特許第6454132号(P6454132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454132
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】ワイパシステム
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/28 20060101AFI20190107BHJP
   B60S 1/08 20060101ALI20190107BHJP
   B60S 1/38 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   B60S1/28
   B60S1/08
   B60S1/38 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-225822(P2014-225822)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-88320(P2016-88320A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】天笠 俊之
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−235664(JP,A)
【文献】 特開2004−130876(JP,A)
【文献】 特開2007−126152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00−1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の払拭面上に対向配置され、該払拭面上に設定された下反転位置と上反転位置との間で往復払拭動作を行うワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復払拭動作させるための電動モータと、前記電動モータを正逆回転駆動し、前記ワイパブレードの動作を制御するワイパ制御装置と、を備えてなるオポジット配置型のワイパシステムであって、
該ワイパシステムは、
前記ワイパブレードとして、運転席側に配置される第1ワイパブレードと、助手席側に配置される第2ワイパブレードと、を備え、
前記電動モータとして、前記第1ワイパブレードを前記払拭面上にて往復払拭動作させるための第1電動モータと、前記第2ワイパブレードを前記払拭面上にて往復払拭動作させるための第2電動モータと、を備え、
前記ワイパ制御装置として、前記第1電動モータを回転制御する第1ワイパ制御装置と、前記第2電動モータを回転制御する第2ワイパ制御装置とを備え、
前記第1ワイパブレードは、前記払拭面上に設定された第1の下反転位置と第1の上反転位置との間で往復払拭動作を行い、前記第2ワイパブレードは、前記払拭面上に設定された第2の下反転位置と第2の上反転位置との間で往復払拭動作を行い、
ワイパシステム非作動時における前記第1及び第2ワイパブレードの停止位置は、前記第1ワイパブレードは前記第1の下反転位置に設定され、前記第2ワイパブレードは前記第2の上反転位置に設定され、
前記払拭面上における前記第2ワイパブレードの動作範囲は、前記第1ワイパブレードの動作範囲よりも狭く、前記第1ワイパブレードの動作範囲と若干のみ重複する範囲に設定され、
前記第1ワイパ制御装置及び前記第2ワイパ制御装置は、往復払拭動作の際、前記第1電動モータと前記第2電動モータを同期制御し、前記第1ワイパブレードと前記第2ワイパブレードを同方向に動作させ、前記第1ワイパブレードが前記第1の下反転位置から前記第1の上反転位置に向かって動作するとき、前記第2ワイパブレードを前記第2の上反転位置から前記第2の下反転位置に向かって動作させ、前記第1ワイパブレードが前記第1の上反転位置から前記第1の下反転位置に向かって動作するとき、前記第2ワイパブレードを前記第2の下反転位置から前記第2の上反転位置に向かって動作させることを特徴とするワイパシステム。
【請求項2】
