特許第6454017号(P6454017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454017
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】電界放出光源
(51)【国際特許分類】
   H01J 63/06 20060101AFI20190107BHJP
   H01J 61/42 20060101ALI20190107BHJP
   H01J 1/304 20060101ALI20190107BHJP
   H01J 61/44 20060101ALI20190107BHJP
   H01J 29/94 20060101ALI20190107BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20190107BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20190107BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20190107BHJP
   H01J 31/15 20060101ALI20190107BHJP
   H01J 29/89 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   H01J63/06
   H01J61/42 Z
   H01J1/304
   H01J61/44 Z
   H01J29/94
   B82Y40/00
   B82Y30/00
   B82Y20/00
   H01J31/15 F
   H01J29/89
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-533345(P2017-533345)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公表番号】特表2018-505520(P2018-505520A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】EP2015079583
(87)【国際公開番号】WO2016096717
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】14198645.5
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515261468
【氏名又は名称】ライトラブ スウェーデン アクティエボラーグ
(73)【特許権者】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス ティレーン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルミ ボルカン デミル
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−166245(JP,A)
【文献】 特表2013−524452(JP,A)
【文献】 特開2013−016498(JP,A)
【文献】 特表2013−545248(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/173821(WO,A1)
【文献】 特開2012−124086(JP,A)
【文献】 特開2006−253125(JP,A)
【文献】 特開2010−211955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/304
H01J 61/00
H01J 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングにより得られる、UV光を放出するように構成された電界放出光源ダイであって、
基板上に形成された複数のZnOナノ構造体を含む電界放出カソード
アノード構造体であって、
透明構造体;
前記透明構造体の少なくとも一部を覆うように配設された第1の波長変換材料、ここで、前記第1の波長変換材料は、前記透明構造体に直接隣接して配設されており、前記第1の波長変換材料、前記電界放出カソードから放出された電子を受容して第1の波長範囲の光を放出するように構成されている;及び、
前記第1の波長変換材料上に堆積された光反射性アルミニウム層から構成された導電性アノード層、ここで、前記導電性アノード層は、使用の間、電界放出カソードとは異なる電圧電位を有するように配置されており、それによって、前記電界放出カソード(106)から放出された電子が、前記第1の波長変換材料により受容される前に、前記導電性アノード層を通過する;
を含むアノード構造体と;
円形又は楕円形のスペーサー構造体であって、
複数のナノ構造体を取り囲むように、
前記アノード構造体と前記電界放出カソードとの間に所定の距離を設定するように、及び
密封された後に排気される空洞部を前記電界放出カソードの前記基板と前記アノード構造体との間に形成するように、
配置された円形又は楕円形のスペーサー構造体と;
を含み、
前記スペーサー構造体が、前記ウェハ及び前記アノード構造体と整合する熱膨張係数を有するように選択される、電界放出光源ダイ
【請求項2】
さらに、第2の波長変換材料を含む、請求項1に記載の電界放出光源ダイ
【請求項3】
さらに、前記第1の波長変換材料から遠隔配設された第2の波長変換材料を含む、請求項1に記載の電界放出光源ダイ
【請求項4】
さらに、前記アノード構造体の外側にドーム状構造体を含み、前記第2の波長変換材料が、前記ドーム状構造体の内側の少なくとも一部に形成されている、請求項3に記載の電界放出光源ダイ
【請求項5】
前記電界放出カソードの基板と前記アノード基板のうちの少なくとも1つの光取り出し側が光抽出ナノ構造体を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項6】
前記第1の波長変換材料が蛍光体材料を含み、前記第2の波長変換材料が、第1の波長範囲の光を受容したときに第2の波長範囲の光を発生する量子ドットを含み、前記第2の波長範囲が前記第1の波長範囲よりも少なくとも部分的に長波長の範囲である、請求項2に記載の電界放出光源ダイ
【請求項7】
前記ウェハが金属合金である、請求項1〜のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項8】
前記複数のナノ構造体が少なくとも1μmの長さを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項9】
前記電界放出カソードの基板と前記アノード構造体との間の距離が100μm〜5000μmであるように前記スペーサー構造体が構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項10】
前記ウェハが凹部を備え、前記複数のナノ構造体の少なくとも一部が前記凹部の底面に形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項11】
さらに、第3の波長範囲内の光を放出する第3の波長変換材料を含む、請求項2に記載の電界放出光源ダイ
【請求項12】
前記第1の波長変換材料が硫化亜鉛(ZnS)を含んで前記第1の波長変換材料が電子を吸収して青色光を放出するように構成されているか、あるいは、前記第1の波長変換材料が単結晶蛍光体層を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項13】
前記ウェハがシリコンウェハであり、前記電界放出光源ダイを制御するための論理機能が前記シリコンウェハにより形成されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項14】
前記ウェハが金属材料から製造されたものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項15】
さらに、前記ナノ構造体に隣接して配設されたゲッターを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
【請求項16】
照明装置であって、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の電界放出光源ダイ
