特許第6454087号(P6454087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6454087エアゾール組成物および該エアゾール組成物を含むエアゾール製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454087
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】エアゾール組成物および該エアゾール組成物を含むエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/33 20060101AFI20190107BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20190107BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   A61K8/33
   A61K8/02
   A61K8/19
   A61Q19/00
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-104575(P2014-104575)
(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公開番号】特開2015-218149(P2015-218149A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 伸秀
(72)【発明者】
【氏名】大友 高志
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英俊
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−081834(JP,A)
【文献】 特開2013−237642(JP,A)
【文献】 特開平06−287115(JP,A)
【文献】 特開2006−342113(JP,A)
【文献】 特開平08−099868(JP,A)
【文献】 特表平08−503989(JP,A)
【文献】 特開2009−173561(JP,A)
【文献】 特開2012−001465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/33
A61K 8/02
A61K 8/19
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
を95質量%以上含有する含水原液と、ジメチルエーテルとを含み、
前記ジメチルエーテルは、エアゾール組成物中、前記含水原液に対する飽和溶解量を超えるよう含有され、
前記ジメチルエーテルは、一部が前記含水原液に溶解されており、残部が含水原液に溶解されずに分散または分離していることにより、
5℃以下に冷却して使用される場合に立体的な氷結物を形成し、25℃で使用される場合に氷結物を形成しない、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記ジメチルエーテルは、前記含水原液に対する飽和溶解量の1.01〜1.5倍量含有される、請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記ジメチルエーテルは、前記エアゾール組成物中、36〜50質量%含有される、請求項2記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載のエアゾール組成物を充填する容器本体と、前記エアゾール組成物を噴射する噴射孔を有する噴射部材とを備え、
前記エアゾール組成物を、
前記含水原液中に溶解された状態のジメチルエーテルと、
前記含水原液中に溶解された状態のジメチルエーテルよりも粒子径が大きく、前記含水原液中に懸濁された状態のジメチルエーテルとを含むよう噴射する、エアゾール製品。
【請求項5】
前記噴射部材は、前記エアゾール組成物を旋回させながら前記噴射孔に導入するメカニカルブレークアップ機構を有し、
前記噴射孔は、直径が0.2〜0.4mmである、請求項記載のエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物および該エアゾール組成物を含むエアゾール製品に関する。より詳細には、本発明は、冷却した状態で使用され、噴射後に氷結して柔らかい性状の立体的な氷結物を得ることのできるエアゾール組成物および該エアゾール組成物を含むエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚などの適用箇所に冷感を付与することのできるエアゾール組成物を噴射するエアゾール製品が知られている。特許文献1には、使用時にエアゾール組成物を噴霧し、空間、身体および物体表面を冷却するための装置が開示されている。特許文献1に記載の装置は、常温で使用され、噴射されたエアゾール組成物は氷結物を形成しない。特許文献2には、冷蔵庫や冷凍庫などで冷却して使用される吐出製品において、冷却された吐出製品を把持することのできる耐圧容器が開示されている。特許文献2に記載の吐出製品では、ジメチルエーテルは、原液に溶解する量(原液の飽和溶解量よりも少ない量)が含有される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平8−503989号公報