請求項1記載のワイパシステムにおいて、前記第2の下反転位置は、前記第1ワイパブレードの動作範囲の外縁近傍に設定されてなることを特徴とするワイパシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のワイパシステムにおいて、前記第1ワイパ制御装置及び前記第2ワイパ制御装置は、往復払拭動作の際、前記第2ワイパブレードを前記第1ワイパブレードよりも遅い速度にて動作させることを特徴とするワイパシステム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のワイパシステムにおいて、
前記第1ワイパブレードは、前記第2ワイパブレードよりも長尺であることを特徴とするワイパシステム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のワイパシステムにおいて、
前記第1及び第2ワイパブレードが異常停止した後の復帰動作では、前記第2ワイパブレードが前記第2の上反転位置に退避した後に前記第1ワイパブレードが前記第1及び第2ワイパブレードの重複動作範囲を通るように、前記第2ワイパブレードを前記第2の上反転位置に移動させた後、前記第1ワイパブレードを前記第1の上反転位置に移動させることを特徴とするワイパシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される車両用ワイパ装置の制御技術に関し、特に、オポジットタイプ(対向払拭型)のワイパ装置におけるワイパブレードの干渉抑制技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、雨天時等における運転者の視界を確保するため、ウインドシールド(フロントガラス)に付着した雨や、前車からの飛沫を拭き取るワイパ装置が設けられている。近年、車両用ワイパ装置、特に、自動車用のワイパ装置では、ウインドシールドの大型化に伴う払拭面積増大や横方向の視界向上のため、従来からあるタンデムタイプに代わり、特許文献1のようないわゆるオポジットタイプのワイパ装置が増加している。オポジットタイプのワイパ装置では、ウインドシールドの左右両端側にワイパアームの回転中心が配され、運転席側(DR側)と助手席側(AS側)のワイパブレードが、ウインドシールドの両サイドから中央に向かって対向作動し、ウインドシールド上の雨滴等を払拭する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−301409号公報
【特許文献2】特開2007−62671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、オポジットタイプのワイパ装置は、左右のワイパブレードの動作範囲が広い範囲で重なっており、しかも、DR側とAS側のオープン動作とクローズ動作が同じタイミングで行われる。このため、従来のオポジットタイプのワイパ装置では、外力などによってブレードの前後関係が入れ替わったり、制御信号に何らかの異常が発生したりすると、払拭動作中にブレード同士が干渉してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、モータ間の信号通信に異常が発生した場合、AS側の払拭範囲を狭くする制御を実行することにより、ワイパブレード同士の干渉を防止するものも提案されている(特許文献2)。しかしながら、このような制御は、あくまで緊急時の応急処置的機能であり、根本的なブレード干渉防止対策とは言い難く、また、その機能を備えることによりワイパ装置自体が高価となってしまうという問題があった。さらに、緊急対応時も対向払拭動作が基本であり、上下の反転タイミングは通常時と変わらない。このため、AS側ワイパブレードが払拭範囲が狭くなった下反転位置に停滞する形となり、緊急時とは言え、ワイパ動作の見栄えが余り良くないという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、オポジットタイプのワイパ装置において、ワイパ動作の見栄えを損なうことなく、ワイパブレード同士の干渉を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワイパシステムは、車両の払拭面上に対向配置され、該払拭面上に設定された下反転位置と上反転位置との間で往復払拭動作を行うワイパブレードと、前記ワイパブレードを前記払拭面上にて往復払拭動作させるための