前記複数のナノ構造体から前記アノード構造体に向けて電子を放出させるために前記電界放出光源ダイに電気エネルギーを供給するための電源、及び
当該照明装置の動作を制御するための制御装置、
を含む、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電界放出光源(field emission light source)、具体的には、ウェハレベル製造の概念、すなわち、IC及びMEMSにより使用されるものと類似のアプローチを使用して、低コストで大量生産することが可能な小型の電界放出光源に関する。本発明は、少なくとも1つの電界放出光源を含む照明装置(lighting arrangement)にも関する。
【背景技術】
【0002】
現代の省エネルギー型照明装置に使用されている技術は、活性成分の1つとして水銀を使用する。水銀は環境に有害であるため、省エネルギー型の水銀フリーの照明に関連する複雑な技術的困難を克服するために広範囲にわたる研究が行われている。現在、LEDが多く出現しているが、この技術は、非常に高価な装置を利用した非常に高度な半導体工場(FAB)で用いられている。さらに、今日のLED技術は、いくつかの基本的な物理的問題がその開発を妨げているため、深UV(UVC)領域に対して商業的に魅力的な解決法を実現するために取り組んでいる。
【0003】
この問題を解決するために使用されているアプローチは、電界放出光源技術を使用することによるものである。電界放出は、導電性材料の表面に非常に高い電界が印加されたときに生じる現象である。この電界は、電子が材料から(真空中に)放出されるように電子に十分なエネルギーを与える。
【0004】
従来技術の装置では、カソードが、例えばガラス壁を有する真空チャンバ内に配設され、チャンバの内側が導電性アノード層で被覆されている。さらに、光放出層がアノード上に堆積される。十分に高い電位差がカソードとアノードとの間に印加され、それによって十分に高い電界強度が生じると、電子がカソードから放出され、アノードに向かって加速される。電子が、典型的には軽い粉末を含む光放出層に衝突すると、その軽い粉末は光子を放出する。このプロセスはカソードルミネッセンスと呼ばれている。
【0005】
電界放出技術を適用した光源の一例が欧州特許第1709665号に開示されている。欧州特許第1709665号には、中央に配設された電界放出カソードを含み、さらに電界放出カソードを囲むガラスバルブの内側表面上に配設されたアノード層をさらに含む電球形光源が開示されている。開示された電界放出光源は、例えば改良型の光源の実施に関連して有用な、全方向性の発光を可能にする。
【0006】
欧州特許第1709665号は、水銀を含まない光源に対する有望なアプローチを示しているが、開示されたバルブ構造体の、できる限り、生産の改善、ひいては得られる光源のコストの低下が可能な代替物を提供することが望ましい。さらに、欧州特許第1709665号に示されているような3次元電界放出の製造は、典型的には、どういうわけか厄介であり、特に、発光に関する高レベルの均一性を達成する場合に厄介である。
【0007】
A. Gorecka-Drzazgaらによる“Field-emission light sources for lab-on-a-chip microdevices”, Bulletin of the polish academy of sciences technical sciences, Vol. 60, No. 1, 2012には、上記問題を克服するための興味深いアプローチが開示されている。具体的には、ナノ構造体カソードを含む電界放出チップが開示されている。
【0008】
さらに、米国特許出願公開第20110297846号には、電界放出カソードからギャップにまたがって電子をナノ構造化半導体材料に注入し、電子を別の電界エミッターカソードから放出し、アノードの一部を形成するナノ構造化材料の表面に向けてギャップにまたがる電圧により加速させることによって光を発生させるための方法及び装置が開示されている。
【0009】
しかし、開示されたマイクロデバイスは、商業的に実現可能な光源、すなわち、上記参考文献に関連する場合のような短い照明サイクルに限定されない照明シナリオとしては適してない。よって、典型的には一般的な照明及び深UV(UVC)光源に適合した電界放出光源に対するさらなる改良をもたらすことが要望されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様によれば、上記の点は、基板上に形成された複数のナノ構造体を含む電界放出カソードと、導電性アノード構造体であって、当該アノード構造体の少なくとも一部を覆うように配設された第1の波長変換材料を含み、第1の波長変換材料が、電界放出カソードから放出された電子を受容して第1の波長範囲の光を放出するように構成されている導電性アノードと、密封された後に排気される空洞部を電界放出カソードの基板とアノード構造体との間に形成するための手段であって、複数のナノ構造体を取り囲むように配置されたスペーサー構造体を含む手段とを含み、複数のナノ構造体を受容するための基板がウェハである小型の電界放出光源によって、少なくとも部分的に緩和される。
【0011】
本発明に係る電界放出光源は、典型的には、集積回路(IC)及びMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム(Micro Electro Mechanical Systems))の製造に使用されるものと類似の2次元平面プロセスを使用して製造することができる。好ましくは、実質的に平坦なウェハを用意し、その上に、複数のナノ構造体を、例えば湿式(水熱)化学プロセスを用いて、酸化、化学蒸着技術によって、あるいは電着によって、形成することができる。他の方法も同様に可能である。一実施形態において、アノード構造体は、別の実質的に平坦なウェハ上に形成されてもよい。この文脈におけるウェハ、すなわち実質的に個々のデバイスのサイズのウェハを、ウェハスケール製造プロセスで使用されるウェハ(後者は、かなり大きく、多数の個別のデバイスを含む)のサイズと区別することは重要である。
【0012】
概して本発明からもたらされるさらなる利点としては、例えばアノード構造体及びカソード構造体を、別々のウェハ上に多数作製し、次いで、後の接合プロセスで組み合わせることができるモジュール製造プロセスを使用する可能性が挙げられる。上記の後の接合プロセスでは、カソードウェハ及びアノードウェハを位置合わせし接合して個々の電界放出光源を形成する。そのため、その後の排気(真空を生成する)は、第3のより大きなウェハとして又は別個の要素として供給することもできるスペーサー構造体を使用して接合プロセスを実施したときに達成できる。
【0013】
本発明によれば、第1の波長変換材料は、電界放出光源の動作中に、複数のナノ構造体からアノード構造体に向かう方向に放出/加速された電子を受容するように配設される。第1の波長変換材料が電子を受容すると、第1の波長範囲内の光が放出される。好ましくは、第1の波長変換材料は、低温クエンチングをもたらすように選択される。さらに、第1の波長変換材料は、好ましくは、アノード構造体の少なくとも主要部分に適用される。本発明の範囲内で、第1の波長範囲は、広範囲(実質的に白色光を放出)、「単一色」をカバーする波長範囲、又は複数の周波数範囲の混合(必ずしも接続されていない)から選択することができる。第1の波長変換材料は、UV光を放出するように構成することもできる。UV光を放出する電界放出光源は、一実施形態において、接着剤(「グルー(glue)」)の硬化のため、水、空気、表面の消毒のためなどに合わせて配設することができる。
【0014】
スペーサー構造体は、複数のナノ構造体を取り囲むように配設され、それによって電界放出カソードに近接して制御された方式でアノード構造体を配設する。かかる実施形態において、スペーサー構造体は、アノード構造体と電界放出カソードとの間に空洞部を形成する際の部品である。スペーサー構造体の1つの選択肢として、所望の空洞部を達成するためにウェハ内に窪みを形成することが可能である。そのため、スペーサー構造体及び/又は窪みは、アノード構造体と電界放出カソードとの間に所定の距離を設定する。ウェハと典型的にはアノード構造体とも整合する熱膨張率(係数)を有するようにスペーサーを選択することが望ましい。
【0015】