【特許文献2】特開2004−81834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、常温で使用されることが想定されている。また、噴射されたエアゾール組成物は氷結物を形成しない。そのため、特許文献1に記載の装置によれば、皮膚などの適用箇所に対して充分な冷感を付与することができない。また、特許文献2に記載の吐出製品によれば、原液とジメチルエーテルとが均一に溶解されている。そのため、吐出された内容物は、平面状に硬い氷結物を形成しやすい。このような硬い氷結物は、たとえばコットンやシート等に一旦吐出してから皮膚などの適用箇所に付与する場合であっても、適用箇所に刺激を与えやすい。また平面状の氷結物は、溶けやすく、適用箇所に対して持続的な冷感を付与することができない。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、柔らかい性状の氷結物を形成でき、溶けにくく、適用箇所に対して持続的に充分な冷感を付与することのできるエアゾール組成物および該エアゾール組成物を含むエアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のエアゾール組成物および該エアゾール組成物を含むエアゾール製品には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)5℃以下に冷却して使用され、立体的な氷結物を形成するエアゾール組成物であり、水を95質量%以上含有する含水原液と、ジメチルエーテルとを含み、前記ジメチルエーテルは、エアゾール組成物中、前記含水原液に対する飽和溶解量を超えるよう含有される、エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルを含む。そのため、エアゾール組成物は、5℃以下(好ましくは0℃以下)に冷却されても凍結せず、適宜エアゾール容器に充填してエアゾール製品とすることにより冷却した状態で噴射することができる。また、エアゾール組成物は、たとえば適宜エアゾール容器に充填してエアゾール製品とする場合において、常温で噴射しても氷結物を形成しないが、5℃以下に冷却して噴射することにより発泡して柔らかい性状の氷結物を形成する。この際、「5℃以下」に冷却するためには、エアゾール組成物は、家庭用の冷蔵庫や冷凍庫により冷やされればよく、一般家庭において日常的に使用される設備が使用される。さらに、ジメチルエーテルは、エアゾール組成物中、含水原液に対する飽和溶解量を超えるよう含有されている。そのため、含水原液に溶解していないジメチルエーテルは、エアゾール容器に充填してエアゾール製品とし、使用前に適宜混合することにより含水原液に容易に分散(懸濁)される。このようなエアゾール製品は、界面活性剤などの起泡剤をエアゾール組成物に含有させなくても、分散されたジメチルエーテルが、噴射されて発泡されたエアゾール組成物を、立体的な柔らかい氷結物として凍らせることができる。また、このような氷結物は、柔らかいため、皮膚などの適用箇所を刺激しにくい。さらに、このような氷結物は、立体的であるため、適用箇所において溶けにくく、充分な冷感を付与することができる。
【0009】
(2)前記ジメチルエーテルは、前記含水原液に対する飽和溶解量の1.01〜1.5倍量含有される、(1)記載のエアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、従来の、常温で噴射して氷結物を形成するエアゾール組成物と比較して、エアゾール組成物は、噴射されたエアゾール組成物が氷結するために必要とされるジメチルエーテルの量が少なくて済む。そのため、エアゾール組成物は、環境に優しい。また、このような量のジメチルエーテルが含有されたエアゾール組成物はジメチルエーテルの飽和蒸気圧に近い圧力になり、低温で噴射するために適切な圧力に調整しやすい。さらに、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルが飽和溶解量の1.01〜1.5倍量含有されている。そのため、一部のジメチルエーテルは溶解せずに含水原液中に存在している。この溶けていないジメチルエーテルは、静置していると分離層を形成することがある。しかしながら、ジメチルエーテルが含水原液に対する飽和溶解量の1.01〜1.5倍量含有される場合、エアゾール組成物を5℃以下に冷却した状態で、エアゾール組成物を噴射する前に、たとえば上下に振とうする等により、分離層を形成しているジメチルエーテルを一時的に懸濁した状態に分散させることができる。その結果、エアゾール組成物は、均一な組成で噴射されやすい。
【0011】
(3)前記ジメチルエーテルは、前記エアゾール組成物中、36〜50質量%含有され、好ましくは37〜48質量%含有される、(2)記載のエアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、従来の、常温で噴射して氷結物を形成するエアゾール組成物と比較して、エアゾール組成物は、噴射されたエアゾール組成物が氷結するために必要とされるジメチルエーテルの量がより少なくて済む。また、このような量のジメチルエーテルが含有されたエアゾール組成物は、低温で噴射するために適切な圧力により調整しやすい。さらに、溶解せずに含水原液中に存在するジメチルエーテルは、静置していると分離層を形成することがある。しかしながら、ジメチルエーテルが36〜50質量%含有される場合、エアゾール組成物を5℃以下に冷却した状態で、エアゾール組成物を噴射する前に、たとえば上下に振とうする等により、分離層を形成しているジメチルエーテルを一時的に懸濁した状態に分散させることができる。その結果、エアゾール組成物は、より均一な組成で噴射されやすい。
【0013】
(4)前記含水原液は、前記エアゾール組成物中、5質量%以下の任意成分をさらに含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【0014】
このような構成によれば、含水原液は、エアゾール組成物中、5質量%以下の任意成分をさらに含む。任意成分は、含有量が5質量%以下であれば、柔らかい性状の氷結物の形成を阻害しない。そのため、このようなエアゾール組成物によれば、柔らかい性状の氷結物を得つつ、任意成分によりもたらされる効果を発揮することができる。
