リンホカイン、インターロイキン又はケモカイン等のサイトカイン、及びhGH等の成長因子である。
【0196】
発明のワクチンはまた、ヒトのトール様受容体TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10への(リガンドとしての)結合親和性に起因するか、又はマウスのトール様受容体TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12又はTLR13への(リガンドとしての)結合親和性に起因して免疫刺激性であることが知られている任意の更なる化合物、NOD様受容体のリガンド、又はRIG−I様受容体のリガンドを更に含むことができる。
【0197】
これに関連して、本発明のワクチンはまた、免疫刺激性核酸、好ましくは上記で定義する免疫刺激性RNA(isRNA)を更に含んでいてもよい。
【0198】
本発明の第1の実施形態に係り定義する本発明のワクチンは、更に、更なる添加剤又は追加の化合物を含んでいてもよい。本発明のワクチンに含まれ得る更なる添加剤は、例えばTween(登録商標)等の乳化剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤、着色剤、医薬担体、味覚付与剤、医薬担体、タブレット形成剤、安定剤、酸化防止剤、及び防腐剤である。
【0199】
本発明のワクチンに含まれ得る1つの更なる添加剤は、抗菌剤であってもよい。これに関連して、当業者に公知の任意の抗菌剤を、本明細書で定義する本発明のワクチンの成分と組み合わせて使用してもよい。非限定的な抗菌剤の例としては、アミカシン、アモキシシリン、アモキシシリン−クラブラン酸、アンフォテリシンB、アンピシリン、アンピシリン−スルバクタム、アプラマイシン、アジスロマイシン、アズトレオナム、バシトラシン、ベンジルペニシリン、カスポファンギン、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セファロチン、セファゾリン、セフジニル、セフェピム、セフィキシム、セフメノキシム、セフォペラゾン、セフォペラゾン−スルバクタム、セフォタキシム、セフォキシチン、セフビロム(Cefbirome)、セフポドキシム、セフポドキシム−クラブラン酸、セフポドキシム−スルバクタム、セフブロジル(Cefbrozil)、セフキノム、セフタジジム、セフチブチン、セフチオフル、セフトビプロール、セフトリアキソン、セフロキシム、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリナフロキサシン、クリンダマイシン、クロキサシリン、コリスチン、コトリモキサゾール(トリメトプリム/スルファメトキサゾール)、ダルババンシン、ダルホプリスチン/キノプリスチン、ダプトマイシン、ジベカシン、ジクロキサシリン、ドリペネム、ドキシサイクリン、エンロフロキサシン、エルタペネム、エリスロマイシン、フルクロキサシリン、フルコナゾール、フルシトシン、ホスホマイシン、フシジン酸、ガレノキサシン、ガチフロキサシン、ジェミフロキサシン(Gemifloxacin)、ゲンタマイシン、イミペネム、イトラコナゾール、カナマイシン、ケトコナゾール、レボフロキサシン、リンコマイシン、リネゾリド、ロラカルベフ、メシリナム(Mecillnam)(アムジノシリン)、メロペネム、メトロニダゾール、メジオシリン、メズロシリン−スルバクタム、ミノサイクリン、モキシフロキサシン、ムピロシン、ナリジクス酸、ネオマイシン、ネチルマイシン、ニトロフラントイン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキサシリン、ペフロキサシン、ペニシリンV、ピペラシリン、ピペラシリン−スルバクタム、ピペラシリン−タゾバクタム、リファンピシン、ロキシスロマイシン、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、ストレプトマイシン、スルバクタム、スルファメトキサゾール、テイコプラニン、テラバンシン、テリスロマイシン、テモシリン、テトラサイクリン、チカルシリン、チカルシリン−クラブラン酸、チゲサイクリン、トブラマイシン、トリメトプリム、トロバフロキサシン、タイロシン、バンコマイシン、バージニアマイシン、及びボリコナゾールが挙げられる。
【0200】