例えば、バルブ、チューブ又はフラット(しかし、かなり大きい)形状の電界放出光源に関して可能なものと比較して、アノード構造体と電界放出カソードとの間の距離を正確に制御することができることにより、電界放出カソードとアノード構造との間で電子の放出を可能にするのに必要な最適化された電位を達成することができる。これにより、電界放出光源のエネルギー効率についてさらなる最適化が可能になるであろう。本発明の可能な一実施形態において、電界放出カソードの基板とアノード構造体との間の距離は、好ましくは100μm〜5000μmである。
【0016】
本明細書で開示する1つのデバイス用のウェハは、可能な一実施形態において、1〜100ミリメートルの幅を有することができる(例えば、円形又は四角形であり得る)。(明確さのために、本発明は、単一の大きな基板、典型的には200〜1000mmの単一の基板上に多数製造することができるデバイスを記載する。つまり、当該大きな基板は多数の個々のデバイスを含む。)本発明の一実施形態において、ウェハはシリコンウェハであることができる。あるいは、カソードウェハは、金属基板を含んでもよい。さらに、ウェハは、代わりに、導電性層を備えた絶縁材料から形成されたものであってもよい。好ましい一実施形態において、絶縁材料は、透明、例えばガラスであることができ、具体的にはアノードガラスと同じ熱的特性を有することができる。この実施形態において、スペーサー要素についても同じ材料を使用することが有利である。なぜなら、このアプローチは、熱膨張係数の不整合を最低限にし、ひいては製造及び動作時の熱サイクルによる残留応力を最低限にするからである。同様に、一実施形態において、アノード構造体は、好ましくは透明であり、例えばガラス材料から形成されたものであることができる。ガラスは、好ましくは、低レベルの漏洩光学モードを得るのに十分に薄くなければならないが、酸素、他のガスや湿気に対して有効なバリヤをもたらすのに十分な厚さのものであることが好ましい。なぜなら、かかるガスの透過は、封止真空を悪化させ、最終的には機能しないデバイスをもたらすからである。
【0017】
アノードに例えばホウケイ酸ガラスを使用することが好ましい。なぜなら、かかるガラス材料は、対応する金属合金、一般的な例の商品名はコバール(Kovar)、で封止することができるように設計されるからである。また、それらは、タングステン(W)に対しても良好に封着しうる。封止技術としては、真空ろう付け、ガラスフリット(ガラス粉末)及び高圧下の共晶接合が挙げられる。同じガラスタイプ(又は少なくとも非常に似ている)で作られた全ての(関連する)部品を使用することは、熱膨張係数(TCE)が同一であるか又は非常に近いために有益であることに留意すべきである。
【0018】
さらに、選択された材料の熱膨張に関して、部品の封止処理の間、材料は最高で900℃までの温度にさらされることがある。異なる材料が異なる熱膨張係数を有する場合、それらは異なる速度で膨張する。これは、結果的に、微小漏れ及び破損などの問題となるおそれがある機械的応力及び反り(特にウェハスケール製造の場合)をもたらし得る。そのため、これを最低限に抑えるとともに、材料を接合する方法を最少限に抑えるように、材料を選択する必要がある。
【0019】
さらに、絶縁耐力に関して、構造体に少なくとも10kVまでの電圧を用いて給電することができる。そのため、スペーサー要素及び好ましくはアノードの材料は、高電圧に耐えられるものでなければならず、さもなければ絶縁破壊が生じ得る。さらに、幾何学的設計において絶縁耐力を考慮する必要がある。つまり、電界集中(field crowding)が生じる可能性がある鋭いコーナーを避けて、アーキング及び寄生電流を生じ得る局所的に増幅された電界の発生を制限する必要がある。
【0020】
さらに、材料及びシールを介してのガス透過に関して、真空(ゲッター)を完成及び維持する目的で真空システム内に配置された反応性材料の堆積物の使用にもかかわらず、材料を介してのガス透過が考慮されなければならない。ガラス部品の場合、ゲッターは希ガスを吸い上げることができず、ヘリウムはある種のガラスや石英を透過することが知られているため、ヘリウムガスに対する特性に特に注意を払わなければならない。さらに、適切に低い漏れ率が可能となるように、材料、方法及び設計に対してシールを選択しなければならない。
【0021】
いくつかの実施形態において、金属材料をウェハとして使用することが好ましい場合がある。金属ウェハは、電界放出カソードの基板とアノード構造体との間の排気された空洞部内の必要な真空の扱いがより良好であるという利点を有する。すなわち、金属ウェハは、ウェハに関して使用可能な他のタイプの材料、例えばガラス及び石英と比較して、空洞部へのより低いガス透過性を提供する。さらに、金属ウェハは、導電性であるためにカソードへの直接的な電気的接触をもたらす点で有利である。可能な一実施形態において、ウェハは、金属であるか又はドーピングによる導電性の層を有する半導体ウェハである。したがって、「ウェハ」という表現は、本発明の範囲内で広く使用されることを理解されたい。
【0022】
本発明の文脈内では、導電性層は、概して、透明導電性酸化物(TCO)を含むものと定義することができる。可能な一実施形態において、導電性層はインジウム錫酸化物(ITO)層を含む。導電性層は、別の構成では、金属層によって、好ましくは低密度の元素、好ましくはアルミニウムからなる金属層によって形成されたものであることができる。これらの2種の組み合わせも可能であり、本発明の範囲内である。
【0023】
電界放出光源、すなわちアノード構造体が導電性層を備えたガラス材料から形成されたものである場合、の動作中、光は、一般的に、アノード構造体を「通過」することが可能である。代わりに、透明ウェハをカソードに対して設けることができ、それにより、電界放出光源を「逆さまの様式(upside down manner)」で、すなわち、(アノード構造体を介してというよりもむしろ)カソードを介して、電界放出光源から光が放出される。電界放出カソードは、かかる場合、透過型電界放出カソードと定義することができる。電界放出カソード構造体は、かかる実施形態では、好ましくは、上記のとおりの透明な導電性材料を備える。
【0024】
好ましくは、排気された空洞部は、電界放出光源内の不十分な真空に関連する劣化、寿命アーキング及び類似の現象に関する問題を回避するために、10-3トル(Torr)未満の圧力を有する。
【0025】
本発明によれば、第2の波長変換材料も含めることが好ましい。第2の波長材料は、電子の受容によるというよりもむしろ光による活性化(フォトルミネッセンス)のために構成されている。好ましい一実施形態において、第2の波長変換材料は、第1の波長変換材料によって生成した光を受容するように構成されており、受容した光は第1の波長範囲内にある。結果として、第2の波長変換材料は、第2の波長範囲内の光を放出する。ここで、第2の波長範囲は、第1の波長範囲よりも少なくとも部分的に長波長の範囲である。提案する実施形態に伴う利点によって、第1及び第2の波長範囲の両方にわたる電界放出光源からの光の放出が可能である。
【0026】
好ましい一実施形態において、第1の波長範囲は、350nm〜550nm、好ましくは420nm〜495nmである。さらに、第2の波長範囲は、470nm〜800nm、好ましくは490nm〜780nmであるように選択されることが好ましい。そのため、本発明の好ましい一実施形態では、電界放出光源によって集合的に放出された光は350nm〜800nm、好ましくは450nm〜780nmである。したがって、本発明に係る電界放出光源は、白色光を放出するように構成することができる。第1の波長範囲が上記の用途を意図した160nm〜400nmの紫外領域にある場合は、1つの特別な場合であろう。
【0027】
本発明の範囲内で電界放出光源に第3の波長変換材料も含めることが可能であることに留意すべきである。本発明の可能な一実施形態において、第2及び第3の波長変換材料は、第1の波長変換材料から放出された光(すなわち、第1の波長範囲内)によって活性化されるように構成されてもよい。第3の波長変換材料は、第2の波長変換材料(すなわち、第2の波長範囲)により放出された光によっても活性化されるように、あるいは代わりに第2の波長変換材料(すなわち、第2の波長範囲)により放出された光によって活性化されるように構成されてもよい。
【0028】
