特許第6453995号(P6453995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6453995複合樹脂粒子とその発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6453995
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】複合樹脂粒子とその発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20190107BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   C08J9/18CES
   C08J9/18CET
   C08F255/02
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-502046(P2017-502046)
(86)(22)【出願日】2016年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2016053795
(87)【国際公開番号】WO2016136460
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2017年7月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-39020(P2015-39020)
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】森島 直也
(72)【発明者】
【氏名】森本 誠一
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−226729(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/110337(WO,A1)
【文献】 特開2011−144379(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/138916(WO,A1)
【文献】 特開2012−214691(JP,A)
【文献】 特開2014−196441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08F 255/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とをこれらの合計に対してそれぞれ50〜20質量%及び50〜80質量%の範囲で含み、前記ポリエチレン系樹脂が、密度910〜930kg/m3の低密度ポリエチレン系樹脂と酢酸ビニル含有率10〜30質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体とをこれらの合計に対してそれぞれ45〜85質量%及び15〜55質量%の範囲で含み、かつ臭素系難燃剤を実質的に含まず、前記ポリエチレン系樹脂が、3〜10質量%の酢酸ビニル含有率を有する複合樹脂粒子であり、前記複合樹脂粒子が、その約1gを温度130℃のトルエン100mlで処理したときに、トルエンに不溶なゲル分率が15〜35質量%である複合樹脂粒子。
【請求項2】
前記複合樹脂粒子が、1.0〜2.0mmの平均粒子径を有する請求項1に記載の複合樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複合樹脂粒子と揮発性発泡剤とを含む発泡性粒子。
【請求項4】
請求項3に記載の発泡性粒子を予備発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体。
【請求項6】
前記発泡成形体が、49kg/m3未満の密度を有する請求項5に記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系複合樹脂粒子とその発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。本発明によれば、難燃剤を添加することなしに、耐衝撃性及び遅燃性に優れた発泡成形体を与え得るポリスチレン系複合樹脂粒子とその発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂からなる発泡成形体は、優れた緩衝性及び断熱性を有しかつ成形が容易であることから、包装材や断熱材として多用されている。しかしながら、耐衝撃性や柔軟性が不十分であるため、割れや欠けが発生し易く、例えば精密機器製品の包装等には適さないという問題がある。
一方、ポリオレフィン系樹脂からなる発泡成形体は、耐衝撃性や柔軟性に優れているが、その成形時に大掛かりな設備を必要とする。また、樹脂の性質上、発泡粒子の形態で原料メーカーから成形加工メーカーに輸送しなければならない。そのため、嵩高い発泡粒子を輸送することになり、製造コストが上昇するという問題がある。
【0003】
そこで、上記2つの異なる樹脂の特長を併せもつ、様々なポリスチレン系複合樹脂粒子及びそれらを用いた発泡成形体が提案されている。
【0004】
例えば、特開2014−77078号公報(特許文献1)には、20〜50質量%のオレフィン系樹脂(A)と、50〜80質量%のスチレン系樹脂(B)とを含む複合樹脂(ただし、オレフィン系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計が100質量%である)を基材樹脂とし、臭素系難燃剤を含む複合樹脂発泡粒子において、スチレン系樹脂(B)には、共重合成分として、メタクリル酸の炭素数1〜10のアルキルエステル成分及びアクリル酸の炭素数1〜10のアルキルエステル成分から選択される1以上の(メタ)アクリル酸エステル成分(b1)が含まれており、スチレン系樹脂(B)100質量%における上記(メタ)アクリル酸エステル成分(b1)の含有量が2〜12質量%であり、スチレン系樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)が100〜104℃であり、臭素系難燃剤の50%分解温度が260〜340℃である複合樹脂発泡粒子が開示されている。
特許文献1によれば、この複合樹脂発泡粒子は、難燃化が難しいとされる複合樹脂を基材樹脂としながらも、複合樹脂本来の耐熱性を阻害せず、優れた機械特性を有しながら、高い難燃性を発揮できるとしている。
【0005】
また、特開2014−237747号公報(特許文献2)には、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(A)と、該樹脂(A)にスチレン系モノマーを含浸重合してなるポリスチレン系樹脂(B)との複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂発泡粒子であって、複合樹脂は、樹脂(A)20〜50質量%及び樹脂(B)50〜80質量%を含有し(ただし、樹脂(A)及び樹脂(B)の合計が100質量%)、かつ樹脂(A)が分散相を形成し、樹脂(B)が連続相を形成するモルフォロジーを示し、嵩密度が5〜15kg/m3、独立気泡率が90%以上である複合樹脂発泡粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−77078号公報
【特許文献2】特開2014−237747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の先行技術に記載されているような、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との組み合わせは、発泡成形体の良好な耐衝撃性を得る点では有利であるが、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を基材樹脂とする発泡成形体は燃え易いという傾向があり、遅燃性を満足することが難しい。そこで、先行技術では、遅燃性を満足するために臭素系難燃剤の添加を必須としているが、発泡成形体として発泡倍数20.4倍(密度49kg/m3)を超えるような高倍化は困難になる。
また、特許文献1には、複合樹脂発泡粒子の見掛け密度が10〜500kg/m3であることが好ましいと記載されているが、実際には、発泡倍数が約20倍である場合のみが検証されているに過ぎない。
さらに、特許文献1には、複合樹脂の基材樹脂が20〜50質量%のオレフィン樹脂(A)と50〜80質量%のスチレン系樹脂(B)とを含むことが記載されているが、実際には、樹脂(A)/樹脂(B)の質量比が30/70である場合のみが検証されているに過ぎない。
