【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
(複合樹脂エマルション)
[製造例1]:複合樹脂エマルション1
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、反応溶媒として重合性単量体(b)である、メチルメタクリレート19.7重量部及びn−ブチルアクリレート0.8重量部を入れ、ポリプロピレングリコール(数平均分子量1000(*1)を7.7重量部と数平均分子量2000(*2)を0.6重量部)及びジメチロールプロピオン酸2.0重量部を加え、内温50℃とし、次いで、イソホロンジイソシアネート10.2重量部を加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a)溶液を50℃に保ちながら、トリエタノールアミン2.3重量部を加えて、このウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基を中和した。次いで、この溶液に精製水56.6重量部を、50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
その後、この分散液を50℃に保温し、この温度で、ラジカル重合触媒として、t−ブチルハイドロパーオキサイドの7重量%水溶液を0.15重量部とアスコルビン酸1重量%水溶液0.05重量部を添加して、重合性単量体(b)の重合を開始した。発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持することによって、複合樹脂エマルション1を得た。
(複合樹脂エマルション1は、成分(b)を重合した共重合体のガラス転移温度が約95℃、ウレタンプレポリマー(a)と重合性単量体(b)の混合割合が50:50である。)
*1:ポリプロピレングリコール,ジオール型,1000(和光純薬工業社製 水酸基価:111mgKOH/g)
*2:ポリプロピレングリコール,ジオール型,2000(和光純薬工業社製 水酸基価:56mgKOH/g)
【0052】
[製造例2]:複合樹脂エマルション2
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、重合性単量体(b)であるメチルメタクリレート20.2重量部及びn−ブチルアクリレートを0.2重量部を加え、更にポリプロピレングリコール(前記*1を7.2重量部、前記*2を0.58重量部)及びジメチロールプロピオン酸を2.6重量部加え、内温50℃とし、次いで、イソホロンジイソシアネートを10.1重量部加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a)溶液を50℃に保ちながら、トリエタノールアミン2.8重量部を加えて、このウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基の全部を中和した。次いで、この溶液に水性媒体56.3重量部を、50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
その後、この分散液を50℃に保温し、この温度で、ラジカル重合触媒であるt−ブチルハイドロパーオキサイドの7重量%水溶液を0.14重量部とアスコルビン酸1重量%水溶液0.06重量部を添加して、重合性単量体(b)の重合を開始した。発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持することによって、複合樹脂エマルジョン2を得た。
(複合樹脂エマルション2は、成分(b)を重合した共重合体のガラス転移温度が約102℃、ウレタンプレポリマー(a)と重合性単量体(b)の混合割合が50:50である。)
【0053】
[製造例3]:複合樹脂エマルション3
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、重合性単量体(b)であるメチルメタクリレート19.6重量部及びn−ブチルアクリレートを0.8重量部を加え、更にポリプロピレングリコール(前記*1を8.7重量部、前記*2を0.6重量部)及びジメチロールプロピオン酸を2.3重量部加え、内温50℃とし、次いで、イソホロンジイソシアネートを8.9重量部加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a)溶液を50℃に保ちながら、トリエタノールアミン2.6重量部を加えて、このウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基の全部を中和した。次いで、この溶液に水性媒体56.5重量部を、50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