本発明のワクチンに含まれ得る別の添加剤は、抗ウイルス剤であってもよいが、好ましくは、これらに限定はされないが、ヌクレオシド類似体(例えば、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、及びリバビリン)、ホスカーネット、アマンタジン、ペラミビル、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、リトナビル、α−インターフェロン及び他のインターフェロン、AZT、t−705、ザナミビル(リレンザ(登録商標))、及びオセルタミビル(タミフル(登録商標))である。他の抗ウイルス剤としては、インフルエンザウイルスワクチン、例えば、Fluarix(登録商標)(グラクソスミスクライン)、FluMist(登録商標)(Medlmmune Vaccines)、Fluvirin(登録商標)(Chiron Corporation)、Flulaval(登録商標)(グラクソスミスクライン)、Afluria(登録商標)(CSL Biotherapies Inc.)、Agriflu(登録商標)(ノバルティス)又はFluzone(登録商標)(アベンティス・パスツール)が挙げられる。
【0201】
本発明のワクチンは、典型的には、「安全かつ有効な量」の、本明細書で定義する本発明のワクチンの成分を含む。本明細書で使用するように、「安全かつ有効な量」は、好ましくは、本明細書で定義する疾患又は障害の前向きな変化(positive modification)を著しく誘導するのに十分な成分、好ましくは少なくとも1つのmRNAの量を意味する。但し、同時に、「安全かつ有効な量」は、重大な副作用を回避し、利点とリスクとの合理的な関係を許容するのに十分に小さい。これらの限界の決定は、典型的には合理的な医学的判断の範囲内である。
【0202】
第1の実施形態に係り定義するように、少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1のmRNAを含む本発明のワクチンは、好ましくは3歳以下又は2歳以下、好ましくは1歳(12ヶ月)以下、更に好ましくは9ヶ月以下、6ヶ月以下又は3ヶ月以下の年齢を示す、新生児及び乳幼児の少なくともいずれかにおける疾患の予防及び治療に用いてもよい。治療は、好ましくは、新生児又は乳幼児のワクチン接種を含み、前記新生児又は乳幼児の免疫応答を誘発する。好ましくは、新生児又は乳幼児は、典型的には3歳以下又は通常2歳以下、好ましくは1.5歳以下、より好ましくは1歳(12ヶ月)以下、更により好ましくは9ヶ月以下、6ヶ月以下、又は更に3ヶ月以下の年齢を示す哺乳動物(患者)、好ましくはヒト(患者)である。従って、新生児又は乳幼児は、約0歳〜3歳又は通常0歳〜2歳、好ましくは0歳〜1.5歳、より好ましくは0歳〜1歳(0ヶ月〜12ヶ月)、更により好ましくは0ヶ月〜9ヶ月以下、0ヶ月〜6ヶ月以下、又は更に0ヶ月〜3ヶ月以下の年齢を成してもよい。新生児又は乳幼児は、更に、典型的には1歳(12ヶ月)以下の年齢、好ましくは9ヶ月以下、6ヶ月以下、又は更に3ヶ月以下の年齢を示す新生児に区別され得る。従って、新生児又は乳幼児は、約0歳〜1歳(0ヶ月〜12ヶ月)、好ましくは0ヶ月〜9ヶ月以下、0ヶ月〜6ヶ月以下、又は更に0ヶ月〜3ヶ月以下の年齢を成してもよい。新生児又は乳幼児は、更に、典型的には3ヶ月を超える年齢、好ましくは6ヶ月の年齢、より好ましくは9ヶ月を超える年齢を示すが、その上、3歳以下又は通常2歳以下の年齢、好ましくは1.5歳以下の年齢、より好ましくは1歳(12ヶ月)以下の年齢、更により好ましくは9ヶ月以下又は更に6ヶ月以下の年齢を示す新生児に区別され得る。従って、新生児又は乳幼児は、約3ヶ月〜約3歳、約3ヶ月〜約2歳、約3ヶ月〜約1.5歳、又は約3ヶ月〜約1歳(12ヶ月)、約6ヶ月〜約3歳、約6ヶ月〜約2歳、約6ヶ月〜約1.5歳、又は約6ヶ月〜約1歳(12ヶ月)、約9ヶ月〜約3歳、約9ヶ月〜約2歳、又は約9ヶ月〜約1.5歳、約12ヶ月〜約3歳、約12ヶ月〜約2歳、又は約12ヶ月〜約1.5歳の年齢を成してもよい。新生児又は乳幼児は、男性又は女性であってもよい。
【0203】