【0008】
一方、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)をスチレンで改質したポリエチレン系樹脂粒子の発泡成形体は、軽量性に優れているものの、耐衝撃性及び遅燃性が不十分であり、特に遅燃性の向上が望まれている。
そこで、本発明は、難燃剤を添加することなしに、耐衝撃性及び遅燃性に優れた発泡成形体を与え得るポリスチレン系複合樹脂粒子とその発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意検討の結果、密度910〜930kg/m3の低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)と、酢酸ビニルの含有率10〜30質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)とを特定の割合で含むポリエチレン系樹脂をスチレンで改質した複合樹脂粒子が、低密度ポリエチレン系樹脂をスチレンで改質した複合樹脂粒子よりも、耐衝撃性および遅燃性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とをこれらの合計に対してそれぞれ50〜20質量%及び50〜80質量%の範囲で含み、前記ポリエチレン系樹脂が、密度910〜930kg/m3の低密度ポリエチレン系樹脂と酢酸ビニル含有率10〜30質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体とをこれらの合計に対してそれぞれ45〜85質量%及び15〜55質量%の範囲で含み、かつ臭素系難燃剤を実質的に含まず、前記ポリエチレン系樹脂が、3〜10質量%の酢酸ビニル含有率を有する複合樹脂粒子であり、前記複合樹脂粒子が、その約1gを温度130℃のトルエン100mlで処理したときに、トルエンに不溶なゲル分率が15〜35質量%である複合樹脂粒子が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記の複合樹脂粒子と揮発性発泡剤とを含む発泡性粒子が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の発泡性粒子を予備発泡させて得られた発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記の発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、難燃剤を添加することなしに、耐衝撃性及び遅燃性に優れた発泡成形体を与え得るポリスチレン系複合樹脂粒子とその発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を提供することができる。
低密度ポリエチレン系樹脂をスチレンで改質した複合樹脂粒子は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂をスチレンで改質した複合樹脂粒子より、ポリエチレンの分子構造上、燃焼し難い傾向があり、本発明の複合樹脂粒子は、臭素系難燃剤を添加することなしに遅燃性を満足することが可能であり、しかも発泡成形体において密度49kg/m3未満の発泡倍数20.4倍を超える高倍化も可能である。
【0013】
また、本発明の複合樹脂粒子は、
(1)ポリエチレン系樹脂が、酢酸ビニルを3〜10質量%含有する、
(2)複合樹脂粒子が、その約1gを温度130℃のトルエン100mlで処理したときに、トルエンに不溶なゲル分率が15〜35質量%である、
(3)複合樹脂粒子が、1.0〜2.0mmの平均粒子径を有する、
の少なくとも1つの条件を満足する場合に、上記の優れた効果を更に発揮する。
さらに、本発明の発泡成形体は、49kg/m3未満の密度を有する場合に、上記の優れた効果を更に発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の複合樹脂粒子における(a)粒子表層部及び(b)粒子内部のTEM画像である。
図2】本発明の複合樹脂粒子(実施例1)における(a)粒子表層部及び(b)粒子内部のTEM画像である。
図3】本発明の複合樹脂粒子(実施例3)における(a)粒子表層部及び(b)粒子内部のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)複合樹脂粒子
本発明の複合樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とをこれらの合計に対してそれぞれ50〜20質量%及び50〜80質量%の範囲で含み、前記ポリエチレン系樹脂が、密度910〜930kg/m3の低密度ポリエチレン系樹脂と酢酸ビニル含有率10〜30質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体とをこれらの合計に対してそれぞれ45〜85質量%及び15〜55質量%の範囲で含み、かつ臭素系難燃剤を実質的に含まないことを特徴とする。
本発明において、「臭素系難燃剤を実質的に含まない」とは、複合樹脂粒子の製造過程において積極的に難燃剤、特に臭素系難燃剤を添加しないことを意味する。但し、樹脂原料などに由来する難燃成分は除外する。
【0016】
なお、本発明者らのTEM画像などの解析評価によれば、従来の複合樹脂粒子には、不定形のポリスチレン系樹脂がポリエチレン系樹脂中に分散した共連続構造領域が存在しているが(図1参照)、本発明の複合樹脂粒子には、ポリスチレン系樹脂の粒子がポリエチレン系樹脂中に分散した海島構造領域と、不定形のポリスチレン系樹脂がポリエチレン系樹脂中に分散した共連続構造領域とが混在している(図2および3参照)。
【0017】
(ポリスチレン系樹脂:PS)
本発明の複合樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を主成分とする樹脂であれば特に限定されず、スチレン又はスチレン誘導体の単独又は共重合体が挙げられる。
スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0018】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体を併用したものであってもよい。
ビニル系単量体としては、例えば、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体;(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、多官能性単量体が好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン単位数が4〜16のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンがより好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。尚、単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、単量体を併用する場合、その含有量は、スチレン系単量体が主成分となる量(例えば、50質量%以上)になるように設定されることが好ましい。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0019】
(低密度ポリエチレン系樹脂:LDPE)
本発明の複合樹脂粒子を構成する低密度ポリエチレン系樹脂は、密度910〜930kg/m3のポリエチレン系樹脂であれば特に限定されず、具体的には、実施例において用いているような市販品が挙げられる。
本発明で使用するLDPEとは、高圧法低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、長鎖分岐低密度ポリエチレン、ラジカル重合法ポリエチレン、エチレン低密度重合体で定義されたポリエチレン系樹脂のことを指す。一方、本発明で使用しない直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とは、中低圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、短鎖分岐低密度ポリエチレン、イオン重合法ポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体で定義されたポリエチレン系樹脂のことを指す。