その後、この分散液を50℃に保温し、この温度で、ラジカル重合触媒であるt−ブチルハイドロパーオキサイドの7重量%水溶液を0.07重量部とアスコルビン酸1重量%水溶液0.02重量部を添加して、重合性単量体(b)の重合を開始した。発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持することによって、複合樹脂エマルジョン3を得た。
(複合樹脂エマルション3は、成分(b)を重合した共重合体のガラス転移温度が約95℃、ウレタンプレポリマー(a)と重合性単量体(b)の混合割合が50:50である。)
【0054】
[製造例4]:複合樹脂エマルション4
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、重合性単量体(b)であるメチルメタクリレート14.8重量部及びn−ブチルアクリレートを0.6重量部を加え、更にポリプロピレングリコール(前記*1を9.8重量部、前記*2を0.7重量部)及びジメチロールプロピオン酸を2.6重量部加え、内温50℃とし、次いで、イソホロンジイソシアネートを10.1重量部加え、90℃に加温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a)溶液を50℃に保ちながら、トリエタノールアミン2.9重量部を加えて、このウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基の全部を中和した。次いで、この溶液に水性媒体53.2重量部を、50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
その後、この分散液を50℃に保温し、この温度で、ラジカル重合触媒であるt−ブチルハイドロパーオキサイドの7重量%水溶液を0.11重量部とアスコルビン酸1重量%水溶液0.04重量部を添加して、重合性単量体(b)の重合を開始した。発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持することによって、複合樹脂エマルジョン4を得た。
(複合樹脂エマルション4は、成分(b)を重合した共重合体のガラス転移温度が約95℃、ウレタンプレポリマー(a)と重合性単量体(b)の混合割合が60:40である。)
【0055】
(睫用化粧料)
実施例1〜8及び比較例1〜4:水中油型マスカラ化粧料(クリーム状)
下記表1に示す処方のマスカラ化粧料を調製し、a. カール効果、b.カールの持続効果、c.しなやかな弾力感、d.化粧膜のツヤを下記の評価方法により評価した。結果も併せて表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
*1:パインクリスタル KE−311(荒川化学工業社製)
*2:リカボンドSU−U0609−SS(中央理化工業社製、(a)成分:(b)成分の質量比=50:50、(b)成分の理論Tg6℃、固形分30%)
*3:YODOSOL GH810F(固形分45%)(アクゾノーベル社製)
*4:DYNAMX(アクゾノーベル社製、ポリウレタン−14:アクリレーツコポリマーの質量比=70:30の混合エタノール水溶液、固形分28%)
【0058】
(製造方法)
A.成分(1)〜(8)を100℃で加熱溶解する。
B.成分(9)〜(19)を90℃で加熱混合する。
C.AにBを加え乳化する。
D.Cを容器に充填してマスカラ化粧料を得た。
【0059】
(評価方法)
下記の項目について、各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。各試料を1回瞼の際に塗布し、パネル各人がa、c、dについては塗布直後、bについては塗布後8時間通常の生活をした後の化粧膜の状態を、下記絶対評価基準にて7段階に評価し、評点をつけ、パネル全員の評点の合計から、その平均値を算出し、下記の判定基準により判定した。
<評価項目>
a.カール効果
b.カールの持続効果
c.しなやかな弾力感
d.化粧膜のツヤ
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
<判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超え4.5点未満 :良好
△ :1点を超え3.5点未満 :やや不良
× :1点未満 :不良
【0060】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1〜8のマスカラ化粧料は、比較例1〜4のマスカラ化粧料に比べ、カール効果と経時でのカールの持続効果に優れながらも、化粧膜が柔軟であるために睫本来の質感を損なうことなくしなやかな弾力感を有し、更に化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。