本発明によれば、第2(及び第3など)の波長変換材料を、排気された空洞部の外側に、アノード構造体から遠隔配設することが有利である(熱の大部分が電界放出光源の動作中に生成する場合)。これにより、第2(及び第3)の波長変換材料の温度消光(temperature quenching)を大幅に低減することができる。かかる実施形態において、電界放出光源の外側に「外部透明構造体」を形成することが好ましい。かかる外部透明構造体の内側には、この実施形態において、第2の波長変換材料が設けられていてもよい。可能な一実施形態において、外部透明構造体は、光抽出を向上させるためにドーム形状を有することができる。さらなる一実施形態において、透明構造体の表面は、光取り出しを増加させるために、例えばナノサイズのパターン(例えば、ナノピラー(nanopillars)、ナノコーン(nanocones)、ナノスフェア(nanospheres)、ナノスケールの粗い表面など)のナノ特徴部(nanofeatures)を含んでもよい。
【0029】
本発明の提示する実施形態は、従来技術によって処理されない基本的な問題を解決する。第1に、本発明によって、熱管理(例えば、熱放散を含む)が改善される。第2に、一般的な照明に使用される電界放出光源、すなわち実質的に白色光を放出する電界放出光源では、所望の相関色温度(CCT)及びカラーレンダリング指数(CRI)を達成するために、異なる波長変換材料の混合物が好ましくは使用されるべきである。CRIは好ましくは90を超える。これは、これらの異なる波長変換材料が異なる波長を放出するために光抽出上の問題を生じる。異なる波長及び材料は、例えば、屈折率の整合に対して異なる要件をもたらすことがある。これは、本発明によれば、第1の波長変換材料と第2の波長変換材料の分離によって対処することができ、光抽出の最適化が可能になり、それによりエネルギー効率を著しく高めることができる。
【0030】
第3に、商業的に魅力的な性能を有するチップベースのUVチップベースの光源(chip based UV chip based light source)は、UVを発生する第1の波長材料及び対応するUV透過性部品を使用することによって実現できる。さらに、本発明は、長時間動作することができる商業的に魅力的で信頼性のあるチップベースの光源の大規模生産を可能にする。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態において、第1の波長変換材料は蛍光体材料を含む。一実施形態において、電子を受容して青色波長範囲内の光を放出するように構成された蛍光体材料を選択することができる。一実施形態において、第1の波長変換材料は、単結晶蛍光体層を含むことができることに留意すべきである。好ましくは、UV光又は青色光が放出される。代わりに、第1の波長変換材料は、例えば発光デバイス(LED)に関して、固体照明装置に適する蛍光体を含むことができる。第1の波長変換材料から構成される従来のカソードルミネッセント蛍光体材料は、例えば、ZnS:Ag,Clであることができる。かかる従来のカソードルミネッセント材料を、非常にエネルギー効率がよいものとすることができる。近UV領域の光を放出する高効率材料の別の例はSrI:Euである。深UVの場合、LuPO:Prが良い選択であろう。
【0032】
別の好ましい実施形態において、第2の波長変換材料は、量子ドットを含むことができる。量子ドットの使用は、発光体として非常に有望なアプローチであることが示された。さらに、量子ドットの合成は、より高い波長、典型的には青色光が放出される波長範囲を超える波長で、より容易にすることができる。そのため、本発明によれば、第1の波長変換材料の蛍光体材料が青色光を生成し、第2の波長変換材料の量子ドットがより長波長の波長スペクトル内の光、典型的には緑色乃至赤色光を生成するという相乗効果を達成することができる。第1及び第2の波長材料によって生成された光を混合させることによって、白色光を生成させることができる。
【0033】
代わりに、本発明の範囲内で、第2の波長変換材料も蛍光体材料を含むことができることに留意すべきである。代わりに、第1の波長変換材料は、例えば発光デバイス(LED)に関して、固体照明装置に適する蛍光体を含むことができる。一実施形態において、第2及び第3の蛍光体材料を混合して第2の波長変換材料を形成することができる。
【0034】
一般的に、波長変換材料(単数又は複数)から構成される蛍光体材料(単数又は複数)は、例えば、沈降(sedimentation)、分散ディスペンシング(disperse dispensing)、印刷、噴霧、ディップコーティング及びコンフォーマルコーティング法によって適用することができる。他の方法も可能で本発明の範囲内であり、特に、もし実質的に単結晶の層を形成する場合には、他の方法としては、熱蒸着、スパッタリング、化学蒸着又は分子線エピタキシーなどが挙げられる。さらなる既知の方法及び将来の方法は、本発明の範囲内である。
【0035】
さらに、電界放出光源は、さらに、光放出損失を最低限に抑えるための反射性の特徴部分(reflective features)をさらに備えていてもよい。1つの好ましい実施形態において、これらの反射性の特徴部分は、複数のナノ構造体の下方に配置された反射性層により達成することができる。別の好ましい実施形態は、反射性層をアノードの上に、及び波長変換材料(単数又は複数)の上に配置することである。後者の場合、電子が大多数の反射性層を透過し、それらのエネルギーの大部分を波長変換材料(単数又は複数)に預けるように、反射性層が十分に薄くなければならず、また、電子エネルギーが十分に高くなければならない。この構成の別の1つの利点は、反射性層が、下方にある光変換材料を分解から保護することもできることである。
【0036】
様々な手段を用いて反射率を達成することができることを理解されたい。本発明によれば、光の反射を可能にするために薄い金属層を使用することが可能である。別の実施形態において、反射率は、上記の導電性層(例えば、金属材料の導電性層)を設けることによって可能となる。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態において、ウェハは凹部を備え、ナノ構造体が凹部内に形成される。凹部は、湾曲した(例えば、放物面状、双曲面状又は類似の)形状の側部と、ナノ構造体が形成される実質的に平坦な底部を有することができる。可能な一実施形態において、少なくとも側部には、電界放出光源からの光を反射する反射コーティングが設けられる。側部は、別の実施形態において、平坦な側部を有してもよい。側部の形状は、電界放出光源から放出される光を最大限にするように選択することができる。一実施形態において、凹部の平坦な底部にも反射コーティングが設けられる。
【0038】
上記のように、電界放出光源の動作点を最適化、すなわちナノ構造体からの所望の電界放出に使用される電圧/電流に関連して電界放出光源の動作点を最適化するために、凹部の深さ又はスペーサー構造体の高さ又は両者の組み合わせを、上記のように選択することができる。複数のナノ構造体の少なくとも一部が第1の波長変換材料と直接接触して第1の波長変換材料への電子の直接注入をもたらすように、凹部の深さをスペーサーの高さと組み合わせて選択することも可能である。
【0039】
本文脈において、ナノ構造体としては、例えば、ナノチューブ(nanotubes)、ナノロッド(nanorods)、ナノワイヤ(nanowires)、ナノペンシル(nanopencils)、ナノスパイク(nanospikes)、ナノフラワー(nanoflowers)、ナノベルト(nanobelts)、ナノニードル(nanoneedles)、ナノディスク(nanodisks)、ナノウォール(nanowalls)、ナノファイバー(nanofibers)及びナノスフェア(nanospheres)が挙げられる。さらに、ナノ構造体は、前述の構造体のうちの任意のものの集まり(bundles)によって形成されてもよい。本発明の一実施形態によれば、ナノ構造体はZnOナノロッドを含むことができる。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、ナノ構造体はカーボンナノチューブを含むことができる。カーボンナノチューブは、部分的には、それらの細長い形状のために電界エミッターナノ構造体として適切であり得、その細長い形状は、先端でより高い電場を集中させ、その電気的特性によっても生成し得る。
【0041】