【0020】
(エチレン−酢酸ビニル共重合体:EVA)
本発明の複合樹脂粒子を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有率が10〜30質量%のエチレンと酢酸ビニルとの共重合体であれば、特に限定されず、具体的には、実施例において用いているような市販品が挙げられる。
酢酸ビニル含有率が10質量%未満では、最終ポリエチレン系樹脂(種粒子)の酢酸ビニル含有量を一定量にする場合、低密度ポリエチレン系樹脂と混練するエチレン−酢酸ビニル共重合体の割合が多くなってしまう。エチレン−酢酸ビニル共重合体の方が低密度ポリエチレンよりも融点が低い傾向であるため、得られた発泡成形体の耐熱性が低下することがある。一方、酢酸ビニル含有率が30質量%を超えると、最終ポリエチレン系樹脂(種粒子)の酢酸ビニル含有量を一定量にする場合、低密度ポリエチレン系樹脂と混練するエチレン−酢酸ビニル共重合体の割合が少なくなってしまう。このため、最終ポリエチレン系樹脂(種粒子)における酢酸ビニルの分散性が低く、遅燃性が低下することがある。
酢酸ビニル含有率(質量%)は、例えば、10、11、12、13、14,15、16、17、18、19、20、21、22、23、24,25、26、27、28、29、30である。
エチレン−酢酸ビニル共重合体における好ましい酢酸ビニル含有率は、15〜25質量%である。
【0021】
(樹脂成分の質量割合)
本発明の複合樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とをこれらの合計に対してそれぞれ50〜20質量%及び50〜80質量%の範囲で含む。
ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の質量比のうち、ポリスチレン系樹脂が50質量%未満では、発泡性、成形加工性が不十分になることがある。一方、ポリスチレン系樹脂が80質量%を超えると、耐衝撃性や柔軟性が不十分になることがある。
ポリスチレン系樹脂の質量割合(質量%)は、例えば、50、55、60、62.5、65、67.5、70、72.5、75、80である。
好ましいポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の質量比は、40〜25質量%及び60〜75質量%の範囲である。
【0022】
本発明の複合樹脂粒子のポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体とをこれらの合計に対してそれぞれ45〜85質量%及び15〜55質量%の範囲で含む。
低密度ポリエチレン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体の質量比のうち、エチレン−酢酸ビニル共重合体が15質量%未満では、最終ポリエチレン系樹脂(種粒子)における酢酸ビニルの分散性が低く、遅燃性が低下することがある。一方、エチレン−酢酸ビニル共重合体が55質量%超えると、エチレン−酢酸ビニル共重合体の方が低密度ポリエチレンよりも融点が低い傾向であるため、得られた発泡成形体の耐熱性が低下することがある。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量割合(質量%)は、例えば、15、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55である。
好ましい低密度ポリエチレン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体の質量比は、50〜80質量%及び20〜50質量%の範囲である。
【0023】
また、ポリエチレン系樹脂は、3〜10質量%の酢酸ビニル含有率を有するのが好ましい。
酢酸ビニル含有率が3質量%未満では、得られた発泡成形体の耐衝撃性及び遅燃性が不十分であることがある。一方、酢酸ビニル含有率が10質量%を超えると、得られた発泡成形体の耐熱性が不十分であることがある。
酢酸ビニル含有率(質量%)は、例えば、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10である。
ポリエチレン系樹脂における好ましい酢酸ビニル含有率は、4〜8質量%である。
【0024】
(ゲル分率)
本発明の複合樹脂粒子は、130℃で沸騰したトルエンに対して不溶なゲル分率が15〜35質量%である、より具体的には、複合樹脂粒子の約1gを130℃のトルエン100mlで処理したときに、トルエンに不溶なゲル分率が15〜35質量%であるのが好ましい。
これにより、複合樹脂粒子を用いて成形された発泡成形体の耐衝撃性が向上する。
ゲル分率が15質量%未満では、発泡成形体の耐衝撃性が低くなり、緩衝材としての耐衝撃性が十分でないことがある。一方、ゲル分率が35質量%を超えると、発泡性、成形性等の加工性が低下し、高発泡の成形体や外観の良好な成形体が得られないことがある。
ゲル分率(質量%)は、例えば、15、16、17、18、19、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24,24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、31、32、33、34、35である。
より好ましいゲル分率は、20〜30質量%の範囲であり、さらに好ましくは25〜30質量%の範囲である。
ゲル分率の測定方法については、実施例において詳述する。
【0025】
(平均粒子径)
本発明の複合樹脂粒子は、1.0〜2.0mmの平均粒子径を有するのが好ましい。
複合樹脂粒子の平均粒子径が1.0mm未満では、高い発泡性を得られないことがある。一方、複合樹脂粒子の平均粒子径が2.0mmを超えると、成形加工時の発泡粒子の充填性が不十分になることがある。
複合樹脂粒子の平均粒子径(mm)は、例えば、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、2.0である。
より好ましい複合樹脂粒子の平均粒子径は、1.2〜1.6mmである。
【0026】
(Z平均分子量:Mz及び重量平均分子量:Mw)
本発明の複合樹脂粒子のZ平均分子量:Mzは、600,000〜1,000,000程度である。
複合樹脂粒子のZ平均分子量(×103)は、例えば、600、650、700、750、800、850、900、950、1000である。
また、本発明の複合樹脂粒子の重量平均分子量:Mwは、250,000〜450,000程度である。
複合樹脂粒子の重量平均分子量(×103)は、例えば、250、300、350、400、450である。
これらの測定方法については、実施例において詳述する。
【0027】
(2)複合樹脂粒子の製造
本発明の複合樹脂粒子は、特に限定されないが、例えば、シード重合法により製造することができる
(シード重合)
シード重合法は、一般に、種粒子に単量体を吸収させ、吸収させた後又は吸収させつつ単量体の重合を行うことにより複合樹脂粒子を得ることができる。また、重合させた後又は重合させつつ複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得ることもできる。
【0028】
具体的には、まず、水性媒体中で、上記のポリエチレン系樹脂からなる種粒子に、スチレン系単量体を吸収させ、吸収させた後又は吸収させつつスチレン系単量体の重合を行うことで複合樹脂粒子を得る。
スチレン系単量体は、これを構成する単量体を全て同時に水性媒体中に供給する必要はなく、単量体の全部あるいは一部を別々のタイミングで水性媒体中に供給してもよい。複合樹脂粒子中に添加剤を含有させる場合には、添加剤をスチレン系単量体や水性媒体中に添加しても、あるいは、種粒子中に含有させてもよい。
なお、単量体と樹脂の量はほぼ同一である。
【0029】
スチレン系単量体の重合は、例えば、60〜150℃で、2〜40時間加熱することにより行うことができる。
重合工程では、重合温度で長時間保持する、すなわちアニールするのが好ましい。
アニール工程に至るそれまでの工程において、種粒子に吸収させたスチレン系単量体及び重合開始剤は完全には反応を完了しておらず、複合樹脂粒子内部には未反応物も少なからず存在している。そのため、アニールせずに得た複合樹脂粒子を用いて発泡成形体を得た場合、スチレン系単量体等低分子量の未反応物の影響により、発泡成形体の機械的物性や耐熱性の低下や揮発性の未反応物を原因とした臭気が問題となる。そこで、アニール工程を導入することによって未反応物が重合反応を起こす時間を確保し、発泡成形体の物性に影響しないように残存する未反応物を除去することができる。