本発明の第1の実施形態において更に定義したように、治療は、患者のワクチン接種を含み、前記患者において免疫応答を誘発する。これに関連して、ワクチン接種は、典型的には本発明のワクチンの投与を介して行われる。投与は、非経口で、経口で、経鼻で、経肺で、吸入(例えば、エアロゾル又はスプレー経由)によって、局所的に、経直腸的に、口腔的に、経膣的に、又は埋込み型容器を介して行われてもよい。本明細書で用いられる非経口という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内、頭蓋内、経皮、皮内、肺内、腹腔内、心臓内、動脈内、及び舌下注射又は注入技術を含む。好ましくは、本発明のワクチンは、真皮内のAPCに到達させるために皮内投与されてもよい。同様に好ましくは、本明細書で定義する本発明のワクチンは、これらに限定はされないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液又は溶液を含む任意の経口的に許容される剤形で経口投与されてもよい。同様に好ましくは、治療の標的が、例えば皮膚又は他の接近可能な上皮組織の疾患を含む、局所適用によって容易に接近可能な領域または器官を含む場合は特に、本発明のワクチンは、局所的に投与されてもよい。好適な局所製剤は、各々のこれらの領域又は器官に対して容易に用意される。局所適用のために、本発明のワクチンは、本発明のワクチン、及び任意的に1つ以上の担体中に懸濁又は溶解された本明細書で定義する更なる成分を含む、好適な軟膏中に調合されてもよい。経肺投与もまた、例えば、吸入器又は噴霧器の使用、及びスプレーとして使用するためのエアロゾル化剤を用いた調合により、採用することができる。
【0204】
本発明のワクチンは、他の治療法、好ましくは本明細書で定義する疾患のための治療法、又は他の治療法と組み合わせて使用されてもよい。本明細書で定義する、「組み合わせて」の用語は、本明細書で定義する新生児又は乳幼児への2種以上の治療法の施行に関連して、1種を超える治療法、好ましくは2種又はそれ以上の治療法の使用を指す。「組み合わせて」の用語の使用は、治療法が本明細書で定義する新生児又は乳幼児に施される順序を制限するものではない。例えば、第1の治療法(例えば、第1の予防剤又は治療剤)は、第2の治療法の前(例えば、5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、12時間前、16時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、8週間前、又は12週間前)に、第2の治療法と同時に、又は第2の治療法の後(例えば、5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、16時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、8週間後、又は12週間後)で、本明細書で定義する新生児又は乳幼児に対していつでも施すことができる。幾つかの態様では、1種以上の他の治療法は、手術、免疫療法、遺伝子療法、疼痛治療、抗発熱薬治療、呼吸を緩和又は補助する治療法、他の(能動的又は受動的な)ワクチン接種/免疫付与、抗ウイルス治療、抗菌治療、抗真菌治療、抗寄生虫治療、抗アレルギー治療、従来の腫瘍治療、及び化学治療であり、又は、本明細書で記載する任意の疾患における、又は本明細書で記載する任意の疾患のための、好ましくは、狂犬病、及びRSVウイルス感染等のための予防使用を含む。
【0205】
特定の態様においては、治療は、5分間未満離して、30分間未満離して、1時間離して、約1時間離して、約1時間〜約2時間離して、約2時間〜約3時間離して、約3時間〜約4時間離して、約4時間〜約5時間離して、約5時間〜約6時間離して、約6時間〜約7時間離して、約7時間〜約8時間離して、約8時間〜約9時間離して、約9時間〜約10時間離して、約10時間〜約11時間離して、約11時間〜約12時間離して、約12時間〜18時間離して、18時間〜24時間離して、24時間〜36時間離して、36時間〜48時間離して、48時間〜52時間離して、52時間〜60時間離して、60時間〜72時間離して、72時間〜84時間離して、84時間〜96時間離して、96時間〜120時間離して施されてもよい。特定の態様では、2種以上の治療法は、患者の同じ訪問の間に投与される。
【0206】
本明細書で定義する少なくとも1つの抗原をコードするmRNAの典型的な用量は、これらに限定はされないが、患者当たり、約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10μg、又は30μg〜300μgのmRNAの範囲としてもよい。好ましくは、本発明のワクチンは、1回投与、2回投与、3回投与又は更に多くの投与を含むように、それに応じて処方される。
【0207】