これに対して、成分(A)のアクリルウレタン複合エマルションポリマーのアクリル部分の理論Tgを6℃としたものを使用した比較例1では、アクリル部分の塗膜強度が不足し、化粧膜が柔らかすぎることから、塗布直後からカール効果が低く、さらにカールの持続効果の点でも満足いくものが得られなかった。成分(A)のアクリルウレタン複合エマルションポリマーの代わりにアクリル酸アルキル共重合体エマルションポリマーを用いた比較例2では、化粧膜が硬くもろいため、しなやかな弾力感がないだけでなくカールの持続効果においても十分でなく、また化粧膜のツヤにおいて満足のいくものが得られなかった。成分(A)のアクリルウレタン複合エマルションポリマーの代わりにウレタン・アクリル混合ポリマーを用いた比較例3では、化粧膜が柔らかすぎることから、カール効果およびカールの持続効果において十分でなく、またアクリルの硬い特性を反映することでしなやかな弾力感においても満足のいくものが得られなかった。
成分(B)のゲル化剤を含有しない比較例4は、化粧膜が機能を発揮するのに十分な厚みをもって睫状に塗布できないため、カール効果、カールの持続効果、しなやかな弾力感、化粧膜のツヤという全ての点において、満足のいくものがえられなかった。
【0061】
実施例9〜16及び比較例5〜8:油中水型マスカラ化粧料(ゲル状)
下記表2に示す処方のマスカラ化粧料を調製し、a. カール効果、b.カールの持続効果、c.しなやかな弾力感、d.化粧膜のツヤを下記の評価方法により評価した。結果も併せて表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
*5:レオパールKL(千葉製粉社製)
*6:BENTONE 38V BC(エレメンティス社製)
*7:SILFORM FLEXIBLE RESIN(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
*8:KF−7312J(信越化学工業社製)
【0064】
(製造方法)
A.成分(1)〜(14)を100℃で加熱溶解する。
B.成分(15)〜(23)を90℃で加熱混合する。
C.室温に冷却し、AにBを加え乳化する。
D.Cを容器に充填してマスカラ化粧料を得た。
【0065】
(評価方法)
下記の項目について、各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。各試料を1回瞼の際に塗布し、パネル各人がa、c、dについては塗布直後、bについては塗布後8時間通常の生活をした後の化粧膜の状態を、下記絶対評価基準にて7段階に評価し、評点をつけ、パネル全員の評点の合計から、その平均値を算出し、下記の判定基準により判定した。
<評価項目>
a.カール効果
b.カールの持続効果
c.しなやかな弾力感
d.化粧膜のツヤ
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
<判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超え4.5点未満 :良好
△ :1点を超え3.5点未満 :やや不良
× :1点未満 :不良
【0066】
表2の結果から明らかな如く、本発明の実施例9〜16のマスカラ化粧料は、比較例5〜8のマスカラ化粧料に比べ、カール効果と経時でのカールの持続効果に優れながらも、化粧膜が柔軟であるために睫本来の質感を損なうことなくしなやかな弾力感を有し、更に化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。
これに対して、成分(A)のアクリルウレタン複合エマルションポリマーのアクリル部分の理論Tgを35℃としたものを使用した比較例5では、アクリル部分の塗膜強度が不足し、化粧膜が柔らかすぎることから、塗布直後からカール効果が低く、さらにカールの持続効果の点でも満足いくものが得られなかった。成分(A)のアクリルウレタン複合エマルションポリマーの代わりにアクリル酸アルキル共重合体エマルションポリマーを用いた比較例6では、化粧膜が硬くもろいため、しなやかな弾力感がないだけでなくカールの持続効果においても十分でなく、また化粧膜のツヤにおいて満足のいくものが得られなかった。成分(A)のアクリルウレタン複合エマルションポリマーの代わりにウレタン・アクリル混合ポリマーを用いた比較例7では、化粧膜が柔らかすぎることから、カール効果およびカールの持続効果において十分でなく、またアクリルの硬い特性を反映することでしなやかな弾力感においても満足のいくものが得られなかった。
成分(B)のゲル化剤を含有しない比較例8は、化粧膜が機能を発揮するのに十分な厚みをもって睫状に塗布できないため、カール効果、カールの持続効果、しなやかな弾力感、化粧膜のツヤという全ての点において、満足のいくものが得られなかった。
【0067】
実施例17:油中水型マスカラ化粧料(液状)
(成分) (%)
(1)アクリル−シリコーングラフト共重合体*9 15
(2)トリメチルシロキシケイ酸溶液*8 10
(3)ワセリン 5
(4)カルナウバワックス 10
(5)マイクロクリスタリンワックス*10 5
(6)デキストリン脂肪酸エステル*11 2
(7)デカメチルシクロペンタシロキサン 残量