【0015】
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のエアゾール組成物を充填する容器本体と、前記エアゾール組成物を噴射する噴射孔を有する噴射部材とを備え、前記エアゾール組成物を、前記含水原液中に溶解された状態のジメチルエーテルと、前記前記含水原液中に溶解された状態のジメチルエーテルよりも粒子径が大きく、前記含水原液中に分散された状態のジメチルエーテルとを含むよう噴射する、エアゾール製品。
【0016】
このような構成によれば、エアゾール製品は、含水原液中に溶解された状態のジメチルエーテルと、溶解された状態のジメチルエーテルよりも粒子径が大きく、含水原液中に分散された状態のジメチルエーテルとを含むようにエアゾール組成物を噴射する。このように、エアゾール組成物は、溶解された状態のジメチルエーテルだけでなく、分散された状態のジメチルエーテルも含んでいる。このような状態の異なる2種のジメチルエーテルは、噴射されたエアゾール組成物を立体的に発泡させ、その後、柔らかい性状に氷結させ得る。
【0017】
(6)前記噴射部材は、前記エアゾール組成物を旋回させながら前記噴射孔に導入するメカニカルブレークアップ機構を有し、前記噴射孔は、直径が0.2〜0.4mmである、(5)記載のエアゾール製品。
【0018】
このような構成によれば、エアゾール製品は、上記したエアゾール組成物を充填し、噴射する。噴射部材は、メカニカルブレークアップ機構を有する。このような噴射部材によれば、エアゾール製品は、上記エアゾール組成物を、広範囲に噴射することができる。また、噴射孔は、直径が0.2〜0.4mmである。このような噴射部材によれば、エアゾール製品は、上記エアゾール組成物を、噴射前に凍結させて詰まらせることなく広範囲に噴射し、立体的な柔らかい氷結物を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、柔らかい性状の氷結物を形成でき、溶けにくく、適用箇所に対して持続的に充分な冷感を付与することのできるエアゾール組成物および該エアゾール組成物を含むエアゾール製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[エアゾール組成物]
本発明の一実施形態のエアゾール組成物は、水を95質量%以上含有する含水原液と、ジメチルエーテルとを含む。ジメチルエーテルは、エアゾール組成物中、含水原液に対する飽和溶解量を超えるよう含有されている。そのため、ジメチルエーテルは、一部が含水原液に溶解されており、残部が含水原液に溶解されずに分散(懸濁)または分離している。本実施形態のエアゾール組成物は、5℃以下に冷却して使用され、立体的な氷結物を形成する。以下、それぞれの構成について説明する。なお、本実施形態において、立体的な氷結物が形成されるかどうかは、本実施形態のエアゾール組成物を後述するエアゾール容器に充填してエアゾール製品を調製し、5℃以下に冷却し、エアゾール製品の噴射ボタンの噴射孔から10cm離した対象物(たとえばコットンやシート等)に、0.5〜5秒間(エアゾール組成物の噴射量:約0.5〜3.0(単位g))となるようエアゾール組成物を噴射する場合に氷結物が形成されるかどうかによって評価することができる。
【0021】
<含水原液>
含水原液は、たとえば後述するエアゾール容器に充填してエアゾール製品とすることにより、エアゾール製品から噴射され、氷結物を形成するための液状の成分である。含水原液は、95質量%以上の水を含む。また、含水原液には、後述するジメチルエーテルが飽和溶解量を超えるよう含有されている。
【0022】
エアゾール組成物中における含水原液の含有量は、後述するジメチルエーテルが飽和溶解量を超えるよう含有される量であれば特に限定されない。含水原液の含有量は、エアゾール組成物中、50質量%以上であることが好ましく、52質量%以上であることがより好ましい。また、含水原液の含有量は、エアゾール組成物中、64質量%以下であることが好ましく、63質量%以下であることがより好ましい。含水原液の含有量が50質量%未満の場合、氷結物が固くなりやすく、また、噴射されてジメチルエーテルが揮発した後にできる氷結物の量が少なくなり、所望の冷却効果を得るための使用量が多くなる傾向がある。一方、含水原液の含有量が64質量%を超える場合、エアゾール組成物中のジメチルエーテルの含有量が少ないため、エアゾール組成物を−20℃まで冷却しても、噴射されたエアゾール組成物が氷結物を形成しにくい傾向がある。
【0023】
(水)
水は、含水原液の主要な成分であり、噴射されたときにジメチルエーテルが気化することにより発泡される。発泡された水は、ジメチルエーテルが気化する際の気化熱により冷却されて立体的に柔らかく凍る。水としては、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などが例示される。
【0024】
水は、含水原液中95質量%以上含まれればよく、97質量%以上含まれることが好ましい。水の含有量が含水原液中95質量%未満の場合、0〜−20℃に冷却したときにエアゾール組成物を撹拌しても、含水原液に溶解されていないジメチルエーテルが均一に懸濁されにくい。そのため、このようにジメチルエーテルが均一に懸濁されていない含水原液を含むエアゾール組成物を用いてエアゾール製品を調製する場合に、エアゾール組成物は、噴射されたときに発泡されにくく、凍りにくくなる傾向がある。
【0025】
(任意成分)