特定の態様によれば、本発明のワクチンは、単回用量として、新生児又は乳幼児に投与してもよい。特定の態様において、本発明のワクチンは、第2の投与、任意的に更には第3、第4の(又はそれを超える)投与が後に続く単回用量として、新生児又は乳幼児に投与してもよい。この態様によれば、本発明のワクチンの追加免疫接種は、第2(又は第3、第4等)の接種の後に、好ましくは以下に定義する特定の時間間隔で、新生児又は乳幼児に投与してもよい。特定の態様においては、そのような本発明のワクチンの追加免疫接種は、本明細書で定義する本発明のワクチンに対して定義された追加の化合物又は成分を利用してもよい。幾つかの態様においては、同じ本発明のワクチンの投与及び追加免疫投与の少なくともいずれかを繰り返してもよく、そのような投与は、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2ヶ月間、75日間、例えば、1日間〜5日間、1日間〜10日間、5日間〜15日間、10日間〜20日間、15日間〜25日間、20日間〜30日間、25日間〜35日間、30日間〜50日間、40日間〜60日間、50日間〜70日間、1日間〜75日間、又は1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間、30ヶ月間、36ヶ月間、1年間、2年間、3年間、5年間、10年間、15年間、20年間、30年間、40年間、50年間、60年間、又はそれ以上離れてもよい。特定の態様においては、本発明のワクチンは、1年間に1回の単回用量として対象に投与してもよい。
【0208】
特定の態様においては、本発明のワクチンは、秋又は冬において、即ち、各半球のインフルエンザの季節の前又はその間に、新生児又は乳幼児に対して投与してもよい。一態様では、新生児又は乳幼児は、第2の投与(必要な場合)をインフルエンザの季節のピークの前に付与することができるように、季節の序盤、例えば9月下旬又は10月上旬において彼/彼女の第1の投与を施される。
【0209】
特定の態様において、本発明のワクチンは、好ましくは、本明細書で定義する疾患の治療の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、10日前、15日前、30日前、45日前、2ヶ月前、75日前、例えば、1日〜5日前、1日〜10日前、5日〜15日前、10日〜20日前、15日〜25日前、20日〜30日前、の25日〜35日前、30日〜50日前、40日〜60日前、50日〜70日前、1日〜75日前、又は1ヶ月前、2ヶ月前、3ヶ月前、4ヶ月前、5ヶ月前、又は少なくとも6ヶ月前、7ヶ月前、8ヶ月前、9ヶ月前、10ヶ月前、11ヶ月前、又は12ヶ月前に、本明細書で定義する疾患の治療に先立って、新生児又は乳幼児に対して少なくとも1回、好ましくは2回以上投与されてもよい。第2の又は更なる用量は、次いで、治療の前に、治療と同時に、又は治療の後に直接投与されてもよい。
【0210】
更に、本発明の第1の実施形態に係り定義する疾患は、感染症、好ましくは(ウイルス性、細菌性又は原虫性)感染症、自己免疫疾患、アレルギー、アレルギー性疾患、又は癌又は腫瘍疾患から選択される任意の疾患である。
【0211】
そのような疾患は、癌又は腫瘍疾患を含み、好ましくは、黒色腫、悪性黒色腫、結腸癌、リンパ腫、肉腫、芽細胞腫、腎癌、胃腸腫瘍、神経膠腫、前立腺腫瘍、膀胱癌、直腸腫瘍、胃癌、食道癌、膵臓癌、肝癌、乳癌(mammary carcinoma)(=乳癌(breast cancer))、子宮癌、子宮頸癌、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、白血病、肝癌、様々なウイルス誘導腫瘍、例えば、パピローマウイルス誘発癌(例えば、子宮頸癌(cervical carcinoma)=子宮頸癌(cervical cancer))、腺癌、ヘルペスウイルス誘発腫瘍(例えば、バーキットリンパ腫、EBV誘発B細胞リンパ腫)、B型肝炎誘発腫瘍(肝細胞癌)、HTLV−1誘発リンパ腫及びHTLV−2誘発リンパ腫、聴神経腫、肺癌(lung carcinoma)(=肺癌(lung cancer)=気管支癌)、小細胞肺癌、咽頭癌、肛門癌、グリア芽腫、直腸癌、星状細胞腫、脳腫瘍、網膜芽細胞腫、基底細胞腫、脳転移、髄芽腫、膣癌、膵臓癌、精巣癌、ホジキン症候群、髄膜腫、シュネーベルガー疾患、脳下垂体腫瘍、菌状息肉腫、カルチノイド、神経線維腫症、棘細胞癌、バーキットリンパ腫、喉頭癌、腎癌、胸腺腫、子宮体部癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、尿道癌、CUP症候群、頭部/頸部腫瘍、乏突起膠腫、外陰部癌、腸癌、結腸癌、食道癌(oesophageal