スチレン系単量体としては、複合樹脂粒子の項に例示のものが挙げられ、その使用量は、複合樹脂粒子の項に記載の範囲である。
【0030】
(種粒子)
種粒子(「核樹脂粒子」ともいう)は、上記のポリエチレン系樹脂であり、特定の質量比率の低密度ポリエチレン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体とを含む。
種粒子は、例えば、これらの樹脂を混合・溶融混錬後、ストランド状に押し出し、所望の粒子径でカットする方法により得ることができる。
核樹脂粒子の粒子径は、複合樹脂粒子の平均粒子径などに応じて適宜調整でき、好ましい粒子径は、0.2〜1.5mmの範囲であり、その平均質量は10〜100mg/100粒である。また、その形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。
【0031】
(水性媒体)
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、メチルアルコールやエチルアルコールなどの低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0032】
(分散剤)
水性媒体には、スチレン系単量体の液滴及び種粒子の分散性を安定させるために分散剤を用いてもよい。このような分散剤としては、例えば、部分けん化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの有機系分散剤;ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの無機系分散剤が挙げられる。これらの中でも、より安定な分散状態を維持することができることがあるため、無機系分散剤が好ましい。
無機系分散剤を用いる場合には、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0033】
(重合開始剤)
スチレン系単量体は、通常重合開始剤の存在下で重合する。重合開始剤は、通常スチレン系単量体と同時に種粒子に含浸させる。
重合開始剤としては、従来からスチレン系単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これら重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して、例えば0.1〜5質量部の範囲である。
【0034】
重合開始剤を種粒子又は種粒子から成長途上の粒子に均一に吸収させるために、重合開始剤を水性媒体中に添加するにあたって、重合開始剤を水性媒体中に予め懸濁又は乳化分散させた上で分散液中に添加するか、あるいは重合開始剤をスチレン系単量体に予め溶解させた上で水性媒体中に添加することが好ましい。
【0035】
重合開始剤の好ましい添加量は、スチレン系単量体100質量部あたり0.1〜0.9質量部である。
重合開始剤の添加量が0.1質量部未満では、分子量が高くなりすぎて発泡性が低下することがある。一方、重合開始剤の添加量が0.9質量部を超えると、重合速度が速くなりすぎて、ポリスチレン系樹脂の粒子がポリオレフィン系樹脂中の分散状況を制御しきれないことがある。好ましい重合開始剤の添加量は、0.2〜0.5質量部である。
【0036】
(他の成分)
なお、複合樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、可塑剤、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、滑剤、着色剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等の添加剤を添加してもよい。
また、複合樹脂粒子は、物性を損なわない範囲内において、臭素難燃剤以外の難燃剤及び難燃助剤を含んでいてもよい。
【0037】
複合樹脂粒子には、加熱発泡時に用いられる水蒸気の圧力が低くても良好な発泡成形性を維持させるために、1気圧下における沸点が200℃を超える可塑剤を含有させることができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペート等のアジピン酸エステル、ヤシ油等の可塑剤が挙げられる。
可塑剤の複合樹脂粒子中における含有量は、0.1〜3.0質量%が好ましい。
【0038】
結合防止剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコンなどが挙げられる。
気泡調整剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
架橋剤としては、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサンなどの有機過酸化物などが挙げられる。
充填剤としては、合成または天然に産出される二酸化ケイ素などが挙げられる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0039】
着色剤としては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維などのカーボンブラック、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄などのクロム酸塩、紺青などのフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、鉄黒、紅殻などの酸化物、群青のようなケイ酸塩、酸化チタンなどの無機系の顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの多環式顔料などの有機系の顔料が挙げられる。
【0040】
融着促進剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイルなどが挙げられる。
【0041】
(3)発泡性粒子
発泡性粒子は、複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含み、公知の方法により、複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させることにより製造できる。
複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させる温度としては、低いと、含浸に時間を要し、発泡性粒子の製造効率が低下することがある一方、高いと、発泡性粒子同士の合着が多量に発生することがあるので、50〜130℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
【0042】
(発泡剤)
揮発性発泡剤としては、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、ネオペンタン等炭素数5以下の脂肪族炭化水素等の揮発性発泡剤が挙げられ、特にブタン系発泡剤、ペンタン系発泡剤が好ましい。尚、ペンタンは可塑剤としての作用も期待できる。
【0043】
揮発性発泡剤の発泡性粒子中における含有量は、通常5〜13質量%の範囲とされ、8〜12質量%の範囲が好ましく、9〜11質量%の範囲が特に好ましい。
揮発性発泡剤の含有量が少なく、例えば5質量%未満では、発泡性粒子から低密度の発泡成形体を得ることができないことがあると共に、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が得られないために、発泡成形体の外観が低下することがある。一方、揮発性発泡剤の含有量が多く、例えば13質量%を超えると、発泡性粒子を用いた発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなり生産性が低下することがある。
【0044】
(発泡助剤)
発泡性粒子には、発泡剤と共に発泡助剤を含有させることができる。
発泡助剤としては、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等の1気圧下における沸点が200℃以下の溶剤が挙げられる。
【0045】
発泡助剤の発泡性粒子中における含有量は、通常0.3〜2.5質量%の範囲とされ、0.5〜2質量%の範囲が好ましい。
発泡助剤の含有量が少なく、例えば0.3質量%未満では、ポリスチレン系樹脂の可塑化効果が発現しないことがある。一方、また、発泡助剤の含有量が多く、2.5質量%を超えると、発泡性粒子を発泡させて得られる発泡成形体に収縮や融けが発生して外観が低下する、あるいは発泡性粒子を用いた発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなることがある。