含水原液は、水を95質量%以上となるよう含み、柔らかい性状の氷結物の形成が阻害されない範囲であれば、水以外の任意成分を含んでいてもよい。すなわち、含水原液は、5質量%以下の任意成分を含んでいてもよい。このような含水原液を含むエアゾール組成物は、柔らかい性状の立体的な氷結物を得つつ、各種任意成分によりもたらされる効果を発揮することができる。任意成分としては特に限定されず、アルコール類、有効成分、水溶性高分子、界面活性剤、パウダー等が例示される。
【0026】
アルコール類は、水に溶解しない後述する有効成分の溶媒や、氷の状態を調整する等の目的で用いられる。アルコール類としては、エタノールやイソプロパノールなどの1価アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール等が例示される。
【0027】
任意成分としてアルコール類が含有される場合の含有量は、含水原液中0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、アルコール類の含有量は、含水原液中5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。アルコール類の含有量が0.1質量%未満である場合、水に溶解しない有効成分の溶媒や氷の状態を調整する効果が得られにくい傾向がある。一方、アルコール類の含有量が5質量%を超える場合、ジメチルエーテルが含水原液中に完全に溶解しやすくなり、ジメチルエーテルを含水原液に飽和溶解量を超えるよう含有させることが困難になる傾向がある。このような場合、エアゾール組成物は、噴射されても発泡せず、凍結しにくくなる傾向がある。
【0028】
有効成分は、エアゾール製品に充填され、噴射されたエアゾール組成物が噴射される部位に、所望の効果を付与する目的で用いられる。有効成分としては、l−メントールなどの清涼化剤、アスコルビン酸、パントテン酸などのビタミン類、グリチルレチン酸ジカリウムなどの抗炎症剤、塩酸ブテナフィンなどの抗真菌剤、ジクロフェナクナトリウムなどの消炎鎮痛剤、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルフォン酸亜鉛などの制汗剤、ヒアルロン酸などの保湿剤、香料等が例示される。
【0029】
任意成分として有効成分が含有される場合の含有量は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が0.1質量%未満である場合、有効成分により奏される所望の効果が得られにくい傾向がある。一方、有効成分の含有量が5質量%を超える場合、エアゾール組成物の発泡性や凍結性に影響が出て、柔らかい性状の氷結物が形成されにくい傾向がある。
【0030】
水溶性高分子は、含水原液の粘度を調整したり、エアゾール組成物の発泡性や凍結状態を調整する等の目的で用いられる。水溶性高分子としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系高分子、カラギーナン、キサンタンガム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質、ゼラチン、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等が例示される。
【0031】
任意成分として水溶性高分子が含有される場合の含有量は、含水原液中0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、含水原液中2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が0.01質量%未満の場合、含水原液の粘度を調整したり、エアゾール組成物の発泡性や凍結状態を調整する等の効果が得られにくい傾向がある。一方、水溶性高分子の含有量が2質量%を超える場合、エアゾール組成物は噴射後に氷結物が形成されにくい傾向がある。
【0032】
界面活性剤は、エアゾール組成物を発泡しやすくし、立体的な氷結物を作りやすくする等の目的で用いられる。界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジメチルアミンオキシド液、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体等が例示される。
【0033】
任意成分として界面活性剤が含有される場合の含有量は、含水原液中0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、含水原液中3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が0.05質量%未満の場合、エアゾール組成物を発泡しやすくし、立体的な氷結物を作りやすくする等の効果が得られにくい傾向がある。一方、界面活性剤の含有量が3質量%を超える場合、エアゾール組成物が噴射される部位に残留してべたつくなど使用感が低下しやすい傾向がある。
【0034】
パウダーは、噴射された後に発泡したエアゾール組成物の使用感を向上させる等の目的で用いられる。パウダーとしては、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、ゼオライト、シリカ、シクロペンタシロキサン・ジメチコンクロスポリマーや(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーなどのシリコーンパウダー、ポリアミドやポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどの樹脂パウダー等が例示される。
【0035】
任意成分としてパウダーが含有される場合の含有量は、含水原液中0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が0.01質量%未満の場合、使用感を向上させる等の効果が得られにくい傾向がある。一方、パウダーの含有量が3質量%を超える場合、含水原液中においてパウダーの沈降が速くなる傾向がある。そのため、このような含水原液を含むエアゾール組成物をエアゾール製品として使用すると、均一な組成でエアゾール組成物が噴射されにくい傾向がある。