電動モータと、前記電動モータを正逆回転駆動し、前記ワイパブレードの動作を制御するワイパ制御装置と、を備えてなるオポジット配置型のワイパシステムであって、該ワイパシステムは、前記ワイパブレードとして、運転席側に配置される第1ワイパブレードと、助手席側に配置される第2ワイパブレードと、を備え、前記電動モータとして、前記第1ワイパブレードを前記払拭面上にて往復払拭動作させるための第1電動モータと、前記第2ワイパブレードを前記払拭面上にて往復払拭動作させるための第2電動モータと、を備え、前記ワイパ制御装置として、前記第1電動モータを回転制御する第1ワイパ制御装置と、前記第2電動モータを回転制御する第2ワイパ制御装置とを備え、前記第1ワイパブレードは、前記払拭面上に設定された第1の下反転位置と第1の上反転位置との間で往復払拭動作を行い、前記第2ワイパブレードは、前記払拭面上に設定された第2の下反転位置と第2の上反転位置との間で往復払拭動作を行い、ワイパシステム非作動時における前記第1及び第2ワイパブレードの停止位置は、前記第1ワイパブレードは前記第1の下反転位置に設定され、前記第2ワイパブレードは前記第2の上反転位置に設定され、前記払拭面上における前記第2ワイパブレードの動作範囲は、前記第1ワイパブレードの動作範囲よりも狭く、前記第1ワイパブレードの動作範囲と若干のみ重複する範囲に設定され、前記第1ワイパ制御装置及び前記第2ワイパ制御装置は、往復払拭動作の際、前記第1電動モータと前記第2電動モータを同期制御し、前記第1ワイパブレードと前記第2ワイパブレードを同方向に動作させ、前記第1ワイパブレードが前記第1の下反転位置から前記第1の上反転位置に向かって動作するとき、前記第2ワイパブレードを前記第2の上反転位置から前記第2の下反転位置に向かって動作させ、前記第1ワイパブレードが前記第1の上反転位置から前記第1の下反転位置に向かって動作するとき、前記第2ワイパブレードを前記第2の下反転位置から前記第2の上反転位置に向かって動作させることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、前記第2ワイパブレードの動作範囲を、前記第1ワイパブレードの動作範囲よりも狭くし、前記第1ワイパブレードの動作範囲と若干のみ重複する範囲に設定することにより、第1及び第2ワイパブレードの重複動作範囲が小さくなり、ワイパブレード同士の干渉が生じにくくなる。また、往復払拭動作の際、第1及び第2ワイパブレードを同方向に動作させることにより、両方のワイパブレードが同時期に重複動作範囲に入る対向動作に比して、ブレード同士の干渉がさらに生じにくくなる。さらに、両ワイパブレードを同方向に動作させることにより、ワイパ動作が停滞なくスムーズになると共に、運転席に近い位置の払拭範囲は第1ワイパブレードのみが通過するようにもできるため、ワイパ動作の見栄えも改善される。
【0009】
前記ワイパシステムにおいて、前記第2ワイパブレードの下反転位置を、前記第1ワイパブレードの動作範囲の外縁近傍に設定しても良い。また、前記第1ワイパ制御装置及び前記第2ワイパ制御装置は、往復払拭動作の際、前記第2ワイパブレードを前記第1ワイパブレードよりも遅い速度にて動作させるようにしても良い。
【0011】
前記第1ワイパブレードを前記第2ワイパブレードよりも長尺としても良い。また、前記第1及び第2ワイパブレードが異常停止した後の復帰動作では、前記第2ワイパブレードが前記第2の上反転位置に退避した後に前記第1ワイパブレードが前記第1及び第2ワイパブレードの重複動作範囲を通るように、前記第2ワイパブレードを前記第2の上反転位置に移動させた後、前記第1ワイパブレードを前記第1の上反転位置に移動させるようにしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明のワイパシステムによれば、第2ワイパブレードの動作範囲を第1ワイパブレードの動作範囲よりも狭くし、第2ワイパブレードの動作範囲が第1ワイパブレードの動作範囲と若干のみ重複する範囲に設定したので、第1及び第2ワイパブレードの重複動作範囲が小さくなり、ワイパブレード同士の干渉を抑制することが可能となる。また、往復払拭動作の際、第1及び第2ワイパブレードを同方向に動作させることにより、ブレード同士の干渉をさらに生じにくくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態であるワイパシステムの全体構成を示す説明図である。