【0046】
(4)発泡粒子(「予備発泡粒子」ともいう)
発泡粒子は、公知の方法により、発泡性粒子を所定の嵩密度に予備発泡させることにより得られ、蒸気を導入するバッチ式発泡や連続発泡、加圧下からの放出発泡が挙げられる。
本発明の発泡性粒子は、20〜200kg/m3の範囲の嵩密度を有するのが好ましい。
発泡性粒子の嵩密度が20kg/m3未満では、発泡成形体が収縮しやすく外観を損なうことがある。一方、発泡性粒子の嵩密度が200kg/m3を超えると、発泡成形体として軽量化のメリットが損なわれることがある。
発泡粒子の密度(kg/m3)は、例えば、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、48、50、75、100、125、150、175、200である。
好ましい発泡性粒子の嵩密度は、20〜48kg/m3の範囲である。
予備発泡においては、必要に応じて発泡する際にスチームと同時に空気を導入してもよい。
【0047】
(5)発泡成形体
発泡成形体は、公知の方法、例えば、発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して発泡粒子を発泡させながら、発泡粒同士を熱融着させることにより得られる。
本発明の発泡成形体は、20〜200kg/m3の範囲の密度を有するのが好ましい。
発泡成形体の密度が20kg/m3未満では、遅燃性および耐衝撃性が十分でないことがある。一方、発泡成形体の密度が200kg/m3を超えると、発泡成形体の重量質量が増加し、輸送コストが高くなるため好ましくないことがある。
発泡成形体の密度(kg/m3)は、例えば、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、48、50、75、100、125、150、175、200である。
好ましい発泡成形体の密度は、20〜48kg/m3の範囲である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
実施例および比較例においては、得られた複合樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体を次のようにして評価した。
なお、実施例8〜11は、参考例である。
【0049】
<ポリエチレン系樹脂粒子(種粒子)の酢酸ビニル含有率>
試料を0.1〜0.5mg精秤し、キューリー点が445℃の強磁性金属体(パイロホイル:日本分析工業株式会社製)に圧着するように包み、キューリーポイントパイロライザーJPS−700型(日本分析工業製)装置にて分解させて生成した酢酸をガスクロマトグラフGC7820(アジレント・テクノロジー株式会社製)(検出器:FID)を用いて測定し、ピーク面積を使用して予め準備した絶対検量線より算出する。
[熱分解条件]
・加熱(445℃−5sec)
・オーブン温度(300℃)
・ニードル温度(300℃)
[GC測定条件]
・カラム(EC−5(φ0.25mm×30m(膜厚0.25μm)):GRACE社製)
・GCオーブン昇温条件:初期温度 50℃(0.5min保持)
第1段階昇温速度 10℃/min(200℃まで)
第2段階昇温速度 20℃/min(290℃まで)
最終温度 320℃(0.5min保持)
・キャリアーガス(He)
・He流量(25mL/min)
・注入口圧力(100kPa)
・注入口温度(300℃)
・検出器温度(300℃)
・スプリット比(1/30)
検量線作成用標準試料は、酢酸ビニル含有率=4%の日本ポリエチレン株式会社製 EVA樹脂 ノバテックLV−115を使用する。
【0050】
<複合樹脂粒子のゲル分率>
ゲル分率(質量%)の測定は、以下のように行う。
200mLナスフラスコに複合樹脂粒子1.0gを精秤し、トルエン100mLと沸騰石0.03gを加え、冷却管を装着し、130℃に保ったオイルバスに浸けて24時間還流後、ナスフラスコ内の溶解液が冷めないうちに80メッシュ(線径φ0.12mm)金網にて濾過する。樹脂不溶物がある金網を真空オーブンにて1時間乾燥させた後、ゲージ圧で−0.06MPaで2時間乾燥させてトルエンを除去し、室温まで冷却後、金網上の不溶樹脂質量を精秤する。ゲル分率(質量%)は、以下の算出式により求める。
ゲル分率(質量%)=金網上の不溶樹脂質量(g)/試料質量(g)×100
【0051】
<複合樹脂粒子の平均粒子径>
平均粒子径とはD50で表現される値である。
具体的には、ロータップ型篩振とう機(飯田製作所製)を用いて、篩目開き4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm及び0.180mmのJIS標準篩(JIS Z8801−1:2006)で試料約25gを10分間分級し、篩網上の試料質量を測定する。得られた結果から累積質量分布曲線を作成し、累積質量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とする。
【0052】
<複合樹脂粒子のポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)及び重量平均分子量(Mw)>
ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量(Mz)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した、ポリスチレン換算平均分子量を意味する。以下では、発泡成形体におけるポリスチレン系樹脂の各種平均分子量の測定法を説明しているが、発泡成形体は、複合樹脂粒子の集合体であり、複合樹脂粒子から発泡成形体を製造するまでの工程により各種平均分子量は変化しないため、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び予備発泡粒子の各種平均分子量は、発泡成形体のものと同じである。
まず、スライサー(富士島工機社製FK−4N)にて発泡成形体を厚さ0.3mm、長さ100mm、幅80mmにスライスし、これを分子量測定用試料として扱う。具体的には、試料3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLにて24時間静置して完全溶解させ、得られた溶液をGL社製非水系0.45μmのクロマトディスク(13N)にて濾過した上で次の測定条件にてクロマトグラフを用いて測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の平均分子量を求める。また、その時点で完全溶解していない場合は、更に24時間静置毎(合計72時間まで)に完全溶解しているか否かを確認し、72時間後に完全溶解できない場合は、試料に架橋成分が含まれていると判断し、溶解した成分の分子量を測定する。
【0053】
(測定条件)
使用装置:東ソー社製 HLC−8320GPC EcoSECシステム(RI検出器内蔵)
ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn SuperHZ−H(4.6mmI.D.×2cm)×1本
カラム:東ソー社製 TSKgel SuperHZM−H(4.6mmI.D.×15cm)×2本
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
移動相:THF
移動相流量:サンプル側ポンプ=0.175mL/min
リファレンス側ポンプ=0.175mL/min
検出器:RI検出器
試料濃度:0.3g/L
注入量:50μL
測定時間:0−25min
ランタイム:25min
サンプリングピッチ:200msec
【0054】
(検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料は、東ソー社製、商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、5,480,000、3,840,000、355,000、102,000、37,900、9,100、2,630、500のものと、昭和電工社製、商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1,030,000のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(1,030,000)、グループB(3,840,000、102,000、9,100、500)及びグループC(5,480,000、355,000、37,900、2,630)にグループ分けした後、グループAを5mg秤量後THF20mLに溶解し、グループBも各々5〜10mg秤量後THF50mLに溶解し、グループCも各々1mg〜5mg秤量後THF40mLに溶解した。標準ポリスチレン検量線は、作成したA、B、及びC溶液50μLずつを注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)をHLC−8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC−WS)にて作成することにより得られ、その検量線を用いて平均分子量を算出する。