carcinoma)(=食道癌(oesophageal cancer))、疣病変、小腸の腫瘍、頭蓋咽頭腫、卵巣癌、生殖器腫瘍、卵巣癌(ovarian cancer)(=卵巣癌(ovarian carcinoma))、膵臓癌(pancreatic carcinoma)(=膵臓癌(pancreatic cancer))、子宮内膜癌、肝臓転移、陰茎癌、舌癌、胆嚢癌、白血病、形質細胞腫、眼瞼腫瘍、及び前立腺癌(=前立腺腫瘍)等から選択される。
【0212】
一つの更なる特定の態様によれば、本明細書で定義する疾患は、感染症、好ましくは(ウイルス性、細菌性又は原虫性)感染症を含む。そのような感染症、好ましくはウイルス性、細菌性又は原虫性感染症は、典型的には、インフルエンザ、好ましくはA型インフルエンザ、B型インフルエンザ、C型インフルエンザ又はトゴトウイルス、より好ましくは例えばヘマグルチニンサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14又はH15、及びノイラミニダーゼサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8又はN9の少なくともいずれか、又は好ましくはインフルエンザAサブタイプH1N1、H1N2、H2N2、H2N3、H3N1、H3N2、H3N3、H5N1、H5N2、H7N7又はH9N2等、又はそれ以上の組合せ、マラリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、呼吸器合胞体ウイルス感染、黄熱病、エイズ、ライムボレリア症、リーシュマニア症、炭疽病、髄膜炎、尖圭コンジローム、中空疣贅、デング熱、三日熱、エボラウイルス、風邪、初夏髄膜脳炎(FSME)、帯状疱疹(shingles)、肝炎、単純ヘルペスI型、単純ヘルペスII型、帯状疱疹(Herpes zoster)、日本脳炎、アレナウイルス関連疾患(ラッサ熱感染)、マールブルグウイルス、麻疹、口蹄疫、伝染性単核球症、(パイファー腺熱)、流行性耳下腺炎、ノーウォークウイルス感染症、天然痘、ポリオ(小児跛行)、仮性クループ、伝染性紅斑(第五病)、狂犬病、疣贅、西ナイル熱、水痘、及びサイトメガロウイルス(CMV)等のウイルス感染症、流産(前立腺炎)、炭疽病、虫垂炎、ボレリア症、ボツリヌス中毒症、カンピロバクター、クラミジア・トラコマチス(尿道の炎症、結膜炎)、コレラ、ジフテリア、鼠径肉芽腫(donavanosis)、喉頭蓋炎、発疹チフス、ガス壊疽、淋病、野兎病、ヘリコバクターピロリ、百日咳、気候性横痃、骨髄炎、レジオネラ病、ハンセン病、リステリア症、肺炎、髄膜炎、細菌性髄膜炎、炭疽病、中耳炎、マイコプラズマ・ホミニス、新生児敗血症(絨毛羊膜炎)、ノマ病、パラチフス、ペスト、ライター症候群、ロッキー山紅斑熱、サルモネラパラチフス、サルモネラチフス、猩紅熱、梅毒、破傷風、トリッペル、ツツガムシ病、結核、チフス、膣炎(vaginitis)(膣炎(colpitis))、及び軟性下疳等の細菌感染症、並びに、アメーバ症、住血吸虫症、シャーガス病、エキノコックス、裂頭条虫、魚の中毒(シガテラ中毒)、キツネ条虫、水虫、イヌ条虫、カンジダ症、酵母菌斑、疥癬、皮膚リーシュマニア症、ランブル鞭毛虫症(ジアルジア)、シラミ、マラリア、顕微鏡(microscopy)、オンコセルカ症(河川盲目症)、真菌性疾患、ウシ条虫、住血吸虫症、ブタ条虫、トキソプラズマ症、トリコモナス症、トリパノソーマ症(睡眠病)、内臓リーシュマニア症、おむつ(nappy)/おむつ(diaper)皮膚炎又は小型条虫等の寄生虫、原虫又は菌類によって引き起こされる感染症から選択される。
【0213】