さらに、電界放出光源の動作のためにアノードとカソードとの間にかなりの電圧が印加される場合、部品間の電気的隔離(electrical isolation)を確保するように注意しなければならないことを理解すべきである。この隔離は、例えば、スペーサー構造体内に隔離材料(isolating material)を使用することによって行うことができる。スペーサー構造体は、例えば、アルミナ、ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英及びサファイア)、熱分解窒化ホウ素(pBN)及び類似の材料から形成することができる。場合によっては熱伝達が特に重要であるため、比較的高い熱伝導特性を有する透明材料が好ましい場合がある。かかる材料の例は、サファイア及びアルミノシリケートガラスであり、後者は、実質的に、比較的大量の、通常は20%程度のアルミナ(Al)を含むホウケイ酸ガラスである。別の方法は、少なくとも電圧を適度にするために、例えばシリコンの場合のように適切であるならば、ウェハの酸化物を使用することである。
【0042】
一実施形態において、適切な分離スペーサー構造体は、特定のグレードのアルミナ、窒化ホウ素、特定の窒化物などであることができる。可能な選択は材料を隔離することについて多数である。さらに、異なる基板(例えば、カソード基板、アノード基板など)の材料は、同様の熱膨張係数(CTE)を有するように選択されることが好ましい。一例として、ホウケイ酸ガラスの典型的なCTEは約3〜5μm/m/℃である。これは、有利には、例えば上記のアノード/カソード構造体に関連して、透過窓として使用することができる。深UV透過性の光源の特殊な場合に、例えば石英/溶融シリカ、ソーダ石灰及びホウケイ酸塩などの材料を使用でき、UVC透過性のホウケイ酸塩の一例はSchott AG製のタイプ8337Bである。同様のCTEを有するいくつかの適切な隔離材料がある。金属部品はあまり一般的でない。実質的にそれらはタングステン、タングステン合金、モリブデン及びジルコニウムである。ジルコニウムの使用は、この材料が同時にゲッターとして使用できるという意味で興味深い特徴を有するであろう。場合によっては特別に設計された合金、Kovar(登録商標)(ニッケル−コバルト鉄合金)が良い選択肢である。同じ商品名のホウケイ酸ガラスは、コーニング社から入手可能なもの、例えばKovar Sealing Glass 7056である。部品の接合は、ガラスフリット、真空ろう付け、アノード接合、融着を用いることにより実施することができる。他の方法も同様に可能である。ジョイントは機密性であるべきであり、好ましくは構造体内に極めて小さい追加の応力を誘発させるだけである。いくつかの場合に、応力緩和のために接合を使用することもできる。材料の選択は、気密性及びガス透過性にさらに対処するものでなければならない。
【0043】
上記のような電界放出光源は、複数のナノ構造体からアノード構造体に向けて電子を放出させるために電界放出光源に電気エネルギーを供給するための電源と照明装置の動作を制御するための制御ユニットとをさらに備える照明装置の一部を形成することが好ましい。制御ユニットは、照明装置が所望の強度を有する光を放出するように電源を適応的に制御するように構成されることが好ましい。瞬間強度レベルを測定してフィードバック信号を制御ユニットに与えるためのセンサーが設けられてもよい。制御ユニットは、瞬間強度レベル及び所望の強度レベルに応じて強度レベルを制御する。電源は、好ましくは、スイッチモード構造を用いるDC電源であり、さらに、電界放出光源に所望の電圧レベルを印加するための電圧増倍器を含む。好ましい一実施形態において、電源は、電界放出光源に0.1〜10kVを印加するように構成される。あるいは、パルスDCが有利であることがある。
【0044】
本発明の可能な一実施形態において、基板が第1の波長変換材料を含むか、あるいは、電界放出カソードナノ構造体がシリコンから作製されたものである。この場合、制御ユニットによって果たされる機能又は機能の一部は、シリコンウェハを含む基板内に統合されていてもよい。そのため、本発明によれば、単一のシリコンウェハが、ナノ構造体、及び、電界放出光源を制御する機能の両方を含むことができる。したがって、電界放出光源の製造、統合及び制御のプロセスを、従来技術と比べて改善することができる。本発明の可能な一実施形態において、上記のような制御ユニット機能の少なくとも一部をウェハ上に形成するためにCMOS製造プロセスが実行される。
【0045】
一般的な視点から、上記の異なるウェハを接合し真空を確立したら、本発明の電界放出光源を、典型的には、別個の単一光源にダイシングし、その後、パッケージングLEDチップと同様に、すなわち球形の電界放出光源を製造する場合に一般的に知られているものと比べて最低限の量の手作業を伴うだけの完全に自動化された設定で集成できる。ダイシングは、通常、長方形(又は正方形)のダイが得られるように行われる。代替的な好ましい一実施形態において、ダイシングは、六角形のダイが生じるように行われる。
【0046】
本発明の電界放出カソードの上記説明は、電界放出カソードとアノード構造体とを含むダイオード構造に関連してなされたものである。しかし、例えば少なくとも追加の制御電極を含むトライオード構造として電界放出光源を配設することが可能であり、本発明の範囲内である。制御電極は、電界放出カソードからの電子の抽出を増加させるために設けられてもよい。さらに、電界放出光源を有するゲッターも含むことが可能であり、本発明の範囲内である。
【0047】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討したときに明らかになるであろう。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の様々な特徴を組み合わせて以下に説明する実施形態以外の実施形態を生じさせることができることを理解するであろう。
【0048】
本発明の様々な態様(その特定の特徴及び利点を含む)は、以下の詳細な説明及び添付図面から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明の好ましい一実施形態に係る電界放出光源の斜視図である。
図2図2a及び図2bは、図1の電界放出光源のアノード構造体に第1及び第2の波長変換材料を配設することについての例示的な実施形態を与える。
図3図3は、本発明に係る電界放出光源の別の実施形態を示す。
図4図4a〜4dは、本発明に係る電界放出光源のさらに別の実施形態を示す。
図5図5は、本発明に係る電界放出光源の別の実施形態を示す。
図6図6は、導電性アノード層についての反射率曲線を示す図である。
図7図7は、本発明に係る電界放出光源の現在のところ好ましい一実施形態を示す。
図8図8は、互いに隣接して配設された複数の電界放出光源を含む照明装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、現在好ましい本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、本発明をより完全に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底性及び完全性のために示すものであり、本発明の範囲を当業者に十分に伝える。同じ参照符号は同じ要素を参照する。
【0051】
図面、特に図1を参照すると、本発明の好ましい一実施形態に係る電界放出光源100が示されている。電界放出光源100は、少なくとも1μmの長さを有する複数のZnOナノロッド104を備えたウェハ102を含み、ウェハと複数のZnOナノロッド104とが一緒になって電界放出カソード106を形成する。可能な一実施形態において、ZnOナノロッドは、離間した突起(図示せず)の上に選択的に配設され得る。代わりに、ZnOナノロッド104をカーボンナノチューブ(CNT、図示せず)に置き換えることも可能である。他のエミッター材料も同様に可能であり、本発明の範囲内である。電界放出光源100は、さらに、電界放出カソード106に近接して配設されたアノード構造体108を備える。
【0052】
本実施形態における電界放出カソード106とアノード構造体108との間の距離は、電界放出カソード106とアノード構造体108との間にスペーサー構造体110を配設することによって達成され、ここで、電界放出カソード106とアノード構造体108との間の距離は、好ましくは100μm〜5000μmである。電界放出カソード106とアノード構造体108との間に形成された空洞部112は排気され、それによって電界放出カソード106とアノード構造体108との間に真空を形成する。