図2】ワイパブレードのタンデム動作を示す説明図であり、(a)〜(c)は往路動作、(d)〜(f)は復路動作をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態であるワイパシステムの全体構成を示す説明図である。図1のワイパシステムはオポジットタイプの構成となっており、互いに向かい合う形で上反転位置Ua,Ubと下反転位置La,Lbとの間を往復動するワイパブレード1a,1b(第1,第2ワイパブレード、以下、ブレード1a,1bと略記する)を有している。なお、図1のワイパシステムにおける符号中の「a,b」は、それぞれ運転席側と助手席側に関連する部材や部分等であることを示している。
【0015】
ブレード1a,1bは、運転席側のブレード1aの方が助手席側のブレード1bよりも長尺(同寸法でも良い)となっており、それぞれワイパアーム2a,2b(以下、アーム2a,2bと略記する)の一端側に取り付けられている。ブレード1a,1bは、アーム2a,2bとの接続形態がそれぞれ異なっている。ブレード1aは、下側(下反転位置側)にてアーム2aに接続され、アーム2aによって下から支持された形となっている。これに対し、ブレード1bは、上側(上反転位置側)にてアーム2bに接続され、アーム2bによって上から支持された形となっている。アーム2a,2bには、図示しないばね部材等が内装されており、ブレード1a,1bは、このばね部材等によってウインドシールド3に弾性的に押し付けられている。
【0016】
アーム2a,2bの他端側は、車体のウインドシールド左右両端側に配置されたワイパ軸(ピボット軸)4a,4bにそれぞれ取り付けられている。ワイパ軸4a,4bは、電動モータ5a,5b(以下、モータ5a,5bと略記する)によって回転駆動される。アーム2a,2bはワイパ軸4a,4bの回転に伴って揺動し、これにより、ブレード1a,1bは、動作範囲6a,6b内にて往復払拭動作を行う。
【0017】
モータ5a,5bは、モータ本体7と減速機構8とによって構成されており、ワイパ制御装置10a,10bによるPWM duty制御によって正逆回転する。モータ5aを駆動制御するワイパ制御装置10aは、車両側のコントローラであるECU11と車載LAN12を介して接続されている。ECU11からワイパ制御装置10aに対しては、ワイパスイッチのON/OFFや、Lo,Hi,INT(間欠作動)などのスイッチ情報やエンジン起動情報などがLAN12を介して入力される。ワイパ制御装置10a,10b同士の間は通信線13にて接続されている。
【0018】
モータ5a,5bは、ブレード1a,1bの位置情報に基づいてフィードバック制御(PI制御)される。ここでは、ブレード1a,1bの位置に対応して、両ブレードの目標速度が設定されており、予めマップ等の形でワイパ制御装置10a,10b内に格納されている。モータ5a,5bには、フィードバック制御を行うため、モータ軸14に多極着磁マグネット15、ケースフレーム16内に相対位置検出用のホールIC17が設けられており、モータ軸14の回転に伴ってパルス信号が出力される。また、ワイパ軸4a,4bが取り付けられた減速ギヤ18には絶対位置検出用マグネット19が取り付けられており、ケースフレーム16にはこのマグネットに対向してホールIC20が設けられている。
【0019】
絶対位置検出用マグネット19は、ブレード1a,1bが基準位置X(ここでは上反転位置の手前に設定)に来たときホールIC20と対向し、ワイパ制御装置10a,10bは、その出力信号により、ブレード1a,1bの絶対位置を認識する。また、ワイパ制御装置10a,10bは、ホールIC17からのパルス信号を用いて、モータ軸14の回転数や回転速度を把握し、ブレード1a,1bの移動速度や、基準位置Xからの角度(現在位置)を検出する。そして、現在のブレード1a,1bの速度と、当該位置におけるブレード1a,1bの目標速度とを比較し、目標速度と現在速度との差に応じて、適宜、モータ5a,5bを制御する。その際、両モータ5a,5bの制御情報は、通信線13を介してワイパ制御装置10a,10bの間で交換され、モータ5a,5bは、双方のブレードの位置関係に基づいて同期制御される。