別の特定の態様によれば、本明細書で定義する疾患は、以下に定義するような自己免疫疾患を含む。自己免疫疾患は、各疾患の主要な臨床病理学的特徴に応じて、全身性及び臓器特異的又は局所的な自己免疫疾患に大別することができる。自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、強皮症、関節リウマチ及び多発性筋炎を含む全身性症候群、又は内分泌学的(I型糖尿病(糖尿病1型)、橋本甲状腺炎、アジソン病等)、皮膚性(尋常性天疱瘡)、血液学的(自己免疫性溶血性貧血)及び神経系(多発性硬化症)であってもよいの局所性症候群のカテゴリに分けられてもよく、或いは、実質的に任意の体組織の限局性の塊を含むことができる。治療する自己免疫疾患は、例えば、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、糖尿病、I型糖尿病(糖尿病の1型)、慢性多発性関節炎、バセドウ病、慢性肝炎、潰瘍性大腸炎、I型アレルギー疾患、II型アレルギー疾患、III型アレルギー疾患、IV型アレルギー疾患、線維筋痛、脱毛、ベヒテレフ病、クローン病、重症筋無力症、神経皮膚炎、リウマチ性多発筋痛、全身性進行性硬化症(PSS)、ライター症候群、リウマチ性関節炎、乾癬及び血管炎等の自己免疫形、又はII型糖尿病等の、I型自己免疫疾患、II型自己免疫疾患III型自己免疫疾患、又はIV型自己免疫疾患からなる群から選択され得る。免疫システムが自己抗原に対する免疫反応を誘発する理由に関する正確な様式はこれまで解明されていないが、病因に関しては幾つかの調査結果がある。従って、自己反応は、T細胞バイパスに起因し得る。正常な免疫系は、T細胞によるB細胞の活性化を、前者が大量の抗体を産生する前に必要とする。非特異的な方法でT細胞受容体のβ−サブユニットに直接結合することにより、B細胞、又は更にT細胞のポリクローナル活性化を開始することが可能な超抗原を産生する生物による感染等、T細胞のこの要件は、珍しい例では、バイパスされ得る。別の説明では、外来性抗原が特定の宿主抗原と構造的類似性を共有することがあり、従って、この抗原に対して生産される(自己抗原を模倣している)任意の抗体もまた、理論的には、ホスト抗原に結合して免疫応答を増幅するという、「分子模倣」からの自己免疫疾患を推定している。分子模倣に基づく自己免疫疾患は、種々のウイルス抗原及び細菌抗原に関わる当業者に知られている。分子擬態の最も際立った形は、グループAのβ型溶血連鎖球菌において観察され、ヒトの心筋と抗原を共有し、リウマチ熱の心臓の原因となっている。
【0214】
従って、1つの更なる特定の態様によれば、本明細書で定義する疾患は、アレルギー又はアレルギー性疾患、即ちアレルギーに関連する疾患を含む。アレルギーは、典型的には、本明細書で定義するアレルギー抗原等の特定の外来の抗原又はアレルゲンへの異常な獲得免疫過敏症を伴う状態である。そのようなアレルギー抗原又はアレルゲンは、例えば、動物、植物、菌類、細菌等の異なる供給源に由来する抗原である本明細書で定義するアレルギー抗原から選択されてもよい。これに関連するアレルゲンとしては、例えば、鱗屑、草、花粉、カビ、薬物、又は多数の環境要因等が挙げられる。アレルギーは、通常、これらの抗原又はアレルゲンに対する局所性又は全身性の炎症反応を引き起こし、これらのアレルゲンに対する体内の免疫力をもたらす。理論に縛られることなく、幾つかの異なる病気のメカニズムは、アレルギーの発症に関与すると考えられている。P. Gell及びR. Coombsによる分類体系によれば、単語「アレルギー」は、古典的IgEメカニズムによって引き起こされるI型の過敏症に制限される。I型過敏症は、鼻水としての良性の症状から生命を脅かすアナフィラキシーショック及び死の原因となる全身炎症反応の原因となるIgE抗体による肥満細胞及び好塩基球の過剰な活性化によって特徴付けられる。よく知られている種類のアレルギーとしては、これらに限定はされないが、喘息、アレルギー性喘息(鼻粘膜の腫れをもたらす)、アレルギー性結膜炎(結膜の発赤及び痒みをもたらす)、アレルギー性鼻炎(「花粉症」)、アナフィラキシー、血管性浮腫、アトピー、アトピー性皮膚炎(湿疹)、蕁麻疹(urticaria)(じんましん(hives))、好酸球増加、呼吸器のアレルギー、虫刺されに対するアレルギー、皮膚アレルギー(湿疹、じんましん(蕁麻疹)及び(接触性)皮膚炎等の様々な発疹をもたらす、又は含む)、食品アレルギー、及び薬に対するアレルギー等が挙げられる。そのようなアレルギー性の障害又は疾患の治療は、好ましくは特異的免疫応答を引き起こす免疫反応を脱感作することにより、発生し得る。そのような脱感作は、好ましくは、医薬組成物として処方される場合に、有効量の本明細書で定義する核酸によってコードされるアレルゲン又はアレルギー抗原を投与して僅かな免疫反応を誘導することにより行うことができる。アレルゲン又はアレルギー抗原の量は、治療する患者の免疫系が特定の量のアレルゲン又はアレルギー抗原を許容するまで、後続の投与で段階的に上昇させてもよい。
【0215】