【0053】
アノード構造体108は、例えば平らなガラス構造体114などの透明基板を含む。他の透明材料も同様に可能であり、本発明の範囲内である。かかる材料の例は石英及びサファイアである。透明構造体114に、導電性で少なくとも部分的に透明なアノード層、典型的には透明導電性酸化物(TCO)層、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)層116などが設けられる。層116の厚さは、十分に低い電気抵抗で最大の透明度を可能にするように選択される。好ましい一実施形態において、透明度は90%を超えるように選択される。層116は、当業者に知られている任意の従来法、例えばスパッタリング、もしくは溶媒による析出、又はスクリーン印刷を使用して、ガラス構造体114に適用することができる。以下で論じるように、導電性アノード層116は、当面の実施に応じて様々な形状及び形態を取ることができる。
【0054】
本実施形態によれば、層116に、第1の波長変換材料118と第2の波長変換材料120が設けられる。さらに図2a及び2bを参照すると、波長範囲変換材料118,120は、様々な方法で層116上に形成することができる。図2aにおいて、第2の波長変換材料120は、ITO層116の上に直接隣接して形成され、第1の波長変換材料118は、第2の波長変換材料120の上に直接隣接して形成される。この実施形態、すなわち図2に示されている実施形態は、ガラス構造体114上に、その後、異なる層(すなわち、層116、第2の波長変換材料120、次いで第1の波長変換材料118)が配設される単純化された製造プロセスが可能になるため、有利である。ガラス構造体114は、必ずしも平坦である必要はないことに留意すべきである。
【0055】
可能な一実施形態において、電界放出光源用のレンズ(例えば、外側に膨らんでいる)を形成するようにガラス構造体114を選択することができ、それにより電界放出光源から放出された光の光抽出及び混合をさらに高めることができる。ガラス構造体に反射防止コーティングを設けることも可能である。図3を参照すると、外側に膨らんだ構造体は、カソード上の電場の均一性を向上させると同時に、第1の波長変換層上に電子の均一な分布を与え、それにより、放出された光の全体的な均一性を改善するというさらなる利点を有する。
【0056】
再び図1を参照すると、発生した光が取り出されるガラス構造体114の出口面をナノパターニング及び/又は粗面化することを用いることができる。さらに、ガラス基板に漏れる側方光学モードを低減し、光取り出しを増加させることが可能である。これらのパターンとしては、ナノピラー、ナノコーン、及び/又はナノスフェアが挙げられるが、これらに限定されない。かかる光抽出特徴部の一例は、典型的には高さ0.1〜5μm、幅0.1〜5μmで、0.1〜5μm離間しているZnOナノロッドである。さらに、ガラスと波長変換層との間にナノ粒子を配置することができる。
【0057】
しかし、代わりに、図2bに示すように、ITO層116上に第1の波長変換材料118及び第2の波長変換材料120の「パッチ型」形成が可能である。図から分かるように、この実施形態では、第1の波長変換材料118及び第2の波長変換材料120が、少なくとも部分的に互いに重なる層状のパッチで形成されていることが分かる。図示されている実施形態において、パッチは、少なくとも部分的に重なり合う円として形成されているが、任意のタイプの形態が可能であり、本発明の範囲内である。
【0058】
再び図1を参照すると、ナノ構造体104は、多くの技術によってウェハ上に成長させることができる。ウェハ材料を、例えばその他のウェハ材料の熱膨張係数と一致するように選択できるため、ウェハ材料は、必ずしも、ナノ構造体の形成に使用するのに最適な材料ではない。したがって、第1のステップは、例えば、この成長を容易にするためにウェハ102上に薄い金属層を適用することによる、ウェハ102の作製であることができる。1つの技術は、ウェハ102を複数のZnOナノロッド104を形成するための水熱成長プロセスにかけることを含む。作製及びナノ構造体成長のための他の技術も可能であり、本発明の範囲内である。
【0059】
電界放出光源100の動作中、電界放出カソード106とITO層116との間に電位を印加するように電源(図示せず)が制御される。電位は、例えば、電界放出カソード106とアノード構造体108との間の距離、複数のZnOナノロッド104の鋭さ、高さ及び長さの関係、並びに所望の性能最適化に応じて、0.1〜20kVであることが好ましい。
【0060】
ZnOナノロッド104の外端から電子が放出され、アノード構造体108に向けて電場によって加速される。電子が第1の波長変換材料118により受容されると、第1の波長の光が放出される。第1の波長範囲を有する光は、第2の波長変換材料120に当って、第2の波長範囲内の光を生成する。第1の波長範囲内の光のいくつかの部分は、第2の波長範囲内の光とともに、ITO層116を通過し、ガラス構造体114を通過して電界放出光源100から出る。
【0061】
図3を参照すると、電界放出光源300の別の実施形態が示されている。図1の電界放出光源100と同様に、電界放出光源300はウェハ102’を含む。電界放出光源100について設けられるウェハ102と比較した場合の相違点は、ウェハ102’が凹部302を含む点である。図示した実施形態において、ナノ構造体104は、凹部302の底面304に形成されている。アノード構造体108を電界放出カソード106から分離して排気された空洞部306を形成するためにスペーサー110が設けられている。スペーサー110の高さは、凹部302の深さとの組み合わせで、電界放出カソード106とアノード構造体108との間の距離(D)を生じる。距離Dは、電界放出光源の動作点を最適化するために上記のように選択されてもよい。可能な一実施形態において、ナノ構造体112の外端が第1の波長変換材料118と(ほぼ)直接接触するように距離Dが選択(ナノ構造体112の高さに関連して)される。
【0062】
本発明と一般的に関連して、図3に示すように、第1の波長変換材料は、ナノ構造体104によって放出された電子を吸収して青色光を放出するように構成された硫化亜鉛(ZnS)を含む。
【0063】
図示した実施形態において、電界放出光源300は、さらに、電界放出光源300からの光抽出を増進するように適合された光抽出要素308を備える。光抽出要素308は、第1の波長変換材料118から放出された光子の捕捉量を低減して電界放出光源300の全体的な効率を改善する。
【0064】
電界放出光源300は、さらに、ガラス構造体114からある距離に配設されたドーム状構造体310を備える。ガラス構造体114の方に面しているドーム状構造体310の内側表面と光抽出要素308とは、第2の波長変換材料120を備える。上記のように、第2の波長変換材料120は、例えば第1の波長変換材料118により放出された青色光を吸収し、例えば緑色及び/又は黄色/オレンジ色及び/又は赤色光を放出するように構成された量子ドット(QD)を含むことができる。青色光のある部分は、第2の波長変換材料120を透過し、例えば第2の波長変換材料120により放出された緑色乃至赤色光と混ぜ合わさって、電界放出光源300から放出される白色光として提供される。かかる配設の1つの利点は、第2の波長変換材料が曝される熱が少なく、そのため、それらの発光特性においていくらかの温度消光を示す材料からも選択できることである。
【0065】
図示した実施形態において、制御ユニット312は、ウェハ102’と一体化されたものとして示されている。そのため、制御ユニット312の機能は、電界放出カソード106と直接隣接して接触するように形成することができ、電界放出光源300の制御をできる限り単純化できることである。制御ユニット312及び電界放出カソード106の残りの部分は、好ましくは、複合プロセスで、例えば複合CMOSプロセスなどで製造される。
【0066】