【0036】
<ジメチルエーテル>
ジメチルエーテルは、含水原液と同様に、後述されるエアゾール製品のエアゾール容器に充填される成分であり、エアゾール製品から噴射されるエアゾール組成物を発泡させ、凍らせるための成分である。ジメチルエーテルは、加圧状態において液状である。また、ジメチルエーテルは、エアゾール組成物中、含水原液に対して飽和溶解量を超えるよう含有される。そのため、ジメチルエーテルは、一部が含水原液に溶解されており、残部が含水原液に溶解されずに分散(懸濁)または分離される。
【0037】
ところで、エアゾール組成物を、たとえば後述するような汎用のエアゾール容器に充填してエアゾール製品を調製し、常温(たとえば25℃)のエアゾール組成物を噴射する場合、噴射されたエアゾール組成物は氷結物を形成しない。これは、噴射されたエアゾール組成物に含有されるジメチルエーテルが気化する際の気化熱によって、噴射されたエアゾール組成物が幾らか冷却されるものの、気化熱は、このようなエアゾール組成物を凍らせるために必要とされる熱量よりも小さいためと考えられる。しかしながら、本実施形態のエアゾール組成物は、5℃以下に冷却して使用される。そのため、噴射されたエアゾール組成物は、すでに5℃以下に冷却されているため、このようなエアゾール組成物を凍らせるために必要な熱量が小さくなる。その結果、ジメチルエーテルが気化する際の気化熱によって、噴射されたエアゾール組成物は氷結物を形成することができる。また、本実施形態のエアゾール組成物は、含水原液に対して飽和溶解量を超えるよう含有されている。そのため、エアゾール組成物が5℃以下(たとえば0℃)に冷却された場合であっても、含水原液が凍結しない。その結果、エアゾール組成物は、たとえばエアゾール容器に充填してエアゾール製品とすることにより容易に噴射することができる。
【0038】
エアゾール組成物を5℃以下に冷却する方法としては特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール組成物を含むエアゾール製品は、家庭用または業務用の冷蔵庫または冷凍庫内に所定時間保持させることにより、5℃以下に冷却される。このように、本実施形態のエアゾール組成物は、5℃以下に冷却するために、家庭用の冷蔵庫や冷凍庫が使用されてもよく、一般消費者が日常的に使用する設備を使用することができる。
【0039】
エアゾール組成物は、噴射された後に、柔らかい性状の立体的な氷結物を形成しやすい観点から、0℃以下に冷却されて使用されることが好ましく、−1℃以下に冷却されて使用されることがより好ましく、−5℃以下に冷却されて使用されることがさらに好ましい。また、エアゾールバルブが作動できなくなることを防ぐ観点から、また、エアゾール組成物は、エアゾール容器内で凍結して噴射できなくなることを防ぐ観点から、−30℃を下回らないように冷却されることが好ましく、−25℃を下回らないように冷却されることがより好ましく、−20℃を下回らないように冷却されて使用されることがさらに好ましい。
【0040】
ジメチルエーテルの説明に戻り、ジメチルエーテルは、上記のとおり、エアゾール組成物中、含水原液に対して飽和溶解量を超えるよう含有されており、一部が含水原液に溶解され、残部が含水原液に溶解されずに分散または分離している。エアゾール組成物は5℃以下に冷却されているため、たとえば常温(25℃)の場合よりもわずかではあるが粘度が高くなる。そのため、含水原液中に分散されたジメチルエーテルは、使用前に適宜混合することにより粘度の比較的高い含水原液中に容易に均一に分散されて懸濁状態を形成し、懸濁状態で保持されやすい。このようなエアゾール製品によれば、たとえば界面活性剤等の起泡剤をエアゾール組成物に含有させなくても、溶解せずに含水原液中に分散されたジメチルエーテルにより、噴射された後に発泡して立体的な柔らかい氷結物を形成することができる。また、このような氷結物は、柔らかいため、皮膚などの適用箇所を刺激しにくい。さらに、このような氷結物は、立体的であるため、適用箇所において溶けにくく、充分な冷感を付与することができる。なお、本実施形態において、「柔らかい性状」とは、氷結物中に粒々とした塊状の氷結物が含まれていないか、含まれているとしても容易に溶けてなくなる程度の量であり、消費者がコットン上の氷結物を頬などに塗り拡げる際に粒々とした感覚をほとんど感知せず、滑らかな印象を感知するような性状をいう。
【0041】
なお、ジメチルエーテルの、エアゾール組成物中における含水原液に対する「飽和溶解量」は、含水原液が水のみで、かつ、エアゾール組成物に上記した任意成分等のその他の成分が含まれていない状態では、約35質量%(25℃)である。なお、飽和溶解量は、含水原液に含まれる任意成分の存在により変化する。しかしながら、本実施形態のエアゾール組成物は、ジメチルエーテルの飽和溶解量が厳密にいくらであるかは問わず、ジメチルエーテルが「飽和溶解量を超える」ように含有されていることを特徴とする。すなわち、ジメチルエーテルは、飽和溶解量が35質量%の場合には35質量%を超えるよう含まれていればよく、飽和溶解量が40質量%の場合には40質量%を超えるよう含まれていればよい。好ましくは、ジメチルエーテルは25℃における飽和溶解量の1.01〜1.5倍量含有することにより、低温時に一部が含水原液中に溶解せずに長く分散(懸濁)された状態で存在することとなる。なお、飽和溶解量を算出する方法は、特に限定されない。一例を挙げると、飽和溶解量は、含水原液にジメチルエーテルを徐々に添加する方法により実験的に算出することができる。具体的には、ジメチルエーテルをエアゾールバルブを介して含水原液に徐々に添加する場合、所定の添加量を超えると含水原液は、懸濁し始める。