【0020】
ここで、本発明によるワイパシステムでは、AS側のブレード1bの動作範囲6bが、DR側のブレード1aの動作範囲6aにぎりぎり掛かる範囲に設定されており、動作範囲6bは若干のみ動作範囲6aと重複している。すなわち、動作範囲6bは、動作範囲6aを避ける形で動作範囲6aよりも狭くなっており、ブレード1a,1bの重複動作範囲6cが、従来のオポジットタイプのワイパ装置よりも小さくなっている。この場合、ブレード1bの下反転位置Lbは、DR側のブレード1aの動作範囲6aの外縁Rの近傍に設定されており、動作範囲6bは、動作範囲6aの図1において右端側に僅かに重なる形となっている。
【0021】
また、当該ワイパシステムにおいては、ブレード1a,1bがタンデム動作を行い、同じタイミングで反転する。すなわち、ブレード1aが下反転位置Laから上反転位置Uaに向かって動作するとき、ブレード1bは上反転位置Ubから下反転位置Lbに向かって動作する。一方、ブレード1aが上反転位置Uaから下反転位置Laに向かって動作するときは、ブレード1bは下反転位置Lbから上反転位置Ubに向かって動作し、ブレード1a,1bは、同方向に動作しながらウインドシールド3上を払拭する。ここで同方向とは、図1中における左右方向において、ブレード1a,1bの各停止位置から向かう移動方向のことである。
【0022】
図2は、ブレード1a,1bのタンデム動作を示す説明図であり、(a)〜(c)は往路動作、(d)〜(f)は復路動作をそれぞれ示している。図2(a)はシステム停止時の状態であり、ブレード1aは下反転位置La(あるいは格納位置)、ブレード1bは上反転位置Ubに存在している。つまり、ブレード1a,1bは、通常停止位置が上下に分かれており、ブレード1bの停止位置は、通常のワイパ装置とは異なり、ウインドシールド3のピラー21近傍に設定されている。
【0023】
そこで、ワイパスイッチがオンされると、図2(a)のシステム停止状態からブレード1aは上反転位置Ua方向に向かって作動し、ブレード1bは下反転位置Lbに向かって作動する(図2(b))。このとき、ブレード1bはブレード1aよりもゆっくりと動作し、ブレード1aが重複動作範囲6cを通過した後、下反転位置Lbに到達する。ブレード1bが下反転位置Lbに到達したとき、ブレード1aもまた上反転位置Uaに到達し、往路動作が終了する(図2(c))。
【0024】
復路動作では、ブレード1aは上反転位置Uaから下反転位置Laに、ブレード1bは下反転位置Lbから上反転位置Ubに向かって作動する(図2(d))。ブレード1a,1bは、上反転位置Uaと下反転位置Lbをそれぞれ同時に出発する。その際、ブレード1bは、ブレード1aが重複動作範囲6cに達する前に重複動作範囲6cから離脱する。ブレード1aは、ブレード1bが退避した後に重複動作範囲6cに至り、下反転位置Laに向かう(図2(e))。また、ブレード1bも上反転位置Ubに向かい、ブレード1a,1bはそれぞれ同時に下反転位置La、上反転位置Ubに到達する(図2(f))。
【0025】
このように、本発明によるワイパシステムでは、AS側ブレード1bの動作範囲6bが、DR側ブレード1aの動作範囲6aにぎりぎり掛かる程度となっているため、ブレード1a,1bの重複動作範囲6cが小さく、両ブレードの干渉が生じにくい。また、重複動作範囲6cが小さいことから、オポジットタイプのワイパ装置でありながら、ブレード1a,1bをタンデム動作させることができる。すなわち、ブレード1aの通過後にブレード1bが重複動作範囲6cに入り、ブレード1bが離脱後にブレード1aが重複動作範囲6cに入るように両ブレードを作動させることができ、両ブレードが同時期に重複動作範囲に入る対向動作に比して、ブレード同士の干渉をさらに生じにくくすることが可能となる。
【0026】
さらに、ワイパ作動中にAS側ブレードが下反転位置に停滞することがなく、運転席に近い位置の払拭範囲はDR側ブレード1aのみが通過することとなるため、ワイパ動作の見栄えも改善される。この場合、ブレード1bは、アーム2bによって上から支持されているため、運転者の視界にアーム2bが入りにくく、降雨時等における運転者の視認性や運転感覚も改善される。加えて、AS側のブレード1bは、DR側のブレード1aよりも動作速度が遅いため、AS側のモータ5bは、DR側のモータ5aよりも低回転タイプのものを使用でき、その分、コストを低減させることが可能となる。