本発明に関連する疾患はまた、例えば、自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症、胎児赤芽球症、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、及び重症筋無力症等を含むII型過敏反応(細胞傷害性、抗体依存性);例えば、血清病、アルサス反応、及び全身性エリテマトーデス(SLE)等を含むIII型過敏反応(免疫複合体病);例えば、接触皮膚炎、ツベルクリン反応、慢性移植片拒絶反応、及び多発性硬化症等を含むIV型過敏反応(遅延型過敏症(DTH)、細胞性免疫記憶応答、抗体非依存);並びに、例えば、グレーブス病、及び重症筋無力症等を含むV型過敏反応(受容体媒介性自己免疫疾患)を含む。
【0216】
更に好ましい実施形態においては、本発明のワクチンは、キットとして、好ましくは部品のキットとして処方されてもよい。従って、本発明はまた、本発明のワクチンの成分を単独で、又は上記で定義する他の成分と組み合わせて、及び任意的に本発明のワクチンの投与及び用量に関する情報とともに技術的指示を含むキット、特に部品のキットを提供する。本発明のワクチンの成分は、単独で、又は上記で定義する更なる成分と組み合わせて、例えば、キットの一部における上記で定義する少なくとも1つの抗原をコードする各々の少なくとも1つのmRNA、及び好ましくは、上記で定義する少なくとも1つの抗原をコードする各々の少なくとも1つのmRNAに混合されるか又はキットの更なる部分に分かれた更なる成分等、キットの一部又はキットの異なる部分としてキット中に含まれていてもよい。そのようなキット、好ましくは部品のキットは、例えば、上述の適用又は用途のいずれかに適用することができる。
【0217】
本発明においては、特に明記していない場合、代替例及び実施形態の異なる特徴は、好適な場合は互いに組み合わせてもよい。更に、具体的に言及されていない場合は、「含む(comprising)」との用語は、「からなる(consisting of)」を意味するものとは解釈されない。しかしながら、本発明に関連して、「含む(comprising)」との用語は、好適な場合には、「からなる(consisting of)」との用語で置換されてもよい。
【0218】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、各々の個別の刊行物、又は特許出願が、具体的にかつ単独で参照することにより援用されるように、参照することにより本明細書中に援用される。前述の本発明は、明確な理解のために例示及び例としてある程度詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することのない特定の変更及び修正が行われ得ることが、本発明の教示に照らして当業者にとって容易に明らかであろう。
【0219】
以下の図面は、本発明を更に説明することを意図している。これらは、本発明の主題をそれらに限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0220】
図1A図1Aは、実験におけるマウスの体重の推移を示す図である。結果として、PR8 H1ヘマグルチニンをコードするmRNAでワクチン接種を受けた新生児マウスは、対照群mRNA単独と共にインフルエンザ曝露感染を行なったもの(全てのマウスが、8週の初日にニワトリオボアルブミンをコードする対照群mRNAでワクチン接種を行った場合は、対照群mRNAでのワクチン接種の後、約5日で死亡し、8週で対照群mRNAでワクチン接種を行った場合は、対照群mRNAでのワクチン接種の後、約6日で死亡した)に対して、有意に良好な生存率を示した(全てのマウスが生存した)。非常に驚くべきとこに、その生存率は、成体マウスの生存率に匹敵するものであった。
図1B図1Bは、新生児及び8週齢のマウスのワクチン接種(図1Aを参照)に使用した、PR8 H1 HA(インフルエンザウイルスA/プエルトリコ/8/1934のヘマグルチニン)(配列番号:384)をコードするmRNAのコード配列を示す図である。
図1C図1Cは、新生児及び8週齢のマウスのワクチン接種(図1Aを参照)に使用した、対照群としてニワトリオボアルブミン(対照群のmRNA)(配列番号:385)をコードするmRNAのコード配列を示す図である。
【実施例】
【0221】
以下実施例は、本発明を更に説明することを意図している。これらは、本発明の主題をそれらに限定することを意図するものではない。