(8)有機変性ベントナイト*12 3
(9)タルク 10
(10)ポリプロピレン繊維*13 2
(11)煙霧状無水ケイ酸*14 3
(12)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(13)フェノキシエタノール 0.1
(14)レシチン 0.2
(15)製造例2の複合樹脂エマルション2 1
*9:KP−545(信越化学工業社製)(固形分30%、溶媒:デカメチルシクロペンタシロキサン)
*10:MULTIWAX W−835 MYCROCRYSTALLINEWAX(SONNEBORN社製)
*11:レオパールTL2(千葉製粉社製)
*12:BENTONE 27V(ELEMENTIS社製)
*13:6T、3mm
*14:AEROSIL 200(日本アエロジル社製)
(製法)
A.成分(1)〜(7)を約110℃で加熱混合し均一にする。
B.成分(8)〜(15)をAに加え均一に混合する。
C.Bを容器に充填し、油性マスカラ化粧料を得た。
以上のようにして得られたマスカラ化粧料は、カール効果と経時でのカールの持続効果に優れながらも、化粧膜が柔軟であるために睫本来の質感を損なうことなくしなやかな弾力感を有し、更に化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。
【0068】
実施例18:油中水型マスカラ下地化粧料(ゲル状)
(成分) (%)
(1)水添ロジン酸ペンタエリスリチル*15 1
(2)軽質流動イソパラフィン 30
(3)水素添加エステルガム*1 2
(4)フィッシャートロプシュワックス(融点80〜84℃) 15
(5)ポリエチレンテレフタレート粉末*16 5
(6)ラウロイルリシン 3
(7)パラオキシ安息香酸エチル 1
(8)精製水 残量
(9)ナイロン繊維*17 0.5
(10)チタン・酸化チタン焼結物*18 10
(11)ベンガラ被覆雲母チタン 1
(12)ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
(13)トレハロース 0.1
(14)1,3−ブチレングリコール 3
(15)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルジョン*19 5
(16)製造例3の複合樹脂エマルション3 2
*15:エステルガム HP(荒川工業社製)
*16:スノーリーフP(オーケン社製)
*17:3T、1mm、未処理
*18:TILACK D (赤穂化成社製)
*19:ビニゾール2140L(固形分43%)(大同化成工業社製)
(製法)
A.成分(1)〜(7)を100℃に加熱溶解し、常温になるまで冷却する。
B.成分(8)〜(16)を加えて乳化する。
C.Bを容器に充填し、油中水型マスカラ下地化粧料を得た。
以上のようにして得られたマスカラ下地化粧料は、カール効果と経時でのカールの持続効果に優れながらも、化粧膜が柔軟であるために睫本来の質感を損なうことなくしなやかな弾力感を有し、更に化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。
【0069】
実施例19:水中油型マスカラトップコート化粧料(ゲル状)
(成分) (%)
(1)カルナウバワックス 2
(2)キャンデリラワックス 2
(3)ミツロウ 8
(4)酸化鉄 5
(5)酸化チタン被覆ガラスフレーク*20 3
(6)シリコーン樹脂粉末*21 5
(7)アルカリ増粘性ポリマーエマルション*22 2
(8)精製水 残量
(9)カーボンブラック 1
(10)エタノール 10
(11)1,3−ブチレングリコール 5
(12)ポリオキシエチレンセチルエーテル 0.5
(13)トリエタノールアミン 2
(14)アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン*3 5
(15)アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン*23 5
(16)製造例4の複合樹脂エマルション4 15
*20:メタシャイン1080(日本板硝子社製)(ジメチルポリシロキサン処理)
*21:トスパール150KA(GE東芝シリコーン社製)
*22:ACULYN 33A(固形分28%)(ローム&ハース社製)
*23:ビニゾール1086WP(固形分40%)(大同化成工業社製)
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を均一に加熱溶解し、90℃にする。
B.成分(7)〜(16)を均一に混合し、90まで加熱する。
C.BにAを加え乳化する。
D.Cを容器に充填し、マスカラトップコート化粧料を得た。
以上のようにして得られたマスカラトップコート化粧料は、カール効果と経時でのカールの持続効果に優れながらも、化粧膜が柔軟であるために睫本来の質感を損なうことなくしなやかな弾力感を有し、更に化粧膜のツヤ感にも優れたものであった。