【0055】
<発泡粒子の嵩密度及び嵩倍数>
予備発泡粒子の嵩密度は、下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子をメスシリンダに500cm3の目盛りまで充填する。但し、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達していれば、充填を終了する。次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。次式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(kg/m3)=W÷500×1000
嵩密度の逆数の1000倍が嵩倍数である。
【0056】
<発泡成形体の密度及び発泡倍数>
発泡成形体の密度は、JIS A9511:1995「発泡プラスチック保温板」記載の方法で測定する。
得られた発泡成形体から10cm×10cm×3cm(300cm3)の試験片を切り出し、その質量W(g)を小数以下2位で秤量する。
得られた発泡成形体の質量Wおよび発泡成形体の体積から、次式により、発泡倍数(倍)を算出する。
発泡成形体の密度(kg/m3)=W÷300×1000
密度の逆数の1000倍が倍数である。
【0057】
<発泡成形体の圧縮強度>
JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載の方法により測定する。すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)、万能試験機データ処理UTPS−237(ソフトブレーン社製)を用いて、試験体サイズは50×50×厚み25mm(加圧面側のみにスキン面あり)で圧縮速度を10.0mm/min(1分あたりの移動速度ができるだけ試験片厚さの50%に近い速度)とする。厚みの10%圧縮時の圧縮応力(MPa)を測定する。試験片の数は3個とし、JIS K7100:1999「プラスチック−状態調節及び試験のための標準雰囲気」の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定する。
圧縮応力は次式により算出する。
σ10 = F10/A0
σ10 : 圧縮応力(MPa)
10 : 10%変形時の荷重(N)
0 : 試験片の初めの断面積(mm2
【0058】
<発泡成形体の曲げ強度及び曲げ破断点変位>
曲げ強度、及び曲げ破断点変位量はJIS K7221−1:2006「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:たわみ特性の求め方」記載の方法により測定する。すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)、万能試験機データ処理ソフトUTPS−237(ソフトブレーン社製)を用いて、試験片サイズは幅25×長さ130×厚み20mm(加圧面側のみにスキン面あり)で、試験速度を10mm/min、加圧くさび5R、支持台5Rとして支点間距離100mmで、試験片のスキンを持たない面が伸びるように加圧し測定する。試験片の数は5個とし、JIS K7100:1999「プラスチック−状態調節及び試験のための標準雰囲気」の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定する。
曲げ強さ(MPa)は次式により算出する。
R =(1.5FR×L/bd2)×103
R :曲げ強さ(MPa)
R:最大荷重(kN)
L :支点間距離(mm)
b :試験片の幅(mm)
d :試験片の厚さ(mm)
この試験において、破断検出感度を0.5%に設定し、直前荷重サンプリング点と比較して、その減少が設定値0.5%(たわみ量:30mm)を超えた時、直前のサンプリング点を曲げ破断点変位量(mm)として測定し、試験数5の平均を求める。
【0059】
得られた曲げ破断点変位量を次の基準で評価する。曲げ破断点変位量が大きいほど発泡成形体の柔軟性が大きいことを示す。
○(良) :曲げ破断点変位量が15mm以上
△(可) :曲げ破断点変位量が12mm以上15mm未満の範囲
×(不可):曲げ破断点変位量が12mm未満
【0060】
<発泡成形体の落球衝撃値>
JIS K7211:1976「硬質プラスチックの落錘衝撃試験方法通則」に記載の方法に準拠して落球衝撃強度を測定する。
得られた発泡成形体を温度50℃で1日間乾燥した後、この発泡成形体から40mm×215mm×20mm(厚さ)の試験片(6面とも表皮なし)を切り出す。
次いで、支点間の間隔が150mmになるように試験片の両端をクランプで固定し、重さ321gの剛球を所定の高さから試験片の中央部に落下させて、試験片の破壊の有無を観察する。
試験片5個が全数破壊する最低の高さから全数破壊しない最高の高さまで5cm間隔で剛球の落下高さ(試験高さ)を変えて試験して、落球衝撃値(cm)、すなわち50%破壊高さを次の計算式により算出する。
【0061】
H50=Hi+d[Σ(i・ni)/N±0.5]
式中の記号は次のことを意味する。
H50 :50%破壊高さ(cm)
Hi :高さ水準(i)が0のときの試験高さ(cm)であり、試験片が破壊することが予測される高さ
d :試験高さを上下させるときの高さ間隔(cm)
i :Hiのときを0とし,1つずつ増減する高さ水準(i=…−3、−2、−1、0、1、2、3…)
ni :各水準において破壊した(又は破壊しなかった)試験片の数で、いずれか多いほうのデータを使用(同数の場合はどちらを使用してもよい)
N :破壊した(又は破壊しなかった)試験片の総数(N=Σni)で、いずれか多いほうのデータを使用(同数の場合はどちらを使用してもよい)
±0.5:破壊したデータを使用するときは負の数、破壊しなかったデータを使用するときは正の数を採用
【0062】
得られた落球衝撃値を次の基準で評価する。落球衝撃値が大きいほど発泡成形体の耐衝撃性が大きいことを示す。
○(良) :落球衝撃値が30cm以上
△(可) :落球衝撃値が20cm以上30cm未満の範囲
×(不可):落球衝撃値が20cm未満
【0063】
<発泡成形体の加熱寸法変化率:耐熱性評価>
JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に記載のB法にて加熱寸法変化率を測定する。
得られた発泡成形体を温度50℃で1日間乾燥した後、この発泡成形体から試験片150×150×30mm(厚さ)を切り出し、その中央部に縦および横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるよう記入し、80℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間置いた後に取出し、標準状態の場所に1時間放置後、縦および横線の寸法を下記式によって測定する。
S=(L0−L1)/L0×100
式中、Sは加熱寸法変化率(%)、L1は加熱後の平均寸法(mm)、L0は初めの平均寸法(mm)をそれぞれ表す。
【0064】
得られた加熱寸法変化率Sを次の基準で評価する。
○:0≦S<1.5(寸法変化率が低く、寸法の安定性が良好)
△:1.5≦S<3(寸法の変化がみられるものの、実用上使用可能)
×:S≧3(寸法の変化が著しくみられ、実用上使用不可能)
【0065】
<発泡成形体の燃焼速度:遅燃性評価>
米国自動車安全基準FMVSS302に準拠した方法で燃焼速度を測定する。
300×400×30mm(厚さ)の成形品から350mm×100mm×12mm(厚み)試験片を切り出し、少なくとも350mm×100mmの二面には表皮が存在するものとする。
得られた燃焼速度を次の基準で評価する。
○: 80mm/min以下
△: 100mm/min以下
×: 100mm/minを超える
【0066】
(実施例1)
(複合樹脂粒子の作製)