このような懸濁は、添加されたジメチルエーテルが飽和溶解量に未だ至っていない場合には、ジメチルエーテルが含水原液中で部分的に高濃度になっているに過ぎないため、適宜振とうする等により懸濁状態を解消し、均一な状態に戻すことができる。しかしながら、このような状態からさらにジメチルエーテルを微量ずつ段階的に添加し続けると、ある時点(この時点における総添加量を添加量Aという)では均一な状態であったにもかかわらず、わずかに添加量を増やした場合に、振とうしても懸濁が解消されない現象を確認することができる。このような場合、ジメチルエーテルは、含水原液中、飽和溶解量をわずかに超えて添加されたと考えることができる。そこで、本実施形態では、上記した添加量Aに基づいて算出される溶解量を、飽和溶解量と同じか極めて近似する量として、飽和溶解量とみなすことができる。
【0042】
また、ジメチルエーテルが含水原液に対して、25℃における飽和溶解量の1.01〜1.5倍量含有されている場合において、ジメチルエーテルの含有量は、エアゾール組成物中、36質量%以上であることが好ましく、37質量%以上であることがより好ましい。また、ジメチルエーテルの含有量は、エアゾール組成物中、50質量%以下であることが好ましく、48質量%以下であることがより好ましい。ジメチルエーテルの含有量が36〜50質量%である場合、従来の、常温で噴射して氷結物を形成するエアゾール組成物と比較して、エアゾール組成物は、噴射されたエアゾール組成物を氷結させるために必要とされるジメチルエーテルの量が少なくて済む。そのため、エアゾール組成物は、環境に優しい。また、このような量のジメチルエーテルが含有されたエアゾール組成物は、低温で噴射するために適切な圧力に調整しやすい。さらに、含水原液中に分散されたジメチルエーテルは、静置していると分離することがある。しかしながら、ジメチルエーテルが36〜50質量%含有される場合、エアゾール組成物を5℃以下に冷却した状態で、エアゾール組成物を噴射する前に、たとえば上下に振とうする等により、分離層を形成しているジメチルエーテルが一時的に懸濁した状態に分散させることができる。その結果、エアゾール組成物は、均一な組成で噴射されやすい。特に、ジメチルエーテルの含有量が37質量%以上である場合、エアゾール組成物は、噴射後に良好に発泡し、柔らかい性状の立体的な氷結物が得られやすい。また、ジメチルエーテルの含有量が50質量%以下である場合、含水原液中に溶けていないジメチルエーテルの量が適切な量となり、分離層が形成される場合であっても、分離層の厚さが厚過ぎることなく、エアゾール組成物は、たとえば上下に振とうする等により容易に溶解していないジメチルエーテルが均一に分散される。
【0043】
特に、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルの含有量が37〜48質量%である場合には、−1〜−3℃に冷却することにより、エアゾール製品として噴射すると、所望の柔らかい性状の立体的な氷結物を形成することができる。ここで、−1〜−3℃に冷却する手段としては、たとえば家庭用冷蔵庫のパーシャル室が例示される。
【0044】
なお、本実施形態のエアゾール組成物は、ジメチルエーテルの少なくとも一部が含水原液中に溶解せずに分散または分離されるよう含有されればよく、このような分散または分離状態が阻害されない範囲で、水に溶解しないその他のガス成分を含んでもよい。このようなその他のガス成分としては、液化石油ガスやハイドロフルオロオレフィンが例示される。
【0045】
以上のエアゾール組成物は、たとえばエアゾール容器に充填されてエアゾール製品として利用される。以下に、本実施形態のエアゾール組成物を噴射するためのエアゾール製品の一例について説明する。
【0046】
[エアゾール製品]
本実施形態のエアゾール製品は、上記エアゾール組成物を充填する耐圧容器(容器本体の一例)と、容器本体に取り付けられるエアゾールバルブと、エアゾール組成物を噴射する噴射孔を有する噴射ボタン(噴射部材の一例)とを備える。以下、それぞれの構成について説明する。なお、エアゾール製品の構成は、本実施形態に限定されず、上記エアゾール組成物を充填でき、適切に噴射できる構成であればよい。
【0047】
(耐圧容器)
耐圧容器は、エアゾール組成物を加圧状態で充填するための容器である。耐圧容器は、汎用の形状であってよい。本実施形態の耐圧容器は、上部に開口を有する有底筒状である。開口は、含水原液を充填するための充填口であり、後述するエアゾールバルブにより閉止される。
【0048】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、前述の耐圧容器の開口に取り付けられて耐圧容器内を密封するための部材である。エアゾールバルブは、耐圧容器内と外部との連通/遮断を切り替える弁を備えており、弁を解放することにより耐圧容器に充填されるエアゾール組成物を取り込み、後述する噴射ボタンへ送ることができる。また、エアゾールバルブは、弁から耐圧容器内にジメチルエーテルを圧入することができる。弁より圧入されるジメチルエーテルは、耐圧容器内で加圧され、一部が含水原液に溶解し、残部が含水原液中に分散(懸濁)または分離する。
【0049】
なお、エアゾールバルブの構造は特に限定されず、汎用のエアゾールバルブが適宜用いられる。また、耐圧容器にエアゾール組成物を充填する方法は特に限定されない。一例を挙げると、耐圧容器の開口から含水原液を充填し、エアゾールバルブにより開口を閉止し、エアゾールバルブの弁からジメチルエーテルを圧入する方法が採用される。ほかにも、エアゾールバルブを固着する前にジメチルエーテルを充填するアンダーカップ充填が採用されてもよい。
【0050】
(噴射ボタン)