電界放出光源300を電源(図示せず)により動作させるため及び電源(図示せず)に接続するために、アノード108のTCO/ITO層116に接続された電気相互接続パッド(図示せず)を形成することが望ましい。かかる場合には、カソード106と電源との間に別個の電気接続が設けられる。製造プロセスに関して、TCO/ITO層116の相互接続パッドとウェハ102の専用の隔離部分との間にボンディングワイヤ(図示せず)を接続することが好ましい場合があり、隔離部分はボンディングワイヤを受容するためのさらなる相互接続パッドを形成する。そのため、電界放出光源300のアノード108及びカソード106に電源をより容易に接続することができる。例えばLED光源に関して、ボンディングワイヤは、比較的かなり薄いものであるように選択できる。この理由は、電界放出光源300の動作電流が、比較すると、一般的に、数桁程度低いからである。
【0067】
上で簡単に述べたように、ナノ構造体112上の電場の均一性とアノード108上への放出電子の対応する均一性の両方を最適化するために、凹部302の上面及び底面を造形することが可能であり、本発明の範囲内である。これは、凹部302の底面を、凹部302の中心において距離Dが(僅かに)より小さいように形成することによって、又は空洞部(アノード108ととも形成される)の上面をわずかに窪ませて距離Dが空洞部302の中心において(わずかに)より大きくなるようにすることによって達成される。アノード108との空間的関係において電界放出カソード106の全体的な構造/形状を造形するという概念は、引用によりその全内容を援用する欧州特許第2784800号にさらに詳しく記載されている。突出部は、上から見て円形であることが好ましい。
【0068】
次に、図3に示した電界放出光源300の代替的実施例を部分的に示す図4aを参照する。比較のために、図4aでは、電界放出カソード106のナノ構造体104が透過電界放出カソードとして配設されている、電界放出光源400の逆のアプローチが示されている。本発明の文脈において、ナノ構造体104は、動作中に、例えばアルミニウム、銅、スチール又は他の類似の材料などの金属材料から形成されたアノード402に向かう方向に電子を放出する。
【0069】
具体的には、本発明によれば、放物面状又はほぼ放物面状の凹部が底部ウェハ402に配設され、電界放出カソード106と底部ウェハ402との間に空洞部404を形成する。凹部の表面406は、例えばアノード402を形成する金属材料によって反射性であるように配設される。かかる配設の1つの利点は、アノードからの熱伝達を大幅に高めることができることである。
【0070】
さらに、第1の波長変換材料118は、凹部/空洞部404の下部に設けられている。これにより、電界放出光源400の動作中、電界放出カソード106から放出された電子は、第1の波長変換材料118により受容される。電子の受容の結果として、第1の波長変換材料118は発光する(全方向性)。下方に放出された光の一部は、次に、アノード402の凹部の反射性表面406によって反射される。光は、透過型電界放出カソード106に向かう方向(逆)に反射される。したがって、光は、電界放出カソード106を通過し、電界放出光源400から出ることが可能である。
【0071】
上記のように、第1の波長変換材料118から放出された光は、例えば放物面状の凹部によって、第2の波長変換材料120(図示せず)の方に抽出/案内される。第2の波長変換材料120において、受容された光は、典型的には、第1の波長変換材料118から放出された光の波長範囲と比べてより長波長の範囲に変換される。
【0072】
アノード402を形成するために金属材料を使用する場合、電界放出カソード106をアノード402からさらに絶縁する必要があることがある。かかる場合には、電界放出カソード106とアノード402との間に絶縁層408を配設することができる。絶縁層の厚さは、電界放出光源400の動作中に電界放出カソード106とアノード402との間に与えられる電位に応じて選択することができる。
【0073】
図3に関して上に述べた方法と同様の方法において、本発明によれば、アノード108に向かうカソード106からの電子の均一な受容を形成することによる電界放出光源400により放出された光の均一性に関しての改善のために、空洞部の底部又は頂部を造形することも可能である。
【0074】
さらに図4bに関する本発明のさらなる代替的実施形態において、図4aの電界放出光源400に類似する電界放出光源400’が提供される。電界放出光源400’は、絶縁層408が絶縁スペーサー410で置き換えられている点で、図4aの電界放出光源400とは異なる。しかし、図4aに関して上に述べたものと同様に、アノード402と電界放出カソード106との間に空洞部404が形成されるように、絶縁スペーサー410は放物面形状を有する。絶縁スペーサー410は、いくつかの実施形態において、アノード402と電界放出カソード106との間のさらなる電気的分離をもたらすことができる。しかし、空洞部404を形成している放物面状の内側表面の一部分の上に反射性コーティング(例えば別個の反射性層、例えば金属層であるものなど)を少なくとも部分的に配設することが好ましい。
【0075】
再び図3に戻ると、本発明によれば、導電性アノード層116と第1の波長変換層118との配置を置き換えることができる。すなわち、図4cに示す代替的実施形態によれば、第1の波長変換材料がガラス構造体114に直接隣接して配設される。そのため、電界放出カソード106からアノード構造体108に向かう方向に放出された電子は、導電性アノード層116によって受容される。ここで、導電性層116は、電界放出カソード106とは実質的に異なる電位(すなわちkVの範囲内)を有するように構成される。しかし、電子からなる固有エネルギーのために、それらは少なくとも部分的に導電性アノード層116を通過して第1の波長変換材料118に衝突する。本実施形態は、場合によっては、好ましい。なぜなら、導電性アノード層116が、第1の波長変換材料118が、電界放出カソード106から放出された高エネルギー/速度の電子と直接接触することを少なくとも部分的に「遮る」ことによって、第1の波長変換材料118の寿命を改善しうるからである。導電性アノード層116は、場合によっては、透明導電性材料(TCO)、例えばITOを含む透明導電性材料(TCO)を含む。しかし、本発明の範囲内で、金属層、例えば第1の波長変換材料118及びガラス構造体114上に堆積された金属層から導電性アノード層116を形成することも可能である。かかる金属層は、第1の波長変換材料118から放出される所望の量の光を用いて、金属層、すなわち低密度の元素を通過する電子の量を最適化するように選択されることが好ましい。かかる層は、また同時に、第1の波長変換材料118から放出された光が構造体で直接反射され構造体から出るように高い反射率を示すべきである。かかる層は、さらに、構造体の熱伝達能力も向上させる。
【0076】
図4dには、本質的に楕円形の電界放出光源400”の斜視図が示されている。楕円形の(あるいは円形又は同様に丸みのある)形状は、例えば、アーキング及び寄生電流としての電気現象を回避するという点で、利点を有する。高電場を印加し、コーナー又はエッジが存在する場合、これらは問題になる可能性がある。電界放出光源400”は、ゲッター412が加わっていることを除いて、図1の電界放出光源100との類似性を示す。1×10-4トルの真空又はより高真空を達成し維持するために、ゲッター412を使用することが非常に望ましい。ゲッター402は、ナノ構造体114及びゲッター402を取り囲むスペーサー構造体110によって形成された空洞部112の底面においてナノ構造体114に隣接して配設される。ゲッターは、空洞部112内の真空を完成し維持するために設けられた反応性材料の堆積物である。電界放出光源400”からの光の抽出を少なくとも部分的にもたらすように、ゲッター410を選択することが好ましい。そのため、反射特性を有する材料からゲッターを形成することが好ましい。さらに、ナノ構造体114が設けられている表面も反射性であるように配設されていることが好ましい。ゲッター412の活性化は、一般的に、デバイスを封止した後に行われ、ゲッターをデバイス内に配置したら、プロセスの温度バジェットに関する要件を課す。図3aに関して上に述べたのと同様に、制御ユニット312は、ウェハ102と一体化されてもよい。そのため、制御ユニット312の機能は、電界放出光源400”を制御するために、電界放出カソードのナノ構造体114と直接隣接して形成されてもよい。
【0077】