(種粒子の作製)
低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE(1):密度923kg/m3、融点112℃、MFR0.3g/10分、日本ポリエチレン株式会社製、品名:ノバテックLD LF122)100質量部およびエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA(1):酢酸ビニル含有率15%、融点89℃、MFR1.0g/10分、日本ポリエチレン株式会社製、品名:ノバテックEVA LV430)67質量部とをタンブラーミキサーに投入し、10分間混合した。
【0067】
次いで、得られた樹脂混合物を単軸押出機(株式会社星プラスチック製、型式:CER40Y 3.7MB−SX、口径40mmφ、ダイスプレート:口径1.5mm)に供給して、温度230〜250℃で溶融混練し、ストランドカット方式によりファンカッター(株式会社星プラスチック製、型式:FCW−110B/SE1−N)にて円筒状0.40〜0.60mg/個(平均0.5mg/個)に切断し、ポリエチレン系樹脂よりなる種粒子4000gを得た。種粒子の酢酸ビニル含有率を測定し、表1に示す。
【0068】
(複合樹脂粒子の作製)
次に、撹拌機付の5リットルのオートクレーブに、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.15gを純水1900gに分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に温度30℃で得られた種粒子600gを分散させて10分間保持し、次いで温度60℃に昇温して懸濁液を得た。
更に、得られた懸濁液に、重合開始剤としてジクミルパーオキサイドを0.31g溶解させたスチレン単量体260gを30分かけて滴下した。滴下後、30分間保持することで、種粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、温度130℃に昇温し、この温度で1時間40分重合(第1重合)させた。
【0069】
次に、温度90℃に下げた懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.65gを純水100gに溶解した水溶液を投入した後、ベンゾイルパーオキサイドを3.03g、t−ブチルパーオキシベンゾエートを0.28g、ジクミルパーオキサイドを5.34g、及び油溶性重合禁止剤として2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を0.06g溶解させたスチレン単量体400gを2時間かけて滴下した。その後、スチレン単量体740gを2時間かけて滴下した。スチレン単量体合計量は、種粒子100質量部に対して、233質量部とした。滴下後、気泡調整剤としてエチレン・ビスステアリン酸アマイド8.0gを投入し、温度90℃で1時間30分保持することで、種粒子中にスチレン単量体を含浸させた。含浸後、温度143℃に昇温し、この温度で2時間保持して重合(第2重合)させた。この重合の結果、複合樹脂粒子2000gを得ることができた。
【0070】
(発泡性粒子の作製)
次いで、温度30℃以下まで冷却し、オートクレーブから複合樹脂粒子を取り出した。複合樹脂粒子2kgと水2リットルとドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.50gを、5リットルの撹拌機付オートクレーブに入れた。更に、発泡剤としてブタン(n−ブタン:イソブタン=7:3(質量比))520ミリリットル(300g)をオートクレーブに入れた。この後、温度70℃に昇温し、3時間撹拌を続けることで発泡性粒子2200gを得た。
その後、30℃以下まで冷却して、発泡性粒子をオートクレーブから取り出し、脱水乾燥させた。
得られた発泡性粒子について、物性を測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0071】
(発泡粒子及び発泡成形体の作製)
次いで、得られた発泡性粒子を水蒸気で嵩密度25.0kg/m3に予備発泡させることで、発泡粒子を得た。
得られた発泡粒子について、物性を測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、400mm×300mm×30mmの大きさの成形用金型に入れた。
その後、0.075MPaの水蒸気を40秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、密度25.0kg/m3(発泡倍数40倍)の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の外観及び融着は共に良好であった。
得られた発泡成形体について、物性を測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0072】
(実施例2)
実施例1と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子を得、それらの物性を測定・評価した。
発泡成形体の作製において、0.07MPaの水蒸気を35秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却すること以外は、実施例1と同様にして密度20.0kg/m3(発泡倍数50倍)の発泡成形体を得、その物性を測定・評価した。
得られた結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
種粒子の作製において、EVA(1)を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、それらの物性を測定・評価した。
得られた結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
種粒子の作製において、EVA(1)を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子を得、それらの物性を測定・評価した。
発泡成形体の作製において、0.09MPaの水蒸気を35秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却すること以外は、実施例1と同様にして密度20.0kg/m3(発泡倍数50倍)の発泡成形体を得、その物性を測定・評価した。
得られた結果を表1に示す。
【0075】
(比較例3)
種粒子の作製において、LDPE(1)の代わりに直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE:密度924kg/m3、融点121℃、MFR0.5g/10分、東ソー株式会社製、品名:ニポロン−L T140A)を用い、EVA(1)の代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA(4):酢酸ビニル含有率15%、密度936kg/m3、融点88℃、MFR3.0g/10分、東ソー株式会社製、品名:ウルトラセン626)を用いること以外は、実施例1と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、それらの物性を測定・評価した。
得られた結果を表1に示す。
【0076】
(実施例3)
種粒子の作製において、EVA(1)の代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA(2):酢酸ビニル含有率19%、密度939kg/m3、融点86℃、MFR2.5g/10分、ハンファケミカル社製、品名:EVA2319)を用い、ポリエチレン系樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体=79/21及び種粒子/ポリスチレン系樹脂=40/60とすること、及び複合樹脂粒子の作製時に、純水1900gに水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウムを0.1g添加したこと以外は、実施例1と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子を得、それらの物性を測定・評価した。
発泡成形体の作製において、0.075MPaの水蒸気を40秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却すること以外は、実施例1と同様にして密度33.3kg/m3(発泡倍数30倍)の発泡成形体を得、その物性を測定・評価した。