噴射ボタンは、エアゾールバルブを経て取り込まれたエアゾール組成物を噴射するための部材である。噴射ボタンには、エアゾール組成物を噴射するための噴射口が形成されている。本実施形態のエアゾール製品は、噴射ボタンの先端(噴射口の近傍)に、メカニカルブレークアップ機構を備えたノズルチップが装着されている。なお、メカニカルブレークアップ機構は、本実施形態において好適に設けられる機構であり、必須ではない。
【0051】
噴射孔の大きさ(直径)としては特に限定されない。噴射孔の直径は、0.2mm以上であることが好ましい。また、噴射孔の直径は、1.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましい。噴射孔の直径が0.2mm未満の場合、噴射の途中でエアゾール組成物が凍結し、噴射できなくなる傾向がある。一方、噴射孔の直径が1.0mmを超える場合、噴射されたエアゾール組成物が飛び散りやすく、立体的な氷結物を形成しにくい傾向がある。
【0052】
メカニカルブレークアップ機構は、エアゾール組成物が噴射される際に、エアゾール組成物を旋回させながら噴射孔に導入するための機構であり、外周から中心にある噴射孔に向かってエアゾール組成物を流入させるための複数の溝を有する。エアゾール組成物は、これらの溝を通過する際に旋回され、噴射孔から広範囲に拡がるように噴射される。メカニカルブレークアップ機構を備えるノズルチップが装着される場合、噴射孔の直径は、0.2〜0.4mmであることが好ましい。噴射孔の直径が0.4mmを超える場合、噴射されたエアゾール組成物が広範囲に拡がり過ぎて氷結物を形成しにくくなる傾向がある。
【0053】
ここで、一般に、メカニカルブレークアップ機構を備えるノズルチップが装着されている場合、エアゾール組成物は、広範囲に噴射され、氷結物を形成しにくい。しかしながら、本実施形態のエアゾール製品は、ジメチルエーテルが含水原液に対して飽和溶解量を超えるよう含有されたエアゾール組成物を噴射することができる。このようなエアゾール組成物は、含水原液中に溶解されたジメチルエーテルと、含水原液中に分散された状態のジメチルエーテルとを含む。分散された状態のジメチルエーテルは、溶解された状態のジメチルエーテルよりも粒子径が大きい。このような状態の異なる2種のジメチルエーテルは、噴射されたエアゾール組成物を立体的に発泡させ、その後、柔らかい性状に氷結させ得る。そのため、本実施形態のエアゾール製品は、メカニカルブレークアップ機構によってエアゾール組成物を広範囲に噴射したとしても、まず、エアゾール組成物を広範囲において立体的に発泡させ、その後、発泡させたエアゾール組成物を、立体形状を維持するように柔らかい性状で氷結させることができる。その結果、本実施形態のエアゾール製品によれば、広い範囲に噴射された場合であっても、柔らかい性状の立体的な氷結物を形成することができる。
【0054】
エアゾール組成物を充填したエアゾール容器の内圧としては、5℃以下、特に0℃以下にエアゾール組成物を冷却しても外部に噴射できる圧力を確保できる点からジメチルエーテルの飽和蒸気圧よりも高いことが好ましい。内圧は、一例を挙げると25℃において0.48〜0.55MPaである。
【0055】
本実施形態のエアゾール製品の適用箇所としては特に限定されない。適用箇所としては、皮膚等の人体が好ましい。その際、直接適用箇所に噴射してもよいが、コットンやシート等に一旦噴射し、皮膚等の適用箇所に対して、形成された立体的な氷結物を押し当てたり、塗り伸ばすのが好ましい。得られる氷結物は、柔らかいため適用箇所に刺激を与えにくい。また、このような氷結物は、立体的であるため溶けにくく、適用箇所に対して従来よりも長く付与させることができ、充分な冷感を付与することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
表1に示される割合(単位:質量%)で、25℃に調整した精製水(含水原液)を耐圧ガラス製の耐圧容器に充填し、エアゾールバルブを取り付けた。その後、ジメチルエーテルをエアゾールバルブから徐々に充填した。なお、本実施例では、ジメチルエーテルを微量ずつ段階的に充填していき、適宜振とうしても含水原液懸濁が解消されなくなった時点に対して、1段階前における充填量を測定し、飽和溶解量(単位:質量%)とみなした。充填後の容器内圧は、0.51MPa(25℃)であった。なお、エアゾールバルブとしては、直径0.5mmのステム孔が2個形成され、直径2.0mmのハウジングの下孔が形成され、横孔(ベーパータップ孔)のないものを使用した。なお、噴射ボタンは、後述する噴射されたエアゾール組成物の状態を確認する際に取り付けることとした。
【0058】
(実施例2〜4、比較例1〜2)
エアゾール組成物の組成を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法によりエアゾール製品を調製した。
【0059】
【表1】
【0060】
実施例1〜4および比較例1〜2において得られたエアゾール製品について、以下の評価基準に従って、充填されているエアゾール組成物の状態と、噴射されたエアゾール組成物の状態とを確認した。
【0061】
(エアゾール組成物の状態)
エアゾール組成物を充填した耐圧容器を、庫内温度を25℃、0℃、−5℃、−10℃および−20℃にそれぞれ調整した冷蔵庫または冷凍庫に1日間保管した。保管後のエアゾール組成物の状態を目視で観察し、以下の評価基準に沿って評価した。結果を表2に示す。
<評価基準>
◎:分離層はほとんど形成されておらず、耐圧容器を上下に振とうすることにより、わずかに懸濁した。その後、耐圧容器を静置すると、再び分離するまでの時間が60秒を超えるか、または分離しなかった。
○:一部が分離しており、耐圧容器を上下に振とうして撹拌すると懸濁した。その後、耐圧容器を静置すると、再び分離するまでの時間が20秒〜60秒であった。