さらに図5に関する本発明の一実施形態において、電界放出光源500が提供される。図5において、第1の波長変換材料118は、ガラス構造体114に直接隣接して配設されているため、ガラス構造体114と導電性アノード層116との間に挟まれている。図4cに関するものと同様に、動作中、電子は、導電性アノード層116を通過し、第1の波長変換材料118に衝突する。かかる実施形態において、導電性アノード層116は好ましくは反射性であるように選択され、これにより第1の波長変換材料118で生成した光がカソード構造体106に向かって「戻り(back)」放出するのを低減し、電界放出光源500からの全体的な光出力が改善される。
【0078】
一層の導電性の反射性層を有するアノードを使用する場合、いくつかの点が重要である。アノードに衝突した電子がエネルギーのかなりの部分を失わずに層を通過するように、層は十分に薄くなければならない。もし電子がエネルギーのかなりの部分を失うと、このエネルギーは光子に変換されず、失われて全体的にエネルギー効率が低下する。
【0079】
他方、反射率が許容レベルに達するように、層は十分に厚くなければならない。この厚さが薄すぎると、光子のかなりの部分が吸収されるか、又は透過してカソードに向かって戻り、たとえそれらが全て反射されて戻っても、全体的な損失が顕著になる。
【0080】
これのためには、2種の好ましい金属、すなわちAg(銀)とAl(アルミニウム)が存在する。これら2種のうち、後者は、低コストであり、より軽量な元素であり(より厚い層が可能となる)、UVC光及び可視光の両方に対して高い反射率を有し、また、その酸化物が薄く、可視光に対して実質的に透明であるために、実施が容易である。
【0081】
民生用用途に使用されるエネルギーは、10kV未満、好ましくは8.5kV未満であるべきであり、制動放射によって生成した軟X線がランプから出ることができるであろう(そうでなければアノードガラスによって吸収される)。しかし、これらのレベルはある程度はガラスの厚さに依存するので、より厚いガラスが使用される場合には、より高い電圧を許容することができる。
【0082】
一方、エネルギーは、導電性層及び反射性層を透過するのに十分な高くなければならない。そのため、民生用用途に好ましい範囲は5〜8kVであり、工業的用途(ある種の軟X線が許容される)に好ましい範囲は5〜15kVである。
【0083】
動作エネルギー(動作電圧)は、主に、ナノ構造体の詳細な形状(高さ、幅/最小半径、距離)及びカソードとアノードとの間の距離によって設定される。後者は、カソードナノ構造体の高さ及びスペーサー要素の厚さによって決定される。したがって、スペーサー要素の寸法は決定的に重要になってきており、ナノ構造体の幾何学的形状を一定に保つことが望ましいときに動作電圧を設定するために使用される。というのは、このプロセスは、様々な用途要件に応じてスペーサー厚さを変更することと比べて正確な方法で調節するのにかなり冗長であるからである。
【0084】
アルミニウムの場合、反射性かつ導電性の層の厚さは50〜100nmの範囲にあると決定される。反射率曲線を図6に示す。図から分かるように、50nmを超えると、反射率は安定した最大値に達する。表面の厚さのばらつきを許容するために、目標値は、ローエンドとして60〜70nm、ハイエンドとして90〜110nmに設定されるべきである。
【0085】
所与の入力電力要件を使用すると、より高い電圧がより低い電流密度をもたらすため、より高い動作電圧が有益であり得ることを留意すべきである。電流密度は、蛍光体の強度劣化に直接関係し、適用された蓄積電荷がこの劣化の主原因であると考えられる。寿命は、通常、初期強度の30%の低下により設定される。より高いエネルギーを使用することの二次的な利点は、より高い電圧であるほど効率が通常増加することであり、これは、光子がカソードルミネッセント結晶子中より深くで生成し、より低割合の電子(特に二次電子)が結晶子の表面に到達し、そこで非放射性の再結合プロセスが起こるからであると考えられる。
【0086】
図7は、本発明に係る電界放出光源700の現在のところ好ましい実施形態を示す。図示した実施形態において、電界放出光源700は、底部に配設された円形ガラスウェハ702と、上部に配設された円形アノードガラス基板704とを含む。ガラス材料製のガラスリング状のスペーサー706が、ガラスウェハ702とアノードガラス基板704との間に配設されている。
【0087】
ガラスウェハ702には、複数のナノ構造体を含む電界放出カソード708が設けられている。接続要素710、例えばITOパッチを用いて設けられる接続要素は、電界放出カソード708への電気的接続を可能にするように設けられるものであり、すなわちスペーサー706の「壁」を越えて及び当該壁の外側に延在している。
【0088】
アノードガラス基板704は、第1の波長変換材料712を備え、第1の波長変換材料712は、アノードガラス基板704と導電性アノードとして機能する金属層714との間に挟まれている。ここでも、ITOパッチ716が、アノード層714への電気的接続を可能にするために設けられており、スペーサー706の壁を越えて及び当該壁の外側に延在している。
【0089】
電界放出光源700は、例えば、高真空加熱環境において構成部品を互いに重ね合わせてモジュール式に配設することによって製造することができる。ガラス部品の封止は、好ましくは上記のように達成される。電界放出光源700の機能は、上記の電界放出光源100及び500に匹敵する。
【0090】
さらに、本発明の可能な一実施形態において、さらに図8を参照すると、照明装置800は、上記のように、隣接して配設された複数の電界放出光源100/300/400/400’/400”/500/700によって形成することができる。電界放出光源100/300/400/400’/400”/500/700は、制御ユニット804を用いて制御される共通電源302によって給電することができる。制御ユニット804は、ユーザーインタフェース806から所望の強度レベルの指示を受信するように構成することができる。さらに、センサー808は、制御ユニット804に電気的に接続されていてもよい。制御ユニット804は、所望の強度レベル及びセンサー808を使用して測定される中間強度レベルに応じて、電源802を制御するように構成することができる。照明装置800は、さらに、複数の電界放出光源100/300/400/400’/400”/500/700によって放出された光を混合するためのレンズ構造体810を備えることができる。
【0091】
要約すると、本発明は、基板上に形成された複数のナノ構造体を含む電界放出カソードと、導電性アノード構造体であって、当該アノード構造体の少なくとも一部を覆うように配設された第1の波長変換材料を含み、第1の波長変換材料が、電界放出カソードから放出された電子を受容して第1の波長範囲の光を放出するように構成されている導電性アノードと、密封された後に排気される空洞部を電界放出カソードの基板とアノード構造体との間に形成するための手段と、複数のナノ構造体を取り囲むように配設されたスペーサー構造体とを含み、空洞部が排気され、複数のナノ構造体を受容するための基板がウェハである、電界放出光源に関する。
【0092】
図は、方法ステップの特定の順序を示すことができるが、ステップの順序は図示された順序と異なっていてもよい。また、2つ以上のステップを並行して実施してもよいし、部分的に同時に実施してもよい。かかるバリエーションは、選択されたソフトウェア及びハードウェアシステムや設計者の選択に依存する。全てのかかるバリエーションは、本開示の範囲内である。同様に、ソフトウェア実装は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ及び決定ステップを達成するルールに基づく論理及び他の論理を備えた標準的なプログラミング技術によって達成することができる。さらに、本発明を、特定の例示的な実施例を参照して説明したが、多くの様々な改変、変更などは、当業者に明らかになるであろう。
【0093】
開示された実施形態に対するバリエーションは、特許請求された発明を実施する際に、図面、開示内容及び添付の特許請求の範囲の検討から、当業者によって理解され、達成され得る。さらに、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語句は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除しない。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7
図8