得られた結果を表2に示す。
【0077】
(実施例4)
種粒子の作製において、ポリエチレン系樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体=68/32とすること以外は、実施例3と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子を得、それらの物性を測定・評価した。
発泡成形体の作製において、0.070MPaの水蒸気を35秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却すること以外は、実施例1と同様にして密度33.3kg/m3(発泡倍数30倍)の発泡成形体を得、その物性を測定・評価した。
得られた結果を表2に示す。
【0078】
(実施例5)
種粒子の作製において、ポリエチレン系樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体=58/42とすること以外は、実施例3と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子を得、それらの物性を測定・評価した。
発泡成形体の作製において、0.070MPaの水蒸気を35秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却すること以外は、実施例1と同様にして密度33.3kg/m3(発泡倍数30倍)の発泡成形体を得、その物性を測定・評価した。
得られた結果を表2に示す。
【0079】
(比較例4)
種粒子の作製において、EVA(2)を用いず、種粒子/ポリスチレン系樹脂=40/60とすること以外は、実施例3と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子を得、それらの物性を測定・評価した。
発泡成形体の作製において、0.09MPaの水蒸気を35秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却すること以外は、実施例1と同様にして密度33.3kg/m3(発泡倍数30倍)の発泡成形体を得、その物性を測定・評価した。
得られた結果を表2に示す。
【0080】
(比較例5)
種粒子の作製において、LDPE(1)の代わりにLLDPEを用い、EVA(2)の代わりにEVA(4)を用い、ポリエチレン系樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体=73/27及び種粒子/ポリスチレン系樹脂=40/60とすること以外は、実施例3と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子を得、それらの物性を測定・評価した。
発泡成形体の作製において、0.09MPaの水蒸気を35秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却すること以外は、実施例1と同様にして密度33.3kg/m3(発泡倍数30倍)の発泡成形体を得、その物性を測定・評価した。
得られた結果を表2に示す。
【0081】
(実施例6)
種粒子の作製において、LDPE(1)の代わりに低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE(2):密度928kg/m3、融点115℃、MFR0.7g/10分、日本ポリエチレン株式会社製、品名:ノバテックLD LF280H)を用い、EVA(1)の代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA(3):酢酸ビニル含有率28%、密度950kg/m3、融点69℃、MFR20.0g/10分、株式会社NUC製、品名:DQDJ−3269)を用い、ポリエチレン系樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体=71/29及び種粒子/ポリスチレン系樹脂=22/78とすること以外は、実施例3と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、それらの物性を測定・評価した。
得られた結果を表3に示す。
【0082】
(実施例7)
種粒子の作製において、ポリエチレン系樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体=66/34とすること以外は、実施例6と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び発泡粒子を得、それらの物性を測定・評価した。
発泡成形体の作製において、0.070MPaの水蒸気を35秒間導入して加熱し、次いで、発泡成形体の面圧が0.01MPaに低下するまで冷却すること以外は、実施例1と同様にして密度25.0kg/m3(発泡倍数40倍)の発泡成形体を得、その物性を測定・評価した。
得られた結果を表3に示す。
【0083】
(比較例6)
種粒子の作製において、LDPE(1)の代わりにLDPE(2)を用い、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA(3))を用いず、種粒子/ポリスチレン系樹脂=22/78とすること以外は、実施例4と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、それらの物性を測定・評価した。
得られた結果を表3に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
表1〜3の結果から、実施例1〜7の複合樹脂粒子は、難燃剤を添加することなしに、耐衝撃性及び遅燃性に優れた発泡成形体を与え得ることがわかる。
一方、比較例1〜6の複合樹脂粒子は、実施例1〜7の複合樹脂粒子に劣ることがわかる。
【0088】
(実施例8)
種粒子の作製において、ポリエチレン系樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体=83/17とすること以外は、実施例1と同様にして、種粒子(酢酸ビニル含有率2.6質量%)、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、それらの物性を測定・評価した。
得られた結果を表4に示す。
【0089】
(実施例9)
種粒子の作製において、EVA(1)の代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA(2):酢酸ビニル含有率19%、密度939kg/m3、融点86℃、MFR2.5g/10分、ハンファケミカル社製、品名:EVA2319)を用い、ポリエチレン系樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体=45/55とすること以外は、実施例1と同様にして、種粒子(酢酸ビニル含有率10.5質量%)、複合樹脂粒子、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、それらの物性を測定・評価した。
得られた結果を表4に示す。
【0090】
(実施例10)
複合樹脂粒子の作製において、ジクミルパーオキサイドの添加量を5.34gから3.76gへ減らすこと以外は、実施例4と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子(ゲル分率14.2質量)、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、それらの物性を測定・評価した。
得られた結果を表4に示す。
【0091】
(実施例11)
複合樹脂粒子の作製において、ジクミルパーオキサイドの添加量を5.34gから6.32gへ増やすこと以外は、実施例5と同様にして、種粒子、複合樹脂粒子(ゲル分率36.8質量)、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体を得、それらの物性を測定・評価した。
得られた結果を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
表4の結果から、ポリエチレン系樹脂の酢酸ビニル含有率が3〜10質量%の範囲外の場合(実施例8及び9)ならびに複合樹脂粒子中のゲル分率が15〜35質量%の範囲外の場合(実施例10及び11)には、発泡成形体の耐衝撃性及び遅燃性の少なくとも一方が、他の実施例のものよりも劣ることがわかる。
図1
図2
図3