△:一部が分離しており、耐圧容器を上下に振とうして撹拌すると懸濁した。その後、耐圧容器を静置すると、再び分離するまでの時間が10秒〜20秒未満であった。
×1:ジメチルエーテルが溶解し、透明な均一相を形成していた。
×2:一部が分離しており、耐圧容器を上下に振とうして撹拌すると懸濁したが、耐圧容器を静置すると、再び分離するまでの時間が10秒未満であった。
【0062】
(噴射されたエアゾール組成物の状態)
エアゾール組成物を充填した耐圧容器を、庫内温度を25℃、0℃、−5℃、−10℃および−20℃にそれぞれ調整した冷蔵庫または冷凍庫に1日間保管した。保管後の耐圧容器に噴射ボタンを取り付け、距離10cmからペーパータオル(商品名:キムタオル)にエアゾール組成物を噴射した。噴射されたエアゾール組成物の状態を観察し、以下の評価基準に沿って評価した。結果を表3に示す。なお、噴射ボタンは、直径0.7mmの噴射孔が形成されたストレート噴射用ボタンと、直径0.3mmの噴射孔が形成されたメカニカルブレークアップ機構付きの広角噴射用ボタンを使用した。
<評価基準>
◎:大きく発泡し、柔らかい性状の立体的な氷結物を形成した。
○:発泡し、柔らかい性状の立体的な氷結物を形成した。
△:小さく発泡し、やや柔らかい性状の立体的な氷結物を形成した。
×1:氷結物を形成しなかった。
×2:発泡せず、表面の一部が平面状に硬く氷結した。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
(実施例5)冷却化粧水
以下に示す含水原液1を調製し、耐圧ガラス製耐圧容器に30g(60質量%)充填し、エアゾールバルブを取り付け、ジメチルエーテル20g(40質量%)を充填した。エアゾールバルブおよび噴射ボタンは実施例1と同じものを用いた。実施例1と同様に、ジメチルエーテルの含水原液1に対する飽和溶解量を測定し、エアゾール組成物および噴射されたエアゾール組成物の状態を評価した。結果をそれぞれ表4および表5に示す。
【0066】
<含水原液1>
1,3−ブチレングリコール 1.0
メチルパラベン 0.2
精製水 98.8
(合計) 100.0(質量%)
【0067】
(実施例6)冷却化粧水
以下に示す含水原液2を調製し、耐圧ガラス製耐圧容器に30g(60質量%)充填し、エアゾールバルブを取り付け、ジメチルエーテル20g(40質量%)を充填した。エアゾールバルブおよび噴射ボタンは実施例1と同じものを用いた。実施例1と同様に、ジメチルエーテルの含水原液2に対する飽和溶解量を測定し、エアゾール組成物および噴射されたエアゾール組成物の状態を評価した。結果をそれぞれ表4および表5に示す。
【0068】
<含水原液2>
l−メントール 0.1
エタノール 1.0
メチルパラベン 0.2
精製水 98.7
(合計) 100.0(質量%)
【0069】
(実施例7)冷却化粧水
以下に示す含水原液3を調製し、耐圧ガラス製耐圧容器に30g(60質量%)充填し、エアゾールバルブを取り付け、ジメチルエーテル20g(40質量%)を充填した。エアゾールバルブおよび噴射ボタンは実施例1と同じものを用いた。実施例1と同様に、ジメチルエーテルの含水原液3に対する飽和溶解量を測定し、エアゾール組成物および噴射されたエアゾール組成物の状態を評価した。結果をそれぞれ表4および表5に示す。
【0070】
<含水原液3>
グリセリン 3.0
メチルパラベン 0.2
精製水 96.8
(合計) 100.0(質量%)
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
表2および表3に示されるように、エアゾール組成物中、ジメチルエーテルが含水原液に対して飽和溶解量を超えるように(25℃で35質量%を超えるように)含有されている実施例1〜4において作製されたエアゾール組成物は、5℃以下(0℃以下)に冷却された場合に、含水原液に溶解していないジメチルエーテルによって分離層が形成されたとしても、上下に振とうすることによりこのような分離層を容易に分散させることができ、エアゾール組成物を比較的長時間懸濁させることができた。このようなエアゾール組成物は、噴射すると、柔らかい性状の立体的な氷結物を形成することができた。また、ストレート噴口を備えている噴射ボタンだけでなく、メカニカルブレークアップ機構を備えている噴射ボタンでも、噴射すると、柔らかい性状の立体的な氷結物を広範囲に形成することができた。
【0074】
一方、ジメチルエーテルが飽和溶解量以下となるように含有された比較例1のエアゾール組成物は、ジメチルエーテルが含水原液に溶解し、透明な均一相を形成していた。このようなエアゾール組成物は、噴射されても氷結物を形成できなかった。また、水を含水原液中95質量%未満となるように含有された比較例2のエアゾール組成物は、エタノールにより含水原液へのジメチルエーテルの溶解量が多くなり、ジメチルエーテルの含有量が溶解量よりも少なかったため、ジメチルエーテルが含水原液に溶解し、透明な均一相を形成していた。このようなエアゾール組成物は、噴射されても氷結物を形成できなかった。
【0075】
表4および表5に示されるように、有効成分などの任意成分を含有し、ジメチルエーテルが含水原液に対して飽和溶解量を超えるように含有されている実施例5〜7において作製されたエアゾール組成物は、5℃以下(0℃以下)に冷却された場合に、含水原液に溶解していないジメチルエーテルによって分離層が形成されたとしても、上下に振とうすることによりこのような分離層を容易に分散させることができ、エアゾール組成物を比較的長時間懸濁させることができた。このようなエアゾール組成物は、噴射すると、柔らかい性状の立体的な氷結物を形成することができた。また、ストレート噴口を備えている噴射ボタンだけでなく、メカニカルブレークアップ機構を備えている噴射ボタンでも、噴射すると、柔らかい性状の立体的な氷結物を広範囲に形成することができた。