【0222】
実施例1−mRNA構築物の調製
本実施例のために、PR8 H1 HA(インフルエンザウイルスA/プエルトリコ/8/1934のヘマグルチニン)(配列番号:384)、及び対照群としてのニワトリオボアルブミン(対照群のmRNA)(配列番号:385)をそれぞれコードするDNA配列を調製し、後続のインビボの転写反応に使用した。
【0223】
第1の調製では、PR8 H1 HAと称するDNA配列(インフルエンザウイルスA/プエルトリコ/8/1934のヘマグルチニン)(配列番号:384)(図1Bを参照)は、より良好なコドン使用及び安定化のためにGC−最適化された配列を導入することによりDNA配列をコードする野生型のヘマグルチニンを修飾することによって調製した。配列番号:384(図1Bを参照)において、対応するmRNAの配列を示す。該配列を、更にpCV19ベクターに導入し、α−グロビン−3’−UTR(muag(変異α−グロビン−3’−UTR))由来の安定化配列、3’末端における一続きの70×アデノシン(ポリAテイル)、及び3’末端における一続きの30×シトシン(ポリC−テイル)を含むように修飾した。最終的なDNA構築物の配列を、「PR8 HA H1」と称した。
【0224】
第2の調製では、対照群としてのニワトリオボアルブミンと称するDNA配列(対照群のmRNA)(配列番号:385)(図1Cを参照)は、より良好なコドン使用及び安定化のためにGC−最適化された配列を導入することによりDNA配列をコードする野生型のニワトリオボアルブミンンを修飾することによって調製した。配列番号:385(図1Cを参照)において、対応するmRNAの配列を示す。該配列を、更にpCV19ベクターに導入し、α−グロビン−3’−UTR(muag(変異α−グロビン−3’−UTR))由来の安定化配列、3’末端における一続きの70×アデノシン(ポリAテイル)、及び3’末端における一続きの30×シトシン(ポリC−テイル)を含むように修飾した。最終的なDNA構築物の配列を、「ニワトリオボアルブミン」と称した。
【0225】
更なる工程において、上記で調製した各DNAプラスミドを、T7−ポリメラーゼを用いてインビトロでmRNAに転写した。その後、得られたmRNAをPureMessenger(登録商標)(CureVac、テュービンゲン、ドイツ)を用いて精製した。
【0226】
本明細書で使用する得られた全てのmRNAは更に、使用前にプロタミンと複合体を形成した。該RNA複合体は、遊離mRNA50%と、複合体をプロタミンと形成したmRNA(mRNA:プロタミン=2:1(重量比))50%との混合物からなる。まず、mRNAは、プロタミン−乳酸リンゲル液をゆっくりとmRNAへ添加することにより、プロタミンと複合化した。複合体が安定して生成するとすぐに、遊離mRNAを添加し、手短に撹拌し、乳酸リンゲル液でワクチンの最終濃度を調節した。
【0227】
実施例2−新生児マウス及び8週齢マウスのワクチン接種
この実験では、新生児又は8週齢のマウスを、PR8 H1 HA(インフルエンザウイルスA/プエルトリコ/8/1934のヘマグルチニン、図1B)をコードする80μgのmRNAか、又は対照群としてのニワトリオボアルブミン(対照群のmRNA、図1C)コードするmRNAで二回皮内接種した。第1の注射は、生まれて初日(24時間以内)及び8週でぞれぞれ行った。最後のワクチン接種の5週間後、マウスを半数致死量の10倍のPR8ウイルス(10 LD50)に曝露した。マウスの体重を2週間に渡って制御し、元の重量の25%以上が失われたときにマウスを屠殺した。その結果を、図1Aに示す。図1Aは、実験におけるマウスの体重の推移を示している。結果として、PR8 H1ヘマグルチニンをコードするmRNAでワクチン接種を受けたマウスは、対照群mRNAのみでのインフルエンザ曝露感染(対象実験における全てのマウスが、初日にニワトリオボアルブミンをコードする対照群mRNAでワクチン接種を行った場合は、対照群mRNAでのワクチン接種の後、約5日で死亡し、8週で対照群mRNAでワクチン接種を行った場合は、対照群mRNAでのワクチン接種の後、約6日で死亡した)に対して、有意に良好な生存率を示した(全てのマウスが生存した)。全てのワクチン接種を受けた新生児マウスは、コントロールとは対照的に、PR8 H1ヘマグルチニンでの抗原投与を生き残った。
図1A
図1B
図1C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]