【0027】
一方、ブレード1bを重複動作範囲6cにて確実に停止させるため、モータ5bには機械的な停止手段(回り止め)が設けられている。このような回り止めとしては種々の構成が考えられるが、ここでは、減速機構8内にストッパを配してブレード1bの動作を強制的に停止させている。ストッパの一例としては次のようなものが挙げられる。例えば、ワイパ軸4bに皿状の部材を取り付けると共に、この皿状部材に突起を設ける。そして、減速機構8のケース側にも突起を設け、ブレード1bが下反転位置Lbに達する位置で両突起を当接させる。これにより、ワイパ軸4bはその位置で回り止めされ、ブレード1bも下反転位置Lbにて確実に停止する。
【0028】
また、前述のように、ワイパ制御装置10a,10bは、基準位置Xを検知すると共に、ホールIC17からのパルス信号を用いて、ブレード1a,1bの現在位置(角度位置)を把握している。このような制御形態では、電源が払拭途中に切れた場合など、ブレード1a,1bが通常の停止位置以外に停止した状態となると、ワイパ制御装置10a,10bは、ブレード1a,1bの位置を見失ってしまう恐れがある。この場合、異常停止状態から通常制御に復帰させるに際し、AS側とDR側を同時に上反転へ向かって動作させても、ブレード1a,1bは干渉しにくく、万が一、重複動作範囲6cにて両者が干渉しても、ブレード1bが上反転位置方向に逃げつつ、ブレード1aがブレード1bをなぞるように進むため、システム破壊につながるような干渉は発生しない。
【0029】
しかしながら、このような干渉は稀であり、重大な事態も生じないものの、その可能性はゼロではない。そこで、異常復帰時における万が一の干渉をも回避するため、本システムでは、異常停止からの再始動の場合は、AS側→DR側の順に上方へ作動させ、両者を一旦上反転位置Ua,Ubまで動作させる。このような動作を行えば、ブレード1aが下反転位置La近傍にいた場合でも、ブレード1bが上反転位置Ubに退避した後、ブレード1aが重複動作範囲6cを通るため、両ブレードの干渉は生じない。また、これにより、両ブレード1a,1bは基準位置Xを通過し、両者の絶対位置が正確に把握され、パルスカウントが原点リセットされる。従って、異常停止からの再始動に際し、より確実にブレー同士の干渉を回避しつつ、通常制御を再開することが可能となる。
【0030】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施の形態では、パルス方式によってブレード位置を検出しているが、ブレード位置や速度等の検出方式はパルス方式には限定されず、ワイパ軸や電動モータの回転角度や回転速度を検出できるものであれば、どのようなセンサや計測装置を用いても良い。また、前述の実施の形態では、回り止めとして減速機構8内にストッパを配した構成を示したが、停止手段の構成はこれには限定されず、例えば、回り止めをモータ部分ではなく、アーム2bと当接する部材を車体に配するなど、アーム部分等に設けても良い。
【符号の説明】
【0031】
1a 運転席側ワイパブレード(第1ワイパブレード)
1b 助手席側ワイパブレード(第2ワイパブレード)
2a,2b ワイパアーム
3 ウインドシールド
4a,4b ワイパ軸
5a 電動モータ(第1電動モータ)
5b 電動モータ(第2電動モータ)
6a 運転席側ワイパブレード動作範囲
6b 助手席側ワイパブレード動作範囲
6c 重複動作範囲
7 モータ本体
8 減速機構
10a ワイパ制御装置(第1ワイパ制御装置)
10b ワイパ制御装置(第2ワイパ制御装置)
11 ECU
12 車載LAN
13 通信線
14 モータ軸
15 多極着磁マグネット
16 ケースフレーム
17 ホールIC
18 減速ギヤ
19 絶対位置検出用マグネット
20 ホールIC
21 ピラー
R 運転席側ワイパブレード動作範囲外縁
Ua 上反転位置(運転席側ワイパブレード:第1の上反転位置
Ub 上反転位置(助手席側ワイパブレード:第2の上反転位置
La 下反転位置(運転席側ワイパブレード:第1の下反転位置
Lb 下反転位置(助手席側ワイパブレード:第2の下反転位置
X 基準位置
図1
図2